[過去ログ] 【剣も魔法も】ヘヴィファンタジーTRPGスレ【重厚】 [転載禁止]©2ch.net (273レス)
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143: ◆xAR6oa9/33KJ 2015/12/12(土)22:01 0 AAS
首筋目掛け迫る切っ先――上体を大きく後方へ逸らして躱す。
がら空きになった胴体へ間断ない二の太刀が襲い掛かる。
膝の力を抜き、殆ど後方へ倒れ込むかのように回避――今度こそ隙だらけ。

華翼が深く踏み込み、右の剣を振り被る――そこで僅かに、目を見張った。
ヴィクトルはコートに潜ませた余剰の瑞鉄で二振り目の細剣を作り出していた。
それを左手に逆手に持ち、杖のようにして体を支えていた。
両足と細剣、三点による支え――つまり斬撃を放つ為の体勢は十分。
省34
144: ◆xAR6oa9/33KJ 2015/12/12(土)22:03 0 AAS
ヴィクトルは動きを止めない。
氷城も既に自由を取り戻している。
魔力の枯渇も――彼の足元には魔法薬の空き瓶が転がっている。
リタリンのハーブほど強力な代物ではないが、その分副作用も穏やかで――その有用性から相当高価なものだ。

自分へと振り翳される杖を目視し、ヴィクトルは四つん這いの姿勢から強く床を蹴った。
狙いは櫓の下――氷という戦場を大きく変化させる魔法を前に、櫓の上は狭すぎる。
だが氷城もまた、その事を理解している。
省37
145: ◆xAR6oa9/33KJ 2015/12/12(土)22:03 0 AAS
「『汝の力、要塞を持って愚かなるものに罰を与えよ。我は願う。汝の力による制裁を』」

「なっ……!」

華翼も氷城も、動揺を隠せなかった。
エルフは魔法の才に長けた種族だ。
彼らは人間よりも遥かに上手く魔法を使う。
例えば城塞の魔法、あれは堕廃の魔女が用いたものなら八節の呪文を唱えて行使する。
だが一般的なエルフならば半分の四節で同等以上の効果を発現出来るだろう。
省27
146: ◆xAR6oa9/33KJ 2015/12/12(土)22:05 0 AAS
ヴィクトルもまた、壁際にいた。氷城とは真逆の位置に。
彼の狙いは最初から氷城だったのだ。
華翼の視界を奪った瞬間、ヴィクトルは細剣を足元に突き刺し、支えとする。
その状態から前方へ倒れ――氷城目掛け滑り込んだのだ。
そしてすれ違いざまに斬撃――いち早く身を躱され腹部は捉え損ねたが、それでも動脈を切り裂いた。

動脈への深い刃傷は、基本的に致命傷となり得る。
出血を放置すれば五分足らずで死に至る上、勢いが激しい為止血も困難だ。
省8
147: ラウテ ◆uUre4dQFyk 2015/12/14(月)00:14 0 AAS
氷城に対して仕掛けたスライムの攻撃は、華翼による爆風で完全に無効化されてしまった。
しかしそれは読みの範疇である。必要なのは、氷城から魔力を奪う事だったのだから。
だが……スライムから救われた氷城は、こともなげにこちらに対して魔法を放ってきた。

「どうしてっ…!?」

リタリンに抱えられて氷の魔術をかわしながら、ラウテはそう歯噛みする。
あのスライムにあれだけの時間曝露すれば、並大抵の人間なら魔力を喪失するはず。
その答えはすぐに理解出来た。彼は薬品の力を借りて、魔力を一時的にブーストしたのだ。
省30
148: リタリン ◆77DMiRtfME 2015/12/15(火)14:42 0 AAS
上空から降り注ぐ氷柱の群れ。その無数の切っ先はすべてが鋭くリタリンを捉えている。
練り上げた魔力はもう品切れだ。防壁となる魔法は使えない。
足掻くようにバックステップで逃れようとするが、氷柱はそれに追従するように軌道を変えた。
当然といえば当然、遮蔽物の向こうへ曲射するならば何らかの誘導魔法は付与されていることだろう。
痛みと、そして訪れる死の予感にリタリンは瞑目する――

氷柱が着弾した。
破砕の音を以って凍てつく投槍が貫いたのは、しかし魔女の血肉ではなかった。
省40
149: リタリン ◆77DMiRtfME 2015/12/15(火)14:43 0 AAS
――――

「ほら、どうした手品はしまいか?
 もっと気合入れて逃げねえとただでさえ小せえタッパが半分になっちまうぞ!」

逃げる魔女狩り、追う華翼。
機動力において勝る華翼が魔女狩りを捉えかねているのは、この処刑台の狭さによるものであろう。
本来の氷城と華翼の連携とは、氷城のつくる銀盤の上に捉えた敵を華翼が上から仕留めるスタイルだ。
氷のフィールドに捉えさえすれば、相手は踏ん張りが効かずにろくに動くこともできないまま双剣の餌食となる。
省33
150: リタリン ◆77DMiRtfME 2015/12/15(火)14:43 0 AAS
(射出魔法を改竄して送り返してきた……?無駄なことを!)

魔法の改造技術など別に珍しくもないが、戦場で使う者が少ないのには理由がある。
はっきり言って時間の無駄だからだ。
わざわざ手間と時間をかけて魔法を解析し改造を施して撃ち返すよりも、自分で砲撃魔法を唱え直したほうが遥かに早い。
なにせこちらは氷結魔法の専門家、自分に向けられた氷結魔法を無力化する方法などいくらでも知っている。
単純に、同じ魔法で迎え撃てば相殺できるのだ。だからそうした。
飛んできた氷の群れは、一つ残らず砕き尽くされた。
省26
151: ◆xAR6oa9/33KJ 2015/12/17(木)03:11 0 AAS
>「ほら、どうした手品はしまいか?
  もっと気合入れて逃げねえとただでさえ小せえタッパが半分になっちまうぞ!」

