[過去ログ] アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ11 (479レス)
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191: 2008/01/03(木) 14:42:33 ID:v8aVOay+(13/13)調 AAS
192: 2008/01/03(木) 14:44:47 ID:bZiuA+wz(5/5)調 AAS
ひでえ連投だったな
こんな駄文で何キロ使ったんだよ
193: 2008/01/03(木) 20:02:16 ID:vjLrk9g8(1)調 AAS
次のアニロワには月姫と空の境界を入れようぜ
194: 2008/01/04(金) 12:18:57 ID:JFojOgLQ(1)調 AAS
2chスレ:anichara
したらば主体は放っておいて早くこっちで次のを決めようよ
195: 2008/01/04(金) 21:01:25 ID:laTmssfg(1)調 AAS
議論しているなら削除されないわけだし
ここで問題ないお
196: 2008/01/04(金) 21:41:30 ID:6cbKlpEE(1)調 AAS
517 名前:"削除"依頼 投稿日:08/01/03 17:58 HOST:KHP059139089113.ppp-bb.dion.ne.jp<8080><3128><8000><1080>
削除対象アドレス:
2chスレ:anichara
削除理由・詳細・その他:
4. 投稿目的による削除対象
・スレの運営を妨げる煽り
5. 掲示板・スレッドの趣旨とは違う投稿
・故意にスレッドの運営・成長を妨害している
6.連続投稿・重複
・連続投稿
・必然性のないAA・コピペ
執拗な容量潰し荒らしです。
あぼーん後もしつこく容量潰しを繰り返しています。
197: 2008/01/05(土) 00:45:59 ID:+ZpouJZx(1/2)調 AAS
まともな議論そのものを封じ込めたいのねdion
198: とりあえず 2008/01/05(土) 09:34:57 ID:LAiFAwYR(1)調 AA×
![](/aas/anichara_1199094345_198_EFEFEF_000000_240.gif)
199: 2008/01/05(土) 16:11:29 ID:+ZpouJZx(2/2)調 AAS
乙
200: 例え絶望に打ちのめされても 1/8 ◆AZWNjKqIBQ 2008/01/07(月) 07:56:14 ID:1rPnDcmc(1/8)調 AAS
図書館。図書室。読書室。
……本を読む場所はできるだけ静かであるべきだろう。なにせそこは本を読むところなのだから。
許されるのはそう、頁を捲る時に紙同士が擦れる音。せいぜいがそんな程度である。
なので、今この超螺旋図書城内の静謐を破る彼女の声は、決して許されるものではないだろう。
別段大きな声を出しているという訳では無い。だが、非常に耳に引っかかる声だ。それは泣き声だったから。
もしここに平時の通りに人がいて、そしてそれぞれが本を取っていれば、きっと彼女の声に顔を顰めたはずである。
だが幸いなことにか、彼女に顰蹙の視線を浴びせかける読書家達は今のここにはいない。
代わりにいるのは黒衣を纏う一人の男だけ。
だが少女を見つめる彼の視線も、読書家達程ではないにしろ決して優しいものではなかった。
◆ ◆ ◆
本の貸し借りを行うためのカウンターに突っ伏し嗚咽を漏らす少女――柊かがみ。
その目の前の彼女の姿に、同行者である衝撃のアルベルトは小さく溜息をついた。
なぜ彼女が突然として泣き始めたのか? その理由を推測するのは至極簡単なことだ。
つい数分前にこの図書城の中に流れた螺旋王よりの定時放送。
その中で彼女のよく知る名が死者として告げられたからであろう。
彼女の嗚咽の中に交じる「……こなたぁ……」と言う言葉を聞き取れれば、それが『泉こなた』であることも特定できる。
5分過ぎても、10分過ぎても泣き止まぬ少女に、アルベルトは再び何度目かの溜息をついた。
だが、彼は決して少女を叱り飛ばしたりはしない。
もしこれが作戦任務中で目の前にいるのが同じエージェントであれば、泣き言一つ漏らすだけでも粛清の対象になるが、
今彼の目の前で悲嘆に暮れているのは、娘と歳もそう変わらないただの少女である。
――もし自分が死んだら娘もこんな風に泣くのか?
そんな事がちらりと頭に過ぎったばかりに、男は少女を恫喝することも懐柔することもできずに手を拱いていた。
さりとて時間は惜しい。いつまでも泣かせていては話も進まないままだ。
最後にもう一つ溜息をつくと、
衝撃のアルベルトは意を決し、普段はあまり使うことのない種類の勇気を使って少女に話しかけた。
◆ ◆ ◆
『泉こなた』が死んだ。その衝撃を自分はどう受け止めればよいのだろう?
妹の死体を発見した時とはまた違う感情が柊かがみの心より溢れ、彼女はそれを抑えることができないでいた。
妹のクラスにいた変なやつ――それが、泉こなたに対する第一印象だ。
波長というのが合うのであろうか、おっとりとした妹とヘンテコなこなたは何時の間にかに友人になっていて、
その後、自分が友人の姉として彼女と親しくなるのにもそう時間はかからなかった。
そして何時の間にかに、彼女を部屋の中に入れたり、彼女と二人きりだけで遊びに行くことも多くなっていた。
親友――と言うにはちょっと違う。かと言ってただの友達と言うと少し寂しい。
腐れ縁と言うほどの長い付き合いがある訳でもないし、家族と言うほどお互いに踏み込みあってはいない。
仲間と言うほど団結力があった訳ではないし、相方……というほど、息も合ってはいなかった。
――じゃあ、恋人? イヤイヤ、それはまさかだ。
『柊かがみ』と『泉こなた』――とりあえずはそう言うしかない。そんなヘンテコな関係だったのだ。
201: 例え絶望に打ちのめされても 2/8 ◆AZWNjKqIBQ 2008/01/07(月) 07:58:03 ID:1rPnDcmc(2/8)調 AAS
妹が死んだ時に感じたのは、身体を無理矢理半分に切り裂かれた様な激しい痛み。
こなたが死んだと知って感じるのは、えも言われぬヘンテコな喪失感。
心の中に、こなたの形をした穴が空いた様。
それは決してもう埋められることのない穴。それは、なぜならば――、
――私の好きなあのヘンテコな少女は、正真正銘宇宙に一人っきりのヘンテコだったのだから。
だから、もうどこを探してもこの穴を埋めるピースは見つからない。
妹がいなくなったことでついた傷の痛みが消えないように、こなたを失ってできた喪失感も決して消えないのだ。
涙。涙が止まらない。こなたの形をした穴から涙が零れて止まらない。
何時の間にかにこなたが自分の心のそんな場所にいて、そしてもういなくなってしまったことに涙が止まらない。
「――零れた涙は元には返らんのだな」
……? なんだって? 覆水盆に返らず……?
ああ、確かに。泣いて妹とこなたが返って来るのなら、私は盆の上と言わず盆が暮れるまで泣いているだろう。
◆ ◆ ◆
唐突にかけられた声に、伏されていた少女の顔が男の方へとゆらりと向いた。
目元を真っ赤に腫らし、頬に走るいく筋もの涙の跡をもそのままに、呆けたような顔で男の方を見やる。
「……零れた涙は元には返らんのだな」
2度目の台詞。……そして、再びの短い沈黙。
やっと言葉が通じたのか、少女の目に焦点が戻ってくる。
そして、ようやく言葉の意味を解釈できたのか、恥ずかしそうに顔とカウンターの上に溜まった涙を袖で拭った。
「……ごめんなさい。ずっと、泣いてて」
「うむ。それはかまわん。
それよりも、だ。ワシの今の言葉。もう少し吟味してみよ」
突然の問答に、少女の頭の上に疑問符が浮かぶ。
零れた涙は元には返らない――取り立てて問題のある言葉とは思えないが……?
「ふぅむ、気付かぬのもやむなしか。ならばヒントをやろう。
貴様が傷を負いそこから血を垂らせば、その血はどうなる?」
男の言葉に少女の口が「あ」の形に開く。
答えに気付いた少女は涙を拭った袖を持ち上げるが、やはり涙はそこに染み込んだままだった。
だが頭の上の疑問符はまだ消えない。質問の意図が解らないからだ。
「貴様は茶を飲み涙を流すが、血は流しても必ずそれは身体に返る。面妖な事よのう?」
少女はこくりと素直に首肯する。自分の身体の事だが、確かにそれが気持ちの悪いことは否定できない。
「ワシとて貴様が呆けている間、何も考えておらんかった訳ではない。
不死身と言うのにも多少知識があるのでな、お前の身体に起こった事について考えておった」
それを少し話してやろう。そう言うと、男は少女に向けてゆっくりと語り始めた――。
202: 例え絶望に打ちのめされても 3/8 ◆AZWNjKqIBQ 2008/01/07(月) 07:59:47 ID:1rPnDcmc(3/8)調 AAS
◆ ◆ ◆
不死身と一言に言っても様々な種類があるが、まずはオーソドックスなものから教授してやろう。
それは一つの生命体として、頑丈でありしぶといという性質のものだ。
不死とまではいかない者や、大方の回復能力者などもこの範疇に入る。
生来のものか、鍛錬の賜物か、はたまた人為的な改造によるものか、こやつ等は非常に死ににくい身体を得ておる。
死ににくい……と言う前に、死ぬとはどういうことか考えてみるか。
生きている人間と死んでいる人間。単純に考えれば、その間にあるのはエネルギーの循環があるかどうかに尽きる。
息をして、心臓が動いていればその人間は生きているというわけだ。
そして、その生命の維持に必要な機関――心臓等を破壊されればその人間は死ぬ。簡単であろう?
ではこの場合。不死身の人間とはどういった者か?
普通の人間の場合でも、手や足を傷つけられたぐらいでは死なん。急所を外しておれば、それはいつか癒され元通りになる。
不死身の人間の場合だと、例え急所を傷つけられても死なん。何故かと言うとそれは急所ではないからだ。
心臓が一つではないのかも知れない。または傷つけられた心臓を復元するプロセスが体内に備わっているのかも知れん。
不死身を二つ名に冠する者の中には、細胞単位で補修能力が備わっており、まるでトカゲの尻尾の様に身体を再生させる者までおる。
つまり、これらは身体の作りが他の人間とは少し違うというだけであって、まぁ……頑丈な生命体であるというだけだ。
常識の範疇内であるし、能力の軽重を無視すればこの手の能力者は掃いて捨てるほどおる。
……どうした不死身の柊かがみよ? 普通ではない? フ、それは何の冗談だ。
貴様の持つ身体の希少性は、こんなありふれた不死身紛いのものとは全く比べ物にならんぞ。
では、いくつかの特殊な不死身についても教授してやろうか。
これらは非常に希少な能力でな。このワシとてこれらを備えた人間は片手の指で数えられるほどにしか知らん。
まずは、超能力や念動力といった思念の力によって自身の身体を完全な状態に維持しておる者だ。
そしてもう一つ。これも超能力の一種で、その超能力で自他の生死の因果を制御し、決して死に至らぬ者。
ウム。こやつ等こそ正しく普通では無い者達よ。だが、かがみよ。貴様の力はまたこれらとも違うな。
貴様の身体は生命体というには非常に不自然で、かと言って貴様に超能力を操られるだけの胆力はない。
そう。螺旋王によって振舞われた不死の酒とやらの力だ。
そして、ワシはこんな事を考えた――。
◆ ◆ ◆
言葉を一旦区切り、冷めた紅茶で喉を潤す男の前で不死身の柊かがみは驚き、また呆れてもいた。
不死身なんか別に珍しくもないと言い切る掌から竜巻を飛ばす男――漫画かアニメとは正にこれのことだ。
だが、彼女は次の男の発言によりさらに驚くこととなる。
「柊かがみよ。貴様はすでに柊かがみであって、そうでは無い者へと摩り替わっておる。
はっきりと言おう。今の貴様は――不死の酒そのものだ」
自分が自分ではないとは悪い冗談だ。
だが、呆気に取られている少女の前で再び男の不死身談義は始まった。
203: 例え絶望に打ちのめされても 4/8 ◆AZWNjKqIBQ 2008/01/07(月) 08:01:32 ID:1rPnDcmc(4/8)調 AAS
◆ ◆ ◆
ワシが第一に注目したのは『同じ不死者を喰らえば知識が移る』と言う点よ。
それこそが不死の酒の肝であり、不死身の身体などと言うものはその副産物にしかすぎんと思っておる。
よいか、もう一度言うぞ。『同じ不死者――を喰らえば――知識が移る』だ。
まず常識的に考えてありえんのが、喰らえば知識が移るというところだ。
そうであろう? ワシが貴様の脳ミソを喰らっても貴様の記憶は読めんし、逆の場合でもそうに違いあるまい。
記憶と言う物は脳内で形成される情報伝達経路の形であって、それは食するという工程では決して伝達しえんのだ。
しかし、ならばどういった者同士ならばそれが成立し得るのか? そう。同じ不死者同士という条件よ。
だが、それでも脳を喰らい合うことで情報が伝達しえんのは変わらん。
つまり、不死者には互いに情報を伝達しえる『何か』が存在すること。そして、必ずしもそれを脳に蓄積していないということが推測できる。
そろそろワシが言いたいことが解ってきたか?
そう。貴様の体内にある不死の酒こそが情報媒介物質よ。だが、それではまだ答えは半分だ。
それだけでは貴様の不死性と、相手を喰らい死に至らしめるという点が説明しきれん。
貴様が流した血はたちどころに元の場所へと戻る。有り得るか、そんなことが?
しかし実際には有り得ておる。ならばどこかに勘違いしている部分があると考えるのが筋だ。つまり――、
――血が戻っているのではなく、酒が戻っている。もっと言えば『不死の酒』という生物が戻っているとは考えられまいか?
そもそも『不死の酒』とは名ばかりで、それは人に取り付き情報を奪い取る生命体の群れではないかとワシは考える。
それは人の体内に侵入すると、その者の情報を読み取りその身体を消化してその者へと擬態する。
一人の人間という情報を蓄えた、一種の生命体の群れによる一つのコロニーと化す訳だ。
ならばそれら同士、つまりは不死者同士ならば喰らい合うことで情報が移ることが説明できよう。
情報を持ったコロニー同士が合流すると、ただそれだけのことに過ぎんからな。
端から見れば人が人を喰っているように見えるが、実際は群体が合流しその数を増しているというだけの話だ。
再び結論を言うぞ。柊かがみよ――今の貴様は不死の酒そのものなのだ。
◆ ◆ ◆
衝撃のアルベルトが口を閉じると、超螺旋図書城にしばらくぶりの静寂が訪れた。
一方的に衝撃的な話を聞かされた少女の口は、先ほどより「あ」の形のままである。
その後、しばらくして喉が渇くことに気付いてその口は閉じられたが、その表情はまるで異物を飲み込んだ蛙の様だ。
恐る恐る上げた両手を見つめ少女は自問する――私はすでに私ではない?
「――とは言ったものの、全く確証はないがな。
十中八九この推理は外れておるだろう。推理などと言っても所詮は言葉遊びの域を出ておらん戯言よ。
ただ、言葉の上ではこう説明できますよというだけにすぎん」
――は? と、閉じられていた少女の口が今度は「は」の形に固定される。
「しかし頭を使った分、気は紛れたであろうかがみよ?」
少女の「は」の形の口が、「はぁぁ……」と大きく広がって同時に顔が見る見る間に赤くなってゆく。
つまりはそう。目の前に立つ男の、彼なりの気遣いであったと言う訳だ。
204: 例え絶望に打ちのめされても 5/8 ◆AZWNjKqIBQ 2008/01/07(月) 08:03:18 ID:1rPnDcmc(5/8)調 AAS
「さて、随分と時間を労したな。ではそろそろ此処を出るぞ」
そう言いながら認めたあったメッセージをカウンターの上に置くと、男は踵を返して出口へと向って行く。
「ち、ち、ちょっと待ちなさいってば! 待ってって言ってるでしょっ!」
そして、その後を荷物を掻き集めながらどたばたと少女が駆け抜けると――、
――やっとのことで、本を読むに相応しい静寂がそこに戻ってきたのであった。
◆ ◆ ◆
超螺旋図書城と名づけられた趣味の悪い図書館より二人が発ってよりしばらく後、柊かがみは天に浮かぶ円を見上げていた。
「(……こんなに大きかったんだ)」
天の頂上に位置する太陽からの光を遮り、広い空の中に巨大な真円のシルエットを浮かべているのは観覧車だ。
その高さはゆうに100メートルを越え、そこから見渡せる景色の内のどの建物よりも大きな建築物であった。
「(あの時は空を見上げる余裕なんて全然なかったけど……)」
この巨大な観覧車の足元へと彼女が来るのはこれで3度目となる。
1度目も2度目も、そして3度目もここに来る理由は変わらない。3回とも妹である柊つかさに会うためだ。
柊かがみはその視線を観覧車の頂上より真下へと下ろ――さない。直前で踵を返し、それまでは後ろにあった噴水へと向き直る。
とてもではないが、これ以上妹の憐れな成れの果てを直視することはできなかった。
「(……ごめんねつかさ)」
心の中で自分の不甲斐なさを今は亡き妹に詫びながら、柊かがみはゆらりゆらりと揺れる水面を見る。
それを見て思い出すのは妹と一緒に波間を漂っていた時の事だ。果たして、『あの時の妹』は一体どこへと消えたのか。
「(ずっと離れないって決めたのに……。ずっと、ずっとに……って、なのに)」
膨らむ罪悪感が重く心に圧し掛かる。たった半日と少しで人生ががらりと変わってしまった。そして、新しく決めた道程は果てし無く遠い。
それに対し果敢に挑むには足は重く、かといって足を止めるほどの絶望も今は無い。
溜息をつき自分の心を騙しながらでも、少しずつ進むしかないのだ。自分と妹の、そして亡くなった友人のためにも……。
「……頑張るから。
見守っていて……、なんてのはもう言えないけど。でも、……待ってて。絶対ゴールまでは辿り着いてみせるから」
真円の噴水の中に、同じく真円の観覧車が映りこむ。波紋に揺れて形を歪ませる観覧車のシルエットが描くのは螺旋模様。
水鏡の中に浮かぶそれを目に映しながら、柊かがみはもうこの世にはいない二人に誓いを立てた。
螺旋は回る。――グルリグルリと。彼女の道行きを現すかのように。彼女の心の内を現すかのように。
205: 例え絶望に打ちのめされても 6/8 ◆AZWNjKqIBQ 2008/01/07(月) 08:05:03 ID:1rPnDcmc(6/8)調 AAS
◆ ◆ ◆
そしてまた少し時は流れ、柊かがみはまた彼女にとって因縁のある場所へと足を運んでいた。
「……ここで間違いないのだな?」
男の質問に頷く柊かがみの肩には、失われていた彼女のデイバッグが再びかけらている。
それは妹の亡骸の元へ残して行っていた物だ。あの時はもう不必要と判断したのだが、今はそうではない。
センチメンタリズムに従って死を選ぶことはもう許されない。現実はそんな生易しくないことをもう彼女は知っている。
「では少し調べるとしよう。貴様の言っていた男が本当に不死者であったのかをな」
言いながら橋の上へと行く男を見送りながら、柊かがみは思い出す。昨晩、この場所で起きたあの惨劇を。
――アイザック・ディアンという男。
――劈くような破裂音。暗闇に浮かんだマズルフラッシュ。
――倒れる男。そして逃げ出した自分。
ここで自分はアイザック・ディアンと言う男を殺したのだ。だが――殺したはずの男は生きていた!
