[過去ログ] アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ11 (479レス)
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31: 2008/01/01(火) 03:51:48 ID:EQDbVhU5(5/16)調 AAS

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(1): 炎の日  ◆DNdG5hiFT6 2008/01/01(火) 03:52:29 ID:cwIIkeeu(9/24)調 AAS
続け様に起こった異常事態に呆然とするスバルを前に、仮面の下でマスタングは笑う。
相手が機械であればDG細胞の侵食は容易い。
その能力を使い、マスタングはリボルバーナックルを我が物とし、スバルとのリンクを強制切断させたのだった。
そして同時に同化したデバイス自身から魔術の一端を理解した。
ロイ・マスタングの持つ魔力とは異なる力「錬金術」、
デバイスが内包していた「魔法」、
そして宇宙空間まで進出した機械工学が生み出した「DG細胞」、
本来ならば出会うはずのなかった三つの要素。
それらが合わさることで、マスタングは不可能を可能にした。
マスタングは奪い取ったリボルバーナックルを左手に装着――否、融合させる!

「バリアジャケット……練成ッ!」

カートリッジ排莢と共に彼の想像する強固な鎧、漆黒の大鎧がその全身を包む。
その姿は色の違いを除けばかつての仲間であるアルフォンス・エルリックそのものだった。
驚愕するスバルを前にして、更にもう一発カートリッジを排莢。
デバイスから“読み取った”情報を元に指先まで魔力バイパスを形成。
発生された魔力を収束。人差し指を標的に向ける。
そして未だ呆気にとられた表情をしている少女に向かって、

「イチゲき・ヒッ殺――デモニック・バスター……!」

指先に魔力を収束して、放つ。それはあまりにも単純な技。
だがそれは皮肉にもスバルのものよりも、本来の術者・高町なのはのディバインバスターに酷似していた。

「うあああああああああああっ!!」

カウンター気味に放たれた闇色の魔力光。
スバルは咄嗟に防御障壁を展開するが、放出される魔力の奔流は結界ごと地上へと吹き飛ばした。
自分から離れていく青い髪の少女の姿を見て思う。

――悪くない威力だ。

本来魔力を持たないマスタングが使うにはカートリッジが必要だが、自身の巻き添えを考えずに放てる武器としては悪くない。
“魔法”という新たな力を手に入れたマスタングは、新たな力を手に入れた喜びに酔いしれ、自分の置かれている状況を忘れた。
それは僅かな一瞬――だがその一瞬は、あまりにも大きすぎた。

「てめぇええええええ!」

迫りくる様はまるで彗星――だがそれはスバルの比ではない。
文字通り一筋の流れ星と化した戴宗の拳が腹に叩き込まれる。
腹部に走る鈍い痛みと共に身体が遥か後方に吹き飛ばされるのを感じる。
だがこの程度の打撃、このバリアジャケットさえあれば――

「――おい、これで終わりだと思ってんじゃねえだろうなぁ?」
「!?」

眼前に現れる男の顔。
自分は今、吹き飛ばされているというのに何故!?
その疑問は視線を下にずらすことで氷解した。
この男は足の裏から衝撃波を噴出し、吹き飛ばされる自分に追いついてきたのだ!
33
(1): 2008/01/01(火) 03:53:27 ID:WRgERais(3/10)調 AAS
 
34: 2008/01/01(火) 03:54:09 ID:EQDbVhU5(6/16)調 AAS

35
(1): 2008/01/01(火) 03:56:20 ID:WRgERais(4/10)調 AAS
 
36: 炎の日  ◆DNdG5hiFT6 2008/01/01(火) 03:57:27 ID:cwIIkeeu(10/24)調 AAS
「はぁああああああああっ!」

ハンマーのような一撃が顔面に突き刺さり、マスタングの身体の吹き飛ぶ方向が無理やり変えられる。

「まだまだぁ!」

だが戴宗は地面に叩き付けられるより早く先へ回り込み、
更に強烈な一撃をもって、再び上空へと跳ね上げる。

「おらおらおらおらおらおらおらッ!」

悲鳴を上げる暇すら与えられない。
空中をピンボールのように弾き飛ばされながら、胴体に、足に、右腕に、全身に、怒りの篭った戴宗の拳が炸裂する。
カートリッジに圧縮された魔力は決して少ないものではない。
だが怒髪天を突く戴宗の猛攻の前には、一発分の魔力など障子紙にすぎなかった。
そして猛撃を受け続けたバリアジャケットは、ついに修復のための魔力を使い果たし、四散した。

「これで――終いだっ!」

剥き出しになった本体に、トドメとばかりに放たれた右正拳が炸裂する。
最初に練成した黒い鎧も粉々に砕かれ、その勢いのまま水平方向へと吹き飛ばされ、ビル壁に叩き付けられる。

「ガはぁ……っ!!」

肺の空気を無理矢理搾り出させられ、マスタングは理解する。
この戦場には自分たち国家錬金術師よりもよっぽど“人間兵器”という存在に近しいものがいるのだということを。

「……ようやくその面が拝めたな化け物」

ここに勝敗は決した。
その差を分けたのは突如力を手にいれたものと、修練の末に力を手にいれたものの差かもしれなかった。

「ぐっ……」

地面に降り立った戴宗を立ち眩みと疲労が襲う。
螺旋王の設けた“制限”は戴宗の身体能力・能力すべてを低下させた。
その状態で元の世界のような動きをすればどうなるか。
――即ち、オーバーヒートである。
全身に一気に広がる倦怠感と焼け付くような熱――戴宗の身体は限界を訴えていた。
だが、まだ倒れるわけにはいかない。
これからスバルを助けに行かなければいけないし、何より“始末”をつけなければならない。
絶対たる決意を込めて、壁に磔にされた男を睨み付ける。

「……やらせて、もらうぞ」
37: 2008/01/01(火) 03:57:52 ID:EQDbVhU5(7/16)調 AAS

38: 炎の日  ◆DNdG5hiFT6 2008/01/01(火) 03:58:19 ID:cwIIkeeu(11/24)調 AAS
先ほどスバルの右腕の鎧を“我が物”とした鎧の男。
この男はここでとどめを刺しておかねば、取り返しのつかないことになる。
そんな確信にも似た予感が戴宗の中で膨れ上がっていた。
だからヴァッシュには悪いが、ここでこの男の命を絶つ。その意思と力を右手にこめる。

だがそこで気づく。磔にされた男の口元が、確かに笑みを形作ってることに。

「……お前、何がおかしい」

男は答えない。そしてその視線は自分を決してみていない。
その視線を追った戴宗が目にしたのは未だ燻り続けるデパートの姿。
指を鳴らして炎を発生させる。
『指を鳴らし真空波を発生させる』という類似した能力者がBF団にいる戴宗は、男の異能をそう認識した。
だが男の異能、錬金術は炎自体を操るものではない。
酸素を練成し、着火するというプロセスを経て炎を操るのだ。
そしてこの戦場には最初から、巨大な火種が存在していたのだ。

「スベて――吹キ飛ぶガイイ」

そして、閃光と爆風が全てを埋め尽くした。

***
39: 2008/01/01(火) 03:58:45 ID:WRgERais(5/10)調 AAS
 
40: 炎の日  ◆DNdG5hiFT6 2008/01/01(火) 03:59:48 ID:cwIIkeeu(12/24)調 AAS
――ギャリギャリギャリッ!

刃同士がぶつかり合い、耳障りな金属音を上げる。
一方のデパート近辺、道路上で戦う藤乃静留は完全に押されていた。
それも当然だろう。
最初から2対1である上、相対するは年季の入った社会の敵に人類初の災害指定されたガンマンだ。
静留も一般的女子高生より戦闘経験があるとはいえ、あまりにも潜ってきた修羅場の数が違い過ぎる。
むしろここまでで倒されてない時点で、彼女は善戦していると言っていい。

「もう諦めて投降するんだ! 悪いようにはしない!」

スタンガンを構えつつ警告するヴァッシュ。
確かにここで投降して後々寝首を掻くという選択肢もある。
だが、それではダメなのだ。
捕らえられれば、自分の荷物は没収されてしまうだろう。
折角手に入れた不死の酒すらも、だ。

――なつきと永遠を生きる。

そのあまりに甘美な誘惑は、静留を駆り立てるに十分な動機だった。
この殺し合いに勝ち残り、なつきを生き返らせた上で共に不死の酒を飲む。
そのためにはここで負けるわけにはいかない。
だがこれ以上の持久戦になれば不利なのはこちらのほうだ。
ここは――賭けに出るしかない。

「……やらせていただきます、よしなに」

自分の持つ薙刀型エレメントに備わる切り札。
刃が蛇腹のように展開、鞭のように変幻自在にしなり、静留の周りを檻のように取り囲む。
触らば切る、寄らば砕く――閉じ込める檻ではなく外界の敵を遮断する茨の檻。

「……」

それを目にしたヴァッシュは無言のまま、スタンガンを放つ。
ヴァッシュから放たれた十字型の物体は一直線に藤乃を目指す。
だが高速で流れる刃はスタンガンの弾を止めるだけに飽き足らず、削り取るように粉砕した。
41
(1): 2008/01/01(火) 03:59:52 ID:EQDbVhU5(8/16)調 AAS

42: 2008/01/01(火) 04:01:17 ID:WRgERais(6/10)調 AAS
 
43: 炎の日  ◆DNdG5hiFT6 2008/01/01(火) 04:01:22 ID:cwIIkeeu(13/24)調 AAS
「ヴァッシュはん、無駄どすえ。
 普通の銃ならともかく、そんなものではこの“結界”は破れまへん」
「……ならお前さんごと吹き飛ばすまでさね」

ドーラの手には先ほどディパックの中にしまったポテトマッシャ―。
狙い通りだ。表情は変えずに内心ほくそえむ。
千日手になれば、あの老婆は一気に決着をつけるために爆弾を取り出す。
その爆発にまぎれて姿を消せれば、とりあえずこの場を凌ぐ事ができる。
だがその行動に異を唱える男がこの戦場にはいた。

「ドーラさん!」
「覚悟を決めな、ヴァッシュ! “紐はいらない”から、5秒で支度しな!」
「!! ……わかりました。お任せします」

その答えに静留は失望した。
静留は愚直な馬鹿は決して嫌いではない。
だからヴァッシュにも多少期待したのだが、所詮は口先だけの男だったと言うことか。

――まあええ、何にしても、今は爆発にまぎれて姿を晦ますのみや。

「行くよっ!」

空中に放たれる棒状の爆弾。
爆発の有効範囲の中に入る前に檻を解除し、後方へ――

「――え」

だが手榴弾は鈍い音を立てて、地面に転がるだけだった。
まさかの不発? 
だが視線を向けたの老婆の顔には勝ち誇った笑みが浮かんできる。

「知らなかったのかい? 爆弾てのはね、紐を抜かなきゃ爆発しないんだよ」

その言葉が意味するのはブラフだということ。
それは人生経験の差か、藤乃静留はまんまと出し抜かれたのだ。
冷静にそのことを認め、体制を立て直そうとする静留。
それは最善の行動で、一瞬で冷静さを取り戻したのは賞賛に値することだろう。
だが、その隙を見逃すヴァッシュではなかった。
44: 2008/01/01(火) 04:01:24 ID:EQDbVhU5(9/16)調 AAS

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(1): 炎の日  ◆DNdG5hiFT6 2008/01/01(火) 04:02:11 ID:cwIIkeeu(14/24)調 AAS
「ぐあっ!!」

正確に放たれたスタンガンは静留の細い足を直撃した。
非殺傷兵器とはいえその威力は馬鹿に出来たものではない
×字に身体を捉えられることこそ避けたものの、完全に足をやられてしまった。
――よくて打ち身、下手すれば骨折しているかもしれない。
そしてそれが示すのはもう逃げ切ることは出来ないという、たった一つの事実であった。

「すまない。でも手当てをすれば歩けるぐらいにはなるはずだ」
「やれやれ手間をかけさせる小娘だよ、ほんとに。
 じゃあ捕縛するかね。ドーラ様の縄を抜けるとお思いでないよ」
「彼女を捕らえたら急いで戴宗さんのところに向かいましょう。
 あの鎧の化け物はもしかしたら、あの時の……」

次第に自分に迫る二人組。
だめだ。ここで捕まるわけには……!
ディパックを、ディパックの中からあれを取り出さないと。
二人そろって飲みたかったが、奪われては元も子もない。
だが静留の指がディパックに触れた瞬間、突如としてそれは訪れた。
予想外の方向からの閃光と爆音の波。
光の波に飲み込まれ、3人の意識は光の中へ消えていく。

そしてそれが、三人に共通した最後の記憶となった。
46: 2008/01/01(火) 04:03:44 ID:EQDbVhU5(10/16)調 AAS

47: 焔のさだめ  ◆DNdG5hiFT6 2008/01/01(火) 04:04:08 ID:cwIIkeeu(15/24)調 AAS
E-6ブロック、爆心地周辺はひどい有様だった。
デパートは完全に倒潰し、周囲のビルを巻き込み大惨事となっている。
また多少距離があった場所でも弾丸のように大小さまざまな瓦礫が撒き散らされ、宛ら爆撃を受けた都市のような有様を見せている。