氷城を仕留め損ねたヴィクトルを仕留めんと、華翼が動く。
壁に刃を突き立て体を固定した状態で――もう一方の切っ先をヴィクトルへ。
爆炎が吠える。ヴィクトルは壁に背を預けた状態から体を両手で押し出しそれを回避。
華翼もまた壁を蹴り、跳躍――爆炎の連撃はしない。氷を過度に溶かしてしまう。
まともな足場を与えてしまう事は避けたかった。
省36
152: ◆xAR6oa9/33KJ 2015/12/17(木)03:12 0 AAS
>「おい氷城!」

>「問題ない!」

思わず名を呼んだ相棒は、切迫しながらもそう答えた。
しかし――華翼も一流の冒険者だ。
それを鵜呑みにし、状況を楽観視はしない。

氷城が「問題ない」のは「少なくとも今は」である。
彼は氷結の魔素によって樹木の成長を押し留めている。
省33
153: ◆xAR6oa9/33KJ 2015/12/17(木)03:12 0 AAS
しかし――それでは今ひとつだ、ともヴィクトルは考えている。
何故なら彼の目的は、彼らをただ倒す事ではないからだ。
情報源として確保し、地上げ屋への攻め口、甲種冒険者の情報を掴む――それがこの戦いの目的だ。

「……一つ、布石を巻いとくか」

ヴィクトルが小さく呟いた。
そして剣を自分の周囲四方へと振り回し――深く息を吸い込む。

『空より堕ちし微睡む少女よ、我が剣を見よ』
省31
154: ◆xAR6oa9/33KJ 2015/12/17(木)03:13 0 AAS
「――さて、どうしたものかな」

拉致した乙種二人を連れて、ヴィクトルは一度西区画のスラム街に戻ってきた。
彼らを悠々と拷問するには最適な場所だからだ。

「本当ならお前は、あらゆる人としての尊厳を奪い尽くしてから殺すつもりだったんだが。
 今は色々と聞きたい事があるんでな、手っ取り早くやらせてもらうぜ」

適当な廃屋の柱に縛り付けた華翼に細剣を突き付け、ヴィクトルはそう言った。
華翼が目を細める。彼はそれだけの言葉で、ヴィクトルの目的に察しがついたようだ。
省33
155: ◆xAR6oa9/33KJ 2015/12/17(木)03:15 0 AAS
ヴィクトルが悪辣な笑みと共に、華翼を振り返った。

「……ソイツは、『地走』と呼ばれてる。お前達も聞いた事があるんじゃないか。
 どんな攻撃も通用しない、絶対防御の魔法を扱う格闘士だ」

「……確かに聞いた事はある。が、具体的にはどんな術理なんだ?その絶対防御とやらは」

「……分からねえ。地走の戦い自体、一度しか見た事がないんだ。
 だがあの時は本当に、奴は何もしていなかった。
 ただ攻撃を待ち受けて……そのまま食らっていた。それでも微動だにしなかった」
省26
156
(1): 地走 ◆0wOjk6u1BM 2015/12/17(木)20:14 0 AAS
名前:『地走』カトリーヌ・パウレット・ドゥ・モンミライユ
年齢:25歳
性別:女
身長:186cm
体重:72kg
スリーサイズ:103-66-97
種族:人間
省16
157: 地走 ◆0wOjk6u1BM 2015/12/17(木)20:23 0 AAS
――過去の話。

少女は生まれながら目が見えなかった。

貴族の両親は、そんな少女を疎ましく思い、

少女の弟――跡取り息子が産まれると、完全に見捨てられた。

屋敷に政略の人質として送られ、
省8
158: 地走 ◆0wOjk6u1BM 2015/12/17(木)20:48 0 AAS
殺すこと。
ただ殺すことだけが私の仕事だった。
しかし――皮肉にも最近はそれが無い――つまり街が”浄化”されているということ。
オメルタ様はいつもそう話してくれる。

オメルタ様の屋敷で部屋を与えられ、過ごす毎日。
いつからだろうか?
光を見ることができるようになった私は、この世界で初めて”生”を受けてはや十年。
省20
159: ◆xAR6oa9/33KJ 2015/12/17(木)21:41 0 AAS
>>156
その敵役参加、俺は待ったをかける
理由は>>42を読んでくれ
ただし俺の心象はリタリンの時よりも拒否に傾いている

何故なら、重要な立ち位置に突然飛び込んでくるという自覚がありながら事前の相談が一切ない事
今回は序盤の、こう言っちゃ悪いが設定紹介、チュートリアル用のボス的立ち位置だったリタリンとは話が違う

アンタが迷子になれば、俺達は全員迷子の付き合いをしなきゃならない
省5
160
(1): ◆xAR6oa9/33KJ 2015/12/17(木)21:42 0 AAS
とは言ったが、俺は所詮ただの一参加者だ
ラウテが俺の待ったに待ったをかけるなら、それならそれで構わない
161
(1): ラウテ ◆uUre4dQFyk 2015/12/17(木)23:21 0 AAS
ラウテは路地裏の荷物の影に身を潜め、ただひたすらに魔笛を奏でていた。
逃げる際にもちろんデコイは放った。魔力追尾型の魔法に対して用いられる簡単なものだ。
消費魔力が多くほんの一瞬相手の攻撃を逸らすだけだが、こんな路地裏だからこそ役に立つ。
ラウテに出来ることは、遠隔からとにかく味方を援護することだけだ。

ラウテは幼いが故に、まだ力も弱く体力も少ない。
ダガーを用いた剣技こそ使えるものの、それはあくまで相手を撹乱させるのが関の山だ。
人並み外れた魔力量による魔笛の術によるごり押し、それが彼女に出来る精一杯である。
省25
162: ラウテ ◆uUre4dQFyk 2015/12/17(木)23:22 0 AAS
召還したのは一頭の馬。彼女が旅の足に使っているもので、名をさくらと呼んでいる。
実のところ他の生き物にも名前を付けてはいたのだが、ある程度数が増えた時点で諦めたという経緯があったりする。
さくらはあまり質の良い馬とは言えないが、召還主に絶対の忠誠があるため非常に扱いやすい。
ただ人の髪の毛を食べ物と勘違いする癖があるため、あまり近づくのはお勧めしない。

