[過去ログ] 代数的整数論 009 (1001レス)
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52
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/11/25(日) 12:30:28 AAS
命題
K を実数体または複素数体とする。
E, F を K 上の位相線形空間とする。
f: E → F を連続な線形写像とする。
M が有界(>>35)な E の部分集合であれば f(M) も有界である。

証明
V を F の 0 の近傍とする。
f^(-1)(V) は E の 0 の近傍である。

M は有界だから M ⊂ λf^(-1)(V) となる λ ∈ K がある。
従って、x ∈ M に対して x = λy となる y ∈ f^(-1)(V) がある。
f(x) = λf(y) ∈ λV である。
よって、f(M) ⊂ λV である。
>>36 より f(M) は有界である。
証明終
53
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/11/25(日) 12:40:35 AAS
命題
K を実数体または複素数体とする。
E, F を K 上の位相線形空間とする。
L(E, F) を E から F への連続な線形写像全体とする。
Σを E の部分集合の集合で Σ の元はすべて有界(>>35)とする。

Σ-収束の位相(>>37)により L(E, F) は K 上の位相線形空間となる。
さらに F が局所凸(過去スレ008の513と593)であれば L(E, F) も
局所凸である。

証明
Σ の元はすべて有界であるから、
>>52 より、任意の M ∈ Σ と任意の f ∈ L(E, F) に対して
f(M) は有界(>>35)である。
よって、>>49 より本命題の主張が得られる。
証明終
54
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/11/25(日) 17:28:24 AAS
命題
K を実数体または複素数体とする。
E を K 上の局所凸(過去スレ008の513と593)な位相線形空間とする。
X を集合、F(X, E) を X から E への写像全体とする。
F(X, E) は K 上の線形空間である。
H を F(X, E) の線形部分空間とする。
Σ を X の部分集合の集合とする。
任意の M ∈ Σ と任意の f ∈ H に対して f(M) が有界(>>35)である
とする。

>>49 より Σ-収束の位相により H は K 上の局所凸な位相線形空間
となる。

過去スレ008の519およびそれを複素数体上に拡張した結果(>>20)から
E の位相は半ノルムの集合 Γ により定義される(過去スレ008の469)。
Σ_1 を Σ に属す集合の有限個の和集合全体とする。

p ∈ Γ, M ∈ Σ_1 と f ∈ H に対して
p_M(f) = sup{ p(f(x)) | x ∈ M } とおく。
p_M は H 上の半ノルムである。

Ω = { p_M | p ∈ Γ, M ∈ Σ_1 } とおく。
H の位相は Ω により定義される。

証明
p_M が半ノルムであることは明らかである。
E の部分集合 M と F の 0 の近傍 V に対して
T(M, V) = { f ∈ H | f(M) ⊂ V } とおく。

(続く)
55: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/11/25(日) 17:29:09 AAS
>>54 の続き。

任意の α > 0 と p ∈ Γ に対して、
V(p, α) = { x ∈ E | p(x) ≦ α } とおく。

M ∈ Σ_1 に対して
T(M, V(p, α)) = { f ∈ H | p_M(f) ≦ α } である。

過去スレ008の471 より p_1, . . ., p_n を Γ の有限列、
α_i > 0, i = 1, . . . , n としたとき、
∩V(p_i, α_i) 全体は Γ により定義される位相に関して
0 の基本近傍系である。

明らかに ∩V(p_i, α_i) は平衡的である。

M ∈ Σ_1, N ∈ Σ_1 に対して
T(M, ∩V(p_i, α_i)) = ∩T(M, V(p_i, α_i))
T(M, V(p_i, α_i)) ∩ T(N, V(p_i, α_i)) = T(M ∪ N, V(p_i, α_i))
である。
従って、H の位相は Ω により定義される。
証明終
56: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/11/25(日) 17:53:33 AAS
命題
K を実数体または複素数体とする。
E, F を K 上の位相線形空間で、F は 局所凸(過去スレ008の513と593)
とする。
L(E, F) を E から F への連続な線形写像全体とする。
Σを E の部分集合の集合で Σ の元はすべて有界(>>35)とする。

>>53 より Σ-収束の位相により L(E, F) は K 上の局所凸な位相線形空間
となる。

過去スレ008の519およびそれを複素数体上に拡張した結果(>>20)から
F の位相は半ノルムの集合 Γ により定義される(過去スレ008の469)。
Σ_1 を Σ に属す集合の有限個の和集合全体とする。

p ∈ Γ, M ∈ Σ_1 と f ∈ L(E, F) に対して
p_M(f) = sup{ p(f(x)) | x ∈ M } とおく。
p_M は L(E, F) 上の半ノルムである。

Ω = { p_M | p ∈ Γ, M ∈ Σ_1 } とおく。
L(E, F) の位相は Ω により定義される。

証明
Σ の元はすべて有界であるから、
>>52 より、任意の M ∈ Σ と任意の f ∈ L(E, F) に対して
f(M) は有界である。
よって、>>54 より本命題の主張が得られる。
証明終
57
(6): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/11/25(日) 20:24:49 AAS
K を実数体または複素数体とする。
E, F を K 上の位相線形空間とする。
L(E, F) を E から F への連続な線形写像全体とする。

Σ_s を E の有限部分集合の全体とする。
L(E, F) のΣ-収束の位相(>>37)は単純収束の位相と呼ばれる。

Σ_b を E の有界部分集合の全体とする。
L(E, F) のΣ-収束の位相は有界収束の位相と呼ばれる。
58
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/11/25(日) 20:49:37 AAS
命題
K を実数体または複素数体とする。
E を K 上の位相線形空間で、E の位相は半ノルムの集合 Γ により
定義される(過去スレ008の469)とする。

A を E の部分集合とする。
A が有界(>>35)であるためには、任意の p ∈ Γ が A で有界である
ことが必要十分である。

証明
任意の α > 0 と p ∈ Γ に対して、
V(p, α) = { x ∈ E | p(x) ≦ α } とおく。

A が有界なら任意の α > 0 と p ∈ Γ に対して、
λ ∈ K で A ⊂ λV(p, α) となるものが存在する。
x ∈ V(p, α) なら p(λx) = |λ|p(x) ≦ |λ|α
よって p は A で有界である。

逆に任意の p ∈ Γ が A で有界であるとする。
任意の p ∈ Γ に対して、A ⊂ V(p, β) となる β > 0 が存在する。
任意の α > 0 に対して、V(p, β) = (β/α)V(p, α) である。
よって、>>36 より A は有界である。
証明終
59: 2007/11/27(火) 15:20:29 AAS
よかった kummer相変わらず ホッ
60: 2007/11/27(火) 15:21:50 AAS
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61
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/11/28(水) 21:43:00 AAS
次の命題の証明は過去スレ008の462で述べたように過去スレ006の562の
証明とまったく同じである。
しかし、その証明は計算的で少し不透明なので別証明を述べる。

命題
K を可換とは限らない体とする。
| | を K の自明でない絶対値(過去スレ006の414)とする。
E を K-左加群とし、p を E の半ノルム(過去スレ008の458)とする。
p により定義される一様構造(過去スレ008の461)により
E は K 上の位相線形空間になる。

証明
実数 α > 0 に対して V(p, α) = { x ∈ E | p(x) ≦ α } とおく。
1) α > 0, β > 0 に対して
V(p, min(α, β)) ⊂ V(p, α) ∩ V(p, β)

2) α > 0 に対して V(p, α/2) + V(p, α/2) ⊂ V(p, α)

3) 任意の α > 0 と任意の K の元 λ ≠ 0 に対して
λV(p, α) = V(p, |λ|α)

4) 任意の x ∈ E と任意の α > 0 に対して
|λ| ≧ p(x)/α, λ ≠ 0 なら x ∈ (1/λ)V(p, α)
即ち V(p, α) は吸収的である。

5) 任意の α > 0 に対して、|λ| ≦ 1 で p(x) ≦ α なら
p(λx) = |λ|p(x) ≦ α であるから λV(p, α) ⊂ V(p, α) である。
即ち、V(p, α) は平衡的である。

以上から過去スレ006の636より V(p, α) 全体を 0 の基本近傍系と
する位相により E はK 上の位相線形空間となる。
証明終
62: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/11/28(水) 22:14:27 AAS
訂正

>>61
>4) 任意の x ∈ E と任意の α > 0 に対して
>|λ| ≧ p(x)/α, λ ≠ 0 なら x ∈ (1/λ)V(p, α)
>即ち V(p, α) は吸収的である。

4) 任意の x ∈ E と任意の α > 0 に対して
|λ| ≧ p(x)/α なら x ∈ λV(p, α)
即ち V(p, α) は吸収的である。
63
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/01(土) 10:06:14 AAS
定義
K を可換とは限らない体とする。
| | を K の自明でない絶対値(過去スレ006の414)とする。
E を K-左加群とし、p を E の半ノルム(過去スレ008の458)とする。
>>61 から p で定義される位相により E は K 上の位相線形空間になる。
この位相線形空間 E を半ノルム空間と言う。
64: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/01(土) 10:52:46 AAS
命題
K を実数体または複素数体とする。
E, F を K 上の半ノルム空間(>>63)とし、p, q をそれぞれ E, F の
半ノルムとする。L(E, F) を E から F への連続な線形写像全体とする。
f ∈ L(E, F) に対して r(f) = sup{q(f(x))|x ∈ E, p(x) ≦ 1} とおく。
r は L(E, F) の半ノルムであり r が定める位相は
有界収束の位相(>>57)と一致する。

証明
>>58 より M が有界であるためには、p が M で有界である
ことが必要十分である。

実数 α > 0 に対して
V(p, α) = { x ∈ E | p(x) ≦ α }
V(q, α) = { x ∈ F | q(x) ≦ β } とおく。
E の部分集合 M が有界なら
ある実数 α > 0 に対してM ⊂ V(p, α) となる。