それにより彼女は自分以外の不死者の存在に気付き恐慌状態に陥った。
あれから今に至り、そして死なないはずの男が死んだことを彼女は螺旋王の放送によって知らされる。
不死者が死ぬ――それは誰とも知れない不死者がアイザック・ディアンを『喰った』からだ……そう柊かがみは考えたのだが、
同行者である衝撃にアルベルトはまた別の可能性も示唆した。
一つに、アイザック・ディアンがそもそも不死者ではなかったという事。
それは確かに有り得るかもと、彼女も思った。何せ銃は出鱈目に撃ったのだ。普通に死んでいなかったというのも有り得る。
または、彼が幻覚を操る能力者で『死んだフリ』をしたとも考えられると衝撃のアルベルトは言った。
そしてもう一つは、不死者でない者が不死者を殺せる方法でアイザック・ディアンが殺害されたと言う可能性。
いくら不死者同士で喰い合いが出来ると言っても、それだけでは結局最後に誰にも殺せない不死者が一人残ってしまう。
だから、不死者を殺す方法が他にもあるだろうと男は言った。そして当たりをつけたのが『首輪』である。
螺旋王がこの実験のルールの象徴として参加者達にかせた首輪。それは不死のルールをも上回る可能性が高いと男は推測した。
つまりは、アイザック・ディアンは首輪を外そうとしたか禁止エリア内に留まり爆死した――という訳である。
……と、彼女が思考を反芻している所へと男が帰ってきた。
「どうやらアイザック・ディアンと言う男が不死者であったことは間違いないようだ」
言いながら男は掌に乗せた金属片を柊かがみに見せた。
「……これは?」
「貴様がアイザック・ディアンにへと撃ち込んだ弾丸よ」
「い」と顔を歪める少女に男は丁寧な説明をした。
橋の上に転がっていた、人に撃ち込まれたと思しき変形をしている弾丸。それには一切の血や肉がついていなかった。
撃ち込まれているのにも関わらず綺麗な弾丸――その矛盾を説明できるのは不死者の存在のみである。
「そっか……じゃあ?」
「喰われたか。はたまたは首輪の禁を破ろうとしたか……であろうな」
柊かがみの手が自身の首輪へと伸びる。日が昇ってきたせいで、首との間に汗が浮かんでいるのが気持ち悪い。
この首輪がある限り、自分達は螺旋王のモルモットと言う立場から逃れることはできないと、それを改めて実感する。
そして首輪が持つその意味こそが、首輪を意識する度に感じる息苦しさの正体であった。
206: 例え絶望に打ちのめされても 7/8 ◆AZWNjKqIBQ 2008/01/07(月) 08:06:48 ID:1rPnDcmc(7/8)調 AAS
◆ ◆ ◆
さらに時は流れ、二人は今は南を目指して道の上を進んでいた。
「レーダーは探さなくていいの?」
柊かがみの質問に衝撃のアルベルトは首を振る。
「惜しくはあるが、こちらから探すことにあまり意味はない」
「それって、どういう意味かしら?」
「……レーダーを持っていった者が他者に積極的に接触しようとする人物ならば、こちらが探す必要はない。
逆に、レーダーを逃げることに使う者だったらならば、それを探し出すのは骨よ」
なるほど、と柊かがみは頷いた。
先刻、彼女たちが観覧車の前にいたのは、今会話に出たレーダーが第一の目的だったのだ。
人の居場所が判別できるレーダーは、戴宗を探している衝撃のアルベルトにとっては是非とも入手したいものであったし、
仮にその目的がなかったとしても、あらゆる意味で貴重な物であるのは変わらなかった。
今、アルベルトが口にした様に人と接触するのにも、人との接触を回避するのにも使えるのである。
しかし残念ながらレーダーはそこになかった。恐らくは、そこに立ち寄った何者かが持っていってしまったのであろう。
彼女たちが回収できたのは、全員に共通して支給されているバッグや水など、その何者かが不必要と判断した物。
そして、柊かがみの妹の首に残っていた首輪のみである。
いや、もう一つだけあった。
「(…………つかさ)」
柊かがみの右腕に巻かれているのは、妹のセーラー服についていたスカーフだ。
滅茶苦茶にされてしまった妹の中で数少ない原型を留めている物の一つ。それを衝撃のアルベルトが回収してくれたのである。
血に塗れていたそれを、彼女はあの螺旋が浮かんでいた噴水で洗い清め、今は自分がそれを身につけている。
と、単調な道行に思考を今は亡き妹へと向けていた柊かがみを、同行する男が押し留めた。
「何か?」と問う間もなく、目の前に――閃光。そして十数秒の後に音と風が彼女らが立っている場所を通り抜けた。
「――爆弾!?」
「どうやらそうらしいな」
彼らが歩を刻んでいた高速道路の遥か先で起きた大爆発。
「少し先を急ぐぞ」
「わ、わかった……」
それに向かい、二人は積極的に近づくという答えを選んだ。
いや、選んでなどはいない。そもそも引くなどという選択は最早二人には無かった。ただ邁進するのみである。
なぜならば――、
――求める物は決して後ろには無い。その事を二人はすでに思い知らされているのだから
207: 例え絶望に打ちのめされても 8/8 ◆AZWNjKqIBQ 2008/01/07(月) 08:08:34 ID:1rPnDcmc(8/8)調 AA×
![](/aas/anichara_1199094345_207_EFEFEF_000000_240.gif)
208(2): 2008/01/07(月) 20:54:49 ID:snrMvL4m(1)調 AAS
削除依頼だしとけよ
209: 2008/01/07(月) 22:17:50 ID:gMRq9+gm(1)調 AAS
とりあえず参加名簿でも作れや
210: 2008/01/08(火) 15:04:57 ID:8CvjmuDf(1)調 AAS
だな
211: 2008/01/11(金) 23:29:26 ID:WuBGNlfG(1)調 AAS
誰かアニロワ2ndがここまで荒れた今までの流れをまとめてくれ
212(1): 2008/01/12(土) 01:07:51 ID:6sAS9IYS(1)調 AAS
したらばが暴走したから再度作り直し
それだけ
213(1): 2008/01/12(土) 18:45:50 ID:Ks5HEMLv(1/2)調 AAS
>>212
外部リンク:c-au4.2ch.net
こんだけスレが進んでないのに作り直しとは片腹痛いがなwww
214(1): 2008/01/12(土) 21:09:58 ID:7vmnBn6n(1)調 AAS
>>213
何で一々反応して相手をつけあがらせるんだお前は?
215: 2008/01/12(土) 22:19:34 ID:Ks5HEMLv(2/2)調 AAS
>>214
悪い。今までずっと我慢してたんだが抑えきれなくてな。正直すまんかった。
216: 2008/01/13(日) 00:38:08 ID:2VKvsocj(1)調 AAS
そこ使ってないじゃん
217: 2008/01/13(日) 13:41:08 ID:/HlSbF6U(1)調 AAS
218: [age] 2008/01/16(水) 02:51:08 ID:qWjK+eYd(1)調 AAS
文ですらないただの落書きが多いな。
219: Deus ex machina ◆oRFbZD5WiQ 2008/01/16(水) 18:14:24 ID:b7WK90jX(1/10)調 AAS
蛇を相手にしているようだ。
弁髪の老人と交戦し数分、Dボゥイはそのような感想を抱いた。
「く――おおおお!」
体が軋み、思考はどこか霞んだように不明瞭となっている。
それでも、退くワケにはいかぬ。その思考が意識を繋ぎ止め、両の腕が剣を振るう力を生み出す。
「ぬるいわぁ!」
されど、相手は蛇。ぬるりと枝を這うように剣の軌道から外れ、拳を振るう。
そして――衝撃。
がは、と肺の空気を吐き出し、ゴム鞠のように後方に吹き跳ぶ。その勢いで廃墟と化した家屋に突き刺さる。
常人なら既に十は死んでいるであろう暴虐。されど、皮肉な事に、彼が憎むラダムの力が命をつなぎとめていた。
「ぎ――ぐ、」
されど、それにも限界は存在する。
コンクリートとて、長い年月の間、水滴を受け続ければ抉れる。それがドリルであれば尚更だ。
そして、あの老人の力はドリルほど生易しいモノではない。
東方不敗――マスターアジア。
その名で呼ばれる老人の拳は、下手なモビルファイターならば十分渡り合える代物だ。それを幾重も受けて、無事で済むはずがない。
その上、Dボゥイは万全ではなかった。貧血、打撲、裂傷――それらが、元々薄かった勝ち目を致命的なまでに遠ざけていた。
「ふん、宇宙人と言うからにはもう少し歯ごたえがあると思ったが――これでは、あの馬鹿弟子の方がまだ見込みがある」
黙れ。
そう呟く気力もない。
聖剣を杖にし、ゆらりと立ち上がる。それは幽鬼のような動き、もはや戦闘に耐えうるのは不可能であるのは、誰の目にも明らかだ。
けれども、意志は肉体を凌駕する。まだ立てる、その思考が体に喝を入れる。
精神論と嘲る事なかれ。強い精神は肉体を超越するという事実は、プラシーボという形で医学にも用いられている。
「――ふむ、その根性だけは認めてやろう。だが、実力が伴っておらぬようだな。
宇宙人よ、Dボゥイよ。貴様には『体』はあっても『技』がない。
身体能力があろうとも、それを生かす技術が存在しない」
確かに、と思う。
自分はテッカマンになれる。テックランサーやボルテッカ、そして、圧倒的な推進力で突貫するクラッシュイントルードなどといった力を振るう事が出来る。
しかし、確かに訓練はしたものの、それは、テッカマンのポテンシャルに頼り切ったモノ。
元来の肉体には、アキのような体術もなければ、ノアルのような銃技もない。
「その肉体だけで勝てると思っておったか、愚か者めが」
迎え撃とうとするが――致命的なまでに遅い。腹部に膝が食い込み、きりもみしながら吹き飛ぶ。窓を窓枠ごと突き破り、ガラスまみれの状態でアスファルトに転がった。
220: 2008/01/16(水) 18:15:12 ID:dOny9Cej(1)調 AAS
221: Deus ex machina ◆oRFbZD5WiQ 2008/01/16(水) 18:15:33 ID:b7WK90jX(2/10)調 AAS
「人には牙がない。爪がない。それ故に、武器を作った、体を鍛え上げた――技を磨いた。
知るがよい、遥か遠方から訪れた来訪者。これが人が生み出した牙、格闘技だ。
流派東方不敗、その身に刻み、そして逝け!」
更にもう一度、一撃を加えられた、ような、気がする。
だが、どこか感覚が曖昧だった。
意識が徐々に遠のいていく感覚。それは甘美な誘惑。苦しみから解き放ったやろうという――死神の誘い。
――ふざけるな。
そちらに傾きかけた心に喝を入れ、立ち上がる。
瞬間、顔面に拳が突き刺さった。
「ァ――――が!」
それはまるで、なけなしの気力を砕くように。
砕けたアスファルトの上を滑るように吹き飛ぶ。がりがり、という音。石が服を食い破り、皮を切り刻み、肉を食む音。
立ち止まった頃には、リムジンから伸びているような赤いカーペットが敷かれていた。
その上を、あの老人が悠々と歩いている。
全く以って似合わないな、と。酷く場違いな思考が過ぎる。
――まずいな。
笑みが漏れてきた。今の自分の状態も、目の前の老人も、おかしくてたまらない。
脳内麻薬でも分泌されだしたのか、痛みも薄く、むしろ快感な気さえする。
その快楽に身を委ねれば、きっと楽に死ねる。この胸の奥底を炙る復讐の炎から解放される。
だが、それを受け入れるワケにはいかなかった。
それは復讐のためであり、そして――あのか弱い少女のためである。
だから、Dボゥイは立つ。背中を真紅に染めながらも。
その姿を、酷くつまらなそうに見やる老人を睨みながら、無意識でも手放さなかった剣を握る。
「――ねえ」
そんな中、いつの間にか隣にいた少女が口を開いた。
◆ ◆ ◆
その情景は、悲惨を通り越して滑稽なものだった。
絞りカスで戦っているようなDボゥイと、ほぼ万全な状態の東方不敗。
天秤がどちらに傾くかなど、火を見るより明らか。いや、火を見て明らかというべきか。
数回の攻撃で力を使いきったのか、Dボゥイは反撃どころか防御すらマトモに出来ていない。ただただ、ゆらりと立ち上がるだけ。
その姿は、ゾンビ映画を連想させる。
然り。その姿は死体のようで、いつ崩れてもおかしくない泡沫のようで――
「ァ――――が!」
顔面に拳が突き刺さる。受身を取る事すら許されず、背中を砕けたコンクリート片が散らばる地面に擦りつけながら、こちらに飛んでくる。
地面が赤い。流血と皮、肉、服の破片。それらが散らばる絨毯を、老人は悠々と歩く。
もはや追い詰める必要はない、そう言うように。
然り。ここまでの暴虐を受けて、なぜ抗うというのか。
これ以上、どう抗おうとも侵略めいた拳によって蹂躙されるだけではないか。
(……なんで?)
222: Deus ex machina ◆oRFbZD5WiQ 2008/01/16(水) 18:16:42 ID:b7WK90jX(3/10)調 AAS
それでも、彼は立ち上がった。
十中八九殺されるこの状況で。座して死を待った方が楽であろう、この状況下で。
分からない。なぜ、彼が立つのか。
そうだ、分からないといえば、自分を殺さなかった事も分からない。分からない事だらけだ。
「――ねえ」
だからだろうか。無意識の内に口が開いていた。
「どうして、そんな風に立っていられるの?」
ああ、と思う。
それはたぶん、似ているからだ。
彼は言っていた。許せないと。不幸を理由にして殺し合いに乗っていることが、俺には許せないのだと。
あの言葉を聞いた時に、なにか、感じ取るモノがあった。
それは――どこか同類めいた何か。
その男が立つ理由、それが、どうしても気になったのだ。
「――これ以上、」
噛み締めるように、Dボゥイが口を開く。
それは、舞衣の問いに答えたと言うよりは、自分自身に言い聞かせているようだった。そう、まるで折れかかった心を支えるように。
「これ以上、こぼさない、ためだ」
剣を構える。だが、力が入っていないのか、その重さで前に倒れかけ――
「失ったモノは取り戻せない。だから、俺は復讐の道に足を踏み入れた。だが――」
――その寸前で踏ん張る。
その姿は、壊れかけたロボットがダンスを踊っているよう。不安定で、醜く、滑稽で――
「――それでも、これ以上、大切なモノをこぼしたくないからだ」
――けれど、心のどこかに訴えるモノがあった。
◆ ◆ ◆
そうだ、これ以上、何かを失いたくはない。
自分が死ねば、シンヤは用済みとなったゆたかを殺すだろう。
そう、彼女には随分と助けられた。
もっとも、本人は否定するだろう。助けられたのはわたしですよ、と。
ああ、確かに。確かに、肉体的な面で自分は彼女を何度か救った。
けれど、それ以上に、彼女はDボゥイの精神面を救ってくれた。
だから――Dボゥイは老人を睨みつける。
それは、徹底的に抗うという決意。
それは、この命を貴様に渡すワケにはいかぬ、という宣言。
223: Deus ex machina ◆oRFbZD5WiQ 2008/01/16(水) 18:17:54 ID:b7WK90jX(4/10)調 AAS
「オ――」
吼える。喉を震わせ、全細胞に告げる。
なにを腑抜けている、血が足りない? 傷が開いた? 疲労が酷い?
その程度で眠っているのか貴様らは!
どうせ、ここで抗わねば死ぬのだ。なら――全ての力を引き出してみせろ。
そう、徹底的にAngriff! Angriff! Angriff! 剣を以って活路を開くのだ!
「――オォォォオオォォオッ!」
駆ける――否、その速度は普段の歩みよりもなお遅い。
杖をついた老人よりは速いだろうか? その程度の速度でしかない。
「ふん、諦めの悪い。いいだろう、この一撃で――む?」
それは、純粋な疑問だった。
Dボゥイと目を合わせた東方不敗は、ありえない何かを見るような目で瞳を見開いた。
――なんだ?
