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211: 2010/04/13(火) 06:28:37 ID:s0KP1gnIO携(1)調 AAS
てるたいの時を思い出した
あの人は結局自サイト作ってここにメアド晒していなくなったよね
212: 2010/04/13(火) 08:08:35 ID:sB4ScfiN0(1)調 AAS
相談・議論等は避難所の掲示板で
外部リンク:s.z-z.jp
213: 2010/04/13(火) 21:10:33 ID:b75I3//e0(1/9)調 AA×

214: 花の下 1/7 2010/04/13(火) 21:11:07 ID:b75I3//e0(2/9)調 AAS
修練場の音が遠い。

泉池を渡る風が頬を撫でる。火照った肌に、翠籐の冷たさが心地よい。
「どこでくたばっているかと思えば、ここだったか」
降る声に、山艶はうすく目を開けた。
四阿の軒からそそぐ逆光を背に、長身の人影が屈み込む。
口元へ手が伸びて、仄かな甘い香が鼻先をかすめ、抉じ開けられた口中へ、甘い果実の一粒が落とし込まれた。
噛み締めれば、冷たい果汁が渇いた喉を潤し、心地よさに知らず、溜息が漏れる。
「朝課で無様を晒したそうだな」
ようやく人心地がついて、頭上の兄を仰ぎ、山艶は緩慢に口を開いた。
「初手からかわす一方だったんですが、間合いが取れぬうちに打ち込まれ…
十合までは流したのですが、とうとう受け損ねてまともに喰らいました」
「宋江相手に十合ならまあ、善戦した方だが。失神したとは情けない」
すげなく言い捨て、梁皇は露台の端に腰を下ろした。手にした果実一掴みを、無造作に白磁の鉢へ放り込む。
「受け切れぬなら押し返せ」
「無茶を仰る…」
年の近い兄弟だが、膂力は親子ほども違う。どだい無理な注文と言えよう。
肘をつき身を起こしかけて、山艶は引きつった声を呑んだ。
「痛…ッ」
向けば、末弟の泊鳳が小さな手で兄の編み髪の端を握り、屈託のない笑顔でこちらを見上げている。
「あーんちゃあ」
「来たな、やんちゃ坊主めが」
梁皇は、一回り下の末弟へ手を伸ばし、むんずと襟首を掴んで、猫の子のようにぶら下げた。
手足をじたばたさせて喜ぶ腕白小僧を格好だけは睨めつけながら、その口へ冷えた茘枝の一粒を放り込む。
「人の髪を引っ張るなと、何度言えばわかる?」
兄の胡座へ放り落とされるも、粗雑な扱いにめげもせず、泊鳳は目を輝かせて果物鉢へ手を伸ばす。
よちよち歩きの幼子から見れば小山のような兄の脚を乗り越えんと、無心にもがく様が可笑しく、
山艶は痛みも忘れて苦笑した。
215: 花の下 2/7 2010/04/13(火) 21:11:58 ID:b75I3//e0(3/9)調 AAS
「全く、この豆台風は」
もはや眼前の水菓しか頭にない弟は放っておいて、引きつれた編み髪を解きほぐしにかかれば、
籐椅子に寝そべった兄が口を出す。
「結い上げれば良いものを。くそガキに引き抜かれずに済む」
当のくそガキはと言えば、兄の脚の間へ陣取って果実の鉢を抱え、
果汁で前掛けが汚れるのもおかまいなし、口いっぱいに戦利品を頬張っている。
「結えないんです」
すいと手を伸べ、山艶は兄の髪から銀の簪を引き抜いた。
「何だ、断りもなく」
「いい細工ですね、どこの妓楼の姑女からですか」
咄嗟、返答に詰まった兄を後目に、山艶は同じく無断拝借した?を銜え、解いた髪をくるくると巻き上げた。
兄と同じ総角に髪を纏めると簪を挿して留め、?で巻き込む。
「ほら、ね」
結ぶに足りない布端をつまみ、山艶は兄の方へ向いて見せた。
「髪が多すぎて、?に巻き切れないんです」
「髪が足らずに義髻を乗せている妓女が見たなら泣いて羨ましがろうな」
「双尤ぐらいなら自前で結えますよ」
?を解き、簪を引き抜いて軽く頭を振る。長い黒髪が滝の如く流れ落ちた。
「もういっそ、剪ろうかと」
「武髪でも結うか」
「夜目遠目酔目で女に見えないなら、この際何でも」
「…またか」
鉢から棗をつまみかけた手を止め、梁皇は眉を寄せて弟を見やった。
216: 花の下 3/7 2010/04/13(火) 21:12:52 ID:b75I3//e0(4/9)調 AAS
「どこの与太者だ」
「さあ」
「山艶!」
語気を強める兄と目を合わせ、少女とまごう細面の弟はそらっとぼけた風に言う。
「全員叩きのめして河に放り込んだ後は、とっとと帰って来ましたから。顔も見ておりません」
「単騎で、か?」
「はい」
面映ゆいような笑顔で頷く弟をみとめ、梁皇は口の端を上げた。摘んだ棗を口へ放り込みつつ、満足気に嘯く。
「やっと、か。──ハッ、当然だ」
弟の勝ちを耳にして、我が事の如く得意気に誇る兄に、山艶はくすぐったいような思いで笑みかけた。
「もう少し背が伸びれば、一人歩きで酔漢が寄ってくる事もなくなりましょう。
 差し当たってそれまで、花街では男とわかるなりで」
「要らぬ!」
「え?」
弟の言葉を鋭く遮り、梁皇は声を荒げた。戸惑い見返す山艶を、兄のきついまなこが射抜く。
「痴れ者共に譲る必要がどこにある。傍の目におもねるな!
花街だろうとどこだろうと、髪を下げて長衣で歩け、絡む馬鹿は片端から叩き殺して構わぬ!」
「そのような無茶を」
弟の苦笑にも引き下がらず、梁皇は尚も言い募った。
「一人残らず打ち伏せれば、お前の見てくれをとやかくいう者はなくなろう」
「兄上と肩を並べられるようになったら考えます」
「いつまで待たせる?」
驚きに兄と目を合わせたはずみ、編みかけた髪が手の中で跳ね、結い紐が飛んだ。
黒絹の髪がさらりと肩へ流れ落ちる。
「──私を首領にでもなさるおつもりか?」
「何がおかしい、当然のことだ」
思わずまじまじと見詰め返すも、日頃から冗談の大嫌いな梁皇の目に、戯言の色は欠片もない。
しばし言葉を告げず、──笑っていいのか、困っていいのか──山艶は途方に暮れた。
四阿を吹き抜ける風が、梨の花を舞い散らす。
217: 花の下 4/7 2010/04/13(火) 21:13:42 ID:b75I3//e0(5/9)調 AAS
腹の脹れた末弟は、長兄の脚にもたれ、とうにぐっすり眠り込んでいた。
兄の長衣の端へ投げ出されたちいさな手指は、果実のしずくで斑になっている。
続く言葉を探しあぐね、とりたててどうという理由もなく、山艶は弟の手に触れた。
玩具のように小さな指がきちんと五本揃っているのは不思議なほどで、
つまんでみれば、もみじの手のひらはぷわぷわと柔らかく指を押し戻す。
暫しそうして、小さな手を玩んでいた白い繊手に、下から長兄の手が触れた。
肉厚でいかつい梁皇の手の中、山艶の手が如何にも華奢に見えるのは否めない。
日に焼けた肉厚な手指が、戯れにしなやかな手指をとらえ、掌を弄ぶのを、山艶はただ無言で眺めやっていた。
成人間近の長兄に比べれば殊更、小柄な体躯も四肢も、
他人に触れられることを好かない──ことに男には──癖の山艶でありながら、兄の手だけは不快と感じないのは、
自分に触れるその様が、愛おしさからつい末弟に触れる自分自身とそっくり同じだからだろう。

仰向けに寝転がった兄の髷が、山艶の腿に当たって崩れ、蓬々と乱れ散った。
無言で簪を拾い、懐から象牙の櫛を出して、山艶は兄の髪を解き、梳いて元通り結いなおす。
「いい細工の櫛だな、どこの妓女からだ」
兄の揶揄に、山艶は無言の微笑で答えた。
暫しどちらも何も言わず、ちょうど真上から兄の顔を覗き込むかたち、俯いた弟の肩へ、
ふと挙げられた手の甲が触れる。
戯れに、こぼれ落ちる黒髪を受け、繰り返し手櫛で梳く兄の手の甲へ、山艶は軽く唇を当てた。
無骨な指先が、唇から頬へ陶磁の肌をなぞり、艶やかな前髪を払った。

気慰みに触れられる弟の物思いを、この長兄が思いやることは決してあるまい。
傲慢で冷徹、尊大で横柄、我侭で短慮で、時に浅薄ですらあるこの年嵩の男を、何ゆえ自分は嫌いになれないのか?
戯れに触れられる事が我慢ならず、いっそ切ろうと思った髪を、
こうして手慰みにされることに、心地よさの他感じないのはなぜか。
不遜さにも気短さにも、辟易はしても疎ましくは思えない。
それを目にして、時に胸が苦しくなるほどやるせなくとも、憎めようはずがない。
それが悪意を持って自分に向いた事は、ただ一度としてないのだから。
──血の繋がった兄弟であればこそ。
218: 花の下 5/7 2010/04/13(火) 21:14:39 ID:b75I3//e0(6/9)調 AAS
巡る想いを、けたたましい泣き声が断ち切った。

「…泊鳳、」
「泣くな喧しい!」
梁皇は瞬時に身を起こし、景気のいい寝返りを繰り返した挙句
寝椅子から転げ落ちた末弟の襟首を掴んで拾い上げる。
抱き上げられて、兄の肩口にしがみつき、あらん限りの声を張り上げ泣き喚く弟の額を、梁皇はぞんざいに撫でた。
「ただのたんこぶだ、大げさに喚くな。唾でもつけておけば治る」
言葉どおり、ぺろりと額を舐められ、まだしゃくりあげつつも泊鳳は泣き止み、
小さなこぶしで涙に濡れた頬をこすった。
「…あんちゃ」
「何だ」
「はら減った」
深く嘆息し、幼い弟を軽々と肩へ乗せて、梁皇はすっと立ち上がった。
「全くお前は、将来さぞ大物になろうな。…行くか、ぼちぼち昼だろう」
219: 花の下 6/7 2010/04/13(火) 21:15:52 ID:b75I3//e0(7/9)調 AAS
「兄上」
立ち上がり、先へ行く背を追って、隣へ歩き出しつつ山艶は呼ぶ。
「午後から稽古をつけていただけますか」
「どういう風の吹き回しだ」
「…兄上の隣に立ちたくなりました」
「やっとか」
得意気に応じる兄へ、はにかみつつ笑みかけながら、山艶の心中にふとひとしずく、苦いような思いが過ぎった。
耳従わず省みず、余人に媚びるところのない兄の性情は、首領としての求心力という裨益と共に、
数知れぬ敵をももたらすだろう。
陰日向と添うて立つことで、それを和らげられるなら…当の兄には、要らぬでしゃばりと叱責されようとも。

優でた若年者と認められてはいても、未だ上位十六騎に数えられぬ身に、それはまだ、遠い望みだけれど。
「もう誰にも負けたくないのです。兄上の外は」
「無論のことだ。この兄に並ぼうという身で、有象無象の輩相手に無様を晒してみるがいい、
この手で叩き斬ってやろうほどに」
「兄上の手にかかるなら、何の後悔がありましょう」
「…くだらぬ冗談を言うな」
「本当です。この指一本、髪一筋に至るまで、元より兄上のもの」
「当然だ」
酷薄な唇の端を上げ、梁皇は言い放った。
220: 花の下 7/7 2010/04/13(火) 21:17:13 ID:b75I3//e0(8/9)調 AAS
走馬燈の欠片が、思考の隅を影と滑り落ちる。
今際の刻みになぜ、あの遠い日を思い出したのか。
…あの日の言葉に、嘘はなかった。
けれど。

「悔いはない……………」
世界が傾ぐ。

伏して乞おうとも、兄は許すまい。この『裏切り』を。
けれど。

薄れ行く視界の端、勝者が踵を返す。
兄の背を追って、その肩に並び。共に数多の戦を勝ち渡って──この敗地に伏す今、
死の淵に沈まんとするこの際の、拳士としての自分の、これもまた偽らざる本心だったから。
──詫びはすまい。

『悔いは…ない』
漆黒のあぎとが口を開き、何もかもを呑んだ。
221: 2010/04/13(火) 21:17:56 ID:b75I3//e0(9/9)調 AA×

222
(1): 2010/04/14(水) 03:07:27 ID:Fwi27QQF0(1/2)調 AAS
外部リンク:www.k-tropicana.com
ト口ピ力─ナ100%果物汁のシェフ ぶどう×りんご de ほのぼの

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

いつものように赤い表紙の本を手にして、寝室を出てリビングキッチンに向かう。
リビングからは弾んだ息遣いと、カウントの声が聞こえた。どうやら今日も彼の方が早起きだったらしい。
「998……999……1000」
キリのいいカウントを待ってやって、リビングへと入る。
頭に手を置いたスクワットの体勢から振り返って、私の顔を見るなり暑苦しいイギリス英語でこう言った。
「なんだ! そんなスイートな寝癖、見たことねーよ」
そんな馬鹿な。ちゃんと直してきたはず。
思わず頭を撫で付けた。そして眼鏡のブリッジを指で押し上げる。
そもそも、朝一番に人の顔を見てたらおはようぐらい言えないのかね。
「ボンジュール」
あくまでも冷静に。ペースを乱されては堪らない。
「俺をドキドキさせてどうするつもりだ?」
……ドキドキしているのなら、それはスクワットのせいじゃないのかい。
私は少し笑った。笑ったというよりは小さく息を吐いたようなものだ。
彼は私のそんな態度を意に介さない様子で、朝食を作ってくれると言う。
「『つぶつぶスイートコーンとチーズのパンケーキ』だぜ」
得意げに指を立ててはいるが。
「前回作ってくれたのは何だったかな……」
「前回?『ツナとオニオンのパンケーキ』?」
「ああ、そうだったね」
「パンケーキは嫌いかい?」
「嫌いではないよ。この間のも美味しかったとも」
そう、イギリス人の料理に期待はしちゃいないよ。
彼は腕捲りをしてキッチンに立つ。
では私はソファに座って、本の続きでも読んで、優雅に待たせて貰おうか。
ああ、またフォークで混ぜたりして……私には随分とがさつに見えるが、彼はそれが普通のようだ。
彼がそれでいいなら、特に注意する事もあるまい。
223: 2010/04/14(水) 03:08:01 ID:Fwi27QQF0(2/2)調 AAS
春のやわらかな朝日の中でページを進めていくと、やがてバターのいい香りがしてきた。
そしてチーズの溶ける香りとソーセージの焼ける香り。急に空腹を意識させられる。
キッチンに目を向けると、鼻歌まじりに皿にピクルスを乗せている。
そろそろ出来上がるようだ。私は本を閉じた。
「できたぞ」
テーブルのセッティングは私も手伝おう。
そしていつものト口ピカ─ナ100%ジュース。彼はグレープ。私にはアップル。
彼は自分でなみなみと注いで飲んだ。喉が渇いていたらしい。
パンケーキをナイフとフォークで切り分けて、「うまそう」と彼は自分で言い、口に運んで満足そうに頷いて「コーンとチーズのスイートなサプライズ」などと得意げだ。
では、私も戴こう。
パンケーキにナイフを入れると溶けたチーズとスイートコーンがとろりと溢れて、私の食欲をそそった。
ふん。確かに美味しい。これはサプライズかもしれないな。
そう伝えて彼が嬉しそうにはにかむのを見て、私はアップルジュールを一口飲んだ。
「ねえ。今、君にキスしたらリンゴの味がするんだろうな」
……っ。
思わず噴きそうになる。優雅な朝になんて似合わない。
ずれてはいないが眼鏡のブリッジを指で押し上げて、彼の顔を見返す。
目が合うと、うっとりと笑みを浮かべてウインクまでしてくる……。
「ねえ、君。フランス人を口説きたいなら、もうちょっと凝った台詞を考えたらどうかな」
「ストレートな表現は嫌いかい?」
「……実は、そう嫌いではない」
重なった彼の唇は、甘いグレープの香りがした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
224: ドラマ紅将軍の凱旋 1/3 2010/04/14(水) 04:05:26 ID:GYIIHPkrO携(1/3)調 AAS
白+紅と白→愚痴。白ヘタレ注意
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

僕にとって、早水は偶像であり理想でもあった。そう認めることに異論はない。口に出して言うことでもない。

医療現場から官庁へと立ち位置をシフトさせ、悪習の濃い行政を改革していくことに新たな理想を見出だした僕にとって、早水は遠い日の自分であり、もう一人の自分でもあった。
胸中に秘めた、最高の友人だった。
だからこそ――早水が理想を腐らせ、後戻りができないのであれば、引導は自分の手で渡すべきだと、そう思っていた。

正規の監査業務を終えても尚、「お泊りセット」を愚/痴外来に置いているのは、僕なりのグッ/チーへの甘えだった。
もう業務は終わったんでしょう、なんで居座るんですか。
そう、グッ/チーに問われれば、真の「監査」を告げることができる。以前の事件の時のように、共に真相究明に乗り出すことになる。
また、彼に救われ、彼をどん底にたたき落とすことに、なる。
それでも。
225: ドラマ紅将軍の凱旋 2/3 2010/04/14(水) 04:06:23 ID:GYIIHPkrO携(2/3)調 AAS
僕には分かっている。これは自分一人が抱えるべき問題だと。あのお人よしで、涙もろい、情に篤い不器用な神経内科医は、贈収賄の泥沼とは無縁なのだから。
それでも――否、だからこそ。

グッ/チーは、強い。
小動物じみた外観や、他人に親身になりすぎて流す涙に騙されそうになるが、精神構造は柔軟で、受容性に富む。
彼といる時、僕は安定する。アクセルしか積んでいない僕の、外付けブレーキでありニトロたる存在。足元を照らす確かな光。

だからこそ、過去、僕は飛べた。これからも、飛び続けられる。
だからこそ――巻き込むのだ。
甘えともSOSとも悟られない、傲慢さで。

お前は見付けられなかったのか、早水。
僕にとってのグッ/チーを。

なにもない屋上と、せき立てられるモニタだらけの司令室を思い浮かべ、僕は嘆息する。
飴玉の搭とドクターヘリの模型、海の底のような青い暗さ。それが早水の今であり、僕の過去の理想だとは、認めたくなかった。
哀しすぎる。
それがただの感傷や邪推だとしても。
226: ドラマ紅将軍の凱旋 3/3 2010/04/14(水) 04:07:08 ID:GYIIHPkrO携(3/3)調 AAS
愚/痴外来で主を待ち続けていたコーヒーカップを見ながら、僕は目を閉じた。
すべてが終わった後で、早水には告げておこうと決めた。
僕はあの日、お前一人に理想を負わせて逃げた、思い人になにもできない――ただの臆病者なのだ、と。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

初投下につき不細工陳謝。アーキンチョウシタ
227
(1): 2010/04/14(水) 12:53:38 ID:3p/u5xuT0(1)調 AAS
うざい
228: 2010/04/14(水) 13:00:34 ID:QcCnHMy5O携(1)調 AAS
>201
遅レスだけどGJ!!!

