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84: 2010/04/01(木) 10:34:42 ID:hmfqU+poO携(1)調 AAS
>>82
未知ーのナマモノは初体験だ!
どうもありがとうございます!!
85: 2010/04/02(金) 00:53:04 ID:z1SNM0Ex0(1)調 AAS
>>25
遅レスだけど萌えました
荷野未屋と香罪さんのやり取りがたまらんです!
86: 2010/04/02(金) 01:17:22 ID:ETn/Aey/0(1)調 AAS
>>25
当時規制で書き込めなかった…。今更ですが私もGJと言いたい!
二人のキャッキャぶりが好きだったんで萌え転がりました
心の潤いをありがとう!
87
(2): ピンポン 矢印の行方 1/9 2010/04/03(土) 00:07:19 ID:lWJv/Zo10(1/12)調 AAS
規制解除やっとキター!
ピンポン ドラチャイ
56-429 56-448 56-456 57-19 の続き

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

孔文革は辻堂学院高校卓球部の生徒達と一緒に、小田急線の新宿駅地下ホームで、急行を待っていた。
都内の姉妹校と交流試合をした帰りだった。
孔が辻堂学院を卒業し、卓球部のコーチになって、2年半近くが過ぎようとしていた。
全体的にスタミナ不足が目に付く。ラリーに持ち込まれると、小さなミスで得点を奪われる。練習メニューの立て直しをしなくてはならない。
まずは何よりも走り込みだろう。
生徒達はさばさばしたものだ。雑談で盛り上がっている。
さばさばしてるのも問題なんだけどな。
頭の中で練習メニューを組み立てていると、生徒の一人が「ねーねー、コーチ」と話しかけてきた。
「あそこの人、K大の風間さんじゃね?」
「え?」
孔が振り向くと、柱の向こうに風間竜一が立っていた。同じ急行を待っているのだろう。
「ほんとだー」
「え、なになに、誰だって?」
「かっけぇなー、俺、ファンなんだよね」
生徒達の視線に気がついたのか、風間が顔を向けた。
孔の姿を認め、一瞬驚きに目を見開いて、笑顔になる。
そう言えば前にも、こう言う顔を見たことがあったな、と思い出す。風間はロマンスカーに乗っていて、孔は反対側のホームにいた。
「孔!」
「風間」
孔が手を上げると、生徒が「えー、コーチ知り合い?」と大袈裟に驚いた。
「まあね」
「あ、俺知ってる。同学年だったんよね?」
「うん」
「えーマジマジ? コーチすごいじゃん」
88: ピンポン 矢印の行方 2/9 2010/04/03(土) 00:08:09 ID:lWJv/Zo10(2/12)調 AAS
同学年ということのなにがすごいと言うのか、生徒達が口々に言うのをドアを開けた急行に押し込み、自分も荷物を抱え直して電車に乗り込む。
風間が隣のドアから入り、荷物を網棚に乗せ、こちらを待つように見た。
近づいて自分の荷物も隣に乗せ、吊り革につかまる。
「すごい、偶然ね」
「本当だな」
生徒達はひとかたまりになって、こちらを気にする様子だったが、自分たちとは一線を画する存在と見たのか、それ以上は話しかけてこなかった。
あいつらでも遠慮するんだな、と孔は少しおかしくなる。
「辻堂の生徒か?」
「うん、今日、試合あたのよ」
「勝ったか」
「負けたよ。試合、少ない、だめね。練習、たくさん。試合も、たくさん。まだまだ全然。経験、不足」
「確かにその通りだな。相手と対峙することで体が覚えるものがある。…元気そうでなによりだ」
「元気よ。風間、前、ロマンスカー、乗てたね?」
「ああ。やはりあれは孔だったか」
「びくりしたよ」
「私もだ」
星野を空港に見送りに行ってから、どのくらい経ったのだったか。
「髪、伸ばしたね」
「ああ」
「いいね」
「そうストレートに言われると照れる」
「そう? 似合うよ」
風間は黙って微笑んだ。
孔の心臓が少しばかり、どきりと跳ねる。
89: ピンポン 矢印の行方 3/9 2010/04/03(土) 00:09:36 ID:lWJv/Zo10(3/12)調 AAS
「孔はこれから何か用事があるのか」
「学校行って、荷物取てきて、帰て、ご飯たべて、お風呂はいて、寝るよ」
シンプルな孔の生活に、風間は笑って頷いた。
「彼らは?」
「藤沢、着いたら解散」
「そうか。ではどうだ、食事でも一緒に。私は海王に用事があるのだが、すぐ終わる」
「ん。いいよ。なに食べる」
「藤沢にうまい定食屋がある。7時に駅で待ち合わせではどうだ」
いいよ。孔は窓の外を見ながら答えた。
なんだろう。風間の目を見ながら話していると、顔に血が上るような感じがする。
「念のため、携帯電話の番号を教えておこう」
「あ、私も、持てるよ」
携帯の番号を交換すると、後は近況報告のような会話になった。
今は辻堂のコーチのみか、と言う風間の問いに、「午前中、2時まで、スポーツセンター。遅番もある。それから、辻堂で、コーチ」と簡潔に答える。
「そうか、スポーツセンターか」
「楽しいよ。いろんな人、くる。卓球、台、たくさんあるからね、週2回、センターの教室でも、教えてる。あと、ジム。トレーナーも少しやる」
辻堂を卒業後、生徒達の授業が終わるまでの空いた時間を就労に当てることにした。
経済的にも自立を迫られ、藁にもすがる思いで受けた民間のスポーツセンターの面接が合格した。
後に聞くところによれば、辻堂の卓球部顧問の口添えがあったらしい。
「名門の名を復活させるために」が口癖の、卓球を何も知らない名前だけのただのおっさんだと思っていたのに、孔の卒業後について一番やきもきしていたのは顧問だった。
当時はさしたる感慨もなかったが、今は感謝以外に言葉が見つからない。
そんな経緯があって、もう2年以上、スポーツセンターの職員と、辻堂学院卓球部コーチの二足のわらじを履いていることになる。
本当に、時間なんてあっという間に過ぎるものだな。孔は思う。
会ってみればまた車の中と変わらずに会話が続く。
そう言えば、風間は俺のアパートの場所は知ってるけど、電話番号も住所も知らなかったんだな。
俺に至っては、向こうの連絡先を何一つ知らなかったわけだ。
別方向を向いて進んでいたベクトルが、気まぐれを起こし交差する。
交差した後は、また別の方向に進むのだろうか?
90: ピンポン 矢印の行方 4/9 2010/04/03(土) 00:10:49 ID:lWJv/Zo10(4/12)調 AAS
風間がうまいと言っていた定食屋は、本当にうまかった。
定食屋なだけあって、安くて量がたっぷりしていて、満足感がある。
炊き立ての白米、餃子、豆腐とわかめのみそ汁に、小鉢、漬物。風間は生姜焼き定食を頼んでいた。
餃子はちゃんと皮を練っているのだろうか。厚く、もちもちして、上海で食べるのと大差ない、と思う。
自分のように日本で暮らす中国人が作っているのかもしれない。
餃子と言わず、焼鍋とでもしてくれたらもっといいのに。
「おいしかた」
「海王の連中と試合帰りによく食べにきた。高校生の財布でも苦しくならないのがいい。それに、うまい」
孔が笑うのを見て、風間が怪訝な顔をした。
「なんだ」
「風間も、高校生、だたんだなあ、って」
「高校生だったではないか。試合しただろう」
「したけど、高校生には見えなかたよ」
「そんなことはないだろう」
本気でそう思うのなら、風間はちょっと変わってる。
「ぎょうざ、おいしかたよ」
「だろう? ちょっと本格的だろう」
風間はこれを俺に食べさせたくて連れてきたのか。
孔はポケットに入っていたガムを口に放り込むと、風間にも一つ渡した。
「これから、どする?」
「そうだな」
「今度こそ、風間、うちきて、お茶、のむ?」
「路上駐車を気にする必要もないしな。邪魔させてもらうか」
二人で顔を見合わせて、笑う。
自分の言っていることが相手に素直に伝わるというのは嬉しいことだ。
言葉は、日本に残ると決める以前から、コーチに強制的に日本語の学校に通わされていた。
そのせいあって、話す、聞くは日本に来た当初より格段によくなった。
けれど、それだけではないなにかが風間との間にある。
それが心地いい。
腹ごなしに孔のアパートまで、二人は連れ立って歩いた。
肩や腕のぶつからない間隔を開けて、並んで歩く。
照れ臭いような気持ちがするのはどうしてだろう。
91: ピンポン 矢印の行方 5/9 2010/04/03(土) 00:11:46 ID:lWJv/Zo10(5/12)調 AAS
結局二人が飲んだのは、お茶ではなく、酒だった。
数日前に木村や山田が遊びに来て酒盛りをして行った際に置いていった焼酎や日本酒が、部屋の隅に並んでいたのだ。
「旨そうなのが置いてあるな」
と言う風間に、それじゃ、とスナック菓子とつまみを出し、焼酎を出した。
「それ、瓶、いいでしょう」
『百年の孤独』と言う名前のその焼酎は、前に店頭で見て、名前に惹かれ、瓶に惹かれた。値段を見て諦めたのだが、家が酒屋を営む辻堂の同級生が、半分しかないけど飲もうぜ、と酒盛りの時に持ってきたのだった。
「名前がいいな」
「ね。私もいい、思う。友達、くれた。『まぁわん』もある」
「まーわん?」
「これ」
孔が台所から持ってきた瓶のラベルには、『魔王』と骨太な筆文字で書かれていた。
「まおうか。成程。百年の孤独は中国語で何と言う」
「『ばいにぃぁん・ぐどぅ』。それ、すごぉい高いから、ひとりで飲めー、友達、言う」
「私が飲んでは申し訳ないようだな」
「風間と飲むから、おいしいのよ。ひとりで酒、まずい。私、飲まないよ」
「では遠慮なく戴こう」
「うん」
92: ピンポン 矢印の行方 6/9 2010/04/03(土) 00:12:55 ID:lWJv/Zo10(6/12)調 AAS
風間と向いあって飲む酒は、木村や他の辻堂卒業生とわぁわぁと飲む酒とはまた別な味がした。
正直なところ、まだ酒の味の良し悪しはわからない。飲むという行為が楽しいのだ。
酔うだけなら、缶ビールで十分だ。
風間にその焼酎を出したのは、名前が、海王時代の風間を連想させたからだった。
アパートの壁に背を預けて、つまみを噛りながら、ゆっくりと酒を口にする。
風間は孔のベッドにもたれていた。
窓の外からは、ふざけながら大声をあげ歩く若い男たちの声に、はしゃぐ女の子の声が交じって聞こえる。
気持ち良く、酔いが回る。
二人はぽつりぽつりと会話を交わした。
孔は弱くはないが、強くもない。
軽い酩酊を覚えて風間を見ると、ほとんど変わらない様子で焼酎を口に運んでいる。
酒を飲んでいると、咽喉が渇く。孔は少し前、冷蔵庫にあったウーロン茶を出した。
そのコップとペットボトルが汗をかいている。
孔はコップに付いた水滴を、爪でなぞった。
大きくなった水滴が、ガラスの表面を伝って落ちた。
その様子を見ていた風間が、自分もウーロン茶を口にした。
「冷たいものを飲むと、咽喉が渇いていたことに気がつくな」
「風間て、おもしろい、ねぇ」
「そうか?」
「私知ってる、日本人、誰とも風間、ちがう」
「そうか」
「うん」
沈黙が流れる。居心地のいい沈黙である。黙っていることに不安を覚えない。
孔は幸せだった。
93: ピンポン 矢印の行方 7/9 2010/04/03(土) 00:13:51 ID:lWJv/Zo10(7/12)調 AAS
風間が腕時計を見た。
「時間を忘れていた。そろそろお暇しよう。終電が無くなる」
「え、あ、うん」
立ち上がりながら手にしていたコップをテーブルに置こうとして、孔は手を滑らせた。
「おっ」
「あ、ごめん、なさい」
風間のTシャツが濡れた。タオルを探して手渡すと、風間は軽く拭いて、
「着替えがある」
と、濡れたTシャツを脱いだ。
脱いだものを丸めて側に置き、スポーツバッグの中をさぐるのに、風間の背中が孔に向けられた。
バッグの口からラケットの柄が見える。孔は微笑んで、ふと、風間の背中に視線を移した。
孔の息が止まった。
風間の肩甲骨の辺りに、赤い痕が走っている。誰かが、背中を掻き抱いた痕に見える。
…女が、いるのだ。
風間のような男に、いないほうがおかしい。
冷水を浴びたように、酔いが一気に冷めた。孔の顔がこわばる。
「…それ」
「ん?」
「かのじょ、か?」
「なんだ?」
「せなか」
風間は一瞬けげんそうな顔をした。そして背中という言葉に思い当たったらしく、苦笑いを浮かべた。スポーツバッグから出したTシャツを着込む。
「彼女ではない」
「おんなだ」
「女ではあるが、恋人ではない」
「風間は、好きでないの人、寝るか」
94: ピンポン 矢印の行方 8/9 2010/04/03(土) 00:14:59 ID:lWJv/Zo10(8/12)調 AAS
孔の胃の上辺りがきゅっと縮み、怒りが首をもたげた。
「好きではないわけではない。ただ、恋人とは言わんと考えている」
「わからない」
「そういう関係もある。何を怒っている」
なぜ怒っているのか、孔は自分でもわからなかった。風間の女関係が孔に関係するはずもない。はずもないのだ。
息を吐く。
「…わからない」
少し前まで孔は幸せな気持ちでいっぱいだった。それがぺしゃんこにつぶれて、惨めな気持ちでいっぱいになっている。
こんな気持ちでさようならするのは嫌だ、と孔は思った。しかし孔には今の自分の心のうちを表すすべがなかった。
風間が立ち上がり、荷物をまとめ、肩にかけた。孔ものろのろと風間の後について玄関まで出る。
「すまなかったな」
「…なぜ、風間あやまる」
「怒らせたようだ」
「怒てないよ」
風間は、そうか、ならいい、と呟いて、アパートのドアを開けた。孔もサンダルを履いて、外に出る。
「かざま」
風間が振り向く。
「…また」
「また」
「駅、わかる?」
「ああ、大丈夫だ」
「…バイバイ」
風間は笑みを浮かべ手を振って、歩き出した。
孔は少しの間その後ろ姿を見送っていたが、途中で耐えきれなくなって中へ戻った。
ドアを閉めて部屋に入ると、風間のいた気配が色濃く残っていた。
それだけに、一人になったことが孔をうちのめす。
胸が苦しい。
片付けをする気になれず、ベッドに横になって目をつぶると、涙がこぼれた。
泣くなんて、もうずっとなかったのに。
どうして俺は泣いているんだ。
孔はシーツに顔を埋め、泣き声を噛み殺した。泣いている自分を認めたくなかった。
泣いている自分が信じられなかった。
95: ピンポン 矢印の行方 9/9 2010/04/03(土) 00:15:41 ID:lWJv/Zo10(9/12)調 AAS
そうか。俺は、風間のことが好きなのか。
噛み殺した泣き声が嗚咽に変わって、ようやく孔は自分の気持ちに気がついた。
あの怒りは、嫉妬だったのか。
風間に抱かれる女がいることに。
気がついたところで救いがあるわけではない。
むしろ、気がつかなければよかったのだ。

孤独なのは風間ではない。俺だ。

交差したベクトルは、やはりまた別の方向へと進むのだ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
96: 2010/04/03(土) 00:36:40 ID:ANtFtA1PO携(1)調 AAS
>>87
続きktkr!
ありがとう、姐さん
またこの先を待ってるよ!
97: 2010/04/03(土) 01:52:53 ID:JrchocVqO携(1)調 AAS
>>87
なんてもどかしい…!そして相変わらず孔のたどたどしさが愛らしい
続き楽しみにしてるよ
98: ピンポン そしてまた太陽が昇る 1/3 2010/04/03(土) 22:48:40 ID:lWJv/Zo10(10/12)調 AAS
投下される方がいらっしゃらないようなので、またちょっとスレお借りします
規制続きなんでしょうか…

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56-429 56-448 56-456 57-19 57-87 の続き

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

夕暮れの薄暗い部屋の中、ベッドの上で胡座をかいた風間は、手の中で携帯電話を玩んでいた。
傍からは瞑想中にも見えただろう。
後頭部を壁に軽く預け、静かな呼吸だけが続いている。
風間は今、自分の中で一つ決着を付けたところだった。