まるで、『Dボゥイの目が、別の何かに取って代わった』とでも言いたげな瞳。
「貴様、それは一体――」
知った事か。
心中で吐き棄て、剣を振るった。
風を切る音はしない。ゆっくりと振り下ろされていくそれは、スローモーションでも見ているのではないかと思わせる。
しかし、
(なんだ――?)
なぜだろう。
今なら、たとえこの速度だとしても威力を発揮できる。そんな気がしたのだ。
誰が言ったわけでもない。強いて言えば、剣の鼓動から感じ取ったというべきか。
つい先程まで感じなかった力の唸りが、他ならぬ自分から注ぎ込まれている――そんな気がしたのだ。
「勝利すべき(カリ)――」
知らず、呟く。
流れ込んでくる名を。檻に囚われた獣を、解放するように。
先程まではなかった感覚に困惑しつつも剣を力強く握るDボゥイ。
その瞳は――確かに螺旋を描いていた。
「――黄金の剣(バーン)!」
そして、光が溢れた。
◆ ◆ ◆
突如視界を覆った光は、現れた時と同じように唐突に消えた。
そっと、瞳を開く。
224: Deus ex machina ◆oRFbZD5WiQ 2008/01/16(水) 18:19:02 ID:b7WK90jX(5/10)調 AAS
「なに、これ」
舞衣の瞳に飛び込んできたのは、大地に穿たれた巨大なクレーターだった。
見渡すと、辺りはもうもうとした土煙で覆われていた。近くは見えるのだが、遠くは全く見えない。事実、舞衣が向いている方角――即ち、北で遠く見えていた学校も、今は輪郭すら掴めない。
大きさは、大体一般家屋一つ分。恐らくは、先程まであの二人がいた場所。
なら、あの二人は?
「あ――」
視線を彷徨わせると、すぐ近くで倒れているのが見て取れた。
恐らくは、この衝撃で吹き飛ばされたのだろう。
恐る恐る、彼に近づく。
幸いな事に、生きてはいるようだ。打撲こそ多いものの、裂傷が少ないのが幸いした。止血さえすれば、命を取り留める事はできるだろう。
そこまで考えて、ハッとした。
「なんで助ける事を前提に考えてるのかな……」
それは――たぶん、憧れめいたモノを抱いたから。
あの背中は、自分と同じでありながら、けれども決定的に違うモノがあった。
それを、知りたい。
同類めいた自分たちが、けれども別の道を進んだワケ。その答えが欲しい。
それさえあれば、この揺らぐ心も収まるのではないか、そう思ったのだ。
そっと抱きかかえようと屈み込み、
「中々の威力。少々肝を冷やしたわ」
しわがれた声に体を硬直させた。
ありえない、だって、あんな威力の破壊を受けて、生きているはずがない。
だというのに、
「なん、で」
あろう事か、その老人は傷一つ負ってはいなかった。
「馬鹿者が。どれほど威力があろうとも、直撃さえ受けなければ傷付かん。
ましてや、振り下ろすだけで精一杯といった風体の者が放つ衝撃波など、見ずとも避けられるわ」
Dボゥイの『変化』に気づき、それがなんであるのか悩んでいる最中、彼が剣を振り下ろそうとした。
しかし、その剣が先程とは違う『気』めいた何かを纏っている事に気づき、剣の直線状から退避。すると、濁流の如く全てを押し流す衝撃波が、脇をすり抜けていった。
つまりは、ただそれだけの事。
本人すら気づかなかった螺旋力の覚醒。しかし、それも見当違いの方面に発揮されただけに終ったのだ。
必殺の一撃が外れた今、その効果はゼロどころかマイナスだ。
螺旋の力で増大した体力と力。だが、その力は魔力の代用品として聖剣に注ぎ込まれ枯渇、そして訪れたのは気絶という眠りだ。
これならば、まだ覚醒しない方が望みがあっただろう。
「失望したぞ、娘。よもや、ここに至って男を救おうとするとはな。
悲しみのままに罪な無き子供を殺し、しかし数刻で心変わりするとはな。
外道を行い、けれど人を救う。その矛盾、真に人間らしい」
だが、と吐き棄てるように呟き。
「だからこそ、醜い」
え? と声を出す暇もない。
瞬時に間合いを詰めた東方不敗は、撫でるような滑らかな動きで拳を放つ。腹部にめり込む、破壊の鉄槌。
225: Deus ex machina ◆oRFbZD5WiQ 2008/01/16(水) 18:20:11 ID:b7WK90jX(6/10)調 AAS
「ぐ――げ、ぇ」
カエルが潰れたような声と共に、血の混ざった胃液を吐き出す。
吹き飛ばなかったのは、きっと手加減されたからだろう。でも、なぜ?
「気が変わった。先に貴様から殺してくれよう」
髪の毛を乱暴に捕まれ、持ち上げられる。
ああ、そうか。手加減されたのは、ダメージを与えて動きを止め、かつ、遠くに吹き飛ばさないため。
動きが止まった自分を、確実に殺すため。
ああ、殺される。
恐らく、生身の自分では、ものの一撃で消し飛ぶだろう。
(でも、それもいいのかも)
死後の世界。
もし、そんなモノがあれば、きっとそこはこんな世界よりも幸せな場所に違いない。
だって、ここには辛い事しかない。
けれど、死後の世界に行けば、弟がいる、シモンがいる、なつきがいる。
自分が亡くしたモノ、その全てが、在る。
ならば、それでもいいじゃないか。
そう思って、舞衣は瞳を閉じた。
訪れる死を受け入れるために。
◆ ◆ ◆
機械仕掛けの神、デウス・エクス・マキナ。
物語が解決困難な局面に陥った時、脈絡もなく絶大な力を持った『神』が現れ、それを解決する演劇の手法である。
だが、それは好まれぬ手法でもある。
伏線もなしに登場するそれは、超展開と揶揄される事も少なくない。
――しかし、である。
物語の登場人物にとって、そのようなモノは関係ない。
たとえ、神にも似た解決策に伏線があろうとも、登場人物がそれを自覚していなければ、彼にとってそれはデウス・エクス・マキナとなるのではないか?
そして、鴇羽舞衣は、東方不敗マスターアジアは知らない。
ロイ・マスタングという男がDG細胞に侵されている事も、
彼がスバル・ナカジマの仲間を殺戮した事実も、
デパートで彼と彼女の戦いが起こっている現実も、
――――スバル・ナカジマという少女が、己の力と宝具の力を最大限に用い、爆発的な閃光と共に付近を薙ぎ払った現実も。
全ては二人には知りえない事であり、脈絡のない神の光臨であった。
◆ ◆ ◆
226: Deus ex machina ◆oRFbZD5WiQ 2008/01/16(水) 18:21:34 ID:b7WK90jX(7/10)調 AAS
瞬間、黒い視界が白に塗りたくられた。
閉じた目蓋の中ですら、「眩しい」と知覚できる暴力じみた閃光。
だが、彼女は幸いに瞳を閉じ、その上、学校の方面――即ち、光源から背を向けていた。
しかし、東方不敗は違った。
光源の方角に体を向け、目を開いている状態。あの爆発的な光を、直視してしまったのだ。
「ぬぐォおおおおおおおおおおォ! ぐ、目が、目がァァあああ!?」
もし、彼に制限が加えられてなければ、いち早くそれに気づき、瞳を閉じる事もできたかもしれない。
だが、現実は非常であり、死を運ぶはずであった老人は、瞳を押さえ、苦しみ悶えている。
(……なによこれ。まるで、)
まるで、死後の世界の誰かが、自分に対して『生きろ』と背中を押しているようではないか。
そう、これ以上ない、という程の隙。これを逃せば、自分は殺されるだけだ。
だが、決心がつかない。心の中ある死の誘惑が足を縛る。
しかし、ふと思い出す。
足元で倒れる彼、Dボゥイ。
彼の話を聞きたい、そう思ったのではないか?
そこまで考えて、舞衣が彼を背負い、ゆるやかに移動を始めた。
けれど、その速度は致命的なまでに鈍い。
振り向けば、背後で悶え苦しむ老人の姿は、未だ近距離と言っても差し支えのない距離だ。
「はや――くっ」
叱咤するように呟き、足を進める。
だが、いかにHIMEの彼女とて、生身の能力は一般女子高生と大差はない。
そんな彼女が、筋肉質な男を背負い、かつあの老人が回復する前に逃げ去る事は出来るか?
――不可能だ。
そもそも、彼女の疲労は既に限界であり、自分だけ走って逃げるという選択肢も危うい状態だ。
せめて――せめてエレメントが使えれば。
あれがあれば飛べる。走るよりずっと速く移動が出来る。
けれど……あの力は、今は使えない。
歯を食いしばる。結局、自分はなにもできない。奪われるのを待つしかできない――!
――轟、と。
聞きなれた音が、確かな温かみが、両の腕に宿った。
「え……?」
両腕の腕輪。彼女の力、エレメントの姿がそこにあった。
失ったのではないのか、使えなくなったのではないのか。
だが、考えている暇はない。腕に巻かれたそれに力を込める。すると、彼女に答えるように腕輪は炎を纏いながら高速回転し――彼女を動かした。
本来は飛べるのだが、今はなぜだか能力も低下しており、その上、男一人分の重量を背負っている。この速度で移動できるだけマシと考えるべきか。
風を切って移動しながら、舞衣は炎を用いてDボゥイの背中を、傷口を軽く炙る。
医者に見せたら怒られそうな処置ではあるが、治療道具も治療する暇もない今、それも致し方がない事だ。
もっとも、いずれは薬品などで消毒などをしなくてはならないだろうが。
だが、病院は駄目だ。あちらは、あの閃光が吹き出した場所。下手にそちらに向かって戦闘に巻き込まれれば、今度こそ助からない。
なら――学校だ。
あそこには保健室がある。もちろん、設備は病院などとは比べるまでもないが――贅沢は言えない。
227: Deus ex machina ◆oRFbZD5WiQ 2008/01/16(水) 18:22:43 ID:b7WK90jX(8/10)調 AAS
「でも」
自分と彼との違い、それを聞いて、一体どうなるのか。
……分からない。少なくとも、今は。
そうこうしている内に、学校はすぐそばまで近づいてきていた。
◆ ◆ ◆
――――HIMEの能力は、
大切なモノ(者、物)を媒介にし、自らの意志でエレメントやチャイルドを具体化することが出来る力だ。
故に、彼女が心を閉ざした為に、大切なモノという機動キーが鍵穴に差し込まれなかった。
鍵穴をちょうど悲しみのガラスで覆ってしまった、そのような形で。
だが――Dの青年との会話によって、僅かながらに心を開いたのだ。
……そう、開かれた。
開けぬ夜はないように、閉ざされたままの心もまた、存在しないのだ。
けれども、それはあくまで僅かにだ。
彼女が心を完全に開くか、再びガラスで覆ってしまうかは――彼女の背で眠る、Dの青年の行方次第だ。
彼のDが彼女にとって、Dreamなのか、Deadなのか、Dangerousなのかは――まだ、誰も知らない。
そう、それは機械仕掛けの神とて同じ。
物語は進んだ、解決不能な命題はとある少女の最期の光で取り払われた。
これ以降は、彼の神が介入する余地はない。
二人の影は、未だ筋書きの定まらぬ物語を、ただひたすらに突き進んでいた。
【B-6/学校校門前/一日目/夕方】
【鴇羽舞衣@舞-HiME】
[状態]:疲労(大)、全身各所に擦り傷と切り傷、腹部にダメージ、罪悪感
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]:
1:Dボゥイの治療
2:1の後、彼の話を聞きたい
3:その後、自分の在り方を定める
[備考]
※カグツチが呼び出せないことに気づきましたが、それが螺旋王による制限だとまでは気づいていません。
※静留にHIMEの疑いを持っています。
※チェスを殺したものと思っています。
※一時的にエレメントが使えるようになりました。今後、恒常的に使えるようになるかは分かりません。
228: Deus ex machina ◆oRFbZD5WiQ 2008/01/16(水) 18:23:59 ID:b7WK90jX(9/10)調 AAS
【Dボゥイ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:左肩から背中の中心までに裂傷(開いた後、火で炙って止血)、右肩に刺し傷(応急処置済み)
全身打撲(大)、貧血(大)、腹部にダメージ、 背中一面に深い擦り傷(火で軽く炙り失血は停止)、気絶
[装備]:なし
[道具]:デイバック、支給品一式、月の石のかけら(2個)@金色のガッシュベル!!
[思考]
基本:テッカマンエビル(相羽シンヤ)を殺し、小早川ゆたかを保護する
1:…………
2:ゆたかと合流する
3:テッククリスタルをなんとしても手に入れる
4:極力戦闘は避けたいが、襲い掛かってくる人間に対しては容赦しない
5:再びシンヤとテッカマンの状態で闘い、殺害する
[備考]
※殺し合いに乗っている連中はラダム同然だと考えています
※情報交換によって、機動六課、クロ達、リザの仲間達の情報を得ました
※青い男(ランサー)と東洋人(戴宗)を、子供の遺体を集めている極悪な殺人鬼と認識しています
※シンヤが本当にゆたかを殺すと思っているため、生への執着が高まりました。
※恐らくテッククリスタルはどちらを使ってもテックセットが可能です。またその事を認識しています
※ペガスが支給品として支給されているのではと思っています。
※螺旋力に目覚めた事実に気づいていません。
【Dボゥイ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
――螺旋力覚醒。
◆ ◆ ◆
「ぬかったわ。まさか、あのような事が起こるとは」
瞳の焼ける痛みも治まり、辺りを見渡すが、当然の如く辺りに人影はなかった。
光が飛び込んできた方角に視線を向けると、先程までは見えていたデパートが消滅している。
「……モビルファイターでも支給されたか、はたまた宇宙人の能力の類か」
どちらにしろ、対人には過ぎた威力だ。
それが如何なる状況で行われたモノか、興味があるが――それ以上に、
「Dボゥイ、奴の瞳は確かに……」
――ドリルの先端のような模様を持った瞳。別の表現をするならば、螺旋の瞳。
それが、気になった。
螺旋王ロージェノムが最初に言った、螺旋遺伝子の選定という言葉。
まさかとは思うが、あれが奴の言う螺旋遺伝子とやらなのだろうか。
しかし、分からない。
たとえ、推測が正しかったにしろ、なぜあのような状況下で力を使いだしたか。
奴に力を出し惜しみする余裕など、カケラもなかったはずだ。
「……なんらかの要因が引き金となり、その力が表に出てくる――それが妥当か」
229: Deus ex machina ◆oRFbZD5WiQ 2008/01/16(水) 18:25:06 ID:b7WK90jX(10/10)調 AAS
もっとも、その『なんらかの要因』については皆目見当も付かないのだが。
ふむ、と小さく息を吐き、地面に落ちた剣を握る。
やはり、剣は光らない。
それが当然だ、というように鈍い光沢を放つそれをデイバックに仕舞いながら、最強の老人は呟いた。
螺旋遺伝子に目覚めた――と思われる――Dボゥイが使ったとき、この剣は莫大な力を発揮した。自分が握っても無反応だというのに、だ。
即ち、これは螺旋遺伝子とやらの力を伝達する、言わば砲身のようなモノだろう辺りをつけた。
もし、その仮説が正しければ、螺旋遺伝子を発現させた者はこれを扱えるという事になる。
これを扱える者に出会えば、螺旋遺伝子の解明も進み、螺旋王とやらの思惑も理解できるかもしれない。
そのために、Dボゥイで実験をしたいところだったが――追撃をかけようにも完全に見失っている。
ふむ、と小さく息を吐き、遥か遠方に視線を向ける。
そう、自分の目を焼いた光の元へ。
「デパートに行くとしよう」
あの状態だ、病院に行っているとも考えられなくもないが、そのような分かりやすい場所には逃げ込まないだろう。
ならば、少なくとも場所は確定している光の元を目指すのが利口だ。
そうと決まればここに留まる道理はない。地面を蹴り、跳躍。原型を保っていた家屋に足をのせ、リズミカルに跳んで行った。
【C-6中央部/市街地跡/一日目/夕方】
【東方不敗@機動武闘伝Gガンダム】
[状態]:全身、特に腹にダメージ。螺旋力増大?
[装備]:マスタークロス@機動武闘伝Gガンダム
[道具]:支給品一式、カリバーン@Fate/stay night
[思考]:
基本方針:ゲームに乗り、優勝する 。
1:E-6に向かい、光の原因を探る。
2:情報と考察を聞き出したうえで殺す。
3:ロージェノムと接触し、その力を見極める。
4:いずれ衝撃のアルベルトと決着をつける。
5:できればドモンを殺したくない。
※137話「くずれゆく……」以後の行動は、騒動に集まった参加者たちの観察でした。
※137話「くずれゆく……」中のキャラの行動と会話をどこまで把握しているかは不明です
※173話「REASON(前・後編)」の会話は把握しています。
※螺旋王は宇宙人で、このフィールドに集められているの異なる星々の人間という仮説を立てました。
本人も半信半疑です。
※Dボゥイのパワーアップを螺旋遺伝子によるものだと結論付けました。
※螺旋遺伝子とは、『なんらかの要因』で覚醒する力だと思っています。
※ですが、『なんらかの要因』については未だ知りません。
※視力については問題ないようです。
230: 2008/01/16(水) 19:44:58 ID:gqPFTjYx(1)調 AA×
>>1
![](/aas/anichara_1199094345_230_EFEFEF_000000_240.gif)
231(1): 2008/01/17(木) 00:22:37 ID:NcHzYtYR(1/4)調 AA×
![](/aas/anichara_1199094345_231_EFEFEF_000000_240.gif)
232(1): 2008/01/17(木) 00:34:14 ID:NcHzYtYR(2/4)調 AA×
![](/aas/anichara_1199094345_232_EFEFEF_000000_240.gif)
233: 2008/01/17(木) 00:36:15 ID:NcHzYtYR(3/4)調 AAS
でいいのか?