E の部分集合 M と F の 0 の近傍 V に対して
T(M, V) = { f ∈ L(E, F) | f(M) ⊂ V } とおく。
L(E, F) の有界収束の位相は M を E の任意の有界な部分集合を動かし
V を F の 0 の任意の近傍を動かしたときの T(M, V) 全体を 0 の
基本近傍系とする。
よって、実数 α > 0, β > 0 に対して
T(V(p, α), V(q, β)) の全体が L(E, F) の 0 の基本近傍系である。
T(V(p, α), V(q, β))
= { f ∈ L(E, F) | p(x) ≦ α なら q(f(x)) ≦ β }
= { f ∈ L(E, F) | p(x/α) ≦ 1 なら (1/α)q(f(x)) ≦ β/α }
= { f ∈ L(E, F) | p(x/α) ≦ 1 なら q(f(x/α)) ≦ β/α }
= { f ∈ L(E, F) | r(f) ≦ β/α }
よって L(E, F) の位相は r で定義される。
証明終
65
(11): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/01(土) 12:32:32 AAS
定義
K を実数体または複素数体とする。
E を K 上の位相線形空間とする。
L(E, K) を E から K への連続な線形写像全体とする。
L(E, K) を E の双対(dual)と言う。
66
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/01(土) 12:38:44 AAS
定義
K を実数体または複素数体とする。
E を K 上の位相線形空間とする。
E' を E の双対(>>65)とする。

E' の単純収束の位相(>>57)を E' の弱位相と言う。
E' の有界収束の位相(>>57)を E' の強位相と言う。
67
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/01(土) 20:38:06 AAS
位相線形空間の双対(>>57)については Hahn-Banach の定理が
基本的である。これについては過去スレ006の769で E がノルム空間の
場合に証明した。
ここでは Bourbaki に従ってそれをやや拡張して述べる。
準備として凸垂と凸関数、前順序線形空間などについて述べる。
68: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/01(土) 20:42:18 AAS
>>67
>位相線形空間の双対(>>57)については Hahn-Banach の定理が

位相線形空間の双対(>>65)については Hahn-Banach の定理が
69: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/01(土) 21:00:31 AAS
>>67
>>準備として凸垂と凸関数、前順序線形空間などについて述べる。

準備として凸錘と凸関数、前順序線形空間などについて述べる。
70
(3): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/01(土) 21:06:02 AAS
定義
K を実数体または複素数体とする。
E を K 上の線形空間とする。
E の部分集合 C は 任意の実数 λ > 0 に対して λC ⊂ C となるとき
0 を頂点とする錘、または単に錘と言う。
空集合は錘である。
71
(6): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/01(土) 21:13:00 AAS
定義
K を実数体または複素数体とする。
E を K 上の線形空間とする。
E の錘(>>70) C は 0 ∈ C のとき頂点付きの錘(pointed cone)と言う。
0 ∈ C でないとき頂点を除いた錘と言う。
72
(5): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/01(土) 21:31:04 AAS
定義
K を実数体または複素数体とする。
E を K 上の線形空間とする。
E の錘(>>70) で凸(過去スレ008の424)なものを凸錘(convex cone)と言う。
73
(3): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/01(土) 21:32:57 AAS
定義
K を実数体または複素数体とする。
E を K 上の線形空間とする。
E の頂点付き凸錘(>>71 >>72)が 0 を通る実直線を含まないとき、
尖った(salient)頂点付き凸錘と言う。

ここで、0 を通る実直線とは E の部分集合
{ λx | x ≠ 0 は E のある元。λ ∈ R } のことである。
74: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/01(土) 21:44:37 AAS
線形空間 E の頂点付き凸錘が重要な理由の一つは、それによって E に
前順序線形空間の構造を定義出来ることから来る。
75
(11): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/01(土) 21:54:24 AAS
定義
E を実数体 R 上の線形空間とする。
E の前順序(過去スレ008の139) ≦ が次の条件を満たすとき
E を前順序線形空間と言う。
この前順序が順序のときは Eを順序線形空間と言う。

(1) x ≦ y, x ∈ E, y ∈ E なら任意の z ∈ E に対して
x + z ≦ y + z

(2) 任意の x ≧ 0, x ∈ E と任意の λ ≧ 0, λ ∈ R に対して
λx ≧ 0
76
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/01(土) 23:00:05 AAS
補題
K を実数体または複素数体とする。
E を K 上の線形空間とする。
C を E の錘(>>70)とする。
任意の λ > 0 に対して λC = C である。

証明
C は錘だから、任意の λ > 0 に対して λC ⊂ C である。
(1/λ)C ⊂ C であるから C ⊂ λC である。
よって λC = C である。
証明終
77
(3): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/01(土) 23:07:24 AAS
命題
K を実数体または複素数体とする。
E を K 上の線形空間とする。
E の部分集合 C が凸錘であるためには

(1) C + C ⊂ C
(2) 任意の λ > 0 に対して λC ⊂ C となる

ことが必要十分である。

証明
必要性:
C が凸錘であるとする。
C は凸だから (1/2)C + (1/2)C ⊂ C である。
>>76 より (1/2)C = C だから C + C ⊂ C
C は錘だから (2) が成り立つ。

十分性:
(1) と (2) が成り立つとする。
(2) から C は錘である。
任意の 0 < λ < 1 に対して >>76 より
λC + (1 - λ)C = C + C ⊂ C
よって C は凸である。
証明終
78
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/01(土) 23:15:46 AAS
命題
E を実数体 R 上の前順序線形空間(>>75)とする。
P = { x ∈ E | x ≧ 0 } とおく。
P は頂点付き凸錘(>>71 >>72)である。

証明
次の (1) と (2) が成り立つことは定義(>>75)から明らかである。

(1) P + P ⊂ P
(2) 任意の λ > 0 に対して λP ⊂ P となる

よって >>77 より P は凸錘である。
0 ∈ P だから P は頂点付きである。
証明終
79
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/02(日) 00:16:18 AAS
命題
E を実数体 R 上の線形空間とする。
P を E の頂点付き凸錘(>>71 >>72)とする。
E の元 x, y の関係 x ≦ y を y - x ∈ P で定義する。
≦ は E の前順序であり E はこの前順序で前順序線形空間(>>75)となる。
このとき、P = { x ∈ E | x ≧ 0 } である。

証明
>>77 より

(1) P + P ⊂ P
(2) 任意の λ > 0 に対して λP ⊂ P
となる

x ≦ y, y ≦ z とする。
z - x = (z - y) + (y - x) ∈ P + P ⊂ P
よって x ≦ z である。

P は頂点付きだから 0 ∈ P である。
よって任意の x ∈ E に対して x ≦ x である。
以上から ≦ は前順序である。

x ≦ y なら 任意の z に対して (y + z) - (x + z) = y - x ∈ P
よって x + z ≦ y + z
(2) から x ≧ 0 なら λ > 0 に対して λx ≧ 0
よって E は前順序線形空間である。

P = { x ∈ E | x ≧ 0 } は明らかである。
証明終
80
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/02(日) 09:37:49 AAS
補題
E を実数体 R 上の線形空間とする。
C を E の頂点付き凸錘(>>71 >>72)とする。
W = C ∩ (-C) は C に含まれる最大の線形部分空間である。

証明
0 ∈ W だから W は空でない。
>>76 より、任意の λ > 0 に対して λC = C である。
よって λ(-C) = -C である。
よって λW = W である。
任意の μ < 0 に対して -μ > 0 だから μ(-C) = μ(-C) である。
よって μC = C である。
よって μW = W である。

一方、W + W ⊂ (C + C) ∩ -(C + C) ⊂ C ∩ -C = W
よって W は E の線形部分空間である。

C に含まれる線形部分空間は -C にも含まれるから W にも含まれる。
証明終
81
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/02(日) 09:43:13 AAS
命題
E を実数体 R 上の前順序線形空間(>>75)とする。
P = { x ∈ E | x ≧ 0 } とおく。
>>78 より P は頂点付き凸錘(>>71 >>72)である。

E の前順序が順序であるためには P が尖っている(>>73)ことが
必要十分である。

証明
E の前順序が順序であるためには P ∩ -P = 0 が必要十分である。

>>80 より P ∩ -P は P に含まれる最大の線形部分空間である。
よって、P が尖っているためには P ∩ -P = 0 が必要十分である。
証明終
82
(5): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/02(日) 11:32:06 AAS
定義
E を実数体 R 上の線形空間とする。
X を E の凸部分集合とする。
f : X → R を写像とする。

X の2元 x ≠ y と任意の 0 < λ < 1 に対して
f(λx + (1 - λ)y) ≦ λf(x) + (1 - λ)f(y)
となるとき、f を広義の凸関数または単に凸関数と言う。

f(λx + (1 - λ)y) < λf(x) + (1 - λ)f(y)
となるとき、f を狭義の凸関数と言う。
83
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/02(日) 11:34:16 AAS
定義
E を実数体 R 上の線形空間とする。
X を E の凸部分集合とする。
f : X → R を写像とする。

-f が広義の凸関数(>>82)のとき f を広義の凹関数または単に
凹関数と言う。
-f が狭義の凸関数のとき f を狭義の凹関数と言う。

言い換えると、
X の2元 x ≠ y と任意の 0 < λ < 1 に対して
f(λx + (1 - λ)y) ≧ λf(x) + (1 - λ)f(y)
となるとき、f を広義の凹関数または単に凹関数と言う。

f(λx + (1 - λ)y) > λf(x) + (1 - λ)f(y)
となるとき、f を狭義の凹関数と言う。
84: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/02(日) 11:35:53 AAS
定義
E を実数体 R 上の線形空間とする。
X を E の凸部分集合とする。
f : X → R を写像とする。
f が同時に凸関数(>>82)で凹関数(>>83)のとき f をアフィン関数と言う。

言い換えると、
X の2元 x ≠ y と任意の 0 < λ < 1 に対して
f(λx + (1 - λ)y) = λf(x) + (1 - λ)f(y)
となるとき、f をアフィン関数と言う。
85: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/02(日) 12:15:54 AAS
凸関数と凸集合には次の関係がある。
86
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/02(日) 12:17:06 AAS
命題
E を実数体 R 上の線形空間とする。
X を E の凸部分集合とする。
f : X → R を写像とする。
以下の条件は同値である。

(1) f は凸関数(>>82)である。

(2) F = { (x, a) ∈ X × R | f(x) ≦ a } は凸集合である。

(3) F' = { (x, a) ∈ X × R | f(x) < a } は凸集合である。

証明
(1) ⇒ (3)
(x, a) ∈ F', (y, b) ∈ F', 0 < λ < 1 に対して
f(λx + (1 - λ)y) ≦ λf(x) + (1 - λ)f(y) < λa + (1 - λ)b
よって
λ(x, a) + (1 - λ)(y, b) = (λx + (1 - λ)y, λa + (1 - λ)b) ∈ F'
即ち、F' は凸集合である。

