[過去ログ] シン「俺は春香のプロデューサーだ」 (74レス)
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8: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:20 ID:0kYND+eg0(7/65) AAS
 俺の中で何かが、壊れていくような気がした。音を立てて、俺を今まで支えていたものが……全て。
理性を振り絞り、遠くなりそうな意識を整えながら、ようやく叫べた言葉は――酷く、脆い言葉だった。

「今さら何を! もう俺は選んだんだ、この道を! なら行くしかないじゃないか!!」

パルマフィオキーナを稼働させ、思いきりジャスティスのビームシールドに叩きつける。

「アンタが正しいって言うんなら――俺に、勝って見せろ!!」

 その衝撃で、強く突き飛ばされたジャスティスは、月面基地に背部から落ちた。
省10
9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/23(木)21:22 ID:GLz9bJf8o(1) AAS
ドコモ君は毎回頑張ってんなwwwwww
10: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:23 ID:0kYND+eg0(8/65) AAS
『っ――まだだ!!』

 その瞬間だった。
背部から急激に近づいてくる動体反応をセンサーがキャッチした。ジャスティスのリフターだ。

「リフターだけ……!?」

 そちらに意識を向けた瞬間、ジャスティスのシールドに装備されていたアンカーが、アロンダイトを構えた右腕部を捕え、ジャスティスに機体を引き寄せた。

『まだ終わらない――!』
省11
11: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:27 ID:0kYND+eg0(9/65) AAS
天海春香は、プラントにあるシェルターにて、膝を折って自身の診断表を手にして、項垂れていた。
その姿を見据え、彼女の親友である如月千早が、一言彼女に聞く。

「春香、大丈夫?」
「大丈夫、だよ」

 彼女の言葉はどこか心此処に非ずと言った感じで、千早はオズオズと、その春香の手で握られた診断表を手に取った。

それは、ギルバート・デュランダル議長が提唱した、デスティニープランにおける、遺伝子情報の分析結果だった。

彼女――アイドルである天海春香の適性が一番高い職業は、保育士適性だった。
省17
12: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:31 ID:0kYND+eg0(10/65) AAS
少年が、プラントの街中をただ歩いていた。
少年は少しだけ浮かない顔をして、その私服姿で周りの人々を見据えて、目を伏せた。

――この世はまた、平和になった。

そう考えて、自分に何が出来るのか、何をしなければならないのか、そう考えている、その時だった。

「ん、そこで顔を伏せている君」

 声が聞こえた。
少年は顔を上げて、声の方向を見ると、そこには初老の男性がいた。
スーツを着て、その少しだけ皺のある眼鏡姿を視線に捉えた少年は「何か、用ですか?」と問いかける。
省7
13: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:39 ID:0kYND+eg0(11/65) AAS
「……またダメだったね、オーディション」
「うぅ。ごめんね、春香ちゃん、真ちゃん……私が、男の人が苦手なばっかりに……」
「仕方ないよ雪歩。審査員が男の人だったんじゃ」

 綺麗な黒髪と、その凛々しい顔立ちが印象強い、少年のような少女が、フッと溜息をつきながら言うと、茶髪の少女が少しだけ泣きそうな表情で謝っている。

黒髪の少女は、菊池真。プラントにあるアイドルプロダクション・765プロで駆け出しのアイドルとして活動中のアイドル。
茶髪の少女は、萩原雪歩。真と同じく765プロで売り出し始めたばかりのアイドルだ。

その数歩後ろで、天海春香が顔を上げた。街中の液晶テレビに映し出された三人のアイドルを視界に捉えて、口を開く。

「――竜宮小町」
「あ、ホントだ。こんな大々的な所に映してもらえるようになったんだ……あの三人」
省4
14: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:41 ID:0kYND+eg0(12/65) AAS
『次のニュースです。プラント最高評議会議長に着任した、ラクス・クライン議長の声明により、ザフト軍事費用の一部削減が決定づけられました』

「ねぇ真。この後の予定って、何があったっけ」

「何にもない。ずーっと空白。律子は竜宮小町で手いっぱいだから、ボク達に仕事は回ってこないし」

『それによりブルーコスモス一派による過激テロが増加するのではないか、という懸念に対し『現在対応中』との見解を示しました』

「……このまま、誰にも知られないまま、アイドルやめちゃうのかな、私達」
省5
15: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:43 ID:0kYND+eg0(13/65) AAS
765プロダクションは古びたビルの三階にある、こじんまりとした事務所だった。
エレベーターは壊れて、エアコンも修理中。事務所のドアは開きが悪く、会話は駄々漏れとなる始末の事務所だった。

