[過去ログ] 【防衛】要塞を守りきれ!ファンタジーTRPGスレ4 [無断転載禁止]©2ch.net (343レス)
1-

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
次スレ検索 歴削→次スレ 栞削→次スレ 過去ログメニュー
216: ◆ELFzN7l8oo 2017/01/26(木)15:02 ID:pJBMDmB5(1/7) AAS
真上に輝く太陽が西へと動き、ステンドグラス越しにオレンジ色の光が差し込む――その頃合い。

ルーン王城の煌びやかなる謁見の間を支配していた静寂を何かが破った。
王座に座すベアル・ゼブルが見下ろすその先には、床一面に描かれた五芒星散る魔法陣。
その中央より出現したのは――ベアル・ゼブルそのものかと見紛う一体の黒き魔物。

「こんな時に……自分の具現体にでくわすなんて、なあ」

もと天使が自嘲気味に呟く。出現した「自身」の姿に、スイっと目を細めつつ。
「ホッホッ! モウ終わりニせぬカ? 黒き『天使』ドノ?」
見かけに合わぬ陽気な老人の声が、高い天井に木霊する。

「ドゥガーチのクソ爺ィ。まだあの玉ァ持ってやがったか」
億劫そうに立ち上がるベアル・ゼブルの片翼が、ズルリと垂れ下がり地に落ちた。翼は朱の光を照り返しつつ……床に溶け消える。
「命乞いなんかしねぇよ。この身体も限界だしな。あん時エレンに邪魔されなきゃぁ……勇者の心臓で一発逆転出来たんだが」
ポリポリと頭を掻き、どこかとぼけた口調で。
「まさかてめぇが……俺の為に人間どもの『気』を集めてくれるとも思えねぇしな」

ヒタリと踏み出す「もと貴族」の魔物の前に、エスメラインが両手を広げ立ち塞がった。
「やめとけ。おめぇ……まだ若ぇじゃねぇか。今のうちにアルカナンに帰んな。『娘』が待ってんぜ?」
「しかし陛下――」
「おめぇとあの娘が……俺の血を引く唯一の人間になっちまった……」
ポツリと呟き、歩を段下に進めつつ。
「俺は滅ぶがおめぇらは残る。リュシフェールと違って俺は血を残せるんだ。それも『勝利』の形のひとつだ。違ぇねぇ」
口を閉ざしたエスメラインが楚々と身を引き、魔法陣の外にて膝をついた。

向かい合う二体の魔物。
どちらも口を開かず。
「十二分に生きた」とも「悔いはない」とも言わず。
只どちらともなくゴフリと嗤い、そして――――

両者を囲む巨大な魔法陣、その複雑なる紋様を、黒い鮮血が隈なく満たした。
1-
あと 127 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル

ぬこの手 ぬこTOP 0.005s