(3) ⇒ (2)
(x, a) ∈ F, (y, b) ∈ F, 0 < λ < 1 とする。
任意のε > 0 に対して
(x, a + ε) ∈ F', (y, b + ε) ∈ F' である。
λ(x, a + ε) + (1 - λ)(y, b + ε)
= (λx + (1 - λ)y, λa + (1 - λ)b + λε + (1 - λ)ε)
= (λx + (1 - λ)y, λa + (1 - λ)b + ε) ∈ F'
よって、f(λx + (1 - λ)y) < λa + (1 - λ)b + ε
よって、f(λx + (1 - λ)y) ≦ λa + (1 - λ)b
即ち、λ(x, a) + (1 - λ)(y, b) ∈ F である。
よって、F は凸集合である。
(続く)
87: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/02(日) 12:22:45 AAS
>>86 の続き。

(2) ⇒ (1)
X の2元 x ≠ y と任意の 0 < λ < 1 に対して
f(x) ≦ a, f(y) ≦ b となる a, b を任意に取る。
(x, a) ∈ F, (y, b) ∈ F だから
λ(x, a) + (1 - λ)(y, b) = (λx + (1 - λ)y, λa + (1 - λ)b) ∈ F
よって、f(λx + (1 - λ)y) ≦ λa + (1 - λ)b
よって、f(λx + (1 - λ)y) ≦ λf(x) + (1 - λ)f(y)
証明終
88
(3): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/02(日) 13:17:23 AAS
定義
E を実数体 R 上の前順序線形空間(>>75)とする。
f : E → R を線形写像で任意の x ≧ 0 に対して f(x) ≧ 0 とする。
このとき f を E 上の正の線形形式と言う。
89
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/02(日) 14:00:21 AAS
補題
E を実数体 R 上の前順序線形空間(>>75)とする。
V を E の線形部分空間で E の任意の元 x に対して
x ≦ y となる y ∈ V が存在するとする。
f を V 上の正の線形形式(>>88) とする。
a を E の元で V に含まれないものとする。
f は V + Ra 上の正の線形形式 h に拡張される。

証明
a は V に含まれないから V + Ra の元は x + λa, x ∈ V, λ ∈ R の
形に一意に書ける。
V + Ra 上の線形形式 h が f の拡張であれば、
x ∈ V, λ ∈ R のとき h(x + λa) = f(x) + λh(a) となる。
よって、
x + λa ≧ 0 のとき f(x) + λh(a) ≧ 0 となるように h(a) を
選べればよい。

これは、λ = 0 のときは明らかであるから、λ ≠ 0 としてよい。
λ > 0 のとき f(x) + λh(a) ≧ 0 は f(x/λ) + h(a) ≧ 0 と
同値である。x は任意だから、これは f(x) + h(a) ≧ 0 と同値である。
即ち f(x) ≦ h(a) と同値である。
λ < 0 のとき f(x) + λh(a) ≧ 0 は f(x/λ) + h(a) ≦ 0 と
同値である。x は任意だから、これは f(x) + h(a) ≦ 0 と同値である。
即ち h(a) ≦ f(x) と同値である。
以上から、任意の x ∈ V と 任意の y ∈ V に対して、
f(x) ≦ h(a) ≦ f(y) となるように h(a) が選べればよい。

(続く)
90: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/02(日) 14:01:06 AAS
>>89 の続き。

A = { x ∈ V | x ≦ a } とおく。
-a ≦ x となる x ∈ V があるから -x ≦ a となって A は空でない。

B = { x ∈ V | a ≦ x } とおく。
仮定から B は空でない。

x ∈ A, y ∈ B のとき x ≦ a ≦ y である。
f は正の線形形式だから、f(x) ≦ f(y) となる。
よって α = sup{ f(x) | x ∈ A } と β = inf{ f(x) | x ∈ B } は
有限であり、α ≦ β である。
区間 [α, β] の任意の元 γ に対して h(a) = γ とおけばよい。
証明終
91
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/02(日) 14:17:22 AAS
命題
E を実数体 R 上の前順序線形空間(>>75)とする。
V を E の線形部分空間で E の任意の元 x に対して
x ≦ y となる y ∈ V が存在するとする。
f を V 上の正の線形形式(>>88) とする。
f は E 上の正の線形形式 h に拡張される。

証明
V を含む E の線形部分空間 W と W 上で定義された正の線形形式 g で
f の拡張になっているものの対 (W, g) 全体の集合を Φ とおく。
Φ の順序 (W, g) ≦ (W', g') を W ⊂ W' で g' が g の拡張である
として定義する。
明らかに Φ は帰納的な集合であるから Zorn の補題により Φ には
極大元 (Z, h) が存在する。
E ≠ Z と仮定する。
a を E の元で V に含まれないものとする。
>>89 より h は V + Ra 上の正の線形形式 h' に拡張される。
これは (Z, h) が極大であることに反する。
よって E = Z である。
証明終
92
(4): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/02(日) 14:28:46 AAS
定義
E を実数体 R 上の線形空間とする。
p : E → R を写像で任意の x ∈ E と任意の λ ≧ 0 に対して
p(λx) = λp(x) とする。
このとき p を E 上の正の半同次形式と言う。
93: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/02(日) 14:38:14 AAS
命題
E を実数体 R 上の線形空間とする。
p を E 上の正の半同次形式(>>92)とする。

p が凸(>>82)であるためには
任意の x ∈ E, y ∈ E に対して
p(x + y) ≦ p(x) + p(y) となることが必要十分である。

証明
必要性:
p が凸であるとする。
任意の x ∈ E, y ∈ E に対して
p((1/2)x + (1/2)y) ≦ (1/2)p(x) + (1/2)p(y) となる。
よって (1/2)p(x + y) ≦ (1/2)(p(x) + p(y))
よって p(x + y) ≦ p(x) + p(y)

十分性:
任意の x ∈ E, y ∈ E に対して
p(x + y) ≦ p(x) + p(y) となるとする。

0 < λ < 1 に対して
p(λx + (1 - λ)y) ≦ p(λx) + p((1 - λ)y) = λp(x) + (1 - λ)p(y)
よって、p は凸である。
証明終
94
(5): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/02(日) 14:44:57 AAS
定義
E を実数体 R 上の線形空間とする。
E 上の正の半同次形式(>>92)で凸(>>82)であるものを劣線形形式
(sublinear form)または劣線形関数と言う。
95
(6): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/08(土) 21:59:35 AAS
定理(Hahn-Banachの定理の解析版)
E を実数体 R 上の線形空間とする。
p を E 上の劣線形関数(>>94)とする。
V を E の線形部分空間とし、 f を V 上の線形形式で
任意の y ∈ V に対して f(y) ≦ p(y) とする。
このとき E 上の線形形式 h で f の拡張であり
任意の x ∈ E に対して h(x) ≦ p(x) となるものがある。

証明
P = { (x, a) ∈ E × R | p(x) ≦ a } とおく。
>>86 より P は R 上の線形空間 E × R の 凸部分集合である。
P は明らかに頂点付き錘(>>71)である。
>>79 より E × R の元 (x, a), (y, b) の関係 (x, a) ≦ (y, b) を
(y, b) - (x, a) ∈ P で定義することにより E × R は
前順序線形空間となる。

(y, a) ∈ V × R のとき g(y, a) = a - f(y) とおく。
(y, a) ∈ (V × R) ∩ P のとき f(y) ≦ p(y) ≦ a であるから
g(y, a) = a - f(y) ≧ 0
よって g は V × R 上の正の線形形式(>>88)である。

任意の (x, a) ∈ E × R に対して b ≧ p(-x) + a となる b ∈ R を
とる。(x, a) ≦ (0, b) であり (0, b) ∈ V × R である。
よって、>>91 より g は E 上の正の線形形式 u に拡張される。
a ∈ R のとき (0, a) ∈ V × R だから u(0. a) = g(0, a) = a
よって任意の (x, a) ∈ E × R に対して
u(x. a) = u((x, 0) + (0, a)) = u(x, 0) + u(0. a) = u(x, 0) + a
h(x) = -u(x, 0) とおけば h は E 上の線形形式であり、
u(x. a) = a - h(x) である。よって h は f の拡張である。
u は正の線形形式だから p(x) ≦ a のとき h(x) ≦ a である。
よって h(x) ≦ p(x) である。
証明終
96: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/08(土) 22:13:08 AAS
>>95 の証明は Bourbaki による。
私の個人的な感じだが、この証明は綺麗だがなんとなく
キツネにつままれたような気がしないでもない。
間接的な証明だからかもしれない。
そこで直接的な証明をすることにする。
これは過去スレ006の768と本質的には同じである。
97
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/08(土) 23:00:42 AAS
>>95 を証明する前段階として、次の補題を証明する。

補題
E を実数体 R 上の線形空間とする。
p を E 上の劣線形関数(>>94)とする。
V を E の線形部分空間とし、 f を V 上の線形形式で
任意の y ∈ V に対して f(y) ≦ p(y) とする。
a ∈ E - V に対して L = V + Ra とおく。
このとき L 上の線形形式 h で f の拡張であり
任意の x ∈ L に対して h(x) ≦ p(x) となるものがある。

この証明を述べる前に、その方針を述べる。

λ ≠ 0 のとき、任意の x ∈ V に対して
f(x) + λh(a) ≦ p(x + λa) となるように h(a) を定めればよい。

λ > 0 のとき両辺に 1/λ を掛けて
f((1/λ)x) + h(a) ≦ p((1/λ)x + a)
y = (1/λ)x とおくと、f(y) + h(a) ≦ p(y + a)
即ち h(a) ≦ p(y + a) - f(x)

λ < 0 のとき両辺に -(1/λ) を掛けて
f(-(1/λ)x) - h(a) ≦ p(-(1/λ)x - a)
z = -(1/λ)x とおくと、f(z) - h(a) ≦ p(z - a)
即ち f(z) - p(z - a) ≦ h(a)