さくらに二人の捕虜を乗せて、西区画のスラム街まで運んだ。
そこから先はヴィクトルの仕事だ。彼以上に尋問を得意とする者は居ない。
ラウテはその様子を隅の方で眺めつつ、途中で買ったお昼ご飯を食べていた。
省22
163: 地走 ◆0wOjk6u1BM 2015/12/18(金)12:57 0 AAS
殺意は無かった。
私は目が今でも決して人並みには見えない。しかし、生命の動きには敏感だ。
能力や魔力に関係なく、相手の考えを読むことはできる。
目を瞑っていても。

アバットは私が来ると、明らかに表情に狼狽の色を浮かべた。
”失敗した”それを誤魔化しているのだ。
そして、多くの殺しを成功させている私に怯えている。多くの人間がそうだ。
省12
164: 地走 ◆0wOjk6u1BM 2015/12/18(金)12:57 0 AAS
「何だその態度は?ワシによって今年何人が処刑されたか判っているのか?」
剣が抜かれ、完全に丸腰の私に向かって攻撃が繰り出される。
彼は私の武装の有無が服装で判る。私を使役してきたから。

―でも、この男にはそれでも私に傷を負わせることはできない。

私は剣の切っ先を凝視する。魔力がそこに凝縮され、
それはアバットの全身を駆け巡り、時間が撒き戻される。
その間に私は移動する。『地走』と呼ばれるのはその速度からオメルタ様が命名したものだ。
省29
165: 地走 ◆0wOjk6u1BM 2015/12/18(金)13:17 0 AAS
――光。

光のある生活は本当に楽しかった。
オメルタ様のお陰で私は光を得た。笑顔にもなることができた。

私は魔力と格闘技を使い、目立つことはなかったが人を殺し始めた。
全ては正しいことだと思った。
「魔女狩り」と「教会」、「異端審問」…こういった言葉の意味は深く考えなかった。
オメルタ様は私を救った。だからオメルタ様が正しいのだ。
省26
166
(1): 地走 ◆0wOjk6u1BM 2015/12/18(金)13:47 0 AAS
最近のオメルタ様は変わってしまった。
彼はまるで、何かに取り憑かれたかのよう。
以前のようにお互い、体に触れることもしばらくはなくなった。
男と女、父親と娘という関係では、もはやない。

オメルタ様に広場に現れた”偽魔女狩り”の討伐について聞くと、
「今はまだその時ではない」と一蹴された。
私は部屋に戻った。
省28
167: リタリン ◆77DMiRtfME 2015/12/20(日)21:19 0 AAS
ヴィクトルが華翼に勝利するさまを、リタリンは水晶越しに見ていた。
広場に吹き荒れ視界を真っ白に染める吹雪、その寒波は民家越しにこちらまで届いてきそうですらある。

「使えるんじゃない、魔法……」

まあエルフだから使えても別におかしくないのだが、つまり昨晩の戦闘は彼にとって全然全力じゃなかったということだ。
どこまで隠し種を持っているのか、死力を尽くして今もスッカラカンのリタリンは信頼とげんなりを同じくらいヴィクトルに感じた。

>「ご苦労だったな、こっちも終わった。撤収するぞ。荷物運びに適した畜生はまだ召喚出来るか?魔笛の。
 出来ないなら……何やってる、堕廃の。お前が一人運べ」
省38
168: リタリン ◆77DMiRtfME 2015/12/20(日)21:20 0 AAS
【ちょっと時間がかかってしまいました、すみません】
>>166 ようこそ、歓迎します、よろしくお願いします】
169: ◆77DMiRtfME 2015/12/20(日)23:10 0 AAS
乙種冒険者『鋭鋒』はオメルタ配下の冒険者、用心棒のなかのひとりだ。
瑞鉄製の伸縮自在の長槍と、力の伝導を操る独特の武術を使い、二十代の若さで乙種にまで上り詰めた。
才能と伸びしろ、気力と賢明さを兼ね備えた乙種の中でも上位に位置する冒険者である。

一口に乙種と言っても、丙より上で甲未満となると実に幅が広い。
とりわけ『戦闘の実力』という意味では、キャリアも評価対象となる協会認定では実情を完璧に表わしているとは言い難い。
単に強いだけでは乙種にはなれないし、乙種だからといって単純に強いとは限らない、ということだ。

そういう意味では、つまり"乙種内腕っ節ランキング"的には、華翼と氷城はそれぞれ中の下ぐらいの立ち位置だった。
省38
170: ◆xAR6oa9/33KJ 2015/12/21(月)21:54 0 AAS
>「十分な休養ののち、という前提で異論なし。だけどこれからはいっそう慎重に立ち回らなきゃだわ。
  乙種二人でも結構、いやかなり手ごわかったけれど、甲種は本当に強さの次元が違うから……」

「慎重に……そうだな、「お前は」そうしろ。お前なら人混みに身を隠すのはお手のものだろう」

形容魔法は性質を塗り潰す魔法だ。
即ちそれは人間に対して用いれば「個性」を隠匿する事が出来る。
あの広場での大立ち回りを見られていたとしてもなお、堕廃の魔女はその隠匿性が保たれている。
オメルタの支配下において丸一年も姿を見られずに済んでいたのも、その為だろう。
省25
171: 地走 ◆0wOjk6u1BM 2015/12/23(水)17:55 0 AAS
――夢を見ていた。

オメルタ様に抱かれる夢。

。。いや、夢というよりも、幻、私の理想を妄想していただけなのかもしれない。
場所は勿論――ここ。私のお屋敷の、オメルタ様の部屋。
ここは私にとって、全てだった。

冒険者になんて、ならない方が良かったかもしれない。

人を殺すのは好き。甚振るのも好き。
省23
172: 地走 ◆0wOjk6u1BM 2015/12/23(水)18:30 0 AAS
私は驚愕した。
どうしてオメルタ様が、私より先に、チームの片割れに先に情報を入れたのか?
もし来たのが女だったら、その場で激昂し、縊り殺していたかもしれない。

一瞬、目つきが変わったのを、この男に見られてしまっただろうか?
しかし、私は何とか作り笑いをして、感情を押し殺した。

「分かったわ。知っていると思うけれど、私は”地走”、よろしくね。
アバット…様?確か、「疲れたから寝る」と仰っていたと思うけど」
省32
173: 地走 ◆0wOjk6u1BM 2015/12/23(水)19:16 0 AAS
街への一歩を踏み出した時、周囲で声が上がった。
火事だ!火事があったようだ!!魔女狩りの仕業だ!