自分で書いててわかったが、これで成功してるところなんてたくさんあるな
234: 2008/01/17(木) 00:46:25 ID:vXU+Y9vV(1/5)調 AA×
![](/aas/anichara_1199094345_234_EFEFEF_000000_240.gif)
235: 2008/01/17(木) 00:52:04 ID:6K7bLbvP(1)調 AAS
意外にいい内容だな。。。。。
>知らないキャラを書くときは、とりあえず書いてみて後で適当に下調べをしてください。
まあ普通そうなんだけどね
236: 2008/01/17(木) 00:56:24 ID:vXU+Y9vV(2/5)調 AAS
>また、作品を撤回することはできません。。 書いたらそれまです。。。。。。
撤回するかしないかは周りが決めるんだな
237: 2008/01/17(木) 05:43:10 ID:8CufZ598(1)調 AAS
>>231
>>232
そりゃいいですね
確かにしたらばルールの裏返しはありかもしれません
あれは元々潔癖なまでに冷やかしを追い出すために作られたようなものですので
それを全く逆にした形でも結局バランスがとれてれば何をやってもいいんですよ
特に>>231の「完結に向けて決してあきらめない」とか奇麗事言ってると余計完結させたく
なくなる勢力が出てくるです。 そういうアンチを助長させるような発言はやめましょう。」は
全くその通りだと思います
ほとんどの場合、完結させたいと騒げば騒ぐほど荒れます
238(1): 2008/01/17(木) 06:05:55 ID:vXU+Y9vV(3/5)調 AAS
キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、雑談スレには色々な情報があります。
本スレだけでなく雑談スレにも目を通してね。
『展開のための展開』はNG
キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効。
携帯からPCに変えるだけでも違います。
【読み手の心得】
好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
荒らしは透明あぼーん推奨。
批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
嫌な気分になったら、「ベリーメロン〜私の心を掴んだ良いメロン〜」を見るなどして気を紛らわせましょう。「ブルァァァァ!!ブルァァァァ!!ベリーメロン!!」(ベリーメロン!!)
「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。
【議論の時の心得】
このスレでは基本的に作品投下のみを行ってください。 作品についての感想、雑談、議論は基本的にしたらばへ。
作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
【禁止事項】
一度死亡が確定したキャラの復活
大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
程度によっては議論スレで審議の対象。
時間軸を遡った話の投下
例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
話の丸投げ
後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。
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じゃあここはどうする?
239(1): 2008/01/17(木) 06:15:49 ID:VZHHMZKB(1)調 AA×
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240: 2008/01/17(木) 11:24:20 ID:cK02ous1(1)調 AAS
専用のスレたってんだからそっちでやれよ
【2ch】アニメキャラバトルロワイアル2nd【決定】
2chスレ:anichara
241: 螺旋の力に目覚めた少女 ◆10fcvoEbko 2008/01/17(木) 19:15:31 ID:dDdRsw9A(1/7)調 AAS
空間を揺らす波紋の中心で真っ直ぐに伸びた黒い剣が男の呟きと同時に風を切って勢いよく空へ吸い込まれていく。
天を破らんばかりの勢いで射出されたそれは、始めこそぐんぐんと高度を上げていたのだか、次第にその速度を落とし中空の一点で一瞬緩やかに静止したかと思うと逆回しをするかのように今度は地上へと落下をはじめた。
そして、ド派手な音を立ててコンクリの道路に盛大にぶっ刺さった、と。
気取った言い方をしてみたけど別にそんな凄いことしてる訳じゃない。
単にギルガメッシュがあのゲート・オブ・バビロンとか言う不思議アイテムでミロクを真上、つまり空に向かってぶっ飛ばしているってだけ。
何でそんなことをしているかって?あたしに聞かれても困る。
ああ、ちなみにごみ捨て場ではこれっていう発見もなく、手ぶらで戻るのもアレだったんで目についたガラクタを2、3個拾っただけで調査は終了。
それでまた移動を再開したんだけど、どあたしらが今いる場所のすぐ近くには実は高速道路が通ってたわけよ。行くとか行かないとか金ぴかが学校出るときに言ってたやつね。
当然それに気が付いた奴見ていくって言い出した。まぁそれ自体は別に問題なかった。どうせ施設を色々見て回る予定だったわけだし。
問題はその後。高速道路が目に入る位置まできたら、何を思ったのか我らの金ぴか様はふむ、と一声呟くとおもむろに地図を眺めだし、それが済むやいなや元気よくミロクを空へと打ち上げなさった。
マジ、わけわかんない。何考えてんだこいつ。
そりゃまあ、態度はでかいが頭は回るギルガメッシュのことだし、何も考えてないってことはないんでしょうよ。現に顔つきは真剣そのものだ。
だから余計に聞き出しづらい。仕方なしに、あたしは適当なとこに腰掛けてゴミ漁りに疲れた足をぷらぷらさせながらギルガメッシュの気が済むのを待っている。
つーか、基本無人だから良いけど、普通に考えたらこれとんでもない迷惑行為だろ。
何せ、あのとんでもなく重いミロクを何度も何度も飛ばしては地面に叩きつけているのだ。ミロクに傷一つつかないのはさすがだけど、地面の方はたまったもんじゃない。
既にあたしの周りの道路はひびが入っていたり塀が崩れていたりと散々な状態になってしまっている。
何も知らない人が見たら何と言うだろう。状況的に命がけの死闘でも行われたんだと思うだろうか。やたら金金した変な奴の気まぐれの結果だとは考えもしないのは確かだ。
って、危な!今落ちた場所結構近かったぞ、おい!
あたしはほんの数メートル横で土煙を上げているミロクに軽く冷や汗をかきながら、無駄に威厳たっぷりの足取りでそれを回収しにきたギルガメッシュに言った。
「ねぇ、金ぴか」
「なんだ、蜘蛛女」
このやりとりも何か定番みたいになってきたな。
まぁそれはいいとして、あたしは言葉を続ける。っても、こいつの行動が余りにも脈絡なさすぎて何から聞きゃいいんだか。
「・・・何してんの?」
ミロクを引き抜いたギルガメッシュがこちらを向いた。
手にした剣は次の瞬間には消え去っていた。自動で回収してくれるとこまで含めてこいつの宝具とか言うアイテムの能力らしい。便利なもんだ。
「これか。貴様は我が何をしているのだと思う?」
いやそんな当ててみろと言わんばかりの顔で聞かれても、ぶっちゃけそこまで興味ないって言うか。あんたのやることに一々理由考えるのも面倒くさいって言うか。
「たわけ。主の質問をそのように邪険に扱うものではないわ」
「え〜。じゃあ、お気に入りの道具が戻ってきたので大喜びで試し撃ちしまくっている、とか」
「・・・我は稚児か何かか?」
結構近い、というよりほとんどどんぴしゃだと思うけど。
242: 螺旋の力に目覚めた少女 ◆10fcvoEbko 2008/01/17(木) 19:17:02 ID:dDdRsw9A(2/7)調 AAS
ギルガメッシュはまぁよい、などと言いながら再び空中にミロクを出現させる。
しかし今度はそれをすぐに発射するようなことはせず、空中でゆらゆらと固定させるだけだった。
「そもそもだ。何故我が高速道路なぞに興味を持ったか憶えているか?」
「学校でハチマキ男が暴れてるのを見てたらあんたがいきなり行くとか言い出したんじゃない。
理由までは知らないわよ」
つい数時間前のことだ。あのときもこいつは唐突に出発を指示した。
「蜘蛛女の耳には届いておらなんだか。
奴はな、河川と高速道路がどうとか言いながらそこで我が忌々しく思っている者と遭遇したと言っていたのだ」
「ああ、なっとく」
嫌いな奴の居場所が分かったから急いで潰しに行こうとしたわけだ。そういうとこが子供っぽいんだっての。
「前にも言ったが奴の捜索自体は我にとってそれ程重要ではない。問題は場所だ。
地図を見てみよ。高速道路と河川が重なるためには、ここより更に北に行かねばならん」
「あら…ほんとだ」
確認して見ると確かにその通り。つまりギルガメッシュはあのハチマキ男の移動速度が速すぎると言っているのだ。
「で、それがどうしたの?単にあいつが凄く足が早いとか乗り物を支給されたとか、そういう理由でしょう。
そもそもアンタだってあいつの言うこと全部聞いてたわけじゃないんだし」
ギルガメッシュはあたしが話に食いついてきたのを満足するように笑った。
「そうよな。
確かにそれだけなら可能性は幾らでも考え付く。たとえ我程の才覚に恵まれぬ者であってもな。だがな、奇妙なことはもう一つある。
我はモノレールから見下ろした景色に違和感を覚えた」
「違和感?」
黙って本を読んでると思ったらちゃっかりそういうとこはチェックしてたわけか。ちなみにあたしは何の違和感も感じませんでしたが。
「人の身で察知するのは難しかろうな。それこそ死後英霊となる程の者でもなければ。
違和感の元はな、ちょうど地図で言う切れ端に当たる部分から発せられておったよ。
方角に関わらずな」
ギルガメッシュは視線を南に向け、あたしもつられてそちらを見る。って言っても今見えるのはミロクが破壊した道路くらいだ。
「つまり、この地図の切れ端の部分には何か細工がしてある、と」
「そうだ。それが何であるかはさすがに我と言えど判別できなかったがな。
だが、あの男の言葉と合わせて考えれば出てくる答えはそう多くはなかろうよ」
具体的な内容はどうあれ地図の外に逃げようとしても無理なようになってるってわけだ。念のいったことで。
けど、ここまで話を聞いてさすがにあたしもギルガメッシュが何を考えていたのか分かった。
外に逃げようとしても四方は囲まれている。それなら。
「上を目指す、ってことね」
「そういうことだ。宝具が我の手に戻ったのは好都合であった。
以後はこのようなこと一々我に説明させるのでないぞ?」
お空の向こうには何があるの、という話だ。こいつはさっきからそれを知ろうとしていたのだ。でも、端から出れないんだとしたら普通に動いてる雲とか太陽とかはどういう扱いになるんだ。
243: 螺旋の力に目覚めた少女 ◆10fcvoEbko 2008/01/17(木) 19:18:40 ID:dDdRsw9A(3/7)調 AAS
それはともかく、あれだけで理解しろって言うのは無茶だって。
言われっぱなしも癪なので皮肉を言ってやる。
「あら、じゃああたしより理解力が遥かに上の金ぴか様なら、今のでもうとっくに凄い情報を掴んでるわよねぇ?」
ちょっと昔を思い出して思いっきり神経を逆撫でするような言い方をしてやる。街でたむろしてる馬鹿な男どもならこれだけで顔を真っ赤にして怒ったもんだ。
思えばあいつらはほんとに扱いやすかったなあ。誰でもおんなじような反応返してきて。
ていうか、あたしも何が楽しくてあんな馬鹿ども相手にしてたんだろ。あれ、何か良く分からなくなってきた。
まぁ年寄りみたいな思考は置いといて、とにかくあたしの皮肉はギルガメッシュを愉快そうにくつくつと笑わせただけだった。
まぁそんなとこだろう、とは思ったけどね。
「その程度で我の気を引くことなぞできんぞ?くくっ、まあよい。
射撃の精度を保った状態で届かせられる範囲にはこれといった発見はありはせなんだよ」
機械女をいじめていたときにちらっと触れてたけど、ギルガメッシュお気に入りのゲート・オブバ・ビロンにも制限がかけられているらしい。平たく言うと思い切り飛ばそうとすればするほど狙いがぶれるようになっているそうだ。
加えて本当は結構遠くに飛ばしたものでも回収可能だったのが、近づかないと無理になってるという。
これに気づいたときのギルガメッシュの顔ときたらさぁ。我慢てもんを誰か教えてやってよ。
「つまり道路を破壊した他に特に収穫はなしと」
「現状で到達できる限界には何もなかったというだけのことよ。
飛行可能な道具でも手に入れば、どうなるかは分からんぞ?」
珍しく負け惜しみのようなことを言う。顔は相変わらず自信満々なんだけどさ。
ギルガメッシュはだめ押しのつもりか、出しっぱなしにしていたミロクをもう一度空に向かって発射した。
けどこれが良くなかった。まさか本当に落ちこんでたとは思わないけど、さっきより発射が雑になっているのは分かった。
そのせいで狙いのぶれがでちゃったのだろう、ミロクは明後日の方向に飛んでいくと少し離れたところにある民家の密集地帯に吸い込まれるように消えていった。
少し間をおいて、ずぅんという重い音が響く。
「あちゃあ。また派手にやっちゃって」
どっかの家に飛び込んだな、あれは。
「全く忌々しいものよな。我の財に手を加えるなどと」
ギルガメッシュは本当にこれでもかっていうくらい忌々しそうに舌打ちすると、己六が落ちた方向に歩き出した。
思い通りにならずにいらつくギルガメッシュをこっそり笑いながらあたしもその後に続いた。
まぁ、割かし近くに落ちただけ良かったんじゃない?
ここなら、家の中に誰か人がいるわけでもないしさ。
244: 螺旋の力に目覚めた少女 ◆10fcvoEbko 2008/01/17(木) 19:20:43 ID:dDdRsw9A(4/7)調 AAS
「もう良い」
お説教がそろそろ終わりそうになったっていうのに、尊大な男の声がわざわざ割り込んできた。
ああ、また自分は悪くないとかそういうことを言うんだろうな。けんかになるな、こりゃ。戦闘じゃなくてけんかだ。
あたしはうんざりしながら横目でギルガメッシュを見上げる。
「言い分もっともである。この娘には我が直々に良く言って聞かせる故、怒りを収めるがよい」
「はぁ!?」
ちょっと待て。なんであたしが悪いみたいな言い方になってんだ。
「まぁ…そういうことなら。あたしもちょっと言い過ぎだったわ」
あんたも納得したみたいな顔するな。あたしは何もしてない。
この問題はこれで終了みたいな空気になってる理不尽さに腹が立ち、あたしは目を尖らせてギルガメッシュを睨んだ。
するとこいつは、いかにも分かっていると言った様子で何度か頷くと、妙にいい笑顔をして言った。
「気にせずとも良い。臣下の不始末は我の目が行き届いていなかったのにも原因があろう。
我にも全く責任がないとは言わぬさ」
何ちょっと理解のある上司みたいな顔してくれてんだ。責任はお前にしかね―んだよ。
怒りと呆れを通り越した先にある良く分からない感情を持て余していると、女が張りのある声を上げ手を叩いた。
「じゃあ仲直りってことで。おかけでくさくさしてた気分が吹っ飛んじゃった。
あなたたちまさか殺しあいをしようってわけじゃないんでしょ?
だったらさ、見て欲しいものがあるんだ」
「いや、あたしはまだ納得してな…」
「ほう。よかろう、我が見るに値するものなのであろうな」
あたしの反論は好奇心の入り交じったギルガメッシュの声に遮られた。
あたしに責任を押し付けたままそいつは女の先導に従い妙にすいすいとした足取りで家の中に入っていく。
この珍しいもの好きが、と怒りも冷めやらぬままに思ったそのとき、あたしは前を歩くギルガメッシュの首元で何かがきらりと光るのを見た…ような気がした。
一瞬だったので見間違いの可能性が高いけど、あたしの目が確かならあれは…汗?
ちょっと待て冷や汗か?冷や汗かそれは?偉そうな顔で説教されながら実は内心でやっべ、どうしようとか考えてたのか?んで、あたしに全部責任なすりつけて自分はさっさと次の話題に移ったってわけですか?