体が満たされる瞬間、精神の一部も満たされる。
全てではないところがおもしろい、と風間はいつも自嘲気味に考える。
満たされる部分、それは大概気がつかないところにあるものだ。
餓えていたことに、満たされてから気がつくのだ。
そしてその満たされた部分がまた、飢えた部分を刺激して、怒りにも似た飢餓感はもっと強くなる。
何か満たされないものを抱えて、それが何かもわからずに、餓えている。
時折会って、お互いの飢餓を満たすために屠りあい、別れる。

二人の間にあるものは、愛でも情でもない。

女との、恋人とは言わぬ、この関係を何と表すのか風間竜一には見当がつかない。
99: ピンポン そしてまた太陽が昇る 2/3 2010/04/03(土) 22:50:37 ID:lWJv/Zo10(11/12)調 AAS
星野を見送りに行った空港からの帰り、孔を車に乗せてアパートまで送ったことがあった。
しばらくしてから女に会った時、女は少しばかり目を細めて風間を見、
風間君…好きな人が出来たでしょう
と言った。
そんな人はいない、と風間は答えた。
女は笑って、
風間君って時々40歳くらいのおじさまなんじゃないかと思うことがあるんだけど、かと思うとやっぱり20歳そこそこの男の子なのよね…
と、吸っていた煙草を揉み消した。

風間が孔と偶然に再会し、孔のアパートで酒を飲んだ夜、風間の背中には前の晩に女が付けた爪の跡があった。
風間はその時ひどく乾いていた。
孔を車で送ってから、風間に常につきまとっていた餓えと乾きは強くなったようだった。
怒りと、焦りと、もどかしい感情が風間を支配していた。
行為に表れたのだろう。そのため、爪を立てられたのだ。

孔と飲むのは楽しかった。
正直に言えば、孔と居ること自体が楽しかった。
昂揚したような、どこか興奮しているような、感じたことのない感情が風間に襲いかかる。
自分を律しながら、孔との時間を楽しんだ。孔も楽しそうだった。
一変したのは、濡れたTシャツを着替えようとして、風間が孔に背中を向けた瞬間だった。
空気が変化したのが気配でわかった。
「せなか」
と言われて、前の晩に女と会ったことを思い出した。
「かのじょか」
と問われて、恋人ではない、と答えた。
女との関係を説明する気はなかったし、実際、説明のしようがなかった。
恋人ということにしておけば孔は納得したのだろうが、それは風間の中の実直さが許さなかった。
孔はきっと誤解しただろう。不実な関係を楽しむ男と思っただろう。
それはそれでいい。
100: ピンポン そしてまた太陽が昇る 3/3 2010/04/03(土) 22:52:29 ID:lWJv/Zo10(12/12)調 AAS
問題なのは、孔に背中の爪の跡を見られたことが、風間自身に予想外に大きなダメージを与えたことだ。
まるで不貞のあとを見られたような。
孔は久し振りに会った良い友達で、スポーツを介した戦友だ。
浮気と言う表現は現実にそぐわない。
しかし…なぜ、孔を裏切ったような気持ちになるのか。
いや、違う。孔ではない。自分を裏切ったような気持ちが風間を襲うのだ。

風間の中で、答えはもう既にあった。本当は最初からあったのだ。
気がつかないふりをしていただけだ。
孔の気持ちが自分に向くことなど有り得ない。
初めての自分の恋愛は不毛なまま終わるだろう。
まあいい…。自分に正直でないより、ずっといい。

風間は不器用な男だったのだ。
自分が器用な男ではなかったことに、風間は安堵と同時に軽い失望も感じた。
そして、風間はまだ若かったのだ。
驚くほど老成しながらも、未熟な部分があることに、自分でも気がつけない程、まだ若かったのだ。

風間は掌の中の携帯電話を開き、ボタンを押した。
何度かのコールの後、女の声が聞こえる。
風間はゆっくりと口を開いた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ようやくそれぞれ自分の気持ちに気が付いたナリ
101
(1): 薄氷の音1/8 2010/04/04(日) 01:22:17 ID:nO9YY8fVO携(1/9)調 AAS
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
タイガードラマの武智(黒)×奈須。本編でほぼモブだったのに夢見すぎてエロがあります。
黒白タケチの関係性が難しく、なんだかわかりにくい話になってしまいました。
雰囲気だけでも伝わってくれれば幸いかと…

それは、鈴を振るかのごとく高く澄んだ音だった。
長く尾を引きながら、薄く剥がれ細かく欠けていく音。

『東洋は生きちょります』

それが一際大きくなった瞬間。
耳の奥で反響するそれに、自分の声も聞こえないまま唇だけが動く。

『…涼真は…』
『あやつも』

しかしその音が……不意に止んだ。
それに自分はあぁと思う。
あぁ、とどめだ、と。
しかしそれは初めからわかっていた事だった。
わかっていたから、自分は今目の前にいる男を呼んだのだ。
それでも最後の一欠片で、信じたい気持もあったのだろう。
それが――彼はまだ報告に現れない――その事ですべてを悟らされる。
愚かだと思う。愚かすぎていっそ憐れなほどだ。
いったいこれまで、何度同じような事を繰り返してきたのか。
だから『少し休め』と、自分はもう一つの自我に唇を動かさぬまま呟く。
自由は欲しい。しかしだからと言って完全に消えてなくなられても困るのだ。
だからしばし……眠れ。
告げる言葉と裏腹に、閉じていた目が開く。
光の無い黒い瞳が、前に座す男を映し出していた。
102: 薄氷の音2/8 2010/04/04(日) 01:24:32 ID:nO9YY8fVO携(2/9)調 AAS
奈須進吾。
道場に通う門弟の中でも、抜きん出た体格の良さと武芸の腕を持っている彼とその仲間に、
数日前、自分はある仕事を頼んだ。それは、
藩の参政、芳田東葉の動向を探る事。
それは登城時の道筋や護衛の数。帰城の時間。屋敷への来訪者の詳細。そして、
それと同時に見張らせた阪本涼真の行動。
自分と彼の縁戚関係は周囲には知られている。
それゆえに最初聞かされた時、彼は一瞬怪訝な顔をしてみせた。
しかし腕だけでなく頭も回る男だったのだろう、彼はそれ以上の事は言及せず忠実に任にあたった。
その上での、今の報告。
あの男も、彼も生きている。ならば次に打つ手は、
「手間を取らせてすまんかったな。」
「いえ。」
「何分、自分では動けんかったでの。助かった。」
言いながら無意識のようにその手を頬に触れさせる。
そこには数日前、東葉とその甥によって足蹴にされた際、出来た痣がまだ薄く残っていた。
途端、那須の視線が歪む。
「大丈夫ながですか?」
問われ、静かに微笑した。
「あぁ。腫れは大分と引いた。しかし見栄じゃな。皆の前であのような目にあって、
なんちゃあ頼み事をするにも、収次郎達を頼るのは気が引けた。」
普段、片腕とも言うべき旧知の仲間の名をさらりと出せば、それに奈須の目には瞬間、
微かな喜色が浮かぶ。
「いえ、声をかけてもろうて、嬉しかったがです。」
多勢の中から一人、認められたと言う事実が自尊心をくすぐる。
そしてそれは更なる特別を求めさせる。
「先生は、阪本に何を?」
答えを察っしているだろう上で口にしてくる問い掛け。それに自分は尚も静かに笑ってみせた。
「なんちゃあない事や。」
「しかしあやつはあの東葉を前にして、なんもせずに戻ってきたがです。あれがわしやったら、」
「やめい。」
103: 薄氷の音3/8 2010/04/04(日) 01:26:16 ID:nO9YY8fVO携(3/9)調 AAS
憤る語調を諌めるように、短く強く言う。
それに奈須は一瞬呑まれたような表情を見せたが、それに自分は彼の目の前、一度小さく息をつくと
再び口元に柔らかな笑みを浮かべた。そして、
「……涼真にも出来んかった事じゃ。おまんに無茶はさせられん。」
わざとの名出し。わざとの労り。
その響きが優しげなら優しげなほど、相手の義侠心を煽るのは想定の内の事だった。
「先生!」
座していた間を詰められ、腕を掴まれる。
「望む事を言うてつかぁさい!わしは先生のお役に立ちたいんじゃ!」
握り込んでくる手の強い力。本気の声の響き。
追い込む。あと、もう少し。
「一人では無理じゃ。」
「今回の事に関わった保岡と大居氏にも声を掛けます。」
「事が成れば、おまんらはこの土イ左におられのぉなる。」
「それが先生の、この国の為になるがなら本望ですきに。」
「……いかん、」
微かな沈黙の後の溜息、そして微笑。
やんわりと掴んでくる腕を解こうとする。その気配に奈須は抵抗した。
「先生!」
振り解かれまいとする手が腕を引き寄せようとし、その強い力に体が思わず傾く。
奈須の肩に顔を埋めるような形になる。
触れた場所から伝わる振動で、彼がはっと息を呑むのがわかった。だから、
「……その前に、おまんには今回の礼をせねばならんのう。」
話をはぐらかし、着物越し、その胸に手を置く。
押し返すわけでも縋るわけでもなく、ただ触れ、その目を上げる。
「何か、欲しいもんはあるかえ?」
目を細めて笑いながら、問う。
その答えは……再び深く抱き込んでくる腕の強さで返された。
104: 薄氷の音4/8 2010/04/04(日) 01:28:27 ID:nO9YY8fVO携(4/9)調 AAS
窓辺に座り込み、細く開けた障子戸の隙間からのぞき見た眼下には、夜も更けた頃合いになっても
行き交う人の影が幾つか見て取れた。
賑やかと言う訳ではない。どちらかと言えば密やかな、しかし眠る事のない淫猥な雰囲気が
日が落ちると共に漂い出す町の一角。
しかしそんな界隈の中でも今、自分がいるこの店は比較的まともな店構えをしていた。
あれから数日、落ち合う場所は相手に決めさせた。
果たしてどんな所を指定してくるか。思い、辿りついた場所にあったのは、一見普通の
小料理屋を前面に出した色茶屋だった。
その選択は彼なりの自分に対する配慮だったのだろう。
ふと思い、背後を振り返ろうとする。
しかしその背中にこの時、ふわりと掛けられる羽織の感触があった。
「夜は大分と冷えてきましたきに。」
情事後、眠っているとばかり思っていた男がいつの間にか側近くに来、着物一枚だった
この身を心配して労わりの声をかけてくる。
そんな相手に武智はこの時、ゆっくりと視線を巡らせると静かに微笑みかけていた。
「すまんな。」
礼を言いその羽織を引き寄せながら、そのまま後ろにいる彼――奈須の腕の中に凭れかかろうとする。
そのわずかに傾いた体を、彼はしっかりと受け止めてきた。
先刻まで一度深く絡み合っていた肌は、互いの着物越しでもこの時しっとりと纏いつく。
太い腕が体温を分け合うように体を抱き込み、柔らかく引き寄せてくる。
それに武智は逆らわなかった。
むしろ自ら甘えるように首を傾けてその頬をすり寄せようとすれば、その顎に添うように
奈須は手を持ち上げてきた。
柔くなぞり上げ、それは頬のある一点で止まる。
そして小さく呟かれる。
「許せんがです……」
真剣に思いつめたような声。それに武智はふっと口元を緩めた。
「そんな事を言うてくれたは、おまんだけじゃ。」
105: 薄氷の音5/8 2010/04/04(日) 01:31:09 ID:nO9YY8fVO携(5/9)調 AAS
決死の訴えを退けられ、あげく犬猫のごとく痛めつけられ、その際に出来たこの顔の痣から、
あの時門弟達は皆、まるで腫れ物に触れないでおこうとするかのように目を背けた。
それは新入りの者達から、古くからつきあいのある者達に至るまで。
もっともその中には、驚きのあまりこの痣自体目に入っていないかのような者もいたが……
脳裏に浮かびかけたその者の顔を、武智はしかしこの時、すぐに打ち消すように意識を触れてくる
手の方に集中させる。
優しい手はただそれだけでひどく肌になじむ。
それはそれだけこの身が、まるで渇いた砂のように労わりに飢えていた事を意味していた。
幼い頃からもう気が遠くなるほどの長い間、この身はずっと我慢に我慢を重ね、耐える事を覚え、
それでも期待をすれば裏切られ、与えられる事を望んでも奪われ続けるばかりで。
そしてそんな重なる痛みと共に、心は荒んで、荒んで……
「なぁ…」
視線を落としたまま、抑揚の無い呟きが零れる。
「おまんは、心が削られる音っちゅうもんを知っちょるか?」
急に耳に届いたそんな言葉の意味を、奈須はこの時はかりかねたようだった。
えっ?とばかりにわずかに姿勢が正され、その顔が武智の表情を覗き込もうとしてくる。
それを武智は戯れるように微かに首を振りながら拒んだ。
それでも呟きだけは零れ続ける。
「最初は何の音かわかっちょらんかった。それは高く澄んだ音で、鈴でも振るかのように
か細く長く後を引く……たまに聞く分だけなら綺麗だとも思えたんじゃがな。あまりに
鳴り続けられると、神経をやられる。」
絶えることなく耳の奥で響き続ける音に侵され、苛まれてゆく。
長じるにつれ酷くなっていたその現象から解放されたのは、彼が側にいた時だけだった。
考えまいとする矢先から浮かび上がってくる一人の男の面影に、武智はこの時たまらず苦笑する。
唯一の光。唯一の救い。しかし皮肉なものだとも思う。
その男が結局は、自分の中に一番大きな音を立てていったのだから。
あれ以来、もう音は聞こえない。
だからもう……いらない。
106: 薄氷の音6/8 2010/04/04(日) 01:32:48 ID:nO9YY8fVO携(6/9)調 AAS
「先生?」
心配そうに呼びかけてくる声。それに合わせるように武智はこの時顔と共に手を差し伸ばした。
頬に触れてくる手に、自分のそれを重ね合わせる。
相手など、選ばなければいくらでもいるのだ。
それが例え行きずりだろうと、今宵限りの者だろうと……
「なんちゃあない。それより、もうええがか?」
だから滑るように口にする、誘いの呼び水。
「せめてもの餞別じゃ。好きにしてくれたらええ。」
事が成った後、彼が徴収へ落ち伸びる手配はすべて自分が整えた。
この時勢、これが終生の別れになるかもしれない事は双方口にしないまま理解している。
それゆえの衝動。
不意に膝裏に腕を差し込まれ、座り込んでいた場所から抱き上げられようとする。
力強い腕の、しかしその行為を武智は刹那制した。
途端、怪訝にひそめられる奈須の眉根。
それを見て取りながら、武智は少しだけ可笑しげに笑ってみせる。
そして視線を外さぬまま、この時伸ばした指先。
それはコトリと小さな音を立てて、細く開いていた障子を後ろ手に閉めていた。
107: 薄氷の音7/8 2010/04/04(日) 01:35:56 ID:nO9YY8fVO携(7/9)調 AAS
すでに寝乱れていた布団の上に運ばれて、貪るように始められる二度目の情交。
余裕を失くしたような奈須の荒々しい求めにも、武智の体はすぐに慣れ溶けた。
物心ついた頃からもう何度、意思に反して踏みにじられ苦痛しか感じなかった行為も、自ら
受け入れてしまえば、そこにあったのは果てのない悦楽だった。
首筋を辿り下りていく唇に胸の尖りを捉えられ、念入りに舌を絡められれば、そこから生まれる
ジリジリとした昏い熱に無意識に指先が伸びる。
胸元に伏せられる男の髪に手をやって、弄るようにその首や肩を撫で下ろし、その上に早うと
せがむように爪を立てる。
それに奈須は応えてきた。
手を掛けた足を持ち上げ、押し開き、あてがってくる。
それに抗う素振りを見せなければ、奈須は一気に彼自身を武智の中に埋めてきた。
すでに猛りきっていた男の欲の圧迫感には、さすがに息が詰まった。
けれど熟れた体に走る痛みはもはやあまり無い。
だから戻す呼吸と共に、武智は自らも動く。それは、罪に蜜を絡めるように。
明かりの落ちた室内に響く、脱ぎきれていない着物の衣擦れと淫らな水の音。
抱き締められ、揺さぶられる度に上げる喘ぎは、塞いでくる手さえなければこの上なく甘く、
淫らがましく己の耳にも届き、それに武智は自らの胸の奥をちりちりと焼く疼きがある事を知る。
回した腕で懸命に男の背に縋りつきながら、それを武智はふと可笑しく思う。
まったく往生際の悪い。
ここまで堕ちて、まだ恥と感じる心があるのか。
認めてしまえば、解放してしまえば、楽になれると言うのに。
たとえば、このように………
「…やぁ…っ…あぁっ…」
乱れる布団の上、徐々にずり上がっていた体を再び引き戻され、より深くを穿たれる。
途端、跳ねる背と共に悲鳴にも似た声が口をついた。
「やめっ……や…ぁ…」
それまで男のすべてを従順に受け入れていた体が、突如もがく様な仕草を見せる。
けれどそれを、嘘をつけと含み笑う意識があった。ただ、
「……やめ……こわ…い…っ…」
怯えるように切れ切れに零された、その言葉は本当の事だろうとも思う。
もっともそれが理性を失くしかけている男を煽るだけにしかならない事も、自分は知っている。
108: 薄氷の音8/8 2010/04/04(日) 01:38:33 ID:nO9YY8fVO携(8/9)調 AAS
律動が早まる。逃れられず追い込まれる悲鳴が、男の下で徐々に啜り泣く様な吐息に変わってゆく。
それでも、
「…もう……いて…くれ……」
その中でも呟かれた掠れた声の訴えに、肌一枚の下、浮かべていた笑みは明確な失笑となった。
いったいどこまで……お綺麗にお人好しなのか。
しかしその願いを叶えてやる訳にはいかなかった。
どれ程願おうと―――自死など選ばせてなるものか。
この体は自分のものでもあるのだから。
だから、
不意に、それまでなすがままに揺れていた足を、武智は奈須の腰に絡めた。
うねるように二人して昇り詰めるよう、その首筋に腕を回し、引き寄せる。
そして耳朶に這わせた唇で、その時声に出さずに奈須に告げた囁き。それは、