振り返ると、既に屋敷にも通報が行われているようで、街の警護が門番と何やら話している。
「鋭鋒、念のため屋敷に行って、放火魔を始末する冒険者を手配しておいて」

何で俺が、という顔をする鋭鋒も、ちょっと不機嫌そうな顔をするとすぐに動いてくれた。
結構可愛いところあるじゃない。こういう男は嫌いじゃない。
それに、悔しいことに、私よりも下手な腕利きの乙種が話した方が門番はずっと話を聞く。
省37
174: ◆0wOjk6u1BM 2015/12/23(水)19:26 0 AAS
【と、ここまで書きましたが、これで”地走”を引退させていただこうと思っています。
理由は第一に急遽、年末以降が忙しくなったので時間が取れそうにないこと。
それと第二に、人数が四人になり、タイミングの関係でプレイヤー同士が息を合わせるのを
阻害しているのではないか、と体感したことです。勿論、今後私のペースが遅くなることの危惧もあります。
なるべく早い方が良いと思ったので、丁度合流できそうなあたりまで書かせていただきました。
ヴィクトルさん、ラウテさん、リタリンさん、応援やアドバイスありがとうございました。
申し訳ありませんがこれにて”地走”をNPCとし、失礼させていただきます。】
175: ◆xAR6oa9/33KJ 2015/12/23(水)20:33 0 AAS
さようなら。俺の目に狂いは無かったようで嬉しいよ
……これは決して、GMとして公平性を保とうとしたラウテを責める言葉ではないと明言しておくがな

まぁ、気を改めて
これからのレス順についてなんだが、まずはもう一度俺のターンとして
それから従来通りラウテ、リタリンと続ける形にしてもらいたい

まぁ、もう年末だ
これまでより少しばかり長い時間をもらう事になるかもしれないが、いいだろうか
176: 2015/12/23(水)21:05 0 AAS
ひくわー
177: ラウテ ◆uUre4dQFyk 2015/12/26(土)18:59 0 AAS
次の順番は希望によりヴィクトルさんとのことでしたが、いつ頃投下可能でしょうか?
予定日が分かるのでしたら言って頂けるとありがたいです。
178: ◆xAR6oa9/33KJ 2015/12/26(土)19:55 0 AAS
あー、すまない
俺としては一応、GMの許可を待っているつもりでいたんだ
完全にすれ違いが生じていたな。重ねてすまないと思っている
遅くともあと3日でレスを都合しよう
179
(1): シャビ ◆n/2dLlMtSI 2015/12/26(土)21:01 0 AAS
名前:シャビ・ティムレ(シャビ&ボンズのシャビ)
年齢:23
性別:男
身長:171cm
体重:53kg
種族:人間
職業:盗賊
省16
180: シャビ ◆n/2dLlMtSI 2015/12/26(土)21:11 0 AAS
おう
俺だ

ん?俺だって言われても分かんねーか?
シャビ&ボンズのシャビだよ。
スピードのシャビ、パワーのボンズって言われてんだ。
シャビ&ボンズの細い方、酒好きな方、甘党の方とも言われてる。
まぁ結構ここらじゃ鳴らしてるコンビだ。
省15
181: シャビ ◆n/2dLlMtSI 2015/12/26(土)21:47 0 AAS
俺らは基本殺しはしねえ。いざって時だけだ。
中央区画では俺はジャグリングでたまに路銀を稼いでたんだぜ。ナイフの腕前もついでに上げられる。
ただ、ボンズの奴が何もできねえって拗ねやがる。
おっと、話が反れちまったな。

で、最初に見たのは薬屋だ。
薬屋ってのは嫌なもんだな。燃えるとやべぇ臭いがしやがる。
薬屋の親父は必死に消そうとするのに、全く消えやがらねえ。チャンスだ。
省17
182: シャビ ◆n/2dLlMtSI 2015/12/26(土)21:48 0 AAS
突然、店のテントから人間が現れた。あのフードの女が、ボンズを引きずり込んで、
いや待てよ?!持ち上げたぞ?片手で。俺の倍近くの体重のある、あのパワーのボンズをだ。
ただただ俺は、自分の命が助かって欲しいと願ってたんだ。情けねえ。

事が終わったらしく、男と女が連れ立っていった。
俺はボンズが入れられた店の中を覗いてみた。信じられるか?

そこで見たのは、ボンズがあの薬屋の親父を投げナイフで刺したまま倒れてる姿だったんだよ。
有り得ねえ!!
省25
183: ◆xAR6oa9/33KJ 2015/12/28(月)04:18 0 AAS
火災の通報を受けて、北地区に冒険者が集まってくる。
ヴィクトルはその様を高所から観察していた。
火災の際に冒険者達が緊急の依頼という体で現場に駆け付ける事は珍しくない。
だが――「消火活動もろくに進んでいないのに放火魔を見つけ出そうと駆けずり回る冒険者」は、極めて珍しい。

「間抜けだな……お前達じゃなく、お前達に指示を出した人間が、だが」

ヴィクトルが弓に矢を数本まとめて番え、引き絞る。
そして上空へと放つ――風の魔法により「道」を用意された征矢が地上へと降り注ぐ。
省35
184: ◆xAR6oa9/33KJ 2015/12/28(月)04:19 0 AAS
「だが……やりやすい相手だな。獣のような奴だ。そして……俺は狩人だ」