そんな荒廃の大地の中で立ち上がる影が一つ。
まだ年若い少女――藤乃静留だ。
制服は大きく破れ、藤色の下着が顔を覗かせている。
だが、そこから覗く肌は傷一つなく処女雪のように白い。
静留はエレメントを現出したまま、瓦礫の中を幽鬼のように彷徨う。
が、しばらくするとその進路を一定の方向に定める。
その先には半壊した壁に背を預けているドーラの姿。
右手は瓦礫に挟まれ、完全に潰れている。

「――形勢逆転どすな」

エレメントを老婆の首筋につきつけ勝利を宣言する。
だが静留に命を握られてもなおドーラはその挑戦的な目を保ちつづけた。

「……傷の治りが不自然に早いね。どんな手品を使ったんだい」
「先ほど不死の酒ちゅうもんを拾いましてな、半分ほどいただきました。
 ここまで威力があるとは思わんかったどすけど」

さて、目の前の老婆は怪我の具合から見て、放っておいても死ぬだろうが念には念を入れねばなるまい。
これから先、最大で50人以上を殺していかなくてはならないのだ。

「さて、今から殺しますけど何か言い残すことはありますかえ?」
「……冥土の土産に聞かせてくれないかね、何でアンタがこの殺し合いに乗ったのか」

何だ、そんなことか。
その程度なら話してもかまわないだろう。

「なつきの――愛する人のためどす。
 あの娘はこないな場所につれてこられて殺されてええ娘やない。
 せやから生き返らせるんどす、最後まで勝ち残って」
「……小娘、一つ忠告しておいてやるから良くお聞き」

その瞳を見た静留は言いようのない恐怖を覚える。
刃を突きつけているのはこちらなのに、まるで死神の鎌を首筋に突きつけられているかのように

「人を殺して生き返らせる?
 ハン、そんなもの愛でも何でもない……ただのエゴさね。
 さて、エゴで生き返らされた奴が本当に感謝すると思うかね?
 まぁ、普通だったら後悔するさね。80人以上の命を生贄に自分が生き返ったと知ったら。
 アンタの好きな“なつき”ってのは、それでも自分が生きているのを喜ぶ外道なのかい?」
「――黙りやす」
48: 2008/01/01(火) 04:05:29 ID:WRgERais(7/10)調 AAS
 
49: 2008/01/01(火) 04:05:38 ID:EQDbVhU5(11/16)調 AAS

50: 焔のさだめ  ◆DNdG5hiFT6 2008/01/01(火) 04:05:39 ID:cwIIkeeu(16/24)調 AAS
エレメントを肩に突き刺し、何度もグイッと捻る。
神経を直接えぐられ、気絶しそうな痛みが全身を駆け巡っているはずだ。
しかし、だというのにドーラは笑っていた。

「……恐ろしい……かい? 拒絶さ……れる……のが?
 それで……“愛してる”だって? 
 カハッ……小娘が……笑わせるよ……」
「黙るよう言うたはずですえ……!」

刃を一層深く突き入れると、ドーラの口から血の塊が吐き出される。
しかし、ドーラの皮肉げな笑みは一層強くなり、吐き出される言葉も止まらない。

「図星を突かれたからって……怒るのは自覚の……ある証拠……さね。
 お前さんが……やってることは……結局……その“なつき”って奴の……生き様を穢してるんだよ」
「黙れぇぇぇぇーッ!!」

これ以上口から言葉が放たれるのが我慢できず、エレメントを一閃させる。
その刃に刎ねられた首は壮絶な笑みを浮かべたまま。
空を荒らしまわった空賊ドーラ。女傑は誰も知らぬ異国の地でも最後まで女傑であった。

【ドーラ@天空の城ラピュタ 死亡】
51: 2008/01/01(火) 04:06:32 ID:WRgERais(8/10)調 AAS
 
52: 焔のさだめ  ◆DNdG5hiFT6 2008/01/01(火) 04:06:34 ID:cwIIkeeu(17/24)調 AAS
『お前さんが……やってることは……結局……その“なつき”って奴の……生き様を穢してるんだよ』

殺したはずなのに、その声は静留の脳裏に未だ反響し続け澱の様に静留の心に積もっていく。

――80人を犠牲として自分が生き残る。
藤乃静留の知る玖我なつきならば、全力を持って否定するだろう。

もしも、もしもだ。生き返らせた後、なつきに拒絶されたら?
いや、あの時のように拒絶されるだけならばいい。
もしも――憎しみを持って相対されたら?
かつての自分なら、『なつきさえ生きていればそれでもいい』と思えたかもしれない。
だが、一度あの腕に抱かれた今の自分が耐えられるのだろうか?
一度でも、僅かでも、心を通わせた自分が――

言葉は呪いだ。
ドーラの言葉は記憶から消すことも出来ず、常に静留の想像の片隅に影を落とすだろう。
最後の瞬間、彼女は確かに一矢報いたのだ。

「だとしても、うちは……」

空ろな目のままでドーラのディパックから荷物を奪い、瓦礫の中を歩を進める静留。
その視界の中に赤いコートの男を発見する。
気を失っているのか、死んでいるのかピクリとも動かない。

「……どちらにしろ、もう戻られまへん。
 だったら……行くところまで行くだけどすえ」

自分に言い聞かせるようにして静留は真紅の刃を頭上高く振り上げる。
だがその時、静留は恐ろしいほどの殺気を肌で感じ取る。
視線をそちらに移すと蒼い服を着た細身の男が瓦礫の上に座り込み、こちらを見下ろしていた。

「悪いがその男に用があってな……こっちに渡してもらおうか」

この男の知り合いだろうか。
だが不死者となった今の自分ならば、勝てない相手では――

「それとも……お前が俺の渇きを満たしてくれるのか?」

蒼き槍兵は静留に真紅の双眼を向ける。
戦いを求める狂戦士の笑みを浮かべながら。
その視線を受け静留は悟る。自らの危機はまだ去っていないことを。
53: 2008/01/01(火) 04:07:28 ID:EQDbVhU5(12/16)調 AAS

54: 焔のさだめ  ◆DNdG5hiFT6 2008/01/01(火) 04:08:40 ID:cwIIkeeu(18/24)調 AA×

55: 2008/01/01(火) 04:09:56 ID:EQDbVhU5(13/16)調 AAS

56: 焔のさだめ  ◆DNdG5hiFT6 2008/01/01(火) 04:10:06 ID:cwIIkeeu(19/24)調 AAS
   *    *    *

ここは、どこだろう――
鎧の男の一撃に咄嗟にプロテクションを展開して、吹き飛ばされて、それから……

そこまで考えた所、で自分を包み込むような暖かい温もりに気付く。
鼻を突く炎の匂いとあわさって、目標を追い求め始めたあの日を思い出す。

「なの……は……さん?」
「……大丈夫か、嬢ちゃん」

呼びかけに返ってくるのは、彼女と似ても似つかない野太い声。
だが、その声に込められた優しさは似通っている。

「戴宗……さん? 一体……何が……」

自分を抱きしめている戴宗。
未だ事態を把握しきれていないスバルは手を動かし、戴宗の背中に手を回す。

――べちゃり

「――え」

ごつごつした石のような感触とともに両手にべったりした液体が付着する。
手元に戻した手のひらについていたのは温かい深紅の液体。
そして――嗅ぎ慣れた鉄の臭いだった。

「あ……あああ……!」

周囲を見渡したスバルが目にしたのは、自分たちを取り巻く炎の残滓と瓦礫の山。
爆発から自分を庇い、いくつもの瓦礫をその身に受けたのだと、理解した。
気絶していたスバルには、何がどうなってこうなったのかは分からない。
だが自分のあの行動がなければ、目の前の男が瓦礫ぐらいは避けれた事は容易に想像がついた。

「あたしの……あたしのせいで……」
「いいや、お前さんは悪かねえ」

涙声のスバルにしっかりとした声で否定する。

「仲間の仇を……ブン殴りてえって気持ちは止めようとしても止まるもんじゃないよなぁ……
 悪いのはお前さんの気持ちを汲み取れなかった俺のほうだ……」
「そんなこと、そんなことありません!
 あたしは人を助ける立場なのに、大事なことを……!」

誰かが勝手な行動をとればチーム全体の行動に支障を起こし、取り返しのつかないことが起きる。
機動六課でそれを学んだはずなのに、自分は一体何をしていたというのか……!

「だから気にすんなって……子供に対して責任を負うのは大人って決まってんだからよ」
「あたしは時空管理局で働いています!もう、責任をとらなきゃいけない立場なんです!」
「ハッ、俺から見りゃあまだまだ子供よ。大作のヤツと対してかわらねえ年じゃねえか」
57: 焔のさだめ  ◆DNdG5hiFT6 2008/01/01(火) 04:10:49 ID:cwIIkeeu(20/24)調 AAS
戴宗は優しく微笑む。

「それになスバル……この世には助ける立場なんてありゃしねえのさ。
 誰かを助け、誰かに助けられ……それでこの世の中って奴は回ってるんだ。
 それはきっとどの世界でも変わらないはずだろ?」
「だったら余計にあたしは! 助けられてばっかで何も、何も……」
「だったら……今から返せばいい」

穏やかな声だ。とても深い傷を負っているようには聞こえない。
その声に重なるのは厳しくも優しい上官の姿。
性別すらも違うのに、その優しさはとても良く似ている。

「志を共にする仲間を集めて、螺旋王をブッ飛ばすんだスバル。
 なぁに、お前さんならきっとできるさ。
 “一緒に戦う”その気持ちさえ忘れなけりゃあ、な」

だがそこまで言い切ったところで表情が曇る。
苦痛? いや、これは純粋な悲しみの表情だ。

「それに……スバルにはこっちが謝らなくちゃいけねえ。
 エリオって坊主、知ってるか?」
「え……」

意外な人物から出た意外な名前に、少女の目が一際大きく開かれる。

「その服にその名前……やっぱり、あいつの仲間なんだな。
 すまねえ……俺が捕えてた悪党をむざむざ逃がしちまったから、あいつは死んじまった。
 仇は討ったが坊主の命は二度と戻ってこねえ。
 こればっかりは謝っても謝りきれるもんじゃねえが……
 すまねえ……すまねえなぁ……」

スバルには分かった。
戴宗は許しを乞ている訳ではない。
ただ悔いている。出会ったばかりの少年を助けられなかったことを悔いている。
だからこう伝えるしか、ない。

「知らせていただいて……ありがとう、ございました……
 エリオもきっと……そういうと思います……」

戴宗はそのスバルの答えに僅かにだが、微笑んだ。
そして満足したように静かに瞼を閉じていく。

「戴宗……さん?」
58: 2008/01/01(火) 04:11:05 ID:WRgERais(9/10)調 AAS
 
59: 焔のさだめ  ◆DNdG5hiFT6 2008/01/01(火) 04:11:46 ID:cwIIkeeu(21/24)調 AAS
   *   *   *

嗚呼、体から命が消えていく。
だが死と隣り合わせの世界に生きてきた男はこれが死か、と受け入れる。
さて、思い残すことはないだろうか。

――元の世界に残してきた大作のことが心配だ。
だがあっちにはまだ楊志や鉄牛、銀鈴、そして国際警察機構の面々がいる。
彼らなら自分がいなくとも、きっと大作を正しい方向へと導いてくれるはずだ。

――こんな殺し合いを引き起こした螺旋王に一撃入れたかった。
だがそれならランサーやスバルがやってくれるはずだ。
あいつらなら一撃入れるどころか、全力でブッとばしてくれそうだ。
その光景がありありと目に浮かんできて、こんな時だというのに爽快な気分になる。

――そういや酒を飲んでねえな
結局ここに着てから酒を一滴も呑んでいない。
それもまあ、いいか。
元々楊志にも酒を控えるよう言われてたし、たまには禁酒も悪くねえ。

後は――ああ、そういえば、結局衝撃のとは決着が付かないままだったなぁ。
眩惑のセルバンテスを討った時から始まった因縁。
他の誰にも任せられない――それが唯一の心残りだ。

(はは……やっぱ、未練、だ、ぜ)

そして男は静かに最後の意識を手放した。

【神行太保・戴宗@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-  死亡】
60: 2008/01/01(火) 04:12:10 ID:EQDbVhU5(14/16)調 AAS

61: 焔のさだめ  ◆DNdG5hiFT6 2008/01/01(火) 04:13:04 ID:cwIIkeeu(22/24)調 AAS
大きな身体から力が抜け、寄りかかる温かみが消えていく。
これが“死”、その命が消える瞬間なのだとスバルは身をもって知った。