>吐露ピカーナな姉さん
あまりの甘さに激萌えた。
ちょっとコンビニいってくるわ
229: 2010/04/14(水) 16:57:46 ID:aTy1a7Tw0(1)調 AAS
>>227
( ´∀`)<オマエモナー
230
(2): ※ナマモノ注意!!『あなたの言いなり』1/4 2010/04/14(水) 19:56:06 ID:t+yR5r9n0(1/6)調 AA×

231: ※ナマモノ注意!!『あなたの言いなり』2/4 2010/04/14(水) 19:57:44 ID:t+yR5r9n0(2/6)調 AAS
 もともと、最初から二人でくるはずだったのだ。
春スノボは国内でも空いてていいよ、と言ったのは楽都で、行きたいとねだったのは灰土だった。
もちろん、可愛い彼のおねだりに抵抗する理由はなく、楽都はさっそく旅の一から十までを手配した。
けれど、急な打ち合わせが入ったものだから、灰土だけ先に行かせたのだ。
そうしたら、今日の昼。
『がっちゃん、オレひとりで寒いよ、淋しいよ、早くきてよー』
打ち合わせ中に、そんな電話がかかってきて。
楽都は半ば強引に、というかほぼ強制的に打ち合わせを切り上げて、飛行機に飛び乗った。
で、息も絶え絶えに駆けつけてみたところ、呼びつけた本人から出たのは冒頭の一言、と言うわけだ。

「ごめんね。これ、飲む?」
灰土が差し出したのは、今まで自分が飲んでいた缶コーヒー。
受け取ろうとしたところで、彼は突然、すっくと立ち上がった。
「ごめん!飲みさしじゃ嫌やんな!?新しいの買ってくる!」
自販機に向かって走っていく灰土の後姿を、あっけに取られてしばし見送る。
わがままは言うくせに、なんでこんな小さなことには気を遣うのだろう。
それから、楽都は小さく笑って、置き去りにされた飲みさしのコーヒーに口をつけた。
232: ※ナマモノ注意!!『あなたの言いなり』3/4 2010/04/14(水) 19:58:30 ID:t+yR5r9n0(3/6)調 AAS
 ナイター終了までまだもう少しあるから、と、二人はゲレンデへ繰り出した。
あたりはもう、紫色の夕闇に包まれていて、どこか幻想的な雰囲気だ。
上級者用リフトで頂上まで登ると、見下ろす景色は、遠くに街の明かり、近くに白い雪が煌いて絶景だ。
「がっちゃーん?先いくで?」
「ん、ああ・・・」
するり、と滑り出す灰土の後姿に目を奪われる。
薄紫の空間を、小さな黒い影が滑っていく。
「かわいい・・・」
思わず心の声が漏れたことに、本人すら気づいていないのかもしれない。
雪を蹴って、楽都は、前をゆく人を追いかけた。

 雪原を駆ける兎のように、灰土は斜面を颯爽と滑っていく。
それを追いかけていると、狼にでもなったような気分だ。
可愛いくて、綺麗で、すばやくて、捕まえられない黒い兎。
後ろから飛び掛って、引き摺り倒して食べてしまいたい。
そんな、少し物騒な事を考えていると、愛しい黒兎がいきなりこちらを振り返った。
考えていたことがばれたような気がして、楽都は意味もなく手を振ってごまかす。
すると、灰土は、いきなりコースアウトして、林の中へ突っ込んでいった。
「ハイディ・・・?」
 慌てて自分も、後を追う。
程なくして、木々の間にたたずんで、遠くを眺める灰土を見つけた。
隣に並んで、ゴーグルを外す。
「どうしたの、灰土」
「がっちゃん、見て見て!」
233: ※ナマモノ注意!!『あなたの言いなり』4/4 2010/04/14(水) 19:59:16 ID:t+yR5r9n0(4/6)調 AAS
 心配そうな楽都とは対照的に、灰土はにこにこ笑って、指をさす。
その先を視線でたどってみると、そこには、山のふもとの夜景が、スパンコールを撒いたようにキラキラと光っていた。
楽都は思わず、その光景に魅入る。灰土は、首をそらせてそんな楽都を見上げた。
「綺麗やろ。昼間見たときも、ええ景色やなぁって思ってん。だから、夜に見たらもっと綺麗かと思って。・・・がっちゃんに見せたかってん」
急に名を呼ばれて視線を戻す。
一瞬、ぱっちりと目が合ったあと、灰土はうつむいてしまった。
「灰土、ありがとう」
「べつに・・・そんな・・・てか、その、こっちこそありがとう」
「何が?」
「オレが呼んだら・・・すぐ、来てくれた」
うつむいた灰土の表情が見えなくて、それが残念で。だから楽都は実力行使に出る事にした。
片手で細い肩を抱いて、もう片方の手で華奢な顎を掴んで、上を向かせる。
こちらを向いた灰土の、頬や目元が赤いのは、寒さのせいだろうか?
「だってオレ、灰土の言いなりだから」
「・・・そうなん?」
「うん。でも、たまには言われて無いこともするよ」
「言われて無いこと?」
灰土の理解が追いつく前に、視界が暗くなる。そして、唇にやわらかい感触。
反射的に目を閉じると、抱きすくめられて、キスが深くなった。
「・・・ん・・・っ」
少し息があがったところで、解放されて、急に唇が冷えた。
二人分の吐息が、白い霧のように流れている。
「言われなくても、灰土のしてほしいこと、解るから」
微笑みと共に告げられて、灰土は思わずニ三度、目をぱちくりさせてから。
楽都の広い胸板に、ぺったりと頬をつけた。
「・・・がっちゃんて、恥ずかしいやつー・・・」
「そうかもね」
満足そうな笑いを含んで肯定されて、灰土は小さくため息をつく。
言いなりになっているのはどっちなのだろうか、と、一瞬頭をよぎった疑問は、この際忘れる事にした。
234: ※ナマモノ注意!!『あなたの言いなり』おわり 2010/04/14(水) 20:02:50 ID:t+yR5r9n0(5/6)調 AA×

235: 2010/04/14(水) 22:12:17 ID:p2Sn3dkC0(1)調 AAS
>>222
ブレンドもフランス系っぽいっから、りんごと通じ合うものありそう
グレープの出だし空気読めない感(スクワット)からまさかの展開に…!
マンゴーも歌があほの子っぽかったwww
236
(1): 2010/04/14(水) 22:48:56 ID:Te2E5oZW0(1)調 AAS
>>230
お。懐かしいエピソードね
237: 2010/04/14(水) 22:53:48 ID:t+yR5r9n0(6/6)調 AAS
>>236
>>230です。わ〜、わかってくれる人がいてよかったです!
なんか久々に聞いたら、再燃しました。
238: 君がまってる 1/5 2010/04/15(木) 00:24:01 ID:3hUGrCJJ0(1/5)調 AAS
誰得な生モノ続き。
美知ーと猟犬D (猟犬D×G前提です)

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

視線の先に見覚えのある後ろ姿をみつけた。
記憶よりも若干細くなっているけれど、ライオンのたてがみのような髪は変わっていない。
駆け足で近寄って声を掛けた。
「端元さん」
振り返ったその人は間違いではなかった。
「お、なんや。美ッ知ーやないか。元気か?」
豪快な笑顔で迎えられた。
初めて会った頃は怖そうな人だと思ったけれど、実際は気さくで面倒見のいい人で、
気軽に美ッ知ーと呼んでくれる。
弐市山さんは未だに美ッ知ーとは呼んでくれないのに。
239: 君がまってる 2/5 2010/04/15(木) 00:24:40 ID:3hUGrCJJ0(2/5)調 AAS
「忙しそうやなぁ、ドラマ見てるで。ええなぁ、あの役」
「あ、はい。おかげ様で……」
何気に弐市山さんと同じ端元さんの言葉に笑ってしまった。
「端元さんにもそう言って頂けて嬉しいです」
わざと引っかかるような言葉を選んで言った。
「ん……にも?」
予想通りに端元さんはその言葉に引っかかってくれた。
勢いでしたとはいえ、相手のいる人にキスして、その相手も知ってる人っていうのは後味悪い。
何とかさらっと伝えられないかと思った。事後承諾とも言うかな。
「ええ、弐市山さんにも同じことを……」
「……タケシに、最近会ったんか」
「昨日マザーで。レコーディングに来ていただいたんです」
マザーという言葉を聞いて、端元さんの顔が一瞬固まったようだった。無理もない。
「ドラマの撮影もやって、レコーディングもかい。そら忙しいなぁ」
「撮影も毎日じゃないですから」
「あ〜……。タケシ、元気そうやった?」
ちょっと聞き辛そうな顔をしている端元さんを見るのは初めてかもしれない。
「レコーディング中は順調でしたよ」
「そうか……」
安心したような顔。でも、実際に感じたことを言ったらどう思うだろう。
「でも……やっぱり複雑だったと思います」
他のスタジオでのレコーディングなら良かったかもしれない。
けれど、ドラマの撮影の合間をぬってレコーディングをしている都合もある。
240: 君がまってる 3/5 2010/04/15(木) 00:25:18 ID:3hUGrCJJ0(3/5)調 AAS
「弐市山さんを苦しめるつもりはなかったんですが、どうしてもあの曲は弐市山さんがよかったんです。
実際に凄く良かったんですよ」
「美ッ知ーが気にすることやないで。あれは俺らの問題なんや。それにタケシが気にし過ぎてるんや」
困ったもんやと笑って言うけれど、そんなところも好きなんだってことがよくわかる。
「ずっと弐市山さんが笑ってくれないんで、驚かそうとキスしたんですけど……。失敗しちゃいました」
「キスしたあ?」
「はい。でもオトコからのキスは端元さんで慣れてるから驚かないって言われて」
「そんなこともしたなぁ」
「それから笑ってくれたんですよ、弐市山さん。猟犬の思い出話で……」
「……そうか」
「はい」
「ありがとな。美ッ知ー」
そう言って端元さんは頭を撫でてくれた。何がどうありがとうなのか分からないけれど。
「ところで」
頭を撫でていた手は、急にがっしりと頭蓋骨を掴んだ。
「タケシとキスしてから、他の誰かとキスしたか?」
「え? してませんけど……」
質問の意味が分からない。
「そんならタケシとキスしてた時間はどれくらいや? あと、唇だけか?」
顔を近づけて、立て続けに質問をする端元さんは昔のイメージの怖いお兄さんになっていた。
「えっと……そんなに長くはしてません。あと……舌はちょこっと入れました……」
目は合わせないで、正直に話した。
「美ッ知ーが手を出すと思わんかったから忠告せんかったけどな。俺の許可なくタケシに手を出すんやないで」
そう言うと端元さんの手は頭の上から顎へと滑り下りてきた。
241: 君がまってる 4/5 2010/04/15(木) 00:26:05 ID:3hUGrCJJ0(4/5)調 AAS
これもデジャヴュというのかな?
昨日自分が弐市山さんにしたように、端元さんにキスされていた。何で?
「これが他の男やったら、ボコボコにしたるとこやけどなぁ。美ッ知ーはドラマあるしな」
だからってキスするか〜普通? ってそう言えばこの人はキス魔だった。弐市山さん限定なはずだけど。
……っていうか。
「予め許可を得たらキスしてもいいんですかっ?」
ドラマの缶戸よろしく手を挙げて聞いてみた。
「タケシを傷付ける心配のない奴なら……」
「キス以上も?」
「それはあいつ自身が許さへんから」
そう言って端元さんはにやりと笑う。よほどの自信があるのか信頼しきっているのか。

「そんなに大事な人なのに、なんで一緒にやらないんですか?」
「元々目指す方向は違ってたからなぁ……」
確かに。弐市山さんは猟犬に居たころから、自分のやりたい音楽とは違うと公言していた。
そして猟犬のファンもいつか脱退してしまうだろうと心配していたらしい。だけど実際は違った。
詳しい内情は知らないけれど、マザーをやめてまで猟犬についていった。
「俺もタケシも、俺らが戻る場所は猟犬やと思ってるから」
胸がちくりと痛む。戻りたいのに戻れない。今を一緒にやってもそれは別のもの。
「僕も、また皆さんが一緒にやってるところ見たいです」
「見るだけでええんか?」
「ゲストに呼んでもらえます? そしたら正装で行きますよ、また」
「タケシが大じじいになる前にまたマザーの王子共演を果たさないとなあ」
端元さんにとっての王子は弐市山さんで、それが永遠に変わらないことは周知の事実だ。
初めて会った時にもそう宣言されているし。一応僕も王子って認めてくれてるのかな。
242: 君がまってる 5/5 2010/04/15(木) 00:27:02 ID:3hUGrCJJ0(5/5)調 AAS
「では……」と会釈をして端元さんに別れを告げて、お互いに自分の目的地へと向かい歩き出した。
2・3歩進んだところで、ふと足を止めた。
……昨日、弐市山さんとキスをして。今日、端元さんとキスをした。弐市山さんと端元さんは…………。
「うぅん……。 これってどんなプレイなの?」
僕を介しての関節キスってやつ?
「人のモノを奪うシュミはないけど、最初から相手にされてないのも悔しいなぁ」
ひとりごちて、僕はまた歩き始めた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

熟年カポの間接キッスプレイの間接にしちゃってごめんね、美知ー
長年萌えていたカポをこんな形で書くことになるとは思わなかったYO!

Gにキスしたのがバレて、Dにキスされる美知ーを妄想しかけて会う機会ないなと
諦めたのに、レコーディング翌日にDに偶然会っていたと知った……美知ー恐ろしい子w
243
(3): 歪み 1/9 2010/04/15(木) 01:59:10 ID:KzQGjoXhO携(1/9)調 AAS
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
タイガードラマの飛来×武智(白)。本編にグルグルしすぎてムショーにエロが書きたくなった。
すいません、ドン暗いです。

夜半も過ぎた頃となると、藩邸内は深い眠りの淵に沈み込んでいるようだった。
すべてが寝静まり、物音一つしない廊下を月明かりだけを頼りに収次郎は進む。
目指す先は武智の部屋だった。
事の発端は昼の内にあった。
皆が集まった所で出た世間話。それは昨今、京の町で続く天誅の騒ぎ。
根底には根深い政治情勢が絡んでいながらも、かまびすしい京の町衆達にとっては
そんな事はどうでもよいのだろう。ただやんやと囃し立てる。
そしてそれに乗じる仲間達の中でも、しかしあの時自分は共に乗る事が出来なかった。
それは数日前に見ていたから。
花街で設けた酒席の中、武智がひそりと口にした名前と、それを聞き姿を消した一人の男の…
伊蔵の背中。
その前にも予兆はあった。
武智が怪訝を口にした、その翌日に消された浪人者。
まさかとは思った。けれど打ち消しようも無かった。
だからもはや居ても立ってもおられず、武智の後を追いかけた。そして二人だけになった場所で、
問おうとしてしかし問いきれず、
244: 歪み 2/9 2010/04/15(木) 02:02:03 ID:KzQGjoXhO携(2/9)調 AAS
廊下の角を曲がり、顔を上げる。
そして見やった先の部屋には、もはや明かりは付いていなかった。
今宵と言われつつも踏ん切りがつかず、手元の仕事を片づけている内に遅くなってしまった。
寝てしまったのなら今日は戻った方がいいのかと、思いつつも一度だけと収次郎は辿りついた
部屋の前、膝をついて声をかける。
「先生。収次郎ですが、もうお休みになられちょりますか?」
障子戸越し、返事は無かった。
ならば仕方がないと立ち去ろうとする、しかしその瞬間何やら胸にざわつく不安がよぎった。だから、
言うと同時に戸に手を掛け、引く。
はたして部屋の中にこの時、武智の姿は無かった。
代わり、あったのは上掛けのめくられた一組の布団だけ。
思わず部屋の中に足を踏み入れ、その布団の上に手を置く。
触れた布は秋の夜気に冷え、長く人のいた気配を感じさせなかった。
胸の不安が一気に増大した。だから、
「先生っ」
もう一度短く叫ぶと同時に、収次郎は消えた武智の姿を求め部屋を飛び出していた。