その事務所に帰ってくる三人。春香、雪歩、真の三人だ。

『お疲れ様です』
「あ、三人ともお帰りなさい。どうだった?」

 事務服を着込んだ女性――音無小鳥。彼女は笑顔で三人を出迎え、そっと尋ねた。

「……ダメでした」
省18
16: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:45 ID:0kYND+eg0(14/65) AAS
765プロの社長室に、シンは小鳥に連れられた。社長である高木が笑いながら、シンの肩を叩く。

「よく来たね! 我が765プロは、君を歓迎するよ!」
「もう! 新しいプロデューサーさんが来るなら前もって言っておいてくださいよ社長!」
「はは、すまないね。何せ急に決めた事だから」

 さて、と一息ついた社長が、視線を事務所の談話室に移す。

「今、事務所にはあの三人だけかね?」
「ええ、春香ちゃんと真ちゃんと、雪歩ちゃんの三人です。これから美希ちゃんと千早ちゃんも来ますが」

 その確認をして、今度は軽く挨拶交じりに、シンへお辞儀をする高木。
省13
17: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:46 ID:0kYND+eg0(15/65) AAS
「――という事で、今日から皆のプロデューサーになった、シン・アスカだ。よろしく頼む」

 挨拶をすると、三人が同時に『よろしくお願いします!』と声を上げる。その後にシンへ声をかけた最初の少女は、菊池真だった。

「新しいプロデューサー……かなり若そうに見えますけど、幾つなんですか?」
「ああ、17歳だ。皆と同い年くらいじゃないか? ……というか、あの子何であんな離れてるんだ? 五メートル位離れてるじゃんか」
「ああ……」

 真が、部屋の片隅で肩を震わす少女へ近づき、その背中を後押しする。

「雪歩! ちゃんと挨拶しなきゃダメだよ!」
「あ、その……萩原雪歩、です……その……」
省13
18: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:47 ID:0kYND+eg0(16/65) AAS
 春香と軽く握手を交わして、春香は再びテレビへと視線を動かす。テレビには、三人の少女が踊っている光景が映り、春香はそれを見つめていた。

(……なぁ真。もらった資料だと、春香って元気いっぱいな明るい女の子ってあったんだけど)
(いつもはそうなんだけど……ここ最近ずっとこうで……)
(ふーん……)

 今はそれ以上聞かず、シンが真に尋ねる。

「とりあえず今からのスケジュールは?」
「あそこのホワイトボードに」

 指さした先にあるホワイトボードは、その名をそのまま示していた。
省11
19: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:51 ID:0kYND+eg0(17/65) AAS
「――となるとまずはレッスンを優先的にやってくしかないな……トレーナーさんとかは?」
「それが……前の戦争の影響で、安くひいきして貰ってたトレーナーさんが地球へ……」
「マジか。じゃあ今はもしかして」
「独学。資金不足でね」
「念の為考慮しておいて良かった」

 シンが溜息をつくと、真と雪歩が首を傾げる。

「レッスンの方は俺が何とかする。これから誰か来る予定は?」
「えっと、千早ちゃんがこれから」
「千早……えっと、如月千早か」
省13
20: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:52 ID:0kYND+eg0(18/65) AAS
 その言葉にお辞儀で返し、荷物を更衣室に持っていく前に、シンが口を開いた。

「後は」
「さっきコンビニで美希を見かけたので、そろそろ来るかと」

 再びタイミング良く扉が開く。今度登場した少女は、金髪のロングヘアにかかったカールが可愛らしい、大人びた少女であった。

「おはようなのー」
「美希、おはよ!」
「おはよう、お茶飲む?」
「おはようなの真くん、雪歩! お茶はさっき綾鷹買ったから大丈夫なの!」

 星井美希。765プロダクションのアイドルで、大人びた風貌をしているが、実年齢はまだ十五歳だ。
省13
21: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:53 ID:0kYND+eg0(19/65) AAS
「ねえ皆、シンの第一印象ってどんな感じ?」

 真が問いかけると、千早が答える。

「そうね……かなり若いんじゃないかしら。年齢は聞いた?」
「17歳だって……一応千早ちゃんよりは年上だけど」
「それでも一つしか違わないのね……プラントでは15歳から成人だし、珍しくはないけど」
「結構カッコイイって思うな〜。寝癖そのままなのはちょっとだけマイナスポイントだけど」
「ボクの見立てだと、結構鍛えてるよ! 細そうに見えて、必要な所にはキチンとした筋肉が出来てる!」
「何にせよ、仕事が出来るなら問題は無いわ。――私は、歌が歌えれば、それで」
「……そうだね」
省10
22: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:55 ID:0kYND+eg0(20/65) AAS
「へぇ〜。シンって、大型まで運転出来るんだ」

