[過去ログ] 【防衛】要塞を守りきれ!ファンタジーTRPGスレ4 [無断転載禁止]©2ch.net (343レス)
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204: 2017/01/22(日)00:30 ID:ZcG26nzO(5/9) AAS
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205: 2017/01/22(日)00:30 ID:ZcG26nzO(6/9) AAS
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211
(1): ◆ELFzN7l8oo 2017/01/22(日)07:43 ID:SnQiipyl(1) AAS
【連絡です。万一の時は以前使っていた避難所を間借りしたいと思いますが宜しいでしょうか?】
212: 2017/01/23(月)04:21 ID:Da/h/JH4(1) AAS
良いのではないでしょうか
213: ワイズマン ◆YXzbg2XOTI 2017/01/23(月)18:04 ID:wdZMwlkz(1/3) AAS
突如として起こった、地下研究棟を――否、ベスマ要塞そのものを揺るがす鳴動に、ワイズマンは僅かに眉間に皺を寄せた。
凄まじいばかりの魔気を感じる。……が、それは目の前にいるかつての友、ミアプラキドスから感じるものではない。
地下だ。地の底と言ってもいいこの地下研究棟のさらに下、さらなる深淵より。
膨大な魔力が間欠泉のように噴き出しているのを感じる。
その正体が何なのか、今さら考えるまでもない。

「リュシフェール!……ミアプラキドス、君の狙いはこれか……!」

こと、愛する『姫』イルマに関わる物事に対しては、冷静さを欠くのがワイズマン唯一の弱点である。
省38
214: 黒狼戦姫フェリリル ◆khcIo66jeE 2017/01/23(月)18:06 ID:wdZMwlkz(2/3) AAS
「……なんだ、この魔気の増大は……?」

不意に大気を満たし始めた夥しい魔気に、フェリリルは束の間攻撃の手を休めて空を仰いだ。
多数の魔族が入り乱れて戦う戦場だ、これまでもずっと魔気を感じてはいたが、これほどの力を感知したのは初めてである。
生粋の魔であるフェリリルをして、怖気を揮うような濃厚な魔気。これは、まさか――

「魔王が目覚めようとしておるのよ」

依然玉座に座ったままの尊大な様子で、ボリガンが嗤う。
フェリリルはボリガンの顔を見た。
省29
215
(1): ◆khcIo66jeE 2017/01/23(月)22:56 ID:wdZMwlkz(3/3) AAS
>>211
【避難所を使うのは構いませんが、場所がわかりません……】
216: ◆ELFzN7l8oo 2017/01/26(木)15:02 ID:pJBMDmB5(1/7) AAS
真上に輝く太陽が西へと動き、ステンドグラス越しにオレンジ色の光が差し込む――その頃合い。

ルーン王城の煌びやかなる謁見の間を支配していた静寂を何かが破った。
王座に座すベアル・ゼブルが見下ろすその先には、床一面に描かれた五芒星散る魔法陣。
その中央より出現したのは――ベアル・ゼブルそのものかと見紛う一体の黒き魔物。

「こんな時に……自分の具現体にでくわすなんて、なあ」

もと天使が自嘲気味に呟く。出現した「自身」の姿に、スイっと目を細めつつ。
「ホッホッ! モウ終わりニせぬカ? 黒き『天使』ドノ?」
省18
217: 無影将軍ミアプラキドス ◆ELFzN7l8oo 2017/01/26(木)15:20 ID:pJBMDmB5(2/7) AAS
>愚かな……、こんなことをして、一体どうなるか分かっているのか!?