「戴宗、さん……ごめんな、さい、ごめん……なさい、ごめんなさい……ッ!」

嗚咽が酷くなり、涙がとめどなく溢れてくる。
山のような後悔と絶望で心が埋め尽くされている。
自分があそこででしゃばらなければ、姉のデバイスを化け物に奪われることもなかった。
あそこで大人しく待っていたらならば、戴宗さんは死ななかった。
『たら』、『れば』を繰り返しても意味が無い。
そう分かっていても一度考え出した後悔は止まらない。
いっそ狂ったように大声を上げて泣き出せばどれだけ楽だろう。
でも、託されたことがある。だからここで泣いて自棄になるわけにはいかない。

「……戦うんだ、仲間を、集めて……!」

言い聞かせるようにして自分を奮い立たせる。
だがその時、スバルの背後で瓦礫の崩れる音が響く。
瓦礫を押しのけて立ち上がったのは、赤い軍服と左腕にナックル型のデバイスを身につけた男。
先ほどまでつけていた黒い鎧は砕かれ、白日の下に晒されている。
そして明らかになったその顔はスバルの知る面影を残していた。

「――そんな、なんで……」

それはかつて自分が助けた男、ロイ・マスタングその人であった。
髪は逆立ち、銀のうろこを持ち、その姿は変わり果てているが間違いない。
自分とヒューズが助けた男の顔だ。
スバルは生前のヒューズからロイ・マスタングの人となりを聞いていた。

――情に弱く、人のために動く男。
その人物像と眼の前の悪魔はどうしてもイコールで繋がらなかった。
例えそれが、同じ火を使う異能力者であっても。

「どうして……どうしてぇっ!」

スバルは涙を流しながら問う。
だが、男が返すのはただ無機質な視線だけだった。
62: 2008/01/01(火) 04:13:34 ID:WRgERais(10/10)調 AAS
 
63: 焔のさだめ  ◆DNdG5hiFT6 2008/01/01(火) 04:14:28 ID:cwIIkeeu(23/24)調 AAS
  *   *   *

少女の泣き顔を目にしても、デビルマスタングは動じない。

(どうやら目の前の生命体は死んでしまったようだ。
 そういえば死亡した場合は取り込めるのだろうか?
 まだ試していないならば試せばいい。ただ、それだけのことだ)

先ほどの戴宗との戦いで受けたダメージは、常人ならば死んでもおかしくないほどのものだった。
全身の骨は砕け、いくつかの内臓にも深刻なダメージを追ってしまった。
しかしDG細胞はその分だけ自己増殖・自己再生を繰り返し、マスタングの身体を短時間で立ち上がらせるまでに再生させた。
そしてその分だけ意識への侵食も加速させていく。

「××××さんはあなたを助けようとしてたのに、どうして……」

ああ、ノイズが五月蝿い。
目の前の男の力は惜しいが、それに匹敵する力は手に入れた。
少女を男の死体ごと焼き尽くし、消し炭に変えてしまおうか。
ああ、それはいいアイデアだ。
そうすればこのノイズも消えてくれるはずだし、どちらにしろ『人類は絶滅させねばならない』のだから。

だがその時、背後から駆け寄ってくる足音を聞く。
あの爆発の中で生き残った奴がいるのか?
だとしても今の自分に敵はない。今の自分は“魔法”という新たな力を手に入れたのだ。
最早どんな武器を持って来ようともはや自分の敵ではありえない。

「――そこまでです! その人たちから離れなさい!」

だが、その声はどんな武器よりも自分の胸を貫いた。
男の説教にも、少女の悲痛な叫びにも揺らがなかった心が悲鳴を上げる。
振り向くなという内側から響く声を無視して、体が勝手に、油の切れたブリキ人形のように振り向かせてしまう。
かつての自分にはあの時に、自らの墓を作った時にさよならを言ったはずだ。別れたはずだ。
だが彼が彼である限り『ロイ・マスタング』は影のように付いて来るのだ。
“焔の錬金術師”という二つ名と共に。

「……たい……さ……?」

――だから残された最後の過去との再会は燃え盛る炎の中で。
それもまた、焔のさだめなのだろう。
64: 2008/01/01(火) 04:15:13 ID:EQDbVhU5(15/16)調 AAS

65: 焔のさだめ  ◆DNdG5hiFT6 2008/01/01(火) 04:15:33 ID:cwIIkeeu(24/24)調 AA×

66: 2008/01/01(火) 04:17:17 ID:EQDbVhU5(16/16)調 AAS

67
(2): 2008/01/01(火) 07:38:41 ID:fmtmJx5s(1)調 AAS
>>9->>16

誘導

【2ch】アニメキャラバトルロワイアル2nd【決定】
2chスレ:anichara

どうせしたらばは言うこと聞かないんだし、専用スレあるからそっちでやろうぜ!
68
(2): じゃ、議論再開といきあすか 2008/01/01(火) 11:58:02 ID:xpFxuBxt(1)調 AAS
207 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2007/12/17(月) 23:13:41 ID:si8yiggO
死んでも生き返ってはいけないというルールはないから
死んだら別フィールドににぶっ飛ばせばいいんじゃね

>>192 の世界で死んだら、>>203の世界に転生とか

208 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2007/12/17(月) 23:29:12 ID:YXM1jlhX
糸色望はA世界のバトルロワイアルに参加決定しますた
僕達は殺し合いをすると、3回書かされました
「へたれセイバー」に食われて死亡しました
A世界で糸色望が死亡しました
糸色望は他界しました
  ・
  ・
  ・
糸色望はB世界のバトルロワイアルに参加決定しますた
僕達は殺し合いをすると、3回書かされました
突如、「ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ」に鈍器で殴られて死亡しました
糸色望は他界しました
 ・
 ・
 ・
糸色望はC世界の…

232 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2007/12/20(木) 00:20:37 ID:FAwql9YC
たとえばね
                                                   
キャラが増えれば増えるほどいいというんだったら
キャラ数の上限は無いほうがいい
                                                  
ということで、>>208のような形で死んでも復活できるようにして軍団制で戦う
あと、同じキャラを何人も作っておけばいいのではないかなと

たとえば、糸色望だったら
A軍団にもB軍団にもC軍団にも等しく糸色望がいるとか

から
>>67

専用スレなんて誰が立てろと言った?
69
(1): 2008/01/01(火) 12:01:51 ID:cl3BGnCF(2/2)調 AAS
1 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2007/12/29(土) 16:00:26 ID:WgcsK0Mj
注意事項

ここでは特にありません

したらばをつかってスレを占領しているしたらばの連中のせいで妨害されている
アニメキャラバトルロワイアルを、正当な形でやろうというスレです。
したらば側は絶対に出ていきませんが、したらばから出てくることもないチキンなので、無視で

※不快な思いをしないために
したらば側とかかわるだけ損です!お互い心地よく活動するためにも、
もしもしたらば側で不快な思いをしたりしている人はこちらに誘導してください。
向こうで進めてもどうせ削除依頼を出されて最初からになるだけです。ログを残すためにもこちらでやりましょう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

なんか、これ見ても
どーーーーーーーーーーみえもしたらばの策謀としか思えないよねwwwwwwwwwwwww
70: 2008/01/01(火) 12:38:40 ID:a04t10Vk(1)調 AA×
>>67>>68>>69

71
(1): 2008/01/01(火) 12:46:01 ID:27dcOM+Y(1)調 AAS
純2chのアニロワ!
2chスレ:anichara
72
(2): 出してきました 2008/01/01(火) 12:51:51 ID:pIsxKsFh(1)調 AAS
505 名前:aaaa 投稿日:08/01/01 02:07 HOST:86.CH338.cyberhome.ne.jp<8080><3128><8000><1080>
削除対象アドレス:
2chスレ:anichara

削除理由・詳細・その他:
4. 投稿目的による削除対象
レス・発言
5. 掲示板・スレッドの趣旨とは違う投稿
レス・発言

506 名前:"””削除””"依頼 投稿日:2008/01/01(火) 07:41:11 HOST:p5002-ipbfp202yamaguchi.yamaguchi.ocn.ne.jp
>>505
ちゃんと名前欄に削除依頼と書かなきゃ依頼したことになりませんよ……というわけでもう一度

削除対象アドレス:
2chスレ:anichara
2chスレ:anichara

削除理由・詳細・その他:
4. 投稿目的による削除対象
レス・発言
5. 掲示板・スレッドの趣旨とは違う投稿
レス・発言

507 名前:””削除””依頼 投稿日:2008/01/01(火) 12:50:41 HOST:softbank219039118136.bbtec.net
2chスレ:anichara

4. 投稿目的による削除対象
レス・発言
5. 掲示板・スレッドの趣旨とは違う投稿
レス・発言
6. 連続投稿・重複

→アニサロ板に誘導済

p5002-ipbfp202yamaguchi.yamaguchi.ocn.ne.jp
86.CH338.cyberhome.ne.jp
はただの個人掲示板の企画を勝手に当方の掲示板に流しているだけです

4名程度がしたらば掲示板方面から派遣されているようですが
現在正式なあのスレ単独でのバトルロワイアル企画が進行中であり
彼等はそれを妨害するだけのものです。

スレ住人として正式に削除依頼を出させていただきます
73: 2008/01/01(火) 12:53:39 ID:tIAAWfD7(1)調 AAS
>>72乙!

>>71>>71>>71>>71>>71>>71>>71>>71>>71 宣伝も乙!!!!!

これでいいのか!
74: 2008/01/01(火) 14:26:22 ID:efjfi3Ar(1)調 AAS
乙!
ってゆーか、みんなちゃんと議論しようぜ!
まずは参加者から決めようぜ!
75
(2): 2008/01/01(火) 22:27:32 ID:kQeUTboG(1/2)調 AAS
>>68
スレ住人として言いますが、そんなコピペは議論に必要ありませんよ。
それよりも、過去ログを全てwebサイトにアップロードしていただきたいんですが。
そういったログをコピペできるという事は、ログお持ちなんですよね?
76
(2): 2008/01/01(火) 23:14:45 ID:yFwNd+x5(1)調 AAS
スレ住人からいわせてもらえれば
ログなんて誰も持ってないし
そもそも運営機能を外部に出すのはしたらばのような暴走を再発させるだけだから反対
77
(2): 2008/01/01(火) 23:17:46 ID:kQeUTboG(2/2)調 AAS
>>76
では、上のコピペは一体どちらからコピペされてるんでしょうか?
78
(1): 2008/01/01(火) 23:42:31 ID:iDzto6Ja(1)調 AAS
>>75 >>77
コイツにそういう事を言っても無駄だと何べん言えば分かるんだ?
79: 2008/01/02(水) 00:20:20 ID:/K3TuRHs(1)調 AAS
>>75
>>76
>>77
>>78
前スレの書き込みがDAT落ちする前に臨時であげているだけなのに
何を騒いでるんだおまいらは
80: 2008/01/02(水) 10:24:44 ID:KBVJdaaX(1/3)調 AAS
ダニエルが強かった
81: 2008/01/02(水) 15:39:23 ID:2rahPlEH(1/2)調 AAS
ていうか専用スレが立ってるのにそこまで執拗に拒否する理由はいったいなに?
「したらばがやってるところを荒らしたいだけ」でないなら、専用スレ行けばお互い波風立てんですむだろうに

誰が立てたか、じゃなくて何をやるかだろ

何で削除されるかもしれない上に不快な思いしてまでここに残るの?
名称的にも何の問題もないだろ
82: 2008/01/02(水) 15:45:18 ID:KBVJdaaX(2/3)調 AAS
そもそも専用スレなんて立てろなんてここのスレの住人誰も言ってないです
83: 2008/01/02(水) 15:48:44 ID:2rahPlEH(2/2)調 AAS
あるのに使わない理由は何?って言ってるの

>何で削除されるかもしれない上に不快な思いしてまでここに残るの?

ここに答えてくれない?
何かメリットでもあるの?
84: 2008/01/02(水) 15:49:13 ID:9oRUY4D7(1)調 AAS
・たぶんテンプレについての議論をする際は削除は無い模様

・そもそもしたらばが荒らしである

よって荒らしには屈さない
85: 2008/01/02(水) 15:51:30 ID:KBVJdaaX(3/3)調 AAS
勝手に一人で暴走して作られても迷惑なの
重複スレなんだから削除依頼出してきてください
86: 2008/01/02(水) 16:36:08 ID:rlBUI95D(1)調 AAS
どう考えてもここでぐちぐち議論まがいのことをやってるやつよりしたらばの住人のほうが多いだろ
民主主義の原理に則って早々に去ればいいのに
87: 2008/01/02(水) 16:46:17 ID:HbEEAPQF(1)調 AAS
したらばという外部掲示板に何千人いようが何万人いようが
2chのこのスレではゼロ。つまり関係ない。

したらばの企画ならしたらばでやれよ
名前だけパクっただけの2chとはなんの関係も無い別の企画じゃねえか
植民地扱いとは何様のつもりなのよ
88: 2008/01/02(水) 17:21:42 ID:h2EXChBN(1)調 AAS
自企画の成功を第一に考えるなら、それ相応の行動を取るだろう。
だが、これまでを見る限り、彼の第一目的はこのスレに粘着して荒らすことだ。他企画設立なんてのは隠れ蓑に過ぎない。
それは誰の目にも明らか。無論、削除人にも自明だったから削除された。それだけの話。

そして、彼に日本語が通じないのも既に分かりきった話。
専ブラでNGワード工夫すりゃあぼーん出来るんだ。ちゃんとスルー徹底しようぜ。
89: 2008/01/02(水) 22:01:53 ID:R9S2N98c(1)調 AAS
何で、したらばと2chの関係は悪化したの?