大きな声を上げる事は出来なかった。
それどころか足音さえ忍ばせて、収次郎は藩邸内を巡る。
人を呼ぼうと言う考えは無かった。そうしてはいけないと何かが本能に告げていた。
御用部屋、応接の間、果ては風呂場までのぞき、しかしそのどこにも姿は見当たらない。
まさか外に出たのかと、昨今の京の町の物騒さを思い血の気が引きかけるが、なんとか冷静さを
努めて思考を働かせる。
この異様さ、正面から外に出るとは到底思えない。ならば裏口か。
踵が返される。向かったのは勝手口だった。
下働きの者や商人達が出入りするそこは屋敷内の端に位置していた。
幾つもの角を曲がり、戸板を引く。
格子越しに月の光だけが差し込む蒼い闇に沈んだ台所。
土間へと降りる階段状の板の間にその人は、いた。
245: 歪み 3/9 2010/04/15(木) 02:04:22 ID:KzQGjoXhO携(3/9)調 AAS
白い夜着姿だった。羽織一枚羽織らぬその寒々しい背が、冷たい板の上にぺたりと座り込んでいる。
「先生?!」
思わず叫ぶような声が出る。しかしそれにもその背が動く気配は無かった。
ただひたすらに闇の一点を見据え、こちらを振り返ろうともしない。
その異様な雰囲気には、驚きより先に恐ろしさが立った。けれど、
「……先生…何しちゅうがですか、先生っ…」
懸命に声を振り絞る。足を踏み出し、立つその背後。
それでも武智がこちらを見ようとしないのがわかればその膝は崩れ、収次郎は堪らず腕を伸ばし
目の前の体を後ろから強く抱き締めていた。
引き寄せた、その肩は冷たかった。
いったいどれくらいの長い間、一人ここにいたのか。
思えば腕の力が更にこもる。それはいっそ痛い程に。
だからだろうか。
「……苦しい…」
ようやくに聞こえた声。それにはっと視線を上げれば、そこにはどこか不思議そうにこちらを
振り返ってくる武智の目があった。
「どういたがじゃ?」
密やかに呟かれる、その言葉は自分のものだと思う。だから、
「先生こそ、どういて……」
責める言葉が、しかし最後まで続かない。するとそれに武智はもう一度視線を前方に戻すと、ぽつりと
言葉を落としてきた。
「来ぬなと…思うて…」
「えっ?」
意味がわからず思わず聞き直してしまう。しかしそんな収次郎を気にかける様子なく、武智の呟きは
流れ続けてゆく。
「仕方がないの。切ったのはわしの方じゃき。あれとわしでは考え方が違う。言葉にはせんでも
あれはあの笑顔でいつもわしを拒絶する。それにわしはもう……どういたらええかわからんくなって
しもうたがじゃ。」
「…先生……」
「言葉では何も通じん。目ももう合わん。なら…もう終わりにしなければならんきに、あれは
忘れられたと思うた頃にひょっこりと現れる。酷い奴じゃ。せやきにわしは……」
246: 歪み 4/9 2010/04/15(木) 02:06:40 ID:KzQGjoXhO携(4/9)調 AAS
視線が上がるのがわかった。その瞳が闇を見続けているのがわかった。
そして言葉が繰り返される。
「来ぬな……」
どこか遠く寂しげに響く、その言葉の意味はほとんどわからなかった。
もしかしたらわかるかもしれない部分はあったのかもしれないが、それでも収次郎はあえて
わかりたくないと思った。
ただ、今のままでは駄目だという警鐘だけは頭の中で鳴り響く。
脳裏によぎる昼間の記憶。
傲然と笑み、こちらを見つめてきた光のない黒い瞳。
それと瞳の闇はまったく同じなのに、今目の前にいる人はまるで別人のように脆く儚げで。
夜着越しでさえわかる肌の冷たさが、自分の心を追いつめる。だから、
「戻りましょう。」
ここにいてはいけないと、収次郎はこの時抱き留めていた腕をゆっくりと解くと武智に告げた。
それに武智は無言の視線を向けてくる。
是とも非とも言わない。それが焦りに拍車をかける。
なんとしてもこの場から離れねば。だから迫る言葉が口を突いた。
「わしが負うてゆきますきに。」
「……負う?」
「ええ。」
反応があった事を幸いのきっかけとして、収次郎はこの時素早く座る武智に背を向ける。
しばし、声は無かった。
拒絶されるか、無視されるか。賭けのような時をそれでも収次郎は耐える。
長くも短い、気の遠くなるような……そんな時間の代償は、首筋に回った腕の感触だった。
ふわりと袖ごと巻きつけられる二の腕。そして背中に重なってくる冷たさ。
こうなっても武智からの声は無い。
それでもこの時収次郎は構わないと思った。
ただ預けられた身の重さが泣きたいほどに切なかった。
247: 歪み 5/9 2010/04/15(木) 02:08:17 ID:KzQGjoXhO携(5/9)調 AAS
二人無言で廊下を渡り、辿りついた部屋の布団の上に武智を下ろすと、収次郎は最初に上掛けを
その足元に寄せた。
そして手を取る。
「冷えちょりますね。湯を持ってきますきに、それまでは布団の中であったまっておいてつかぁさい。」
近くにあった羽織も引き寄せ、その肩に覆わせると、立ち上がろうとする。
しかしそれは不意に引かれた袖のせいでままならなくなった。
「先生?」
視線をやれば、そこには引くだけでない、袖ごと自分の腕に絡みついてくる武智の姿があった。
伏せがちの黒い瞳がゆらゆらと揺れている。そして、
「……も…いくがか…」
小さく呟かれた声。聞き取れずえっ?とその身を下ろし、収次郎が向き合えば、それに武智は
視線の先、くっと眉根をしかめもう一度言った。
「おまんも……行くがか…」
声が、腕が、震えていた。
ギリギリに張りつめながら、それでいてほんの些細な事で一気に瓦解してしまいそうな、
そんな不安定な心の内が触れる肌の感触から伝わってくる。
それに収次郎は痛ましさと共にこの時、どうしようにもない憤りを感じずにはいられなかった。
別人のような。ひずみ。
いったい何がこの人をここまで追い詰め、誰が……この人をここまで壊してしまったのか。
自分の預かり知らぬ所で起きただろう事に悔いと嫉妬を感じながら、それでも収次郎はこの時、
その怒りを胸の内だけに必死に収める。そして、
「どこにも行きません。」
絡みついてくる武智の体を抱き寄せながら、その耳元静かな囁きを告げた。
「せやきに、わしが温めてもええですろうか。」
顔が上がる。視線が絡む。
そこにやはり声は無かったが、もう答えは待てなかった。
248: 歪み 6/9 2010/04/15(木) 02:10:53 ID:KzQGjoXhO携(6/9)調 AAS
着物を脱ぎ、引き寄せた行灯用の油を指に絡ませ、もつれ込んだ布団の中で裾を託し上げるように
下肢を探れば、それに武智はその時、反射的に背を反らしながらも逃げる事はなかった。
どころか、抱き締められる肩先で押し殺される息と縋ってくる震える指先。
胸元、喉、そして頬に這い上がったそれがなぞるように唇に触れてこれば、その冷たさを拭おうと
収次郎はその一つを口に含んだ。熱を与えるように舌を絡める。
爪から関節、そして付け根までを舌先でくすぐる。と、瞬間それに武智は感じ入ったような吐息を洩らしてきた。
それは今まで収次郎が見た事のない武智の表情だった。
これまでも肌を合わせた事は幾度かある。
無理矢理でも合意でも、その体はどこか慣れている事が察せられた、けれど行為自体はひどく
厭うような強張りをいつも初めに見せていた。
しかしその戸惑いが今は……ない。
あるのは、慣らす指を受け入れ、立てる水音と交わす吐息に聴覚を刺激されたように、自分を
見上げてくるどろりと重く甘い闇を秘めた瞳。
不意に口元からそっと指が引き抜かれた。自分の唾液を絡めたそれが、ゆっくりと下ろされてゆく。刹那、
「…先生っ」
思わず呼ぶ声が口をついた。それは武智の指が自分の下肢の熱に絡んできたからだった。
それまでの抱擁ですでに昂ぶっていた男の欲を、武智はこの時柔く握り込んでくる。そして、
「…ええから…」
落とされた呟き。
「優しゅうしてくれんで…ええから…」
「……せん…せ…い…」
「お願いやき…もう全部…壊いてくれ……」
願うそれは体なのか、それともまた違う何かなのか。
力無く茫洋と、それでも切実に何かの終わりを乞う武智の声に、収次郎は瞬間胸に刺すような痛みを覚える。
大事に、大切にしたいのに、それを許してくれないこの人が憎かった。
それでもそんな事を求めなければならない程、何かに追い詰められているこの人がたまらなく憐れで
愛しかった。だから、
「力、抜いておいてつかぁさい。」
告げると同時に収次郎は絡めていた腕を解くと、武智の体をうつ伏せに返す。
武智の顔を見る事が出来なかった。
そして何より、愛憎に塗れた自分の醜い顔を武智に見られたくないと思った。
249: 歪み 7/9 2010/04/15(木) 02:13:34 ID:KzQGjoXhO携(7/9)調 AAS
重い闇が堕ちている。遠く聞こえるのは虫の音か。
濁流に押し流されるような情事の果てに訪れた静寂の中、身を起こす収次郎が落とした視線の先に
あったのは、こと切れたように眠る武智の青白い横顔だった。
優しさを拒まれたあれから、自分は武智を手酷く抱いた。
体を伏せさせ、腰だけを高く抱え持ち、なんの技巧も無く後ろから貫けば、それに武智の背は
強張りを帯びて震えた。
上げられる悲鳴からは耳を塞いだ。
ただ望まれたまま、その身を苛もうとする。
それでも、そんな武智の体が腕の中で溶け始めるのにかかる時間は、記憶のものよりも遥かに
短かかった。
押さえつける肌が徐々に淡い朱に染まりだす。
切れ切れに零される悲鳴にはいつしか縋るような艶が交じり、欲をのみ込む粘膜はおそらくは
本人の意識の外で熱くうねり、男を奥へと誘った。
明らかに男に弄ばれた痕跡を匂わせる媚態。
そしてそれがけして自分の手によるものではない事がわかる分、与えられる快楽が深ければ深いほど
自分の砂を噛むような嫉妬はそのまま荒い愛撫となった。
胸元に滑り込ませた手で両の尖りを捏ね、深く身を折り、さらされたうなじに歯を立てる。
途端、きつくなる下肢の締め付けをも突き崩すように腰の穿ちを早めれば、それに武智は無慈悲に
揺さぶられながら啼いた。
淫らがましくも憐れな肢体が、己の為すがままに追い詰められていく。
悶え、狂いながら……果て堕ちる。
途端、崩れるように力の抜けた武智の体を、しかしあの時自分は許さなかった。
前のめりに倒れかけるその腹に腕を回し、身を起こした自分の膝の上に座らせるように引き寄せる。
解かれぬままだった繋がりが自重でまたも深くなり、武智は刹那、呻くような声を上げたが、
自分はそれを聞いてはやれなかった。ただ、
「まだです……」
小さく、それでも強く囁きをその耳元近くに落としてやる。
すると武智はあの時、それ以上の抗いは見せなかった。
その後は、律動、嬌声、どこまでが自分かわからなくなるほどの溶けあう情交。
永久にも思える甘くも苦い共の責苦は、長く武智が気を失うまで続けられた。
250: 歪み 8/9 2010/04/15(木) 02:15:45 ID:KzQGjoXhO携(8/9)調 AAS
伸びた指先が、武智のこめかみに落ちるほつれ毛をはらう。
消耗しきる事でようやく訪れた眠り。
それを妨げるつもりはなかったが、その微かな感触にこの時、不意に武智の瞼が微かな震えを帯びた。
うっすらと開く、その奥に黒い瞳がのぞく。
そこに光は無かった。
だからそれに収次郎は瞬間、冷たい緊張を背筋に走らせる。
目の覚めたこの人は、また別の人になってしまっているのではないかと思った。けれど、
そんな自分の恐れはこの時、微かに動いた唇から零された小さな呟きの前に霧散した。
「………ん…」
それは渇き、掠れた声だった。
「…すま…ん……しゅう…じろう…」
それきり―――だった。
薄く開いていた瞳が再び力尽きたように落ち、辺りに静寂が戻る。
またしても一人、闇の中に取り残される。
けれど収次郎はこの時、そんな武智を眼下に見つめたまま、しばし動く事が出来なかった。
脳裏に反響する声がある。
それは確かに自分の名を呼んだ。
この夜初めて、自分の名を呼んでいた。
だからそれに、わかっていたのかと……ちゃんと、わかっていたのかと。
思い出す、虚空を見つめ、何も映していなかった瞳。
言葉を交わしても肌に触れても、どこか遠かったその人は、縋り抱かれた相手すら誰だか理解を
していないようで。そんな鈍い痛みに苛まれ続けていた心が今、ただ一つの名に救われる。
選ばれていたのだと熱を持つ。

『おまんで、ええか』

たとえそれが、どれほど都合のいいものであったとしてもだ。だから、
251: 歪み 9/9 2010/04/15(木) 02:17:37 ID:KzQGjoXhO携(9/9)調 AAS
「側におります。先生の…望まれるままに。」
無意識に溢れ出た、その言葉は決意だった。
それはどんな形でも。支える為でも、温もりを与える為でも……壊す為に、抱く為であっても。
ただ……
「だから……少しだけ、許してつかぁさい。」
腕が伸びた。
眠る武智の背を包み込むように抱き寄せながら、収次郎はこの時その隣りに静かに身を添わせてゆく。
夜は深く、闇は暗く、夜明けはまだ遠い。
だからそれまでの間しばし、と願う。それは、

優しく抱かせてつかぁさい―――

ただ……それだけの事だった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナガーイ鬱話。読んでいただいてありがとうございました。
252: 2010/04/15(木) 11:58:15 ID:Ja4Lj50v0(1)調 AAS
>>243
痛々しくもきゅんきゅんしました
子供のような、でも色っぽい不思議な人ですよね先生
253
(2): 拒食(1/3) 2010/04/15(木) 17:31:14 ID:KGEEnetx0(1/3)調 AAS
映画のホ.ー.ム.ズに触発されて、なぜか「倫敦魔魍街」のホ.ー.ム.ズとワ.ト.ソ.ン
ホムワト気味。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「ワ.ト.ソ.ンさんたらまた残して…」
 頬に手を当てて困ったようにテーブルを見下ろす婦人。
「どうしたんです、ハ.ド.ソ.ンさん」
 いい月だった、とご機嫌で帰ってきた男が、そんな様子の家主の母親に気づき。
「あら、ホ.ー.ム.ズさん、帰っていらしたんですの?」
 早かったんですのね、と笑いかける婦人への挨拶は忘れずに返して、テーブルへと近寄る。
 浅黒い肌に金色の瞳、そして何よりとがった耳が、彼が"ヒト"ではないことを示している。ヒトとオオカミの中間の存在、人狼であると。
 今は収められているが尻尾を生やしていたり、犬耳を頭にくっつけた姿を、さらには金の目をした巨大なオオカミに変わる姿を見れば、大抵の人間は恐れをなす。
「ワ.ト.ソ.ンさん、またお食事を残されたんですよ。お口に合わないのかしら…」
 かくいう彼女も、厳密に言えばヒトではない。かつてヒトであった、と言うべきだろう。
 すでに寿命を終えて数十年、若々しい外見そのままにこの下宿を切り盛りしている。
 いかにも心配だという顔の、一見ごく普通の人間に過ぎない彼女に目を向けてみればなるほど、テーブルの上にはほとんど手をつけられていない料理の数々。
 もったいない事をするなぁと呟きながらホ.ー.ム.ズは、食欲旺盛な彼用にと分厚く切って焼いてあるローストビーフをひょいとつまみ上げて口に放り込んだ。
「大丈夫ですよ、ハ.ド.ソ.ンさん。たまにあることです」
 言うと彼女は首をかしげて言った。
「でもホ.ー.ム.ズさん。お行儀悪いですわよ?」
254: 拒食(2/3) 2010/04/15(木) 17:33:23 ID:KGEEnetx0(2/3)調 AAS
「入るぞ」
 部屋の住人が許可する前にドアを開ける。
「…っと、寝てるのか」
 ベッドに散らばる長い黒髪に気付いて声を落とした。
 ホ.ー.ム.ズとは対照的に青白い肌、今は隠されているが緑の瞳ととがった牙、そして同じくヒトでない印でもあるとがった耳。
 ノスフェラトゥと呼ばれ、人々から恐れられるそれは、苦しげに眉を寄せたままシーツの中に埋もれていた。
 ホ.ー.ム.ズは、ため息をついて相棒の寝顔を見つめた。
「…まったく、無茶をする」
 ため息ではあるが厄介ごとだと疎んじている風はなく。ただ彼の気性にいささかの苦笑と共感を感じずにはいられないだけで。
 今度は何が原因だろうか。
 彼は、ヴァンパイアである。しかしながら人間であった母親の血がそうさせるのか、はたまた彼女から受け継いだ豊か過ぎるほどの感受性ゆえにか、吸血しようとしない。
 どんなことがあっても、たとえそのまま己が死ぬ羽目になっても、(もともと死んでいるのだが)ヒトからの吸血を望まない。だが彼の本能は、鮮血を欲し続け、その欲求と常に戦っている。
 まったく、なんの因果だか、とホ.ー.ム.ズはベッドのふちに腰を下ろした。
 吸血を望まないがゆえに、"貧血"で倒れてしまうこともしばしばだが、食事を拒むほどのことはそうめったにない。
 彼は生きること―存在すること―を拒否するかのように、時折、すべての欲求から遠ざかろうとする。
 ヴァンパイアである彼は、ウェアウルフであるホ.ー.ム.ズに比べ、食事量もほんのわずかしか必要としない。本来吸血で必要なものを、食事で代用させているが、それも植物しか食べないのでは、代用の意味もなさない。
 ホ.ー.ム.ズはそっとワ.ト.ソ.ンの額に手を置いた。
「本当に…意地っ張りだな」
 困ったように苦笑する顔は可愛い弟を見ているようでもあり。す、と手を引くと、つややかな黒髪がさらりと下に落ちた。
255: 拒食(3/3) 2010/04/15(木) 17:34:17 ID:KGEEnetx0(3/3)調 AAS
 もうひとつ、ため息をつくと、ホ.ー.ム.ズは自身の右手の人差し指に、爪を立てた。肉食獣のそれは、本人の意思にしたがって簡単に皮膚を裂く。つぅ、と盛り上がる赤い血液の玉を見つめて、ホ.ー.ム.ズはそっとワ.ト.ソ.ンの口元へ、指を運んだ。
 きゅっと閉じられた唇を指先でこじ開け、舌を探る。暖かいものに触れると、それに血を塗りつけるように、口内をかき回した。
「…ぅ……ふ…」
 ワ.ト.ソ.ンの口から息が漏れる。と思った瞬間、噛み付かれた。
「っ…」
 急いで指を引き抜き、今度は腕に爪を立てて血をにじませ、口元に持っていってやる。
 ヴァンパイアとしての本能に目覚めたワ.ト.ソ.ンは、己が衝動のまま、ホ.ー.ム.ズの腕に噛み付いた。鋭い牙を突きたて、血を吸い上げる。人狼の血を。
 痛みにいささか眉をしかめつつ、ホ.ー.ム.ズは明後日のほうを向いた。ワ.ト.ソ.ンは、吸血する姿を見られることを、極度に嫌っている。それが例え生まれたときからそばにいるホ.ー.ム.ズであっても、いや、だからこそ許せない、らしい。
 そんな彼の心情が理解できるだけに、苦いものが胸をよぎる。
 満足したのか、ワ.ト.ソ.ンの頭が、ホ.ー.ム.ズの腕から離れた。そのままぽすんと枕に頭をうずめ、すやすやと寝息を立て始める。先ほどとは比べ物にならないくらい、穏やかな寝顔。
「まったく…」
 苦笑して、血の滲む、というよりもだらだらと流れ出す腕の噛み跡に目を落とし、ぺろりと舐めた。
「あんまり心配かけるなよ」
 わずかに目を細めて、小さく呟いた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
人狼×吸血鬼に萌えます。
256: 2010/04/15(木) 19:21:25 ID:kirpNwulO携(1)調 AAS
>>253
まさかここで魔魍街が読めるとは…
ありがとう。萌えた。
257: 2010/04/15(木) 21:14:08 ID:ix15wGHz0(1)調 AAS
>>253
なつい……! GJ。
あの人外達は液体生物in義理の弟も含めてえらいことになってた気がする。
258
(1): Are you cry? 1/3 2010/04/15(木) 21:29:41 ID:309ENoNlO携(1/3)調 AAS
半ナマ
ターミネーター2のT-800×ジョン

