[過去ログ] 【防衛】要塞を守りきれ!ファンタジーTRPGスレ4 [無断転載禁止]©2ch.net (343レス)
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220: ルーク ◆ELFzN7l8oo 2017/01/26(木)15:53 ID:pJBMDmB5(5/7) AAS
「まさか母さんをお姫様だっこする日が来るなんてね!」

魔法の明かりなんか必要ないほど、びっしり生えてるヒカリゴケ。
長い廊下の――硬い石床を踏みしめる音が何度もエコーみたいに返ってくる、そんな中。
俺が笑いながら言った言葉に、母さんがそっぽを向いた。
「大丈夫大丈夫って言いながら、フラフラしてぜんぜん歩けないんだもの。それとも……おんぶの方が良かった?」
「莫迦言うな! もういいから離せ!」
俺の手をムリヤリ振りほどいた母さんが、ペタンと尻もちをついた。……ってほら、ダメじゃん。
笑いながら母さんを見下ろす。まあ戦況が気になるっちゃなるけど、とりあえず母さんを安全なとこに連れてかなくちゃ。

いやいや、母さん第一とか、母さん居ないと寂しいとか、そんなんじゃないから。
母さんは勇者の血筋。魔王に献上しようとして勇者の心臓狙う魔族がウヨウヨしてる。だからだから。
「にしても母さんって、思ったより軽いんだね」
「そんな事ない。お前が大きくなったんだ」
なんて他愛も無い会話しながら、例の地下へと続く賢者の扉を目指して歩くうちに、扉の絵が描いてある壁に突き当たった。

そう。ここが地下へと続く賢者の扉。ちっちゃい頃は良くここに遊びに来たんだ。扉の絵は俺が描いた。悪戯でね。
見つけるたびに父さんが俺を叱った。でも殴りつけたりはしなかった。絵を消したりも。
ま、「絵が描いてあろうがなかろうが扉としての機能は全く変わらない」って言ってたから、大勢に影響は無いって踏んだんだろう。

「ここなら安全だよね? 俺、水と包帯持ってくるから!」
「待て。お前は他にやらねばならぬ事があるだろう」
「……え? でもその怪我じゃしばらく歩けな」
俺は気付いた。母さんが泣いてることに。
「解ってるぞ。私はずっとこの要塞で待っていただけだが、何となく解る」
「え?」
「お前がこの10日間でどんな目に遭ってきたか。辛い事もあった。多くの死もその眼で見た。だろう?」
何故とは聞かなかった。何となく納得したんだ。母親ってそういうもんなんだって。
俺はただ頷いた。
まだ俺の顔をじっと見てる母さんの……辛そうな顔を見るのがどうにも我慢できなくて、だから俺は無理に笑顔を作った。
「でもさ、約束は守ったよ!? 父さんをちゃんと連れて帰るって! 要塞の外で今元気に闘ってる! たぶん!」
俺の言い方が可笑しかったんだろう。母さんが噴き出して笑った。
うん。母さんの父さん――ホンダの祖父ちゃんが死んだこと、今ここで言う必要ないよね? ルカインが殺されたことも。

「でさ。これだけは母さんに言わなきゃって事があるんだけど」
「ん?」
どうしようかな。やっぱ止めようかな。いやいや、これは今言わなきゃ! 俺だって生きて帰れるか解んないし!
俺は一度深〜く息を吸い込んで――吐いた。

「俺、お嫁さん貰ったから」

母さんは俺が思ってたとおりの反応をした。目をでっかく見開いて、怖いくらいの素早さで俺の傍に詰め寄った。
「安心して? とっても可愛くて素直な子で――」
「待て待て待て! 嫁!? 誰だ!? 私の知った娘か!? 名前は!? 父さん――シャドウは何と言ってる!?」
そういや父さん、『矢継ぎ早に問い詰めるのが母さんの必殺』なんて言ってたっけ。
肩を掴んでブンブン揺さぶる母さん。ちょ・そんな激しく揺さぶったら答えられるもんも答えられ――
俺の心の訴えが通じたのか、母さんがハッとした顔して手を離した。
何だかホッとした。父さんみたく冷静すぎる反応も、何か気にかけてもらってないみたいで寂しいもの。

「相手はほら……俺が小さい時、怪我して帰って来たことあったでしょ? 魔狼にやられたって。その娘(こ)だよ」
「……は?」
母さんの眼が点になる。
「名前はフェリリル。正式には黒狼戦姫フェリリル。覇狼将軍とも呼ばれてたっけ。彼女も要塞の外で闘ってる」
母さんは口をパクパクしたまま。
「父さんは知ってるよ。反対もしてないと思う。彼女と仲良く話してても何も言わなかったし、裸で一緒に寝てるとこも――」
「ヴルルルアアァァ……キャンキャンキャン!!!」
眠っていたロキまでが目を覚まして飛び出して――

タイミングいいんだか悪いんだか。俺は白眼むいて卒倒した母さんを急いで介抱しにかかった。
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