よって f(z) - p(z - a) ≦ h(a) ≦ p(y + a) - f(y)
よって f(z) - p(z - a) ≦ p(y + a) - f(y)
即ち f(y) + f(z) ≦ p(y + a) + p(z - a) を示せばよい。
これは
f(y + z) ≦ p(y + z) = p((y + a) + (z - a)) ≦ p(y + a) + p(z - a)
より出る。
98
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/08(土) 23:21:46 AAS
補題
E を実数体 R 上の線形空間とする。
p を E 上の劣線形関数(>>94)とする。
V を E の線形部分空間とし、 f を V 上の線形形式で
任意の y ∈ V に対して f(y) ≦ p(y) とする。
a ∈ E - V に対して L = V + Ra とおく。
このとき L 上の線形形式 h で f の拡張であり
任意の x ∈ L に対して h(x) ≦ p(x) となるものがある。

証明
任意の y ∈ V と任意の z ∈ V に対して
f(y + z) ≦ p(y + z) = p((y + a) + (z - a)) ≦ p(y + a) + p(z - a)
よって f(y) + f(z) ≦ p(y + a) + p(z - a)
よって f(z) - p(z - a) ≦ p(y + a) - f(y)

よって、
α = sup { f(z) - p(z - a) | z ∈ V }
β = inf { p(y + a) - f(y) | y ∈ V }
とおくと α と β は有限であり、α ≦ β である。
α ≦ h(a) ≦ β となるように h(a) を選ぶ。
任意の x ∈ V と λ ∈ R に対して h(x) = f(x) + λh(a) とおく。
>>97 で示したように f(x) + λh(a) ≦ p(x + λa) となる。
証明終
99
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/08(土) 23:39:56 AAS
Hahn-Banachの定理の解析版(>>95)の別証

V を含む E の線形部分空間 W と W 上で定義された線形形式 g で
f の拡張であり、任意の y ∈ W に対して g(y) ≦ p(y) と
なっているものの対 (W, g) 全体の集合を Φ とおく。
Φ の順序 (W, g) ≦ (W', g') を W ⊂ W' で g' が g の拡張である
として定義する。
明らかに Φ は帰納的な集合であるから Zorn の補題により Φ には
極大元 (Z, h) が存在する。
E ≠ Z と仮定する。
a を E の元で V に含まれないものとする。
>>98 より h は V + Ra 上の線形形式 h' で
任意の y ∈ V + Ra に対して h'(y) ≦ p(y) となるもの
に拡張される。
これは (Z, h) が極大であることに反する。
よって E = Z である。
証明終
100: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/08(土) 23:49:27 AAS
Hahn-Banachの定理の証明は >>95>>99 も実数体の順序構造の性質
に依存していることに注意しておく。
即ち、この定理は本質的に実線形空間の定理であると考えられる。
101
(3): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/09(日) 00:33:18 AAS
Hahn-Banachの定理の解析版(>>95)の系1

E を実数体 R 上の線形空間とする。
p を E 上の半ノルム(過去スレ008の458)とする。
V を E の線形部分空間とし、 f を V 上の線形形式で
任意の y ∈ V に対して |f(y)| ≦ p(y) とする。
このとき E 上の線形形式 h で f の拡張であり
任意の x ∈ E に対して |h(x)| ≦ p(x) となるものがある。

証明
半ノルムは劣線形関数(>>94)である。
任意の y ∈ V に対して f(y) ≦ |f(y)| ≦ p(y) であるから
Hahn-Banachの定理の解析版(>>95) より
E 上の線形形式 h で f の拡張であり
任意の x ∈ E に対して h(x) ≦ p(x) となるものがある。
h(-x) ≦ p(-x) = p(x) であるから
h(x) ≧ -p(x) である。
よって、|h(x)| ≦ p(x) である。
証明終
102
(5): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/09(日) 08:59:35 AAS
命題
E を複素数体 C 上の線形空間とする。
Hom(E, C) を E から C への C 上の線形写像全体の集合とする。
Hom(E, R) を E から実数体 R への R 上の線形写像全体の集合とする。

f ∈ Hom(E, C) に対して Re(f) を f の実部とする。
即ち x ∈ E に対して Re(f)(x) = Re(f(x)) である。
Re(f) は明らかに Hom(E, R) の元である。

このとき f に Re(f) を対応させる写像 Re : Hom(E, C) → Hom(E, R) は
全単射である。

証明
f ∈ Hom(E, C) に対して g = Re(f) を f の実部、
h = Im(f) を f の虚部とする。
f = g + ih である。
即ち x ∈ E に対して f(x) = g(x) + ih(x) である。
f(ix) = if(x) であるから
g(ix) + ih(ix) = -h(x) + ig(x) である。
よって h(x) = -g(ix) である。
よって f(x) = g(x) - ig(ix) である。

逆に g ∈ Hom(E, R) に対して f(x) = g(x) - ig(ix) とおけば、
f(ix) = g(ix) + ig(x) = if(x) であるから f ∈ Hom(E, C) である。
この f を Γ(g) と書けば Re と Γ は互いに逆写像である。
証明終
103: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/09(日) 09:03:39 AAS
>>102 を使って >>101 を複素線形空間の定理に拡張出来る。
104
(11): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/09(日) 09:37:09 AAS
定理(Hahn-Banach)
K を実数体または複素数体とする。
E を K 上の線形空間とする。
p を E 上の半ノルム(過去スレ008の458)とする。
V を E の線形部分空間とし、 f を V 上の線形形式で
任意の y ∈ V に対して |f(y)| ≦ p(y) とする。
このとき E 上の線形形式 h で f の拡張であり
任意の x ∈ E に対して |h(x)| ≦ p(x) となるものがある。

証明
K = R のときは >>101 で証明されているから K = C としてよい。
Re(f) を f の実部とする。
任意の y ∈ V に対して |Re(f)(y)| ≦ |f(y)| ≦ p(y) である。
よって、>>101 より E 上の線形形式 g で f の拡張であり
|g(x)| ≦ p(x) となるものがある。
>>102 より h(x) = g(x) - ig(ix) は Hom(E, C) の元であり、
f の拡張である。

任意の x ∈ E に対して |h(x)| ≦ p(x) を示せばよい。
h(x) = 0 ならこの不等式は明らかであるから h(x) ≠ 0 とする。

任意の実数 θ に対して λ = exp(iθ) とおく。
p(λx) = |λ|p(x) = p(x) であることに注意する。

|Re(λh(x))| = |Re(h(λx))| = |Re(g(λx))| ≦ p(λx) = p(x)

h(x) の偏角を θ とすれば h(x) = |h(x)|exp(iθ)である。
λ = exp(-iθ) とすれば λh(x) = |h(x)| である。
よって Re(λh(x)) = |h(x)|
よって上の不等式から |h(x)| ≦ p(x) である。
証明終
105: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/09(日) 09:42:55 AAS
訂正

>>104
>よって、>>101 より E 上の線形形式 g で f の拡張であり
>|g(x)| ≦ p(x) となるものがある。

よって、>>101 より E 上の実線形形式 g で Re(f) の拡張であり
|g(x)| ≦ p(x) となるものがある。
106: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/09(日) 13:16:48 AAS
命題(>>104 の系1)
K を実数体または複素数体とする。
E を K 上の線形空間とする。
p を E 上の半ノルム(過去スレ008の458)とする。
x_0 を E の点とする。
このとき E 上の線形形式 f で f(x_0) = p(x_0) で、
任意の x ∈ E に対して |f(x)| ≦ p(x) となるものがある。

証明
x_0 で生成される E の線形部分空間を V とする。
V 上の線形形式 g を g(x_0) = p(x_0) で定義する。
即ち、任意の λ ∈ K に対して g(λx_0) = λp(x_0) である。
|g(λx_0)| = |λp(x_0)| = |λ|p(x_0) = p(λx_0) である。
よって >>104 より E 上の線形形式 f で g の拡張であり
任意の x ∈ E に対して |f(x)| ≦ p(x) となるものがある。
f(x_0) = g(x_0) = p(x_0) である。
証明終
107: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/09(日) 20:54:59 AAS
訂正

>>104
>|Re(λh(x))| = |Re(h(λx))| = |Re(g(λx))| ≦ p(λx) = p(x)

|Re(λh(x))| = |Re(h(λx))| = |g(λx)| ≦ p(λx) = p(x)
108: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/09(日) 20:57:24 AAS
>>104 の証明の補足。

|h(x)| ≦ p(x) であることは偏角を使わなくても次のようにして出来る。

h(x) ≠ 0 とする。
λ = |h(x)|/h(x) とおく。
|λ| = 1 である。
λh(x) = |h(x)| であるから Re(λh(x)) = |h(x)|
よって、
|h(x)| = |Re(λh(x))| = |Re(h(λx))| = |g(λx)| ≦ p(λx) = p(x)
109: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/15(土) 12:22:38 AAS
Hahn-Banachの定理(>>104)を局所凸位相線形空間に適用するには
局所凸位相線形空間の間の連続写像を半ノルムで特徴付ける必要がある。
これについて述べる。
110
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/15(土) 14:12:22 AAS
命題
K を可換とは限らない体とする。
| | を K の自明でない絶対値(過去スレ006の414)とする。
E と F を K 上の左位相線形空間とし E の位相は半ノルムの集合 Γ で
定義され(過去スレ008の469) F の位相は半ノルムの集合 Γ' で
定義されるとする。

f : E → F を線形写像とする。
f が連続であるためには
任意の q ∈ Γ' に対して Γ の元の有限列 p_i, i = 1, ... , n と
実数 α > 0 が存在し任意の x ∈ E に対して

q(f(x)) ≦ αsup{ p_i(x) | i = 1, ... , n}

となることが必要十分である。

証明
条件の十分性:
任意の γ > 0 に対して p_i(x) < γ/α, i = 1, ... , n
であれば、q(f(x)) < γ であるから f は 0 で連続である。
従って、
a ∈ E と任意の γ > 0 に対して p_i(x - a) < γ/α, i = 1, ... , n
であれば、q(f(x) - f(a)) = q(f(x - a)) < γ であるから
f は a で連続である。

(続く)
111: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/15(土) 14:12:59 AAS
>>110 の続き。