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 いままでポツリポツリと言葉を紡いでいたジョンが、急に黙り込んだので、"ボブおじさん"は「不思議そうな」とでも形容できる顔を向けた。
 トラックの下に潜り込んで作業をしているので身体ごと向けることは出来ないが、彼の機械仕掛けの頭脳はその必要はないと告げていた。
 作業を続けながら、首だけ横を向けてT-800は訊ねた。
「どうかしたのか」
 そこにあるはずのない気遣わしげな色を読み取って、ジョンは力なく笑った。
「なんでもない」
 ただ、ちょっとだけ不思議な気分だった。
 それは言葉では言い表せない気持ち。
 目の前のターミネーターから視線を外して、ジョンは彼の手元に目をやった。
「僕のパパは未来から来て、」
 少年は歌うようにつぶやいた。
「僕のママは指名手配されてる犯罪者」
 言いながら声をかけられる前にスパナを手渡す。
「そして僕は人類の最後の希望。未来のリーダー」
 少年は微笑んでいるのに。ターミネーターは少年がまた涙を流すのではないかと思った。
 人間がなぜ泣くのかはまだよくわからなかったが、わずかな経験で知覚したパターンに似ているような気がした。
 けれど少年は泣かなかった。ただほんの微かに笑っただけだった。
「泣かないのか?」
 だから素直に訊ねた。
259: Are you cry? 2/3 2010/04/15(木) 21:30:52 ID:309ENoNlO携(2/3)調 AAS
 ジョンは弾かれたように顔をあげ、驚いた顔でT-800を見つめた。
「……君は未来から来たサイボーグ」
 そう言葉を続けて、じっと相手の顔を眺めた。
 ターミネーターも、ハシバミ色の淡い瞳を見つめ返した。
「…そうだ」
 なにか言わなければいけない気がして、同意を示した。
 答えに、ジョンはまた微笑んだ。
「どうしてそう思ったの?」
「…?」
「僕が泣くと思った?」
「違うのか?」
 問いかけの繰り返しに、ジョンはまいったなぁと笑った。
「君はやっぱり人間に見えるけど、サイボーグなんだね」
 その言葉の意味を定義することは難しかった。
 けれど言葉以外の部分で了解できたような気がした。
「普通の人間だったらって思うことがよくあったよ」
 唐突に、少年はつぶやいた。
 文脈も脈絡もない言葉についていけないサイボーグは、とりあえず続きを待った。
「ごく普通の10歳の子どもでさ。みんなと同じように学校へ行って、放課後は馬鹿みたいに遊んで。世界の終わりのことも、犯罪者で精神病院にいるママの事なんかも考えないで」
 少年は少しだけ遠い目をした。
 その表情の意味を、T-800は正確に窺い知ることは出来なかった。
 またわからないものが増えた。ターミネーターは思った。
 ジョンに関して理解の出来ないことは増えるばかりだった。
 今の表情もそうだ。
260: Are you cry? 3/3 2010/04/15(木) 21:32:29 ID:309ENoNlO携(3/3)調 AAS
 相槌のないことにも慣れてしまったジョンは、目の前の男には構わず話を続けた。
「でもそれじゃ僕は僕じゃないんだ。パパはどこにでもいる普通の人間で。ママだってちょっと口やかましいけど戦争のことなんてこれっぽっちも考えていなくってさ」
 少年が、少し口篭もった。
「…"普通"がよかったのか?」
 感情の篭らないはずのサイボーグの言葉が妙に温かくて、ジョンは無性に泣きたくなった。
「……そうだね。"普通"なら、こんな目にあわなくてもいい。なんにも知らないで生きていける。きっとどんなに楽だろうね。でも……僕は僕だから」
 そう微笑む少年は、幼いながらも確かに人類のリーダーたるにふさわしい風格と自信を覗かせていた。
「それに…"普通"だったら、君に逢えない」
 ハイ、とスパナを受け取り、もう片手でレンチを差し出しながらジョンは言った。
「君に逢えて、よかったと思っている。だから、"今"のほうがいい」
 なんと答えるべきかしばし迷って、"ボブおじさん"は言った。
「私も、君に逢えてよかった、と思う」
 戸惑いがちに告げられた言葉に、ジョンの顔が驚きに染まり、そして満面の喜色に変わった。
「うん、ありがとう」
「なぜ礼を言う?」
 不思議そうな顔で、サイボーグが訊ねた。
「…嬉しいから、かな」
「……そうか」
 そこで、トラックの下での会話は終わりを告げた。
 二人は黙り込み、黙々と作業に励んだ。
 けれど無言の空間は、ほのかな柔らかさを漂わせていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
T-800←ジョンは鉄板だと思います
261: 2010/04/15(木) 22:31:32 ID:EiJwsH1AO携(1)調 AAS
>>258
GJ
スレ見て渇望してたところだったんだ
美少年と武骨サイボーグって映えるなあ
262: 見上げてごらん夜の星を(1/3) 2010/04/16(金) 00:14:42 ID:s2So6Bpn0(1/4)調 AAS
|>PLAY ピッ ◇⊂(;∀; )ウシミガンバッタナア…
内容がタイムリーなうえ不謹慎なので注意!
生きていれば昨日誕生日だったコーチと、某監督の話です。
ちなみに元ネタは、今日発売の週刊ブンシューの4コマ漫画。

真夜中、ふいに鳴ったチャイムの音に目を覚まし、玄関のドアを開けた私は驚愕した。
そこには、先日、我々の前から突然姿を消したはずの人物が、ユニフォームを着て立っていたからだった。

「監督、このたびはご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。」
彼はただでさえ小柄な身体を、さらに縮こまらせるようにしてぺこりと頭を下げた。
「・・・そ、そうだぞ!みんなしてワンワン泣いて、大変だったんだからな!
ほら、こんなところにいたら寒いだろ。とりあえず家に入れ。」
そう言いながら彼の肩に手をかけたが、その身体はギョッとするほど冷たくなっており、私は改めて、彼が既にこの世の人ではないのだということを思い知らされた。
「すみません、僕はもう行かなくちゃいけないんです。これ、あとで読んでください。」
彼は呆然と突っ立ったままの私の手に、手紙らしきものが入っている白い封筒を押しつけると、
「それでは、失礼します。」と言うやいなや、夜霧のようにさぁっと、その姿を消してしまった。
263: 見上げてごらん夜の星を(2/3) 2010/04/16(金) 00:16:11 ID:s2So6Bpn0(2/4)調 AAS
一人残された私は、手元にある封筒の口を破り、中身を取り出した。
真っ白な便箋に黒いインクで書かれたそれは、彼の生真面目な性格をそのまま表したかのような、
ごく丁寧な文字で綴られていた。

「このような形で監督にお手紙を差し上げることとなってしまい、大変残念です。

監督がセカンドで僕の名前を叫ぶ声を聞いて、久しぶりに大泣きしてしまいました。
できることなら今すぐにでも、皆さんの元に帰って、また一緒に野球がしたい。
しかし、今の僕には、もはや生身の身体すらありません。
あるのは、死してなお野球を愛している、この魂だけです。

若手に出番を奪われていた僕を必要としてくれて、もう一花咲かせてくれた監督に、
十分な恩返しもできぬままになってしまい、本当に申し訳ないと思っています。
どんなときも勝利を目指して、一緒に戦ってきた仲間達を、よろしくお願いします。
コーチとしてひよっ子だった僕に、笑顔で教えを乞うてくれた若い奴らを、よろしくお願いします。
監督に『二人で一つ』と言われていたのに、突然一人ぼっちになってしまった僕の友達を、よろしくお願いします。
そして、僕の大好きな奥さんと、可愛い3人の子ども達を、どうか、どうか、よろしくお願いします。
264: 見上げてごらん夜の星を(3/3) 2010/04/16(金) 00:17:43 ID:s2So6Bpn0(3/4)調 AAS
最後にもう一つだけ、監督とみんなに、伝えたいことがあります。
もし僕に会いたくなったら、空を見上げてみてください。
きっと、どこかに僕がいるはずです。

それでは、いつか、また。」

気がつけば双眸から雫がこぼれて、インクの文字が滲んでいた。
夜空を見上げると、キラキラと幾千もの星が瞬いていて、
その中で彼が確かに笑っているような気がした。

翌朝、目が覚めると、手紙はどこにも見当たらなくて、昨夜のことはやはり夢だったのかと悟った。
それでも、青い空に遊ぶ白い雲を見上げると、胸の中に何かじんわりと温かいものが
広がっていくのを感じることができたのだった。

□ STOP ピッ ◇⊂(;∀; )
気持ちの整理はとっくについたはずなのですが・・・。
ブンシューの漫画の「監督に『僕に会いたくなったら空を見上げてください』と手紙を渡すネタ」を見て、
どうしても話を広げたくなりました。

改めて、ご冥福をお祈り申しあげます。
265: 2010/04/16(金) 00:36:02 ID:s2So6Bpn0(4/4)調 AAS
しまったブンシューじゃないブンシュンだったorz
266: 243 2010/04/16(金) 01:17:02 ID:TzyeqMHoO携(1)調 AAS
すみませんが一言だけ。
一日たって投下ミスに気付きました…
1レス目、追加訂正を保管庫でさせてもらいました。
267: バッソンピエールの尋問(1/9) 2010/04/16(金) 01:47:03 ID:Goniwin90(1/9)調 AAS
エヌエチケーにて放送中の人形劇三十四より アヌス×谷やん前提の
バッソン×谷やんです。
誰得なカップリングですが、脱出おめ記念ということで。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「そういうことであれば、お望みどおり死んでいただこう。
 ……裏庭へ連れて行け」

バッキンガム公の言うとおり、ダルタニアンというのは中々気骨のある
青年らしい。この若さで朽ち果てさせるには惜しい人材であることに
間違いはないのだが、生きて返せば間違いなく手ごわい敵となり向かってくる
であろう危険因子をみすみす見逃すことなど、できるはずもない。

『ふりでも、仲間になると言えばいいものを……!』

自分が思った以上にあの青年に肩入れしていることに、我ながら意外だとは
思いつつも、“惜しい”という気持ちを消し去ることができない。
だから、なのだろうか。
殺してしまう前に、もう少しだけ彼と話してみたいと思った。

それによくよく考えれば、彼は見習いとはいえ銃士隊に所属していたはず
なのだからその動向を聞いておかなくてはならない、という重要な事実を
思い出した。
国王直属の近衛銃士隊が出陣しているとなれば、それは国王自らが兵を
率いて戦場に来ていることを意味しているからだ。
そうとなれば、リシュリュー枢機卿が戦場に来ている可能性も、また高い。
元々一般民衆がその大部分を占める我が軍は、イギリスからの支援があるとはいえ
本格的な戦闘が始まってしまえば、本職の軍人と銃を撃った経験もない一般人。
最低限の訓練は施してあるが、正面から戦えば戦況の不利は最初から
わかりきっている。
268: バッソンピエールの尋問(2/9) 2010/04/16(金) 01:48:20 ID:Goniwin90(2/9)調 AAS
持久戦に持ち込まれては、自滅あるのみ。
一点突破でリシュリューの首を取ることは、勝利のために必要不可欠な要素なのだ。

その成否を握る情報を、あの青年は知っている可能性がある。
さっきまで、ほんの少しとはいえ心にあった同情心は一瞬にして消え去った。
どんな手段を用いてでも、必要な情報は引き出す。
……殺してしまうのは、それからでも遅くはない。

そう決意が固まるのにさして時間はかからなかった。

ダルタニアンを自分の私室に連れてくるよう指示を出し、どう口を割らせるか
思案をめぐらせる。
勇気と度胸はあるのだろうが実戦の経験が浅そうなあたり、普通に拷問に
かければ案外あっさりと全てを白状する気もするが……。
だが、意地になった人間は案外苦痛によってでは真実を語らない
ものだということを、私は経験から良く知っていた。
自白内容の真否が確認困難である以上、何でもいいから白状させるのが
得策だとは思えない。相手はこれから銃殺されるのがわかっている身の上だ。
最期の一芝居に付き合わされてはたまらない。

要は、苦痛に起因するものであろうが何であろうが、相手の心を折ることが
できなければ本当に必要な情報を得ることはできない、ということだ。

となれば、……やはりアレ、だろうか。
まぁ、駄目だったなら駄目だったで構わない。
とりあえずやってみる価値はあるだろう。
彼のことは、結構“お気に入り”なのだから。
269: バッソンピエールの尋問(3/9) 2010/04/16(金) 01:49:51 ID:Goniwin90(3/9)調 AAS
考えがまとまったところで、タイミングよくダルタニアンが半ば引きずられる
ように部屋の入口まで連行されてきた。
銃殺の指示を出したかと思いきや、間髪いれず、また連れ戻す指示が出たことで
部下も若干いぶかしげな表情をしている。が、輪をかけて困惑した表情を
浮かべているのはもちろんダルタニアンだ。

部下を下がらせると
「……今更、何か御用ですか?」
挑むような目つきで、そう尋ねてきた。
「君に色々と聞いておきたいことがあったのを、忘れていた」
ダルタニアンの眉が一瞬ぴくり、と動く。どうやら、自分が尋問の対象と
なり得ることは理解していたらしい。
「……あなたにお話しできることは、何もありません」
そう言い切った口調からは、どんな些細な情報も漏らすまいとする固い決意が窺えた。

これでは正面から力押しで情報を吐かせるにしても、大分骨が折れそうだ。
不意に横合いから殴りつけるような、とでも評すべきこの作戦が
思ったように功を奏すれば良いのだが。

「そう意固地にならなくてもいいだろう。
 無駄に痛い思いをするのは、馬鹿らしいと思わないか」
「……拷問でもなんでも、したいならすればいいでしょう。
 それで本当のことを話すとでも思っているなら、ですが」
「なに、そんな野蛮なマネは私たちはしないさ」
その返答は少し予想外だったのだろう。
彼は不可解なものでも見るような目つきで、こちらの出かたを窺っている。

では行動開始といこう。
戸棚から小瓶を2つ取り出すと、その片方の中身をグラスに空けて
ダルタニアンに差し出す。
270: バッソンピエールの尋問(4/9) 2010/04/16(金) 01:51:03 ID:Goniwin90(4/9)調 AAS
「飲みなさい」
と勧めてみても、全く正体のわからない飲物に口をつけたりしないのは当然だろう。
堅く口を閉ざし、そっぽをむいてしまった。
まあ、こっちも素直に飲むなんて思っちゃいない。

実力行使あるのみ、だ。
……つんと上向いた鼻をぐっとつまんでやった。
みるみるうちに苦しそうな表情を浮かべ、抵抗するように首を振ろうとするが
それは逆に限界までの時間を短くする効果しかなかった。

空気を求めて口を開かざるを得ないタイミングを見計らい、グラスの中身を煽って
微かに開いた唇をこじ開け、舌ごとねじ込むように“それ”を流し込む。
ぐっと喉が鳴る音がして、液体が間違いなくそこへ入り込んだことがわかった。

「ちょっ……!! くそっ 今、何を飲ませた?!」
された行為にも驚いたのだろうが、既に飲み込んでしまった液体の正体の
ほうが気になるのだろう。縄で後ろ手に縛ってあるとはいえ、まるで掴み
かからんばかりの勢いだ。
さて、飲まされた物の正体を知ったらどんな顔をするか。
「なに、ちょっとした催淫剤の一種さ」
「……さ、サイン?」
予想外に鈍い反応は、聞き覚えのない単語を耳にしたせいなのだろうが……。
「媚薬、といえばわかるか」
その単語にも反応は薄かった。
この手の知識については、まだまだ子供レベルということなのだろう。
少し興を削がれたが、何を飲んだのかわかってもらわないとその効果も半減だ。
肩をつかんでベッドまで連れて行き、力任せに背中を押すとつんのめるように
ダルタニアンの身体がベッドに沈む。
背中越しに青ざめた様子でこちらを窺う彼には悪いが、ここからが本番だ。
思う存分、泣いてもらうことにしよう。
271: バッソンピエールの尋問(5/9) 2010/04/16(金) 01:52:56 ID:Goniwin90(5/9)調 AAS
腰に手を回し、ベルトを抜き取ると当然のように抗議の声があがったが
構わずに下着ごとズボンも膝まで下ろしてしまう。と
「やめろ!」「何考えてんだ」「ふざけるな!!」「馬鹿」「変態」等々
考え付く限りの悪口雑言が、途切れることなく声高に繰り広げられ続けた。
「……うるさいな」
あまりにも間断なく文句ばかり言うものだから、力任せに1発
尻に平手をくれてやった。
ダルタニアンはぎゃっと小さく悲鳴をあげると、いったん言葉を止め
今度は突き刺すような視線で憎々し気に睨んでくる。
「そう怖い顔をしないで頂きたいな。
 ……死ぬ前に、気持ち良い思いをさせてあげようと思っているのに」
「……!!」
その一言でさっと血の気が引いたところを見ると、今から自分の身に
降りかかるであろう運命は理解できているようだ。
媚薬の存在を知らなかったわりには……と、少し意外な気もしたが
彼ほどの容姿であれば、そう不思議な話でもない。
何も知らない子供を蹂躙するわけではないのならば、気も楽だ。

「あまり要領を得ていないようだったから、きちんと教えてあげよう。
 さっき君が飲んだのは、まぁ、こういった行為の快楽を何倍にも
 高めてくれる薬さ。……強制的に、ね。」
見開かれた目が、信じられないという心の声を声高に代弁している。
「なるほど。そんな薬があるなんて信じられない、か。
 だが、それが嘘じゃないことは君自身が一番良くわかっているはずだ。
 身体が熱くて仕方がないだろう? それが、薬の効き始めだ」

