[過去ログ] 愛するが故に無理やり…… Part9 (359レス)
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23: コッペリアに花束を 2013/06/04(火)00:49 ID:ZakXDM1E(7/8) AAS
辺りはすっかり薄暗くなった。歩く気力さえ失った2人は、芝生の絨毯の上に横たわり、身を寄せ合う。
快楽の余韻の中、一度部屋に戻って着替えなければ。結局かなりの時間リコを待たせてしまった、などと考えていると。
「……子どもが出来れば、お前を留めておく事が出来ただろうか」
呆けた様な声色が耳に届く。
これだけ身体を重ねたのに、ミオには妊娠の兆候すらない。それはつまり、子を宿す事が出来ないという事なのだろう。
「…出来たとしても、構わず私を連れ戻すでしょう。…そういう人間なのです、母は。」
「なぜアキレギアはお前をここまで苦しめようとする。何故そんなにミオが憎いんだ……!
実の娘にこのような仕打ちをするなど、俺には到底理解出来ない。」
抱きしめる腕に力が篭る。自分の為に心から不快感を示しているというその事実が嬉しくて堪らない。
だが素直に喜べない。アスターの不快を伴った疑問の答えをミオは知っているのだ。
「…なあミオ。戻るのが辛いならそう言ってくれ。俺があの国を滅ぼしてやる。お前のためなら、俺は王位だって捨てれる。」
「それは、いけません…! 貴方は国王で在るべきお方です。貴方がこの国の民にどれだけ信頼されているか、私は知ってます。」
この城の人間は、自分にとてもよくしてくれた。その理由を年配の侍女に尋ねると、彼女はこう言ったのだ。
『ローラント陛下はとても素晴らしい王です。民を思い、国を思っている。それがきちんと行動にも出ておられる。
そんな素晴らしいお方がお選びになったのだから、貴女もさぞかし素晴らしいお方なのでしょう。』
冷血王。ローラント陛下に対しそのような印象しか持っていなかったミオは大変驚いた。
誰もがローラントを心から尊敬し、心から信頼しているのだ。…これほどまでに民に慕われる国王は珍しい。
「貴方は素晴らしい国王です。だから、道を誤らないでください。一人の女の為に多くの命を犠牲にするような愚かな王に成り下がらないで。
私だったら、大丈夫。この先どんな事があっても生きていける。貴方が愛してくれたというその証と記憶さえあれば、耐えられる。」
「だが、ミオ……」
その先を言わせまいと、唇を瞬時に塞ぐ。この瞬間がこの先永遠に霞まぬようにと、願いを込めて。
「アスター様。私は貴方だけを愛し続けます。これからもずっと、永遠に―――」
髪飾りを外し、彼の手にそっと握らせる。これこそが、ミオの想いの証。
もう傍にはいられないけれど、せめてこの心だけはこの国に……この人の元に置いていきたい。
―――さようなら、私の愛しい人。
彼に背を向け、歩き出す。別れの言葉は口に出さない。どうしても言う事ができなかった。
背後でアスターが何かを叫ぶ。だけど、振り返らない。頬に伝う涙を、見せる事なんて出来なかった。
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