―――わしの為に、東葉を…

「…殺いて…くれ………」

恍惚とした笑みを浮かべるのと同時に果てた瞬間、聞いたそれは鈴を振るかのごとく
高く澄んだ音だった。
わずかに残っていたそれに罅を走らせ、粉々に砕け散らせた……
願う冷たい死とは裏腹な熱い欲を身の内に感じながら、武智はこの時あらためて、
人の心とは薄氷が割れるような音を立てて壊れるのだと知っていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
白タケチをイジメる黒タケチのイメージは木春屋4十奏の幻惑だったと言ってみる。
109: 101 2010/04/04(日) 02:12:59 ID:nO9YY8fVO携(9/9)調 AAS
すみません。今頃カプ表記を間違えた事に気付きました。

武智(黒)×奈須ではなく→奈須×武智(黒)です!

間違えて読んでしまった方がいたら、本当にすみません…
110
(2): 架空のスタッフ×某テクノなおっさん師匠 1/3 2010/04/04(日) 20:45:08 ID:bbRAoi3bO携(1/3)調 AAS
架空のスタッフ×某テクノなおっさん師匠です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

トイレから帰ってきたら、ドアの前で松/村に頭を叩かれた。
「なんだよ」
「お前パソコン開いたままで行っただろ。ヒラ/サワさん読んでるぞ。」
「げ」
俺の暇つぶしの松/村×ヒラ/サワ小説(完結編)を事もあろうに見られた。
ヒラ/サワさんに。
俺が座っていた椅子に座り、足を組みながら堂々と画面を凝視している。
お、俺は…ど、どうしたら…
松/村が顔だけ動かして「行け」と命令してくる。
わかってるよ。こうしてたってしょうがないしな。
でも心の準備ってもんが…
ああ、でも見られたもんはしょうがない。
俺のせいだ…。

ドアを開け、恐る恐る近づく。
おい、松/村、お前も入ってこい。いや、入ってきてください。
俺の必死の形相に松/村は呆れて溜息を吐きつつ入ってきてくれた。
しかしいつでも出られるようにドアの前から動かない。くそが。

「あ、あ、あのーー……」
くるっと振り向いたヒラ/サワさんの目力のすごさに後ずさる。
「ほんとすいません!!」
やばい、やっぱり怒ってるよ。やばい。嫌われるのだけは嫌だ…!
111: 架空のスタッフ×某テクノなおっさん師匠 2/3 2010/04/04(日) 20:46:39 ID:bbRAoi3bO携(2/3)調 AAS
ああなんで最後まで書いちゃったんだろう。
かなりきわどい事もさせちゃったし怒るよそりゃ。
こんな風に見られてるって知ったら俺だって怒るし書いたやつの事嫌いになる。
うわああ嫌だ嫌われたくない!!
どうしよう、どうしたら…
「こんなもので」
「はい!すいまs」
「こんなもので私が(ピー)ながら(ピーーー)るとでも?」
「……え?」
なんだって?
今、な、なんだって?そっち?
「……」
にわかに信じがたい事を言われた気がする。
思ってた突っ込みと方向が違う。
やばい、体が動かない。目力がすごすぎてヒラ/サワさんから目も離せない。
俺、丸腰なんだけど。
ヒラ/サワさんは俺を見たまま椅子をくるんと回転させ体ごとこちらを向いた。
椅子に深く腰かけ、足を組んだ膝の上で手も組んで俺を見上げる。
思わずフラフラと近づきそうになった。のに。
「だいたい(ピー)は(ピー)なのだからこんなもんでは私は(ピー)しない。」
近づきそうになった途端、また俺の思考が止まる。
112: 架空のスタッフ×某テクノなおっさん師匠 3/3 2010/04/04(日) 20:47:50 ID:bbRAoi3bO携(3/3)調 AAS
「あ、あ、」
「もっと(ピー)なもので(ズキューン)しても(ピー)だと思わないか?」
あれ?あれ何これ?
ヒラ/サワさんなんか笑ってるし。
違う方向からなんかでかい爆弾が落とされてる!あれ?
ていうか俺の防空壕の中にヒラ/サワさんが居る!!
「(ピー)というのは、(ピー)であるゆえに、つまり(ピーーーーー)。私を(ピー)たかったら(ピー)くらいしないとダメ。」
長い!!話長いよ!!!助けてーーーーーーーーー!!まつ…
あっ松/村が居なくなってる!!
「す、すいま、すいま、」
「わかったら、はいやり直し。」
全選択→del→上書き保存
ああああああ渾身の作が。いや、駄作が…。
「最低限(ピー)するように。でないと(ピー)てやんない。」
席を立ち、静かに自分の作業に戻るヒラ/サワさん。

「おい」
呆然としている俺にいつの間にか帰って来ていたらしい薄情な松/村が話しかけてきた。

「なんか好きな話題だったみたいでよかったな。」
くそが。

俺…いつかヒラ/サワさんを満足させられる日が来るんだろうか。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
たくさんのねつ造がかさんでおります。
読んでくださってありがとうございました。
113
(1): ピンポン 恋は思案の外 1/5 2010/04/04(日) 22:54:05 ID:HM7kvPxB0(1/5)調 AAS
ピンポン ドラチャイ
56-429 56-448 56-456 57-19 57-87  57-98 の続き
じりじりと進んでおります

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

孔が風間と久しぶりに顔を合わせたのは、仕事先のスポーツセンターのジムだった。
交代の時間になり、ファイルを手に取りながらジムを出ようかと歩き出したところで視界の端に存在感のある何かをとらえ、振り向くと、壁際のベンチシートに座って孔を見る風間の姿があった。
「…風間?」
「トレーナー姿も板についているものだな」
風間は、孔のアパートからの帰り際気まずく別れたことなど何もなかったかのように話しかけてくる。
孔の働く姿を見ていたのらしい。気が付かなかった。
「びくりした…いつからいた? トレーニングに来た?」
「ここには今しがただな。隣に、注文していたラケットを受け取りに来たのだが」
「ああ」
スポーツセンターの隣には、スポーツ用品全般を取り扱う大きいショップがある。
「いいトレーニングマシンが入ったと大学で噂で聞いてな。それにここで働いていると言っていただろう。ついでにのぞきに来た」
「新しいのベンチかな。あれ、いいよ。レッグストラッチャーも、新しくなてる」
「ここのジムは孔をトレーナーに指名すれば付いてくれるのか」
「うん、私、その時、空いていれば。来たら、ジムの受付、聞け」
話しながら、先日のことは、風間にとってはなんでもないことだったのだと気が付いた。
顔を合わせづらいと考えていたのは孔だけだったのだ。
「そうしよう。ジムにいる日を教えてくれ」
目を覗き込まれて、孔はごまかすように腕にかけていたジャージの上を羽織った。
114: ピンポン 恋は思案の外 2/5 2010/04/04(日) 22:56:35 ID:HM7kvPxB0(2/5)調 AAS
「孔はその色合いが似合うな」
孔が着たのは、黒に鮮やかなオレンジのラインが入ったジャージだ。
オレンジは辻堂学園卓球部カラーで、あればついその色が入っているものを選んでしまう。
そう言うことは女の子に言え、と思う。
「ラケットの受け取り、これから?」
「もう終わった。仕事は終わったのか? この後は辻堂か?」
「ん、昨日土曜で試合あたろぉ、今日は午前中自主練、私休み。今日はジムだけ」
「ちょうどよかった。それならば少し付き合ってくれ」
「どこ?」
「台があるのだろう。新しいラケットの調子を試したい」
「ああ。いいよ」
いいよ。

孔は一度職員ロッカーに戻り、ラケットと球を持つと卓球室へと急いだ。
卓球室には8台の卓球台があり、使用申込書を書いて料金を払えば誰でも使用出来る。
既に着替えてストレッチしていた風間を見つけると、孔の心臓が早くなった。
趣味や、健康づくりのために来ている利用者がほとんどの卓球室の中で、風間の姿は異彩を放つ。
「あら孔さん、こんな時間に珍しい。今日はジムじゃないの?」
「こにちは、ええ、はい、これから、友達に付き合って、打ち合いです」
なじみの利用者に声をかけられ、挨拶を返しながら風間の元へと急ぐと、孔もストレッチで身体をほぐした。
一通り終えると、風間と孔は深緑色の台を挟んで構えた。
「いくぞ」
「うん」
カツッと言う音の、風間のサーブでラリーが始まった。
孔はこの球が走り出す、その一瞬前の緊張感が好きだ。
アドレナリンが身体を駆け巡るのがわかる。
二人の間を、軽い音を立てて白い球が走る。
相手の打ちやすいところへと球を返すラリーは、技術の高いもの同士、互いの息が合うと長い間続けることが出来る。
自分の打つ球が、風間の元へ吸い込まれるように飛び、風間から返ってくる。
辻堂の生徒の相手として打つラリーとはまた違う楽しさ。
115: ピンポン 恋は思案の外 3/5 2010/04/04(日) 22:58:20 ID:HM7kvPxB0(3/5)調 AAS
何回ラリーが続いたか、風間が不意に球を見送った。
手を止めて二人のラリーに見入っていた利用者達から、
「ああー」
と言うため息のような声が漏れる。
誰かが気を利かせてロストボールを取りに行くのが目の端に見える。

風間が新しく球を手に取り、構えた瞬間、風間の持つ威圧感がぐっと強くなるのを孔は感じた。
心臓がどくりと跳ね、興奮に肌がざっと粟立つ。
これから始まるのはラリーではない。
風間が真剣勝負を仕掛けてようとしているのを孔は瞬時に理解した。
(来い!)
風間がサーブした瞬間、孔の耳から回りの音が消えた。
「はぁっ!」
どん、と音が聞こえるようなサーブを打ち込まれ、反射的に孔の身体が走る。
飛び、
返し、
打ち込まれ、
拾い、
翻弄され、
翻弄し、
弱点を暴かれ、
暴く。
この狭いコートは、なんと広いのだろうと思う。
この、軽く小さな白い球は、なんと重いのだろうと思う。
孔は風間が、辻堂2年の時に対戦して以来の間に、変化したことを知った。
あの頃の風間のプレーは戦車のようだった。
装甲車を相手にしているようだった。
孔の知らない、風間の中に積み重なった様々な経験が、風間を変えたのだ。
風間はこれからも変っていくだろう。
116: ピンポン 恋は思案の外 4/5 2010/04/04(日) 23:00:07 ID:HM7kvPxB0(4/5)調 AAS
白い球を追って、打ち込んで、聞こえるのは、自分と、風間の息づかいのみ。
汗が滴り落ち、床に飛ぶ。
打ち続けるうち、孔はセックスしているかのような感覚にとらわれた。
卓球とはこんな球技だったろうか。
裸に剥かれて、心の奥も剥かれるように感じる、こんなスポーツだっただろうか。
風間はこんなにしなやかでセクシーな男だっただろうか。
これが本当のセックスだったら、俺はとうの昔に射精している。
勃起していないのが不思議なくらいだ。

「10-12! 風間選手!」
コートのエッジに打ち込まれ、興奮した声で点数を告げられると、孔は誰かが審判役を買って出、点数が付けられていたことに気が付いた。
破顔しながら風間が大股に近づいて来、孔に握手を求めた。
孔も笑いながら腕をのばし、握手を交わす。
それから抱き合い、肩を叩いて健闘を称える。
スポーツマンの抱擁。
「孔さん、すごいわねえぇ」
「風間選手のプレーが間近で見られるなんてな」
顔なじみの利用者が次々に声をかけてくる。
「もう終わり?」
「ええ、今日はこれで」
風間が息荒く答え、孔も流れ落ちる汗をタオルで押さえながら、審判をしてくれた男性に礼を伝えた。
利用者たちがわいわいとそれぞれ自分たちの台に戻る。
ストレッチで身体をクールダウンさせると、風間が先に立ち上がり、孔に手を差し出した。
風間の手のひらを握り、立ち上がる。
117: ピンポン 恋は思案の外 5/5 2010/04/04(日) 23:03:06 ID:HM7kvPxB0(5/5)調 AAS
「風間、スタイル変ったね」
「そうか。孔は相変わらず燕のようだったな」
「つばめ? 鳥?」
「そうだ。空をすいすいと飛んで、掴まえられない。海王の頃から、孔を見る度そう思っていた」
それはなんだ。真顔で殺し文句か。
照れた顔を見られずにすむよう、まだ汗が出る、と言う風に、孔は頭からタオルをかぶった。

「ラケット、どうだった」
「ああ、なかなかいい」
荷物を持って卓球室を後にしながら、再び風間との距離が近くなったことを孔は何者かに感謝した。

風間。
風間は俺がお前を好きだってこと、知らないだろう。
知らなくってもいい。
俺が知ってる。

「孔、時間があるなら飯を食おう」
「あ、行く行く。でも日誌書くから、ちょと遅くなるよ」
「わかった。待っている」
更衣室に歩き出した風間と別れ、孔は急ぎ足で事務所へと向かう。
泣きたいような、
嬉しいような、
苦しいような、
晴れ晴れとしたような、
何とも言えない気持ちとともに。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
118: 2010/04/04(日) 23:36:33 ID:oPCS1IZi0(1)調 AAS
>>113
GJ! ドラチャイにはまりました。
続き待ってます。
119
(2): 犬も食わない 1/3 2010/04/05(月) 23:42:54 ID:0TWOkb3F0(1/3)調 AAS
ピンポン ドラチャイ
56-429 56-448 56-456 57-19 57-87  57-98 57-113 の小話

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

きっかけはささいなことだった。
何かの拍子に、風間と孔が珍しく喧嘩になった。
いつものように居酒屋で、楽しく飲み且つ食べる時間のはずが、二人ともお互いに譲らない。
風間はむっと黙ったまま孔を見つめているし、孔は自分の持ちうるかぎりの語彙で、怒りを表現している。
孔は風間が何も言わずにいることに、だんだんむかっ腹が立ちはじめていた。
だいたいなんだ。
言葉にせずに相手に伝わるはずがないじゃないか。
俺がこんなに一生懸命、お前の言葉でしゃべろうとしているのに、どうしてお前は黙るんだ。
くそ。
そんな目で見るなよ。
俺の言いたいことなんかお見通しかよ。
「風間っ」
「おまたせしましたー。酎ハイと生ビールになりますー。ご注文は以上でよろしいでしょうかー」
かっとしたところで、追加注文していた品物が届き、孔は気勢をそがれて、目の前に置かれた酎ハイをあおった。
つられたように、風間も生ビールを口にする。風間が孔を見た。
あっ。またそう言う目をする。言ってやる。やっぱり言ってやる。