1stの頃は普通にやってたのに。
90
(3): 2008/01/02(水) 22:14:46 ID:ilxzgKk6(1)調 AAS
2chパロロワ事典@Wiki
ギャグの人外部リンク[html]:www11.atwiki.jp

ハカロワ3に沸いた駄書き手・荒らし。
最近は頭文字の『G』、その頭文字から連想する『ゴキブリ』の呼び名で定着している。
ギャグの人という名は彼が投下した駄作SSに対する住人のコメントが「それはひょっとしてギャグでやっているのか!?」だったことに由来する。
投下した作品が余りにも酷い作品ゆえ、分規制を採用していたにもかかわらず誰からもリレーがされなかったことを逆恨みしてハカロワ3の荒らしを始める。
携帯等の複数端末から同時に荒らしに来るため、勢いがあって厄介。その勢いはハカロワ3の本スレをしたらばに追い込むほどであった。
なお、現在もハカロワ3の本スレはしたらばに存在するが、ギャグの人や一部の痛い住人・アンチの手により強引に葉鍵板にもスレが存在してしまっている。
その後、本2chパロロワ辞典wikiも荒らしたため、ここからもアク禁された。
(これにより、本wikiのハカロワ3や一部の項は編集規制が施され、ページの更新・修正をしたくてもできない状態となっている)

その後、交流雑談所にも降臨し、交流所荒らしを開始。バレバレな自作自演や煽り、コピペ荒らしを繰り返した。
特に自身をのけ者にしたハカロワ3を相当恨んでいたらしく、ハカロワ3の話題が挙がる度にしつこいくらい噛み付いてきた。
そのため、交流雑談所ではハカロワ3の話題をすることは一時期タブーとされ、まともな雑談やハカロワ3の話題は急遽立てられた交流所毒吐きスレで行われることになった。
なおこの時、ほぼ1日中スレに現れていたため「まるで1匹いたら30匹はいるという黒いアレみたいだ」等と毒吐きスレで言われたことにより『G』、『ゴキブリ』と呼ばれるようになった。
(実際、当時のギャグの人は一度スレに現れると深夜〜真夜中までスレを荒らし続けていたので、『高い生命力を持ちどこにでも現れる嫌われ者の代名詞』であるゴキブリに例えたのはあながち間違いではない)
ラウンジclassic@2ch掲示板にあるパロロワ交流雑談所は現在、ギャグの人のせいで機能をほぼ停止させられている。

現在の主な荒らし対象スレはアニロワ2nd。アニロワ2ndはG対策のため議論・感想・予約等をすべて避難所であるしたらば掲示板で行い、SS投下のみを2chスレで行っている。

キャプテン、勉強男、ギャグの人は合わせて『パロロワ三大荒らし』と呼ばれている。
ちなみに、同じ厄介者のキャプテンからも直々に『いらない子』呼ばわりされた可哀想な子でもある。
また、この三人の中で唯一『最悪板』にオチスレが立てられた不名誉な存在でもある。

ネカフェや漫喫、串等を多用する。
Gは、接続毎にIPが変わる回線を好んで使う傾向がある。
特に、以下の使用頻度が高い。
p*-air02hon32k.tokyo.ocn.ne.jp
softbank219206014168.bbtec.net
KD12502801*.ppp.prin.ne.jp
202-94-152-169.cust.bit-drive.ne.jp
91: 2008/01/03(木) 00:29:48 ID:bZiuA+wz(1/5)調 AAS
>>90
妄想ご苦労さんwwwwwww
92: 2008/01/03(木) 00:33:22 ID:ieThRa/A(1/7)調 AAS
これってコピペだから削除対象だよな
もちろん
93: 2008/01/03(木) 00:36:48 ID:bZiuA+wz(2/5)調 AAS
>自企画の成功を第一に考えるなら、それ相応の行動を取るだろう。

意味不明。そもそも「成功」とは何?チミたちの駄SSが完成すること?

>だが、これまでを見る限り、彼の第一目的はこのスレに粘着して荒らすことだ。

根拠の無い罵倒

>他企画設立なんてのは隠れ蓑に過ぎない。

根拠の無い罵倒

>それは誰の目にも明らか。

単発IDでほざくバカが何をいう

>無論、削除人にも自明だったから削除された。それだけの話。

今回から削除されなくなりました。残念でしたwwwwwwwww

>そして、彼に日本語が通じないのも既に分かりきった話。

根拠ない罵倒

>専ブラでNGワード工夫すりゃあぼーん出来るんだ。ちゃんとスルー徹底しようぜ。

不利な意見を封じ込めるための方便にしかみえませんねwwwwwwwwwwwwww
94
(1): 2008/01/03(木) 00:44:39 ID:MlGUYXME(1)調 AAS
>>90
これ見ると、ただのそこのWiki書いてる奴のレッテル貼りにしか見えないんだけどな

ネタでやってるような企画でギャグやって何か悪いわけ?
95: 2008/01/03(木) 01:07:56 ID:h7muuIW+(1/2)調 AAS
>>94
ギャグじゃなくてギャグにしか見えないような駄SSってことだろ
96
(1): 2008/01/03(木) 01:24:15 ID:F1fTe9Mx(1)調 AAS
『荒らされたから移動した』というのはしたらばの方便です
本来は荒らしでもなんでもなかったような書き込みを荒らしとして
針小棒大に騒ぎ立てて自分達で好き勝手に削除できるしたらばに逃げただけ

奴等「したらば」の一部グループには「バトロワとはこうあらねばならない」と考える
偏狭ななにかがあって、そのルールに従わないキャプテンという人物郡(何名いるか知らないが)
を潰しにかかるためにしたらばに全部逃走してそれを「避難」と読んでるだけですよ。

キャプテンや勉強男とかギャグの人とかが、何をしたんだ?
特に、アニロワではキャプテンが暴れたというけど、何をどうあばれたのかログが全くないんだが
それで何を信じろっての?

むしろ、したらばから出た厨が他のバトロワ(CGI系のバトロワ)にまで口だししてバトロワとはああだこうだと
自分達が勝手に作り上げた「バトロワ」のルールを押し付けようとするからこちら側はすげえ迷惑してるんだよね
アンチとしたらばが呼んでる人間側は、そのしたらばの事を集団荒らしだと言ってるよ
望みもしないのに場とロワのSSを勝手に押し付けるktgiどもだってな
そういうところにまでのこのこ出て行って『(したらばの言う)バトロワのすばらしさ』を喚きたてて
それでさらにアンチが拡大してるdionとか、本当に頭おかしいんじゃねーかこいつらとしか思えないんだよな
だからサブカルでも追い出されるんだよ

その「交流所」とかいうところで勝手に作り上げた「バトロワ」のルールとかも含めて、
「バトロワの成功」とか「企画の成功」とか、そういうのってしたらばの一部の住人が作った一つの概念でしかなく、
そういう事をいちいち住人が望んでいないということを理解しろよ
そんな細かくいちいち考えてなんてねえんだよ
人を復活させるなとか、結界や能力制限かけないとバトロワじゃないとか
それは勝手なそちらの思い込みでしかない事をいい加減理解しろ
「アにキャラ総合板の住人はバトルロワイアル2ndの完結を望んでる」とかそこまで思ってる香具師はいねえよ
思ってるのは当のしたらばの住人だけだ。だったら全てをしたらばでやれ

荒らされたというなら、当然その時のログがあるはずでしょ?
当然wikiにもその時の証拠ログぐらい貼ってあってしかるべきでしょ?
まずそれを貼れよ。したらばに逃走したのはだいぶ前の話だろうが。
でも実際、その後居残ってた人間どもで今の2chのロワを企画中なんだからさ
97: 2008/01/03(木) 01:29:11 ID:ieThRa/A(2/7)調 AAS
>>90
リレーされた事を恨んでいるって…
ソースどこ?
そこまで書いてるんだから当然そういう発言があったんだろうな
98: 2008/01/03(木) 01:32:24 ID:d+TTrWY7(1)調 AAS
少なくともギャグの人といわれるのが仮に

したらばの言うとおり一人の自作自演(ありえねえw)だとしてもよ
したらばへの移動は、
(奴等の主張によると)キャプテン(これも何人いるかわからねえ)が原因だったはず

とにかく、あきらかにウソだぞ
99
(1): 2008/01/03(木) 01:34:33 ID:h7muuIW+(2/2)調 AAS
>>96
どこが企画中だよw
何ヶ月も議論してきて決まったことはあるのか?
100
(2): 2008/01/03(木) 01:36:12 ID:2kh6SD0G(1)調 AAS
>>99
君ねぇ、テンプレ100回くらい読んだら?
ゴキブリに反応っていう餌を与えてるって自覚ある?
101: 2008/01/03(木) 01:36:56 ID:bZiuA+wz(3/5)調 AAS
>最近は頭文字の『G』、その頭文字から連想する『ゴキブリ』の呼び名で定着している。
>ギャグの人という名は彼が投下した駄作SSに対する住人のコメントが
>「それはひょっとしてギャグでやっているのか!?」だったことに由来する。

バトロワは半分ギャグで半分ネタです
「それはひょっとしてギャグでやっているのか!?」と聞く方がおかしいです
吉本新喜劇で漫才やってそれを「それはひょっとしてギャグでやっているのか!?」と聞くのと
同じ
102: 2008/01/03(木) 01:38:28 ID:aamhJb2w(1)調 AAS
したらばの意見に反対する=ゴキブリ
103: 2008/01/03(木) 01:40:11 ID:ieThRa/A(3/7)調 AAS
>>100

異論反論封じ込めのための工作御苦労さまです
104: 2008/01/03(木) 01:42:21 ID:SwhCk9Sz(1)調 AAS
513 名前:"aaaa" 投稿日:08/01/03 01:18 HOST:86.CH338.cyberhome.ne.jp<8080><3128><8000><1080>
削除対象アドレス:
2chスレ:anichara

削除理由・詳細・その他:
4. 投稿目的による削除対象
レス・発言
5. 掲示板・スレッドの趣旨とは違う投稿
レス・発言

まさに言論弾圧のための政策ですねwww
105: 2008/01/03(木) 01:44:14 ID:ieThRa/A(4/7)調 AAS
>>100
そんなにしたらばのルールでやりたいなら
妨害しないからしたらばでやりなさい

な。

うちの企画が成功するかしないかなんて
あんたらには関係ないでしょ!!
106: 2008/01/03(木) 01:49:10 ID:NeTdopeT(1)調 AAS
>アニロワ2ndはG対策のため議論・感想・予約等をすべて避難所であるしたらば掲示板で行い、SS投下のみを2chスレで行っている。

これ、司法・行政・立法の全てを外国で行い、広報だけ日本で行ってるといってるのと全く同じじゃん
これで2chの企画だって言い張る気?そりゃないだろ普通
107: 2008/01/03(木) 01:55:08 ID:3v/EulXR(1)調 AA×

108: 2008/01/03(木) 01:58:17 ID:bZiuA+wz(4/5)調 AAS
…いい性格だなw
109: 2008/01/03(木) 02:04:57 ID:J6cH10bX(1)調 AAS
で、またてめえらのwikiに書くんだろ

でっち上げでな
110: 2008/01/03(木) 03:23:29 ID:r2yj4C4b(1)調 AAS
2chスレ:anichara
こっちがあいたからこっち使え
111: 2008/01/03(木) 08:32:48 ID:ieThRa/A(5/7)調 AA×

2chスレ:anichara
112: ボクのセカイをまもるヒト(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/03(木) 14:01:39 ID:ru52p/us(1/27)調 AAS
『エリア中心部に行き、他の参加者に接触し、使えそうならば我々の仲間に誘う。我々に害を為すようなら排除する』

 上記のような命令を下されたとして、君は第一になにを成そうと考えるだろうか?
 命令というものは、指示する者の意図を正確に汲み、実行する者が同調する必要がある。
 しかしこの命令が、正式な命令としてではなく、催眠術のような暗示的なものだったとすればどうか。
 命令の本質は歪み、指示する者の意図は明確に伝わらない。
 命令を達成するための方法諸々は、実行する者の判断に委ねられる。
 なにを成して命令を遂行するか、遂行したと判断するか、それは受け手の解釈の仕方によって様々なのだ。

 たとえば、君は上記のような命令をどう解釈するだろうか?