何だそのこれから何が出てくるかで頭が一杯ですって顔は。ぶっ飛ばすぞ。
あぁ…何かもういいや、どうでも。
245: 螺旋の力に目覚めた少女 ◆10fcvoEbko 2008/01/17(木) 19:21:48 ID:dDdRsw9A(5/7)調 AAS
青い髪の女はアレンビー・ビアズリーと名乗った。
人探しをしていたところに襲撃を受け、仲間と探し人をまとめて殺され本人も傷を負ったので休んでいたという。
体のあちこちに治療の跡が見えるのはそのせいだったか。中々に壮絶だ。
ていうか、多分この場にいる人間は皆似たような状況なのだろう。ある意味のほほんと移動を続けているあたしらみたいなのはかなり特殊なんじゃなかろーか。
アレンビーが見て欲しいといったのは言ったのは、逃げる際に持ってきたという仲間達の支給品の山だった。
「形見みたいになっちゃったけど使わないってわけにもいかないしね。
あたしには良く分かんないのもあるし、いるものがあったら持っていきなよ」
仲間が殺されたときのことを思い出したのか、悲しげに目を伏せながら言う。
食事の後に整理をしていたという部屋に通されたあたしが最初に見たのは、床中に並べられた様々なもの中に邪魔をするかのようにそびえたつミロクの姿だった。
「あ〜あ…思った以上に派手にやってるわね」
本当に窓から飛び込んだのだろう、庭に面した窓は跡形もなく床にはガラス片が飛び散っている。
これはびっくりするわ。へたすりゃ死んでたっておかしくない。あたしなら間違いなく説教かます前に攻撃するか逃げるかしている。
だというのに、それをした張本人は全く悪びれる様子もなく並べられていた中にあった一振りの剣をしげしげと眺めている。まぁ、今更この程度のことを気にされたら逆に気持ち悪いけど。
「ほう…雑種、中々に良いものを揃えているな」
「『ザッシュ』?あたしの名前はアレンビーだって」
「ああ、雑種っていうのはこいつの国の言葉で『あなた』っていう意味だから気にしないで」
こいつの脳内にある国でだけど。余計なトラブルになるのも面倒なので適当に取り繕っておく。
まぁ分かんないのも当然か。あたしは威圧感に呑まれてすぐ字面が思い浮かんだけど、人のことを素で雑種なんて呼ぶ奴は常識人の頭には存在しない。
にしてもギルガメッシュは今持ってる剣がかなり気になるようだ。豪華な作りだし、金色がかってるから分からなくもないけど。
「どうしたの金ぴか。やけにその剣気にしてるじゃない」
あたしが言うとギルガメッシュは小馬鹿にするように鼻をならした。
「分からぬか。我のものとは数段劣るとは言え、この剣もまた宝具だ。
そしてこれはな、我が妻となるべき女が使っていたものだ」
「へ〜彼女がいるんだ。そんな大事なものあたしが持ってるわけにはいかないね。
持ってってよ」
恋愛話にアレンビーが目を輝かせる。いや、こいつと本当に結婚しようなんて女がいるとしたらそいつは天使だとあたしは思うけど、相手の人が実際どう思ってるかは分からないよ、こいつの場合。
ギルガメッシュは素直に自分に物を与えるアレンビーが気に入ったようだ。餌付けって言うんだっけ、こういうの。
「良い心がけだ。それにしても英霊がむざむざ宝具を奪われるとはな。
騎士王も高が知れるというものよ。慌てふためく様が目に浮かぶわ」
自分のことを棚に上げるとは正にこのことだ。けど、それを指摘するといきなり切れて暴れだしかねないので黙っておく。
「だが…」
ふいにギルガメッシュの目が曇った。気になることがあるらしい。
「これは…いささか雑種の手垢に汚れすぎているな。
いかなセイバーの剣と言えど、これでは使う気にならん。蜘蛛女、持っておれ」
「うわっ、いきなり投げないでよ。危ないっての。ていうかどんだけ贅沢なのあんた」
消しゴムとか一回使っただけで捨てるタイプだな。
246: 2008/01/17(木) 19:22:33 ID:sT+OdB4T(1)調 AAS
247: 螺旋の力に目覚めた少女 ◆10fcvoEbko 2008/01/17(木) 19:22:42 ID:dDdRsw9A(6/7)調 AAS
ギルガメッシュはふんと鼻を鳴らすだけで答えず、後は淡々と「貰うもの」を決めていった。
それは歯車みたいなものがついた変な機械だったり、緑色に光る石だったり、まりもみたいなものを浮かべた管だったりとギルガメッシュの趣味がとても良く反映されていた。アレンビーはそれを全て了承した。
「ナオは?何か知り合いのものとか欲しい物とかない?」
「あ、じゃあ少し食べるものを」
アレンビーに聞かれて咄嗟に答えた内容に、頭を抱えたくなる程悲しくなった。いつからこんな所帯染みちゃったんだろうなぁ、あたしは。
しかし、とさすがに変に思った。いくらなんでも初対面の相手に太っ腹すぎじゃないの。ギルガメッシュはそれが当然だと思ってるから気にしないだろうけど。
それについて聞くと、アレンビーは深刻そうな顔で奇妙なことを言った。
「うん…そうなんだけどさ。
ねぇ、あたしの仲間にさ。殺し合いなんか大嘘で、もし死んじゃっても別の場所で目覚めるだけだって言う子がいるんだけど。それってほんとだと思う?」
あれ、意外と弱々しいことを言うんだなとあたしは思った。
まぁ、仲間が無惨に殺されたばっかだっていうしそういう風に逃げたくなる気持ちは想像できなくもない。
でも答えは決まっている。現実はいつもいやなことばっかで、そんな都合のよいことが起きるなんて期待するだけ無駄なのだ。こればっかりはギルガメッシュも同意見だろう。
果たして、あたし達二人の解答は一致していた。
「そんなわけないじゃん」
「いかにも脆い雑種の考えそうなことよな。現実を見ることのできぬ大馬鹿者は放っておくが良い」
ギルガメッシュの方が数段表現はひどかったが。
あたし達の答えを聞くとアレンビーは噛み締めるように頷いて言った。
「そうだね…。あいつも一も本当に苦しそうだったし、キールだって。でも、そしたら…」
何やら真剣に考え込んでいる。アレンビーしばらくそうしていたがやがてぱっと力強く顔を上げた。
その表情は、何か強い決意に満ちているように見えた。
「ごめん。あたしもう行くよ。守ってあげなきゃいけない子がいるんだ。
持ってる物をあげたのはここから出ようとしてる人に有効に使って欲しかったから。
それじゃあ、気を付けてね」
言うと同時に素早い手つきで荷物をまとめ始める。その背中に向けて聞いた。
「行くって、どっかあてでもあんの?」
「うん、こっから南の豪華客船で…あぁ、そっかそっちの伝言もあったんだっけ」
アレンビーはあたし達に高遠遥一とか言う人物の伝言を伝え、良ければ一緒に行かないかと誘った。
脱出を目指す希望の船とかいう名前の集団らしい。希望の船。希望の船ねぇ。
はい、答えは決まってますよ。そりゃもちろん。
「行かない。うさんくさいし」
「行かぬ。群れるのは雑種だけでしておれ」
あたし達の返事を聞いてアレンビーはそう言うと思った、と笑った。
「でもこっちは信用できると思うよ?戦うつもりがないならその内会うかもね。それじゃ」
「待て」
颯爽と駆け出そうとしたアレンビーをギルガメッシュが止めた。なに、と振り返る。
そしてギルガメッシュは、かつてない程に衝撃的で、余りにも予想外な、あたしの人生観を根底から覆すようなことを言った。
248: 螺旋の力に目覚めた少女 ◆10fcvoEbko 2008/01/17(木) 19:23:34 ID:dDdRsw9A(7/7)調 AAS
「献上品中々の質であった。褒美をとらせる。望みの物を言ってみよ」
「えぇえ!?」
素で絶叫してしまったあたしを責められる者はいないだろう。ギルガメッシュのうるさそうな視線も気にならない。
「何を驚いておるか。
礼節を知るものに相応の返礼もできぬようでは、王としての器を疑われるのだぞ」
「え…あ、いや…なんていうか…………えぇえ!?」
間違いなく歴史的な瞬間に立ち会っている。あたしはそう思った。
幸いアレンビーが返事を考える間にあたしは冷静さを取り戻すことができた。つまり、アレンビーは結構な時間悩んでいた。
「別にお礼が欲しかった訳じゃないし…欲しいものって言われても…そうだ!
フラフープか新体操用のリボンみたいな形の武器って持ってない?」
いやそんなの持ってるわけないって。何でそんなの欲しがる。
「ふむ。我の宝物庫を開けば出てもこようが、忌々しいことに今は開くことができぬ」
あんのかよ。
アレンビーは余り期待はしていなかったようで、それ程落ち込んだ様子もなかった。
でもまぁ、ギルガメッシュじゃないけど、本当にギルガメッシュじゃないけど、親切心でこれだけ気前よく物をくれた人に何もなしというのは、まぁ気が引けないでもない。
そのとき、あたしは学校で拾ったでかい十字架のことを思い出した。
「ねぇ、金ぴか。あれあげたら?ほら学校にあったやつ。
何かすごいもん見たいに言ってたじゃない」
「あれか。ヒトという種が所有するには最上級の兵装かも知れぬがな」
「ああ、それでいいよ。せっかくの気持ちなのに、何も受け取らないのも悪いしね」
アレンビーはそう言って、あたしが苦労して取り出した人間程もある大きさの十字架を軽々と持ち上げた。何だ、やっぱり生き残る人っていうのはそれなりの理由があるもんなのね。
そうして、アレンビーは振り回すのにちょうどいいと十字架を持ったまま、今度こそ立ち去ろうとする。
「待て、最後にもう一つ尋ねる」
しかし、アレンビーの足は待たしてもギルガメッシュの声に止められた。
ただ、今度の言葉の内容ははさっきの何かとは比べ物にならないくらい小さく、すぐに忘
れてしまいそうなくらい細かいものだった。
多分言った本人も単なる気紛れで、深い意味もなく言ってみただけというのが正解だろう。
ギルガメッシュが言ったのは、そんな程度の言葉だった。
「放送で言っておった“螺旋の力に目覚めた少女”について、知っていることはないか?」
アレンビーはしばらく考える仕種をした後に、変わらない快活な声で言った。
「知らない。言われてみると、何のことかしらね」
【D-3中部/民家/1日目-夕方】
【ギルガメッシュ@Fate/stay night】
[状態]:健康
[装備]:王の財宝@Fate/stay night 黄金の鎧@Fate/stay night
[道具]:支給品一式 ミロク@舞-HiME シェスカの全蔵書(1/2)@鋼の錬金術師 首輪 (クアットロ)
[思考]
基本思考:打倒、螺旋王ロージェノム。【乖離剣エア】【天の鎖】の入手。
0:ふむ。そうか。
1:異世界の情報、宝具、またはそれに順ずる道具を集める(エレメントに興味)。
2:出会えば衛宮士郎を殺す。具体的な目的地のキーワードは【高速道路】【河川】 。
3:“螺旋の力に目覚めた少女”に興味。
4:目障りな雑種は叩き切る(特にドモンに不快感)
※地図の端と上空に何か細工があると考えています。
※エクスカリバーを使う気は余りない
249: 2008/01/17(木) 21:05:29 ID:XD2NwOPh(1)調 AAS
>>239
そこについてはどうやって決めたのかも謎なんだわ
過去ログ議論が探したけど無い
どうやってやったのかすっぱりわからん
証拠隠滅に走られたっぽい
250: 2008/01/17(木) 21:21:54 ID:NcHzYtYR(4/4)調 AAS
そもそも誰のセンス?これ
251: 2008/01/17(木) 21:28:01 ID:Ycz8TUzO(1)調 AAS
嫌な気分になったら、「ベリーメロン〜私の心を掴んだ良いメロン〜」を見るなどして気を紛らわせましょう。「ブルァァァァ!!ブルァァァァ!!ベリーメロン!!」(ベリーメロン!!)
「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
ここらへん見る限り、ただのガッシュ厨じゃないかとは思ふ
252: 2008/01/17(木) 21:33:18 ID:vXU+Y9vV(4/5)調 AAS
そこってずっと話に出てるけど、とどのつまり特定作品の擁護じゃないの?
アニキャラ総合板にはいろんなアニメがあるんだから
特定のアニメのネタを振るのは公平性に欠けるだろ
そこで無理やりガッシュベルを選ぶ理由も無いし
253: 2008/01/17(木) 21:40:16 ID:pppJfh7y(1)調 AAS
>>238の
話の丸投げ
後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。
ここもおかしいぞ
したらばルールでは最初から
「脱出者」と「ゲーム参加者」以外の選択無いじゃん?
そもそもその時点で「はじめから適当な話の骨子だけを投下」してるんだよ
しかも故意的に。
あとフラグというのは「はじめから適当な話の骨子だけ投下」と同じじゃん
254: 2008/01/17(木) 21:59:54 ID:YXUxJC+n(1)調 AAS
>したらばルールでは最初から
>「脱出者」と「ゲーム参加者」以外の選択無いじゃん?
それ以外に選択あるのか?
255(1): 2008/01/17(木) 22:17:09 ID:vXU+Y9vV(5/5)調 AAS
「脱出」「優勝」
したらばが認めてるのはこのエンドだけでそれ以外を潰しにかかってる
※そしてこの脱出か優勝以外の選択を出さないように書き手を送り込んで仕向けている
で、実際にそれ以外で各地のバトロワスレで提唱されてるのが
1:ゲームそのものを中止に追い込む
バトル・ロワイアル開催地の外を中から動かして
ゲームそのものを何らかの理由で中止に追い込まざるをえないように仕向ける
(主催者側で反乱を起こさせる等)
2:主催者がいない
そもそも最初から主催者がいないので主催者が倒せない
(抵抗不可能な自然の力で自動的にバトロワをせざるを得ない環境におく)
3:和解
主催者を降伏させる
4:主催者も被害者(バトルロワイアルを行わなければ自分も死ぬ等)
まだあるかもしれないが
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
まあ、色々あるけど要するに
いままでに無いような形のものを生み出そうとしてバトロワの住人が四苦八苦してる
だからバトルロワイアルという骨子はそのままにさまざまな改革案は出てるんだけど
それをしたらばの頭の固い連中が「バトロワとはこうだ!」という思い込みが強すぎて
その自分達の意見に従えない奴等を荒らし扱いして妨害してるだけなんだよね
※CGIバトルロワイアルなんてまさにその典型
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
256: 2008/01/17(木) 22:24:32 ID:vONUaEZ7(1)調 AAS
バトロワはSSでないといけないとか、
40KB以上ないといけないとか
いつだれがそんな事決めたんだろうな
って考えると
したらばなんだよな
要はそれだけのSSをかけない人間を放逐してるということに気がついてない
奴ら自身の手で参加者を制限してるんだ。
だからどうすればバトロワが発展するのかというと、
バトロワ改革の抵抗勢力であるしたらばとそのルールを潰せばバトロワは発展する
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
という事になる。一回、誰もが参加できる参加しやすい状態に戻さないといけないと思う。
だから、バトロワ発展のためには、したらばルールを全否定しろ
これしかない
257(1): 2008/01/18(金) 20:04:53 ID:L0sss/q3(1)調 AA×
![](/aas/anichara_1199094345_257_EFEFEF_000000_240.gif)
258: 2008/01/18(金) 23:41:28 ID:njmISmp3(1)調 AAS
奴等は潔癖過ぎる上にわがままだからな
キャプテンだってあいつらが何もしなけりゃ何もおきてなかったようなもんだ
キャプテンがSS撤回したいと言ったら撤回させてりゃよかったんだ
キャプテンが著作権者なんだからキャプテンの言うとおりにすれば何の問題もなかった
それを頑としてはねつけてキャプテンを荒らし扱いしたのはほかでもないしたらばのdionとかじゃないか
259: 2008/01/19(土) 15:49:40 ID:xON1k9dN(1/2)調 AAS
>>255
ん〜、1と3は結局脱出にならんのか?それに降伏は和解とは言わんだろう。2は優勝エンドになるだろうし。
>>257も3と5はSS方式関係ないしさ。
てかここでウダウダやってるよりやる気あるならこっちを進めようぜ。こっちでそれらの意見取り入れて始めよう。
外部リンク:c-au4.2ch.net
260(1): 2008/01/19(土) 17:06:06 ID:uEtGVbqs(1)調 AAS
そっちで始めたければおまいだけ始めればいいだろう
そんな話全く出てないんだからな
261: 2008/01/19(土) 23:58:16 ID:xON1k9dN(2/2)調 AAS
>>260
したらばとは別にやりたくて話してんじゃないのか。そんな話出てないってんなら何の為にこんなグチャグチャやってんだか分からんな。
262: 2008/01/20(日) 00:04:57 ID:l7+5NqdJ(1)調 AAS
したらばが勝手にうちの名称使ってるから仕方ございません。
はっきり言ってしたらばさんに出て行ってもらえればそれで結構です
ウチから出て行く筋合いは無い
263(1): 2008/01/20(日) 00:06:32 ID:/tCIT1jP(1)調 AAS
スレ進行を邪魔するのが目的だからでしょ。
発言内容にぴったりな場所があるのに、そこに行かない理由なんて。
名前も企画内容も要求どおりのスレがあるのに、それを無視して粘着を続けてるんだから。
2chスレ:anichara
264: 2008/01/20(日) 00:09:10 ID:ipL58r/o(1)調 AAS
母屋を奪っておいてシベリアに引っ越せとでもいうようなメチャクチャ糞な発言ですな
265: 2008/01/20(日) 00:11:38 ID:zwns2yNt(1)調 AAS
天下一級のずうずうしさだな
粘着してるのどっちだよ
266: 2008/01/20(日) 00:14:01 ID:7cu07TSc(1)調 AAS
>>263>>263
何度でも言うが
出て行く義理は無い
おまいが出てけ
267(1): 2008/01/20(日) 01:29:22 ID:GK05Kp/u(1/2)調 AAS
まあしたらば側に出てけ云々言うのは性に合わんから俺は言わん。
だが2ch側の議論が全く進まんのは問題だろう。未だにしたらばのテンプレにいちゃもんつけて何もしてないのは2ch側はやる気ないと思われて粘着言われても仕方ないと思うんだがな。
268(1): 2008/01/20(日) 01:47:05 ID:K8F7xmKg(1)調 AAS
>>267
お前な、すぐ上にも出てるだろ?
何で態々ご丁寧に反応して構ってチャンを付け上がらせてくれますか?