そのヴィクトルも――やはり微かな水音を立てて弾けて消えた。

ヴィクトルの実像は、そのすぐ隣にあった。
水鏡の魔法による――風景との同化。
これもやはり、地走が気付けなかったのは心理誘導――虚像との併用が理由だった。

しかし――それも気付くまでの時間が多少長くなる程度の効果しか望めない。
ヴィクトルはすぐに逃走を開始した。
省7
185: ラウテ ◆uUre4dQFyk 2015/12/28(月)20:03 0 AAS
ラウテたちが捜索としてまず辿り着いたのは『砂漠の海亀亭』という比較的大きな飲食店だった。
オメルタの息のかかった店だという噂もあり、とりあえず最も怪しい店だろう。
店内に入店したのはリタリンと一匹の犬のみ。ラウテと二匹の犬は店の裏手で待機していた。
ラウテはその手に魔笛を握り締め、入店した犬とリンクを繋いでいた。
視力も低く色彩も曖昧な犬の視点はあまり役に立たないが、その分匂いとして膨大な情報が流れてくる。
昼食の時間にはまだ早く、店内は比較的空いていたがそれなりに賑わっているようだ。
犬には目的のハーブの匂いは覚えさせている。騒がしい厨房から漂う匂いから識別することは可能だろう。
省31
186: ラウテ ◆uUre4dQFyk 2015/12/28(月)20:09 0 AAS
【>シャビさん】
【参加は構いませんが、今のタイミングだと活躍するのが難しいかも知れません】
【今のターンは言わばボス戦に挑む最中ですから、少々合わせるのが難しいかと】
【うまく話を合わせられそうでしたら良いのですが、空気をしっかりと読む事をお願いします】
187: ◆xAR6oa9/33KJ 2015/12/29(火)05:27 0 AAS
>>179
投下が遅くなってしまった事への焦りから、挨拶を忘れてしまっていた。すまない
よろしく、アンタを歓迎するぜ
今んとこ(これは先の出来事で少しナーバスになっているだけで深い意味はないんだが)アンタの立ち回りはかなり好みだ
同僚として絡みに行くのは俺には少し難易度が高いが、どうか楽しんでくれ
188
(1): シャビ ◆n/2dLlMtSI 2015/12/31(木)12:00 0 AAS
おう
俺だ

シャビ&ボンズのシャビってんだ。

さっきローブの女に相棒を殺られた。
しかも薬屋の殺人犯に仕立てられたってもんだ。たまったもんじゃねえ。

海亀亭に着いたぜ。つってもだいぶ離れた場所で様子見してるんだけどな。
と、ローブの女が動いた、ってか消えた。物凄い速さだぜ。
省25
189: リタリン ◆77DMiRtfME 2015/12/31(木)19:55 0 AAS
オメルタ傘下の乙種冒険者『鋭鋒』は随所から火の手の上がる街を駆けずり回っていた。
これだけ走り回って額に汗の一つもかいていないのは日頃の鍛錬の賜物であるが、
額の下の双眸は、怪訝と驚きと釈然としなさ、多種の感情によって複雑に歪んでいた。

やっとその実力を見ることができると期待していた甲種『地走』。
しかし彼女は最初に訪れた薬屋の安否を一人で確認した後、鋭鋒を置いて疾走していってしまった。
向かう先は先ほど高所から弓を降らせてきた狙撃手だ。居所が知れれば近づいて殴りに行くのはまあわかる。
しかし地走のサポート、言ってみればお目付け兼小間使いとしてつけられた鋭鋒は、地走から目を離すわけにはいかないのだ。
省35
190: リタリン ◆77DMiRtfME 2015/12/31(木)19:56 0 AAS
時は少し遡り、まだ無事な『海亀亭』のテーブルの一角。
リタリンはいつものローブを着て給仕の到着を待っていた。
隣にはラウテから借り受けた犬が行儀よく座っていて、撫でようとしたリタリンの左手をべろべろと舐める。
これまで犬と言えばスラムで人の吐瀉物を貪るギラついた眼の汚い野良犬ぐらいしか見たことがなかったので、
純粋に好奇心と好意をこちらに抱いてくれる飼い犬とのふれあいは温かいものをリタリンの胸にもたらした。
その犬が、厨房からの匂いを嗅ぎとって、小さくひと吠えした。

「みつけた?」
省36
191: リタリン ◆77DMiRtfME 2015/12/31(木)19:56 0 AAS
「――――ッ!!」

「おい大丈夫か!?」

鋭鋒はリタリンと、その後ろで倒れる店主を見て気付けのように叫んだ。
燃え盛る床面を震脚めいた踏み込みでかき消し、何もないかのように歩いてくる。
彼は店主の首に指をあてて脈を確かめたあと、その巨体を軽々と担ぎあげた。

「悪い、そこのパンパンの鞄を持ってきてくれ。大事なものみたいだからな」

生きた心地がしなかったリタリンだが、そこでようやく状況を理解した。
省30
192: リタリン ◆77DMiRtfME 2015/12/31(木)19:57 0 AAS
>>188
【ご挨拶が遅れてすみません!すごく好きなスタイルなので是非またご一緒させてください!】
193: ◆xAR6oa9/33KJ 2016/01/03(日)03:59 0 AAS
人混みに紛れ、ヴィクトルは水鏡の魔法を纏う。
どこにでもいるような庶民の姿に変装――同時に手近な通行人の衣服に火を点ける。

結果――大混乱が起こる。
人の波に紛れてヴィクトルは細い路地へと身を隠す。
そして背景へと同化し――跳躍。屋上の縁に指を掛ける。
そのまま上方の様子を伺う。

地走は別の屋上から地を見下ろし、しかし動きあぐねていた。
省31
194: ◆xAR6oa9/33KJ 2016/01/03(日)04:44 0 AAS
『……よう、さっきは災難だったな。だが怪我の功名か、なかなかいい状況になったじゃないか』

風魔法による遠話で魔女と魔笛の少女に声を飛ばす。

『ソイツはここで始末しておきたい。店主の方も、少し気になる事がある。確保したい所だな』

ヴィクトルは地上へ飛び降り、路地を駆け抜け『海亀亭』を目指す。
最後に地走を見た地点から十分に離れてから再度屋上へ。
そして鋭峰を視認出来る位置まで移動、弓に矢を番え――射掛ける。