 ・エリア中心部に行く
 ・他の参加者に接触する
 ・使えそうかそうでないか判断する
 ・使えそうならば仲間に誘う
 ・害を為すようなら排除する

 命令としては単体でも、それをバラしてみれば、実はやるべきことは上の五つ。
 命令を受ける側として最も考えなければいけないことは、この五つの中の、どれが本質――最優先事項――であるかだ。
 たとえば、エリア中心部へ行ったとして、他の参加者がいなかったらどうすればいいのか。
 たとえば、エリア中心部へ行く過程で、他の参加者に接触した場合はどうすればいいのか。
 たとえば、他の参加者を仲間に誘い、断られた場合はどうすればいいのか。
 本質がどれであるか、解釈の違いによって、命令の意味は大きく変質する。
 行く、接触する、見極める、誘う、排除する。
 これら五つ、どれを成せば任務遂行と言えるのか、どれを優先すべきなのか。
 それはやはり、指示する側が明確に本質を示していない以上、受け手の捉え方によって千差万別なのである。

 ある者は『到達』を第一に考え、その過程で出会う参加者は無視してしまうかもしれない。
 ある者は『接触』を第一に考え、中心部へ到達することなくその過程で命令を遂行し終えるかもしれない。
 ある者は『判断』を第一に考え、ろくな接触もせず視認しただけでその者の適正を計るかもしれない。
 ある者は『勧誘』を第一に考え、どんな者でも好意的に受け入れてしまうかもしれない。
 ある者は『排除』を第一に考え、どんな者でも害意だと見なしてしまうかもしれない。

 さて、では君ならばどうするか?

 たとえば君が、命令というものを軽んじるただの学生だったとして。
 たとえば君が、命令というもののシステムを知るようになった社会人だったとして。
 たとえば君が、命令というものを依頼と同列に解釈する請負人だったとして。

 暗示的なものであろうが、直接的なものであろうが、命令であろうが、お願いであろうが、要点は変わらない。
 受け手が、指示内容の本質をどう解釈するか――やはり、千差万別なのである。

『エリア中心部に行き、他の参加者に接触し、使えそうならば我々の仲間に誘う。我々に害を為すようなら排除する』

 このような抽象的かつ曖昧模糊な例では、なおのこと。

 ◇ ◇ ◇
113: ボクのセカイをまもるヒト(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/03(木) 14:02:42 ID:ru52p/us(2/27)調 AAS
 エリアD-8 古墳近辺

 ビクトリームは、歓喜に震えていた。
 しばらくぶりとなる我が体との合身。心地よいVの体勢。
 彼という魔物を語る上で最も重要なポージングが、また万全の状態で取れることが嬉しかった。
 そんな幸福の時間を、質問攻めで邪魔したのがニアだった。

「グラサン・ジャックさんってなんですか? ガンメンモドキってなんですか?」

 キラキラと光る珊瑚礁のような髪に、純粋無垢な表情を携えた少女。彼女はニアと名乗った。
 ビクトリームの体に数々の虐待を加え、それでいてこのふてぶてしい態度。
 ビクトリームは彼女をいま流行のヤンデレ少女ではないかと推察したが、それも「ヤンデレってなんですか?」と一蹴された。
 その他、華麗なるVから飛び出る数々のジョークは、「〜ってなんですか?」のフレーズによって蹴散らされる。
 なんだこの娘なーんも知らねぇのかこの困ったちゃんがー! と叱り飛ばしたところで、ニアは不思議そうに首を捻るだけだった。
 とにもかくにも、ビクトリームはニアについての知識のなさを鑑み、彼女を『バカ』であると認識した。

「おお、かわいそうなニアちゃんよぉ……あんまりにも惨めったらしいから、この華麗なるビクトリーム様がテメェに学をつけてやろうじゃねぇか」

 そうしてビクトリームは、己の主観と願望に若干の誇張を加え、ニアが最も知りたがっていた『グラサン・ジャック』について語った。

「……よくわかりました。やはりグラサン・ジャックさんというのは、シモンのアニキであるカミナさんのことだったのですね」
「そういうことだ。だが……それも昔の話よ。今のあの男はグラサン・ジャック。このビクトリーム様の忠実なしもべにして唯一無二のパートナーよぉ」
「パートナー……では、ビクトリームさんはカミナさんのアニキというわけですね?」
「ん……ん、んんん……? ま、まあそう解釈しちゃってもよろしかったりしちゃったりするんじゃないかぁ?」
「アニキさんのアニキさん……シモンがいれば、今頃……」

 物憂げな視線を空に投げて、ニアは森林の中を佇む。
 その様子は、Vカットとメロンの曲線くらいにしか美を感じないビクトリームの意識を奪わせるほどのものだった。

 しかし、この反応はいったいどうしたことだろうか。
 グラサン・ジャック――カミナの名を知る少女。
 最初は仲間かなにかと思ったが、彼女自身はカミナとは面識がなく、どんな人物かとビクトリームに問うような無知。
 とりあえずビクトリームは「気のいい弟分よぉ」とだいぶ曲解した知識を与えておいたが、どうにもリアクションが薄い。
 まさか本当に名前しか知らないのか、ならなぜそんなにも興味を抱いているのか、ビクトリームにとってはまったくの謎だった。

「って、な〜んでこの私が奴のことでこんなに悩まなくちゃいけないんだっつーの。おい小娘、おまえいったいどこで我がパ」
「お願いですビクトリームさん! 私を、そのグラサン・ジャックさんに会わせていただけませんか!?」
「な、ぬぅわぁにぃぃぃ!?」

 真摯な瞳、Vに急接近。ツッコミもなにもないまま放たれた懇願に、ビクトリームはペースを狂わされた。
 そもそも、この少女はグラサン・ジャックとどういう関係にあるのか。
 ヤンデレでもストーカーでもないならば、いったいなんだというのか。
 その答えをまだ知り得ていないビクトリームは、素直にニアの申し出を受け入れるはずもなく、

「バーロー! さんざん我が体を痛めつけてくれた小娘がな〜に抜かしとんじゃあ!
 そもそもだな、この私が今さらどの面さげてグラサン・ジャックと会えばいいっちゅうんじゃい!
 それができりゃあこんなドキドキムネムネした微妙な乙女心のような気持ちになんてなら――」

 断りの怒号を放ったが、しかしその罵声は、西方から届いた轟音によって掻き消される。
 同時に西風が周囲の木の葉を舞い上げ、ビクトリームとニアの二人を襲った。

「きゃあ!?」
「ブルアアアァァァァァ!?」

 両名とも吹っ飛ばされまいとどうにかその場に堪え、しばらくして風はやんだ。
 舞い上がった木の葉がすべて地面に降りる頃、二人の視線は西の方角を向いた。
114: 2008/01/03(木) 14:03:48 ID:a+HUIujO(1/2)調 AAS

115: ボクのセカイをまもるヒト(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/03(木) 14:03:49 ID:ru52p/us(3/27)調 AAS
「な、なんだぁ……?」
「……なんでしょう?」

 そして、時は少し遡る――。

 ◇ ◇ ◇

 エリアE-7 T字路近辺

 八神はやては、目を白黒させながらその惨状を眺めていた。
 一条の川を隔てた向こう側、エリア中心部へ向かうためのルートに鎮座する、元々の目的地、

「なんか燃えてるぅぅぅぅぅ!?」

 デパートが――下着売り場ごと――燃えている。
 日中お構いなしに濛々と立ち上る煙は、はやてにミッド臨海空港で起こった大規模火災事故を思い出させた。
 同時に、あれほどの火災ならば要救助者がいるのではないかと思いもしたが、

「……あ、エリア中心部へ行かな」

 足は、いつの間にか北へ向いていた。
 そのまま燃え上がるデパートには一瞥もくれず、無理せずエリア中心部へと到達するためのルート、北路を選択する。
 時空管理局に勤める彼女が、人命救助を差し置いて他を優先するなど、普通ならば考えられないことだった。
 それはこの殺し合いという環境下においても同じで、一時期心のぶれはあったものの、はやての強固な意志は揺るいでなどいなかった。

 それを歪め、変質させてしまったのが、<ギアス>という『絶対遵守の力』なのである。

 ◇ ◇ ◇

 エリアD-7 路上

 小早川ゆたかは、息を切らしながらも懸命に歩いていた。
 元来、病弱なゆたかの体力は、常人のそれよりも遥かに劣る。
 かつての同行者、Dボゥイはそんな彼女を気遣い歩調を合わせて並行してくれたが、弟のほうそんな気心は持ち合わせていなかった。

(歩くの、速いんだ)

 小早川ゆたかと相羽シンヤ。
 テッククリスタルを求め会場をさ迷い歩く二人は、南へと歩を進めていた。
 ただし、仲良く肩を並べてというわけではない。
 シンヤにとって、ゆたかの存在はいわば人質。Dボゥイとの再戦を果たすための、切符的役割しか担っていない。
 それはゆたか自身も認識していたことで、無碍に扱われることに関して不快感を覚えたりはしない。
 ただ、ついていくことすら困難なのかと思うと、自分の脆弱な体に僅かな憤りを感じた。

「……」
「……あ、ありがとうござい……」

 歩の遅いゆたかとの距離が10メートルは離れたところで、先行くシンヤは足を止めた。
 そのまま無言で後続が追いつくのを待ち、ゆたかが気づかいに感謝しようと口を開いても、意には関さなかった。
 隣合わせではなく、前後の位置関係のまま、ゆたかとシンヤは歩き続ける。
116: ボクのセカイをまもるヒト(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/03(木) 14:05:17 ID:ru52p/us(4/27)調 AAS
(うう……なにを話せばいいのかわからないよぉ)

 ゆたかは、どちらかといえば人見知りなほうである。
 出会って間もない年上の男性相手、それも自分の命を握っている者ともなれば、なにを話の種にすればいいのか皆目見当もつかなかった。
 ただ、このまま無言で行動を共にするのはどうにも気まずい。Dボゥイといたときはこんな些事には悩まなかったのだが。

(わからないよ……わたし、男の人とあんまりお喋りしたことないし……)

 Dボゥイによく似た後姿を見つめながら、ゆたかは顔中に疲労からくる汗を作っていた。
 それに緊張も加味され、顔色は体調を崩したときのように青ざめていたが、そのことには本人もシンヤも気づいていない。

「止まれ」
「え?」

 萎縮したまま歩いていると、ふとシンヤから制止の声がかかった。
 ゆたかは顔を前方に促し、その理由に気づくと、すぐに視界をシンヤの身に塞がれる。

「あ、あの、前のほうに人が」
「わかっているさ。だからこうしている。奴がいきなり銃を抜いて、おまえが射殺でもされたらことだからね」

 結果的に、ゆたかの小柄な体はシンヤに覆い隠されるような状態になっていた。
 それが前方からやって来る――敵かもしれない――人間から庇うための行為なのだと悟って、ゆたかは少し嬉しくなった。
 が、同時に不安も込み上げてくる。シンヤがあの人と殺し合いを始めたりしないだろうか、と。

(もしそうなったら、わたしが止めなきゃ)

 明確な手段など検討もつかないし、いざそうなったらなにもできないということを予感してもいるが、ゆたかは願望として、シンヤに殺し合いをしてほしくなかった。
 歩を止め屹立するシンヤの裏で、ゆたかは視界奥からやって来る者の到来を待つ。
 横合いから様子を窺うと、どうやら女性であるらしい姿が近づいてきた。
 シンヤは牽制を放つでもなく、ただ黙って女性が声をかけてくるのを待つ。
 そして女性はゆたかとシンヤのすぐ側まで歩み寄り、こう言い放った。

「こんにちは。私は八神はやていいます。少しお話しませんか?」

 柔和な語り口の女性は、物腰から察してゆたかよりも年上。
 朱色に染まった双眸が、なぜか印象深かった。

 ◇ ◇ ◇

 相羽シンヤは、八神はやてなる女の話を聞き一考していた。

「私たちの仲間になってほしい、ね。いきなりなにを言い出すかと思えば、理解に苦しむ提案だ」
「そんなことないですよ! あの……八神さんは、ここから脱出するために仲間を集めてるんですよね?
 わたしたちに声をかけたのも、そのための仲間になってほしいって意味ですよね?」
「それは……あれ? えーと……どうやったっけなぁ」
117: 2008/01/03(木) 14:07:02 ID:6LcXOCGH(1/6)調 AAS

118: 2008/01/03(木) 14:07:39 ID:6LcXOCGH(2/6)調 AAS

119: ボクのセカイをまもるヒト(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/03(木) 14:09:16 ID:ru52p/us(5/27)調 AAS
 はやての曖昧な返事に、ゆたかは不安を募らせ、シンヤはイライラを増長させていた。
 そもそもこのはやてなる女、一見してどこかおかしい。
 殺し合いの会場で歩いていた男女二人に声をかけ、いきなり仲間になってくれと要求してくる。
 心身ともに脆弱な人間ならば、普通は第一に「敵か味方か」という疑問が生まれ、おいそれと声をかけられるはずなどない。
 そして、彼女の話を聞いた上で「なにをするための仲間になるのか?」と尋ねたら、返答はこの曖昧さだ。
 疑ってかかるなら、なんらかの罠と解釈すべき勧誘。
 しかしラダムのテッカマンであり、人間を虫ケラと見下すシンヤは、あえてその渦中に身を投じることを選んだ。
 彼の第一の目的、首輪の解除。第二の目的、テッククリスタルの入手。
 どちらを成すためにも、他参加者との接触は積極的に取り組むべきだと考えたからだ。