はったりだろう、信じない。という気持ちと、だが事実として熱を持つ身体に
揺れ動く心中が手に取るように伝わってくる。
もう一押しが必要だ。
272: バッソンピエールの尋問(6/9) 2010/04/16(金) 01:55:09 ID:Goniwin90(6/9)調 AAS
「薬の効果を信じるも信じないも君の自由だ。だが、聞く耳を持たないというのなら」
さっき使わなかった方の小ビンの中身を右手に空け、とろりとした液体を指に
馴染ませると、躊躇なく後孔にそれをねじ込む。
「……どうなっても、知らないぞ」

「やっ、やめろ! 触るな!!」
思いのほか簡単に指を飲み込んだあたり、相当念入りに“仕込み”が
行われていたらしい。これは作戦が大当たりしたかもしれない、と
思わず口端が上がる。
指を1本から2本に増やし中を解すように動かし続けると、ある部分に
触れた瞬間びくりと体が跳ね上がった。

急所を探り当てたことに気をよくして、緩やかにそこを愛撫してやると
された方はたまったものではないのだろう。ぴんと背中を張って、なんとか
快楽の波を我慢しようとしているようだが、それに追い討ちをかけないほど
こちらもお人好しではない。

「やっ……。もう、やめ……」
大分限界が近いのだろう。
変に意地など張らないほうが、辛い思いをしなくて済むものを。
今度はわざと焦らすようにポイントを外して、なお執拗に攻め続ける。
徐々にではあるが、抵抗する力が確実に弱まる中
「や…やだ、あっ…。助けて  ァ…ト 」
と、無意識に零れたのであろう言葉に思わず手を止めた。

「ア、ト、 ……三銃士のアトスのことかな?」
「呼べば助けに来てくれるくらいには、近くにいるのかい?アトスは」
「……」
「だんまり、か。それがあまり得策でないことを
 そろそろ君は理解したほうが良いな」
273: バッソンピエールの尋問(7/9) 2010/04/16(金) 01:57:13 ID:Goniwin90(7/9)調 AAS
敏感なところに狙いを定め、多少力を入れて指の腹で擦るように刺激を
与えると、瞬く間に形の良い眉がぎりぎりとつり上がって、何秒もしない
うちに限界に達した。

いくら未経験ではないといっても、さすがにこんなマネをされたことは
ないのだろう。その屈辱、そしておそらくは快楽も想像を絶するもの
だったに違いない。
まるで魂が抜けてしまったかのように弛緩し、力なく涙を流して呆ける様は
一瞬精神が壊れたかと心配になったほどだ。
「かわいそうに。
 強情を張らなければ、ここまではしなかったものを」
「……う…るさい」
この期に及んでの減らず口に、思ったより根性もあるようで感心する。
ここでそれを発揮するのが良いことかどうかは別問題だが。

「まだ口が利けるようで安心した」
その言葉に嘘はない。
ただ目的が達成されるまで容赦するつもりもないので、
彼自身のためにも早く折れてくれるのを祈るばかりだ。
ぐったりする身体を返して仰向かせると、漆黒のマントをとめる
肩の留め金を外して一気に引きずり抜く。
まだ真新しい様子のそのマントを床に投げ捨て、さて、どうしてくれようか
と思考に入ろうとした刹那、かさ、とその場には違和感のある音がして
その出所に目をやった。
そこにあるのは床に投げ捨てたマントで、布と多少の金属から構成される
はずのそれから、紙の音がするのは何とも妙な話で。
何となく興味をそそられて衣嚢を探ると、果たして1通の手紙が出てきた。
274: バッソンピエールの尋問(8/9) 2010/04/16(金) 01:58:28 ID:Goniwin90(8/9)調 AAS
その手紙をみた瞬間、半ば死人のようだったダルタニアンが突如として
起き上がり全身で体当たりをしてきた。…と気が付いたのは、不意を突かれた
せいでもろに頭突きを食らって床に転がった後だった。
窮鼠猫を噛むとはよく言ったものだ。完全に油断していた!

すぐさま起き上がりダルタニアンは、と見ると、何と例の手紙に噛み付いて、
いや厳密に言えばそれを“食べよう”としていた。
慌てて、手紙を取り戻そうとするが真ん中の部分はもう欠けてしまっていて。
力任せに引っ張っては被害が拡大するだけとみて、また鼻をつまんでやった。
残った部分は手中にできたが、全く、手紙を食って処分しようだなんて、
どこからそんな発想が湧いてくるのか!

邪魔をされてはかなわないと、ダルタニアンをベッドの柱に縛り付けて
手紙の中身を検める。
真ん中がなくなってしまったせいで、わかるのは彼の安否を心配する内容
だけだったが、署名が残っていたお陰でそれでも問題ないように思えた。

手紙の最後にあった署名は “ポルトス”

やはり銃士隊、……三銃士がラ・ロシェルに来ているのだ。
書かれてからそう長い期間は経過していないことがわかる
インクの色に、その距離の近いことを感じて否応なく緊張感が高まる。

三銃士といえば敵対を避けたい相手の筆頭株なのだが。仕方あるまい。
思いもかけない事態で知りたかった情報が手に入り、ダルタニアンも
これでお役御免で構わないのだが、さてどうするか。
景気づけにヤってしまうのも悪くないが……。
「ダルタニアン。知りたかった情報は全てあの手紙のなかにあった。
 もう君に用はない。が、君に飲ませた薬のことがある。
 その状態で放って置かれれば、辛い思いをすることになるだろう」
275: バッソンピエールの尋問(9/9) 2010/04/16(金) 02:00:44 ID:Goniwin90(9/9)調 AAS
「……君が望むのならば、抱いてやるが。 どうだ?」
そう言われて、はいお願いします。などと言う人間はまずいないだろう。
ダルタニアンも怒りのあまり顔を真っ赤にして、
「冗談じゃない! 誰がお前なんかに!!」
と、視線で物が貫けるのならば即死しそうなほど、鋭く激しい眼光で
こちらを睨み付ける。
手負いの獣は厄介だ。本人がそう希望しているのだから、とっとと檻に
戻して、……処分してしまおう。

縛られて自由の利かない彼の代わりに身繕いをしてやり、部下を呼んで
一旦地下牢に入れておくよう指示をだすと、ふと、ある疑問が頭に
わいた。非常に重要な情報をもたらしてくれたあの手紙だが、何故
彼はそんな“危険”な手紙を処分もせずに持ち歩いていたのだろう。
手紙には、読んだら燃やせと書いてあったのに、だ。
処分できない、ないしはしたくない理由でもあったのか。

全ては謎のままだ。
そしてそれで構わないはずだった。どちらにせよ、明日はない命なのだから。
処刑の準備をできるだけ急がせて、確実に息の根を止めておかねばならないと思った。
数時間前までならいざ知らず、今となっては、再び相対することがあれば
彼は私の命を奪うことを躊躇しないに違いない。
そういう相手が、戦場では1番やっかいなのだ。

「何も問題ない」
何故か自分に言い聞かせるようにそうつぶやいて、手に入れた情報を最大限に
利用するべく作戦を立てる作業に没頭することにした。
それが処刑に立ち会わない理由になる気がしたから。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

お目汚し失礼しました。
276: 2010/04/16(金) 17:10:56 ID:VNAwLLxG0(1/8)調 AAS
オリジナル鉄道もの半擬人化。エロ無しです。バッドエンド注意。
モデルにした路線は一応ありますが、具体的にここというのではないです。
長くなってしまったので連載になってしまいますが、2回で終わります。
すみません。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
277
(1): 僕の金色の 1/7 2010/04/16(金) 17:15:07 ID:VNAwLLxG0(2/8)調 AAS
 その踏切は、通称「3号踏切」と呼ばれておりました。ある駅から数えて
3つ目の踏切なので、3号です。幅が1m弱しかなく、片側は道路に降りる
ところが数段の階段になっているので車やバイクは通れません。人と、頑張
って持ち上げられた自転車くらいしか通らない小さな小さな踏切です。
 毎日どの電車も轟音を立てて3号の前を通っていきます。3号もそれを自分
の仕事をしながらただ見送っています。カンカンカンカン……。
「電車が来ますよ。危ないからくぐったり渡ったりしてはいけませんよ」
……カンカンカン。

 ある日の夕方、3号の前を見たことも無い車両が通り過ぎました。シャンパ
ンゴールドのボディ、そのところどころに赤いラインのアクセント、顔には黒
いサングラス、シンプルなパンタグラフ。どうやら新型車両の回送のようです。

 東に向かう上り線を走る金色の車両は後方から大きな夕陽に照らされ、通り
過ぎる線路上に黄金の粒を振りまいていくかのように見えました。
「なんて綺麗なんだろう!」
まるで太陽から生まれてきたようだと3号は思いました。
 翌日の早朝、金色の彼が今度は下り線を走っていきました。朝日を浴びる
彼は白金に輝いて、全身がプラチナでできているかのようでした。満員のお客
様を乗せて、昨日よりもどこか誇らしげに見えました。3号はほれぼれとしな
がら金色の彼を見送りました。

 その日以来、その金色の彼を見ることが3号の楽しみになりました。金色の
新型は、起点のターミナル駅から終点の観光地までという最も長い距離を往復
していたので、3号は1日に数回しか彼を見ることができませんでした。
278: 僕の金色の 2/7 2010/04/16(金) 17:18:28 ID:VNAwLLxG0(3/8)調 AAS
 なかなか会えない分、彼を見れた時の喜びはひとしおです。金色の彼が通る
時刻が近づくとドキドキと胸が高鳴ります。
 風に乗って聞こえてくる彼の警笛は、他の車両の鳴らす
「ぷぁああっ! どけオラァ!」
という怒号ではなく、甘く優しいメロディでした。地面を伝って響いてくる彼
の振動は、金属然とした下品な揺れ方ではなく、小刻みで上品な心地よい振動
でした。

 3号は毎日、黄色と黒の縞模様の身体いっぱいに彼の音を感じ、彼からこぼ
れる太陽の光を浴び、その度にたまらない気持ちになりました。
「一度でいいから、話をしてみたいなぁ……」
 けれども3号にとって、それは見果てぬ夢でした。
「彼からしてみれば僕はたくさんある踏切の1つにしか過ぎないものな。しか
もこんなに小さい、一瞬で通り過ぎてしまうようなちっぽけな踏切だもの。
きっと彼は僕のことなんて気づいてもいないんだろう……」
 3号はポロリと涙を流しました。その涙は通り過ぎる人たちからは、赤いシ
グナルの下に溜まった雨粒のように見えたことでしょう。

 3号が金色の彼への届かぬ想いを抱えてから二ヶ月ほど経った頃、この路線
で大きなダイヤ改正がありました。
 ベッドタウンと都心を結ぶ線でもあるこの線は、朝の通勤ラッシュ時には数
分間隔で電車が通ります。大変な過密ダイヤの上に、人が多過ぎて乗り降りに
時間がかかるので、どの電車も少しずつ本来のダイヤから遅れていきます。そ
れが積み重なると、ついには線路上で電車が渋滞状態になってしまいます。
 ダイヤ改正はこの通勤ラッシュ時の混雑を解消しようというものでしたが、
改正の翌日には、さほど駅に近くもない3号踏切の前でも徐行や停止をしてい
る電車が増え、かえって電車の渋滞が酷くなったように見えました。
279: 僕の金色の 3/7 2010/04/16(金) 17:21:48 ID:VNAwLLxG0(4/8)調 AAS
 ラッシュのピークが少し過ぎても電車の数珠繋ぎは続きました。今まで以上
に開かずの踏切になってしまったと3号が自身を嘆いていた時、ふと足元から
覚えのある心地よい振動が伝わってくるではありませんか。
「え? 彼はこんな時間には走らないはずだけど……」
 けれども視界には、あの金色に輝く彼の姿が見えています。以前なら軽やか
に3号の前を通過していた彼が、今日は数珠繋ぎに巻き込まれ少しずつ少しず
つゆっくりとこちらに近づいてきます。そして3号のすぐ手前の信号が赤にな
り……。すぅと金色の彼は止まりました。3号の目の前で。

「はわわわわわわあわわわぁわわわああああああっ!!!!」
突然降って沸いた幸運に3号は頭が真っ白になりました。何か話さなければと
思っても、なかなか言葉が出てきません。
 カンカンカンカンカンカンカンカンッ! 自分が鳴らしているのですが、警
報音が余計に焦りを誘います。
「お、おは、おは、おはようございますっ!」
数秒後、大変な努力の末に3号は憧れの彼にやっと話しかけました。やや挙動
不審気味の上ずった声ではありましたが。

「あれ? こんなところに踏切があったのか」
突然踏切から声をかけられた金色の彼は少し驚いて、チラリと3号を見ました。
「あ、はい、その、すみません……」
「ふうん、ずいぶん小さい踏切だなぁ。まぁいいや」
 金色の車両は3号の挨拶をさらりと受け流し、前方で遅々として進まない各
駅停車の車両を恨めしげに眺めながら、ぼそりとつぶやきました。
「俺はね、こんなふうに各駅停車ごときの尻をじわじわ追いかけているような
チンケな車両じゃないんだよ」
280: 僕の金色の 4/7 2010/04/16(金) 17:27:22 ID:VNAwLLxG0(5/8)調 AAS
 彼は、以前はラッシュのピークを避けた時間帯に走っていました。ところが
今回のダイヤ改正でこういった朝の混雑に強引に巻き込まれるようになってし
まい、えらく腹を立てているようなのです。
「俺は特急列車なんだ。しかもただ停車駅が少ないだけじゃない。都会の喧騒
から、自然あふれ、心休まるリゾート地へ快適にお客様をお連れする、お客様
にラグジュアリーな旅をお約束する、その為に俺は作られたんだ。
 だからスタイリッシュだし、台車もシートも特製で乗り心地は最高だし、窓
が大きくて景色もいいし、騒音も少ないし、終点のホームは俺専用だし、車内
販売のお弁当は有名料亭のものだし、美人アテンダントも乗っている」

 ここで信号が橙黄ニ灯に変わりました。金色の車両は徐行をはじめ、ずるず
ると進みながらもさらに話し続けました。
「それがどうだ? こうやって朝から延々と各駅停車の尻を眺めている。しか
も乗っているのは寝不足のサラリーマンやOLばかり! 俺の座席で経済新聞
読むな! 俺の座席で化粧をするな! 俺の座席は日常から非日常へのアプロ
ーチなんだぞ!」
 金色の彼は、愚痴を吐きながら通過していきました。

 3号は、憧れの彼がいきなり怒っていたことに少なからず驚きました。美し
く品が良いと思っていた彼が、乗客に対して文句を言っていたことには少々
ショックを受けました。
 でも同時に、彼はきっとリゾート列車として高いプライドを持っているのだ、
だからあんなに怒っていたのではないか、とも思ったのです。
「あんなに美しく作られたんだ。通勤に使われるのは嫌だろうな。僕だって彼
が通勤電車だなんて似合わないと思うもの」
281: 僕の金色の 5/7 2010/04/16(金) 17:30:37 ID:VNAwLLxG0(6/8)調 AAS
 次の日の朝からも、金色の車両は3号の手前の信号で止まっては同じように
こぼしていきました。日中から夜と土日や祝日は軽快にリゾート列車として走
ってはいましたが、3号には彼が以前よりどこか元気が無いように見えました。
「僕にはダイヤを変えるなんてスゴイことは絶対できないけれど、でも何か、
彼の為にしてあげられる事はないだろうか……」
 考えた末、自分にできることは聞くことだけなんだと3号は思い至りました。
だからどれだけ長い愚痴であっても同じ愚痴が繰り返されても、3号は黙って、
時には相槌をうちながら、金色の車両の話を聞き続けました。

 金色の車両は独り言のように不満を吐き散らかしていきました。小さな踏切
にこぼしたところで何かが変わるとは思えません。それでも彼は話さずにはい
られなかったのです。
「この間、俺の車内で酔っ払ってゲ○吐いた奴がいたんだ。この俺の中で○ロ
だぞ? あり得ないだろ」
「それは酷いね。すぐに掃除してもらえたの?」
「当たり前だ。俺の車内が汚いなんて許されないことだ。お前は知らないだろ
うけど、ゲ○吐かれるって本当に情けない気分になるぞ」
「……わかるよ。悲しい気持ちになるよね」
「お前も吐かれたことあるのか?」
「足元にね……。雨が降って綺麗になったけど……」
 信号が変わり、金色の車両は走りはじめました。いつもこんな風に、2人の
会話は中途半端に途切れていました。

 3号の次の踏切を通り過ぎたあたりで、金色の車両はさっきの会話をなんと
なく反芻していました。
「雨が降って綺麗になったって……。あいつ、掃除してくれる人いないのか」
 ここにきて金色の列車は、あの小さな踏切はいつも一人ぼっちで立っている
んだということにやっと気が付いたのでした。
282: 僕の金色の 6/7 2010/04/16(金) 17:34:20 ID:VNAwLLxG0(7/8)調 AAS
 ある日、いつものように3号の前に止まった金色の車両は言いました。
「おい、俺のフロントのワイパーを見てみろ」
「何? あっ! 紅葉!」
 朝日に照らされてプラチナに輝く車体の前面に、真っ赤な紅葉の葉がそっと
添えられています。それは彼の赤いボディラインとコーディネートされている
かのようで、金色の車両にひどく似合っていました。

「この辺のは、まだこんなに赤くなってないだろう?」
「うん。山の方はもうこんなに赤いんだね?」
金色の車両は走り出しの向かい風に合わせて器用にワイパーを動かすと、紅葉
の葉をふわりと、3号に向けて飛ばしました。
「お前は見に行けないから、仕方ないから持ってきてやったよ」
「ありがとう!」
 3号は、自分の列車進行方向表示器の上に舞い落ちた紅葉の葉を眺めました。
風よ吹くな、紅葉の葉よ、ずっと僕の上にいておくれと願いました。金色の
車両がどこにも行けない自分のためにプレゼントしてくれたことが、とても
嬉しかったからです。
 その葉を通して、目の前の線路が行き着く遠い山に思いを馳せました。赤や
黄色に色づいた山の中を走る金色の車両も、さぞや美しいことでしょう。でき
れば見てみたいものだと、3号は思いました。