賢者の声音は差し迫っていた。魔道衣の放つ魔気が、魔王の魔気と共鳴し歓喜の呻きを漏らす。
≪我が王の復活、成就せり≫
魔道衣が嗤う。
≪其は王の糧となれ。その命と力を総て捧げん≫
魔王の手により生み出された魔道衣は魔王の意思そのもの。我が身を喰らう魔王の気。ギチギチと音を立て浸食する凄まじい気。
魔法の義手が熱く唸り、左の肩を焼いていく。
省39
218: シャドウ ◆ELFzN7l8oo 2017/01/26(木)15:35 ID:pJBMDmB5(3/7) AAS
胸騒ぎがした。自身の鼓動がやおら耳に届く。焦燥の汗が手の平を湿らす。まさか父は、地下へ――

「シャドウ殿!」

突如向けられたエミルの声。気付けばあの虚無球が恐るべき早さでこちらに迫っていた。
高さ3フィート、1時の方角より一体、もう一体は同じ高さで7時。慌てて身を伏せる。
目標を失った球が互いにぶつかり合う……
かと思いきや、すんでの所で一方が右に逸れ、まるで互いの重力に惹かれあうようにグルリと回りつつ離れた。
どうもこの球、相当の突発的判断が可能。見た目は地味だがやっかいな相手だ。
省37
219: エレンディエラ=アシュタロテ ◆ELFzN7l8oo 2017/01/26(木)15:50 ID:pJBMDmB5(4/7) AAS
アルカナン王城の主塔や城壁上に佇んでいた五体の竜が、一斉に高らかな雄叫びをあげた。
ベルゼの滅びを感じ取ったのだろう。それを端緒とし、真の天使が復活する時や近し。

園庭の薔薇が枯れていく。廊下を行き交う侍従達が瞬時に崩れ、灰と化していく。
新たな喜びに打ち震える城主の気にあてられたか。
「賢者の回廊もいまはこんなかしら?」
見る間に色を失っていく城内の通廊。賢者の回廊に規模は及ばぬものの、その豪奢な造りはそれを思わせるに充分だった。
壁に生けてある白薔薇が赤く変色し、ドロリを溶け……煙と化す。
省28
220: ルーク ◆ELFzN7l8oo 2017/01/26(木)15:53 ID:pJBMDmB5(5/7) AAS
「まさか母さんをお姫様だっこする日が来るなんてね!」

魔法の明かりなんか必要ないほど、びっしり生えてるヒカリゴケ。
長い廊下の――硬い石床を踏みしめる音が何度もエコーみたいに返ってくる、そんな中。
俺が笑いながら言った言葉に、母さんがそっぽを向いた。
「大丈夫大丈夫って言いながら、フラフラしてぜんぜん歩けないんだもの。それとも……おんぶの方が良かった?」
「莫迦言うな! もういいから離せ!」
俺の手をムリヤリ振りほどいた母さんが、ペタンと尻もちをついた。……ってほら、ダメじゃん。
省43
221: ルーク ◆ELFzN7l8oo 2017/01/26(木)16:03 ID:pJBMDmB5(6/7) AAS
「母さん! しっかりして!」
必死に母さんの肩を揺すってみたけど、起きる気配が無い。何だか変だ。ぐったりして……これ、ただの気絶じゃないような。
母さんと俺の周りを鳴きながら走り回っていたロキが、キュンキュン鳴いて耳を後ろに伏せたその時だった。

――――――――――ドクン!!!!!!!!!!!!!

あまりの衝撃に、俺は自分の胸を押さえ込んだ。胸――心臓を誰かにグイ!っと掴まれた、そんな感じだった。
「……くっ!!」
息も出来ず、自分の身体をくの字に曲げる。
省34
222
(1): ◆ELFzN7l8oo 2017/01/26(木)16:03 ID:pJBMDmB5(7/7) AAS
>215
【避難所は例のあの場所です。以前シャドウと賢者が互いの感情をぶつけ合った……あそこですって】

したらばスレ:internet_9925
223: 2017/01/27(金)21:23 ID:kxZkjfAy(1) AAS
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224: 2017/01/27(金)21:25 ID:XCLN7AcS(1/16) AAS
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225: 2017/01/27(金)21:25 ID:XCLN7AcS(2/16) AAS
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229: 2017/01/27(金)21:28 ID:XCLN7AcS(6/16) AAS
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230: 2017/01/27(金)21:29 ID:XCLN7AcS(7/16) AAS
ume
231: 2017/01/27(金)21:31 ID:XCLN7AcS(8/16) AAS
産め
232: 2017/01/27(金)21:32 ID:XCLN7AcS(9/16) AAS
生め
233: 2017/01/27(金)21:32 ID:XCLN7AcS(10/16) AAS
熱め
234: 2017/01/27(金)21:33 ID:XCLN7AcS(11/16) AAS
倦め
235: 2017/01/27(金)21:35 ID:XCLN7AcS(12/16) AAS
績め
236: 2017/01/27(金)21:36 ID:XCLN7AcS(13/16) AAS
膿め
237: 2017/01/27(金)21:37 ID:XCLN7AcS(14/16) AAS