「もうっ、風間、そんな、人、ハダカにして、舐めるみたいに見るなっ!」

ぶふぅっ

思いきり、風間がビールを吹き出した。
満杯だった生ビールは半分以上こぼれ、白い泡がぼたぼたとあちこちに吹き飛んだ。
むせた風間はおしぼりで口と鼻を押さえ、咳込んでいる。
周りの客の視線が痛い。
120: 犬も食わない 2/3 2010/04/05(月) 23:44:44 ID:0TWOkb3F0(2/3)調 AAS
あ、あれ?
日本語おかしかったか?
見透かすようなその視線が気にくわない、と言いたかっただけなのだが。

「……孔」
憮然としながら吹きかけられたビールを拭いていると、ごほごほと苦しそうな息の間から、風間が言った。
「…それは、かなり性的な意味に聞こえるが、そう言う意味か?」
「え?」
「私が、お前を、性的な視線で見ていると、そう言う意味に聞こえるが」
立ち直ったらしい風間が、咳込みながら笑いを含んだ声で言う。

かぁっと頭と顔に血が上り、ビールを拭いていたおしぼりで風間の頭を一つはたくと、財布から札を出してテーブルに叩き付け、「私もう帰るよっ!」と叫んで孔は席を立った。
「待て、孔、待て」
慌てて風間が追いかけてくる。
かっかと顔がほてる。
くそう。
風間め。

孔が席から立ち上がるのを見て、風間は慌てた。
本気で怒らせるつもりではなかったのだ。
孔が置いた金と伝票をつかみ、荷物を抱え、財布を出しながら会計へ急ぐ。
孔はどんどん歩いて行ってしまう。
121
(1): 犬も食わない 3/3 2010/04/05(月) 23:46:13 ID:0TWOkb3F0(3/3)調 AAS
まったく。
風間は苦笑する。
私としたことが。
孔があまりにもかわいいことを言うのでからかいたくなったのだ。
男相手にかわいいと思うのも、いかれた話ではあるが。

会計を終え、店の外に出ると、孔が早足で歩く後ろ姿が見える。
ほとんど走るように大股で歩き、孔の隣に並ぶ。
「孔、悪かった」
「もう、知らないよ」
「悪かった。そう怒るな。少しからかっただけだ」
「知らない、ってば」
拗ねたように孔が言う。
いい年をした男同士が、何をしているのやら。これではまるで痴話喧嘩だ。
まだ怒っている孔をなだめながら、風間は再び、苦笑を浮かべた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
122: 2010/04/06(火) 00:21:48 ID:gjBCXY6lO携(1)調 AAS
>>121
ドラチャイいいですなあ。リリカルホモたまりません^^
安らぎます…
123: 2010/04/06(火) 00:24:42 ID:c7I1HTPu0(1)調 AAS
>>119
GJ!チャイナ萌えの自分にとって毎日がwktkですw
片言痴話げんか萌える!
124: 2010/04/06(火) 00:28:58 ID:cyblt6d/0(1)調 AAS
>>119
GJ!この空気たまらんです。
125: 2010/04/06(火) 00:41:16 ID:JhxmoKaHO携(1)調 AAS
ピンポン好き姐さんが沢山いらっしゃるのが嬉しい…
126: 夜にも奇冥な物語 もう独りのオレ 18禁描写アリ 2010/04/06(火) 16:23:28 ID:sRTIe/US0(1/9)調 AA×

127: 夜にも奇冥な物語 もう独りのオレ 18禁描写アリ(1/5) 2010/04/06(火) 16:25:50 ID:sRTIe/US0(2/9)調 AAS
「ちくしょ~・・・・」なんていいながらソファーで寝ぼけている
もう1人の自分を見つめながら、これから起こることを考えてると笑いが止まらなくて
必死に笑いをこらえていた
そして誰に言うでもなく「馬鹿なやつやなぁ」と呟いた

明日になったらお前の生活も笑いも人生も俺のもんだ

そんな事にも気づかずにとうとう大きないびきをかきはじめた自分の顔を覗き込んだ
しあわせそうな顔して寝てるなぁ・・・・
そう思うとなんだか急に腹が立って、気づいたら奴の上に乗る形になっていた
俺の重さで寝苦しいのか「んん・・・・」と寝言を言ってるが起きてはいない様だ

そんな顔を見ていたら、自分の中で黒い感情が芽生えているのに気が付いた

まあ正直なところ、明日のためにもなかなか起きれないようにするのも作戦の1つだから
まあいいやと考え服の下から手を入れるとそのまま弄ってみた
「ううっ・・・ん」愚痴りながら飲んでいたせいかだいぶ酒が回っているみたいで
起きる事はなさそうなのでそのまま胸の突起を弄りはじめた
「はぁ・・・・」赤い顔が更に赤くなり、切なそうに声を上げた
そのまま手を下にすこしずつ下げていくと、勃っているのが分かった
「お前も感じてるんだからおあいこだな」そのままズボンを脱がすと
指を入れはじめた
128: 夜にも奇冥な物語 もう独りのオレ 18禁描写アリ(2/5) 2010/04/06(火) 16:27:04 ID:sRTIe/US0(3/9)調 AAS
「本当はもっとゆっくり犯してやりたかったけど時間がないもんな」
ほぼ時間的には朝になっている掛け時計に目をやると
二本目の指を入れると
「あっ・・・ああ」
そのまま入れた指をゆっくり抜き差しを繰り返した
「ぐっ・・・んん・・・ああっ・・・・」
部屋にわざと水音が響くように大きく指を動かしはじめた
「まあ聞こえてないだろうけどこれ自分の音やからな」
そういいながらおもむろにもう1人の自分のズボンのポケットからケータイを取り出すと
写真を撮りはじめた、状況には似つかわしくない軽快な電子音が響く
「これでよし・・・」そう呟くと
自分もズボンを下ろし、押し付けると同時にゆっくり挿入していった
「ああっ・・・・」今までより大きな声だったので起きてしまったかもしれないと
動きを止めたが、まだ寝ているようだった
129: 夜にも奇冥な物語 もう独りのオレ 18禁描写アリ(3/5) 2010/04/06(火) 16:27:41 ID:sRTIe/US0(4/9)調 AAS
「俺にぶいなぁ・・・まあそのほうがいいんやけど」
また動きはじめ、全部を入れていったが、また腰の動きを止めて携帯で撮りはじめた
「これぐらいでいいやろ」と呟き、携帯を閉じると
また動きはじめた
起こさないようにゆっくりと上下に動いた
「やぁ・・・・あっ・・・・」
ぬちゅ・・・と淫靡な音を立てながら
奥まで入れるとまた引き抜く動きを何度も何度も繰り返した
「これじゃあ満足できないよな?・・・」
もう1人の自分に耳の側で呟くと小声で
「イキたい・・・」と呟いた
驚いて「お前起きてるのか!?」
問いかけてみたが、答えは返ってこなかった。どうやら寝ぼけているらしい
「お前がそういうならしゃあないな、自分がいったんやで」
そう言うと、腰の動きを少しづつ激しくしていった
「ああっ・・・・ああっ!!んん・・・・!」
パンパンと部屋に肉と肉がぶつかりあう音とあえぎ声が大きく響いていた
「えらいやらしいな・・・・そろそろええやろっ・・・!!」
「あっ・・・・ん!」

そのまま俺はもう1人の自分の中に出してやりたい気分だったが
もう出なければいけない時間だったから処理する時間も考え、腹の上に出してやった
130: 夜にも奇冥な物語 もう独りのオレ 18禁描写アリ(3/5) 2010/04/06(火) 16:29:40 ID:sRTIe/US0(5/9)調 AAS
翌日、あいつが寝ている間に俺はさっさと仕事に行ってやった
今頃あいつは家でまだ寝ているか気づいてTVを付けて真っ青になっているかと思うと
一日中ニヤニヤが止まらなかった、

仕事が終わって家に帰ると、案の定もう1人の俺は帰ってきた瞬間に掴みかかってきた
「お前俺の仕事取るんじゃねえよ!!」今にも殺されそうな勢いだが
俺は気にせず携帯をポケットから取り出した
「これなんだか分かるか?」
目の前にちらつかせると「俺の携帯やないか!返せ!」
飛び掛ってきたが、それを避けると
携帯を開き、フォルダのなかの画像を開くと
「これ覚えてるか?」と見せ付けた
その瞬間に耳まで真っ赤になり
「なんじゃこりゃああああぁぁあああっ!!」と叫んだ

ニヤニヤしながら「覚えとらんのか?」そういうと
「そんなん嘘に決まってる!!返せや!!」飛び掛ってきたのを
また俺は避けると
「悪いけど本物や、これ誰かに送ってやろうかな」
にらみつけてくる視線を見ながら挑発してみた
「・・・何が目的や」

「さすが俺や、さえてるな!もし俺がこのまま仕事してる時にお前が殴り込んだりしてきたら
この画像どうなるかは分かるよな?」
答えもしないがそのまま睨みつけてるくるのは自分なりの同意と受け取った
「じゃあ、おまえは家の家事よろしくな~」

それが事のはじまりだった

そして今が終わってしまうときや、
今日ははじまりの日から三日目
最後の日だった
131: 夜にも奇冥な物語 もう独りのオレ 18禁描写アリ(4/5) 2010/04/06(火) 16:58:04 ID:sRTIe/US0(6/9)調 AAS
風が吹いてくる屋上の上で俺はもう1人の俺にナイフを突きつけられていた
「俺の笑いも全部俺のもんや!!」
そういいながら少しずつ俺に近づいてきた
でも俺だって欲しかったんや!
お前から見たら俺はお前の物を奪っていく奴かも知れんけど
俺だってそれ以外方法がわからんかったんや!
何もわからないまま生まれてお前の記憶しかないのに
お前にならないよ三日目には死んでしまうなんて考えたくなかったんや!!
色々なことを考えたけど、今のもう1人の俺にはこんなこといっても聞こえないだろうし
何を言ってもどっちかが消える方法しかない
だからもう終わりなんだ・・・・・
そう考えると、方法はなく、そのまま目をつぶった―――――――

ところが痛みはなかった
俺は本物じゃないからこのまま消えるのかもしれない・・・
良かった、痛みはないのか――-―

すると、カランと金属の乾いた音が響いた
足元を見るとナイフが落ちていたが、血はついていなかった
顔を上げると、もう1人の俺は泣いていた

「殺せるわけないやん!」

なんて事を言っていた
ほんまアホやなぁ・・・俺が死なないとお前がいなくなるのに
なんて思っているとあいつフェンスのギリギリのところまで
ゆっくり歩いていき飛んでしまおうとしていた
132: 夜にも奇冥な物語 もう独りのオレ 18禁描写アリ(5/5) 2010/04/06(火) 16:58:51 ID:sRTIe/US0(7/9)調 AAS
なんで助けてやろうかと思ったかわからないけど
いつのまにか俺は立ち上がって走っていくとあいつを持ち上げて投げ飛ばした
そのまま俺は怖かったけど足を思いっきり踏み出した
風がごうごうと耳もとでうるさかった
俺は上を見ながら飛び込んだのでもう一人の俺の顔が見えた
まさか俺がお前を庇って飛び込むなんて思ってなかったんだろうな
本当にあいつはまたアホな顔してる、何回俺は自分のことアホっていったんやろうな

俺と変わったら俺のほうが売れてたかもしれんけど、結局のところ
俺とお前は同じ人間なんだから考える事なんてあまり変わらないだろう
だからせいぜい売れ残るようにがんばれよ―――――。

そのまま俺は時空の歪みのようなものに飲み込まれた
痛みはないが、体も思考もなにもかも少しずつ消えていった・・・・
最後には
はじめての夜に眠っていたもう一人の俺の顔がなぜか記憶によぎり
俺はすべてを消した
133: 夜にも奇冥な物語 もう独りのオレ 18禁描写アリ(6/5) 2010/04/06(火) 17:04:47 ID:sRTIe/US0(8/9)調 AAS
「結局のところあれはなんだったやろう・・・」
仕事が終わった後に、自宅で相方の原西と話をしていた
「よくわかんねえな・・・俺は気づかなかったわけだし」
バッと立ちがると「そこは気づけよぉ!!まさか腹西さんあなたも
入れ替わってませんよねぇ!?」そのまま勢いよく顔をつかむとぐりぐり弄り
はじめた「いてて!!ごめんって!!入れ替わってない!ないから!!」
しばらく気が済むまでいじくり回すとやっと開放された腹西が言った
「でも消えたもう一人のお前はどうなったんだろうな」
また空気が重くなったが藤稿は顔を上げると
「いいんや!もう考えてもわからんし、どうしようもないやろ、でも・・」
喋るのを突然やめた藤稿に腹西は「でも?」と続きを問いかけた
「いなくなった俺に恥ずかしくないように俺なりの笑いをもっと磨かなアカンと思った」
それを聞いた腹西がニヤッと笑うと肩を叩きながら
「いや~かっこいいですね!藤稿さん!!」
なんて言われたので「やかましいわ!!」と流すと携帯に電話がかかってきた
それに出ると「え?急に仕事が入った!?・・・まあ腹西もいまうちにいますけど・・はい」
電話を切ると「聞いてたやろ?仕事だってよ」
腹西はうなずくと「今日もがんばるか!!」
そういうと2人は休みの日の仕事だけど笑顔で家を出て行った
134: 夜にも奇冥な物語 もう独りのオレ 18禁描写アリ 2010/04/06(火) 17:06:28 ID:sRTIe/US0(9/9)調 AA×

135: 2010/04/06(火) 23:02:08 ID:V8tFehOG0(1)調 AAS
>>110
ようやく規制とけた!
読んでてニヤニヤが止まらないwwおっさんも変態スタッフもかわいいよかわいいよ。
いつも素晴らしい作品ありがとうございます!
136: 2010/04/07(水) 01:20:42 ID:8LfONtt00(1)調 AAS
>>110
新作投下ありがとうございます!
おっさんの切り返しに、まるで自分がスタッフになったみたいにドキドキしました。
一筋縄ではいかないところがさすがって感じです。今回も楽しませていただきました!
137
(2): ぼくらは、ぼくら。 1/4 2010/04/07(水) 01:25:32 ID:MDPCIBnZ0(1/4)調 AAS
北の大地のローカル番組。
長い春休みを取っている筈のD二人。タイトルはDの本の台詞から。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

普段、退社をする時に示し合わせたりする事はほとんどなくて、お互いがお互いの事情や体調なんかで「

じゃあ、また明日」の挨拶を置いて部屋を出て行くのがほとんどだ。「じゃあ、また明日」は
休日の前なら「また来週」や「休み明けに」に変わるけれど、ぼくらのスタンスは変わらない。
付かず、離れず。
この言葉がぼくと売篠くんの関係を表すには一番なんだろう。
コンビを組もうと思って組んだ訳ではなかったけれど、二人で仕事をする様になって十四年になる
相棒は、ぼくが立ち上がっていつもの「じゃあ、また明日」の「また明日」を発する前に口を開いた。

「俺も帰るわ」
別段止める理由は何もなかった。今日の分の仕事は片付いているし、流れとしては不自然でも
なんでもない。だから「じゃあ」の次にぼくはこう続けた。

「途中まで一緒に帰るか」
「そうだね」

頷いた売篠くんは妙な淡々さを醸し出していたけれど、よくよく考えればこの淡々さこそが
売篠くんの味でもある。思考が読み難い男だな、と思った。今日は東京辺りで仕事をしてるだろう
あのすずむしは考えてる事がよく顔に出る。売篠くんは真逆だ。でもぼくには売篠くんが一体何を
考えているのか、よく分かった。それはぼくの読解能力が優れているからではなくて、
二人で積み重ねた時間の長さと密度の濃さがあるからだ。
だからどうして今日に限って売篠くんが一緒に帰ろうと暗に言ってきているのか、分かっていた。
連れ立って部屋を出る。上からの沙汰で、もうすぐなくなってしまう馴染んだこの部屋を。
ぼくと売篠くんは、部署の移動を命じられていた。
138: ぼくらは、ぼくら。 2/4 2010/04/07(水) 01:26:07 ID:MDPCIBnZ0(2/4)調 AAS
不幸中の幸いとして、例えレギュラー放送が終了したとは言えども局のドル箱番組を握っている
ぼくらが引き離される事はなかったけれど。
製作部の消滅は、ぼくと売篠くんをひどく落ち込ませたし、憤らせた。
二人分の足音が廊下に響く。隣を歩く売篠くんの横顔は沈みがちで、ぼそぼそと会話を交わす声は
ちっとも弾まない。
擦れ違う顔見知りのスタッフや守衛さんに軽い挨拶を交わし、局の外に出る。四月といえども
まだ肌寒い北の大地は、ぼくが生まれた所とも、売篠くんが育った所とも全然違う。
思えば、本当なら会わなかったかも知れない男なのだと、今更ながらに気が付いた。
売篠くんの足が止まる。何度も枠を撮った公園の途中。もう夜が更けているから、遊んでいる
子供なんていやしなくて静かだった。
眉間に皺を寄せたまま、売篠くんは口を開いた。