条件の必要性:
f は 0 で連続だから、
任意の γ > 0 に対して Γ の元の有限列 p_i, i = 1, ... , n と
実数 α > 0 が存在し p_i(x) < α, i = 1, ... , n
であれば、q(f(x)) < γ となる。
p = sup{ p_i(x) | i = 1, ... , n} とおく。
p は半ノルムである。
α < 1 と仮定してよい。
さらに、K の絶対値は自明でないから
α = |λ| < 1 となる λ ∈ K があると仮定してよい。
p(x) ≦ |λ|^(m + 1) となる有理整数 m がある。
p(λ^(-m)x) ≦ |λ| であるから、q(f(x)) < γ|λ|^m
このとき、p(x) = 0 なら m はいくらでも大きく出来るから
q(f(x)) = 0 である。
よって、p(x) ≠ 0 と仮定してよい。

|λ|^(m + 2) < p(x) ≦ |λ|^(m + 1) となる有理整数 m がある。
|λ|^m < |λ|^(-2) p(x)
よって、
q(f(x)) < (γ|λ|^(-2))p(x)
α = γ|λ|^(-2) とおけば、q(f(x)) < αp(x)
証明終
112
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/15(土) 14:46:51 AAS
命題(>>104 の系2)
K を実数体または複素数体とする。
E を K 上の局所凸線形空間とする。
M を E の線形部分空間で f を M 上の連続な線形形式とする。
f は E 上の連続な線形形式 h に拡張される。

証明
>>110 より E 上の連続な半ノルム p で
任意の x ∈ M に対して |f(x)| ≦ p(x) となるものがある。
>>104 より E 上の線形形式 h で f の拡張であり
任意の x ∈ E に対して |h(x)| ≦ p(x) となるものがある。
>>110 より h は連続である。
証明終
113: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/15(土) 14:49:23 AAS
局所凸線形位相空間が重要な理由の一つは >>112 が成り立つことである。
114: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/15(土) 15:35:04 AAS
命題(>>104 の系3)
K を実数体または複素数体とする。
E を K 上のノルム空間とする。
M を E の線形部分空間で f を M 上の連続な線形形式とする。
E 上の連続な線形形式 h で f の拡張であり |h| = |f| となるものが
存在する。
ここで、 |h| と |f| はそれぞれ h と f のノルム(過去スレ006の690)
である。

証明
p を E のノルムとする。f は連続だから |f| は有限である。
任意の x ∈ M に対して |f(x)| ≦ |f|p(x) となる。
|f|p(x) は E の半ノルムだから
>>104 より,E 上の線形形式 h で f の拡張であり
任意の x ∈ E に対して |h(x)| ≦ |f|p(x) となるものが存在する。
よって、|h| ≦ |f| である。
よって |h| は有限であり、h は連続である。

x ∈ E に対して |h(x)| ≦ |h|p(x) となる。
h は f の拡張であるから
x ∈ M に対して |f(x)| ≦ |h|p(x) となる。
よって、|f| ≦ |h| である。
証明終
115
(3): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/16(日) 13:39:54 AAS
定義
K を可換とは限らない位相体(過去スレ006の190)とする。
E を K 上の左位相線形空間(過去スレ006の583)とし
E は部分線形空間 M_1. ... , M_n の直和であるとする。
M = ΠM_i を位相線形空間の直積とする。
M から E への写像 f : M → E を
f(x_1, ... , x_n) = x_1 + ... , + x_n で定義する。
f は連続な全単射であるが、これが位相同型であるとき
E は M_i の位相直和であるという。
116
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/16(日) 13:54:07 AAS
命題
K を可換とは限らない位相体(過去スレ006の190)とする。
E を K 上の左位相線形空間(過去スレ006の583)とし
E は部分線形空間 M_1. ... , M_n の直和であるとする。
E から各 M_i への射影を p_i とする。
E が M_i の位相直和(>>115)であるためには各 p_i が連続であることが
必要十分である。

証明
必要性は位相直和の定義(>>115)から明らかである。

各 p_i が連続であるとする。
M から E への写像 f : M → E を
f(x_1, ... , x_n) = x_1 + ... , + x_n で定義する。

x ∈ E に (p_1(x), ... , p_n(x)) ∈ ΠM_i を
対応させる写像 g は連続であり、f の逆写像である。
証明終
117
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/16(日) 16:01:04 AAS
定義
K を可換とは限らない位相体(過去スレ006の190)とする。
E を K 上の左位相線形空間(過去スレ006の583)とし
E は部分線形空間 M と N の位相直和(>>115)であるとする。
このとき N を M の位相補空間と言う。
118
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/16(日) 16:10:40 AAS
命題
K を可換とは限らない位相体(過去スレ006の190)とする。
E を K 上の左位相線形空間(過去スレ006の583)とし
M を E の部分線形空間とする。
f : E → M を連続な線形写像で任意の x ∈ M に対して
f(x) = x とする。
このとき M は位相補空間(>>117)を持つ。

証明
N = f^(-1)(0) とおく。
E は M と N の直和である。
1 - f はこの直和分解に関して E から N への射影であり連続である。
>>116 より E は M と N の位相直和(>>115)である。
証明終
119: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/16(日) 18:21:04 AAS
命題(>>104 の系4)
K を実数体または複素数体とする。
E を K 上の分離的な局所凸線形空間とする。
M を E の有限次元の線形部分空間とする。
M は位相補空間を持つ。

証明
e_1, . . . , e_n を M の任意の基底とする。
過去スレ006の651より
写像 f : Σ(ξ_i)(e_i) → (ξ_i) は M から K^n への位相同型である。
f_i : M → K を f(Σ(ξ_i)(e_i)) = ξ_i により定義する。
>>112より f_i は E 上の連続な線形形式 g_i に拡張される。
g(x) = (g_1(x), ... , g_n(x)) により g : E → K^n を定義する。
h = f^(-1)g とおく。h : E → M は連続な線形写像であり、
x ∈ M のとき h(x) = x である。
>>118 より M は位相補空間を持つ。
証明終
120: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/22(土) 11:35:28 AAS
後で必要になるのでアフィン空間について寄り道をする。
アフィン空間とは標語的に言うと、原点+べクトル空間のことである。
正確に定義すると次のようになる。
121
(21): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/22(土) 11:36:26 AAS
定義
K を可換とは限らない体とする。
V を K 上の左線形空間とする。
V に付随するアフィン空間 E とは V を加法群とみたとき
推移的な V-集合(過去スレ004の388,389) E であり、
E のある1点の安定化部分群(過去スレ004の392)が 0 と
なるようなものである。
122
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/22(土) 11:46:47 AAS
K を可換とは限らない体とする。
V を K 上の左線形空間とし、
E を V に付随するアフィン空間(>>121)とする。

V は E に推移的に作用するから、E の任意の点の安定化部分群は
0 である。

E の点 p と V の元 x に対して x の p に対する作用を p + x または
x + p と書く。

V は E に推移的に作用するから、
E の2元 p, q に対して q = p + x となる x ∈ V が有る。
y ∈ V に対して p + x = p + y なら p + (x - y) = p である。
p の安定化部分群は 0 だから x - y = 0 である。
即ち q = p + x となる x ∈ V は一意に定まる。
このとき x = q - p と書く。
123: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/22(土) 12:05:43 AAS
K を可換とは限らない体とする。
V を K 上の左線形空間とする。

x ∈ V と y ∈ V に対して x の y に対する作用を x + y と定義することにより
V は V に付随するアフィン空間(>>121)になる。

E を V に付随するアフィン空間(>>121)とする。
p ∈ E をとる。
>>122 より x ∈ V に対して p + x ∈ E を対応させる写像 f は
V から E への全単射である。

x ∈ V, y ∈ V のとき
f(x + y) = p + (x + y) = (p + x) + y = f(x) + y

よって f は V-集合としての同型(過去スレ004の399)である。
124
(7): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/23(日) 06:54:25 AAS
定義
K を可換とは限らない体とする。
V を K 上の左線形空間とし、
E を V に付随するアフィン空間(>>121)とする。

E の部分集合 F が E のアフィン部分空間であるとは、F が空集合であるか
V の線形部分空間 W と E の点 p があり、F = p + W と書けることを言う。
ここで、 p + W = { p + x | x ∈ W } である。
125: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/23(日) 07:33:17 AAS
K を可換とは限らない体とする。
V を K 上の左線形空間とし、
E を V に付随するアフィン空間(>>121)とする。

a, x_1, ... , x_n を E の(必ずしも相異ならない)点とする。

1 ≦ i ≦ n のとき x_i - a は V に属す。
従って、λ_1, ... , λ_n を K の元としたとき
x = a + Σλ_i(x_i - a) は E に属す。

p を E の任意の点とする。

x - p = a - p + Σλ_i(x_i - p - (a - p))
= (1 - Σλ_i)(a - p) + Σλ_i(x_i - a)

これから次の命題が出る。
126
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/23(日) 07:39:23 AAS
命題
K を可換とは限らない体とする。
V を K 上の左線形空間とし、
E を V に付随するアフィン空間(>>121)とする。

x_1, ... , x_n を E の(必ずしも相異ならない)点とする。
λ_1, ... , λ_n を K の元の列で Σλ_i = 1 とする。

p を E の任意の点とする。
x = p + Σλ_i(x_i - p) は p の取り方によらない。

証明
q を E の点とする。

x - q = p - q + Σλ_i(x_i - q - (p - q))
= (1 - Σλ_i)(p - q) + Σλ_i(x_i - q) = Σλ_i(x_i - q)

即ち
x = q + Σλ_i(x_i - q)
証明終
127
(3): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/23(日) 08:04:17 AAS
定義
K を可換とは限らない体とする。
V を K 上の左線形空間とし、
E を V に付随するアフィン空間(>>121)とする。

x_1, ... , x_n を E の(必ずしも相異ならない)点とする。
λ_1, ... , λ_n を K の元の列で Σλ_i = 1 とする。
p を E の任意の点とする。
>>126 より
x = p + Σλ_i(x_i - p) は p の取り方によらない。

x を x_i の質量 λ_i の重心と言う。
128: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/23(日) 08:36:05 AAS
命題
K を可換とは限らない体とする。
V を K 上の左線形空間とし、E を V に付随するアフィン空間(>>121)とする。

E の部分集合 F が E のアフィン部分空間(>>124)であるためには、
次の条件が成り立つことが必要十分である。

F の任意の有限点列 x_1, ... , x_n と K の元の有限列
λ_1, ... , λ_n で Σλ_i = 1 となるものに対して、
x_i の質量 λ_i の重心(>>127)が常に F に属す。