(もし罠ならば、殺すだけさ)

 己の実力を自負し、Dボゥイとの再戦の日まで死ぬつもりもないシンヤは、警戒はすれど恐れはしなかった。

「いいだろう。仲間になってあげるよ。ただし、条件つきでね」
「条件?」
「あるものを探している。テッククリスタルという水晶のような道具なんだが……心当たりはないかい?」
「テッククリスタル……水晶……あー」

 はやての言う仲間とやらが複数名いるとするならば、その中にテッククリスタルを支給された者が紛れているかもしれない。
 もともとシンヤとDボゥイ以外には無用の長物、仲間になるための交換材料としてなら、はやて側も快く譲り渡すだろう。
 仮に渋ったとしても、持っているか持っていないかさえわかれば、あとはどうとでもなる。
 いざというときは、殺して、奪えばいいだけだ。

「それなら、私が持っとるよ」

 腹の底に殺意を宿すシンヤだったが、はやての返答は思いもよらぬものだった。

「……なんだって?」
「たぶん、そのテッククリスタルっちゅう水晶なら私が持っとる」
「ほ、本当ですか!? あ、あの、でしたらそれ、シンヤさんに譲ってくれませんか……?」

 話の出来具合に驚きを隠せぬシンヤより先に、ゆたかが交渉に躍り出る。

「ええよ。仲間になってくれるんなら安い安い。ちょっと待っといてな、たしか……」

 話は交渉とまではいかず、返事一つで成立した。
 争いにならなかったことにホッとするゆたかと、テッククリスタルを取り出そうとするはやてに目を配るシンヤ。
 二人の見つめる中、はやては数時間前までは確かに所持していた交換材料を探し、そして気づいた。

「あ……そっか」

 あちゃー、と零しながら、両手を合わせて二人に平謝りの姿勢を取る。

「ごめんなぁ。さっきまで持ってたんやけど、それ、いま仲間が持っとるんよ」

 発覚した事実に、ゆたかが落胆する。同時に、横目でチラリとシンヤの顔を覗き込み、機嫌のほどを伺っているようだった。
 シンヤはそんなゆたかの所作を疎ましく思いつつも、癇癪を起こしたりはしなかった。
 ブレードのものかエビルのものかはわからないが、テッククリスタルははやての仲間が持っていると言う。
 ならば、焦る必要はない。物事は着実に進捗している。

「なら、その仲間のところまで案内してもらおうか。正式におまえたちの仲間になるのは、クリスタルが俺の手に渡ってからだ」
「心配せぇへんでも、ちゃんと渡すって。ほな行こか」
120: 2008/01/03(木) 14:10:14 ID:6LcXOCGH(3/6)調 AAS

121: 2008/01/03(木) 14:10:27 ID:M5IsZvAT(1/14)調 AAS

122: 2008/01/03(木) 14:10:31 ID:v8aVOay+(1/13)調 AAS
 
123: 2008/01/03(木) 14:10:36 ID:a81BdowE(1)調 AAS

124: ボクのセカイをまもるヒト(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/03(木) 14:11:04 ID:ru52p/us(6/27)調 AAS
 はやて先導のもと、シンヤとゆたかは南へと進路を取った。
 そしてすぐに、

「はやて!」

 進路先から、第二の来訪者が訪れた。
 三人は現れた男の姿を見やり、それが何者かを知っているはやては特に変化なく、初見のシンヤとゆたかは、

「なっ……」
「え、ええ!?」

 予想外の奇観に、片や驚き、片や顔を真っ赤にして立ちくらみを起こす。
 はやての名を呼び、流麗なフォームでこちらに快走してくる男は、なぜか全裸だった。
 布で覆われているのは、股間の局部のみという一見して風呂上りのような男。まず殺し合いの場に相応しい格好とは思えない。
 察するにはやての知り合いだろうが、男のありえない風貌に、シンヤはますます持って疑心を募らせた。

「あれ、クレアさん。そんなに慌ててどうしたんですか?」
「ん? ……いや? どうもしないさ。ただおまえの姿が見えたんでな。ところで、そっちの二人は?」

 平然と会話するはやてに、やはり動揺した様子はない。おそらくは、この裸身の男も仲間の一人なのだろう。

「ああこの二人は――『エリア中心部へ向かう途中で接触して、使えそうだと判断したから仲間に誘った』人たちです。
 仲間になる条件として、私の持っとった荷物が必要なんやけど……私のデイパックは今どこに?」
「そうか。それならたぶん、マタタビが持ってるんじゃないか?
 じゃあ『俺は俺でエリア中心部へ向かい、また別の参加者と接触して、使えそうな奴を仲間に誘う』としよう」

 ただそれだけを言い交わし、クレアはシンヤとゆたかには一瞥もくれないまま北へと歩き出した。
 感じた印象としては、どこか気味の悪い会話だった。なにかに取り憑かれているような、人形同士の掛け合いにも思える。

「あの、はやてさん、今の人は……」
「え? ああ、私の仲間や。変な人やけど、悪い人やないよ」
「そ、そうですか」

 ゆたかは去り行くクレアの背中を見て、恥ずかしさのあまりすぐに目を反らした。
 シンヤにいたっては、端から眼中にない。興味は、テッククリスタルを持つというマタタビに向いていた。
 そしてそのマタタビも、はやてやクレアと同じ場所を目指している最中である。

「あ、マタタビもちょうど来たみたいやな。ほら、あのネコさんがそうや」

 言って指差した先、第三の来訪者たる一匹のトラネコが、“二足で歩いていた”。

 ◇ ◇ ◇
125: 2008/01/03(木) 14:12:13 ID:6LcXOCGH(4/6)調 AAS

126: ボクのセカイをまもるヒト(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/03(木) 14:12:30 ID:ru52p/us(7/27)調 AAS
 マタタビは、脳の中枢に刻まれた使命を果たすため、はやてやクレアと同様に燃え盛るデパート方面を避け、北に迂回していた。
 ミー死亡の謎や、はやてやクレアに向けた疑念はどこかへ消え、今はただサイボーグのようにエリア中心部を目指す。
 そして前方にクレアを、さらにはやてと、はやてに付き従う見知らぬ人間二人を視界に捉えたところで、立ち止まる。
 きっかけは、はやての呼びかけによるものだった。

「マタタビ、ちょっとええか?」

 瞳は朱色に染まったまま、はやてがマタタビの進路上を遮るが、マタタビは止まらない。

「悪いな、エリア中心部へ行かなくちゃならん」

 小柄な猫の体ははやての足元を通り過ぎ、既にはやてが勧誘したのだろうと判断した他の参加者二人には、見向きもしない。

「ね、ネコが喋ってる……?」

 裸身の男との邂逅、続いて人語と二足歩行のスキルを持ち合わせたトラネコの登場で、ゆたかの神経は既にいっぱいいっぱいだった。
 しかし彼は、マタタビが背負うデイパックに目的のものがあると知るシンヤは、このままトラネコが過ぎ去るの座視するはずもなく、

「待ちなよ。俺はこの女の仲間になる条件として、おまえの持っているクリスタルを要求したんだ。このまま黙って行かれるのは――」

 言って、シンヤはマタタビに手を伸ばす。
 欲望と、それを満たすための殺意が秘められた右手を。
 そのあからさまな気配が、マタタビの本能に触れ、嫌悪感を誘発した。
 反射的に、シンヤの右手の甲を爪でひっかく。

「拙者に触れるんじゃねぇ」

 短く言い捨てて、マタタビはシンヤを睨み返した。
 反応を待たぬまま、何事もなかったかのように進路を戻す。

「……フ」

 去り行くマタタビの背に浴びせられたのは、苦笑。

「まったく、この世界は本当におもしろいね」

 苦笑はやがて、失笑を経て、

「猫でさえ、この俺を怒らせる」

 嘲笑、もしくは不気味なまでの艶笑、そして、

「邪魔なんだよ……兄さんとの決着をつけるためにはねえッ!」

 哄笑へといたり、シンヤは歪んだ笑みをそのままに、マタタビに襲い掛かった。
127: 2008/01/03(木) 14:13:07 ID:HyOAdIpc(1/4)調 AAS
 
128: 2008/01/03(木) 14:13:49 ID:6LcXOCGH(5/6)調 AAS

129: ボクのセカイをまもるヒト(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/03(木) 14:14:01 ID:ru52p/us(8/27)調 AAS
「ッ!?」

 一瞬で振り向いたマタタビの頭部を一掴み、デイパックを剥ぎ取ると、本体は乱暴に放り捨てる。
 咄嗟の出来事に受け身を取ることもままならなかったマタタビは、三度地面を弾み、転がって土の味を覚えた。

(攻撃された? あの男が? 敵意を行動に移した? ならば我々に害を成す存在だと判断し、排除を――)

 マタタビの本能が、<ギアス>によって一時的に麻痺している脳が、決断を下そうとする、しかしそれ以前に。

 路上の乾いたアスファルトに沈み、マタタビは身を起こそうとする間、見た。
 ジャンパー姿の男が、マタタビから奪ったデイパックを漁る様が。
 デイパックから出てくる数々の物品を、選別するように投げ捨てていく様が。
 食料や水が宙を舞う中に、ホルマリン漬けにされた眼球入りの瓶も飛び、
 それが地面に吸い込まれるように落下し、音を立てて割れ、中身が飛び散り、
 衝撃で中の眼球が潰れ、原型を失っていく様を。

(――排除――)

 マタタビにかけられた<ギアス>は、あくまでもマタタビ個人を対象としたものである。
『エリア中心部に行き、他の参加者に接触し、使えそうならば我々の仲間に誘う。我々に害を為すようなら排除する』
 マタタビがこれをどう解釈したにせよ、彼の行動原理はこの命令内容の中に限定される。
『はやてが既に勧誘したためこちらが誘う必要性はなし』、と判断はすれど、
『はやてが勧誘した人間だから我々に害を成さない、よって排除する必要性はない』という結論には至らず、
 また『はやてが命令を遂行したからこちらの命令も完了した』という風には捉えない。
 つまり、相羽シンヤがはやての果たした命令の成果だとしても、それはマタタビにとってなんら関係のないことなのだ。
 害を成すようなら排除する。この一点を重視したマタタビは、シンヤすらも外敵であると判断した。
 しかし、やはりそれ以前に。

(排除――いや、それよりも、だ)

 マタタビの胸中には、抗いようのない怒りが生まれていた。
 それは、自身の眼球が入った瓶が破壊されたことに対する怒り。
 幼少期、ライバルであるキッドに抉られ、復讐に至らせる起因となった眼球が、ゴミのように扱われ、いま潰れた。

(――おい、ちょっと待てコラ)

 離別中、サイボーグ化してしまったキッドとは違い、マタタビは生来猫としてあり続けた。
 動物らしく食欲などの欲求には溺れやすいが、それは裏を返せば、獣が本来持つ野生の表れでもある。
 獣は人間のように執着したりはしない。ここぞという場面では、本能に従って動く。
 それは、他の猫よりも遥かに器用な手先を持ち、人語を理解するほどの頭脳を持つマタタビにとっても言えたことだった。

(なにしてんだよ、テメェ)

 人間の性質と獣の性質、その二つを持ち合わせたマタタビは、世界でも有数の、特定されれば世界遺産ともなり得るイレギュラーケースだった。
 人間の常識が当てはまり、獣の常識が当てはまり、しかし人間の常識が通用せず、獣の常識も通用しない。
 ゆえに、<ギアス>をかけられた獣としては初となるマタタビの脳神経にも、そのような齟齬が発生したのかもしれない。

「なにしてんだてめえコラアアアアア!」

 この瞬間、マタタビという獣の怒り、野生が、絶対遵守の力を凌駕した。
130: 2008/01/03(木) 14:14:04 ID:v8aVOay+(2/13)調 AAS
 
131: ボクのセカイをまもるヒト(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/03(木) 14:15:16 ID:ru52p/us(9/27)調 AAS
 歪みは膨張し、マタタビを本能のままに動く獣へと変貌させた。
 キッドとの関係を示す上での、鍵とも思われた眼球。それを破壊された怒り。怒りから生じる敵意。殺意。
 研ぎ澄まされた爪は、未だクリスタルを探すシンヤの身に襲い掛かる。

「なにっ!?」

 獰猛な獣の気配を察知し、シンヤは僅かに振り返るが、影のようなマタタビの速度と小ささは、簡単に視認できるものではなかった。
 不意を突かれ、左頬に三つの切創を作る。噴き出した鮮血が、シンヤに苦渋の表情を強いた。

「テメェは!」

 シンヤへの第二撃を準備する刹那、マタタビは無意識の内に二回目の放送内容を反芻する。
 クロ……キッドの名が呼ばれた事実を。

 ――この目玉、返して欲しいか? ヘヘッ返して欲しけりゃ自分の手でオイラから奪ってみろよ――

 放送による事後報告など、信じる信じないはともかくとして、怒りを誘発させるほどのものでもない。
 あのキッドが簡単にくたばるはずがない、という強い先入観を持つマタタビにはむしろ、事実に疑念を抱かせるだけだ。
 しかし今、そのキッドが死んだという一応の情報を抱えたまま、眼球が破壊されたことによる怒りが生じた。
 それは、満タンのガソリンタンクにマッチの火を投じるようなもの。
 些細な感情は、火勢を強める。

「絶対に許さ――――ガッ!?」

 再び挑みかかったマタタビを、シンヤは片手で掌握した。

「……やってくれるね。猫風情が、この俺に、テッカマンエビルに傷をつけるとはね!」

 怒りに身を任せるのは、マタタビという獣だけではなかった。
 ラダムのテッカマン――実兄への歪んだ憎悪を動力源として動くシンヤもまた、障害に対して容赦する心は持ち合わせていない。

 ◇ ◇ ◇

 八神はやては、突然の事態に困惑していた。
 突如としてマタタビに襲い掛かったシンヤ、それに反撃したマタタビ、そしてまたやり返すシンヤ。
 眼前では、マタタビの小さな顔面がシンヤの手によって掌握され、握りつぶさん勢いで力が込められている。
 マタタビも負けじとシンヤの腕に爪を突きたてるが、見るにその効果のほどは薄い。

(あれ……なんでシンヤさんが、マタタビと喧嘩しとるん?)