 ある日の昼下がりのことです。3号は向こうから、車椅子を自分でこいで
いるおじいさんが近づいて来るのに気が付きました。
「僕を渡るつもりなのかな? こちら側は階段なんだけど……」
 近所の人達は、この踏切の片側が階段であることをみんな知っています。
それでも念のため、踏切の向こう側には『この先階段につき自転車・バイクは
通れません』という看板が立っています。
283
(1): 僕の金色の 7/7 2010/04/16(金) 17:38:40 ID:VNAwLLxG0(8/8)調 AAS
 でも、おじいさんはその看板に気が付いていないようでした。
「この辺に住んでいる人じゃないのかな?」
踏切の真ん中が高くなっていて、向こうから階段が見えないのもやっかいです。
「誰か階段だって教えてあげて! 電車が通り終わったら僕は遮断機を上げな
くてはならないんだ!」

 左右から時間差で通過していた電車がどちらも通り過ぎ、遮断機が上がった
ので、おじいさんは踏切を渡り始めました。そして真ん中を過ぎたあたりで、
やっと反対側が階段であることに気づきました。おじいさんはあわてて元いた
方に戻ろうとしましたが、この3号踏切は幅が1mも無いのです。
 おじいさんは車椅子の向きを変えようとしますが、今にも脱輪しそうです。
3号に次の電車が近づいているとの信号が届きました。もう少ししたら警報機
を鳴らさなければなりません。
「誰か! 誰か! 気が付いて!」
自分が人と話せないことを、今日ほど呪った事はありませんでした。

 おじいさんは結局、たまたま通りがかった近所の主婦達に助けられました。
反対側に脱出できた頃には、警報機が鳴り始めていました。主婦達はおじいさ
んに声をかけながら、この踏切はホント危ないのよと口々に言いました。
「前に○○さんの娘さんが自転車で通ろうとして階段で転んでね……」
「うちの娘はベビーカーで……」
彼女達は過去にこの踏切で起きたトラブルの例を挙げていき、3号はそれを
悲しい気持ちで聞いていました。

 直後、電車が轟音とともに通り過ぎて主婦達の声はかき消され、3号の耳に
「また町会で言おうと思うのよ……」
という断片的な言葉だけが残ったのでした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
284: 世紀の邂逅 1/3 2010/04/16(金) 20:47:57 ID:mlhCLfQhO携(1/3)調 AAS
ナマ、というか干物で丸クス×円ゲルス。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 1844年8月末、パリ。
 ヴァノー街のとある家で、2人の青年が対面していた。
 2人とも背が高くがっしりしていたが、同時に対象的であった。

「…私は、またあなたにお会いできるのを楽しみにしていましたよ。マ/ル/ク/ス博士」
 シルクハットにステッキという粋ないでたちの若者が、いくぶん頬を染めて手を差し伸べた。
 背が高く、肩幅が広く、痩せた若者は、意思と知性、温厚と鋭い観察力をたたえた顔をしていた。
 一度見たら、決して忘れられないような、そんな男だった。
「会いたいと思っていたのは君だけじゃないですよ、エ/ン/ゲ/ル/スさん」
 その家の主でもある黒髪の若い男は、差し出された手を強く握りしめた。
 肩幅の広い、ずんぐりとした印象のある彼は、深みをたたえた黒い瞳の率直で快活な眼差しをもっていた。
 それは人をひきつけずにはおられない目だった。
「君の『国民経済学批判大綱』を読みましたよ。あれは近年稀にみる、天才的な論文ですね。『ブルジョア経済の一切の矛盾は私的所有によって引き起こされる』というあなたの発見、これはまだ誰も述べていないことですよ」
 2人は小さなテーブルに向かい合って座った。
「それは褒めすぎですよ。私の到達したところは、あなたがこれに関わっていたなら、あなたはきっと、私よりもずっと早くに到達していたでしょう」
 エ/ン/ゲ/ル/スの細い端正な顔は、出会ったばかりの、けれど尊敬する友人からの率直な賛辞に紅潮していた。
285: 世紀の邂逅 2/3 2010/04/16(金) 20:50:41 ID:mlhCLfQhO携(2/3)調 AAS
 2人とも、手紙や論文で互いを知っていたために、まるで長い間の知り合いのような心地だった。
「今になって、2年前に君がケルンに訪ねてきたときの、僕の不調法が悔やまれます。
あのとき君がこれほどの知性と才能をもっていると知っていたら!」
「その話はなしですよ、マ/ル/ク/ス博士。私だって不遜なところがありました」
 2人は顔を見合わせるとにこりと笑った。
 2年前、ドイツのケルンで『ライン新聞』の編集長だったマ/ル/ク/スのもとを、イギリスへ赴く前のエ/ン/ゲ/ル/スが訪ねたが、そのときの邂逅は不首尾に終わっていた。
「フリードリヒ、君の2年間の成果を聞かせてください。産業革命のあったあの国で、そしてブルジョワ社会の最も進んだ国で、君が何を見てきたのかを。
ケルンでもパリでも、海を越えた隣国の話は伝わってきていますよ。明日にもプロレタリアートが革命を起こすんじゃないかと、皆噂しているんですよ」
 マ/ル/ク/スが促すと、エ/ン/ゲ/ル/スは少し驚いたように目を見開き、それからにっこりとした。
「ええ、そうですね……実はそれに関して、論文を書こうかと準備しているところです。僕の故郷のヴッパータールでも見てきたことですが、プロレタリアートはまったくひどい状況に置かれているんです。
だからわたしは、イギリス人に向かって、見事な罪状目録を作ってやるつもりなんです。イギリスのブルジョアジーの殺人や強盗、その他ありとあらゆる大量の罪状を全世界に向けて告発するのです」
 エ/ン/ゲ/ル/スは熱をこめて語った。マ/ル/ク/スは力強く頷いた。
286: 世紀の邂逅 3/3 2010/04/16(金) 20:52:37 ID:mlhCLfQhO携(3/3)調 AAS
「その点で、僕たち2人はまったく同じ結論にたどり着いた」
 マ/ル/ク/スがエ/ン/ゲ/ル/スのほうへ身を乗り出した。
「プロレタリアートこそが、この世界と人類を変革する偉大な使命を担っている。君も、そう確信しているんですね、フリードリヒ」
「もちろんですよ、カール。プロレタリアートの勝利を、私は信じて疑いません」
 エ/ン/ゲ/ル/スが応じると、マ/ル/ク/スは嬉しそうに頷いた。
「われわれは共同作業ができますよ、フレッド。われわれの至った結論に攻撃を加えてくる連中、プロレタリアートを搾取する彼らを敵に回した、人類史的にも偉大な事業にとりかかるのです」
「まったく同感ですよ。…カール、僕は、あなたのような親友をずっと探していましたよ」
「僕こそ、君のような素晴らしい友が欲しかった」
 言い合って、2人のドイツ人の若者は陽気な笑い声を立てた。
「ワインを開けましょう。今日は記念すべき日ですよ」
 マ/ル/ク/スが言った。
「すべてのブルジョアジーにとって、もっとも恐ろしい敵が手を取り合ったんですからね!」
 エ/ン/ゲ/ル/スが高らかに応じた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
マイナーで萌えててすみません…orz
頭いい人が天然でいちゃついてるのが好きです。
あと、直訳したような文章で書くのが楽しいです。
287: 2010/04/17(土) 01:50:48 ID:z4Y2pQcqO携(1/2)調 AAS
そんなことより頭いい人に聞きたいんだが、スタヴローギンの見る幻ってなんなのよ
チホンには正体が一つの雑多なものと言いつつ、文書ではマトリョーシャになってる
マトリョーシャと鬱陶しい小悪魔どもが元々同じ存在だったってことか?
288: 2010/04/17(土) 01:51:29 ID:z4Y2pQcqO携(2/2)調 AAS
誤爆死んできます
289: 2010/04/18(日) 01:21:54 ID:22jpzYcB0(1)調 AAS
>>243
遅ればせながらGJ!
姐さんの本編と専スレの行間補完力パネエっす。
側にいて欲しい、お側にいたい、それだけの望みすらはかない。
せつなすぎるよ先生。
290
(1): 生 親愛の赤 0/5 2010/04/18(日) 01:32:31 ID:WWQx7z5XO携(1/6)調 AAS
なまもの。完全捏造です。ダメな方はスルーしてください。
数年前の話です、捏造120%なのでもうパラレルみたいなものだと思っていただければ…

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
291: 生 親愛の赤 1/5 2010/04/18(日) 01:34:11 ID:WWQx7z5XO携(2/6)調 AAS
彼は世界に愛されていた。選ばれた者とそうでない者がいたとすれば、彼は前者だ。
才能があるというだけでは役に立たないこの世界を、圧倒的な実力と素晴らしい成績を示すことで黙らせて、あの場所で咲き誇る姿が好きだった。
悠然と笑う彼のわずかな表情の違いさえも判る距離で、彼が見つめるその先にいられることが誇りだった。
彼は世界に愛されすぎてしまった。

ぺたんと胸と胸をつけて、彼の左手で俺の右手を掴んで指を絡ませて、鼻と鼻を擦り合わせて。
彼の普段の振る舞いから、体温は低いものだと勝手に思っていたものだから、熱い素肌がすこし意外だった。
乾いた唇を開いて甘ったるい空気を吐き出しながら、彼は笑っていた。
それはどこかよそよそしさを感じさせるもので、彼の焦燥を汲み取るには十分だった。
彼が彼でいられなくなるようなことが起きているのだ、認めたくなんてないのだけれど。
292: 生 親愛の赤 2/5 2010/04/18(日) 01:35:10 ID:WWQx7z5XO携(3/6)調 AAS
暗い廊下の突き当たりで告げられた短い言葉を思い出す。なぜこんな話になったかなどもう忘れてしまった。そんなものはどうだってよかった。
おおきな背中をちいさく丸めるようにして、ぎゅっと両手を握りしめて、しかし視線だけは揺るがず強くこちらに向けられていて。
弱った姿で自分に助けを求めた彼の手を振り払うことができなかった時点で未来は決まっていたのかもしれない。
そのときの彼の瞳の熱さも吐息の色も、きっと自分は生涯忘れはしないだろう。それだけを覚えていれば十分だ。

彼があまりに情熱的で魅力的で煽情的ですらあったので、誤解してもいいと思えた。
彼は本気なのだと思い込んでもいいのではないかと。

液状にとろけた彼が覆いかぶさってきて、身体のすべてを包まれた。ぜんぶそのまま吸収されてしまったいま、自分のすべては彼のなかだ。
そして同時に、彼の身体を毛細血管のように支配しているのは自分だ。
目が合えば彼の考えていることがわかるし、彼が自分にどうしてほしいのかがわかる。こんなときまでわかりたくはなかった。
彼の想いにこたえてやりたいと考えることは、自分にとって当然のことで、それに抗う術など持ち合わせていなかった。
293: 生 親愛の赤 3/5 2010/04/18(日) 01:36:06 ID:WWQx7z5XO携(4/6)調 AAS
だいじょうぶ。そう言って彼がにやりと笑えば、たいていのことはなんとかなるのだから不思議だ。
動揺もなにも表には出さず綺麗に笑うものだから信じてしまう。そうしていくつもの逆境を切り抜けてきたのだから、
大丈夫と彼が言うならば大丈夫だ。そう、この世界を支配する彼が大丈夫だと言っている。
彼が自分のことを見てきたと言う時間と同じだけの時間、自分は彼を見つめていた。信頼している、なんて簡単に言えるはずもない。
彼に全権を委ねている、捧げている、どんな言葉も陳腐で役に立たない。「へいきですか」
指先で彼がそろりと顔に触れてきて、慈しんでいるかのような仕種で頬を撫でている。
そんなに平気ではない顔をしていただろうか。声を出そうとすると余計な感情まで溢れてしまいそうだ。
表現することができなかったから、せめてもの想いで彼の細い身体を抱きしめてやった。頷いてやることで伝わるとわかっている。
だいじょうぶ。自分が彼を安心させてやらなくてはならない。
294: 生 親愛の赤 4/5 2010/04/18(日) 01:38:29 ID:WWQx7z5XO携(5/6)調 AAS
***

圧迫感に気付いて目を覚ますと、彼の長くしなやかな腕が肩に回っていた。頭をまるごと抱え込まれていることに気付き、
必要以上の負荷をかけている彼の身体と腕が心配でたまらなくなった。どれだけのひとがその腕を好きでいるのか、
どれだけおれがその腕を愛しているのか、わからないわけがないくせに。だから本当はこんなこともするつもりはなかったのだ。
こちらの想いなど知らず、かれは静かな呼吸で眠り続けている。どんな苦痛も消えてゆくような、穏やかで揺らぐことない表情のままで。
少なくとも、悪夢にうなされているようには見えない表情に、心から安堵した。

見上げた先にある顔はまるで気に入ったぬいぐるみを手放さない子供の顔だった。
ぎゅっと締めつけられたその中から、それなりの労力と時間を費やして彼を起こさぬよう抜け出す。
緩みきった幼稚な顔にキスをしてやりたい。無意識に浮かんできた不用意な気持ちを、再生してこないように細かく切り刻んで捨ててやる。
愛しいなど、そんな身勝手な想いを抱いてはいけない。世界に愛されている彼を、自分の所有物にしてはいけない。
295
(1): 生 親愛の赤 5/5 おわり 2010/04/18(日) 01:40:03 ID:WWQx7z5XO携(6/6)調 AAS
彼が今日のことを後悔するようなことがなければいい。できることならいますぐ忘れてくれたらいい。
夢から醒めたあとは、なにもなかったことにして昨日までと同じ顔で笑ってくれればいい。
明日も、明後日も、どちらかがこの世界を去ったあとも、
ふたりで違う世界を生きることになったあとも、この先何年何十年先も、死ぬまでずっと。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

いつもありがとうございます。
296: 花冷え1/10 2010/04/18(日) 20:33:45 ID:b2+UlytTO携(1/9)調 AAS
オリジナル。
酔っ払ってヤっちゃう若気の至り。
年下攻。
オチが汚いです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマス。