証明
必要性:
F = p + W とする。ここで、 p ∈ E で W は V の線形部分空間である。
x_1, ... , x_n を F の元の有限列、
λ_1, ... , λ_n を K の元の有限列で Σλ_i = 1 とする。
x_i - p ∈ W であるから、
x_i の質量 λ_i の重心 p + Σλ_i(x_i - p) は F に属す。

十分性:
F は空でないと仮定してよい。
a ∈ F をとる。
W = { x - a | x ∈ F } は 0 = a - a を含むから空ではない。

x, y を W の元とし、λ ∈ K, μ ∈ K とする。
a + λ(x - a) + μ(y - a)
= (1 - λ - μ)(a - a) + λ(x - a) + μ(y - a)
これは a, x, y の質量がそれぞれ 1 - λ - μ, λ, μ の重心である。
よって、仮定から a + λ(x - a) + μ(y - a) ∈ F である。
よって、 λ(x - a) + μ(y - a) ∈ W である。
即ち W は V の線形部分空間である。
証明終
129: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/23(日) 09:26:53 AAS
命題
K を可換とは限らない体とする。
V を K 上の左線形空間とし、
E を V に付随するアフィン空間(>>121)とする。

(x_i), i ∈ I を E の元の族とする。
(x_i) の質量 (λ_i) の重心(>>127)全体は E のアフィン部分空間である。

ここで、(λ_i), i ∈ I は K の元の族で有限個の i ∈ I を除いて
λ_i = 0 で Σλ_i = 1 である。

証明
I が空集合のときは明らかだから I は空集合でないとする。
i ∈ I を固定する。
(λ_i), i ∈ I を K の元の族で有限個の i ∈ I を除いて
λ_i = 0 で Σλ_i = 1 とする。
(x_i) の質量 (λ_i) の重心は、x_i + Σλ_j(x_j - x_i), i ≠ j と
書ける。
これから命題の主張は明らかである。
証明終
130
(12): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/29(土) 21:21:49 AAS
定義
K を可換とは限らない体とする。
V を K 上の左線形空間とし、
E を V に付随するアフィン空間(>>121)とする。

F を E のアフィン部分空間(>>124)で空でないとする。
定義から V の線形部分空間 W と E の点 p があり、F = p + W と書ける。
W を F の方向ベクトル空間と言う。

W の次元を F の次元と言い、dim F と書く。
W の余次元、つまり dim V/W を F の余次元と言う。

次元 0 のアフィン部分空間は E の点である。
次元 1 のアフィン部分空間を E の直線と言う。
次元 2 のアフィン部分空間を E の平面と言う。
余次元 1 のアフィン部分空間を E の超平面と言う。
131: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/29(土) 22:07:30 AAS
命題
K を可換とは限らない体とする。
V を K 上の左線形空間とし、
E を V に付随するアフィン空間(>>121)とする。
F を E の部分集合とする。

K の標数が 2 でないとき、
F が E のアフィン部分空間(>>124)であるためには
F の任意の2点 x ≠ y を通る直線(>>130)が F に含まれることが
必要十分である。

証明
十分性のみ証明すればよい。

F は空でないと仮定してよい。
p ∈ F を任意にとり p を原点にすることにより、E = V と仮定してよい。

F の元 x ≠ 0 と任意の λ ∈ K に対して λx は 0 と x を
通る直線上にあるから λx ∈ F である。
x = 0 のときは λx = 0 であるからこのときも λx ∈ F である。

F の2点 x ≠ y を通る直線を L とする。
K の標数は 2 でないから
(1/2)(x + y) = x + (1/2)(y - x) は L の点である。
よって、上に述べたことから x + y ∈ F である。

以上から F は V の部分線形空間である。
よって、E のアフィン部分空間である。
証明終
132
(8): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/30(日) 12:51:57 AAS
定義
K を可換とは限らない体とする。
V と W を K 上の左線形空間とし、E と F をそれぞれ V と W に付随する
アフィン空間(>>121)とする。
φ : V → W を線形写像とする。

F は W-集合(過去スレ004の388)であるから φ により V-集合ともなる。
このとき、V-集合としての射(過去スレ004の399) f : E → F を
φ に付随するアフィン写像、または単にアフィン写像と言う。

言い換えると、次の条件を満たす写像 f : E → F を
φ に付随するアフィン写像という。

任意の x ∈ E と v ∈ V に対して
f(x + v) = f(x) + φ(v)
133: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2007/12/30(日) 13:07:36 AAS
K を可換とは限らない体とする。
V と W を K 上の左線形空間とし、E と F をそれぞれ V と W に付随する
アフィン空間(>>121)とする。
φ : V → W を線形写像とし、
f : E → F を φ に付随するアフィン写像(>>132)とする。

a を E の点とする。
任意の v ∈ V に対して f(a + v) = f(a) + φ(v) である。
よって、φ(v) = f(a + v) - f(a) である。
即ち φ は f により一意に決まる。

逆に、任意の x ∈ E に対して f(x) = f(a + x - a) = f(a) + φ(x - a)
よって、f は φ と f(a) により一意に決まる。

任意の b ∈ F に対して g(x) = b + φ(x - a) は
φ に付随するアフィン写像である。
134
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/06(日) 08:09:15 AAS
命題
K を可換とは限らない体とする。
V と W を K 上の左線形空間とし、E と F をそれぞれ V と W に付随する
アフィン空間(>>121)とする。
f : E → F を写像とする。

f がアフィン写像であるためには次の条件 (A) が成り立つことが
必要十分である。

(A) x_1, ... , x_n を E の任意の有限点列とし、
λ_1, ... , λ_n を K の元の列で Σλ_i = 1 とする。
f は常に x_i の質量 λ_i の重心(>>127) を f(x_i) の質量 λ_i の
重心に写す。
即ち、a を E の任意の点としたとき、
f(a + Σλ_i(x_i - a)) = f(a) + Σλ_i(f(x_i) - f(a))
となる。

証明
必要性:
φ : V → W を線形写像とし、
f : E → F を φ に付随するアフィン写像(>>132)とする。
φ(x_i - a) = f(x_i) - f(a) であるから
f(a + Σλ_i(x_i - a)) = f(a) + Σλ_iφ(x_i - a)
= f(a) + Σλ_i(f(x_i) - f(a))

(続く)
135: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/06(日) 08:09:49 AAS
>>134 の続き。

十分性:
条件 (A) が成り立つとする。

a, x , y を E の点とし、λ, μ を K の元としたとき、
a + λ(x - a) + μ(y - a)
= a + λ(x - a) + μ(y - a) + (1 - λ - μ)(a - a)

よって
f(a + λ(x - a) + μ(y - a)) = f(a) + λ(f(x) - f(a)) + μ(f(x) - f(a))

よって、写像 φ : V → W を
φ(x - a) = f(x) - f(a) で定義すれば、φ は線形写像である。
よって、 f は φ に付随するアフィン写像である。
証明終
136
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/13(日) 14:17:24 AAS
Hahn-Banachの定理の幾何版を証明するため次の命題を用意する。

命題
E を実数体 R 上の線形空間とする。
A を E の開凸集合で 0 を含むものとする。

任意の x ∈ E に対して
p(x) = inf { α > 0 | x ∈ αA } とおく。

p は劣線形関数(>>94)であり
A = { x ∈ E | p(x) < 1 } である。

証明
A は 0 の近傍であるから過去スレ006の629より吸収的である。
よって、過去スレ008の473より p は劣線形関数である。

W = { x ∈ E | p(x) < 1 } とおく。

p(x) < 1 なら 0 < α < 1 で、x ∈ αA となる α がある。
A は凸で 0 を含むから αA ⊂ A である。
よって、W ⊂ A である。

A は開集合だから x ∈ A なら β > 1 で βx ∈ A となるものが
存在する。
x ∈ (1/β)A だから p(x) ≦ 1/β < 1 である。
よって A ⊂ W である。
証明終
137
(5): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/13(日) 15:25:32 AAS
定理(Hahn-Banachの定理の幾何版)
E を実数体 R 上の位相線形空間とする。
A を E の空でない開凸集合とする。
M を E の空でないアフィン部分空間(>>124)で A と交わらないとする。

このとき M ⊂ H となる閉超平面(>>130)で A と交わらないものが
存在する。

証明
A は空でないから a ∈ A が存在する。
0 ∈ A でないなら A を A - a, M を M - a で置き換えることにより
0 ∈ A と仮定してよい。

任意の x ∈ E に対して
p(x) = inf { α > 0 | x ∈ αA } とおく。

>>136 より p は劣線形関数であり
A = { x ∈ E | p(x) < 1 } である。

M は空でなく 0 を含まないから M = a + W と書ける。ここで W は E の
線形部分空間であり、 a は E の元で W に含まれない。
V = Ra + W とおく。
V は E の線形部分空間であり、M はその超平面である。
V は Ra と W の直和であるから V の任意の元 x は x = λa + w と
一意に書ける。ここで λ ∈ R, w ∈ W である。
f(x) = λ により線形形式 f : V → R を定義する。
M = a + W = { x ∈ V | f(x) = 1 } である。
A ∩ M = φ であるから x ∈ M のとき p(x) ≧ 1 である。

(続く)
138
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/13(日) 15:31:02 AAS
>>137の続き。

任意の y ∈ V に対して λ = f(y) とおく。
f(y) > 0 なら f((1/λ)y) = 1 であるから (1/λ)y ∈ M である。
よって p((1/λ)y) ≧ 1
p は正の半同次形式(>>92)だから p(y) = (1/λ)p(y)
よって、p(y) ≧ λ 即ち p(y) ≧ f(y)

任意の x ∈ E に対して p(x) ≧ 0 である。
よって、f(y) = 0 なら p(y) ≧ f(y) である。

Hahn-Banachの定理の解析版(>>95) より E 上の線形形式 h で
f の拡張であり任意の x ∈ E に対して
h(x) ≦ p(x) となるものがある。
H = { x ∈ E | h(x) = 1 } とおく。
H ∩ A = φ, M ⊂ H は明らかである。
F = { x ∈ E | h(x) = 0 } とおく。
E/F は1次元の線形空間である。
F の閉包を F~ とする。F~ は E の閉線形部分空間である。
よって E = F~ または F~ = F である。
よって、E = H~ または H~ = H である。
一方、H の補集合は A を含むから E = H~ ではあり得ない。
よって、H~ = H である。
即ち、H は閉である。
証明終
139: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/13(日) 15:37:17 AAS
訂正