 シンヤのことを、「仲間に相応しい人物」として認識していたはやては、現状に混乱する。
 そもそもはやては、シンヤがか弱そうな女の子を庇うように立つ様を見た時点で、彼は仲間にしてなんら問題ない人物だと判断していた。
 この場合の仲間とはつまり、はやての意志と同調する人間、殺し合いに乗っていない者のことを指す。
 だからこそ、件の命令に対して『仲間を得る』ことに重点を置いて解釈したはやては、エリア中心部へ到達するまでもなく、
 シンヤに交換条件となるクリスタルを渡し、正式に仲間としての契約を結ぶことで、命令を終えるはずだった。
 しかし、いまこの時点で、想定外の事態が起こったのである。
 一度は仲間に相応しい人物だと判断したシンヤ。その、まさかの裏切り。
132: 2008/01/03(木) 14:15:22 ID:M5IsZvAT(2/14)調 AAS

133: 2008/01/03(木) 14:16:00 ID:6LcXOCGH(6/6)調 AAS

134: 2008/01/03(木) 14:16:00 ID:M5IsZvAT(3/14)調 AAS

135: ボクのセカイをまもるヒト(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/03(木) 14:16:54 ID:ru52p/us(10/27)調 AAS
(マタタビは仲間や。そのマタタビを襲ったんは、シンヤさんや。だから)

 この会場で初めて顔を合わせたクロ知り合いであり、ともに温泉修繕もしたマタタビ。
 ほんの数十分前に出会い、クリスタルを渡していない以上まだ正式に仲間とは言えないシンヤ。
 どちらも仲間という枠組みに入るとして、比重を置くべきはどちらか。
 決まっている。マタタビだ。

「なら、排除すべきはシンヤさんやな」

 言ってはやては、路上に散りばめられた物品の中から、一本ののこぎりを手に取った。
 マタタビが大工道具としていた刃物を、『我々に害を成す相羽シンヤを排除するため』の道具として。
 ゆったりと、幽鬼のような歩調でシンヤの下に向かう。

「ぐ……ああああああああああああああああああああああああ!!」

 歩み寄る間、マタタビの絶叫が響き、そのままシンヤに投げつけられ、電柱に激しくぶつかった。
 今度は、起き上がってこれない。死んだのか、マタタビの意識は闇に没していた。
 しかし、はやては意に関さない。ただ一点、『排除』という行為に没頭し、シンヤに凶気の矛先を向けている。
 その形ある殺気に、シンヤが気づかぬはずもない。

「仲間がやられた腹いせかい? まったく人間ってヤツは……さすが、虫ケラと呼ばれるだけのことはあるよ」
「やめてくださいシンヤさん! 約束したじゃないですか、もう人殺しはしないって!」
「ああ。だがこうも言っただろう? クリスタルを持った奴と、襲ってくる奴は、別だとね!」

 状況の把握に追いついたゆたかと数秒会話し、シンヤははやての襲撃に備えた。
 敵が構えようと構えまいと、はやての移す行動に変化はない。
 瞳を朱色に充血させ、脳神経に刻み込まれた命を遵守する。
 のこぎりを大きく振り上げ、走った。

「ごめんな、やっぱさっきのなし。排除させてもらうわ」

 木屑の残る刃が太陽に反射して、ギラリと光る。
 猟奇殺人者のような構えから、純粋な殺意が窺えた。
 それを見ただけで怖気を走らせるゆたかと、悠然と構えるシンヤ。
 襲うはやて。
 互いの距離はあっという間に詰まり、そして、

「ゲホッ!?」

 次の瞬間には、鳩尾に膝蹴りを喰らうはやての姿があった。

「遅いな。これなら、さっきのネコのほうがまだマシだったよ!」

 襲撃のタイミング、殺意の放ち方、距離の詰め方、どれをとっても一般人の域を出ないはやてに、シンヤの酷評が飛ぶ。
 はやてはそんな評を頭に入れることもできず、痛みに悶絶し、のこぎりを手から取りこぼし、その場に蹲った。
 魔導師としてはSSランクに格付けされているはやてだったが、直接的戦闘能力は低い。
 彼女の実力は守護騎士システムやデバイスの助力あってのものであり、ガチンコなら六課新人メンバーにも劣る、というのは本人の弁だ。
 魔法を用いない格闘戦ともなれば、なおさらはやての勝ち目は薄い。
 本領を発揮していないとはいえ、相手がラダムのテッカマンともなれば、その勝算はさらに薄れる。
 だからといって、<ギアス>により仕立て上げられた殺意は抑えられるものでもないのだが。

「大人しくクリスタルを渡しておけばよかったものを……俺に牙をむいたことを後悔するんだね」
「がはっ……」

 シンヤははやての首根っこを掴み、腕の力だけでその身を持ち上げる。
 人間を超越した握力が、はやての呼吸器官を圧迫する。
136: 2008/01/03(木) 14:17:01 ID:M5IsZvAT(4/14)調 AAS
   
137: 2008/01/03(木) 14:17:43 ID:d3wmFzfX(1)調 AAS

138: 2008/01/03(木) 14:17:48 ID:v8aVOay+(3/13)調 AAS
 
139: 2008/01/03(木) 14:18:17 ID:M5IsZvAT(5/14)調 AAS
   
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141: ボクのセカイをまもるヒト(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/03(木) 14:18:41 ID:ru52p/us(11/27)調 AAS
「やめてくださいシンヤさん!」
「聞けない相談だね。この女は未だに殺意を向けている。いま殺さなければ、また襲ってくるのは確実だ」

 右手に込める力を強め、蛙の鳴き声のような音が響いた。
 朦朧とする意識の奥で、はやてはシンヤの閻魔顔と、それに泣きながら縋るゆたかを見る。
 声を発すことはできない。どころか、呼吸もままならない状況だ。

(痛い。苦しい。なんで? なんで私、こんな目にあっとるん?)

 本能が、脳に問いかけた。
 脳は、本能に答えた。
 邪魔者を排除するためだ、と。

(いやいや……無理やろ、それ。力の差なんて、歴然やん)

 そこまで思って、はやての身は乱暴に投げ捨てられた。
 体を地面に強く打ち、薄れていた意識が覚醒される。
 全身を駆け巡る痛みが、はやての再動を容易としなかった。

「ふん。なら、おまえの手でケリをつけるかい?」
「え?」

 咳き込むはやてを尻目に、シンヤはゆたかに対し提案する。

「この女が二度と襲ってこないよう、始末をつける必要がある。だが俺がそれをやれば、この女は死んでしまうだろうね」
「そ、それは駄目です!」
「ならおまえがやるんだ。この女がもう俺たちに襲ってこないよう、死なない程度に対策すればいい」
「そんなの、どうやって……」
「武器ならそこら中にある。四肢をもぎ取るでも、目を潰すでも、好きにすればいいさ」

 路上に転がるのこぎりや釘、使い方によっては十分な凶器となる大工道具の数々を見て、ゆたかは狼狽する。
 自身に与えられた役割の重さを思い、途端に足が竦んだ。そのままへなへなと崩れ落ちてしまう。

「ふん……兄さんに守られていたような娘には、少し意地悪な提案だったね。まあいい、どのみちこの女は殺すさ」

 茫然自失するゆたかの横を通り過ぎ、シンヤは再びはやてに殺意を向けた。
 乾いたアスファルトを一歩、靴音が打ち鳴らす。散らばった釘を踏みつけて、金属的な音も鳴った。
 音量は一定感覚で上がっていき、はやてへの危険信号となって聴覚を駆け巡る。
 シンヤとの距離が近づくにつれ、はやての柔肌に震えが走った。
 同時に、今朝方味わったばかりの恐怖体験を思い出す。
 悪意と欲望に満ちた、男性の狂気というものを。

「いや……」

 訪れたのは、恐怖。
 レリック事件を追っていた際、もっぱらの敵となっていたガジェットドローンのような機械ではなく。
 魔導師としての鍛錬を積んでいた期間、厳しくも的確な指導を施してくれた身内のものでもない。
 あのとき、裸身の自分に襲い掛かった男のような……悪意ある人間の、狂気。
 突き刺さる感情は、ダイレクトにはやての脳髄を襲った。

「いやや……こな、こない、で……」
142: ボクのセカイをまもるヒト(前編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/03(木) 14:19:52 ID:ru52p/us(12/27)調 AAS
 ――ここで、<ギアス>対象者における一つのケースを挙げておく。
 ある博愛主義者の女性がいた。その女性は、<ギアス>によって『虐殺』を命じられた。
 <ギアス>とは絶対遵守の力である。当然その女性は虐殺を実行したが……当初は、それに抗ったのである。
 <ギアス>の拒絶。絶対遵守とされる力に、唯一人間の意志が抗った、一種の可能性だった。
 このケースから鑑みれるのは、強い意識は時に<ギアス>を凌駕するということである。
 さきほどのマタタビの例もそれに当てはまる。
 本来<ギアス>の対象にはならない非人間、獣であることを抜きに考えても、怒りという感情は<ギアス>看破の一因となった。
 もっとも彼の起こした行動は、理念こそ不明なれど『排除』という元々の命令に背いてはいない。
 マタタビに関して、真に<ギアス>の拒絶に成功したかどうかといえば、事実は知れない。
 ただ、八神はやての場合。

 シンヤの放つ殺気、過去のトラウマ、双方から発生する恐怖。
 もしくは、命令遂行に対する成功確率を悟ったか。
 それらの感情が、『排除』という思考を塗りつぶし、はやてに『戦意喪失』という結果を齎した。
 これが<ギアス>を看破したと言えるのかどうかは、定かでない。

「こないでぇぇぇぇぇ!!」

 涙ぐみながら叫ぶが、シンヤは足を止めはしなかった。
 無手のまま、しかしその手には鋭敏な殺意を宿し、はやての首元に手が伸ばされる。
 振り払う気力はなく、震えのせいで微動することすらままならなかった。

「――――」

 顔面を蒼白にして、はやては声にならない絶叫を上げた。

 と、

「ッッつ!?」

 シンヤの姿が、急に消えた。

 いや、“吹き飛ばされた”。

 クレア・スタンフィールドの飛び蹴りを受けて。

 ◇ ◇ ◇
143: 2008/01/03(木) 14:20:04 ID:M5IsZvAT(6/14)調 AAS
   
144: 2008/01/03(木) 14:20:12 ID:v8aVOay+(4/13)調 AAS
 
145: ボクのセカイをまもるヒト(後編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/03(木) 14:21:17 ID:ru52p/us(13/27)調 AAS
 クレア・スタンフィールドは、憤慨していた。
 理由はただ一つ、大工仕事を教えてくれた猫が殺され、惚れた女が殺されそうになったからだ。

「おまえは、さっきの」

 クレアに蹴り飛ばされ地を滑ったシンヤが、起き上がり様に言う。

「『線路の影をなぞる者(レイルトレーサー)』って知ってるか?」

 腰に巻いたタオルを風にはためかせて、クレアがシンヤに向けて言う。

「列車の後を追いかける怪物の話だ。そいつは闇に紛れて様々な形を取りながら、少しずつ列車に近づいてくる。
 列車に追いつくとだ。そいつは車内の人間を一人ずつ消していく。そして最後にはみんな消えて、列車自体がなくなってしまう。
 で、その『線路の影をなぞる者』が来ちまった場合なんだが、助かる方法が一つだけある。なんだと思う?」
「……なんの話をしている」

 シンヤとクレア、双方ともに睨み合い、片方は憮然として、片方は鼻を鳴らした。

「ま、今は日中だがな。それに、辺りには列車どころか線路の一本も見当たらない」

 クレアは自嘲気味に笑うと、チラリと視線を横に向ける。
 座り込んだはやては、上目遣いでクレアを見上げ、声も出せずに口を開いている。
 安心すると同時に、怒りは増した。