238: 2017/01/27(金)21:43 ID:XCLN7AcS(15/16) AAS
梅酒
239: 2017/01/27(金)21:43 ID:XCLN7AcS(16/16) AAS
右馬
240: [age] 2017/01/27(金)21:44 ID:Yof0Zxe+(1/3) AAS
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241: [age] 2017/01/27(金)21:45 ID:Yof0Zxe+(2/3) AAS
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242: [age] 2017/01/27(金)21:45 ID:Yof0Zxe+(3/3) AAS
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243: 2017/01/29(日)00:17 ID:oyk2+B//(1/3) AAS
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244: 2017/01/29(日)00:18 ID:oyk2+B//(2/3) AAS
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245: 2017/01/29(日)00:19 ID:oyk2+B//(3/3) AAS
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246: [age] 2017/01/29(日)00:24 ID:Y8T0lHKN(1/2) AAS
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247: [age] 2017/01/29(日)00:24 ID:Y8T0lHKN(2/2) AAS
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248: ◆khcIo66jeE 2017/01/30(月)20:13 ID:UK0KYOzT(1) AAS
>>222
【了解です。なお続きは当方やや多忙につき2月1日ないし2日の予定です、少々お待ち願えますか?】
249: ◆ELFzN7l8oo 2017/01/31(火)05:55 ID:lApGF2nV(1) AAS
【了解しました。どうかご自愛を!】
250: ワイズマン ◆YXzbg2XOTI 2017/02/01(水)20:39 ID:+FntxFM0(1/2) AAS
「ぐ、く……!やはり、無理か……!」

激しく輝く魔法陣の中央で、ワイズマンは苦悶に呻いた。
魔王の封印は特別なものであり、それを維持するには特別な儀式が不可欠である。
そして、かつてワイズマンはミアプラキドスやビショップの先祖らとそれを執り行った。
いかに膨大な知識と魔力を持つ賢者とは言え、魔王の再封印を独力で成し遂げることはできない。
単独で開封に抗うなど、焼け石に水。まもなく封印は解かれ、魔王はその真の姿を地上に顕現させるであろう――
そう、思ったが。
省30
251: 黒狼戦姫フェリリル ◆khcIo66jeE 2017/02/01(水)20:47 ID:+FntxFM0(2/2) AAS
跳躍すると同時、シャドウがボリガンへと攻撃を繰り出したのが見えた。

「義父上!?」

>こんな場でまごまごしてなど居られぬぞ!
>手早く片づけ、一刻も早く賢者のもとへ!!

そう言いながら、シャドウがボリガンへ鞭を振るう。鞭から土埃と水飛沫が放たれ、豚の帝王の視界を覆う。

「ぬ、ぅ……!?」
省30
252
(1): ◆ELFzN7l8oo 2017/02/02(木)05:56 ID:K96yCLXd(1) AAS
【確認ですが、リヒトのターンはありませんか? ライアンが倒れている周囲の状況を動かしたいのですが……】
253: 2017/02/02(木)21:56 ID:s+1P1r0S(1) AAS
いじめ揉み消しの実態