269: 2008/01/20(日) 03:11:38 ID:GK05Kp/u(2/2)調 AAS
>>268
すまなかった。
270: 2008/01/26(土) 17:18:43 ID:4fFjfHHv(1)調 AAS
しかし本当に誰も書き込まないな
271: 2008/01/26(土) 18:39:18 ID:HVUV5oIl(1)調 AAS
したらばはついにおおっぴらに大量虐殺を開始したらしい
272: 2008/01/26(土) 19:05:30 ID:Q3VgMMO+(1)調 AAS
ああ、見たが、もう◆B0yhIEaBOIのお気に入りしか残してないじゃんwww
新規ミナゴロCワロスwwwwwww
273: 2008/01/26(土) 19:13:16 ID:V4aPwpOa(1)調 AAS
完全に企画を私物化したなあいつ
追放は正解だったというわけか
274: 二人がここにいる不思議(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/27(日) 01:25:29 ID:gFGPUmTf(1/20)調 AAS
西方から来る夕焼けが、ギルガメッシュと結城奈緒の影を朦朧とけぶるように見せる午後の街道。
アレンビー・ビアズリーが南へ向かうのを目に焼き残し、数瞬後には何事もなかったかのように羽を伸ばす二人。
「――んで、次はどこへ行く?」
「そうだな――」
珍妙な出会いから、もうすぐ丸一日が経過しようとしていた。
当初はデコボココンビという称号がこれ以上ないほど当てはまっていた二人だったが、現在の姿にその面影は微塵もない。
長年連れ添った夫婦のような、本人たちが意識しなくとも波長を合わせられる、奇妙とも言える息の合いようだった。
金ぴかの鎧を着こんで、左眼の単眼鏡を律儀に付けたまま、二人きりの旅道中はまだまだ続く。
怪しげな神父、鉢巻きの武闘家、怯える戦闘機人、青い髪のガンダムファイター、誰もが崩せなかった絶対の関係。
それは愛や友情とは勘違いもできないほどの特殊な間柄であったが、絆が混在していたことは、誰もが否定しない。
いったいこの関係は、いつまで続くのだろうか――? いつしか、そんな疑問も抱かなくなっていた。
心も、考え方すらも、自然に。
そんなときだった。
「待てい!」
男と女、王と臣下、金ぴかと蜘蛛女――ギルガメッシュと結城奈緒。
二人の前に、二人と同様に特殊な関係を築いている、男女が現れたのは。
◇ ◇ ◇
275: 2008/01/27(日) 01:26:07 ID:WF7Jinds(1/4)調 AAS
なんか来たよまた
276: 二人がここにいる不思議(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/27(日) 01:27:09 ID:gFGPUmTf(2/20)調 AAS
楼閣のように聳え立つ、一軒の民家。
広々としたバルコニーが備え付けられている三階建ての家屋は、隣接する家屋の様子を見ても、上流家庭の住まいであることが窺えた。
その、頂上。天守閣を思わせる高所から、腕組みをしながら直下の二人を睥睨する二人がいる。
見下ろされる二人――ギルガメッシュと結城奈緒は、夕日を背負う二人組に、嫌悪感を含む顰め面を浴びせた。
見下ろす二人――黒いスーツを着込んだ壮年の男と、ツインテールを風に揺らす少女は、それを意にも関さない。
屋根の上に仁王立つ二人組、その男のほうが、声をかけた側として本題を発問する。
「ワシの名は“衝撃の”アルベルト。こちらの娘は“不死身の”柊かがみ。訳あって行動を共にしておる。
貴様ら二人を呼び止めたのは他でもない。どうやらこの殺し合いに異を唱える者であるようだが――」
「気に入らんな」
自己紹介から入った男――衝撃のアルベルトの言葉を、ギルガメッシュは怒気混じりの声で遮った。
「出会い頭にこの我を見下ろす姿勢、無礼などという度合いではない。
ついでに言えばその偉ぶった語調も気に食わん。まずは地に降り、頭を下げるのが礼儀であろう?」
首を後ろに傾け、顎を上方に逸らし、天を仰ぐという為様が、なによりギルガメッシュにとっては屈辱的だった。
古来より、王とは民衆の上に席を置くものである。
民は誰よりも高い位置に在る王を見失わぬように、王はより多くの民を見渡せるように、高低の関係を不動のものとしてきた。
遥か古代に王を務めたギルガメッシュとて、その風習が確立するよりも後の人生を生きた者である。
染み付いた慣例は、感情を刺激するほどの性格へと浸透し、怒りを生み出した。
「あー……あのさオジサン。とりあえずそこ、降りない? 意味もなく高いところに上りたがるなんて、馬鹿のすることよ?」
これまで行動を共にしてきた経験則から学び、ギルガメッシュをこれ以上刺激しない術として、奈緒は穏便に事を運ぼうとする。
「馬鹿と煙は高いところが好き、とはよく言ったものだがな。なに、意味もなくここに立っているわけではない。
高所から他者を見下ろすというのはなかなかに気分がいいものでな。そこに頭の出来不出来は関係ないのだよ」
言って葉巻を吸うアルベルト。その傲岸不遜な佇まいに、反省の色や自粛の気配は欠片も感じられない。
あまりの態度に、ギルガメッシュは苛立ちを増し、釣られるように奈緒も眉を寄せた。
「それに、地を歩くのも面倒なのでな。この世界は常在戦場、そこで整地された道をふらつくなど愚の骨頂よ。
もっともワシのように、狙われにくい高所を移動する術を持ち合わせるか、狙われることを意に関さぬほどの実力があるなら話は別だがな」
煙を吐き出し、また葉巻を咥える。
「貴様ら二人はそのどちらでもあるまい。大方、自分たちが襲撃されるなどとは夢にも思わぬ浮ついた心でいるのか。
もしくはそうだな、この舞台をなにかの催しだと勘違い、いや、浸っている夢想人か――」
語る途中、アルベルトの眼下から一振りの剣が投げ出された。
大砲のような勢いで直線状に伸びる刃を、アルベルトはしかし慌てず、端にいたかがみを抱えて跳び避ける。
アルベルトの足先を狙って放たれた剣はバルコニーの足場を粉砕し、その場に僅かな灰色の雨が舞った。
無礼な言動に怒りを覚え、ついには限界を超え行使された、ギルガメッシュの攻撃――『王の財宝』による巳六射出。
アルベルトはそれを予期していたかのように避け、元の足場を崩されたことにより地に降り立つ。
初対面、出会ったまだ数十秒足らず、にも関わらずの攻撃に、奈緒は驚きこそすれど叱りつけたりはしなかった。
アルベルトに怒りを覚えていたのは彼女も同様であり、またギルガメッシュが黙っているような口もないと知っていたからである。
「――フン。名を名乗るよりもまず仕掛けてくるとは。よほどしつけのなっていない駄犬と見える」
「吼えるなよ、雑種。貴様の思惑、この我が見透かしていないとでも思うてか?」
ギルガメッシュの不意打ちに合いなお葉巻を咥えたままのアルベルトは、小脇に抱えたかがみを下ろし言う。
277: 2008/01/27(日) 01:28:14 ID:xcCnW1q0(1/5)調 AAS
278: 二人がここにいる不思議(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/27(日) 01:28:45 ID:gFGPUmTf(3/20)調 AAS
「ほう、貴様のような若造にこのワシの胸中が読めるとな?」
「ふん。貴様が無礼者であることには変わりないがな、我の怒りを誘い、隙を探ろうとしているのは見え見えよ。
狡い手だ。そちらの女も含め、とても手を取り合うべく声をかけたとは思えんな。
大方、利害が一致しただけの一時的な関係……我を狙ったのは、財目当ての愚挙か」
「はずれだ阿呆め。我らの目的は一つ――螺旋王へ至る道、そのための情報入手よ」
壊れかけの戦闘機人に向けた情け容赦ない殺意を幾時かぶりに再燃し、ギルガメッシュは歯軋りした。
それを嘲笑うかのように、アルベルトは余裕ぶった所作でまた煙を吐き捨てる。
「貴様らとて、この一日を指針もなく周旋していたわけではあるまい。ワシが欲するはその成果よ」
「ハァ? それってつまりは、ここから脱出したいってことじゃないの?」
アルベルトの言葉に険しい表情を作るギルガメッシュの横、奈緒が常人としての解釈を疑問に乗せる。
「ふむ。八割は正解と言っておこう。ただし、それは貴様のような小娘が考えつく平和的解決策ではない。
要点は二つ――螺旋王との接触、ワシとここにいる柊かがみの生還。他の者がどうなろうが知ったことではない。
優勝という手段でもいいのだが、定員が一名のみとあってはな。他の方法、つまりは脱出策を模索するしかあるまい」
「って、ちょっとあんた! なにべらべらと本音喋っちゃってんのよ!」
腹の底に蹲る野心、自己中心的なプランを惜しげもなく公表するアルベルトに、隣の柊かがみは声を荒げた。
「なに、この男は虚言が通じる相手ではなさそうなのでな。
かといって懇切丁寧に協定を申し出たところで、聞き入れはせんだろう。
ゆえに、ワシは本音を語るのみだ。我らが野望のため、礎になれとな――」
咥えていた葉巻を教鞭のように突きつけ、アルベルトはギルガメッシュと奈緒の返答を待つ。
即答はない。が、その表情は見るだけで心中が悟れるほど、不快に歪んでいた。
「……要するに、利用されろってこと? はっ、冗談。オッサン、あたしたちをなめすぎなんじゃない?」
「……無礼者ではなく愚者の類であったか。我の持つ万物、全てがそれ即ち財。知識とて例外ではないと知れ」
「返答はノーということか」
「無論だ」
譲歩はなく、また交渉の余地もない。完璧なる拒絶が、各組の間に走った。
ただし話はそれで終わらず、今までの不敬を清算せんとばかり、ギルガメッシュは鍵剣を構え、
「よかろう――ならば、決闘だ」
アルベルトの思わぬ発案により、一時的に戦意を抑制させられた。
「この世の理はどこも等しく皆力よ。この殺し合いとて、異郷の者も多勢のようだがそれは変わるまい。
ならば潔く力で決着をつけようではないか。ワシと貴様が戦い、勝者が敗者を従える。そういう条件のな」
「……オッサンが勝ったら、あたしたちはオッサンの下僕になるわけだ。でも、金ぴかはそんな生易しい性格してないと思うけど」
「無論だ。我は雑種を飼い慣らす趣味など持ち合わせてはいない。敗者に振るものなど、死以外にはありえんと心得よ」
「フン。先ほども言ったとおり、ワシが欲するは情報であって貴様らの命ではない。
貴様が勝ってワシをどうにかするのは自由だがな、ワシが勝った場合、貴様は真に犬へと成り下がると思え」
両組を隔てていた威圧感という名の壁が、一時的に崩れる。
両端には、構えを作る二人の男が。
「さぁ、返答を聞こうではないか“金ぴか”とやら!」
「答えるまでもない。そして知れ、我の名は金ぴかではなく“英雄王”ギルガメッシュだ!」
こうして、戦鐘は鳴らされた――前兆はなく、唐突に、しかしこの世界の理に適った始まりだった。
◇ ◇ ◇
279: 二人がここにいる不思議(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/27(日) 01:31:33 ID:gFGPUmTf(4/20)調 AAS
発端は、天へと昇っていく剣だった。
謎の爆発音を耳にし、柊かがみと衝撃のアルベルトが駆けつけた先、そこにはもう、戦闘の跡しか残されていなかった。
未知なる超技術を持つ螺旋王を『喰らい』、ひいては宿敵である神行太保・戴宗と決着をつける。
アルベルトの目的を理解し、互いに利用し合うという名目で協定を結んだかがみは、まず他の参加者と接触することが第一だと考えた。
アルベルトの戦闘能力が一級品なのは既に承知の上だが、超戦闘力も、不死の力も、実のところなんの解決策にもなりはしない。
螺旋王を喰らうチャンス……イコール、この会場からの脱出。それには、第三者の協力が必須条件だった。
あてにしていたレーダーを失い、すぐ近くで起こっていた戦闘にも遅れてしまった失策、それを踏まえれば、天に舞い上がる剣は一筋の光明に思えた。
だが、物事はそう上手くは進まない。
――『あれは駄目だな。とてもワシらの申し出を受けるような輩には思えん』
とは、先立って剣の打ち上げ地点に偵察に出たアルベルトの言だ。
彼曰く、そこにいたのは黄金の鎧を纏った偉そうな男と、かがみよりも年下であろう女学生の二人。
どうやら彼らも脱出を志しているらしいことが会話から窺えたが、アルベルトが見るに、男の性格にかなり問題があるようだった。
――『ワシらが求めるは、より堅実な利益を齎してくれる者よ。志しが同じだけでは意味がない。ワシらは慈善事業をしているわけではないからな』
ただ脱出を願っているだけで、殺し合いに否定的な人間など論外。行動を共にしたところで、お守りに回されるのがオチだ。
反抗の意志だけでなく、結果を出せる人材が必要。そういう点ではギルガメッシュたちも辛うじて合格点を与えられたが、
――『問題なのは協調性だ。よいかかがみよ、ワシらが求めるは“駒”であって“仲間”ではない。ゆえに、ワシは奴を選定する』
使えるか、否か。まずは駄目元、会話での同調を求め、不可能ならば決闘を行使。
――『勝敗が決し、奴がワシに従うようならそれで良し。誓いを反故してでも自尊心を守ろうと言うのなら――』
そこから先の言葉は、今でも鮮明に覚えている。
しかしかがみは、願わくばそうなってほしくはないものだ、と心の隅で願望を抱いていた。
――『ワシが負ける可能性? 万に一つもありえんな。衝撃の二つ名の意味をよく考えるがいい』
関西弁の銃士を容易く退けた手腕は、きっとアルベルトにとっては児戯のようなものなのだろう。
全力で戦えば、おそらくアームスレイブすらも粉砕できる。生身でもロボットに渡り合えると、直感していた。
(仲良くみんなで手を取り合って……っていうのは、無理な話なのよね。もう)
戦端が開かれてから、アルベルトとギルガメッシュの二人はあっという間にどこかへ走り去ってしまった。
奈緒と共に残されたかがみは、接触前の算段を思い起こし、そして逡巡する。
手はずどおりに事が進んだ場合、残った女学生のほうは“不死身の”柊かがみに任せると――アルベルトはそう言っていた。
(もしアルベルトが勝って、あの金ぴかの人が負けたとしたら、この子どうするのかな?)
任せると一言で言われても、かがみにはどうすればいいのか検討もつかない。
大人しく待っているべきなのか、それともしつこく共闘を求めてみるか、争い以外の道はないのか、などと。
そんな平和的解決方法に縋ろうとしている自分がいて、そのことにハッと気づいて、腹が立った。
(なに言ってんのよ私……! 私は螺旋王を喰って願いを叶える……つかさやこなたを……こいつらだって!)
自分がどう立ち回ればいいのか、どうすればより早く螺旋王に近づけるのか、選択肢はアルベルトに委ねた。
なら、
280: 2008/01/27(日) 01:32:58 ID:LszLhmNN(1/11)調 AAS
281: 二人がここにいる不思議(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/27(日) 01:33:05 ID:gFGPUmTf(5/20)調 AAS
「……で、あたしらはどうする?」
黙りこくったまま思考を続けるかがみに、奈緒が面倒くさそうな顔で声をかけた。
「どうするって、それは……その……」
「……ふーん。なんか、あんたはあのオッサンのやり口に納得いってない風じゃん。
ま、あたしはどうでもいいんだけどね。金ぴかが負けるとも思えないし。
って言っても終わるまで暇だし、あんたらは個人的にムカツクし、どうする? ……バトる?」
まだ幼さの残る声に妖艶な気配を纏わせて、奈緒はにんまりと笑う。
その手にはいつの間にか鉤爪のようなものが装着されており、穏やかな物言いとは裏腹な戦意が滲み出ていた。
自分で言うからには、腕に自信があるのだろう。そして、かがみの実力を自分よりも低く見ているに違いない。
――ああ、なるほど。こいつもこいつで協調性なさそうだな。
とかがみは感じ、僅かな怒りを覚えつつ言う。
「……あなた、歳いくつ?」
「は? 14だけど」
「そう。ちなみに私は18。こんなとこで言うのもなんだけど、年上には――」
「ハァ〜? 知るかっつーの。ってかなに、あんた高三? 見えねぇ〜」
わかりやすい挑発に、しかしかがみは流そうとはせず、そのまま形で受け取った。
これならば、先輩として後輩に教育的指導を、と解釈することも可能だ。
名目が変われば、覚悟の仕方もいくらか変わる。
従わないのなら、力ずくで従える――そんなダークヒーローみたいなやり方を。
「いいわ、やってやろうじゃない」
「は?」
「目にもの見せてやる、って言ってんのよ」
まさか乗ってくるとは思っていなかったのだろう、奈緒はキョトンとした顔つきで、かがみの睨むような目つきを見た。
それに動揺した様子はない。むしろ苦笑を抑えるかのような表情で、「おもしろいじゃん」とだけ発する。
そうして、こちらのほうでも戦鐘は鳴った――付き従う者同士、主人たちとは別の場で。
◇ ◇ ◇
282: 2008/01/27(日) 01:33:49 ID:LszLhmNN(2/11)調 AAS
283: 2008/01/27(日) 01:34:16 ID:xcCnW1q0(2/5)調 AAS
284: 二人がここにいる不思議(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/27(日) 01:35:54 ID:gFGPUmTf(6/20)調 AAS
螺旋状の柱によって支えられた荘厳なハイウェイを背景に、二人の男が踊り狂う。
互いに無手、しかし得物の必要性を感じさせないほどの凄まじい拳打を打ち合いながら、移動と交錯を繰り返している。
そしてやって来た先、殴り合いをするには十分な広間へと、戦いながら侵入した。
「――づえええぇいっ!」
気合一声、衝撃のアルベルトがギルガメッシュの胸元目掛け蹴りを放つ。
しかしその蹴りは、纏われた頑強な装甲板に弾かれ、虚しく音を鳴らす。
威力を削がれ弾かれた蹴りはただの足へと成り下がり、格好の弱所としてギルガメッシュの目に入った。
宙に舞うアルベルトの脚部を掴み、僅かな力を込めて振る。アルベルトはいとも簡単に体勢を崩した。
否、『ギルガメッシュにとっては』の話。
人間を超越した存在――英霊、またはサーヴァントと呼ばれる存在である彼にとって、これしきの肉体動作はさして難儀でもない。
がら空きになったボディへ向け、ギルガメッシュが片方の腕を軽く薙ぐ。
ぶつかり、たったそれだけで、アルベルトの脆弱な体は吹き飛んだ。
――これが、覆せぬ力の差である。
人間というモデルは同じでありながら、種の違いが生み出す決定的戦力差が、早くも露呈しつつあった。
当のアルベルトもギルガメッシュがただの人間であると思っていたのか、面食らった表情をしている。
とはいえ、あれだけ偉そうな口を叩き挑みかかってきた人間だ。それなりには腕に覚えがあるのだろう。
ギルガメッシュの攻撃に怯みこそすれど、完全に倒れはしない。なおも向きなおってくる。
「クク、ククク……」
その様が実に滑稽で、惨めで、無様で、笑いを誘う。
「ちぃぃ……なめるなよ若造がああああぁぁぁ!!」
勇ましく突進してきたところで、結果は変わらぬというのに。
ギルガメッシュは俯き気味に失笑を漏らし、その間、隙が生まれた。
防御も回避も取らないギルガメッシュの顔面へ、アルベルトが渾身の拳打を打ち込む。
拳がギルガメッシュの頬を抉り、顔の向きを変え、打撃音が鳴るが、
「ぬぅ!?」
変わらない。なにも。
ギルガメッシュの笑みも、態度も、力の差も、戦況も――なにも変わりはしない。
たった一撃の渾身など、ギルガメッシュにとっては蚤に齧られたようなものだった。
「……この程度か、雑種? せっかく貴様に合わせ拳闘士の真似事なぞ興じてやったというのに……甚だ期待外れだ。
よいか? 拳とはこのような脆弱ものを言うのではない。貴様のそれは、ただ五指を握り合わせただけの贋物よ。
教授してやるから心して見よ。拳とはこう作り……」
アルベルトの身を眼前に置いたまま、ギルガメッシュは肘を引き、五指を畳み、握力を集中させ、
「……こう打つのだ!」
棒立ちの敵へと、叩き込んだ。
めしり、という瞬間的な破砕音が響き、アルベルトは抗うこともできないまま衝撃にのまれた。
まるで機関車にでも撥ね飛ばされたかのように回り、転げ、粉塵を纏いながら路上を滑っていく。
勢いが衰え止まる頃には、ギルガメッシュとの間に十メートル近い距離が生まれていた。
衝撃がやみ、どこからか吹き込んできた風が静寂を告げても、アルベルトが這い上がることはない。
仰向けの状態で、大の字に倒れていた。
285: 2008/01/27(日) 01:36:06 ID:LszLhmNN(3/11)調 AAS
286: 二人がここにいる不思議(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/27(日) 01:37:07 ID:gFGPUmTf(7/20)調 AAS
「どうだ? これが真なる拳というものよ。学習したなら活かせよ――来世でな」
ギルガメッシュは、遊んでいた。
決闘などという大そうな名目で始まった戦いに、童心を持ち出し、楽しむかのように興じていた。
決闘などというのは、多くの王にとって児戯のようなものでしかない。
怒り、憎しみ、恐れ――そういった戦意の元となる負の感情に流されるようでは、ましてや数多いる雑種に戦才で劣るようでは、王は務まらないからだ。
王が闘争に身を置くとすれば、それは己の財と覇権がかかったときのみ。
ゆえに、これは児戯なのだ。己の尊厳を懸けはしても、結果自体はわかりきった勝負。そこに真剣みが混ざるはずもない。
だからこそ闘争に愉悦を求め、遊び心を加える。そうさせるほどの余裕が、王という存在の中で確立しているから。
「……つまらん」
愉悦に浸るギルガメッシュの視界、不快な映像が目に入った。
仰向けに倒れた衝撃のアルベルト、その右腕がいそいそと動き、胸ポケットから一本の葉巻を取り出す。
体の状態をそのままに着火し、口に咥え、吸引し出した。
天を仰ぎながら、苦痛の混在しない穏やかな声で言う。
「英雄王よ、貴様には背負うものがあるか?」
目も合わせず、天を向いたままの状態で、アルベルトは質問した。
その、敗北者としては類を見ない行動に感心を抱いたギルガメッシュは、今は無礼を不問にして会話を合わせる。
「背負うもの、だと?」
「家族でも、職務でも、なんならあの女でもいい。あるなら言ってみろ」
それは王位に就く者にとって、なんとも馬鹿げた問いだった。
「なにをたわけたことを。我は王なるぞ? 王が背負いしものといえば国、そしてそこに住まう民に決まっておろう。
ナオは我の忠実なる臣下の一人よ。それ以上でもそれ以下でもない。さて、世迷いごとは済んだか?」
一時の感心を胸に秘め、はっはとギルガメッシュが小気味良く笑う。
「なるほどな」
意味があるのかも怪しい問答、死を目前にした者の戯言であろうそれを終え、アルベルトはまだ黙らない。
「やはり違うな……戴宗とは。貴様との戦いには、滾るものがない」
「……雑種、なにが言いたい?」
「さっき言ったとおりだ。つまらん――貴様と拳を交えること自体が、つまらんと言っている」
人間、我の強い者であれば、死の直前まで敵に歯向かおうとすることもままある。
それら戦士の気概を持ち合わせた者は賛嘆に値する大馬鹿者であるが、この男はどこか違う。
死を前にしても余裕を保ち、まるで死を回避できたと思いこんでいるように、眼前の死を否定している。
なんだ、ただの気狂いか――そこまで理解し、ギルガメッシュは、
「クックック」
堪えきれず、爆笑を漏らした。
「クッ……ハハハハハハハハハハハハハハハ! そうか、つまらんか! 我を笑い殺そうとしてよく言う!