視界外からの征矢を、鋭峰はいとも容易く――槍すら用いずに素手で弾いた。
省25
195: ラウテ ◆uUre4dQFyk 2016/01/04(月)01:55 0 AAS
>『ごめん、オメルタの手下と接敵したわ。乙種の槍使い、
196: ラウテ ◆uUre4dQFyk 2016/01/04(月)01:57 0 AAS
>『ごめん、オメルタの手下と接敵したわ。乙種の槍使い、"鋭鋒"って男……。
> でもこっちの顔はバレてないから、火事の巻き込まれ被害者と思われてるみたい』

それを聞いてからのラウテの行動は非常に素早かった。
まず、召喚していた犬たちを撤収させ、魔力を回収する。そして、次なる召喚へ移った。
圧縮した高速詠唱のように、速く複雑で奇怪な旋律。それはこれまでのどの召喚よりおぞましいもの。
暫くの『呪文』の後その場に召喚されたのは、巨大な漆黒の不定形生物だった。
以前召喚したスライムに似ていなくもないが、その体からは出鱈目に触手や目玉が生成されては消えている。
省31
197: リタリン ◆77DMiRtfME 2016/01/06(水)23:49 0 AAS
この街で起きた、オメルタ傘下を含む複数の店舗での同時多発火災。
その調査にやってきた雇われの冒険者・鋭鋒は、救助に踏み込んだ店内で店主と共に取り残された1人の女性客と出会う。
彼女の協力を得つつ、火の手の回っていない裏口から脱出したところから今回の物語は始まる――

>「お姉ちゃん! 心配したんだからね! ラウテの心臓がどうにかなりそうだったんだから…」

裏口から出た途端1人の少女が飛び出して、共に脱出した苔色ローブの女性客に抱きついた。
二人はどうやら姉妹で、火災に巻き込まれた姉のもとへ妹が駆けつけたところのようだ。

「あ、ご、ごめんね、心配かけちゃって……」
省38
198: リタリン ◆77DMiRtfME 2016/01/06(水)23:49 0 AAS
(この膠着も奴の段取りだとしたら、ちっとやべえな)

増援を期待できるのは鋭鋒だけではないということだ。
地走の消息のわからぬいま、下手に時間を稼がれて魔女狩りの仲間が駆けつけても面白く無い。
打って出るべきか?しかしこちらに踏み出させる罠の可能性も高い。
一撃で魔女狩りを仕留める自信はあるが、敵の狡猾さにおいては油断は絶対にできない。
伸るか反るか、永遠のようにも思われたにらみ合いは、突如の闖入者によって破られることとなる。
鋭鋒の足元、下の民家から屋根を突き破って巨大な何かが飛び出してきたのだ。
省36
199: ◆xAR6oa9/33KJ 2016/01/10(日)03:33 0 AAS
>「異端審問会が既得権益の保持に必死、って風じゃねえよな。魔女を処刑したいだけなら、秘密裏にやりゃ良かった。
  裏で誰が糸引いてる?本国の軍部か、枢機院か……飯屋焼き払って教会でもおっ立てるつもりかよ」

「俺の目的が知りたいのか?俺は弱い者いじめをする奴が嫌いなのさ。それを金儲けにする奴はもっと嫌いだ」

鋭鋒の問いにヴィクトルが答える。
小馬鹿にするような口調と共に、口元には嘲笑を浮かべながら。
たった今述べた言葉が彼の本心だとは、とても思えないだろう素振りを、彼は意図して行っていた。

その直後だった。
省35
200: ◆xAR6oa9/33KJ 2016/01/10(日)03:38 0 AAS
首元へと迫る幅広の穂先を細剣二本を交差させ受ける。
だが受け止められるほど鋭峰の突きは微温くない。
故に、受け流す。槍の柄の下の潜り込むように踏み込み、穂先を押し上げ、いなした。
そのまま更に一歩前進。右の細剣は槍を制する為に掲げたまま、左の細剣を横に薙ぐ。
狙いは槍を保持する右手の指。

だが剣先が鋭峰に至るよりも早く、ヴィクトルの体に重い衝撃が走り、鋭峰から大きく突き放される。
石突である。穂先を押し上げられた事を利用して、石突を用いた下からの殴打で彼を殴り飛ばしたのだ。
省33
201: ◆xAR6oa9/33KJ 2016/01/10(日)03:46 0 AAS
(思った以上に、かなり出来るな……ここで始末するのは諦めるか。
 店主の確保が完了したら、さっさと撤退して……)

不意に、ヴィクトルの視界外から無数の影が迫る。
目視せずとも感じられる不穏な気配を、細剣の閃きが断ち切った。

『……何のつもりだ?』

ヴィクトルが問う。
脅し付けるような、まさしく拷問者と言った声色だった。
省35
202: ◆xAR6oa9/33KJ 2016/01/10(日)03:47 0 AAS
と、鋭峰の背後で靴底が石材を躙る音。
瞬時に振り返り――細剣を構えるヴィクトルを視認。
だがそれは水鏡による鏡像。

鋭峰は欺瞞を一瞬で看破し――その鏡像を貫いて、細剣の切っ先が彼に襲いかかった。
鏡像の真後ろにヴィクトル自身も潜んでいたのだ。

鋭峰は不意を突かれ、しかし驚異的な反応速度で後方へと飛び退く。
切っ先は――鋭峰の胸部を浅く切り裂いた。
省21
203: ◆xAR6oa9/33KJ 2016/01/10(日)03:52 0 AAS
「――上納している薬は「二種類」か。依存性の強い多幸薬と……命じられるままに製造していたもう一つ。
 堕廃の、どういう類の物なのか、お前なら分かるか?」

ごく一般的な拷問の第一行程が完了するよりも早く、拉致された店主は情報を吐くだろう。
二つ目の薬物の性質は、もし判明させられるなら甲種との戦いにおいて非常に有用な情報となる。

しかし――敵も、地上げ屋も無能の集団ではない。
陥れられれば、対策を取る。

翌日、街の人通りは激減していた。
省11
204: ラウテ ◆uUre4dQFyk 2016/01/11(月)21:28 0 AAS
ショゴスはただひたすらに暴れていた。二人の男のうち片方は、被害が増大する事を懸念しているのを察したからだ。
足場を崩す事で自らの領域を確保し、そこへ誘い込む。あらゆる地形を踏破出来るショゴスならではの作戦だ。
半壊した屋根の上で、時々距離を詰めては御しやすい方の獲物を狙っている。
見たところ二人の男の戦力は拮抗し、こちらにも警戒をしているため手出しが難しい。