 さっぱりわからない。
 既に何が何だかどうしてこんな状況になったのか。
 思いだそうとするほどに頭痛がする。

 バイトの飲み会終了後。
 飲み足りないと、新しいガンプラを買ったという噂を確かめに、上司でもあり駅から家が近いという理由だけで吉川さんの家に転がり込んだ。
 無駄に広い3LDK。
 一人暮らしには贅沢すぎやしないかと、散々冷やかして、嫌がる家主を無視してエロ本検索をかけたが、埃のない部屋同様に身綺麗なもので、至極ノーマルな雑誌が数冊。
 DVDも字幕のない何語かわからない暗いものが出てきたくらいだ。
 一人暮らしだとエロネタ溜め放題という将来の夢と希望と期待を返せこの堅物め。
 オレと渡辺は後頭部を一発ずつ殴られる。
 大人しく飲む、騒がない、寝場所だけ貸して欲しいと泣きついた結果、半ば強引に押し掛けただけの後輩を労るような優しさはない。
 チキショー。
 ちょっと先に生まれて、社員だからって横暴だ。
 冷蔵庫の中には、ワインとウィスキーくらいしかなくて、飲み慣れないオレはウィスキーの一杯目でアウト。
 調子に乗って飲んだ渡辺は、現在トイレでゲロと頭痛とランデブー。
 ははははは。ざまぁ見ろ。
 何だかフワフワして楽しい。
 支離滅裂な鼻歌に、嫌そうな表情の吉川さん。
 いつものトレードマークの眉間に皺は、今日も絶好調に3本がっつり。
「まま、そんな深刻な顔してても、ウザいし」
 部屋にあったウィスキーの蓋を開ける。
297: 花冷え2/10 2010/04/18(日) 20:36:38 ID:b2+UlytTO携(2/9)調 AAS
新しい瓶だが気にしない。
 何か吉川さんはわめいていたが、開けちまったもんは仕方なかろう?
 金玉の小さい男だ。
 あれ?ケツの穴だっけ?
 チンコ?
 ま、どっちでもいいや。
 とにかく小さい。
背だってオレより10cmは小さい。
威張っているからデカく見えていたが、実際には170と少しらしい。
190くらいあるのかと思ってた。
 なんだかんだで、オレが手酌で5杯ほどグラスにウィスキーを注いでやった頃、吉川が突然キレた。
「お前らタク出してやるから帰れ!」
オレと渡辺のケツが蹴られる。
 うっわ、暴力。
 月曜日に上にチクってやる。
 コートと渡辺を抱えて、追い出された部屋のドアを蹴る。
 一発後頭部を殴り倒され、盛大に渡辺ごとぶっとばされる。
 え?何この文系引きこもりっぽい癖に無駄な力持ち。
 SEだから理系か?
 廊下を連行されながらマンションから出される。
 真夜中ムードの田舎道。
 もともとここに来たのだって、終電を諦めたからだ。
「おい、無ぇよ。こんな電車止まってる時間にタクシー駅なんか来てねぇし。」
「ある。」
 断言か。
 足取りはしっかりしているが、目が据わっている。
 相当酔っているな。
298: 花冷え3/10 2010/04/18(日) 20:41:28 ID:b2+UlytTO携(3/9)調 AAS
 早足で人の腕を引く吉川の腕を払う。
 急に止まった勢いで、渡辺を背負っていたオレもこけかけるが、なんとか持ちこたえて両足をしっかり地に立てる。 
オレ、超カッコイイ!
 いかん、酔ってる。
 目が回る。
「・・・・・・・・」
 背中に負った渡辺が、何か呻く。
 あーだか、うーだかそんな感じだ。
「どうした、渡辺?」
 背中から地面へ下ろし、頬を数回叩く。
 吉川も気になったのか、渡辺の背中をさする。
「吐くか?少し先に公園があったぞ」
 表面だけはマトモになったのか、酔っぱらっていてもそこだけ正常なのか、はたまた別な何かなのか、吉川が今は正常だ。
「・・・変質者・・・」
 は?
 地面に座り込んだ渡辺の、まっすぐ指指す方向へ目を向ける。
 子供の落書きのような絵と、変質者注意の看板。
 夜間でもハッキリ見えるようにと気遣いか、夜目にも痛い蛍光イエロー。
 渡辺は、ごそごそとカーキ色のアーミッシュコートを広げて、「変質者じゃーーーーーーーーー!!!!!!!」と叫ぶや否や、公園の植え込みに突撃し、ピクリとも動かなくなった。
 ポカンと置いてけぼりのオレ。
 同じくポカンとする吉川。
 え?
 え?
 どいうい
299: 花冷え4/10 2010/04/18(日) 20:46:39 ID:b2+UlytTO携(4/9)調 AAS
※最後の行訂正:どういう事ですか?
 ネタですか?
 全力で置いてけぼりですよ。
「・・・木元くん、・・・僕にはサッパリついていけなんだけど、今時の若い子はこんなもんなんか」
 遠い目をして吉川が呟く。
 いやいや、同じ大学生で、学部も同じではありますが、オレにだってサッパリですよ。
「全然着いてけません。オレにもサッパリ。」
 惚けたように道に座り込み頷きあう。
 そら解らんよな、と妙な連帯感を共有しつつ、重い腰を上げる。
 思いの外、遠くまで走り抜けた渡辺の背中をさする。
 全く反応無し。
 むしろ心地よさそうに寝息を立てて、完全にあっちの世界。
 どうしようもない状況を報告しようと振り返れば、吉川が一人でコートの前を広げて得意げな笑み。
 アルコール以外の頭痛で、目の前がクラクラする。
 ああ、もうどうしてこんなにアホばっかりか。
 本気で泣きたい。
 オレは今、世界で一番味方が少ない危険地帯へ突入したのか。
 得意げな酔っぱらいとの距離を詰める。
「アンタ、何やってんですか。」
 薄い春物のコートを広げ、千鳥足と酔拳と足して割らずとも結局グダグダなままの、どうしようもない足取りで細い小道へ消えてゆく。
 手の施しようのない酔っ払いが増えた。
 今日はもうこれなんて厄日?
 金を持っているのは吉川なので、しょうがなく追いかける。
 普段マトモな振りして、どんだけ駄目な大人だ。
「吉川・・・、もう諦めてマンション帰るぞ。」
 やっとこさ追いついた細い小道、吉川の右腕を掴んで持ち上げる。
300: 花冷え5/10 2010/04/18(日) 20:54:44 ID:b2+UlytTO携(5/9)調 AAS
 少しはしゃっきりするかと思いきや、全くそんな事はなし。
 地面にしゃがみこんだまま、寝転がる。
 お前、髪の毛とかドロドロだろ。
 ほんとに社会人かよ。
「起きろよ。」
 何度か肩を揺すぶる。
 眠そうに目を擦った後、片手で自分のコートを広げ、先ほども聞いた言葉を繰り返す。
「変質者。」
「知ってる。」
 べちんと一発頭を叩く。
 恨めしそうに呻いて、なにやらごそごそと探る仕草。
「変質者だ。」
 喉元近くまでシャツをまくりあげ、肋の浮いた胸元を見せつける。
「オイ、・・・」
 ゴクリと喉が鳴る。
 薄暗い街灯。
 夜にくっきりとそこだけ白く光って、呼吸まで吸い込むような生命力。
 突然突きつけられた生々しさに、息が止まる。
「よ・・・」
 所詮酔っ払いだ。
 正常じゃないんだ。
 酒のせいだ。
 頭の中で100くらい言い訳をして、吉川係長の前に座り込む。
 なぁ、酔ってんだろ?
 さらりとした薄い手触りのコート。襟を掴んで顔を寄せる。
「酔ってる?」
 鼻先同士が触れそうな距離。
 お互いの酒臭い息も、今なら許せる。
「酔ってるだろ?」
 黙って肩を震わせて笑う吉川の唇を塞ぐ。
 酔ってなきゃ許さないだろ?
「・・・酔ってる」
301: 花冷え6/10 2010/04/18(日) 20:57:25 ID:b2+UlytTO携(6/9)調 AAS
 わずかに首を傾げるようにして、押し返される唇。
 頬を撫でて首筋へと回る指。
 自然とかけられてくる体の重み。
 冷えた夜中の風とは違う、熱いくらいの体温。
 ああ、オレも相当酔ってる。
 なんで男なんかに手を出してんだよ。 ましてや直接の上司だ。
 これから仕事やり辛ぇだろ、どう考えても。
 薄く目を開け、現実の世界を確認。
 今キスしている相手は吉川係長。
 吉川係長はバイト先のちょっとエラい人。
 しかも仕事の鬼だ。
 ペアだってよく組まされる。
 そして男だ。
 目を覚ませオレ。
 俯き加減のせいで、薄く伏せられた瞼から陰を落とす長い睫。
 スーツではなく私服のせいでいくらか若く見える顔。
 濡れた唇を舐める薄い舌先の赤さ。
 再び頭が酔っぱらう。
 乱暴に抱き寄せ、膝を抱えあげる。
 最初に僅かに抗っただけで、くったりと力の抜けた体。
 抵抗がないことに半分苛立ちながら、無理矢理に服をはぎ取る。
 アンタ酔っ払ってりゃ誰でもいいのか。
 さすがに少しは抵抗が強くなったが、本気で今の状況を変えるのには弱すぎる。
 キスを繰り返しながら、吉川の腹を手のひらで撫でる。
 明日から仕事増やされてもいい。
 残業や掃除も理由つけて逃げないし。
「・・・あ」
 ジーンズのチャックに手をかけた時、さすがに吉川の手が胸を押す。
 それを無視して下着の中へと指を入れる。
 ふにゃりと硬さの欠片もないペニス。
 指で扱けば酔っ払いは僅かな抵抗で肩を押すが、唇を離す事無く舌は絡めたまま。
 抵抗よりも煽られていると強く感じる。
302: 花冷え7/10 2010/04/18(日) 21:01:24 ID:b2+UlytTO携(7/9)調 AAS
 酔うと性格変わりすぎだろ?
 自分もジーパンのチャックを下ろし、硬くなって先走りで濡れたペニスを握る。
 鈴口近くに溜まった先走りを指へと塗り付け、その指を吉川の唇に塗り付ける。
 オレの唇の代わりに当てがわれた指。
 その指に絡んだ粘つきが、何か知ってんのか吉川?
 離れた唇を追って寂しげに寄せられた眉も、唇の代わりが与えられればすぐに元へと戻り。
 くちゅくちゅと音を立て、人差し指と中指へと唾液を絡める吉川の口から指を抜き、なんども己のペニスと唇を往復させる。
 指を抜く時も、目を瞑ったまま物欲しげに薄く開けられた唇と、そこから覗く赤い舌先。
 ドクンと胸が強く鼓動を繰り返す。
 滅茶苦茶にしてやりたくなって、吉川の下着を剥ぎ取り、膝を右手で抱え左手で尻を割開く。
 なにも考える時間を与えず、強引に尻穴へとペニスを突っ込む。
 悲鳴地味た声を出し、逃げようとする吉川の口を逆手で塞ぐ。
 強張った体がペニスを締め付け、一瞬でもって行かれそうな程気持ち良い。
 騎乗位で貫かれた吉川も、尻から血を流しながら勃起してるとかどんだけマゾだ?
 我慢出ず、強引に尻穴へとペニスを突っ込む。
 悲鳴地味た声を出し、逃
303: 花冷え8/8 2010/04/18(日) 21:08:16 ID:b2+UlytTO携(8/9)調 AAS
※最後の行訂正:悲鳴地味た声を出し、逃げようとする吉川の口を逆手で塞ぐ。
 強張った体がペニスを締め付け、一瞬でもって行かれそうな程気持ち良い。
 騎乗位で貫かれた吉川も、尻から血を流しながら勃起してるとかどんだけマゾだ?
 そのまま腰を抱いて、貪る様にガツガツと上下に揺する。
 どこに突っ込んでいるのかとか、男同士だとか、これは強姦だとか、最後にちらっと浮かんだ仕事だとか。
 気が付いたら吉川の両脚がオレの腰へと周り、自分から尻を擦り付けてきて。
 イキそうだと、目を眇めて耐えている間際、頭上で小さなうめき声が聞こえたと同時、酒臭い物が勢いよく音を立てて胸元へ。
 ちょ、おま、ちょーーーーーーーーー!!!!!!!

 ゴホゴホと噎せる吉川を担ぎ、一目散に公園の便所へ向かって走る。
 その間にもあふれるゲロ、体中を伝う固形物のイヤな感触、今更暴れる吉川、色々な意味で止まらない頭痛、悪臭、つられてこみ上げる吐き気。

何でこんな事になったのか。
 何を間違えたのか。 解っていることはただ一つ。
「最悪だ。」

 さっぱりわからない。
 既に何が何だかどうしてこんな状況になったのか。
 思いだそうとするほどに頭痛がする。
 ただ一つわかった事は、オレはかなり年上で、手に。
 ほんと、明日からどうしよう。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
304: 花冷え8/8の下7行目以降訂正 2010/04/18(日) 21:13:43 ID:b2+UlytTO携(9/9)調 AAS
 さっぱりわからない。
 既に何が何だかどうしてこんな状況になったのか。
 思いだそうとするほどに頭痛がする。
 ただ一つわかった事は、オレはかなり年上で、仕事では鬼の、どうみてもかわいくないオッサンの、吉川係長へ突っ込んだという事だけだ。
 できれば一生縁がないまま終わりたかったが、男とヤッてしまった。
 全然好みじゃないし、男なんかまっぴらゴメンだと思ってたのに、勃った。
 しかも出した。
 ゲロ塗れの相手に。
 ほんと、明日からどうしよう。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

間違えまくってすみません。
305
(1): 2010/04/19(月) 01:53:37 ID:LeGmh4iK0(1)調 AAS
>>290
なまものって注意があるけどヒントくらい書いてくださいませんでしょうか?
読んでも何のジャンルなのか全くわかりません
>いつもありがとうございます。
ということは続きものでしょうか?
306: 2010/04/19(月) 09:49:05 ID:B3B4kblM0(1)調 AAS
>>305
290の人は2008年から「〜の赤」って題名のシリーズで
時々作品を投下してくれる人ですよ
今回で6作目だと思います
自分も全く元ネタがわからないので
もうオリジナルとして楽しませてもらってます
307: 僕の金色の(2) 1/6 2010/04/19(月) 11:39:32 ID:h4SAwe7m0(1/7)調 AAS
オリジナル鉄道もの半擬人化。エロ無しです。バッドエンド注意。
>>283からの続きです。今回で終わりです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 数年が経ちました。金色の車両と3号はすっかり打ち解け、何でも話せる間
柄になっていました。

 金色の車両の話は愚痴ばかりではなくなっていました。終点の観光地の雄大
な景色について話したり、変な乗客を乗せた時の話を面白おかしく語ったりも
しました。各駅停車がノロノロ詰まっていても、腹が立つことも無くなりまし
た。3号の手前の信号が赤くないと、がっかりしている自分に気が付きました。

 彼は時々、沿線に咲く花の花びらをとらえて3号に届けました。桜、ツツジ、
あじさい、コスモス。小さな野の花の時もあります。
「俺は花なんかに興味は無いが、お前が動けないから持ってきてやったんだ。
お客様の為に、たくさん咲いているところをゆっくり走るんだ。これはあくま
でもそのついでだから」
金色の車両はいつもそう言うのでした。

 3号は金色の車両の話を楽しみにしていました。彼の為に話を聞いてあげて
いたつもりが、いつのまにか聞くことが自分の楽しみになっていたのです。停
止信号の時しかゆっくり話せないことが物足りないくらいでした。もっと彼の
話を聞いていたいと思いました。
 そしてそれ以上に、朝日や夕焼けの中、太陽の光をいっぱい浴びながら走っ
てくる金色の車両が相変わらず好きでした。

「キミは本当に綺麗だ」
ある日3号は、これまでずっと心の中だけで思ってきたことを、思い切って口
に出してみました。
「…………。当たり前だろう? 俺は特別なんだから」
一瞬の沈黙の後、金色の車両はさも当然のように答えました。いつもと違って
何故か3号から目を逸らして答えていましたが。
308: 僕の金色の(2) 2/6 2010/04/19(月) 11:46:01 ID:h4SAwe7m0(2/7)調 AAS
 数日後の夜、その日最後の往復仕事を終えた金色の車両が、車庫に向かって
珍しく徐行運転で走り抜けていきました。
 昼間見ると金色や白金に見える彼の身体は、夜間に線路を照らす白い照明の
中では銀色に浮かび上がります。何しろ彼は、その鉄道会社の看板車両でもあ
りましたから、いつだってピカピカに磨きあげられていました。そのピカピカ
の銀色ボディに沿線で灯る信号機やネオンの色とりどりの光が反射して、それ
はそれは幻想的な雰囲気を醸し出していたのです。

 うっとりと銀色の虹になった彼を眺めていた3号の耳に、
「お・や・す・み……、さ・ん・ご・う……」
という声が響いてきました。
「えっ?」
いつもいばっている彼の、今までに聞いたこともないような優しい声。3号の
中に何かあたたかいものが広がっていきます。
「おやすみなさい……」

 幸せそうに答えた3号から少し離れたところで、数人の男性達がなにやら話
をしていました。彼らは残業している公務員と会社員でした。区役所とか県庁
とかそういうところの職員と、3号や金色の車両が所属している鉄道会社の社
員と、ゼネコンの社員です。

 その日以来、3号の周りにはやたら人が多く来るようになりました。最初は、
双眼鏡のようなものを持った人と、何かの図面を広げた人がきました。次にい
つも3号を渡っている近所の住民さんが集まったりしました。その後に、ヘル
メットをかぶった人達が大きなトラックとともにたくさんやってきました。
 彼らは3号から少し離れたところにある線路際の空き地に穴を掘り、鉄の杭
を打ち込み、コンクリートを流しました。3号は自分の仕事をしながら、毎日
横目でその様子を眺めていました。
「何を作っているんだろう?」
309: 僕の金色の(2) 3/6 2010/04/19(月) 12:05:48 ID:h4SAwe7m0(3/7)調 AAS
 工事は昼も夜も続きました。線路を挟んだ両側で作られていたものが線路の
上空に伸びはじめ、数ヵ月後には左右の建物が線路の上で繋がりました。両側
には屋根とスロープの付いた階段と、大きなエレベーターがありました。

 ヘルメットをかぶった人達がいなくなり少し静かになった頃、役所と鉄道会
社と近所の人達が、新しくできた建物のところに集まりました。人々はエレベ
ーターに乗ってこの新しい橋に登り、そのまま線路の反対側に渡っていきまし
た。みんな嬉しそうでした。
 3号を渡ってくれる人はとても少なくなりました。開かずの踏切になってし
まう朝のラッシュの時間帯には、3号の周りには全く人がいなくなりました。

 数日後、3号のところに鉄道会社の人達がきました。3号の身体に手をかけ
てグラグラと揺すってみたりしています。
「結構キテるなぁ。来月のいつだっけ?」
「14日ですね。すぐは無理なんでとりあえず止めるって」
 3号は自分がこれからどうなるのか悟りました。いやきっと以前から、あの
橋ができた時から、何が起きるのか本当は分かっていたのかもしれません。

 朝、赤信号で止まった金色の車両は、いつも通り3号に話しかけてきます。
3号も、何事も無いかのように普通にそれに答えます。
「そういえばな、新しく出来たあの橋の野郎、なんか感じ悪いんだよ」
「……そうなんだ」
「ここじゃなくて、1つ前の信号で止められるとあいつの前になるだろ?
だからこないだ一応挨拶してやったんだけど、あいつ無視しやがった。この俺
の方から挨拶してやったっていうのに! 腹立つよなぁ」
「……そうなんだ」
「……? どうしたんだよ? お前最近なんかぼーっとしてないか?」
「そんなことないよ。踏切がぼーっとしていたら、通る人の命に関わるもの」
「そりゃそうだけど……」
 信号が変わり、いつも通りの尻切れトンボな会話を残して金色の車両は走り
出しました。
310: 僕の金色の(2) 4/6 2010/04/19(月) 12:09:48 ID:h4SAwe7m0(4/7)調 AAS
 何日経っても3号は、金色の車両に本当のことを言えませんでした。目の前
を金色の車両が通過するたびに、胸が張り裂けそうになりました。いつも饒舌
な金色の車両も、何故か3号を問い詰めることはできませんでした。お互いに
心にわだかまりを抱えたまま、日々が過ぎていきました。

 某月14日。今朝も金色の彼は3号の前で止まりました。いつものように話
しかけられ、いつものように答えているつもりでした。
「……3号?」
「あ、うん、聞いてるよ」
「それならいいけど……。変わったから行くよ。またな」
「うん。またね」
 動き出した金色の車両は朝日を受けて白金の光を放ち、その光は3号のぼや
けた視界いっぱいに広がりました。涙で波打つ光の中を遠ざかっていく彼の姿
は、溜息が出るくらい美しく思えました。3号は、金色の彼が走り去っていっ
た線路をいつまでもいつまでも見つめ続けていました。誰にも気づかれないよ
うに、赤いシグナルを濡らしながら。

 最終電車が車庫に帰っていった後、3号のところにヘルメットをかぶった人
達がやってきました。いよいよなんだなと、3号は思いました。
 さよなら、僕の金色の……。

 静かに、役目を終えた3号踏切の電源が落とされました。間違って誰かが通
っては危険ですから両側にバリケードが築かれ、『使用禁止』の看板が立てら
れました。
 踏切として動けなくなった後も薄っすらと3号の意識は残っていて、淡々と
作業をする工事の人々の声を、ただぼんやりと聞いていました。
311: 僕の金色の(2) 5/6 2010/04/19(月) 12:13:11 ID:h4SAwe7m0(5/7)調 AAS
 次の日の朝。すぅと目の前に車両が止まる気配がしました。彼なのだと音と
振動で分かりました。けれどももう、あの光り輝くプラチナの、3号が大好き
な美しい彼の姿を見ることはできませんでした。3号の赤いシグナルにはカバ
ーがかけられていたからです。

「よう」
いつもの通り金色の車両は3号に話しかけましたが、3号から答えは返ってき
ませんでした。
「おい、3号?」
 彼には、何がどうなったのか分かりませんでした。今まで一度だって3号が
自分を無視したことなどありません。それなのに、自分が来たというのに、こ
こにいるというのに、3号はカンともスンとも言わないのです。
「俺が通ってるのに、どうしてカンカンやらないんだ? 誰か渡ったら危ない
だろう? お前はいつも人間を気にしていたじゃないか」
 金色の車両は3号を見ました。いつもならウザイくらいに点滅している赤い
シグナルが見えません。他の踏切より少し甲高い、3号独特の警報機の音も聞
こえません。人が通る道の左右は、良く分からない板でふさがれています。
「3号……」