……が、そうだな。我も貴様の児戯につき合うのは辟易してきたところだ。終幕にしよう」
無邪気な笑いをあげたのは一瞬。一拍置いた次には、決闘の終焉を見届けるための冷淡な顔つきに変わっていた。
宝具『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を取り出し、アルベルトに向けて翳す。
287: 2008/01/27(日) 01:37:45 ID:xcCnW1q0(3/5)調 AAS
288: 2008/01/27(日) 01:37:49 ID:LszLhmNN(4/11)調 AAS
289: 二人がここにいる不思議(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/27(日) 01:39:58 ID:gFGPUmTf(8/20)調 AAS
「―――――王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」
間断なく、真名を解放。
路上に寝そべるアルベルト、その上空に、無数の黒点が囲うように現れる。
数にして三十二。宝物庫へと繋がる異次元の扉が、直下のアルベルトを三十二の瞳で睨みつけた。
じわり、じわりと、焦らすようなスローペースで顔を出したのは――数十冊にも及ぶ書物の群れ。
「書の角に頭をぶつけて――というのも、なかなかに滑稽な死に方だと思わんか?」
本来『王の財宝』を持って矛とするには、あまりにも情けない弾薬。
しかし狼藉者を葬る手立てとしては、書による驟雨もまた一興、とギルガメッシュは思い至り実行する。
「――ではな雑種。来世では、“衝撃”などという不釣合いな二つ名を名乗るでないぞ」
無限にも思われるような書物の雨は、弾丸の速度を纏ってアルベルトの身に注がれた。
ほとんどが分厚く製本されたハードカバー、角で殴れば十分に鈍痛を与えられる品、それが速度を得ればどうなるか。
武器と称すのはさすがに惨めだったが、凶器とするには問題ない。
地に激突した衝撃で何冊かの本は分解し、紙がバラバラと宙を舞う様は、さながら吹雪のように思えた。
その吹雪の中に、赤を纏った粉雪がちらり。
それを逃さず目視したギルガメッシュは、口元だけで笑みを作ると、紙吹雪の中心地へと歩を進める。
ほぼ同時に、書の雨もやんだ。何枚もの紙と何冊もの本で埋め尽くされた街路を、蹴散らすように進む。
そこに、勝利の判定を下すに揺ぎない代物が陳列されていた。
「ふん」
見下ろし、鼻で笑う。
紙の中に埋もれるのは、鮮血に塗れた肉、肉、肉……肉、としか判別できない品々が、そこら中に散乱していた。
どれが元頭部でどれが元内臓だったのかすらわからない。結果的な惨状は、本の角に頭をぶつける程度では済まされなかった。
「あれしきの砲撃で原型を失うとは……耐久力からして凡百な――」
「まこと凡百な眼力よの」
声が聞こえてきた。
ギルガメッシュ以外の、何者かの声が。
肯定せざるを得ない、衝撃のアルベルトの肉声が。
バッと振り向き、背後を確認する――いない。
顔を正面に戻し、アルベルトはそこにいた。
「なにっ!? 貴様よもや――――ガ!?」
ギルガメッシュが己の目を疑う間、アルベルトは瞬速の手刀を、金色の鎧の継ぎ目を縫うようにして捻じり込む。
ギルガメッシュの口から、鴨の首を締め上げたような呻きが漏れた。
「――真っ向勝負が信条のワシだが、貴様の慢心ぶりがあまりにも目に余るのでな。少々小細工を弄させてもらった」
脳髄を白色が埋め尽くす――間際、アルベルトの肩に、見慣れぬ女物のケープが羽織われているのを見た。
シルバーケープ――皮肉にも、ギルガメッシュが殺したクアットロの固有装備であり、アルベルトに支給されたそれの持つ、高性能ステルス機能が勝敗を決した。
「どうだ? 純粋な力の差を見せつけられるよりも屈辱的であろう? ワシの言葉が理解できているか、怪しいがなぁ!!」
アルベルトは捻じ込んだ掌から、ゼロ距離による衝撃波を放つ。
衝撃はギルガメッシュの体と鎧の僅かな隙間に浸透し、全身を駆け巡る。
充満した力が溢れ、内部から鎧ごと弾け飛んだ。ギルガメッシュ本体も、ずたずたに傷を刻まれる。
290: 2008/01/27(日) 01:40:30 ID:LszLhmNN(5/11)調 AAS
291: 二人がここにいる不思議(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/27(日) 01:42:10 ID:gFGPUmTf(9/20)調 AAS
――それは、一瞬の油断。常の慢心が生んだ、ほんの一瞬の逆転だった。
アルベルトが最初から本気を出していたとしても、小細工を使わず真っ向から対立したとしても、結果はこうなっただろう。
衝撃のアルベルトは――初見のイメージもあって――ギルガメッシュが対等と判断するに値しない存在だったからだ。
敵が奇策や奥の手を秘めていたとしても、我の勝利は揺がぬと信じて疑わない。強者ゆえの慢心を常として備えていた愚。
だが、意識を闇に閉じる瞬間になっても、ギルガメッシュはそれを悔いたりはしなかった。
自らの性格が呼び込んだミスなど、彼の強い自尊心が認めるはずもない。ただそれだけの話である。
◇ ◇ ◇
「まったく、彼奴のせいで髪が乱れてしまったわ」
また静寂の戻った路上。
柊かがみが待つ帰途へと着いたアルベルトは、偶然見かけた理髪店から拝借した櫛で、髪型を整えながら歩いていた。
「時間は……思ったよりも速く片付いたな。それだけ彼奴が見込み違いだったというわけだが……む?」
ふと、アルベルトが立ち止まる。
違和感を覚えたのは、耳だった。
「ほう……かがみめ、任せるとは言ったが……」
女性の悲鳴が聞こえる。
やけに甲高い、ホラー映画の主演女優みたいな絶叫だ。
アルベルトが苦笑を漏らしつつ音源の下に駆けつけると、
「なかなかにおもしろい状況になっているな」
そこには二人の少女がいた。
一方は柊かがみ。そしてもう一方は、ギルガメッシュがナオと呼んでいた女。
しかし、互いにその姿は変貌を遂げていた。
かがみは、全身に夥しい量の血液と裂傷を纏い、それをリアルタイムで修復させながら、
ナオは、かがみの異様な姿に恐れをなしたのか腰を抜かし、化け物でも見るような涙目で、
「……女児二人の、戦場での対立か。滅多に拝めるものでもなかろうに」
かがみたちの遥か背後で、アルベルトは観戦を決め込んだ。
◇ ◇ ◇
292: 2008/01/27(日) 01:43:22 ID:xcCnW1q0(4/5)調 AAS
293: 二人がここにいる不思議(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/27(日) 01:43:27 ID:gFGPUmTf(10/20)調 AAS
夕闇の振りかけた、けぶるように色彩のぼけた景色の下。
結城奈緒は、夕闇に滲み出すように点在する彼女を見た。
彼女は、立っている。奈緒は、尻餅をついてそれを見上げている。
背中にあたる冷たい感触は、コンクリート塀によるもの。いつの間にか、路地裏の袋小路に追いつめられていた。
乱れ、縮れ、ざっくばらんに切り捨てられた髪――修復。
斬れ、裂け、彫刻のように幾重もの切創が作られた皮膚――修復。
滲み、零れ、夥しい数の切創から噴き出す粘質の血液がスライムのように――修復。
それら、メインディッシュとなる痛烈かつ異常な映像を、奈緒はほとんど強要される形で見ていた。
肝心なのは、これがテレビなどの映像媒体を通したものでなく、本人の目を通した生の光景であるということである。
死に直結するのは間違いない傷や血が、リアルタイムで“戻っていく”という異常な様を、匂い付きで見せつけられている。
まず、胃に変な圧迫感を覚えた。胃液が食道を逆流するような錯覚に襲われ、軽く吐く。
眼前から放たれる鉄錆じみた血の匂いと、口内を満たす嘔吐物の悪臭。ダブルパンチに鼻が曲がった。
そこまで不快な気分を強要されても、奈緒はなにもしなかった。
いや、できなかった。もしくはすでにしたのだが、なんにもならなかった。
騒がず、呻かず、動かず――震え、微動し、脂汗を垂らし、声を枯らす。
精神を恐怖に蹂躙された人間の、よくあるケースの一つ。
奈緒は怯えていた。目の前の、“不死身の柊かがみ”が見せる異常に。
「――痛みってさ、ある程度のものだと慣れるのよ」
今もなお修復中の裂傷は、奈緒がエレメントによってつけた傷だ。
はじめは脅しのつもりだった。糸で軽く切りつけて、絆創膏程度で治まる傷を与えてやるつもりだった。
それだけでかがみは驚いて、震えて、泣いて、その様を嘲笑ってやる、つもりだったのに。
結果は真逆。かがみの持つ二つ名――不死身の異様に、度肝を抜かれた奈緒がいる。
「あなた、グロいのって平気? なわけないか、腰抜かしちゃってるもんね」
かがみは言いながら、宙を泳ぐようなゆったりとしたスピードで歩み寄る。
異形の像が視界の中で大きくなっていくのを頭の隅で捉えながら、奈緒は現実を否定した。
ありえない――殺し合いをするために集められた参加者の中に、死なない人間が紛れているなんてありえない!
だって、死なないのならば安全ではないか。優勝決定ではないか。ズルイじゃないか。殺されるだけじゃないか――。
容易く覆された命の法則を、奈緒は畏怖して怯えるしかなかった。
カタカタと上下の歯を打ち鳴らす間、かがみの負った傷が完全に修復を負え、元の状態に戻る。
「もう、治っちゃったけど。どうする? 次はどこに傷をつける? あ、それと、初めに言ったこと忘れちゃいないわよね?」
かがみが首を横に傾いで、尋ねる。たったそれだけの動作が、どうしようもなく不気味に思えた。
ギルガメッシュたちが去り、奈緒たちが対立を始める際、かがみが言ったのだ。
――私は最初はなにもしない。だけど、後であなたから受けた痛みを何倍にもして返す。と。
奈緒はこれを、やれるもんなら、と笑って流した。そのときの自分が憎らしい。
なにせ、何度エレメントを振ったか、何条糸を繰ったか、何回かがみに傷を与えたのか、もうわからなくなっていたのだから。
あれが何倍にもなって自分に返ってくるなど、考えたくもない。
「ねぇ、どうしたのよ。もうおしまい?」
「……っ、ぅ、さいっ! あ……たっ、なん、な、っよ!」
294: 2008/01/27(日) 01:45:44 ID:LszLhmNN(6/11)調 AAS
295: 二人がここにいる不思議(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/27(日) 01:46:14 ID:gFGPUmTf(11/20)調 AAS
言葉になっていない声で、奈緒はかがみの不条理に怒りをぶつけた。
裂かれた皮膚が自動で繋がるなど、零れた血が勝手に蠢くなど、人間業じゃない。化け物の所業だ。
これでかがみがオーファンのような異形だったならば、まだ納得もできるし、ここまでの畏怖も感じない。
なのにかがみは、人間の形を保ってそれをやってのけている。
人型でありながら人間を逸した深優・グリーアの例をもっても、かがみの不死身という異常は、納得できない。
「ったく、言ったでしょ? 私は、“不死身の柊かがみ”。決して死なない女なのよ」
馬鹿な。ありえない。ありえない。馬鹿な馬鹿な馬鹿な。ありえないったらありえない。そんな馬鹿な。馬鹿だ!