最初に狙った男が隙を見せないため、ショゴスは標的をエルフのほうに変えていた。
その巨体から想像出来ないほどの素早さで跳躍し、狙いを定め触手を伸ばす。
しかしエルフを捕まえるはずだった触手は、いとも簡単に「噛み千切られた」。
省20
205: ラウテ ◆uUre4dQFyk 2016/01/11(月)21:29 0 AAS
ラウテたちが潜んでいる西区の廃墟では、縛られた店主が今まさに拷問を受けようとされていた。
召喚させていたショゴスは、空間転移でこちらに呼び戻し現在はここにいる。
ショゴスは腹を空かせているのだ。餌を与える必要がある。
数多居る彼女の召喚獣の中でも、このショゴスだけは異常に食欲旺盛だ。
そして何より厄介なのが、ショゴスが特に好むのは人肉であること。
今までもスラムで何人か攫っては、餌にすることがあったりする。
ショゴスは縛られている店主の脚に、今すぐにでも喰らい付きそうな様子を見せていた。
省22
206: リタリン ◆77DMiRtfME 2016/01/13(水)15:48 0 AAS
濃霧の中、対峙する魔女狩りの動向に鋭鋒は研ぎ澄ました神経を傾けていた。
彼を乙種上位たる実力の礎は、その間合い自在なる槍術の他にもうひとつある。
荒野の民に秘伝として継承される、力の伝導を操る『流し』と呼ばれる武術だ。
もとは敵の攻撃を受け流す技術だったものが何代にもわたって磨き抜かれ洗練を重ねた結果、
炎の熱が鉄鍋に広がるように、波紋が水面を伝わるように、様々な力を伝導させる術へと昇華を果たした。

この技術を極めた鋭鋒にとって、地面や壁は単なる足場や遮蔽物ではない。
鍋底に触れればその向こうの熱源がわかるように、水面の航跡を見れば船の場所がわかるように。
省35
207: リタリン ◆77DMiRtfME 2016/01/13(水)15:49 0 AAS
>「初日はこんなもんだろう。明日も何かしら勝負は仕掛けるが……ひとまず、ご苦労だったな」

鋭鋒との戦闘を早々に切り上げて戻ってきたヴィクトルを、リタリンは半眼で迎え入れた。
ラウテが馬を召喚するまでの間店主の肩を支えながら、恨めしそうに情感をたっぷり込めて言う。

「なんで火をつけるの黙ってたの……」

ヴィクトルは涼しい顔でこれを無視。
煤だらけの濡れ鼠、苔色のローブに本当に苔が生えそうなリタリンはもう黙ってついていくしかない。
そうして彼らは、西区の暫定アジトへと帰投した。
省35
208: リタリン ◆77DMiRtfME 2016/01/13(水)15:51 0 AAS
「その前に、例の鹵獲できた二種類の薬の解析結果が出たわ。
 片方は情報通り、多幸感を増幅させるいわゆる気持ちよくなる薬。使った時の実例はこんな感じ」

リタリンが指さした先では、乙種二人組が縛られたまま壁に身を預けて放心していた。
ラリっている。眼には焦点が合っておらず、膝ががくがくと震えていた。

「うひゃあ、真っ暗なのにお星様が見えるぜぇぇ。パンツ履いたままおしっこするの気持ち良いなあああ。
 ああはああはあは……ああ?なんだこの虫!ああ!虫が!虫が沢山這い上がってくる!これが幻覚症状ってやつか!!」

「まあ虫は普通にこの廃屋に湧いてるやつよ。幻覚見るような中毒にならない程度に量抑えてあるから安心して。
省18
209: リタリン ◆77DMiRtfME 2016/01/13(水)15:51 0 AAS
それだけならただの自殺用の毒に過ぎないが、問題はその効果にある。
常人なら耐え切れない薬の副作用に、『超人』なら耐えてしまう。
尋常ならざる痛みと苦しさ、幻覚などに苛まれながら、それでも薬の効果が切れるまでは死ぬこともできない。
リタリンは頬を滑り落ちてきた冷や汗を舐めた。この薬は強化薬としても出来損ないの役立たずだ。
こんなものを量産して、オメルタは一体なにを企んでいるというのか。
本国相手に戦争でもおっぱじめるつもりなのか。

「これの使用者がオメルタ陣営にいるとしたら、かなり危険だわ。
省17
210: ◆xAR6oa9/33KJ 2016/01/17(日)05:31 0 AAS
>「ヴィクトル、この人本当に何も知らないみたいだけど……もう食べさせて良い?」

「……いや、ステイだ」

ヴィクトルは細剣を「何か」に突きつけて牽制、店主を見る。

「一つ、確認したい。これは決して強制ではないが……もし、俺達がこの街の支配権を得たとして。
 また同じ薬を、今度は俺達の為に作れと言ったら、お前はどうする?」

店主の眼に、希望の光が浮かび上がった。
省29
211: ◆xAR6oa9/33KJ 2016/01/17(日)05:32 0 AAS
彼は生まれながらの奴隷――エルフの気品を持って生まれる事を許されなかった存在。
その事が彼の態度に関係しているのは明白だった。

感傷ではない、ただ自分を奴隷として扱った連中と同類になるのが不快なだけだ。
彼は自分にそう言い聞かせながら、捕虜二人から視線を外した。

>「もうひとつは……これは正直試しで使う気にはなれなかったわ。
 この薬は使用者の魔力、身体能力、五感などを多角的に向上させる、いわゆる戦闘力強化薬。」

魔女が解析した二つ目の薬品の効用を、ヴィクトルは神妙な表情で聞いていた。
省32
212: ◆xAR6oa9/33KJ 2016/01/17(日)05:34 0 AAS
 

そうして、ヴィクトルは西地区から移動を開始する。
哨戒の人数は多いが――「どこにいるかも分からない者」を意識的に探し続けられる者は、少ない。
水鏡の魔法による隠密と風魔法による消音を併用し、表通りを避けて中央区を目指す。
また水鏡の魔法は単に鏡面として使えば周囲の索敵も可能になる。
秘密裏に移動する事は容易だった。

