[過去ログ] 【剣も魔法も】ヘヴィファンタジーTRPGスレ【重厚】 [転載禁止]©2ch.net (273レス)
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173: 地走 ◆0wOjk6u1BM 2015/12/23(水)19:16 0 AAS
街への一歩を踏み出した時、周囲で声が上がった。
火事だ!火事があったようだ!!魔女狩りの仕業だ!

振り返ると、既に屋敷にも通報が行われているようで、街の警護が門番と何やら話している。
「鋭鋒、念のため屋敷に行って、放火魔を始末する冒険者を手配しておいて」

何で俺が、という顔をする鋭鋒も、ちょっと不機嫌そうな顔をするとすぐに動いてくれた。
結構可愛いところあるじゃない。こういう男は嫌いじゃない。
それに、悔しいことに、私よりも下手な腕利きの乙種が話した方が門番はずっと話を聞く。
悲しいことに私は籠の中の鳥。所詮は世間知らずという目で見られている。

「ありがと。後で一緒にお茶しましょ。奢ってあげる」
いやそんなのは良い、と言う鋭鋒の手を引いて、二人は街の北区画へと向かった。
逃げ惑う人々や野次馬が走り回る街へと突入する。
この格好なら、ちょっとした冒険者の二人組としか思われないだろう。

目的地の薬屋は燃えていた。
たった一人の店主である、初老の男は、私も何度かオメルタ様と一緒に会ったことがある。
ここなら”アレ”が手に入る。
今ここで焼かれる訳にはいかない。崩れ落ちる屋根の木片が店主に当たるのを弾く。
「おじさん、水、私たちも手伝うから」
おじさんの指す方向を見ると、すっかり枯れた防火用水が見える。普段から井戸を使って補充していなかったようだ。
「これだけあれば、いけるわ」

「はぁっ…」
桶に4分の1も溜まらないほどの深さの水だったが、私はそれを素早く掬い、最大限の力で屋根の上に放った。
水は薬屋の狭い店舗を取り囲むようにして残る。手伝う鋭鋒もそれには驚いている。
格闘技と時空魔法の応用。放たれた水は水龍となり、炎へと縦横無尽に襲い掛かる。
他の二人の力もあって、あっという間に火は消し止められた。

鋭鋒は「何でこんなに必死なのか」という顔をしているけれど、気にしないことにした。
隠れていた火事場泥棒が逃げ出すのが見えた。目標はここだったみたい。
ほんのコンマ秒のこと、私は毒針を取り出すと、そいつの急所を狙い仕留めた。

ありがとう、と例を言ったり、その男とは付き合ってるのかを聞くおじさんの話は、
私の耳には殆ど聞こえていなかったと思う。
「ねえおじさん、”ロクム・イシュテ”はどこにあるの?」
”ロクム・イシュテ”とはアレの隠語。鋭鋒は勿論、お菓子のことだと思って首を傾げる。

鋭鋒を置き、私は案内されて薬屋の奥に向かった。
アレの束がおじさんの手から取り出された。全財産?結構な量じゃない。
私は無言で、おじさんの首の骨を砕くと、死んだのを確認して、全部を懐に入れた。
これだけあればどれぐらい持つかな?
倒れている火事場泥棒を片手で担ぎ、毒針を抜くとナイフを持たせておじさんの胸に刺した格好にする。

「うん、大丈夫、行きましょ。おじさんから薬草、もらっちゃった。
元気だから、後は大丈夫だって」
有無を言わせない目で、次の目的地である『砂漠の海亀亭』に向かう。

その建物も消化が行われていたが、まだ火の手が残っていた。
あそこはオメルタ様と一緒に料理を食べた思い出がある。できれば潰れないでほしい。

鐘塔のある方向が騒がしくなっている。放火魔が追いたてられているのかな?
もし”魔女狩り”だったら、ついでに可愛がってあげよう。
私はロクムを噛みながら、舌舐めずりをした。
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