かがみとの距離が、手を伸ばせば届きそうなくらいまで狭まっていたことを本能で感じ、瞬間的に恐怖を凌駕して攻撃に転ずる。
窮地に立たされても、切り札であるジュリアはやはり呼び出せない。
ただ爪型のエレメントを振り、その指先から伸びる切れ味抜群の糸を放つ。
極細の糸が皮膚を切り裂いて、絡むように肉に入り込んだ。
びくん、とかがみの体が痛みに痙攣し、しかしその顔はくすっと笑う。
ばっくりと開いた口から、鮮血が流れ出る。腕から、足から、頬から、いたるところから。
流血が各所を伝い、重力のまま下へと導かれる。
が、次の瞬間には滝登りだ。
伝い落ちた血が、逆流するかのごとく皮膚を上っていく。
わかりきっていた結果をまた見せつけられ、奈緒は泣きたくなった。
血が元の傷に収まり、開いた口が閉じる頃になっても、奈緒は身動き一つできない。
そこで奈緒は、かがみの左頬を上っていく、やたらと遅い血の塊を見つけた。
他の血はもうとっくに体内に帰ったというのに、左頬の血だけはなぜか、出来損ないの子みたいにのろのろしている。
この子はいったいどこに帰ろうとしているのか――向かう先を目で追っていって、ゾッとした。
瞼だ。かがみの左瞼が、ぱっくり切れていた。
左目――傷――銃――玖我なつき――倍返し――奈緒の背筋を、冷たいなにかが走りぬける。
「目、気になる?」
奈緒がやたらと左目を凝視していることに気づいたかがみは、なにを思ったか妖艶に微笑み、
「じゃあ、まずは目にしよっか」
そんなことを口にして、
「左目。抉っちゃうわね」
わざわざおぞましい単語を選んで、
「――――――――――――――――――――――――ひ」
奈緒が喉を鳴らしことなんて気にもせず、手を伸ばすのだ。
指の先端が目に近づきすぎて、像がぼやけて、さらに涙で滲む。
こつん、と眼球に触れたような気がした。
かりっ、と爪先が眼球を引っかく。
ぷちゅっ、とゼリーを潰したような音。
「……ひあ、ああああ、ああああ、あああ、ああああ、あ、あああ、ああ、ああああ、あ、ああああああああああああああああ」
それらすべて、恐怖心が生んだまやかし。
左目がアイパッチに覆われていることなど完璧に忘れ、奈緒はかつての喪失感――左目を失った瞬間を――脳裏に思い出していた。
思い出しながら、気絶した。
◇ ◇ ◇
296: 2008/01/27(日) 01:46:16 ID:B4BrFOT2(1/8)調 AAS
297: 2008/01/27(日) 01:47:51 ID:LszLhmNN(7/11)調 AAS
298: 2008/01/27(日) 01:48:21 ID:B4BrFOT2(2/8)調 AAS
299: 二人がここにいる不思議(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/27(日) 01:50:32 ID:gFGPUmTf(12/20)調 AAS
人間、やればできるものなんだな、とかがみは感心した。
決してゼロではない痛みに耐え切れたのも、
ひょっとしたら殺されるかもしれないという恐れに打ち勝ったのも、
相手がより怖がるようホラーものの映画や小説を思い出しながら演技に徹したのも、
全部、いっぱいいっぱいだった。だが、やり遂げた。
「くっくくく……随分とまぁ、たくましくなったものではないか。のう、不死身の」
「み、見てた、の?」
前方に失神した奈緒、そして後方にはいつの間にやら、ややスーツを汚して戻ってきた衝撃のアルベルトが立っている。
「まさか、不死身の能力をこんな形で活かすとはな。常人にはない発想よ。案外、向いているのではないか?」
「なにによ、なにに。それに、あんたがわざわざそう紹介したんじゃない。言わなくてもいいのに、“不死身の”柊かがみなんて」
そうだったな、とアルベルトはまた失笑を漏らした。なんだか馬鹿にされている気分だったが、不思議と嫌ではない。
むしろ――利用し合う仲とはいえ――この地で出来たパートナーに認めてもらえたようで、嬉しくさえあった。
「ところで、あの金ぴかの人はどうしたの?」
「む? 機転は利くが、思慮は足らんか? ワシがここにいる時点で、軍配がどちらに上がったかは明白であろう」
「勝ち負けのことを聞いてるんじゃないわよ。その……まだ生きてるのか、ってこと」
遠慮がちに尋ねたかがみの横、アルベルトはああなるほど、と笑わずに言った。
せっかく巡り会えた他の参加者。しかも有力な情報を持つかもしれない二人組。
協力、もしくは利用にこじつけられれば行幸だが、やむおえぬ場合、アルベルトは殺害も辞さないと断言していた。
かがみも、既に一度人道を踏み外した者である。アルベルトの現実的な方針には、本心はともかく賛同を示していた。
だからこそ、余計に気になっていたのかもしれない。
「始末した」
その結果は、アルベルトの口からたった一言で、簡素に告げられた。
「いや、正確には――」
早合点しそうになったところを、続きが入る。
「――これから、始末するところだ」
◇ ◇ ◇
300: 2008/01/27(日) 01:50:55 ID:LszLhmNN(8/11)調 AAS
301: 2008/01/27(日) 01:52:01 ID:xcCnW1q0(5/5)調 AAS
302: 二人がここにいる不思議(後編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/27(日) 01:52:35 ID:gFGPUmTf(13/20)調 AAS
ほのかな磯の香りが鼻腔を刺激し、ギルガメッシュの意識を覚醒に向かわせていた。
瞼を開け目に入ったのは、夕日に照らされ爛々と輝く水面。どうやら沿岸に位置を移したようだ。
朦朧と霞む思考の海で、寸前の記憶を懸命に手繰り寄せる。
書の集中砲火で無残な肉塊へと成り果てたアルベルト――それがまやかしだったことを思い出し、歯噛みする。
どれくらいの時間気を失っていたかは知らないが、現在の虚ろな意識こそが、アルベルトに敗北を喫したという証拠に他ならなかった。
「目覚めたか、裸の王よ」
ギルガメッシュが目を開いたことに気づいたアルベルトが、見下ろす形で声をかける。
またしてもこの位置関係だ。見上げるギルガメッシュと、見下ろすアルベルト。その隣にはかがみが立ち、奈緒の姿はどこにもない。
アルベルトの言葉を受けて、ギルガメッシュは自身の体を可能な範囲で眺めてみる。
言うとおり、裸だった。黄金の鎧は破壊されたのかそれとも没収されたのか、影も形も残されていない。
履物は局部を隠す意味での腰布一枚のみ。引き締まった肉体は、荒縄でぐるぐる巻きにされていた。
動かせるのは手先と足先、それに首から上くらいという散々な醜態を強いられて、ギルガメッシュはぎりっと音が鳴るほどに歯を擦る。
「――殺せ」
現在の状況を顧みて、発した言葉それだった。
「目覚めて第一声が、殺せ、とはな。少しは気にならんか? 自分が敗北した理由が。
そうたとえば、ワシが囮に使ったあの肉塊。あれの正体を教えてやろう」
興味はなかった。詳細を知りえたところで、ギルガメッシュが雑種の浅知恵にしてやられたことには変わりない。
「あれはな、ワシに支給された品の一つよ。強いて言うならば“ヒトの形をしていなかったモノ”よな。
とはいえ、獣肉というわけではない。人肉を纏った、異形のなにかだ。螺旋王もまったく、悪趣味なものを混ぜてくれる」
どこかから拾ってきた死体でも使ったのだろう、と考えてはいたが、やはりどうでもいい。
「透明化の能力も、この機械によるものよ。が、やはりこういった小細工は好かんな。かがみ、以後はおまえが使うがよい」
言ってアルベルトは、女物のケープをかがみに手渡した。見る気も起きない。
「戯言は終わったか、雑種?」
勝者の愉悦に浸っているであろうアルベルトの態度が、ただ気に入らなかった。
心中で憤慨しつつも、罵声を飛ばしたりはしない。穏やかに、聖人の佇まいで死を要求する。
ギルガメッシュが、王ゆえに。
「ふうむ、なぜに死を望む? 勝者は敗者を従える、という約束であったはずだが」
「我は王なるぞ? 雑種の飼い犬に成り下がる気など毛頭ない。そうなるくらいならば自害を選ぶわ」
「それにしたって、普通は命乞いの一つや二つあるでしょう?」
「死後語り継がれるであろう伝承に泥を塗ることになるのでな。醜態を晒すつもりもない」
命を握られている状況を自覚して、なおこの口ぶりである。
それは裏を返せば、本当に命が惜しくないという真意の表れでもあった。
殺される覚悟があるからこそ、死の際に立たされても遠慮のない発言ができる。
王の戦い。それは規模の大小こそあれど、己の尊厳と国を懸けての大戦に他ならない。
王の敗北とは即ち、全ての喪失に繋がるのだ。国も、民も、財も、臣下も、己自身も。全て勝者にもぎ取られる。
「なるほど。つまり負けたのが恥ずかしいから、とっとと死んで忘れたいってわけだ」
「たわけたことをぬかすなよ小娘が。あんなものは決闘ではない。戯れよ。我は童心を介し遊んでいたにすぎん」
303: 2008/01/27(日) 01:52:56 ID:B4BrFOT2(3/8)調 AAS
304: 2008/01/27(日) 01:52:59 ID:LszLhmNN(9/11)調 AAS
305: 二人がここにいる不思議(後編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/27(日) 01:55:20 ID:gFGPUmTf(14/20)調 AAS
そう、あれはギルガメッシュからしてみれば、決闘などという大それた戦いではなかった。
とはいえ、陥った状況を鑑みれば、戦に敗北したという現実は否定できるものでもなく、本人もそれを認めている。
だからこそ、自身の失態を自覚したまま、王として散ろうと言うのだ。
「そんな言い分で約束を反故にされてはたまったものではない。少しはその慢心を正す気にはならんものか」
「馬鹿な。慢心せずしてなにが王か」
内容が遊戯に等しいものだったとしても、ギルガメッシュは王として戦場に立ち、王ゆえの隙を突かれ、王として負けた。
民衆は結果だけを見る。名もなき雑兵に首を取られた王、と。
口惜しい。が、王なればこそ、甘んじて受けるほかない。
「……では、生き恥を晒してまでワシらに従うつもりはない、と」
「何度も言わせるな」
「だが先に述べたとおり、ワシは貴様の首などに興味はない。しかし情報を提供する気はなく、協力する気もないときた。
困ったものよ。かがみ、この強情なる王の処分、おまえならどうする?」
「そうね……いっそ、紐にでも繋いでおくとか」
「晒し者にして連れまわすということか。なるほど、それはそれでおもしろいかもしれんな」
冗談混じりに話すアルベルトとかがみの顔は、確かな余裕に満ちていた。
見ているだけで不快になる。余裕や慢心などといったものは、強者にのみ許される絶対の安心感だ。
この二人の余裕は、偶然掴み得た幸運のようなもの。ギルガメッシュが真に猛威を振れば、表情は百八十度変わる。
その様を思い浮かべるだけで、笑いが込み上げてきた。
「……くっくっく」
端から見れば、裸身を荒縄で縛られた笑い男――という変態以外の何者でもない全姿が、殺意を纏う。
「つくづく我を笑わせるのが上手いな、雑種共。紐で繋ぐか。おもしろい、やってみせよ。
ただし先ほども言ったとおり、我は犬に成り下がる気など毛頭ない。
貴様らが手綱を引くは、主に従順な犬ではなく、牙を研いだ獅子だと心得よ」
ギルガメッシュは、決して王であることを捨てたりはしない。
死を宣告されようと、晒し者の運命が待っていようと、態度は常に傲岸。
怒りを売る者には殺意で答え、鉄壁の姿勢で我を通す。
その空気は、たとえ黄金の鎧をもがれ裸になろうとも剥がれることはなく、周囲を戦慄させる。
実証として、かがみはギルガメッシュが放つ空気に呑まれ、だらだらと脂汗を流していた。
しかしアルベルトは、
「――結城奈緒と言ったか、あの女は」
怯えを纏うどころか、したり顔を強調させ、会話を続ける。
「貴様が臣下と言った女。結城奈緒をワシが殺す、と言ったらどうする?」
試すような口調で、またギルガメッシュに揺さぶりをかける。
なお食い下がってくるアルベルトの必死さに、ギルガメッシュは思わず声を荒げた。
「クククク……クハハハハハハ。なにを言い出すかと思えば、ナオを人質にでもしたつもりか?
あの蜘蛛女は我の臣下の一人にすぎんと言ったはずだ。主人の名誉を守るために死ぬなら本望だろうよ。
が、臣下とて我の財の一部だ。戦勝した証として捕虜にするならともかく――」
嘲笑いの声が消え、静かなる怒声を響き渡らせる。
306: 2008/01/27(日) 01:56:29 ID:LszLhmNN(10/11)調 AAS
307: 二人がここにいる不思議(後編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/27(日) 01:57:01 ID:gFGPUmTf(15/20)調 AAS
「――我の死後、無碍にでも扱ってみろ。死霊になりとて、縊り殺すぞ――?」
耳にして、かがみが一歩退いた。
アルベルトは、ニヤリ、と微かに笑った。
「……よくわかった。どのような条件であろうとも、ワシらに降る気はないと。そう受け取って構わんな?」
「ああ、やっと理解が追いついたか雑種が」
「安心しろ。あの小娘は貴様と違ってまだ使い道があるようなのでな。無駄に殺したりはせん。
――が、やはり貴様は駄目だな。その誇りには感服するが、ワシらにとっては害でしかない」
殺意と殺意が対立する間で、やっと幕を下ろそうという動きが見られた。
初めから決まっていたシナリオを、やはり書き換えることはなく、予定調和のように。
「生かしたところで、後々噛みつかれては面倒だ。望みどおり、障害として排除してやろう」
判決が、下った。
ギルガメッシュは抗わず、不気味な微笑のままそれを受け入れた。
王として死のうとしている男を、アルベルトとかがみは憐れみなどしなかった。
「……かがみよ、先に結城奈緒を置いておいた場所に戻っておれ。
曲がりなりにも英雄王の死だ。大勢の目に触れさせるのは酷というものだろう」
「うん……わかった」
短いやり取りを交わし、かがみはその場から離れていった。
一度も振り向かずに去っていくその姿は、なるほど、アルベルトに同行するに値する気丈さだと、ギルガメッシュは一人納得した。
雑種には違いないが、この二人はこれで、参加者内のなかでは上等な部類に入るのだろう。
不運と、数と、なにより王ゆえの慢心が原因で死すのだ――恥ではない。
「――ではな裸王。来世では、“英雄王”などという不釣合いな二つ名を名乗るでないぞ――」
そして、英雄王ギルガメッシュの処刑は決行された。
◇ ◇ ◇
308: 2008/01/27(日) 01:57:33 ID:B4BrFOT2(4/8)調 AAS
309: 2008/01/27(日) 01:58:02 ID:JosLrtEf(1/5)調 AAS
310: 2008/01/27(日) 01:58:47 ID:wPiMTI7O(1/4)調 AAS
311: 二人がここにいる不思議(後編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/27(日) 02:00:31 ID:gFGPUmTf(16/20)調 AAS
夕日は水面に沈み、夜の帳が下ろされようという時刻。
古めかしい木造建築を合流地としたかがみは、その一室、柱に縛られた奈緒の身を眺め思う。
――この少女は目覚めたとき、まずなにを思うだろうか。
ギルガメッシュを金ぴかと呼び、戦闘面に関してまったくの心配をしていなかった奈緒。
ギルガメッシュは臣下と言っていたが、実のところ二人の明確な関係などわかりはしない。
彼の死を受け、どのような反応を見せるか。悲しむか、怒るか、それとも絶望するか。
やはり、二人の事情を把握していないかがみには想像がつかなかった。
ただ、ちょっとかわいそう、とだけ胸に抱く。
(……まったく、同情なんてしてる暇ないってーの)
自分自身に溜め息をつきながら、相棒の帰りを待つ。
ほどなくして、衝撃のアルベルトは帰ってきた。
「おかえり」
「うむ。……今度は、茶の用意はしてくれていないのか?」
「そんな気分じゃないわよ……」
人ひとり殺してきたというのに、アルベルトは別段変わった様子でもない。
ギルガメッシュとの一件を済んだことと割り切り、既にこれからを見据えている。
私も切り替えなくちゃな、とかがみは思った。
「滅入ったか、かがみよ?」
「……そんなこと」
「気張らずともよい。不死者になったとて、精神までもが強靭になるわけではないからな。
むしろ、人の心が残っているのならそれに越したことはない。貴様を野望に突き走らせる要因を、忘れてはならんぞ」
忘れてなんかいない。
螺旋王を喰い、自分の願望を叶えるという野心……かがみをここまで突っ走らせた、二つの悲しみを。
「今回は廻り合わせが悪かったにすぎん。が、次も後味が悪いとは限らんさ。
障害と判断した者は排除する。利用価値がある者はとことんまで利用する。
それ以外には目もくれん。ただ目標をのみを目指せ。それがワシら二人の成すべきことよ」
「……ちょっと、寝る。放送、お願い……」
言うアルベルトの横、かがみは布団も引いていない畳の上に倒れこんだ。
今度出会うのは、いざこざなく手を取り合える人たちがいい。
そう心の端で願いながら、かがみは疲労の闇に落ちた。
◇ ◇ ◇
312: 2008/01/27(日) 02:01:19 ID:JosLrtEf(2/5)調 AAS
313: 二人がここにいる不思議(後編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/27(日) 02:02:06 ID:gFGPUmTf(17/20)調 AAS
(王、か。くだらん。実にくだらん)
仮眠を取るかがみの横、アルベルトは参加者名簿とペンを持ち、あと数分で始まるであろう放送を待った。
宿敵である神行太保・戴宗の名は、まだ横線を引かれていない。が、あと数分後にはこの名が抹消される可能性もある。
戴宗の性格を熟知しているからこそ、予感がした。争いが激しさを増す一方であるこの地において、戴宗がいつ無茶を働くか。
……それが、そろそろであると。もしくは、この六時間の間にもう……。
(なにかと荷の多い男であった。ワシとの戦いに無用な感情を持ち出すほどにな。……が、それゆえに)
強かった。仲間を、平和を、正義を背負い戦っていた戴宗は、紛れもなくアルベルトと拳を交わすに相応しい強者だった。
あんな自尊心を守るためだけに戦う慢心王とは、まるで別格。アルベルトの敵たる男は、戴宗以外にありえない。
もっとも、実力だけで言うならば、ギルガメッシュにも資格はあった。慢心を捨てれば、の話であったが。
(古来より、正義の使者というのは守るものがあるからこそ強者足りえ、悪たる我らBF団と双璧を成してきた。
戴宗を含む九大天王……彼奴ら国際警察機構、ジャイアントロボに選ばれたあの小僧とて例外ではない。
だからこそ、ワシはあくまでもBF団十傑集が一人としてこの地に立つ。そして、決着をつけねばならんのだ。
こんなところで死んでくれるなよ――――戴宗)
ふと、ペンを握る手が震えていることに気づいた。
武者震いにも似た、不思議な高揚を覚える。
(四十路近いというのに……ワシもまだまだ若い。本能で焦がれているということか、宿敵に)
――――だからかもしれない。
それは、因縁の相手である戴宗か、それとも。
(熱い――な。戴宗……ジジイ……そして――――。ワシの心を満たすのは、誰だ――?)
腹の底で燻る、燃え滾るような衝動。
若人の頃、何度となく味わったそれが、再びぶり返してきた。
まだだ。まだ足りない。しかしまだ待て。と。
衝撃のアルベルトは恍惚に笑み、放送を、未来を、訪れる命運を待った。
そして、放送が始まった。
◇ ◇ ◇
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