ヴィクトルは監視の薄い屋上へと登り、弓矢を構える。
省32
213: ラウテ ◆uUre4dQFyk 2016/01/18(月)22:00 0 AAS
結局店主は、そのはらわたが食い破られ心臓に牙が届くまで、痛みと恐怖を味わう事となった。
人間って案外死なないものね、とラウテは微笑む。彼女とショゴスは、人の死というものを熟知していた。
最終的に店主の頭まで丸呑みしたショゴスは、満足して床で丸くなる。それを見届けたラウテは、召還を解除した。
操作のほとんど利かないショゴスの召還はなるべく控えたいところだ。扱いどころが難しいのである。

ふと見ると、リタリンとヴィクトルは先ほど手に入れた薬の効果について意見交換を交わしていた。
ラウテは薬にはあまり興味はない。ただ、ある種の薬草は良く売れるため、その種は十分に確保している。
魔力をわずかに消費して種から薬草を育てれば、それを売るだけで十分に元は取れる。
省20
214: ラウテ ◆uUre4dQFyk 2016/01/18(月)22:00 0 AAS
翌朝、まだ明けて日の暗いうちからラウテは動き出した。
徐々に日は明けている。少しだけ肌寒く、乾燥した空気の流れが感じられた。
昨晩のうちに協会に話をつけ、本日から屋敷周辺を哨戒する任務に充てられている。
街中の哨戒で冒険者のほとんどが駆り出されているらしい。大したものだ。
主に大通りに沿って複数の冒険者が配置されているのを確認する事が出来る。
ラウテは協会から借り受けた認識票を首からぶら下げているため、全く問題なく大通りを歩く事が出来た。

目指す屋敷にはすぐにたどり着いた。見通せないほど長い塀と、呆れるほど広い周辺道路がその屋敷の規模を物語っている。
省19
215: リタリン ◆77DMiRtfME 2016/01/21(木)05:05 0 AAS
>「…障害物がなければ百メートル程度。今回は建物内だから、その半分が限界だと思うわ」

リタリンの問いに、ラウテはそう答えた。
音楽魔法は音を媒介にする為、遮蔽物の影響を受けやすい。
処刑台での戦闘では開けた広場への召喚だったから距離をとれたが、今回はそうもいかないだろう。
ピンポイントでショゴスを落とすには、やはり現地で内側から召喚する必要がある。

>「ショゴスは撹乱にしか使えないし、私にもほとんど操作が出来ないこと、覚えておいてね」

「ほとんど無差別破壊だったものね……」
省33
216: リタリン ◆77DMiRtfME 2016/01/21(木)05:06 0 AAS
――――――

「始まったみたいね」

オメルタの屋敷からの索敵範囲外に確保したセーフハウスに、三人のうちリタリンだけが留まっていた。
ここは街の外縁から中央に来た低所得者が逗留するための安宿で、サービスが劣悪な代わりに干渉もない。
当然オメルタ傘下ではない場所を選んでいる。出納帳がないので前払いになるが、記録に残らない為足もつきにくい。

リタリンのように戦闘力の維持に多くの補給物資が必要な魔法使いは、こうした拠点の確保も重要な仕事だ。
西区の本拠点から夜間の間にラウテに頼んで必要な道具の一式を亜空間輸送してもらっておいた。
省30
217: リタリン ◆77DMiRtfME 2016/01/21(木)05:06 0 AAS
リタリンが召喚可能な使い魔の中で指折りの戦闘能力を持つ異貌の怪人『バントライン』。
戦斧よる白兵戦で黒狼を上回るほか、頭部の散弾砲による至近砲撃は対人戦闘で無類の凶悪さを発揮する。
そして何より特筆すべきは、この使い魔は5体で一個分隊を組んでの運用が可能という点だ。
その分消費魔力も従軍魔導師が小隊規模で必要になるレベルだが、今回に限っては使い捨ての『予備』がある。
魔力を無理やり吸い取られた華翼と氷城は汗だくになりながら肩で息をしている。気絶しないだけ大したものだ。

「さあ、行きましょうか」

計5体のバントラインを従えて――と言っても最後尾だが――リタリンは進軍を始めた。
省31
218: リタリン ◆77DMiRtfME 2016/01/21(木)05:07 0 AAS
屋敷は混乱の渦中にあった。昨日からちょっかいかけてきている魔女狩りがついに屋敷に火を放った。
そこまでは想定内であり、鎮火もスムーズに行ったのだが……のっぴきならない事態が起きた。
突如屋敷の中央に出現した化物が、周囲を破壊し冒険者達を捕食し始めたのだ。
どれだけ攻撃を加えても即時に再生し、反撃は瞬く間に敵対者の命を奪った。

「報告!例の化物は止まらず、屋敷を南方向に食い荒らしながら移動しています!!」

オメルタ子飼いの乙種冒険者・鋭鋒は詰め所に飛び込んできた丙種の報告を脂汗混じりに聞いた。
彼はオメルタより冒険者達の実質的な指揮官を任じられており、指示の必要があった。
省32
219
(1): ◆xAR6oa9/33KJ 2016/01/24(日)01:03 0 AAS
連絡が遅れてしまってすまない
実は先日からインフルエンザで寝込んでいた為、レスを殆ど書けていない
順番は従来通りで構わないんだが、少しばかり……具体的にどれほどという指定はないんだが、時間をもらいたい
220: ◆uUre4dQFyk 2016/01/24(日)01:10 0 AAS
>>219
承知しました、お大事になさってください。
目安として一週間程度、停滞させましょう。
221: リタリン 2016/01/24(日)01:40 0 AAS
異論なしです
222: 2016/01/24(日)01:50 0 AAS
一週間はいらないだろ
熱が下がれば待機期間、逆にレスを書く絶好の機会が訪れる
普通に仕事してる人間なら、だが
223: 2016/01/24(日)10:52 0 AAS
参加者でもない奴が口出すなカス
1-
あと 50 レスあります
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