 八人乗りエレキカーを運転しながら住所を確認するシンに、真が関心の声を上げる。

「つっても、珍しくないだろ? 最近はオート化も進んで、運転自体は珍しくないし」
「あ、そこの角を左です」
「ああ。それより美希、今流れてるのがお前らの曲か?」
「うん、GO MY WAY!なの」
「明るくて可愛い曲じゃないか。俺社長から渡されたディスクの中、THE IDOL M@STER しか入ってなかったからさ」
「メンバーはそれぞれ、セカンドシングルまでCDを出してるんですよ」

 雪歩の教えてくれた情報に「へぇ」とシンが関心を持つと、後部座席に座る春香に声をかける。
省5
23: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)21:56 ID:0kYND+eg0(21/65) AAS
女の子らしく、鼓舞するような印象を持つ歌は、今の春香にはあまり似合わないと思ったシン。
――いや、この歌う春香こそが、本当の春香なんだろうと仮定したシンの耳に、真の呑気な声が聞こえてくる。 

「ボクもこの曲大好きなんだよね! 歌詞が凄い女の子らしくてさぁ!」
「あはは、ありがと……」

 少しだけ苦笑して、応じる春香。その春香に合わせて、千早がシンに声をかける。

「シン。あそこのビルです。駐車スペースは――」

 エレキカーの駐車スペースを教えると、シンが頷き、レッスンスタジオの前に一時停止させた。
省7
24: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:04 ID:0kYND+eg0(22/65) AAS
「ラクス・クラインです。皆さん、本日は頑張りましょうね」

 準備運動で体を動かしていたほぼ全員が腰を抜かした。その姿を見据えて、シンがくくっと笑みを浮かべた。

「ほら。腰抜かした」
「ラ、ラクス・クライン、議長……?」
「ほ、本物!? この前の戦争で出た、偽者さんとかじゃなくて!?」
「な、何で、こんな所に……!?」
「び、ビックリして、あ、足がガクガクしてますぅ……!」
「あふ。あ、テレビでよく見る人なの!」

 美希だけは、腰を抜かしていない。
省10
25: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:09 ID:0kYND+eg0(23/65) AAS
 美希がラクスの元に行って「テレビでよく見るけど何のお仕事してるの?」等と能天気な質問をしている横で、シンは雪歩と真に詰め寄られていた。

「し、シンッ! これは一体どういう事さ!?」
「どうもこうもない。ただボイスレッスンがあるし、ラクスが居たら百人力だろ?」
「そ、そうだけど……でもぉ……うぅ……」

 その二人を橋目に、美希を押しのけ、千早が興奮したような表情をしながらラクスへと駆けた。

「あ、あの! わたし、ラクスさんの歌声が大好きで……!」
「あらあらぁ、私も千早さんの曲聞きましたわ。青い鳥、凄く綺麗な歌声でした」
「あ、ありがとうございますっ! 是非、ラクスさんにご教授を!」

 何度も何度も、ラクスへとお辞儀をし、そして笑みを浮かべる千早。その千早の後ろで、春香が唖然とした表情をしていた。
省11
26: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:19 ID:0kYND+eg0(24/65) AAS
「千早さん、そこの音程が半音ズレてますわ」
「え……あー、あー♪」
「はい、大丈夫ですわ」

「あーあーあーあーあー」
「美希さんは、もう少しお腹から声を出す練習ですわねぇ。
 息を五十秒程かけてゆっくりと吸いこんでから、今度は先ほどと同じ時間をかけてゆっくりと吐きだしてくださいな」
「はいなの〜。す〜」

「雪歩さんは千早さんと同じく、音程調整の練習ですわ。筋自体は良いですから、後は練習さえこなせば、歌唱力は自信をお持ちになって」
「は、はいですぅ!」
省17
27: ◆bA3jMfAQJs [saga] 2014/10/23(木)22:23 ID:0kYND+eg0(25/65) AAS
「よし、次は体動かすか。ラクスさん、参加してくか?」
「はい♪ 最近は事務仕事ばかりで、体が鈍っていましたもの」
「そりゃ評議会議長じゃな……よし、ダンスレッスンに移るぞ!」
「ダンスレッスンは、誰が監督するの?」

 真の問いに、溜息をつくシン。

「当分はダンスレッスンというより、体力作りに励む事になるが――まずは真」
「うん」
「俺もある程度ダンスを練習してみる。踊れる曲を一曲踊ってくれ」
「へ? う、うん」
省6
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