 3号の薄れゆく意識の中に、金色の車両の声が響いていました。
 さよならって言いたくなくて、最期までただキミの話を聞き続けていたくて、
こうなってしまうことをどうしても言えなかった。ごめんなさい……。毎日本
当に楽しかった。キミに会えて幸せだった。ありがとう。大好きだよ。
 彼に伝えたかったけれど、3号にはもう、それを伝えるすべは残されていま
せんでした。
312: 僕の金色の(2) 6/6 2010/04/19(月) 12:20:08 ID:h4SAwe7m0(6/7)調 AAS
 金色の車両はそれでも毎日3号に話しかけ続けました。もう答えは返ってこ
ないのだと分かっていても、話しかけずにはいられませんでした。思えば3号
から最初に声をかけられて以来ずっと、金色の車両はほとんど一方的に3号に
向かってしゃべり続けてきたのでした。一方的に話しているという状況だけな
ら前と同じなのに、今はどうしてこんなに悲しいのでしょう。
 彼は、とりとめの無い話に耳を傾け続けてくれた、そして美しいと褒めてく
れた3号に、自分がどれだけ甘えていたのか、どれだけ支えられていたのか思
い知ったのでした。ちっぽけで優しい踏切が、自分にとってどれだけ大きな存
在だったのかを。

「おい3号。今日俺は団体のお客様を乗せるんだ。終点の山では紅葉が見ごろ
なんだ。毎年言ってるけど、山が燃えているように赤くなるんだぞ。新しい観
光スポットもできて、とんでもなく混んでるんだ。俺が運ぶお客様で駅がいっ
ぱいになるくらいで、いつもより1往復多く走らなきゃならないんだ。それく
らい忙しいんだ。
 だからお前に、いつものアレをとってきてやるのは、少し……、少しだけ、遅
くなっちゃうかもしれないんだよ。でもそれまで、それまでは、ここにいろよ。
わざわざとってきてやるんだからな……」

 数日後、3号の全面撤去作業が始まりました。地面に埋められている黄色と
黒の身体が掘り起こされ、今にも引き抜かれようとしています。遠くから風に
のって優しいメロディが聞こえ、地面から心地よい振動が伝わってきます。
 その時、3号のシグナルにかぶせられていたカバーの片方が、重機のアーム
にひっかかって外れました。現れた真っ赤なシグナルの上に、真っ青な空と、
白い雲と、すぐ傍を走っていく金色の車両が映りました。

 金色の車体の鼻先を、静かに水がつたいました。天気雨と思った運転士はワ
イパーのスイッチを入れましたが、何故かワイパーは少し動いただけで止まり、
代わりに一枚の真っ赤な紅葉の葉が空に舞い上がって、3号のシグナルの上に
ふわりと降りたのでした。
313
(3): 2010/04/19(月) 12:22:26 ID:h4SAwe7m0(7/7)調 AAS
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
314: 2010/04/19(月) 12:36:17 ID:DlPGVZgIO携(1)調 AAS
>>313
GJ。
きゅんきゅんしながら、リアルタイム更新見ていました。
切な萌え良かったです。
315: 2010/04/19(月) 14:25:38 ID:n7NnYBNdO携(1)調 AAS
>>313
3号…°・(ノД`)・°・
良い物読ませてもらいました!
316: 2010/04/19(月) 16:48:32 ID:KKEV2y5w0(1)調 AAS
>>313
未読だったので>>277から一気に読んで、途中からもう目の前がぼやけたよ
切な萌えありがとう
317
(2): 2010/04/19(月) 19:38:18 ID:7tYsEsxZ0(1)調 AAS
失礼します。
ローカルルールの追加のお知らせです。

5)シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
 また、長期連載される書き手さんはトリップを付ける事を推奨します。
(参照:トリップの付け方→名前欄に「#好きな文字列」をいれる)
(6)感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬や、書き手個人への賞賛レスはほどほどに。
 作品について語りたいときは保管庫の掲示板か、作品が収録されたページにコメントして下さい。

この件に関するご意見ご質問等は会議室にて。
外部リンク:s.z-z.jp
皆様よろしくお願い申し上げます。
318: Absolute Zero 0/5 2010/04/21(水) 18:20:54 ID:GsWqJ+iz0(1/6)調 AA×

319: Absolute Zero 1/5 2010/04/21(水) 18:21:39 ID:GsWqJ+iz0(2/6)調 AAS
玉座から差し出される白い手に、音もなく触れる。
初めは指先で。続いて包み込む掌で、次には接吻する唇で。
委ねられた手の重みと、肌理の整った皮膚の滑らかさが伝わる。
しかし、何度触れてみても、体温だけは感じられない。

神の座を求め、科学技術による強化を重ねても、生身の人間だ。
血の通った肉体は、相応の温かさを持っているはずだった。
だが、男には何故か、それを感じ取れたためしがない。
薄い皮膚に触れるたび、感じるのはその奥底の冷たさ。
人の形をした身体に、人のものとは思えぬほど静謐な何かが。
しんと冷え切った何かがあるように、男はいつも感じていた。

男がその不可思議な温度を知った契機は、ひとえに総帥の命による。
否、より正確に言えば、彼は組織内で正式に認められた総帥ではなく
実権だけを影から手にした、表向きは一幹部にすぎなかった。

彼が実父たる当時の総帥を消し、組織の全権を一手に掌握した時。
その事実を知らされたのは男を含め、数人の幹部だけであった。
本来そう呼ばれるべき人物を失った今、総帥の座は空席であったが
何故か男は、その子息を――簒奪者にすぎぬはずの人間を
新たな総帥、ひいては自らの主と、ごく自然に認識していた。
仕えるべき相手は彼ひとりと、最初から定められていたかのように。
彼に忠誠を誓い、およそ現実的とは思えぬその志に従うことも
少なくとも男にとっては、至極当然の流れであった。

だが、そうした鋼の如き意志、あるいは忠誠心をもってしても
即座には受け入れることのできなかった指示が一つだけある。
男が未だ忘れることの叶わぬ、全ての契機となった命。
320: Absolute Zero 2/5 2010/04/21(水) 18:22:10 ID:GsWqJ+iz0(3/6)調 AAS
作戦への指示を与えるのと同じほどの重さで、あるいは軽さで。
眼前で跪く男に対し、要は当然のことのように総帥は命じたのだ。
傍に来て、自分を――有体に言い表すなら、抱くようにと。
実のところ男は、その時の総帥の言葉をはっきりとは覚えていない。
言葉遣いよりも内容そのものの方が、それだけ衝撃的であったのだ。

ともあれ、男はまず当惑し、次には堅く拒んだ。
今や己にとって、否、組織全体にとって絶対の存在。
私情など、いかにして抱けよう。まして欲望など。
それは幾億の命を奪うよりも、なお罪深い所業に思われた。

しかし、逃れようとする男を、総帥は許さなかった。
か細くも見える指で、砕けよとばかりに男の顎を捕らえ。
真紅色の瞳で、射抜くように見据えながら、ただ一言。
――神たる私に、禁忌などあると思うのか。
厳かな、正しく託宣と呼ぶに相応しいその響きに。
それきり男は、抗うことを止めた。
己が欲望を抱こうと抱くまいと、そんなことは問題ではない。
命ぜられたなら、理由など考えず、従わねばならないのだ。
それほどに総帥の存在は、男にとって絶対のものであった。

事実、その遣り取りの直後、男は再び痛感することになる。
主の望みの前には、己の意思など何ら意味を持たぬのだと。
自らが理性と思い込んでいたものは、全くの無力であった。
触れれば身体は自ずと熱を持ち、汗が伝い、呼吸は乱れた。
まるで思考よりも先に、肉体が彼に恭順を示すかのように。
321: Absolute Zero 3/5 2010/04/21(水) 18:22:46 ID:GsWqJ+iz0(4/6)調 AAS
その様に満足したのか、以降も総帥は男に同様の命を下した。
上辺だけを見れば、主導権を握っているのは男の側であったろう。
しかしその実、優位に立っていると感じたことなど一瞬とてない。
あくまで上に立つのは総帥の側であり、男はそれを拒めぬだけのこと。
いかなる理由によってか求められるのに、ただ応えるだけであった。
己の肉欲も、交わすべき情も、自覚している余裕すらない。
自ら口にすることこそなかったものの、おそらくは総帥もまた。
身体と共に重なるべきものが、およそ二人の間には欠落していた。

もっとも、忘我の淵で一瞬、閃くように何かを感じることはあった。
褥の上に広がる金の髪、焦点を失い視線を彷徨わせる瞳。
あるいは低く掠れる声、抜けるような白い肌に差す鮮やかな朱。
そうした光景が、突き上げるかの如く、不意に心を動かすのだ。
しかし、男はそれを表に出さなかった。必死にそう、努めてきた。
美しさを称える睦言、甘やかな抱擁、あるいは眼差しの一つさえ。
世俗の男女が行うようなそれらは、主の望むところではなく
むしろ、神たらんとする身への冒涜でしかないように思われたのだ。

しかし総帥は、それすらも許そうとしなかった。
男が視線を逸らそうとすれば、鮮やかな紅の瞳はたちまちにそれを悟る。
ほんの刹那であっても、見抜かれずに済んだためしなどなかった。
もっとも、見抜いたところで、整った面差しが怒りの色を宿すことはない。
ただ、戦いなど知らぬかのような細い手が、男の黒みがかった頬に沿い
無造作な、しかし有無を言わさぬ力で己の方に向き直らせるだけである。

強引に視線を合わせられ、男は直視せざるを得なくなる。
総帥の姿を。そして、それを目にして己の内に湧き上がった何かを。
先刻までは閃きのようであったその感覚は、続けばまるで烈日の光だ。
視界から、意識から、他の全てをかき消す、眩しいほどの衝動。
322: Absolute Zero 4/5 2010/04/21(水) 18:23:24 ID:GsWqJ+iz0(5/6)調 AAS
身も心も逃げ場を失った男を、総帥はその手を伸ばし引き寄せる。
招き寄せるのでも、ましてや抱き寄せるのでもない。
刈り込まれた白い髪を掴み、まるで玩具でも扱うように引き寄せるのだ。
そして、口付ける。
退こうとする男の頭を捕らえ、歯列を割って、深く。
拒む術など、もとより男の側には存在しない。
喉の奥で上げる微かな呻きすら、呼吸ごと飲み込まれてしまう。
互いの舌が別の生き物のように絡み、繋がり合った箇所がぎちりと軋む。
しなやかな白い脚は、容赦のない力で腰を挟み込み、擦り寄せてくる。

額から頬へ、そして顎の先へ。黒い肌を、透明な汗の雫が伝う。
やがて白い肌の上に落ちるそれを、男はどこか他人事のように見ていた。
熱い、のだろう。
皮膚で、あるいはそれ以外の箇所で、交わり触れている全てが。
だが、男にはその熱が、当然あるべきそれが感じられない。
神経を刺激しているはずのそれが、意識にまで届かない。
届くのはただ、皮膚を透き血を凍らせるような、冷え切った静謐。
間近で生じている、濡れた音すらもかき消してしまうほどの。
息を継ぐ間もなく、五感に注ぎ込まれるそれだけが全てとなる。

耳の痛くなるような静謐の後、互いの全身に張り詰めていた力が緩む。
その時に何を思うのか、総帥は決まって微笑んだ。
瞳の深い赤はわずかにその光を弱め、色の薄い唇は形良く弧を描く。
どこを見ているともしれぬその表情は、一分の屈託もなく美しい。
男の心など意にも介さぬ一方、それを隠し通すことは決して許さない。
人らしい感情など滅多に表さない、時に背筋が凍るほど整った相貌が
男を捕らえ弄ぶこの瞬間だけ、唯一満ち足りた様子を見せる。
その姿を目にするたび、男は痛烈に思い知らされるのだ。

これは、情交などではない。
神が人に対し、気紛れに与える、試練なのだと。
323: Absolute Zero 5/5 2010/04/21(水) 18:28:02 ID:GsWqJ+iz0(6/6)調 AA×

324
(1): 2010/04/21(水) 22:04:38 ID:NIubDAamO携(1)調 AAS
>>295
もしかして商売道具の色がお揃いの二人ですか?
325: 2010/04/22(木) 01:08:43 ID:lArZz1090(1)調 AAS
>>324
投下者さんへの質問は、保管サイトの感想板での方が良いかもしれない
外部リンク:s.z-z.jp
でも姐さんの言葉でピンときたwありがとう
326
(4): 2010/04/25(日) 18:04:54 ID:ZywIlU3z0(1/5)調 AAS
生モノ注意

タイガードラマ製作スタッフ&中の人の捏造ギャグです。
チーフD→竹地中の人というか、
チーフDは竹地中の人を美しく撮ることに命をかけています。
ちょっと竹地中の人の出演映画ネタバレもあるので注意。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
327: 恐るべき監督たち(1/3) 2010/04/25(日) 18:06:25 ID:ZywIlU3z0(2/5)調 AAS

O共「えー、これからディレクター会議を行いまーす」
W鍋・M奈辺「うぃーす」
O共「では、まず『O盛君のうなじをいかにセクシーに撮るか』ということについて、
D同士の見解を一致させておきたいと思います」
M奈辺「・・・・・・」
W鍋「他に話し合うことあると思うんですけど」
O共「もちろん。これは話し合いのとっかかりだよ」
M奈辺「ははは、そりゃそうですよね」
O共「そう。大事なのはうなじだけじゃないんだよ。O盛君のいいところっていうのはね、手、目、腰のライン・・・」
W鍋・M奈辺「・・・・・・」
O共「つまり全身・・・そう、全体だ。映像作品とは全体の調和によって、初めて価値が高まるものだからね」
W鍋「前半は意味わかんないけど、後半の意見には賛成です」
O共「そう。だからこそ、O盛君の撮り方について、意見を一致させておくべきなんだよ。
でないと、竹地の描かれ方に、我々の解釈の相違がそのまま反映されてしまう。
O盛君は製作者の心の鏡のような存在だからね。彼をいかに撮るかで、その人間の本心がわかるんだよ」
M奈辺「じゃあ、O共さんの本心って・・・・」
W鍋「しーっ」
328: 恐るべき監督たち(2/3) 2010/04/25(日) 18:07:07 ID:ZywIlU3z0(3/5)調 AAS

W鍋「とにかくさぁ、バンバーンと派手に行こうよ派手に」
O共「O盛君の出てた映画あったじゃない・・・・笑う景観ってやつ・・・・」
M奈辺「うーん、あんまり騒がしくしすぎるのもよくないでしょ」
W鍋「でも、幕末なんだから騒がしいもんだろ?」
O共「・・・・O盛君の撃たれるシーンあったんだよね・・・・俺なら、俺ならもっと色っぽく撮ったのに・・・・」
M奈辺「けど、対象はお茶の間なんですから」
W鍋「だからって、毒にも薬にもならない画じゃつまんないじゃないか」
O共「しかも、後輩から殴られるシーンもあったんだ。そういうのもさ、もっとこう・・・・」
M奈辺「やっぱり、フツーの演出が一番だと思います」
W鍋「でも、どの層を基準にした普通なんだよ」
O共「しかも、M佐湖君と一緒にヤクザに殺されそうになり、そこから絆が生まれるというおいしい設定が・・・・
その設定が完全に死んでいたんだよ! ああああ!」
W鍋・M奈辺「(泣いてる・・・!)」


カメラ「W鍋さーん、ちょっとこれ見てくださいよ」
W鍋「ん? どうした」
カメラ「なんかこう、竹地のセクシーショットが撮れたんですけど」
W鍋「あー、これは・・・・・・セクシーだな。なめらかだ。半開きだ。まさに光と影の奇跡だな・・・」
カメラ「で、どうしましょう。本編にはちょっと使えるかどうか微妙っすけど・・・」
W鍋「こういうのはな、持ち主に返すんだよ。O共さーん、O共さーん、いい画取れましたよー」
カメラ「持ち主なんだ・・・・・・」
329: 恐るべき監督たち(3/3) 2010/04/25(日) 18:08:16 ID:ZywIlU3z0(4/5)調 AAS

O共「こ、これは・・・」
W鍋「まー、本編にはちょっと使えなそうな画なんですけど」
O共「・・・・・・・・・」
W鍋「ああ、・・・まずかったですか? すいません、勝手にO盛さんのセクシーを撮っちゃって」
O共「・・・・・・・・・」
W鍋「うん、わかってます。こういうのは、O共さんの求めるセクシーじゃないんですよね。
どちらかというとO共さんの求めるセクシーってのは、ストイックというか、
追い詰められた中に発揮される何かであって・・・・」
O共「(ガッ!と手を握る)」
W鍋「!?」
O共「素晴らしい映像だ・・・・ついに君も・・・・この領域に」
W鍋「(うわぁ・・・仲間になったと思われたくないな・・・・)」


W鍋「なんか向こう盛り上がってるね」
M奈辺「O盛さんが砂糖君にポッキーを両端から食べるゲームをけしかけてるらしいです」
W鍋「ふーん、和むねえ」
M奈辺「なんか砂糖君も熱くなってるらしいですよ」
W鍋「そりゃまあ、O盛君に舌入れられそうになったら必死になるわな」
M奈辺「いえ、それがフラン使ってやってるせいで、どちらがチョコのついてる端からはじめるかについてのバトルが・・・」
W鍋「譲れよ。O盛が」
330: 恐るべき監督たち(3/3) 2010/04/25(日) 18:08:43 ID:ZywIlU3z0(5/5)調 AAS
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
331: 2010/04/25(日) 22:08:31 ID:/z9Zdb9y0(1)調 AAS
これは酷い
332: 2010/04/25(日) 23:40:52 ID:AjzDbz86O携(1)調 AAS
よしよし、携帯小説HPに帰ろうね……
333: 2010/04/26(月) 00:08:05 ID:q6RHMdoU0(1)調 AAS
>>326
超どストライク!
監督sの掛け合いにニヤつきながら楽しませて頂きました
334: 2010/04/26(月) 00:22:21 ID:+qKJH+3R0(1)調 AAS
>>326
これが小説…だと…?
酷すぎる
335: [sage] 2010/04/26(月) 00:31:51 ID:2lex2dgY0(1)調 AAS
>>326
わいわい会話してる情景が目に浮かぶようでした
チーフDの強すぎる思い入れ、イイです!
336: 2010/04/26(月) 00:41:29 ID:/Je6gXNjP(1)調 AAS
>>317
(6)感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬や、書き手個人への賞賛レスはほどほどに。
 作品について語りたいときは保管庫の掲示板か、作品が収録されたページにコメントして下さい。
337: 2010/04/26(月) 01:08:59 ID:FFrZI4lXO携(1)調 AAS
作品はけなされるし
感想は保管庫へ追っ払われるし
最悪だなここ
1-
あと 165 レスあります
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