外部リンク[html]:blogs.yahoo.co.jp
254: ◆khcIo66jeE 2017/02/04(土)02:46 ID:G44Yv/tD(1) AAS
>>252
【予想外のご質問にだいぶ色々考えましたが、何をやっても蛇足になるので申し訳ありませんが
先に進めてください】
255
(1): ◆ELFzN7l8oo 2017/02/04(土)08:25 ID:xCCzL3VG(1) AAS
【困らせてしまいすみません。どうしても彼に活躍して欲しい一ファンの我侭と思いお聞き逃しください】
【投下は明日にでも】
256: 皇竜将軍リヒト ◆khcIo66jeE 2017/02/04(土)12:05 ID:VmVLxqYA(1/2) AAS
戦火の坩堝となった城塞の中で、リヒトは絶息したライアンの亡骸を凝然と見つめていた。

『所詮私は根なし草だ。勇者か主君かなど選ぶ権利など無い』
『しかし、今一度生まれ変わることが出来たなら――人として生まれ、人として生きたい』

死の間際、ライアンはそう言った。
ベアル・ゼブルの末裔として生まれ、復活した君主のために暗躍した。幾度となく勇者を、ルークを欺いた。
しかし。
彼がルークに対し告げてきた偽悪的な物言いは、果たして本心だったのか?
省35
257: ◆khcIo66jeE 2017/02/04(土)12:06 ID:VmVLxqYA(2/2) AAS
>>255
【蛇足ですが投下させて頂きました。おだてには弱いですw】
258: ◆ELFzN7l8oo 2017/02/05(日)06:34 ID:Fu3mSFWm(1/7) AAS
【リヒト投下ありがとうございます! 言ってみるもんですね!】
259: ライアン ◆ELFzN7l8oo 2017/02/05(日)06:38 ID:Fu3mSFWm(2/7) AAS
眼をあけた時、青かったはずの空は夕闇に呑まれていた。

静かだった。いや――静かすぎる。

「おいあんた!!」
自分を見下ろし何事か叫んでいる男は――リヒトではない。かつて帝国軍を退けたベスマ要塞三勇士の一人。
「……人形使いの……男……か」
自身の声を出しつつ、妙な違和感を覚える。その振動は感じるが、声が耳に届かないのだ。
「てっきり死んじまったかと思ったぜ。あの魔将のすげぇことと言っちゃあ、そりゃあもう……」
省38
260: ルーク ◆ELFzN7l8oo 2017/02/05(日)06:38 ID:Fu3mSFWm(3/7) AAS
落ちる感覚がフワリと無くなった。上も下も、右も左も。何処までも続く赤くて黒い渦巻き。

≪ようやく来たね。僕のもとへ≫

若い男の人の声。この声……何処かで……

≪待ってたよ。君が来るのを。二千年も前から、ずっとね≫

二千年前? つまり、魔王が封印された……その時あたりからってことだ。待つにもほどがあるって言うか……
それにその声、誰かに似てる。父さん? ルカイン? いや……俺……自身の……
省11
261: シャドウ ◆ELFzN7l8oo 2017/02/05(日)06:41 ID:Fu3mSFWm(4/7) AAS
陽が翳る。

鳴動する地。鞭が起こす風にて発生したつむじの風が一巻き、砂塵を撒き散らしつつ消える。
西の空高く浮かぶ宵の明星が、じっとこちらを見つめている。瞬かず。煌々と。

「リュシフェール復活の時や近し、か」
以前に父は言っていた。いつの日か魔王を完全に目覚めさせ、打倒する日が来ようと。
あれは水鏡の予言だったのか。はたまた父本人の願望であったのか。

恐ろしいほどに静まり返った城壁が、黒々と聳え立つさまが異様に思えた。壁面や地面に数多の白い花弁がへばりついている。
省30
262: シャドウ ◆ELFzN7l8oo 2017/02/05(日)06:42 ID:Fu3mSFWm(5/7) AAS
治癒の過程は複雑だ。
創傷部周辺の止血過程もさることながら、欠損部を肉芽細胞で埋め、各器官に応じた細胞への分化を誘発させるその過程、
その際に必要な化学物質、神経細胞の再構築に至るまで数え上げたらきりがない。
無論、生き物(人間に限らない)の身体の構造や進化の過程をすべて把握することが前提となる――取得困難な魔法のひとつ。
これら一連の想起をひとつでも違えたらどうなるか。
術者が戦慄する結果となった例は数知れず。国によっては高位の神官以外の使用を禁じているほどなのだ。

そう。ボリガンに対する治癒の想起は、過程のひとつをオーバーロードさせている。
省15
263: ルーク ◆ELFzN7l8oo 2017/02/05(日)06:45 ID:Fu3mSFWm(6/7) AAS
魔王として封印!? どういうこと!?

