[過去ログ] 「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part9 (1002レス)
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978: コドクノオリ「かたわらのあなた」 2013/10/21(月)17:20 ID:k8HVbNy+o(2/5) AAS
 さようならという修実の言葉を、久信は正面から受け止めた。
 喪ってしまうのは怖い。出来ることならば一緒に居たいと言いながら、彼女は離別の言葉を口にしている。
 周囲から言い聞かされていた昔とは違い、今回は自分の意思で発された別れのための言葉であり、
その理由は久信を殺してしまうかもしれない自分に耐え切れないというものだ。
 ……まただ。
 また、弱い者として扱われている。
 自分が修実と比較して弱いということは昌夫からも指摘されていたし、久信自身でも分かっていた。
だが、修実本人にそう指摘されたようなものである今の状況は、意外なほどに久信に衝撃を与えていた。
 久信が弱いせいで、姉弟はお互いの最愛の人と一緒にいることができず、修実の方は自分から孤独の檻の中へと閉じこもってしまう。
省21
979: コドクノオリ「かたわらのあなた」 2013/10/21(月)17:21 ID:k8HVbNy+o(3/5) AAS
 修実はゆっくりと呼吸を整えるように呼吸を繰り返しながら問う。
「何、を……?」
 久信は雨に濡れて垂れてきた修実の髪を掻き上げて、瞳を見つめて言った。
「俺がその毒を食って支配する」
 再び修実の顔に驚きの虚が浮かぶ。
今度は瘴気が漏れ出ないように早々に復帰した修実は、久信になんらかの反応を返そうとして、それよりも早く昌夫が声を荒げた。
「ば――ッ、馬鹿野郎! 方法ってのはそれか?!
 お前、瘴気に中てられただけでぶっ倒れただろうが! 毒の大元を飲んだりなんかしたら死ぬだけだぞ?!」
 久信の背後から重ねられる怒声に、修実が頷く。
省35
980: コドクノオリ「かたわらのあなた」 2013/10/21(月)17:22 ID:k8HVbNy+o(4/5) AAS
「言葉を選んでくれてありがとうね」
 修実がどうしたものかという表情で応じた。
「蛇の性だ。これで終わりにするからもう少しだけ付き合ってくれ」
 久信が臆面もなく言い切る。それを聞いた修実の表情に、ようやく笑みに近い表情が浮かんだ。
「ああもう勝手にやれ」
 渋面で言って、昌夫は山の中の手近な木の下に入った。
「でもな、お前らの監視役として言わせてもらうが、勝手に命投げ捨てんなよ? 特に久、お前だ。
どう転んだって自分は損しないからいいやなんて考えてやがったら切れるぞ」
「お、おう……」
 久信が目を逸らしつつ頷く。
省22
981: コドクノオリ [sage saga] 2013/10/21(月)17:23 ID:k8HVbNy+o(5/5) AAS
死ねるが引っかかったあああああ!
見逃してたな。ちょっとくやしい
ともあれ、そろそろ終わりも近いですね
982: 鳥居を探すの人◆12zUSOBYLQ 2013/10/21(月)22:12 ID:p36usBWAO携(1) AAS
>>969
>こういうの好きだわ
ありがとうございますー

>>970
>金がどうなるか分かってても振り込むばあちゃんにちょっと切なさを感じました
ある意味「偽者かも」と思っててもつい振り込んでしまう被害者の心理と似通っているかも知れません。実は淋しいのかもね。
983: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/23(水)20:24 ID:QUY/3jDAO携(1) AAS
これだと新スレ990越えてからでも大丈夫そうか?
984: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/27(日)01:24 ID:69WSsOAlo(1/7) AAS
ではまあ使い終わったらスレ変えましょうかね
コレ入れて後二回で私のは終わりですし
985: コドクノオリ「壺中天」 2013/10/27(日)01:26 ID:69WSsOAlo(2/7) AAS
 意識が一瞬の暗転から覚めた時、久信は町のど真ん中に立っていた。
「……雨も止んでる……修実姉? 昌夫?」
 近くに居たはずの姉と友人の名を呼んでみるが、二人とも近くには居ないようで、返事の声は来ない。
 ……ああくそ。ってかここどこだよ?