「そういえば、富士村くんと花見した事、あったっけ?」
「桜前線を追いかけたりはしたじゃない」
「それはそうだけどさ。全国の色んな所の桜は見たけど、ここは見たっけなって思ってさ」
「記憶ねぇな」
「俺もさ。不思議なもんだね」

静かに目を伏せて呟かれる声は風に流れる。
淡々とした売篠くんの表情や声に滲む愛惜に、ぼくの他の誰が気付けるっていうんだろう。
組織という大きなものに、作り上げた場所を居場所を奪われて、大切にしているものを踏み躙られた
同志だからではなくて、売篠くんとしてのぼくの心が共鳴をしてるのが分かる。
悔しいね。辛いね。
でもその半面、売篠くんとならば何処に行っても大丈夫だと思っているぼくもいる。
DOでSHOWがあるからじゃない。確かにぼくらはDOでSHOWを完全なものとして残す為に
DVD全集を出す作業を敢行し、番組のレギュラー放送を終えた。それはMr.とO泉くんにとっては
一つの巣立ちであり、四人での新たなる旅へのスタートでもあった。
ぼくらは一生DOでSHOWをするつもりで、四人の内の誰かが死んでしまっても、きっと最後まで
旅をするのだ。その日を迎える為に、レギュラー放送という形をやめたんだし。
139: ぼくらは、ぼくら。 3/4 2010/04/07(水) 01:26:51 ID:MDPCIBnZ0(3/4)調 AAS
でもDOでSHOWだけじゃない。ぼくは売篠くんとならば、もっと沢山の新しい何かを
作っていけると信じている。DOでSHOWがぼくにくれたものの中で、とても大きなものが
売篠くんだからだ。
売篠くんを一生の伴侶だと思った時の事を、今でも覚えている。売篠くんがぼくに言った、「キミに
いろんなことを話し掛けるのが、ぼくの一生の仕事だと思ってるんだよ」って言葉の、本当の重さに
気付いた時だ。

「ここが俺らの居場所だと思ってたのに、桜見た記憶がないんだな。勝手に局に敷地に植樹はしたのに」

ぼそりと落とされた言葉に、不意にずっと前に東北で見た桜が頭を過ぎった。あれが一番最初に一緒に見

た桜だっただろうか。移動する車の中、ぼくが笑って、O泉が怒って、Mr.は苦笑混じりに
黙っていた。そして売篠くんがいた。カメラを構えて、少し口元を緩ませて、ぼくらを見ていた。
幸せな旅だった。幾つもしてきた、辛くて、幸せな旅の一つだった。

「なぁ、売篠先生」
「んー?」
「旅に出ますか。番組とか関係なくってさ。俺とあんたと、そうだな、キャップも誘ってやってさ」
「男三人ぶらり旅ってのもむさくるしいけど」
「何時もより一人少ない分、マシじゃねぇか」
「それもそうだね」

ここに桜がないのなら咲いている所まで行けばいいのだ。そして桜を連れてここまで戻ってくればいい。
時間ならばたっぷりある。
伏せていた睫毛を上げて売篠くんが微笑みながらぼくを見た。久々に真っ直ぐに視線が合う。
この所、お互いにずっと俯いていたからだ。
顔を上げれば売篠くんの肩越しに長く続くなだらかな斜面に萌える緑の芝生が見える。夜目にも
鮮やかな、新しい命が芽吹く色だ。
売篠くんが微かに笑ったのに安堵して、思わずぼくも笑ってしまった。すると売篠くんは細い目を
僅かに見開く。
140: ぼくらは、ぼくら。 4/4 2010/04/07(水) 01:28:01 ID:MDPCIBnZ0(4/4)調 AAS
「何驚いてんだよ」
「最近、富士村くんが笑ってなかったって気付いてなかった俺に気付いてびっくりしたんだよ」

指摘をされて驚いた。爆笑魔人と言われるこのぼくが笑っていなかっただなんて。思わず問い
返してしまう。

「俺、笑ってなかった?」
「あんまりね」
「そっか。でもあんたも笑ってなかったぞ」
「お互いに自分の事はよく分からないんだな」
「だから俺にあんたがいて、あんたに俺がいるんだよ」

腰に手をあてながらO泉くんに命令する時の偉そうな口調で言ってやったら、売篠くんは顔を
くしゃくしゃにして泣き笑いの様な複雑な表情を浮かべた。
馬鹿だなぁ、そんな顔しなくていいのに。どうせぼくらは一蓮托生だ。一生DOでSHOWを
するんだから。O泉にだけ誓わせた訳じゃないだろ。四人出なきゃ、DOでSHOWは出来ないんだ。
この先だって旅は続くだろ? 否、今だって本当は旅の途中なんだぜ。なぁ、売れしー。
売篠くんが掠れた声で言った。

「だったら、やっぱり、一生あんたに話し掛けるのが俺の仕事だな」

そうだよ、と答えたぼくの声も掠れていたけれど、売篠くんにはちゃんと届いた筈だ。
これ以上視線を合わせていると泣いてしまう気がして、同時に逸らした二人の視線が坂のずっと
向こうを見る。
それはこの先一生かかって辿り着く、本当の最終回に繋がっている。ベトナム縦断よりも長くって、
ブンブンで迎える夜よりも過酷な旅路に違いない。でもきっと幸せな道程だ。Mr.がいる。
O泉くんがいる。そして売篠くんがいる。売篠くんとならば歩いていける。
闇雲な力で信じながら夜空を仰いだ。ぼくはとても長い時間、星の光が滲んだ夜空を渡る春の風と、
すぐ隣に立つ売篠くんの気配を、ただただ大切なものの様に感じていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
141: 2010/04/07(水) 01:42:49 ID:oSYo3f0I0(1)調 AAS
>>137
姐さーーーーーーーーん!!。゚(゚´Д`゚)゜。ウァァァン
ありがとう!!!書いてくれて本当にありがとう!!
苦しかったんだよずっと!!彼らのことが、DOでSHOWのことが!!
姐さんの話読めて嬉しい!心が慰められた!!ありがとう!!!!
142: 涙の理由を聞かせてよ0/4 2010/04/07(水) 10:18:47 ID:Qs93llmt0(1/6)調 AA×

143: 涙の理由を聞かせてよ1/4 2010/04/07(水) 10:22:12 ID:Qs93llmt0(2/6)調 AAS
最近、日伊住には気になる事があった。
同期入社の簿句元がどうも元気が無いのだ。
いつも日伊住は彼にちょっかいを出して楽しんでいるのだが、
相手があからさまに精彩を欠いていると、どうも罪悪感が芽生えてしまう。
理由ははっきりしている。
簿句元の所属する部署の部長だった気乃下が、突然会社を辞めてしまったのだ。
いつの間にそんな信頼関係が出来上がっていたのかは日伊住は全く知らないが、
出来る事なら助けてやりたい、そう思っていた。
なぜならば、日伊住は簿句元に恋心を寄せていたのだから―――。

「気乃下の居場所?」
「はい、黄身島部長なら知ってるんじゃないかと思って」
日伊住は思い切って黄身島に尋ねる事にした。
他の気乃下部の面子に聞いても何も情報は掴めなかったし、何だかんだで
気乃下に一番近い位置に居るのは黄身島だと思ったからだ。
「知ってるよ」
「!!」
黄身島はあっさりと答えた。そしてとあるバーのチラシを差し出した。
「このバーへ行くと良い。行き方は今教えるから」
「ありがとうございます!!」
日伊住は深々と頭を下げた。これで気乃下に会える…そう思うと嬉しかった。
「でも、本当にそれで良いのか?」
「…はい?」
「あの簿句元とかいう新入社員に気乃下を再会させたいんだろ?
後で後悔する事になるかも知れないぞ。」
「どういう…意味ですか?」
日伊住は、黄身島の意味深な言葉になぜだか不安が込み上げた。
144: 涙の理由を聞かせてよ2/4 2010/04/07(水) 10:23:50 ID:Qs93llmt0(3/6)調 AAS
「どういう風の吹き回し?お前が飲みに誘うなんて」
簿句元は眉間に皺を寄せている。日伊住はどうも彼に信用されていない様だ。
でも日伊住はめげずに笑顔を作り、答える。
「まあまあ…すげえんだから、簿句元驚くぞ」
日伊住は簿句元の腕を引っ張り、目の前の小さな建物に入っていった。

照明は暗く、落ち着いたロマンチックなムードの店。
中に居るのは、大人の恋人同士ばかりだ。
デートで来たかったなと、日伊住はこっそり思った。
中央のカウンターに二人で座る。すると、奥からバーテンダーらしき人物が現れた。
「……えっ!?」
衝撃が走った。なぜならその人物は、誰あろう気乃下部長だったからだ。
「部長……」
気が付くと、簿句元は両の眼から涙を流していた。
会いたかった人物にやっと再会出来たのだ。無理も無かった。
「ヘイ、らっしゃい。あ…誰やったっけ?」
気乃下はどうやら二人を覚えていないらしく、首をかしげる。
「気乃下部長、お久しぶりです。黄身島部の日伊住です」
「日伊住…誰やったっけ」
「二代目です」
「え…ああ、二代目か!久しぶりやなあ、二代目。で、この子なんで泣いてんの?」
気乃下が簿句元を指差し尋ねる。
「あの…何と言ったら良いか」
「部長!!」
突然簿句元が叫んだ。
「どうして突然辞めちゃったんですか!?寂しかったんですよ、今まで!!」
145: 涙の理由を聞かせてよ3/4 2010/04/07(水) 10:24:50 ID:Qs93llmt0(4/6)調 AAS
「……そら、悪かったな。寂しい思いさせて」
気乃下は困惑しながらも謝った。
「部長、今日はたくさん聞かせてもらいますよ。今まで何をしてたのか、何があったか」
「ん…ああ」
こうして簿句元と気乃下はたくさんの話をした。
日伊住は側でうなずいていたが、だんだんと心に寂しさが生まれてきた。
簿句元の気乃下を見る眼差しが、部下が上司を見るもの以上に感じられたのだ。

「不味かったな…カクテル」
「うん」
「バーテンダー向いてないんだから、また会社に戻ってくれば良いのに」
「そうかな…」
帰り道、簿句元はまだ気乃下の話を続けていた。
日伊住も相槌を打ってはいたが、どこかうわの空だ。
「どうした?日伊住」
「別にどうもしない」
「嘘付け、なんかボーッとしてんじゃん、分かるんだぞ」
「なあ、簿句元」
「へ?」
日伊住は真面目な顔つきになった。
「俺、簿句元が気乃下部長を想ってるみたいに、お前の事が好きなんだ」
「……へ?」
一瞬意味が飲み込めなかった簿句元だが、
「えええええっ!?」
ようやく分かった。これは愛の告白だ。
「ど、どうして俺なんかを好きなんだよ、日伊住ならもっといい相手いるじゃん!!」
「分かんねえよ!ただずっと好きだったんだよ、大学の頃からずっと……」
言い終えたその時、日伊住の眼から涙が溢れ出した。
ああなるほど、俺が部長を見つけた時と同じだ……と簿句元は思った。
146: 涙の理由を聞かせてよ4/4 2010/04/07(水) 10:25:49 ID:Qs93llmt0(5/6)調 AAS
「泣くなよ!まあ…俺もさっきまで泣いてたけどさ……」
とりあえず公園のベンチに腰掛け、簿句元は日伊住をなだめていた。
日伊住は涙声で簿句元に尋ねる。
「簿句元は、これからもずっと気乃下部長が好きなのか?俺にチャンスは無いの?」
「う……」
そう言われると困ってしまった。
今気乃下部長の事が好きなのは確かだが、気乃下部長には全くこの気持ちは届いていない。
そう考えると、いつかは諦めなければいけないのかとも思う。
それに、今こうして泣いている日伊住を放っておけない。
「未来の事は分からない…かな」
簿句元は曖昧に答えた。
その言葉を聞いた日伊住は涙を流しながらも笑顔を作り、
「じゃあ、俺はまだ簿句元を好きでいて良いんだ。決めたよ、俺これからはもっと素直になる。
そして簿句元にいつか振り向いてもらえるようになるんだ」
「え…ええええっ!?」
簿句元は驚いた。日伊住は本当に前向きな奴だと思った。

その後、日伊住の積極的なアプローチに簿句元は大いに戸惑う事となる―――。
147: 2010/04/07(水) 10:26:28 ID:Qs93llmt0(6/6)調 AA×

148: 2010/04/08(木) 02:41:45 ID:tUC0fEE7O携(1)調 AAS
>>137
この二人でこういう話を書いてくださってありがとうございます!
141さんとだぶってしまうけれど、私の心も慰められました。
本当にありがとうございました。
149
(3): くしゃみ 1/6 2010/04/08(木) 22:48:21 ID:u7lvLBqV0(1/6)調 AAS
ピンポン ドラチャイ
56-429 56-448 56-456 57-19 57-87  57-98 57-113
57-119 の続き

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

孔が、「鎌倉に行きたい」と言いだした。
日本に来て数年経つが、いまだに行ったことがないのだと言う。
観光客みたいに大仏を見て、写真を撮りたい。
天気は上々、吹く風も気持ちいい。江ノ電に乗って鎌倉まではあっという間だ。

鎌倉は、駅に下りた瞬間からいかにも「ここは由緒正しき皆様の観光地です」と言った雰囲気に充ち満ちている。
街路樹の生い茂る石畳を歩き、建ち並ぶみやげもの屋を冷やかす。
寺へ向って歩いていくと、突然視界が開け、青空を背景に大仏が鎮座している。
「わー…」
孔が声をあげた。その大きさに、何度かは足を運んだことのある風間でも一瞬虚を突かれる。
巨大な大仏のその背後にはただただ空が広がっていると言うのが、視覚的にすごいのだ。
大仏の前は、記念写真を撮っているカップルや、外国人の集団、バスでやってきた中年女性の団体、ヘルメットを小脇に抱えたツーリング中のバイク乗り、帽子をそれぞれ被りリュックを背負った老夫婦、小さな子供を連れた家族連れ…雑多な人達でいっぱいだ。
二人の足元を小さな何かが駆け抜けた。
「リスだ」
「ずいぶんいるな」
参道にはリスが多い。人慣れしているのかいないのか、孔が唇をとがらせて「ちちちち」と音を立てても知らんふりで足元をすり抜けてゆく。
境内のにぎにぎしいみやげもの屋の店先で、孔が足を止めた。
150: くしゃみ 2/6 2010/04/08(木) 22:50:31 ID:u7lvLBqV0(2/6)調 AAS
「風間、これなに?」
孔が指差したその先は、ビニール袋に入った丸い三角のせんべい菓子だった。
細い和紙が帯のように一つ一つにまかれている。
「おみくじせんべいだな」
「なに?」
「せんべいを割ると中におみくじが入っている。フォーチュンクッキーだ」
「ああ、うん。ちゅごくにもあるよ。レストランでご飯のさいごに出る」
「ほう」
「私、買う。これ、ください」
孔は戦利品のように紙袋に入れてもらった菓子を受け取ると、さっそく袋を開けて一つを風間に手渡した。
「風間の、なんて書いてある?」
「ちょっと待て」
「これ、甘いね」
孔はすぐに割った菓子をほおばると、口をもぐもぐと動かしながら、空洞に畳み込まれていた小さな紙切れを開いた。
「『ま・ち・び・と・き・た・る』 …ってなに?」
「あー、待っていた人が来ますよ、と言う意味だ」
「待てた人? 私、誰待てる?」
「私に聞いてどうする」
「風間のは?」
「『まよわずすすめ』」
点取り虫占いのようにひらがなで一言だけ書かれた紙切れは、未来を示唆しているようでもあるが案外頼りない。
子供のおみやげに向いた、罪のない遊びだ。
風間もせんべい菓子を噛み砕きながら、その甘さに懐かしさを覚えた。
この類いの菓子はほとんど食べたことがないのに、どうして懐かしいと思うのか、人間の頭は不思議だと思う。
「あっ、おもちゃだ」
一つ目を食べてしまって、二つ目を噛み割った孔が歓声を上げた。
指先ほどもないような小さなプラスチックの車が、孔の手のひらにころりと落ちる。おみくじは入っていないようだ。
「おもしろいねえ」
孔は一人で受けている。
151: くしゃみ 3/6 2010/04/08(木) 22:52:11 ID:u7lvLBqV0(3/6)調 AAS
これを全部食べた暁には、いったいいくつのおみくじと、細々した玩具が孔の手元に出現するのだろう。
風間は店先にぶら下がっていた、レンズ付きフィルムと呼ばれる簡易カメラに目を留めた。
「そう言えばカメラは」
「あ、忘れた。それ、買う」
店員に代金を支払い、そのまま手渡してくる孔からカメラを受け取る。
「大仏の前で写真を撮るのだな」
「うん」
孔を適当なところに立たせ、ファインダーを覗く。
孔をちょうどよく写そうと思うと大仏の頭が切れる。
少しずつ後退して、孔も大仏も一緒にカメラに収めると、その様子を見ていたらしい中年の夫婦が、
「お兄さんも一緒に撮ってあげましょうか」
と声を掛けてきた。
「いや、私は…」
少しばかり狼狽して断ろうとする風間に、孔が「風間、早くここ並ぶ」と手招きした。
試合会場でもなく、表彰台の上でもないと言うのに写真を撮られるということが、風間にはこそばゆい。
孔が隣にいるとなればなおさらだ。
意味もなく顔を撫で、孔の隣に立つと、一つ咳払いをしてカメラのレンズを見た。
「はい、じゃあ撮りますよー。ハイ、チーズ」
シャッターが切れる微かな音と共にフラッシュが光って、風間はほっと息をついた。
孔が夫婦に駆け寄りながら「ありがとござまーす」と言ってカメラを受け取っている。
風間も頭を下げて感謝を表すと、夫婦はにこにこ笑いながら離れていった。