青年が首をかしげる。
≪……聞いてないんだ。魔王の封印には『賢者の石』が要るって≫
いや、知ってるよ。封印には五つの石が必要ってことくらい。
≪なんだ。やっぱり分かってないじゃない。……あ、そっか。みんなが君に話すはずない……か≫

ああもう! さっきからもったいぶり過ぎ!! だいたい何!!? 『賢者の石』ってなんなのさ!!

――――――――――――――――――ドクン!!!!!!!!
省34
264: ルーク(赤眼) ◆ELFzN7l8oo 2017/02/05(日)06:45 ID:Fu3mSFWm(7/7) AAS
気づいたら俺は、賢者と長老が立つ地下研究棟の中に居た。
265: 黒狼戦姫フェリリル ◆khcIo66jeE 2017/02/07(火)18:51 ID:EqFQNsY1(1/4) AAS
「そなたら下賤がこのオークの帝王!ボリガンに弓引こうなどと考える――その僭越、罪深さを、たっぷり教えてくれよう!」

ゴガァッ!!

ボリガンが怒号と共に黒髑髏(チェルノタ・チェーリプ)を振りかざし、フェリリルめがけて叩きつけようとする。
身軽に後方へ跳躍し、フェリリルはそれを易々と回避してみせる。黒髑髏が激突した地面の土砂が、間欠泉のように爆裂する。
凄まじい膂力に裏打ちされた破壊力。頑丈な肉体を誇るフェリリルとて、直撃を受ければ只では済むまい。
そして、ボリガンは決して単なる力自慢の無能な怪物ではない。総勢数百万、数千万とも言われるオークを統べる、そのカリスマ。
永い時を生きるうちに培われた、戦略と戦術とを縦横に操る叡智。
省36
266: 黒狼戦姫フェリリル ◆khcIo66jeE 2017/02/07(火)18:53 ID:EqFQNsY1(2/4) AAS
「……ぬ?」

ボリガンが怪訝な表情を見せる、その前で、フェリリルは徐にずっと背負ったままだった師剣コンクルシオに手を伸ばした。
一気に抜き放ち、柄を両手で握って真正面に構える。
今までフェリリルは師剣を手に入れたにも拘らず、それを殆ど使うことがなかった。
それはロムルスとレムスを使い慣れているということの他に、もうひとつ理由があった。

迷い。

――わたしは魔族だ。今まで無道な行いもしてきた。魔王の尖兵として、多くの人を殺した。嫌々ではない……喜々として。
省35
267: 黒狼戦姫フェリリル ◆khcIo66jeE 2017/02/07(火)18:55 ID:EqFQNsY1(3/4) AAS
「余を討つだと……。分限に釣り合わぬ放言は身を滅ぼすと、忠告してやったばかりだというのに……」

ボリガンが不快そうに鼻を鳴らす。明らかに格下の相手が口にする大言に、気分を害したらしい。
しかし、フェリリルは斟酌しない。ぐるんと手首のスナップを利かせて一度師剣を回すと、ゆっくり間合いを詰めてゆく。

「わたしは魔王軍として、多くの人々を殺めてきた。武人として恥入る真似をしたとは思わぬが、それでも殺したことには変わりない」
「その罰は、すべてが終わった後でいかようにも受けよう。この命も捧げる――その代わり」
「きさまと魔王だけは!どうでも地獄へ墜ちてもらう!!」

「できるものかよ!!」
省26
268: ワイズマン ◆YXzbg2XOTI 2017/02/07(火)18:59 ID:EqFQNsY1(4/4) AAS
「……勇者……ではないね」