>>138
>p は正の半同次形式(>>92)だから p(y) = (1/λ)p(y)

>p は正の半同次形式(>>92)だから p((1/λ)y) = (1/λ)p(y)
140
(1): 2008/01/19(土) 03:24:17 AAS
0を自然数にするのとしないのとは
なぜ統一されてないのですか?
141: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/19(土) 08:02:14 AAS
>>140

質問の答えになってないかもしれませんが、
本シリーズでの自然数の扱いについて述べます。

本シリーズでは自然数に 0 を含めていません。
集合 { 0, 1, 2, . . . } は N ではなくて Z+ と書いてると思います。

数列 (a_n) は 0 から始まる場合もあれば 1 から始まる場合もあります。
142
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/19(土) 08:38:20 AAS
次の定義は過去スレ008の423のアフィン空間への拡張である。

定義
E を実数体 R 上のアフィン空間(>>121)とする。
x, y, p を E の2点とする。
>>126 より
集合 { p + λ(x - p) + μ(y - p) | λ ≧ 0, μ ≧ 0, λ + μ = 1 }
は p の取り方によらない。
この集合を x, y を端点とする閉線分と言い、 [x, y] と書く。

x = y のときは [x, y] = {x} である。

{ p + λ(x - p) + μ(y - p) | λ > 0, μ > 0, λ + μ = 1 } を
x, y を端点とする開線分と言い、(x, y) または ]x, y[ と書く。
x = y のときは (x, y) = φ である。
143
(3): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/19(土) 08:39:57 AAS
定義
E を実数体 R 上のアフィン空間(>>121)とする。
A を E の部分集合とする。

A の任意の2点 x, y に対して [x, y] (>>142) が A に含まれるとき
A を凸という。
144
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/19(土) 08:51:40 AAS
命題
E と F を実数体 R 上のアフィン空間(>>121)とし、
f : E → F をアフィン写像(>>132)とする。
E の任意の2点 x, y に対して [x, y] (>>142) の f による像 f([x, y])
は [f(x), f(y)] である。

証明
>>134 より明らかである。
145
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/19(土) 09:04:12 AAS
命題
E と F を実数体 R 上のアフィン空間(>>121)とする。
f : E → F をアフィン写像(>>132)とする。

A を E の凸部分集合(>>143)とすると、f(A) も凸である。

証明
>>144 より明らかである。
146: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/19(土) 09:06:17 AAS
命題
E と F を実数体 R 上のアフィン空間(>>121)とする。
f : E → F をアフィン写像(>>132)とする。

A を F の凸部分集合(>>143)とすると、f^(-1)(A) も凸である。

証明
過去スレ008の429と同様である。
147
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/19(土) 11:13:09 AAS
命題
E を実数体 R 上のアフィン空間(>>121)とする。
f : E → R を定数でないアフィン写像(>>132)とする。
H = { x ∈ E | f(x) = 0 } を f で定まる超平面(>>130)とする。
A を E の凸集合(>>143)で A ∩ H = φ とする。

このとき f(A) は H で定まる半空間 { x ∈ E | f(x) > 0 } または
{ x ∈ E | f(x) < 0 } に含まれる。

証明
>>145 より f(A) は R の凸集合だから区間である。
仮定より f(A) は 0 を含まないから f(A) の各点の符号は一定である。
証明終
148
(3): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/19(土) 13:16:24 AAS
命題
K を可換とは限らない体とする。
| | を K の自明でない絶対値(過去スレ006の414)とする。
E を K 上の位相線形空間とする。
H を E の超平面(>>130)で方程式 f(x) = α で定義されるものとする。
ここで f : E → K は恒等的に 0 でない線形形式である。

H が閉なら f は連続である。

証明
p を H の任意の点とする。
超平面 H - p は 方程式 f(x) = 0 で定義される。
H - p は閉であるから初めから α = 0 と仮定してよい。
このとき H は E の閉な線形部分空間である。

f = gφ とかける。
ここで φ : E → E/H は標準写像であり、g : E/H → K は
線形写像である。

H は閉だから E/H は分離的である。
よって過去スレ006の648より g は連続である。
よって f も連続である。
証明終
149
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/19(土) 13:21:37 AAS
命題
E を実数体 R 上の位相線形空間とする。
A を E の空でない開凸集合とする。
M を E の部分線形空間で A と交わらないとする。

このとき連続な線形形式 f : E → R で M において f(x) = 0 となり
A において f(x) > 0 となるものがある。

証明
>>137 より M ⊂ H となる閉超平面(>>130)で A と交わらないものが
存在する。
H を定義する線形形式を f とする。
H は閉だから >>148 より f は連続である。

>>147 より A において常に f(x) > 0 または常に f(x) < 0 である。
f(x) < 0 のときは -f を f の代わりにとればよい。
証明終
150
(3): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/19(土) 13:49:08 AAS
定義
E を実数体 R 上の位相線形空間とする。
H を E の閉超平面(>>130)とする。
>>148 より連続な線形形式 f : E → R が存在し、
H は方程式 f(x) = α で定義される。

{ x ∈ E | f(x) ≧ α } 及び { x ∈ E | f(x) ≦ α } を
H で定義される閉半空間と言う。

{ x ∈ E | f(x) > α } 及び { x ∈ E | f(x) < α } を
H で定義される開半空間と言う。
151
(4): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/19(土) 14:02:22 AAS
定義
E を実数体 R 上の位相線形空間とする。
H を E の閉超平面(>>130)とする。

A, B をそれぞれ E の空でない部分集合とする。
A が H で定義される閉半空間(>>150)の一つに含まれ、
B が H で定義される他方の閉半空間に含まれとき、
A と B は H により分離されると言う。

A が H で定義される開半空間(>>150)の一つに含まれ、
B が H で定義される他方の開半空間に含まれとき、
A と B は H により強分離されると言う。
152
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/19(土) 17:37:21 AAS
命題
E を実数体 R 上のアフィン空間(>>121)とする。
f : E → R を定数でないアフィン写像(>>132)とする。
H = { x ∈ E | f(x) = 0 } を f で定まる超平面(>>130)とする。
A を E の部分集合とする。

A が H で定まる半空間 { x ∈ E | f(x) ≧ 0 } または
{ x ∈ E | f(x) ≦ 0 } に含まれるとき A は H で定まる半空間
に含まれるという。

A が H で定まる半空間 { x ∈ E | f(x) > 0 } または
{ x ∈ E | f(x) < 0 } に含まれるとき A は H で定まる半空間
に真に含まれるという。
153: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/19(土) 17:39:59 AAS
>>152 は命題でなく定義である。
後の参照のために書き直す。
154
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/19(土) 17:40:36 AAS
定義
E を実数体 R 上のアフィン空間(>>121)とする。
f : E → R を定数でないアフィン写像(>>132)とする。
H = { x ∈ E | f(x) = 0 } を f で定まる超平面(>>130)とする。
A を E の部分集合とする。

A が H で定まる半空間 { x ∈ E | f(x) ≧ 0 } または
{ x ∈ E | f(x) ≦ 0 } に含まれるとき A は H で定まる半空間
に含まれるという。

A が H で定まる半空間 { x ∈ E | f(x) > 0 } または
{ x ∈ E | f(x) < 0 } に含まれるとき A は H で定まる半空間
に真に含まれるという。
155
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/19(土) 18:04:34 AAS
命題
K を可換とは限らない位相体とする。
E を K 上の位相線形空間とする。
H を E の超平面(>>130)でとする。
H が E において稠密でなければ H は閉である。

証明
H は 0 を含むとしてよい。
H の閉包 H~ は E の線形部分空間である。
H ⊂ H~ ⊂ E であり E/H の次元は1だから H = H~ または
E = H~ である。
H は稠密でないから H = H~ である。
証明終
156
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/19(土) 18:12:59 AAS
命題
E を実数体 R 上の位相線形空間とする。
A を E の部分集合でその内部 int(A) は空でないとする。
A は超平面 H で定まる半空間に含まれる(>>154)とする。

このとき H は閉であり int(A) は H で定まる半空間に真に含まれる
(>>154)。

証明
H は 0 を含むとしてよい。
H は方程式 f(x) = 0 で定まるとする。
ここで f は恒等的に 0 でない線形形式である。

A の各点 x で f(x) ≧ 0 と仮定する。
B = { x ∈ E | f(x) > -1 } とおくと A ⊂ B であるから
int(B) は空でない。
従って B + 1 = { x ∈ E | f(x) > 0 } の内部は空でない。
よって H は E において稠密でない。
>>155 より H は閉である。

f = gφ とかける。
ここで φ : E → E/H は標準写像であり、g : E/H → K は
線形写像である。

H は閉だから E/H は分離的である。
よって過去スレ006の648より g は位相同型である。
φ は開写像だから f も開写像である。
よって f(int(A)) は R の開集合である。
A の各点 x で f(x) ≧ 0 であるから f(int(A)) ⊂ (0, +∞) である。
よって int(A) は H で定まる半空間に真に含まれる。
証明終
157
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/20(日) 13:37:05 AAS
命題
(E_i), i ∈ I を実数体 R 上の線形空間の族とする。
各 i ∈ I に対して A_i を E_i の空でない凸集合とする。

A = ΠA_i は E = ΠE_i の凸集合である。

証明
pr_i : E → E_i を射影とする。
A = ∩(pr_i)^(-1)(A_i) であり、
過去スレ008の429より各 (pr_i)^(-1)(A_i) は凸であるから
A も凸である。
証明終
158
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/20(日) 13:45:07 AAS
命題
E を実数体 R 上の線形空間とする。
A と B をそれぞれ E の空でない凸集合とする。
任意の実数 α, β に対して
αA + βB = { αx + βy | x ∈ A, y ∈ B } は凸である。

証明
>>157 より A × B は E × E の凸集合である。
αA + βB は線形写像 (x, y) → αx + βy による
A × B の像であるから過去スレ008の428より凸である。
証明終
159
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/20(日) 13:54:48 AAS
命題
E を実数体 R 上の位相線形空間とする。
A を E の空でない開凸集合とする。
B を E の空でない凸集合で A ∩ B = φ とする。