大仏の中に入ると、中は薄暗いが案外明るい。
上を見上げると、大仏の背中に開いた二つの四角い窓から光が入っている。
案内の年配の男性の手によって扉が閉められると、灯りのない空間が暗くなり、目が慣れるまで一瞬を要した。
152: くしゃみ 4/6 2010/04/08(木) 22:54:09 ID:u7lvLBqV0(4/6)調 AAS
中は思ったよりかなり狭い。
人の流れに乗って進む。観光客の話し声がざわざわと響く。
孔が上を見上げて、「風間、頭だよ」と指差した。
確かに、大仏の髪が盛り上がっていると思われる部分がぼこぼことへこんでいる。
二人で上を見あげていると、同じように上を見たまま前へ進もうとしていたカップルが、孔にぶつかった。
「わっ」
「あっ、すいませーん」
「おっと」
孔が不意をつかれてつまずきそうになり、風間は腕を伸ばして孔の腰を取って支えた。
「大丈夫か?」
「だいじょぶ」
一瞬、風間の頭を、このまま抱き寄せてしまおうかと言う思いがよぎった。
その思いは強く風間を支配したが、意志の力で頭の片隅へ追いやった。
孔が嫌な思いをする。
風間は孔の腰を離し、移動し始めた人の後をついて、出口へと体を向けた。服ごしの孔の感触が手のひらに残る。
ぐ、と手を握りしめる。
人に押されたのか、孔の手が風間のこぶしに触れた。
風間は思わず、握ったこぶしを開いて孔の手を握った。
そして直後に後悔した。
触れてしまえば、気持ちが勝手に暴走する。
同性の友人に手を握られて喜ぶ男がどこにいるだろう。
握りしめてしまわぬよう、自分の気持ちが指に出てしまわぬよう、風間は苦心しなければならなかった。
孔は手を振りほどくかと思われたが、意識がよそへ向けられているのか、風間の手を軽く握ったままだった。
自分でも気付かぬうちに緊張していた風間は、小さく息を吐いた。
薄暗い中、ゆっくり歩を進める。
153: くしゃみ 5/6 2010/04/08(木) 22:56:08 ID:u7lvLBqV0(5/6)調 AAS
この時間がずっと続けばいい、と風間は願い、自分の臆病さに笑った。
これではまるで初めて恋をした中学生と一緒ではないか。
手を握ったまま、二人はずっと無言だった。
ガイドの男性が出口の扉を開けた。さっとまぶしい光が射し込む。
風間はそっと、指の力を抜いた。そのまま、孔の手は離れるだろう。
孔の指が一瞬ためらうように動き、風間の指に絡んだ。
風間は驚いて孔の顔を見た。孔が怒ったような顔で風間を見、目を逸らした。
指が離れてゆく。
混乱しながらも、風間は離れてゆく指を追いかけ、強く握った。
握らずにはいられなかった。
先頭が外へ出たらしい。二人も、後から押され、出口へと近づいた。
風間の指と孔の指が恋人同士のように絡まった。
離したくないと強く思い、当然ながら離さぬわけにはいかず、そして今度こそ、その手を解放した。
指は素直に離れていった。

大仏から出ると、風間は陽光のまぶしさに目を細めた。
さわさわと吹く風に、解放感があふれる。
孔は何事もなかったかのように、風間に「のど、乾いたな」と言った。
風間も、「何か飲むか」と応えた。
あれはなんだったのだろう。
はっきりと、絡められた指の感触が残っている。
何一つ変わらないようでいて、少しだけお互いの顔が違う方を向いたような、ぎこちない空気が二人の間を流れる。
落ち着かない胸の内を隠して、風間は孔と並んで歩く。
こんなことで自分の気持ちがこうも乱れるとは、予想もしなかった。
154: くしゃみ 6/6 2010/04/08(木) 22:57:56 ID:u7lvLBqV0(6/6)調 AAS
孔は手の中でカメラをいじっている。
「まよわずすすめ、か」
「なに?」
「おみくじと言うのも、おもしろいものだなと思ったのだ」
「もひとつ、あけてみる?」
「いや、遠慮しよう。人形でも出てきてはかなわん」
孔が笑い、風間も笑った。
まぶしい光が街路樹の葉の隙間からこぼれ、風間の目を射った。
手を上げて光を遮る。
「ペットボトルの茶でもいいか」
「うん」
風間は孔と歩調を合わせ、それでもこうやって一緒に歩けることがすでに僥倖なのかもしれない、と胸の内で呟いた。
ポケットから小銭を出すと、咽喉を潤す飲料をふたつ買い求める。
呆れるくらいに青い空を見上げると、風間はひとつ、大きなくしゃみをした。
その瞬間、カメラを構えていたらしい孔の元から、シャッターが切られる音がした。
「風間、ヘンな顔、よー」
孔の笑う声が空に響いた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
少し進んだ!
155: 2010/04/09(金) 00:00:43 ID:ZfXUIDpG0(1)調 AAS
>>149
ムラムラする二人に萌えつつ、くしゃみしてる風間にも萌え…GJ!!
このジリジリ感でさらにkskです
156: 2010/04/09(金) 02:11:28 ID:fOJWifOv0(1)調 AAS
>>149
GJ!!!
157: 籠目CM 野菜鳥×おバカ 0/4 2010/04/09(金) 03:50:20 ID:VenI9yc80(1/6)調 AAS
ナマ(半ナマ?) CMネタ

籠目のVegetable Life(和訳)の野菜鳥×おバカ
野菜でエロです。
食べ物ネタNGな方はスルーして下さい

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
158: 籠目CM 野菜鳥×おバカ 1/4 2010/04/09(金) 03:52:07 ID:VenI9yc80(2/6)調 AAS
「むんずっ!!」
有介は、朝勝鳥に大事な所を思い切り掴まれて、思わず目を見開いた。

「わわわわっ!起きるよ、起きるっ・・・てか、もう起きたから!放して!!」
「だねー、ココも起きたみたいだし」
朝勝鳥は握っていたモノを放すと、今度は柔らかな羽毛でソコの裏筋をなであげた。
「ぅわっ・・・!」
「って言うか、朝立ち?」
嬉しそうな含み笑いで朝勝鳥がからかうと、有介の頬が赤くなる。

「なにすんだよぉぉっ!」
「なんもしてへんし。いっこもしてへんし」
「なんで、いきなり関西弁なんだよ!」
「ええやん、ええやん」
「よくねーよ!・・・ホント、マジ、起きるから、俺の上からおりろよぉ」

有介が体を起こそうとすると、朝勝鳥は更に全体重をかけて覆いかぶさっていく。
「ヤーメーローよぉ!」
「さっさと起きないアンタが悪い」
朝勝鳥は声のトーンを落として有介の耳元で呟くと、ふわふわの羽根をパジャマの裾から滑り込ませた。
わき腹を撫であげ、胸を這い、そこにある小さな突起を擽る。

「・・・ふっ・・」
甘い吐息が有介の口から漏れる。
「体を動かして、野菜を取るんだろ?」
敏感に反応を返す躯を羽毛で包み込みながら、快楽へと誘いかける。
「ベッドの上でできる、運動をしようか」
朝勝鳥は有無を言わさず、有介のパジャマのズボンを下着ごと剥ぎ取った。
159: 籠目CM 野菜鳥×おバカ 2/4 2010/04/09(金) 03:54:20 ID:VenI9yc80(3/6)調 AAS
「ヤっ・・・!」
抵抗しようとする手を片方の羽根で絡め取り、もう片方で有介の中心を再び握りこんだ。
先刻ふざけ半分で握った時よりもずっと、ソコは熱と大きさを増していた。
「あぁ・・・っ」
優しく上下に擦りあげると、嬌声と共に有介の腕から力が抜ける。
抵抗を封じる必要がなくなった羽根は、すぅっと背筋を辿り降りて
形のいい双丘をゆっくりと愛撫する。
「・・・あ、ん・・・ふぁ・・・あっ」
次第に艶を増す有介の声に誘われるように
さわさわと臀部を撫で回していた羽が、すっとその谷間の奥の一点に触れる。
「ココ・・下の口から、野菜、取る?」
朝勝鳥は、みだらな響きを含んだ声音でそう囁くと
どこからか、野菜がいっぱい詰まったバスケットを取り出した。

「まずは・・・んー、アスパラガスなんか、どう?」
「や・・・だ、無理・・・」
弱弱しい抵抗は、先程から絶え間なく続く熱い中心への愛撫にかき消される。
「美味しいよ・・。ほら、口開けて」
「あ・・・」
薄く開いた有介の口元にアスパラガスが滑り込んでいく。
「ん・・・」
「噛まないで・・・ゆっくり舐めて・・・そう」

溢れる唾液を絡め取って益々鮮やかに光る緑を、朝勝鳥はそっと有介の後ろにあてがう。
「旬のアスパラだから、柔らかいし、ね。大丈夫」
そう軽く言い放つと、先端を秘孔に潜り込ませる。
「あ、つっ・・・痛てぇ・・よぉ・・っ」
「痛い?・・・でも、もう先っぽ全部入っちゃったよ?」
「い・・やぁ・・・」
160: 籠目CM 野菜鳥×おバカ 3/4 2010/04/09(金) 03:57:19 ID:VenI9yc80(4/6)調 AAS
「まだ入るかな?」
ぐるりと回転させながら、奥へと捻じ込まれるアスパラの先端が、有介の敏感な所を擦りあげていく。
「あっ・・・ああぁ・・っん」
「ぎゅうっと咥え込んで、いやらしいお口だね?」
言葉でも弄られて、有介の熱が上がる。
「・・・もぅ、ヤだぁ・・・っ」
「イヤなの?本当に?」
涙で潤む有介の瞳を覗き込みながら、朝勝鳥は意地悪く問う。

「ああ!これじゃぁ、物足りないんだね」
楽しくて仕方がないという風に朝勝鳥が囀る。
「じゃあ、次は、にんじんいってみる?」
無邪気にとんでもない事を提案されて、有介はヒッっと短く息を飲むと、必死でかぶりを振った。
「にんじん、イヤ?好き嫌いはいけないなぁ」
そう言いながら、朝勝鳥はアスパラガスをずるりと引き抜いた。
その刺激に有介の全身が震える。

「じゃあ、これは?」
異物が引き抜かれたばかりで、ひくつくソコにヒヤリとした感覚が走る。
有介が反応する前に、それは無遠慮に有介の内部に入り込んできた。
「あああっ!」
一段と強い刺激に、有介の躯が反りあがる。
「新鮮だから、いぼいぼがしっかりしてて、気持ち良いでしょう?」
朝勝鳥が楽しそうに出し入れしているのは、緑色も鮮やかなきゅうりだった。
痛いくらいに張り出した突起が、秘孔の入り口を、内壁を否応無く刺激する。
「ああ・・・っ、あっ・・はぁ・・・っん」
絶え間なく与えられる快感に、有介は抗う術もなく、呑み込まれて行く。
161: 籠目CM 野菜鳥×おバカ 4/4 2010/04/09(金) 03:59:15 ID:VenI9yc80(5/6)調 AAS
「おや。こっちも、どんどん張りが出てきたね」
朝勝鳥の柔らかな羽毛が、有介の雄を擦りあげる。
「あぁぁっ!」
焼けるような快感が、有介の全身を走った。
「気持ちいい?」
楽しそうに囁きながら、朝勝鳥はやわやわと包んでいるソコを撫で上げる。
「あぁ・・・ん・・っ、あ、あぁっ!」
前を柔らかく、後ろは力強く刺激されて、有介の興奮がどんどん高まっていく。

「あっ・・も・・ダメ・・・出ちゃ、う・・・よぉ・・っ」
込み上げる射精感に、たまらず哀願の声をあげる有介を、朝勝鳥は愛しそうに眺める。
「いいよ、とりあえず、1回出しとこうか」
「・・・え・・?」
「だって、まだまだ野菜を取らなきゃ。にんじんにセロリにゴーヤーに・・・」」
「いっ・・やぁ・・・あっ」
「大丈夫。ちゃんと気持ちよくしてあげるから」
「あああぁっ!」
これから与えられる快楽に恐怖すら感じながらも、有介は悦楽の淵に堕ちていった。

数時間後。
有介がぐったりと河原に座り込んでいると、顔見知りの女性が走って来るのが見えた。
「おはよっ!!」
なるべく明るく声をかけると、女性は怪訝そうな顔で振り向いて、足早に走り去っていった。
「もう、昼」
隣の朝勝鳥が呆れたように言う。
『昼まで寝込んじまったのは、誰のせいだと思ってんだ!』
拳を硬く握って、心の中で毒づく有介だった。
162
(2): 籠目CM 野菜鳥×おバカ 終 2010/04/09(金) 04:04:13 ID:VenI9yc80(6/6)調 AAS
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

起きろ!編の寝顔の可愛らしさに萌え滾り
web限定の関西弁がエロさ5割増でもう…っ!