突如として研究棟に現れた青年を見て、ワイズマンは静かに言った。
その姿は紛れもなく勇者のもの。だが、纏っているその雰囲気が勇者とはまるで違う。
……いや、『当代の勇者とは違う』と言うべきだろうか?なぜなら、その気配には覚えがある。
すなわち先代の『正統なる勇者』、アウストラ・ヴィレン・デュセリウムの気配に。

「2000年ぶりか……。しかし、君には眠っていてほしかった。それがこの世界のためには最善の道なのだと、君もわかっていたはずだ」
「……長い眠りのうちに、忘却したかね?」
省25
269: シャドウ ◆ELFzN7l8oo 2017/02/09(木)18:36 ID:MPYt/491(1/3) AAS
>百鬼を討ちます!……父上!

天使を見たと思った。見る者に希望と安らぎを与える――真の天使を。
光を背負う娘。
銀の髪が眩い光に溶け、虹色の輝きだけを光輪の中に躍らせる。

ボリガンはそんな娘の姿に心を打たれはしなかったらしい。
吐き捨てた声音に混じるは忠告に応じぬ娘への憐れみか。鼻音が意味するは諦めか。

>きさまと魔王だけは!どうでも地獄へ墜ちてもらう!!
省37
270: シャドウ ◆ELFzN7l8oo 2017/02/09(木)18:48 ID:MPYt/491(2/3) AAS
エミル達が姿を消したのと、「それ」が咆哮をあげるのと、どちらが先だったろう。

――――ビタン!

かつてボリガンであった赤茶色の肉塊が「動き」を開始した。
手足はすでに無い。いったい何処が目で鼻であったのか、それすらも分からない。
原型を留めるとしたら……何とも妙。肉塊周囲に散らばる――手指の断片のみ。
大きな芋虫に似たそれらにしっかりと嵌められたままの指輪はまさしくボリガンのもの。

ただの物言わぬ肉塊と化す。そう信じていた考えは甘かったのだ。
省30
271: ルーク(赤眼) ◆ELFzN7l8oo 2017/02/09(木)18:53 ID:MPYt/491(3/3) AAS
うーん……!! やっぱ羽根は12枚に限るね……!! この解放感、最高!!

>……勇者……ではないね

聞きなれた声だ。遥か昔に何度も耳にした――懐かしい賢者の声。

>2000年ぶりか……。しかし、君には眠っていてほしかった。それがこの世界のためには最善の道なのだと、君もわかっていたはずだ
>……長い眠りのうちに、忘却したかね?

眠り? 2,000年? あはっ! 僕が……この僕が……眠ってたって?
違うよ。僕は眠ってなんかいない。見ていたよ。ここから。君たちを。この大陸すべてをね。
省39
272: ワイズマン ◆YXzbg2XOTI 2017/02/14(火)18:56 ID:6zWaVgT8(1/2) AAS
>ってね……

自らを魔王と名乗る、ルークの姿をしたアウストラ・ヴィレンの饒舌な言葉を、黙して聞く。
そして2000年前にも聞いた誘いの文言を耳にし、それが終わると、

「……ふ……。ふふふ……、ふははははッはははは……ははは、ははははははは……」

ワイズマンは静かに、しかし心の底から可笑しいと思っているであろうことが容易にわかる調子で、笑い始めた。

「明星の如く輝けるその姿。荘厳な六対の翼に、すべてを圧倒する魔気。まさに、わたしの知るリュシフェールだ」
「この地上に生きる万物を遥かに凌駕する高みに存在する、大神の最高傑作。至高の天使」
省28
273: ワイズマン ◆YXzbg2XOTI 2017/02/14(火)19:01 ID:6zWaVgT8(2/2) AAS
「リュシフェール、そして我が旧き友ミアプラキドス。わたしは、長いこと君たちを欺いていた」

大神の聖紋が描かれた法陣、聖法陣とでも言うべきか――の中で、ワイズマンが告げる。

「と言っても、わたし自身今の今まで忘れていたことだがね……。わたしはわたし自身の記憶を封じていたのだ」
「そして、リュシフェールの復活と共にそれを思い出すよう細工をしていた。自らが何者であるのか」