 人造の建造物がほとんどなくなっていた、先程までの場所とは明らかに違う。
大都市とまではいえないが、人が生活するための施設を集めた、地方都市の中心部のような場所であるということが分かる。
 ただ、違和感があるとしたら、これだけ町の施設を集めているにもかかわらず、肝心の人間の気配が周りからは一切しないということ。
そしてもう一つ、景色が、まるでそういう色の霧でも出ているかのように、赤錆色に染まっているということだ。
 赤錆色の町を改めて眺め、久信は首を傾げた。
省21
986: コドクノオリ「壺中天」 2013/10/27(日)01:27 ID:69WSsOAlo(3/7) AAS
 ……これは瘴気か。
 蠱毒の壺の中なのだ。中の空気が瘴気に染まっていてもなんの不思議もない。
 全ての生き物にとって有毒であるはずの空気の中で呼吸していても久信自身に瘴気に中てられている感じがしないのは、
久信が蠱毒の毒気に対する耐性を得たから、というわけではないだろう。久信もそこまで楽観視はしていない。
 ……この空気の中で特に害を感じていないということは、たぶん、俺自身が蠱毒になりかけているってことだろうな。
 修実と向き合い、彼女の体から溢れる瘴気を体に受けたため、肉体はすでに蠱毒に冒されている。
精神のほうも蠱毒の瘴気に飲み込まれしてまうのは時間の問題だ。
「あんまりのんびりしている暇はないな」
 蠱毒に飲み込まれてしまったら、修実と一緒に人の間で暮らすことはできなくなってしまう。
 久信は蛇を生み出して周囲に侍らせる。
省26
987: コドクノオリ「壺中天」 2013/10/27(日)01:28 ID:69WSsOAlo(4/7) AAS
 それに続くような形で、倒した亡者たちが順番に分解されて、同じように空に飛んでいく。
 分解された亡者たちが飛んでいく方向は一定だ。
そこでは建物越しでよく見えないが、どうも赤錆色の空気の色が濃霧のようにより濃くなっているようだ。
 赤錆色の瘴気が濃くなっているということは、それだけ毒気が強く集中しているということでもある。
この町の中、特に行く当てがない久信としては、これは初めて見つけることができた指標だ。
 ……分解された亡者が回収されるように飛んで行ったということは、あの瘴気が集まっている場所は、亡者の巣ないし、この亡者を操るモノが居るはず……。
 そしてそれはイコール蠱毒の本体そのものである可能性が高い。
 それを確認しに行くのは当然危険を伴う行為ではあるが、このままここで止まっていてもやがては蠱毒に飲まれるか、亡者に押し切られるだけだ。
 行けば、少なくとも分解された亡者がその後どのように処理されているのかを確認することができる。
 ……なら、行った方が得だな。
省23
988: コドクノオリ「壺中天」 2013/10/27(日)01:30 ID:69WSsOAlo(5/7) AAS
 包む、と言っても、実際に腕や脚でしっかりと抱え込まれているわけではない。その女性には壺を包み込むための腕や脚が無かったのだ。
 彼女の肩は、仮に彼女に腕がまだあったなら、その腕でしっかりと壺を抱いていただろうと思わせる動きをしていた。
 久信は彼女と壺の位置関係を見て舌打ちする。
「遠くからあの壺を割ってみるってこともできないか」
 物を投げつけるには、女性の位置が拙い。
 直接近づくしか方法はないと腹を括って、久信は近くに寄っていた亡者を蛇で締め上げた。
 亡者の姿は、当初襲って来ていたものからその傾向を若干変化させていた。
 これまでは人間を材料にしているためか、人間の造形から大きく離れた亡者はほとんど現れなかった。
しかし、今久信を襲って来ている亡者は、足をクモのように八本持ち、腕はなく、胴体から頭にかけて無数の目玉を生やした異形だった。
 完全に人の造形を無視しており、これまで通り首を締め上げても首周辺の目玉から涙のように黒い汚物が垂れ流されるだけで、[ピーーー]ことができない。
省30
989: コドクノオリ「壺中天」 2013/10/27(日)01:30 ID:69WSsOAlo(6/7) AAS
「久くん……」
 脚や腕で体を支えることができず、地面に転がる状態になった修実に悪いと思いながらも、手を貸すよりも先に、久信にはやる事があった。
「修実姉、これからこの壺ぶっ壊す。危ないから離れててくれ」
 そう言いながら、久信は壺を修実から遠くへと蹴り飛ばそうと足を思いっきり振りかぶって蹴りをぶつけようとする。
 蹴り脚が壺に激突する瞬間、壺の中から白い腕が飛びだしてきて脚を掴み止めた。
 まとわりついた壺は足が振り抜かれた後もそのまま脚に纏わりついている。
「そんなにがっつかなくてもこっちから行ってやるよ」
 久信は脚にまとわりついている腕に爪を立てて強引に引きはがして、壺本体を自分の手で抱えた。
 壺の中をのぞき込むようにして、壺の奥へと声を張り上げる。
「さあ! ここまで来たぞ! 蠱毒の澱を俺に見せろ!」
省8
990: コドクノオリ 2013/10/27(日)01:31 ID:69WSsOAlo(7/7) AAS
修実は久信の無鉄砲なところにキュンとくるだめんず症候群
そのような感じで、後一話、おつきあいくださいませ
991: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/28(月)17:50 ID:g1tJJBzAO携(1/2) AAS
