[過去ログ] 愛するが故に無理やり…… Part9 (359レス)
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17: コッペリアに花束を [age] 2013/06/04(火)00:43 ID:ZakXDM1E(1/8) AAS
スレ立て乙。コッペリアの続き投下します
ここから第2部
18: コッペリアに花束を 2013/06/04(火)00:45 ID:ZakXDM1E(2/8) AAS
ヒース=スプリングスの免罪から1ヶ月が経とうとしていた。
その日は快晴。だが、気分までは晴れやかになりそうも無い。…最近、妙にフローリスト卿の機嫌がいいのだ。
脇差の切っ先を突きつけてやった日から、あの男は面白いほどに余所余所しくなった。
アスターがミオを遠ざけ始めてからは水を得たように娘のアピールを再開させたのだが、それも長くは続かず。
2人が和解し、周りも和やかになるほどの純愛ぶりを見せるようになってから、奴の苛立ちは目に見えるようになった。
使用人への八つ当たりは日増しに酷くなり、つい1週間ほど前に使用人一同から奴への処罰を求める嘆願書が提出された。
その矢先だ。フローリスト卿が突然にこやかになり、使用人への八つ当たりがぴたりと治まったのは。
嘆願書が提出された事が相当堪えたのだろう、と周りの者は言うが、アスターやシュロはそうとは思えなかった。
あの男は変に勘繰ってしまうほどに一挙一動が判り易い。それに、自らの行いを悔い改めるような誠実さなど持ち合わせているはずがない。
奴の機嫌がいいのはそれ相応の理由があるはずだ。見下している下々の者達にまで愛想が良い点を見ると、奴にとってはなかなかの朗報とみる。
省22
19: コッペリアに花束を 2013/06/04(火)00:46 ID:ZakXDM1E(3/8) AAS
「随分と会話に花が咲いていたようだな。」
「それは、もう。正妃様とお話するのは楽しい限りですわ。」
城の人間の目があるせいか、今日のネリーは“フローリスト家の令嬢”を演じている。
その姿を見るたび、彼女の名女優ぶりに感嘆し、可笑しくて内心笑った。普段の彼女は口調も砕けていて、もっと自由奔放だのに。
……演じているといえば、手馴れた様子で紅茶を注ぐこのシュロもかなりの演技力だ。その所作言動全てが“国王専属執事”だ。
あまりの自然さに、アスターも時々シュロという男がよくわからなくなってくるほどだ。
「そうそう聞いてくださいな、ローラント様。ミオソティス様ったら可愛らしいんですのよ。さっきからずっと」
「さ、サイネリア様!」
慌てるミオと、ちょろりと舌を出しておどけるネリーの姿は見ていて微笑ましい。
だがやはり、その仲睦まじさには少しばかり嫉妬してしまう。……ほんの、少しだけ。
省17
20: コッペリアに花束を 2013/06/04(火)00:47 ID:ZakXDM1E(4/8) AAS
ガーデンアーチを潜り抜けた先には、甘い芳香を漂わせる白い花々の垣根が広がっている。
アスターの少し後ろで感嘆の声が聞こえた。純粋に花々を、甘い香りを楽しんでいるようだ。
だがずいずいと進んでいくアスターに違和感を覚えたのか、次第にその声が不安げなものに変わる。
そして。人気の全くない垣根の角にたどり着くと、ようやく振り返って彼女の体を引き寄せ、後ろから抱きしめた。
「お前、ネリーと何を話してたんだ?」
耳元に唇を寄せ、囁く。彼女の首筋が粟立っていく。
「な、なんでもないんです! あの、大したことでは…」
「ふーん。そうか、俺には話せないんだな?」
彼女の首筋から漂う果実のような芳香が堪らない。刺激するのは、何もアスターの鼻腔だけではなくて。
彼女が小さく悲鳴を上げた。どうやら、アスターの変化に気付いたらしい。
省24
21: コッペリアに花束を 2013/06/04(火)00:47 ID:ZakXDM1E(5/8) AAS
「合併…?!」
謁見の間へ入るなり、目に飛び込んできたのは十数名の騎士達だった。
血を連想させるような緋色の鎧は、明らかにこの国が保有する騎士団のものではない。
こんな色をした鎧を纏っている騎士は、何処を探してもあの国の騎士団以外にはないだろう。
赤い集団の中でただ1人、白銀の軽鎧を纏った女の姿が写る。凛とした佇まいと、精悍かつ清廉な顔つき。
かの国の女王に生き写しだと称されている。…その女の名はアプリコット。ミオの妹だ。
「いかにも、僭越ながら報告に参り申しました。此度我が国は、フロックス領と併合し、新王国を築くこととなりました。」
「解せぬ。フロックス領は我が叔父の治める領地。あそこが独立領とはいえ、それを許可なく勝手に併合だと?
まずは国王たる我に報せの一つなど寄越すべきであろう。」
「陛下へは書簡にて通達済みのはずですが?」
省34
22: コッペリアに花束を 2013/06/04(火)00:48 ID:ZakXDM1E(6/8) AAS
もともと身一つでこの城へやってきたミオにまとめる荷物などあるはずもなく。
この城でそろえてもらった服飾品などはおそらくミオの目の届かぬところで処分されるだろう。
だから、用意できる荷物などこの身以外は何一つなかった。
―――最期に、庭の花々を見ておきたいわ。
庭へ行こう。そして、花々に別れを告げよう。思い立った瞬間、足は自然とそちらへと向かっていた。

ゆっくり、一歩一歩踏みしめるように中庭を歩く。この城の庭は美しい。そこに咲き誇る花々には随分と癒され、慰められ、励まされた。
処女を失い茫然自失になった時に。まるで儀式のように彼に抱かれる度に。彼とすれ違い、どうしようもない不安感に襲われた時も。
足を止める。金色の光が庭中を包み込み、ミオの足元に影を落とす。
―――私はまるで、真冬の庭だった。
冬の庭に花は咲かない。冷たい土に覆われ、冷たい風に晒され続ける毎日。
省36
23: コッペリアに花束を 2013/06/04(火)00:49 ID:ZakXDM1E(7/8) AAS
辺りはすっかり薄暗くなった。歩く気力さえ失った2人は、芝生の絨毯の上に横たわり、身を寄せ合う。
快楽の余韻の中、一度部屋に戻って着替えなければ。結局かなりの時間リコを待たせてしまった、などと考えていると。
「……子どもが出来れば、お前を留めておく事が出来ただろうか」
呆けた様な声色が耳に届く。
これだけ身体を重ねたのに、ミオには妊娠の兆候すらない。それはつまり、子を宿す事が出来ないという事なのだろう。
「…出来たとしても、構わず私を連れ戻すでしょう。…そういう人間なのです、母は。」
「なぜアキレギアはお前をここまで苦しめようとする。何故そんなにミオが憎いんだ……!
実の娘にこのような仕打ちをするなど、俺には到底理解出来ない。」
抱きしめる腕に力が篭る。自分の為に心から不快感を示しているというその事実が嬉しくて堪らない。
だが素直に喜べない。アスターの不快を伴った疑問の答えをミオは知っているのだ。
省17
24: コッペリアに花束を 2013/06/04(火)00:51 ID:ZakXDM1E(8/8) AAS
以上
専スレになってて申し訳ない…
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