コツリ、と床を杖で叩く。
いつしか、ワイズマンの身体から噴き出る気が瘴気でなくなっている。
研究棟を埋め尽くす強烈な晧白色の光は、瘴気とはまったく属性を異にするもの。生命の、いやもっと神聖な――。
省20
274: ミアプラキドス ◆ELFzN7l8oo 2017/02/16(木)05:36 ID:+Wcb5Tam(1/3) AAS
「賢者……貴方は……貴方様は……」

神が降臨した。いや、とうの昔から「していた」。
何処からともなく突如現れた稀代の天才魔導師。
人の世を離れ、魔王の封を守ることを選択した数多の霊従えし叡智の源。
生まれい出たその時にはすでに漆黒のローブで身を隠し、人目を避けていたかつての友。

腑に落ちた。
わが身を以て封と成すと宣したは奢りではなく。
省14
275: シャドウ ◆ELFzN7l8oo 2017/02/16(木)05:40 ID:+Wcb5Tam(2/3) AAS
転移の最中(さなか)、光が見えたと思った。
要塞全体を包む至高の光。人はおろか、この世に生を受けたすべての生命を凌駕する恐るべき光。
――焼け焦げた大地が瞬時に黄金の草原(くさはら)に変わったかに見えたが――いったい?
その訳を知るのは少し後になる。

転移先は要塞地下回廊内。
フワリと大理石の床に降り立つ。フェリリルと自分、二人分の影が足元にわだかまる。
普段の光景を知るであろう自分だからこそ感じる異様さだった。
省26
276: シャドウ ◆ELFzN7l8oo 2017/02/16(木)05:41 ID:+Wcb5Tam(3/3) AAS
声高く笑う声が止んだ時、すべてが消滅していた。
美しく設えられた回廊の柱、磨き上げられた大理石の床、魔法の陣散りばめられた研究棟、いやこの要塞そのものが。
真夏の夜の風はこれほど冷たかっただろうか。
満天の星空だった。
巨大な蟻地獄の穴の底でなくば、西に傾く宵の星がいつになく明るく輝くのが見えたかも知れない。

≪ツイニ……ここマデ来タカ≫

蘇った魔王の声が、蟻の地獄穴を震わせた。
277: 黒狼戦姫フェリリル ◆khcIo66jeE 2017/02/17(金)18:23 ID:Wa1bKbiq(1/2) AAS
神とは不遜で、一方的で、理不尽なものである。
一方で、神は地上の者に絶望だけを与えはしない。
神代の時代、幾多の災いが飛び出した箱の底にただひとつ、希望が残されていたように。
神はそれに打ち克てると思った者にしか試練を与えない。
試練とは人々を阻むものではない。人々に乗り越えられるためにあるのだから。

「……これは……いったい……」

シャドウと共に地下研究棟のある回廊へと転移した瞬間、膨大な波動がその場に満ちているのを感じる。
省37
278: 黒狼戦姫フェリリル ◆khcIo66jeE 2017/02/17(金)18:26 ID:Wa1bKbiq(2/2) AAS
この大陸の意思、竜戦士。黄金の波動たる竜気を纏う、『ヒトの姿をしたドラゴン』。
そして――
魔王軍最強と謳われた……今となっては最後の魔将軍、皇竜将軍リヒト。
それが抜き身の竜剣ファフナーを携え、ルークへと駆け寄らんとしたフェリリルの進路を塞ぐように立っている。

フェリリルにとって、リヒトは魔狼の森で共に育った間柄だ。
父リガトスはリヒトを息子と呼び、実子のように扱ったし、自分もそうだった。
エレンと共に、三人は本当に兄妹のように過ごしてきたのだ。
省31
279: ルーク ◆ELFzN7l8oo 2017/02/20(月)06:34 ID:dt2pE+TJ(1/4) AAS
巨大なすり鉢状の穴の底。ひんやりと流れ込む空気に混じる草原の匂い。
澄み切った夜空の星は、いつ降ってきてもおかしくないくらいキラキラ輝く星でいっぱいだ。

――あ! 流れ星! 