このとき A と B を分離する閉超平面(>>151) H が存在する。

証明
C = A - B は空でない開集合である。
>>158 より C は凸である。
A ∩ B = φ だから C は 0 を含まない。
よって >>149 より E 上の連続な線形形式 f ≠ 0 で
C において f(x) > 0 となるものがある。
よって x ∈ A, y ∈ B のとき f(x) > f(y) となる。

α = inf { f(x) | x ∈ A} とおく。
各 x ∈ A において f(x) ≧ α
各 y ∈ B において f(x) ≦ α
よって超平面 H = { x ∈ E | f(x) = α } は A と B を分離する。
証明終
160: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/20(日) 13:56:05 AAS
>>159
>よって超平面 H = { x ∈ E | f(x) = α } は A と B を分離する。

f は連続だから H は閉である。
161
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/20(日) 14:00:54 AAS
命題
E を実数体 R 上の位相線形空間とする。
A を E の空でない開凸集合とする。
B を E の空でない開凸集合で A ∩ B = φ とする。

このとき A と B を強分離する閉超平面(>>151) H が存在する。

証明
>>159 より A と B を分離する閉超平面 H が存在する。
>>156 より H は A と B を強分離する。
証明終
162
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/20(日) 14:47:01 AAS
命題
X を一様空間(過去スレ006の194)とする。
A を X の準コンパクト集合(過去スレ006の104)、
B を X の閉集合とし、 A ∩ B = φ とする。

このとき X の近縁(過去スレ006の194) V で V(A) ∩ V(B) = φ となる
ものが存在する。
ここで、記号 V(A) については過去スレ006の192を参照。

証明
X の任意の近縁 V に対して V(A) ∩ V(B) ≠ φ とする。
V が X の対称近縁(過去スレ006の202)のとき、
A ∩ V^2(B) ≠ φ となる。
よって V が X の対称近縁全体を動くとき A ∩ V^2(B) 全体は
A のフィルター基底(過去スレ006の77)となる。
過去スレ006の309よりこのフィルター基底は接触点 p ∈ A を持つ。
任意の対称近縁 V に対して V(p) ∩ V^2(B) ≠ φ であるから
B ∩ V^3(p) ≠ φ である。
B は閉だから p ∈ B となって矛盾である。
証明終
163
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/20(日) 14:57:08 AAS
命題
E を実数体 R 上の局所凸位相線形空間とする。
A を E の空でない閉凸集合とする。
K を E の空でない準コンパクトな凸集合で A ∩ K = φ とする。

このとき A と K を強分離する閉超平面(>>151) H が存在する。

証明
>>162 より 0 の開凸近傍 V で (A + V) ∩ (K + V) = φ となる
ものが存在する。
A + V と K + V は開集合であり、>>158 より凸である。
よって >>161 より A + V と K + V を強分離する閉超平面 H が存在する。
H は A と K を強分離する。
証明終
164
(3): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/20(日) 16:14:41 AAS
命題
E を実数体 R 上の局所凸位相線形空間とする。
E の任意の空でない閉凸集合 A はそれを含む閉半空間(>>150)全体の
共通集合である。

証明
x ∈ E - A とする。x は準コンパクトだから >>163 より
A と x を強分離する閉超平面 H が存在する。
証明終
165
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/20(日) 16:37:05 AAS
命題
E を実数体 R 上の局所凸位相線形空間とする。
E の任意の空でない閉アフィン部分空間(>>124) M はそれを含む
閉超平面全体の共通集合である。

証明
x ∈ E - M とする。
M は閉だから x を含む凸な開集合 V で V ∩ M = φ となるものが
存在する。
>>137 より M ⊂ H となる閉超平面 H で V と交わらないものが
存在する。このとき H は x を含まない。
証明終
166
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/20(日) 19:39:51 AAS
命題
E を複素数体 C 上の線形空間とする。
H_0 を E の 0 を通る実超平面とする。
即ち H_0 は E を実線形空間とみたとき E の実線形部分空間であり、
E/H_0 の実線形空間としての次元が1となるものである。

H_0 の定義方程式を g(x) = 0 とする。
ここで g は E 上の実線形形式である。
>>102 より Re(f) = g となる複素線形形式 f が一意に存在する。

H = H_0 ∩ iH_0 は E の 0 を通る複素超平面であり、
その定義方程式は f(x) = 0 である。

証明
>>102 より、f(x) = g(x) - ig(ix) とおくと f は複素線形形式であり、
Re(f) = g である。

f(x) = 0 ⇔ g(x) = 0 かつ g(ix) = 0
である。

g(ix) = 0 は ix ∈ H_0 と同値であり、
これは x ∈ iH_0 と同値である。
よって H = H_0 ∩ iH_0 の定義方程式は f(x) = 0 である。
証明終
167: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/20(日) 20:33:57 AAS
次の定理は >>137 の複素位相線形空間への拡張である。
後の参照のために実位相線形空間の場合も含める。
168
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/20(日) 20:49:35 AAS
定理(Hahn-Banachの定理の幾何版)
K を実数体または複素数体とする。
E を K 上の位相線形空間とする。
A を E の空でない開凸集合とする。
M を E の空でないアフィン部分空間(>>124)で A と交わらないとする。

このとき M ⊂ H となる閉超平面(>>130)で A と交わらないものが
存在する。

証明
K が実数体の場合は >>137 で証明されている。
よって K は複素数体と仮定する。

0 ∈ M と仮定してよい。

>>137 より M ⊂ H_0 かつ A ∩ H_0 = φ となる実超平面で閉なものが
存在する。

>>166 より H = H_0 ∩ iH_0 は E の 0 を通る複素超平面である。
H_0 が閉だから iH_0 も閉である。
従って H も閉である。

M = iM だから M ⊂ H である。
A ∩ H_0 = φ だから A ∩ H = φ である。
証明終
169: 2008/01/25(金) 21:01:54 AAS
やるね
170: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/26(土) 06:42:33 AAS
命題
K を実数体または複素数体とする。
E を K 上の局所凸位相線形空間とする。
E の任意の空でない閉アフィン部分空間(>>124) M はそれを含む
閉超平面全体の共通集合である。

証明
K が実数体の場合は >>165 で証明されている。
よって K は複素数体と仮定してよい。

x ∈ E - M とする。
M は閉だから x を含む凸な開集合 V で V ∩ M = φ となるものが
存在する。
>>168 より M ⊂ H となる閉超平面 H で V と交わらないものが
存在する。このとき H は x を含まない。
証明終
171: 2008/01/26(土) 09:55:45 AAS
p-adic Kollar
172: Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/26(土) 11:08:14 AAS
解析学では Baire のカテゴリー定理が重要な役目をする。
これから Banach 空間に関する基本的な定理である開写像定理、
閉グラフ定理、Banach-Steinhaus の定理などが得られる。
173
(1): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/26(土) 11:19:17 AAS
定義
位相空間 X の部分集合 A はその閉包 A~ が内点を持たないとき
疎(nowhere dense)であると言う。
174
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/26(土) 11:23:57 AAS
定義
位相空間の部分集合は高々可算個の疎集合(>>173)の合併となるとき
第1類(the first category)の集合またはやせた(meager)集合と言う。
175
(2): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/26(土) 11:27:37 AAS
定義
位相空間の部分集合は第1類(the first category)の集合(>>174)で
ないとき第2類(the second category)の集合と言う。
176
(4): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/26(土) 11:32:31 AAS
定義
位相空間 X において第1類(>>174)の集合 A の補集合 X - A が常に
X で稠密であるとき X を Baire 空間と言う。
177
(4): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/26(土) 13:32:39 AAS
命題
位相空間 X に関する以下の条件は同値である。

(1) X は Baire 空間(>>176)である。
(2) X の空でない開集合は第2類(>>175)の集合である。
(3) X において内点をもたない閉集合の可算個の合併は内点をもたない。
(4) X において稠密な開集合の可算個の共通部分は稠密である。

証明
(1) ⇒ (2)
U を X の空でない開集合とする。
X - U は U と交わらないから X において稠密ではない。
よって仮定から U は第1類ではない、即ち第2類である。

(2) ⇒ (1)
A を X の第1類の集合とする。
X - A が X において稠密ではないとする。
A は X の空でない開集合 U を含む。
U は第1類の集合の部分集合としてやはり第1類であるから仮定に反する。

(2) ⇒ (3)
内点をもたない閉集合の可算個の合併 A が空でない開集合 U を
含むとする。A は第1類だから U も第1類である。これは仮定に反する。

(3) ⇒ (2)
X の空でない開集合 U で第1類のものがあるとする。
U は内点をもたない閉集合の可算個の合併に含まれる。
これは仮定に反する。

(3) ⇔ (4)
これは明らかである。
証明終
178
(5): Kummer ◆g2BU0D6YN2 2008/01/26(土) 16:19:34 AAS
定理(Baire)
完備な距離空間 X はその位相に関して Baire 空間(>>176)である。

証明
X において >>177 の (4) が成り立つことを示せばよい。
即ち、X の稠密な開集合の列 (U_n), n ≧ 1 に対して
その共通部分 U = ∩U_n も稠密なことを示せば良い。

G を X の任意の空でない開集合とする。G ∩ U ≠ φ を示す。
空ない開集合の列 (G_n), n ≧ 1 を帰納法により、
G_1 = G
(G_(n+1))~ ⊂ G_n ∩ U_n
δ((G_(n+1))~) ≦ (1/2)δ((G_n)~) となるように定義する。
ここで、(G_n)~ は G_n の閉包であり、
δ((G_n)~) は (G_n)~ の直径である。
即ち、δ((G_n)~) = sup { d(x, y) | (x, y) ∈ (G_n)~×(G_n)~ }

X は一様空間であるから過去スレ006の212より正則である。
G_n が空でない開集合なら G_n ∩ U_n ≠ φ であるから
G_(n+1)~ ⊂ G_n ∩ U_n となるような空でない開集合 G_(n+1) が
存在する。このとき δ((G_(n+1))~) ≦ (1/2)δ((G_n)~) と出来る。
よって、上記のような列 (G_n) が存在する。

∩G_n ⊂ G ∩ U であり、∩G_n = ∩(G_n)~ であるから
∩(G_n)~ ≠ φ を示せばよい。

lim δ((G_n)~) = 0 だから ((G_n)~) は Cauchy フィルターの基底である。
X は完備だからこれは収束し、その極限点は ∩(G_n)~ に属す。
証明終
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