色々すいませんでした。
163: 2010/04/09(金) 09:46:01 ID:fj6ZS/tSO携(1)調 AAS
>>149
なんて清らかな交際なんだ…!プラトニック好きにはたまらん
このまま迷わずにゆっくりと進んで行ってほしい?
164: 2010/04/09(金) 20:33:17 ID:1MQ6UfKF0(1)調 AAS
>>162
のおかげで健全に見ていたのに不健全な目でしか見れなくなったww
どうしてくれるww
165: 2010/04/10(土) 12:06:09 ID:RJC3ZMu5O携(1/2)調 AAS
>>162
もう野/菜/生/活のパッケージをまともに見られない…だがGJ!
166: 2010/04/10(土) 12:08:21 ID:RJC3ZMu5O携(2/2)調 AAS
sage忘れスマソ
167
(5): 山雨来たらんとして風楼に満つ 1/8 2010/04/10(土) 22:58:13 ID:n/qwpx660(1/8)調 AAS
ピンポン ドラチャイ
56-429 56-448 56-456 57-19 57-87  57-98 57-113
57-119 57-149 の続き
原作で何にびっくりしたって、あの風間があのゲームを知ってたってことだよ

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「部屋で…リオカートなどっ!」
風間の怒号が廊下に響いて、下級生は首をすくめた。
真田が下級生に説教しているのを後にして、風間は息を吸い込んだ。
沈丁花の匂いがする。

    ◇

寮でそのテレビゲームが流行っているのを、風間はうっすらと認識していた。
卓球部員だけでなく、寮全体を巻き込んだ流行である。
前年度の卒業生が在学中に灰色の四角い家庭用カセット式テレビゲーム機を持ち込み、それが火をつけたのだ。
火は瞬く間に広がり、「部屋」と呼ばれる、ワンフロアに一部屋置かれているいわゆる談話室に誰かが持ち込んで、各階に一台置かれるようになった。
寮鑑は黙認している。寮の生徒の部屋にはテレビはない。
ややこしいことに、生徒の部屋は「自室」と呼ばれ、談話室が「部屋」と呼ばれる。
「テレビ部屋」が縮まったものだろうか。
168: 山雨来たらんとして風楼に満つ 2/8 2010/04/10(土) 22:59:36 ID:n/qwpx660(2/8)調 AAS
風間はテレビゲームに興味はなかった。
卓球部員の中にも夢中になっている者がいて、真田や猫田もご他聞に漏れずコントローラーを握っていた。
『部屋』で夕食後スポーツ雑誌を読んでいた風間の耳に、かまびすしい寮生の声が飛び込んできた。
ふと気がつくと、テレビ前はゲーム画面に向う寮生とそれを取り巻くギャラリーでいっぱいになっていた。
記事に集中していた風間は気がつかなかったのだ。
真田と弓道部の沢岡がコントローラを握っていた。どうも真田が勝ったようだ。
「くっそー」
沢岡が大げさに悔しがっている。
かけていた眼鏡を外しながら振り向いた沢岡が風間に目を留めた。
「風間、お前もやってみろよ」
「何をだ」
「これこれ」
「いや、遠慮しておこう」
真田も口を出した。
「たまには下賤の遊びにも付きあうもんじゃ」
「そうや、風間、真田と勝負せぇ。こいつ、一人勝ちしとるんや」
猫田が風間の眉をひそめた顔を見て笑いを噛み殺しながら近づいて来、風間の手を引いた。
テレビの前に無理矢理に座らせられ、手にコントローラーが押し付けられる。
「ほい」
「ちょっと待て、私はやったことがないのだぞ」
「よっしゃ、俺が教えてやる」
立ち直ったらしい沢岡が、眼鏡をかけ直して真田からコントローラーを奪った。
あの風間がゲームする気になった、と周りの寮生が驚き、わけのわからない盛り上がりを見せた。
勢いに押され、手の中のコントローラーを握る。
キャラクターを選択し、見様見まねで操作をすると、よろけながらキャラクターが走り出した。
169: 山雨来たらんとして風楼に満つ 3/8 2010/04/10(土) 23:02:00 ID:n/qwpx660(3/8)調 AAS
慣れた沢岡はあっという間に風間を置いて見えなくなった。
おいてきぼりを食った風間のキャラクターは操作感が掴めないままコースアウトした。
立て直したところをスリップして半回転し、ようやく前を向いて走り出したと思ったら上から降ってきた巨大な石にぺちゃんこにつぶされた。
茫然としている間に突然後から何かをぶつけられ、星を撒き散らしながらまたもやコースアウトした。
その脇をすごい勢いで沢岡が追い抜いて行く。
なすすべもなくこてんぱんにやられると、ふつふつと煮え滾るものである。
「まず練習させてくれ」と低い声で告げると、風間は集中して何度かコースを辿った。
アクセルのかけ方、ブレーキのかけ方を手に覚えさせる。
その後、沢岡と真田にそれぞれ走らせた。
「そのカーブのところでテンテンと飛ぶのはなんだ」
「ドリフトじゃ」
真田が答え、テクニックを教える。
ドリフトを覚え、ついでに相手への嫌がらせも覚え、「風間、勝負しようぜ」と沢岡が言うのを機に、「せっかくじゃけぇ4人で対戦じゃ」と真田が言って、
コントローラーが二つ増やされ、「どうせならトーナメントにするべ」と誰かが言いだし、フロアの寮生を巻き込んで大騒ぎになった。

    ◇

風間が孔を初めて自分のマンションに招き入れたのは、小雨が降る肌寒い夜のことだった。
外で夕飯を済ませ、コンビニでアルコールを購入した。
風間の部屋は、シンプルで余計なものがない。
こまごまとしたものが置いてある孔のアパートに比べると、がらんとしていると言ってもいい。
「うわ、なにもないねぇ」
半ば呆れたように孔が声をあげる。
「物は少ないほうがいい」
「そう?」
「私はな」
「ふぅん」
170: 山雨来たらんとして風楼に満つ 4/8 2010/04/10(土) 23:04:18 ID:n/qwpx660(4/8)調 AAS
フローリングに落ち着いた色のラグ、テレビとビデオデッキの置いてある棚、それに本だけはたくさん詰まった本棚とローテーブル、ソファ。
ダイニングにキッチンがくっ付いているような部屋の奥に、もう一部屋あって、風間はそちらを寝室に当てていた。
寝室の床には筋トレ用品がいくつか転がっている。
風間には見慣れた風景が、孔には珍しいのだろう。
きょろきょろしている孔に座るよう促し、「何か飲むか?」と聞く。
「お茶、買った?」
「いや。茶がいいか。淹れるか」
「うん」
キッチンで湯を沸かし、急須を用意しかけ、思い直して手のひらに乗るほどの小さな鉄瓶を出す。
風間は茶が好きだ。コーヒーも飲むが、緑茶もよく飲む。
海王の寮にいて唯一不満だったのは、茶が不味いことだった。
一人暮らしをする段になって、家から母親の茶とその小さな鉄瓶を持ちだした。
茶葉を入れた小さな鉄瓶に湯を注ぐ。
器には頓着しない風間は、マグカップに湯気の立つ液体を注いだ。
とろりとした翡翠色の茶がいい香りを放つ。
「あ。いい匂い」
孔が嬉しそうにマグカップを手にする。
一口すすって、「オイシ」と微笑む。
「風間、これ、いいお茶」
「ああ」
「私、日本来て、お茶まずい、がかりしたよ。ペットボトルのお茶、みんなまずい」
「まあ、売っているのはな」
まだ珍しそうに部屋の中を見回していた孔が、なにかに目を留めた。
「なにそれ、風間、ゲーム?」
「ん?」
孔の目線を辿って、テレビの下の、グレーのカセット式ゲーム機に気がついて、苦笑した。
「ああ、海王を卒業する時に、後輩どもが卒業祝いだと言って一式くれたのだ」
世界で一番売れたと言うゲーム機である。
それにコントローラー4つとタップ、ゲームカセットをセットにして贈られたのだ。
風間は笑って受け取るしかなかった。
171: 山雨来たらんとして風楼に満つ 5/8 2010/04/10(土) 23:06:27 ID:n/qwpx660(5/8)調 AAS
「風間、ゲームするぅ?」
孔がすっとんきょうな声を出す。
「一人ではやらんが」
と手を伸ばしてゲーム機を出す。しばらく存在を忘れられていたそれは、うっすらと埃をかぶっていた。
差し込まれたままのゲームカセットには、車に乗った赤い帽子のヒゲの配管工の絵が描かれている。
「ああ、これ知ってる」
「寮で流行ったんだよ、一時期」
「へぇえ」
よほど風間とゲームが結びつかないのだろう。孔の目が丸くなっている。
「流行っても、風間、やらない人かとおもた」
「寮の悪友に無理矢理やらされたんだ。そうしたら負けた。負けたら悔しくてな、徹夜したよ」
それを聞いた孔が楽しそうに笑った。
「風間、やりたい。勝負」
「ほう? 私は強いぞ」
「私も、負けない、よっ」
埃を払い、電源を差し込んで本体をテレビに繋ぐと、ゲーム機から伸びるコントローラーを持って、二人はテレビの前にあぐらをかいた。
軽快な電子音が響き、キャラクターの選択画面に進む。
「風間、なににする?」
「キノコだな」
「ええっ」
即答した風間に、孔が絶句する。
「ゴリラかとおもた」
「孔は」
「決まてるよー、私、いつだって主人公選ぶよ」
孔がいそいそとキャラクターを選ぶと、チェッカーフロッグが振られ、キャラクター達が走り出す。
何度か孔の妨害にあったが、立ち上がりの早いキノコは、その瞬発力にものを言わせ、ぐんぐんとコースを進む。風間の勝ちだった。
「…なんか、ずるい」
「ずるくはないだろう」
「もう一回、やる」
172: 山雨来たらんとして風楼に満つ 6/8 2010/04/10(土) 23:08:38 ID:n/qwpx660(6/8)調 AAS
負けて熱くなった孔が、ローテーブルの缶ビールを開けて口を付けた。
上下する咽喉に一瞬目を奪われ、目を反らし、風間もビールを手にする。
冷たいアルコールが咽喉を滑り落ち、胃を冷やす。うまい、と思った。
コースを変えて再び勝負したが、やはり風間の勝利だった。
あっという間に缶は空になった。
「むー」
孔が二本目に口を付ける。
「最初にコースを頭に入れて、それからコース取りをするんだ」
「ん」
「ビールがなくなりそうだ。買ってくる。一緒に行くか?」
「んー」
「…練習しておくといい」
「ん」
靴を履いて鍵を取り上げる。
正直なところ、一人暮らしをするようになって、自分の住まいに誰かをあげたのは孔が初めてだ。
ドアに手をかけて、部屋の中を振り向くと、背中を向けた孔がテレビの前にいる。
孔が振り向いて、「いてらしゃーい」と手を振った。
「…行ってきます」
ドアを閉めると、吐く息が白い。雨は止んで、街灯に濡れた道路が光っている。
ぶるりと身を震わせて、上着のポケットに手を入れ、すぐ近くの店目指して風間は歩き出した。
酒屋が経営しているコンビニで缶ビールとつまみを買い、店を出ると、さっきは止んでいた雨が、また微かに降り始めた。
霧雨に近く、急ぐ必要も感じなかったが、気温がぐっと下がったようで風間は早足になった。
「ただいま」
ドアを開けて玄関に入ると、暖かい空気が風間を包んで、荷物を床に置くと早々に上着を脱いだ。
「おかえりなさーい」
暖かい部屋で孔が自分を待っていることが予想以上に嬉しい、と言うことに、風間は驚いた。
風間の胸がふと緩むような気持ちになる。
173: 山雨来たらんとして風楼に満つ 7/8 2010/04/10(土) 23:10:19 ID:n/qwpx660(7/8)調 AAS
孔が振り向き、笑いだした。
「かざまー、鼻、赤い」
「外は寒いのだぞ」
風間は手の甲で鼻を擦った。
「風間、早く、続きやる。もう負けないよ、私」
ビニール袋をローテーブルに置くと、風間は孔の隣に腰を下ろした。
それからしばらく、風間と孔のレースが続いた。孔は確かにコツを掴んでいた。
程よくアルコールが回り、ささいなことがおかしい。
甲羅を投げられたと言っては笑い、押されて橋の上から落ちたと言っては笑い、二人ともげらげらと笑って盛り上がった。
ビールの最後の一口が風間の咽喉を落ちてゆき、孔の缶も空になった頃には、とっくの昔に終電はなくなっていた。
二人とも酔って、画面の中のキャラクターはよろよろとした動きをするようになった。
「あー、もう、おしまい」
孔がコントローラーを投げ出して、カーペットに転がった。
「うわー、私、酔てるよー。ぐるぐるまわるー」
「私もだ」
「風間も転がれ」
「わっ」
孔に腕を引かれ、転がった孔の隣に倒れ込む。
一緒に天井を見上げていると、ふと壁の時計を見た孔が、慌てた声をあげた。
「あー、もう、電車、ない」
「泊まっていけばいい」
「ん…」
孔が腕をあげて天井の灯から目を隠した。
「眠い…。泊まる」
「そうしろ。酔いざましに茶でも飲むか」
「うん…アリガト。風間のお茶、オイシイ」
起き上がって茶を淹れ、振り向くと孔は寝かかっていた。
「孔。茶が入ったぞ」
「ん…」
孔が身じろぎして、腕を下ろした。目を閉じた孔の顔が現れる。
その表情に、風間は見入った。
174: 山雨来たらんとして風楼に満つ 8/8 2010/04/10(土) 23:12:28 ID:n/qwpx660(8/8)調 AAS
泊まれと言ったのには何の他意もない。しかし、すぐ近くに孔がいるということをあらためて意識すると、風間は落ち着かない気持ちになった。
「孔。寝たのか? 風邪を引くぞ」
いらえはなかった。
「孔?」
孔の側に腰を下ろし、顔を覗き込む。
微かな息遣いが聞こえ、風間の胸が締めつけられた。
好きだ、と言えたらばどんなにいいだろう。
近くにいれば触れたくなる。
不意に、鎌倉の薄暗がりの中で触れ合った指を思い出した。
「孔…?」
腕を伸ばし、孔の髪に触れる。真っ黒な、短めのさらさらと癖のない髪の毛が、風間の指の間を滑る。
幼い子供をあやすように、風間は孔の頭をゆっくりと撫でた。
手を付き、孔の顔の上に覆いかぶさる形で、風間は自分の顔を寄せた。
やめろ、と言う声が頭の中で響くが、体が止まらない。
風間はほとんど聞こえないような小さな声で、囁いた。
「好きだ」
孔の軽く引き結ばれた唇に、唇を寄せ、軽く押し当てる。
「…文革」
もう一度くちづけると、無理矢理に体を引き離した。
これ以上孔に触れていると、くちづけ以上の何かをしてしまう。
「すまない」
眠っている孔に向って謝ると、体を起こした。
立ち上がり、毛布を出して孔の上にかけると、ちいさなスタンドをつけて、部屋の明かりを消した。
オレンジ色の光がぼんやりと部屋の中を照らす。
風間は迷って、孔の顔が見える場所に腰を下ろした。
ローテーブルの上で湯気を立てているマグカップを手にし、また少し考えて置く。
戸棚から、時折口にするジンの瓶とショットグラスを手に取ると、孔の近くに座る場所を変えて、好きな男の髪をまたゆっくりと撫でた。
風間は、今夜は眠れないかもしれない、と思った。

胸が痛い。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
175: 2010/04/11(日) 04:22:51 ID:LcHHIV0q0(1)調 AAS
>>167
もどかしい!GJ!!
176
(4): Wing 1/4 2010/04/11(日) 06:35:23 ID:il/orEwc0(1/4)調 AAS
生です。竜31×有袋類。捏造注意。エロ無し。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 2010年。今年のド荒は身が軽い。

 今年のド荒のバック転の成功率には、目を見張るものがある。
まだシーズンスタートから数週間しか経っておらず、中曰の主催試合、
つまりド荒がバック転する試合も、まだ数試合だけしか開催されていないとはいえ、
一度も失敗していないというのは驚くべきことだ。
しかもただ「飛べている」というだけではなく、妙な安定感がある。

ド荒が失敗した時に備え、連日ちあドラの蟹ちゃんが裏でアップしているが、
彼女の美麗なバック転の出番は、なかなかやってこなかった。
医師黒さんが「どうしたんでしょうね。逆に心配になってきたり」と
公式ブログに書いてしまうくらい、それくらい今年のド荒は凄いのだ。
177: Wing 2/4 2010/04/11(日) 06:41:21 ID:il/orEwc0(2/4)調 AAS
 話は三月初旬にさかのぼる。
名ゴ屋の某局で、開幕前に放送される「願銅鑼」という番組の収録が行われた。
その番組のクイズのコーナーで、ド荒に関する問題が出題されたのだ。

 あらかじめ出題される問題を聞いていたド荒は、
解答する選手たちの前で、落ち着かないそぶりを見せていた。
中曰には益子ットと仲の良い選手も多く、
みんな日頃から益子ット達を構ってくれてはいるのだが、
コアなド荒ファンでもなければ知らないようなマニアックな問題に
答えられる選手がいるとは思えなかったからだ。

「問題! 今や銅鑼ゴンズの人気者、ド荒の好きな食べ物はなんで」
ピンポーン!
「きたー! 野手チーム!」
問題が読み終えられるのを待たない勢いで、野手チームのベルが鳴った。
そのあまりの速さに、アナウンサーも選手達もド荒も、
誰が押したの? という顔で野手陣の顔を見回している。

「食パン」

そこには、さも当たり前のような顔をして答える盛野がいた。
178: Wing 3/4 2010/04/11(日) 06:45:19 ID:il/orEwc0(3/4)調 AAS
 何でそんなこと知ってるんだよ! と言いたげに、
周りの選手達が驚きの表情で盛野を見た。観客席からも拍手が沸きあがる。

「今答えたのは盛野さんですか? さすが!」
アナウンサーの賞賛の声に、やはり当然のような顔で頷きながら盛野は言った。
「良く知ってますよ。自分のことですもん」

 盛野はそっけない男だ。しゃべるテンションもいつも低い。
グラウンドで時折ド荒を構ってみては、お前は絡み辛いんだよ、とぼやく。
ぞうきん臭いと文句を言う。飴の袋だけくれて去っていく。
会えば必ず、期待に答えて構ってくれるけれど、
それでもあのそっけなさに、いつか飽きられるのではないか、
そのうち無視されるのではないかと、ド荒は時々不安になっていた。だが……。