消える前に願う。贅沢は言わない。たったひとつだけ。

俺達を囲む……四方にゆるゆる広がる傾斜。何処かで……と思ったら思い出した。闘技場だ。
……あはは! 懐かしいなあ! ほんの数日前のことなのに!
客の居ない闘技場。聖アルカヌスを何十倍もでっかくしたような。
省15
280: ルーク ◆ELFzN7l8oo 2017/02/20(月)06:35 ID:dt2pE+TJ(2/4) AAS
足元が冷たい。胴体も、手足も、髪の毛も凍るくらい。

魔王と同化した俺だから解る。遥か昔。この地に降りた魔王には――身体が無かった。身体はあそこに置いてきたからさ。
降りて……その時思ったんだ。地上はなんて寒いとこだろうって。
ま……あれか。
降り立った衝撃で発生した黒雲のせいで例の氷河期に突入したわけだから、ガチで寒かったのかも知れないけど。
そうだ。この力を、「魔気」をこの地に与えよう。この地に住まう全ての種に潤いを。魔法の力を。
その時の魔王の魔気が、人間を人間以外の何者かに造りかえもした。エルフやドワーフ、オークにゴブリン。
省22
281: シャドウ ◆ELFzN7l8oo 2017/02/20(月)06:36 ID:dt2pE+TJ(3/4) AAS
独白にも似たルークの言葉。その願いに、神が応えたのだろう。
ひと際大きな星がひとつ、ほうき星となって空を流れた。
虹色に輝く彗星、夜空一面を覆うほうきの尾。息を呑んだ。これほど美しく、壮大な光景をかつて見ただろうか。
前方に立ちはだかるリヒトまでもが、天を仰ぎ見入っている。
その彗星の流れる音が次第に高く、大きく――――

刹那、ルークの身体より赤く明滅する黒い魔気が立ち昇った。
グラリとよろめき、地に手をついたルークがそれを見上げる。見る間に形を成す魔王の気塊(きかい)を。
省12
282: シャドウ ◆ELFzN7l8oo 2017/02/20(月)06:36 ID:dt2pE+TJ(4/4) AAS
その場に立つ誰もが動揺と戸惑いの色を隠せずにいる。
当然だ。相対すべきは禍々しき気を持つ魔王であり、神々しく光り輝く天使ではないのだ。

呪文を唱えるべきか否か、しばし悩む。父はと見ると、魔王ではなくリヒトに目を向けている。
リヒト動かずして魔王動かず。そう読んでいるのか。

≪リヒトよ 其はいまだ――『魔将』か≫

魔王が問う。八大魔将が一人、リヒト。その姿がかつてとはまるで異なる故か。
魔王の魔気は消え失せ、肌に届くは竜そのものの気。大地の具現と言われる五の竜すべての結集。
省32
283: 皇竜将軍リヒト ◆khcIo66jeE 2017/02/20(月)22:19 ID:fECy1U8u(1/3) AAS
父親が、三人いる。

一人は元無影将軍ベテルギウス。
赤子であった自分を見出し、前皇竜将軍ドレイクの亡骸から長年かけてサイフォンのように抽出した竜気と――
魔王の羽根から抽出した魔気とを融合させ、身に付けさせた『生みの親』。

一人は魔王リュシフェール。
言わずと知れた、リヒトの魔気の源。万物万象の王たる『尊崇すべき親』。

一人は元覇狼将軍リガトス。
省29
284: 皇竜将軍リヒト ◆khcIo66jeE 2017/02/20(月)22:22 ID:fECy1U8u(2/3) AAS
しかし、かりそめの復活を果たした魔王の精神体に謁見した瞬間、長年抱いていた疑問は氷解した。

――そうか。

魔王が何を望んでいるのか。何を求めているのか。
真の願いとは、いったい何か――。

それを理解したリヒトは九曜のメダイを下賜され、正式に皇竜将軍を継ぐと同時に行動を開始した。
魔王の命令通りに、その真の力を解放するために。完全体としての復活を促すために。
すべては魔王の望みを叶えるため。魔王の欲するものを与えるため。
省35
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