「なら『線路の影をなぞる者』を名乗るのはちょっと違うな。じゃあ普通に『葡萄酒(ヴィーノ)』でどうだ?」
「なんの話か、と聞いている」

 クレアの言葉に、見るからに苛立つシンヤ。
 しかし構わず、クレアは話を進める。

「いや、よく考えたら『葡萄酒』なんて名は裏の人間じゃなきゃ知らないか。なら別にいいや、ただのクレアで。
 俺と、俺の世界と、俺の世界の中心に席を予約している女を汚したおまえを殺す、クレア・スタンフィールドで」

「……気にいらないな!」

 シンヤが仕掛ける。
 無手のまま走り出し、同じく無手、どころか身につけたものはタオル一枚というクレアに対し、拳を放つ。
 クレアはそれを余裕で避け、顔面の横にきたところで手首を掴み取った。

「焦るなよ。これは俺なりの慈悲ってやつだ。俺はおまえを殺すが、さすがに名も知らない人間に殺されるのはかわいそうだろう?」
「俺が、おまえに殺されるって? はっ、随分とおもしろいことを言ってくれるじゃないか……人間ごときが!」

 右腕を掴まれたまま、シンヤが蹴りを放つ。
 が、その蹴りは空を切り――どころか、勢いづいて一転してしまう。
 気が付けば、シンヤの体は宙を舞っていた。
 それがあの一瞬、シンヤの足の動作を見切り、クレアが腕の力だけでシンヤを投げ飛ばした結果だった。
 宙を舞ったシンヤは、驚きの表情で着地し、すぐに歯噛みする。
 自身の放った蹴りを、ありえない方法で回避された事実、それに悔しさを覚えるかのように。
 しかし、逆に驚嘆したのはクレアだった。

「よく着地できたな。かなり回転を加えたつもりだったんだが」
「そっちこそ、人間にしてはいい動きをするじゃないか」
146: 2008/01/03(木) 14:21:25 ID:a+HUIujO(2/2)調 AAS

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150: ボクのセカイをまもるヒト(後編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/03(木) 14:23:11 ID:ru52p/us(14/27)調 AAS
 互いに賛嘆ではあったが、クレアからは余裕、シンヤからは苛立ちの感情が窺える。

「クレアさん……どうして?」

 火花を散らす男二人に、脱力したままのはやてが声だけで割り込む。
 先ほどの邂逅、クレアは<ギアス>の命ずるままに、エリア中心部へと向かったはずだった。
 はやてが<ギアス>の事実を知らないにしても、クレアがここに舞い戻ってくる理由はないと思い込んでいた。
 しかしクレアは、はやてのピンチという絶好のタイミングで駆けつけ、エリア中心部へ向かう足を止めている。

「マタタビの悲鳴を聞いた。それで、予感したんだ。あの二人のどちらかが、『我々に害を成す存在』だったんじゃないかってな」

 あのときは、はやての側にいる時点で、勧誘対象とも排除対象とも見なしていなかった。
 だがその後、響いてきたマタタビの悲鳴。
 エリア中心部へ向かう過程、我々に害を成す存在、二つのキーワードが咄嗟に頭を焼き、さらに、

「それに、はやてのことが心配だったしな」

 ――これが、クレア・スタンフィールドがこの場に舞い戻った最大の要因である。
 先の段階でマタタビがシンヤを『害成す存在』だと判断したように、『エリア中心部を目指せ』という命令は、あくまでもクレア個人へのものである。
 よって、クレアがはやてやマタタビを置いて、一足進んだのは道理。
 しかし実際のところ、クレアははやてやマタタビと完全に距離を取っていたわけではない。悲鳴が聞こえる範囲に留まっていたのだ。
 これはひとえに、『エリア中心部へ向かう』という命令の同列に、『はやての安全を確保する』という意志があったためである。
 もちろん、はやての身を案じることに関しては、<ギアス>の力は関与していない。これはあくまでも、クレアの意志である。
 優先度で言えば、はやてを置き去りにしてでもエリア中心部を目指すだろう――それが、クレア以外の人間だったら。

 クレア・スタンフィールドという男は、激しく自信過剰である。世界は俺のために回っている、と思えるほどに。
 そんなクレアに、『Aを優先するためにBを蔑ろにする』なんていう選択肢は存在しない。
 取らないのではなく、『端から用意されていない』のだ。
『エリア中心部へ向かうためにはやての危険を見過ごす』よりは、『はやても助けてそれからエリア中心部へ向かう』。
 客観的に見れば優先事項が逆転し、<ギアス>を凌駕しているようにも思えるが、クレアにとってはそんなことはない。
 はやてを助けてそれからエリア中心部へ向かっても、時間に差異は生じない。
 なぜなら、彼の世界はそういう風にできているから。
 簡単に説明するならば、クレアが馬鹿だから。
 世界は自分に都合がいいようにできていると、心の底から思い認識しているからこそ、優先順位なんてものが生まれず、<ギアス>にも矛盾しない行動を取る。
 付け加えれば、こうやってシンヤと対峙していることも、我々(=マタタビとはやて)に害を成す存在を排除する(=殺す)という命令に帰結する。
 すべてが同価値であり、等しくこなせる(と思い込んでいる)からこそ、クレアはここに立っている。

「ふんっ、要は女のためってことだろう。人間にしてはやるようだが、戦う理由はまったく馬鹿らしいね!」
「それは違うぞ。おまえを殺す理由は、はやてを守る以外にも二つある。
 一つ、おまえが俺たちに害を成す存在であり、なんだか排除しなくちゃいけない気がするから。
 二つ、おまえは俺に大工のイロハを教えてくれたマタタビを殺した。
 それに、女のために戦うのはおまえも同じじゃないか。照れ隠しか知らんが、そんなこと言ったらその娘も傷つくぞ」

 そう言って、クレアは道路脇で硬直したままのゆたかを指差した。
 いきなりの注目に、ゆたかがおっかなびっくりした声をあげる。

「えと……あの……違います……わたしと、シンヤさんは、その……」

 なぜか、顔が赤くなっていた。

「あー、なるほど」
「……なにを言っているのかわからないが、侮辱と受け取っておこう」
「おまえあれだろ? その娘に片思いしてるんだろ? もしくはその逆か。わかるぞ、俺も絶賛片思い中だから」

 的外れなことを言うクレアに、ついにシンヤの怒りは臨界点を迎えた。
151: 2008/01/03(木) 14:23:21 ID:v8aVOay+(6/13)調 AAS
 
152: 2008/01/03(木) 14:24:52 ID:v8aVOay+(7/13)調 AAS
 
153: 2008/01/03(木) 14:24:58 ID:M5IsZvAT(8/14)調 AAS
   
154: ボクのセカイをまもるヒト(後編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/03(木) 14:25:31 ID:ru52p/us(15/27)調 AAS
「死ねッ!」

 瞬時に斧を抜き取り、クレアに襲い掛かる。
 クレアは足元に転がっていたのこぎりを拾い上げ、シンヤの放つ一閃を防ぐ。
 体重を乗せた重い一撃が、のこぎりの薄い刃にぶつかるが、その衝撃は破壊には至らない。

「武器を振るならそんながむしゃらに振るな。力に任せるだけじゃ斬れるものも斬れないぞ」

 のこぎりは刃こそ備わってはいるが、その本質は人を斬る武器ではなく、木材の切断に用いられる工具である。
 それが斧を、テックランサーの衝撃に堪えうるなど、普通では考えられない。
 が、そこは『葡萄酒』としての技量が勝った。クレアは斧の一撃をただ漫然と受けるのではなく、衝撃が反れる方向に流したのである。

「調子に乗るのも!」

 斧の重量に負けず、シンヤは軽快な動作で二撃目に入る。
 するとクレアはなにを思ったか、のこぎりを投げ捨て、無手の状態でシンヤを待ち構えた。
 斧が縦一閃に振り下ろされる。その先にクレアはいなかった。

「なっ!?」

 敵を見失い、シンヤは斧を振り下ろし切る前に手を止める。
 すぐに後ろを振り向くが、クレアの反応速度はそれをも凌ぎ、

「がっ!?」

 顔面にワンパンチ。一瞬だけ垣間見えた拳が視界を塞ぎ、暗転する。
 血の痰を吐きすぐに目を開くが、その僅かな時間で、クレアはまたもや姿を消失させていた。
 また後ろか――直感で振り向くシンヤに、

「プレゼントだ」

 声は、上から浴びせられた。
 反射的に、シンヤは斧を上空へ。
 しかしその頃にはクレアは明後日の方向に着地しており、刃はまた虚しく空を斬る。

「似合ってるぞ」

 クレアは含み笑いを浮かべながら、シンヤの頭部を示した。
 そして気づく。いつの間にか――おそらくは二撃目を跳んで避けたときか――シンヤの頭部に、古びた赤いバイザーが乗せられていることに。
 店長、と日本語で記されたバイザーを握りつぶして、シンヤは歯軋りする。
 もはや怒りを言葉に表現するのももどかしくなって、シンヤは阿修羅の形相で挑みかかった。

「やれやれ」

 余裕綽々で溜め息をつくクレア。シンヤが迫っているのもお構いなしに、足元に散らばった工具の中からある木片に目をやる。
 腰を曲げ、その木片を掴み取り、姿勢を戻した頃には、シンヤが眼前で斧を振っていた。
 クレアは斧が握られた手首を狙い、“足の動作だけで”蹴りを入れた。
155: 2008/01/03(木) 14:26:32 ID:M5IsZvAT(9/14)調 AAS
     
156: 2008/01/03(木) 14:27:04 ID:v8aVOay+(8/13)調 AAS
 
157: ボクのセカイをまもるヒト(後編) ◆LXe12sNRSs 2008/01/03(木) 14:27:19 ID:ru52p/us(16/27)調 AAS
「!?」

 瞬間、シンヤは諸手に痺れを覚え、両手でしっかりと握っていたはずの斧が、上空に蹴り飛ばされたということを悟った。
 認めがたい。が、さっさと認めて次の行動に移らなければ、この男に後れを取る。そこまで、考えて。
 結果的に、シンヤはクレアに後れを取った。

「言ったろう。振るだけじゃ駄目だって」

 次の瞬間にはもう、クレアは無手となったシンヤの後ろに回りこみ、右腕を右脇から差し込み首ごとロック、左腕はピンと伸ばされた状態で、全身を拘束した。
 右腕は天へ、左腕は左方へ、シンヤは正面から見て『ト』のような形に固められる。
 シンヤは持ち前の怪力で抗うが、締め方が巧妙なのか、単純にクレアの力が上をいっているのか、ビクともしなかった。
 敏捷性、そして腕力。テックセットをしていないとはいえ、純粋な身体能力で人間に劣っているという事実に、シンヤは驚きを隠せないでいた。
 宙に舞った斧が落ち地に突き刺さる頃、優勢に躍り出たクレアが声を発す。

「あの世にいるマタタビに怒られてしまうかもしれないが」

 それはシンヤにではなく、他意のない独り言のようだった。
 力任せに抗うシンヤを嘲笑うかのように、クレアは右手を、シンヤの左手首に伸ばす。
 結果、シンヤの右脇と首がさらに締まり、呻きが漏れる。

「よく考えれば俺は本職ではないし、問題はないはずだ」

 シンヤの長袖を肘の辺りまで捲くり、手中に収めていたそれを、握りなおす。
 シンヤを拘束する前に、足元から拾った、マタタビの忘れ形見の一つを。

「きっ……さま、なに、を……」

 ままならぬ声で、シンヤが問う。クレアは意に関さず、“それ”をシンヤの右手首に添える。
 あのとき拾い上げた木片――大工道具の一種――小サイズの『鉋』を。
 手首から肘にかけて、一気に引く。

「がああああああああああああああああああ!!」

 さすがのシンヤも、雄叫びを上げた。悲痛が十割を占める、滑稽な叫びを。
 鉋によって削り取られた皮膚が、鮮血を纏いながらひらひらと舞う。
 薄い布状のそれは、鰹節とは違う悪臭を漂わせていた。

「さて、もう一度だ」

 シンヤの腕に刻まれた赤いライン。その隣をなぞるように、クレアがまた鉋をかける。
 職人が木材にかけるのと同じように、右腕の皮膚は綺麗に削れた。
 二度目の悲鳴。
 飛び散った鮮血で、濡れる頬。
 血を浴びたクレアの胸中には、愉悦。
 その見るも無残な光景に、端で傍観者を務めていたゆたかは、卒倒した。

「もう一度」

 最初に刻まれたラインの、今度は逆側から鉋をかける。
 仕事の出来は先ほどと変わらず。マタタビに教え込まれた技術は、シンヤに苦痛を与えるための術として生きた。
 と、四回目に移ろうとしたところで、クレアが違和感に気づく。

「削り具合がいまいちだな。さすがに血で錆びちまうか」
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ぬこの手 ぬこTOP 0.249s