コドクの人乙ですー
いよいよクライマックスですな
そしてイイ女がだめんずなのはよくあることだ
992
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/28(月)17:51 ID:g1tJJBzAO携(2/2) AAS
コドクの人乙ですー
いよいよクライマックスですな
そしてイイ女がだめんずなのはよくあることだ
993: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/28(月)18:09 ID:GWgB8pC0o(1/8) AAS
>>992
ありがとうございます。
では、最後一話、行かせていただきます
994: コドクノオリ「孤独の檻」 2013/10/28(月)18:10 ID:GWgB8pC0o(2/8) AAS
 自分の体がある、という感覚すら曖昧なまま、久信は粘性の水の中を漂っているような感覚をおぼろげに得ていた。
意識はかろうじて、湧き出した蠱毒の毒によって今のような状態に追い込まれてしまったということを覚えている。
 ……くそ、毒そのものよりも、この纏わりついてくる呪いが邪魔くさい。
 ともすると、ものを考えることすらできなくなりそうな異常な不快感が体にまとわりついて離れない。
 蠱毒は新たに放り込まれた蠱毒の礎を逃さないように、次々と体に腕や蛇が絡みついては爪や牙を突き立てるように久信の中に侵入してくる。
 久信が思っていた以上に、蠱毒の呪詛が強力に久信を侵しているのを感じる。
蠱毒の本質が毒ではなく、呪詛にあるということを身をもって思い知らされる気分で、
自分の意識を蠱毒に塗りつぶされるのを防ぐために、ひたすら思考を回転させる。
 纏わりついてくる腕や蛇は時間が経つごとに増加していき、久信にはもう自分が立っているはずの地面や手に持っているはずの壺の感触すらもなくなってしまった。
省22
995: コドクノオリ「孤独の檻」 2013/10/28(月)18:19 ID:GWgB8pC0o(3/8) AAS
 姉は、結局自分が放り込まれていた組織の中でその手段をほぼ完ぺきに完成させた。
最後には暴走してしまったが、その後も久信のところまで戻ってきてくれた。
 ただ、今はコドクの中で溜まった毒が修実に彼女が望まない力を与えて、その力が彼女を苦しめている。
 現在修実を苦しめているコドクを横合いからかっさらって食いつぶそうとした久信は、情けなくも取り込まれる寸前にまできている。
 いつの間にか手段が目的にすり替わってしまい、身の丈に合わない力を求めることに固執した結果がこれだ。
 一緒に居るために必要な選択は、久信が蠱毒を喰らって強くなることでも、心中をすることでもない。
 ……今思えば、家の両親は修実姉が自分で力を制御できるようになるって信じてたんだろうな。
だから俺が自分の力を磨くことに必死になってる事に気付いていても、目的と手段を取り違えてるなんて教えなかったんだ。
世継ぎが自分の力を磨く事自体は好ましいことだからって。
 だとしたら文句の一つでも言ってやらなければならない。苦笑気味にそう思い、久信はここにきてもう1つの手段に辿り着いた。
省23
996
(1): コドクノオリ「孤独の檻」 2013/10/28(月)18:20 ID:GWgB8pC0o(4/8) AAS
 抱きしめて、離れることはないと伝えてやること。
 これは修実の無意識が抱く執着心の表れだ。
 孤独であることを受け容れていたかのように見えた修実が、
唯一手放すことを拒んで自分の中に取り込んでしまいたいと思うほどに執着を見せる他人。それが久信だ。
 蠱毒は、自分たちの頂点が無意識に下した指令に従い、近くに寄って来た格好の標的である久信を取り込もうとして、
まるで誘うかのように亡者の群れをばらまいて壺の場所を教えたのだ。
 久信には、毒を通して修実が縋ってくるのが分かるようだった。
 あんなに力を持っている修実が、彼女と比べて大した力を持っていない久信に縋り付いていることに、
内心驚きのような、こそばゆいような感情を覚える。
 修実が言っていた、久信が居なければ生きていけないという言葉が本心からのものであったと、ようやく実感として理解できた。
省11
997: コドクノオリ「孤独の檻」 2013/10/28(月)18:21 ID:GWgB8pC0o(5/8) AAS
    @

 久信は、壺の中から転がり出ていた。
 どう考えても自分の頭すら入りそうにない、横倒しになった壺の入り口に、あの中にどうやって入っていたのかは分からない。
ただ、確かにそこから転がり出てきたのだということは、久信の脚に一匹だけ絡みついている黒い蛇の尾の先が壺の中に伸びているのを見ればわかる。
 手で外すと、蛇は底を見透かすことができない壺の奥へと消えた。
 顔を上げると、四肢を無くした修実が、意外なものを見るような目で久信を見上げていた。
「毒に飲まれなかったんだね」
 事実を確認するように呟く修実に、久信は頷きを返した。
「そうだよ。自分と修実姉の間違いに気付いたからね。それを今から教えるよ」
省24
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