盛野はド荒のことを、自分のことだと言ったのだ。
だから、良く知っているのだと。
まるでド荒の事を、我が事のように感じているかのように。

「自分のことですから」
もう一度、盛野が言った。
顔が火照っているような気がして、ド荒は手にしていたスケッチブックで顔を
覆った。
恥ずかしくて、そしてとてつもなく嬉しかった。
よく言うよ! という仕草で盛野にツッコミを入れた。
それがその時できた、ド荒の精一杯の反撃だったのだ。
179: Wing 4/4 2010/04/11(日) 06:53:24 ID:il/orEwc0(4/4)調 AAS
 三月二十六日、開幕。出番を待っているド荒の背中に声がかかった。
「今年からね、ファンの皆さんの意見を聞くために、目安箱を置くことになった
んだよ」
振り向くと、愛用のデジカメを抱えた医師黒さんが立っている。
「ほら」
見せられたデジカメの液晶画面を覗き込むと、ついさっき撮ったであろう
目安箱の写真が表示されている。
目安箱はただ置いてあるのではなく、ド荒のパネルにくっついていた。
ド荒が箱を持っている、そういうデザインの目安箱なのだ。
「盛野選手会長の発案なんだよ」
にこやかに、医師黒さんが言った。
箱をド荒に持たせたのが盛野であるのかどうか、そこまでは分からない。
でも、盛野が考えた目安箱に自分が使われていることが、ド荒は素直に嬉しかった。

 グラウンドに立ったド荒は、自分の身体がとても軽い、と感じていた。
飛ばなければならないという、ここに立つといつも感じるプレッシャーが
少し弱くなっているような気がする。
選手のように、この日に合わせて調整をしてきた。体調も良い。
でもそれだけではなくて、心に羽根が生えているような、そんな軽さ。

「なんでこんなに、今年は身体が軽いんだろうなぁ?」
ド荒はぽつりとつぶやいた。

──自分のことですから……

ふと心の中に、あの時の盛野の声が響いた。
ああ、一人じゃないからだ、と、ド荒は自問の答えを見つけた。

 ふわり、と今日も、ド荒は宙を舞う。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
180: 2010/04/11(日) 07:55:49 ID:5EEkYBzI0(1)調 AAS
>>167
待ってました!GJ!
続きが楽しみです。
181: 2010/04/11(日) 08:08:53 ID:YrUnxai30(1)調 AAS
>>176
も、萌えた!キュンキュンしたよ!
182: 2010/04/11(日) 10:23:27 ID:s/vtwrP70(1)調 AAS
>>176
乙!
じゅ、純愛、純愛なの???
二人とも可愛すぎるw
183: 2010/04/11(日) 12:16:30 ID:9TQJsr6Z0(1)調 AAS
>>167
読み返しにきたら新作来てた!!
ジリジリ進んでるのがたまらん ハァハァ
184: 2010/04/11(日) 12:20:48 ID:q1GOKdUfO携(1)調 AAS
>>176
2人ともすごくかわいい!
萌えましたGJ!
185
(1): 2010/04/11(日) 18:01:34 ID:afs0BT3l0(1/2)調 AAS
>>167
萌え過ぎて何度も読んでしまう!!
GJGJ!!続き楽しみにしてます!
186: 185 2010/04/11(日) 18:02:38 ID:afs0BT3l0(2/2)調 AAS
上げてしまってすいません・・・
187: 2010/04/11(日) 19:07:48 ID:sXuXq5+Q0(1)調 AAS
>>176
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
まってたよぉぉぉぉぉぉぉ。
今年の守野はデレ期だ。間違いない。
でも背番号は30だwww
188: 2010/04/11(日) 20:23:28 ID:Y0BlO2ThO携(1)調 AAS
>>167
静かに丁寧に物事が進んでいくのがたまらない
続き楽しみにしてるよ
189
(4): 宵惑い 1/7 2010/04/11(日) 23:15:46 ID:H4Zr4KGz0(1/7)調 AAS
ピンポン ドラチャイ
56-429 56-448 56-456 57-19 57-87  57-98 57-113
57-119 57-149 57-167 の続き

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

孔は眠りに引き込まれた。
風間の声が聞こえたような気がしたが、それもすぐにわからなくなった。
短い夢を見た。
誰かが遠くで、何かを話している。何を言っているのか聞き取れず、顔も見えない。
せめてもっとちゃんとしゃべれ、と言おうと思ったところで唇に柔らかいものが触れた。
そこでまた、孔の夢は途切れた。

目を開けると、薄暗いオレンジ色の光の中、風間がすぐ近くに座って、自分の髪を撫でていた。
顔はなんとなくこちらを向いていたが、目はどこか遠くを見ていた。
撫でているのとは反対の手で、ショットグラスを口に運んでいる。
一瞬、自分がどこにいて、どうして風間がそばにいるのか思い出せなかった。
風間とゲームをして、ビールをたくさん飲んで、電車がとうにない時間で、眠くなって寝てしまった…。
孔は自分が毛布にくるまっていることに気がついた。風間がかけてくれたのだろう。暖かい。
「風間、何、飲んでる?」
孔の髪の毛を撫でていた手が止まり、物思いから覚めた顔で風間が孔を見た。
さりげなく手が離れてゆく。
「ジンだ。…目が覚めたか。起こしたか?」
「ううん。トイレ」
「そうか」
用を足して出てくると、キッチンの小さな明かりの中で風間がやかんを火にかけているところだった。
190: 宵惑い 2/7 2010/04/11(日) 23:17:25 ID:H4Zr4KGz0(2/7)調 AAS
「酔いはどうだ」
「んー、まだ、のこてるかな。のど乾いた」
水道の水をコップに汲んで一気に流し込むと、大きく息をつく。
冷たい水が胃に落ちたところで、突然寒くなり、ぶるっと大きく震えた。
「冷えたか?」
「少し」
湯が湧いたところで火を止めた風間が、茶筒から茶色の大振りな葉を急須に入れ、湯を注ぐ。
香ばしい香りがたった。
「なに?」
「ほうじ茶」
孔がマグカップを二つ見つけて置くと、風間が熱い液体を注いだ。
二人シンクの前に並んで、立ったままマグカップに口を付ける。
「オイシイ」
キッチン横の磨ガラスに、常夜灯の白い灯りが映って見える。時折窓の桟から水滴が落ちている。
まだ雨が降っているのだろう。
「何時?」
「2時頃か」
「そか…風間、明日は?」
「別に何もないな」
「デート、予定はないのか」
「そもそも相手がいない」
「そうなのか?」
「そうだ。孔は」
「ひさしぶり、スポーツセンター、休み。辻堂も休み。日曜、両方休み、珍しい」
なんとなく二人は黙り込む。
孔はマグカップを両手で包みながら、立ち上る湯気を見ていた。
「寝るか。歯ブラシあるぞ。シャワーを浴びるなら風呂場はそっち」
風間が口を開いて、孔は頷いた。
191: 宵惑い 3/7 2010/04/11(日) 23:19:53 ID:H4Zr4KGz0(3/7)調 AAS
寝室の床に置かれていた筋トレ用の用具を部屋の端に片付け、空いた場所にクローゼットから出された寝袋が置かれた。
海王時代に合宿で使った寝袋である。
誰かが泊まることなど想定していなかった風間の部屋には、孔が寝るための寝具がない。
孔は借りたスウェットに着替えると、エンベロープ型の寝袋にもぐり込んだ。
孔と入れ替わりでシャワーを浴びた風間がキッチンで水を飲んでいる気配がする。
ことりとグラスがシンクに置かれる音がして、寝室のドアのところにもたれてしばらくたたずむ風間の姿が見えた。
「風間、寝ないのか」
「寝るよ」
足音が近づく。ベッドがぎしりときしんでごそごそと布がこすれる音がし、風間がベッドに入る。
ベッドサイドのスタンドが消されると、部屋の中に暗闇が落ちた。
カーテンを閉めていない窓から、夜の街路灯の明りが白く天井に射す。
孔は寝袋にもぐりなおすと、瞼を閉じた。
眠気は体中に行き渡っているのに、なぜか頭がさえて、もう眠りは訪れてこなかった。
頭のどこかが薄ぼんやりとしている。まだアルコールが体の中を巡っているのだ。
風間のもとからは規則正しい息遣いが聞こえてきたが、それはただ、風間が規則正しく呼吸しているだけ、と言うことが孔にはわかった。
狭い寝袋の中で何度か身じろぎしたところで、諦めて孔は目を開けた。
風間のシルエットが見える。
孔は自分が緊張していることに気がついた。
唇が乾く。すぐそこに風間がいて、お互いに眠れない。
酔いながらも緊張している自分が奇妙に思える。
孔は自分がなにを言おうとしているのか、わからないまま口を開いた。
192: 宵惑い 4/7 2010/04/11(日) 23:21:55 ID:H4Zr4KGz0(4/7)調 AAS
「風間」
「うん?」
「寝袋、寒い」
「毛布を足すか?」
「ううん、私、そっちに入れろ」
風間が枕から頭をあげたのがわかった。
「…交代するか。孔がベッドで寝たいならそれでも」
いい、と続く言葉の上に声をかぶせた。
「風間の隣に、私、入れろ」
「冗談言うな。----狭いだろうが」
「狭くていい」
「勘弁しろ」
「風間。私、まだ酔てる。酔ぱらいの、言うこと、聞け」
「なんて言う理屈だ」
あきれたような嘆息が風間から聞こえ、孔は少し笑った。
「風間も、酔てるだろ? 寝袋、寒い」
本当は寒くなんてないのだ。
寝袋の中ははちゃんと暖かい。
風間はベッドから身を起こすと、しばらく逡巡した様子でいたが、「知らんぞ」と呟いて掛け布団を持ち上げた。
「来い」
孔は寝袋から抜け出すとするりと入り込む。
「暖かい」
「…そうか。それはよかった」
風間は孔に背を向けた。
193: 宵惑い 5/7 2010/04/11(日) 23:23:30 ID:H4Zr4KGz0(5/7)調 AAS
「風間」
「なんだ」
「こっちを向け」
「…孔、」
「こっち向け」
少ししてから、大きなため息を付き、風間が仰向けになった。
こちらを見ない。
少しだけためらって、孔は探るように風間の手に自分の掌を重ねた。
一拍おいて、骨張った大きな手が指を絡めてくる。
記憶の中にある風間の手。
こうしているのが当たり前であるかのように、二人の指が絡む。
暗闇の中、天井を眺めながら、しばらく無言が続いた。
「くそ、どうにもならん」
行動を起こしたのは風間だった。
風間が指を絡めた手を顔の近くに引き寄せ、孔の方を向いた。
気配を感じて、孔も風間の方へ顔を向けた。
風間の空いている手が孔の頬に触れ、反射的に孔は瞼を閉じた。
乾いた指がゆっくりと頬をなぞるのを、孔は不思議な思いで感じていた。
まるで風間の指は、恋人を愛撫しているかのようだ。
目を閉じた孔の頬を、風間の指がゆっくりと滑る。
親指が孔の唇をとらえ、触れてくる。
風間が絡めた指を引き寄せて、その先にくちづけた。
感覚に、孔の息が止まる。なだめるように唇に触れられて、孔は軽く唇を開いた。
「風間…」
声が上ずり、慌てて孔は口を閉じた。心臓の音が耳元でする。熱い。
「孔、誘っているだろう…?」
目を開けると、暗闇の中に、射るような風間の瞳が鈍く光っていた。
「ちが…、風間が、誘てる…」
「そうか…?」
見たことのある目だ。濃緑色の台を挟んで対峙した、あの「ドラゴン」の目だ。
「私の方か?」
風間が体を起こし、孔に覆いかぶさった。
194: 宵惑い 6/7 2010/04/11(日) 23:25:06 ID:H4Zr4KGz0(6/7)調 AAS
顔の両脇に腕を置かれ、上から覗き込まれて孔はまた息を止めた。
ゆっくりと風間の顔が下りてきて、孔にくちづけて離れていった。
風間からは、風間のまだ少し水気を含んだ石鹸の匂いと、歯磨き粉の匂いがした。
腰に風間の昂ぶりを感じて、孔は眩暈のような感覚に襲われた。
片手は風間の指に搦め捕られたまま、もう一方の手で風間の髪の毛を探る。
「かざま…」
吸い寄せられるように風間の唇が落ちる。
「なんだ」
「アナタ、背中に、痕…付いてるか?」
風間が一瞬虚を突かれたように黙り、小さく笑った。
「やはり、誘っているだろう…?」
「ん…」
そうかもしれない。
「相手がいないと言っただろう…自分で確かめてみろ」
低い声で告げられて、背中にぞくりと電流が走る。
「一つだけ聞かせてくれ」
風間の唇が、孔の唇に軽く触れながら囁いた。
「…私のことが好きか、孔」
腕を下ろして風間の眉に指を当てながらそっと滑らせると、孔は
「おしえない」
と答えた。
195: 宵惑い 7/7 2010/04/11(日) 23:27:07 ID:H4Zr4KGz0(7/7)調 AAS
「かざまが、私を好きか、言ったら…おしえる」
「好きだ」
即答されて、孔は狼狽した。
そうだ、風間はいつもこうだった。
ラケットを構え、緑色の台を挟んで対峙する時。
いつも重量のあるまっすぐさでこちらを叩きのめそうとしてくる。
恐ろしいほどの強さで。
「風間、」
「好きだ、孔」
「かざまっ…」
自分の思いは、一方通行ではなかったのか。
風間に抱きつくと、息が苦しくなるほど抱きしめられた。
孔は自分の眦から、温かいものが流れ落ちたことに気がついた。

涙がシーツに落ちる音が耳元で響いて、どうか風間に気がつかれませんように、と孔は願った。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
196: 2010/04/11(日) 23:38:56 ID:LJI+gNVV0(1)調 AAS
なんつうか……すごいね
197: 2010/04/11(日) 23:58:38 ID:WpmNC3x/0(1)調 AAS
>>189
うp早すぎです姉さん!萌えが追いつきませんw
ゆっくり読ませてもらいます
ありがとう
198: 2010/04/12(月) 00:12:03 ID:zFznOKYo0(1)調 AAS
>>189
ここ覗いて良かった。
実はピンポンあんま知らないんですが、このシリーズに引き込まれてしまったw
今度原作読んでみたくなった。ありがとうございました。
199: 2010/04/12(月) 00:25:25 ID:W6nGnFg2O携(1)調 AAS
>>189神へ
愛しています。
200: 2010/04/12(月) 08:19:17 ID:pvNwA5QdO携(1)調 AAS
どうしてサイトを作らないのか
いろんな意味で
201
(2): サイレント/ヒル4 2010/04/12(月) 15:32:10 ID:vz4p8vBQ0(1/7)調 AAS
静かな丘4(要英訳) ウォルター×ヘンリー
ぬるすぎですが若干の血表現有なので苦手な方はご注意ください

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
202: サイレント/ヒル4(1/6) 2010/04/12(月) 15:34:06 ID:vz4p8vBQ0(2/7)調 AAS
 小さなアパートの一室、生まれた部屋に臍の緒がついたまま置き去りにされ、狂った
カルト教団の運営する孤児院で育てられた哀れな男。
ウォルター・サリバン。

 そう、彼の不幸な生い立ちを聞いただけならば同情を誘う話なのだが、彼はその後
頭のいかれた集団に日常的に虐待を受け、育てられたおかげで、
母に愛されたいという純粋な欲を満たすために結果20人もの人間を殺害する事件を引き
起こすことになる。
 自身の手で絞殺、拳銃で射殺、ゴルフクラブや鉄パイプで撲殺…目を覆いたくなる
ような連続殺人の記録。
 凄惨な殺し方の割に、どの事件も現場に偶然あった凶器で被害者を襲っているという
無計画さと、老人から10歳にも満たない幼い兄妹までまったく無差別に選ばれた犠牲者
達のリストは捜査に当たった警察を酷く混乱させた。
 おそらく誰でも良かったのだろう、儀式を成功させる為の血と生贄さえ手に入れば
たとえそれが昨日まで隣で笑っていたような存在でも。
容易く殺せるならば彼には躊躇う理由がなかったのかもしれない。
 殺害後は骸から心臓を抜き出し、ご丁寧に傷口を縫い合わせてから用の済んだ遺体を
棄てているというこのイカれた猟奇殺人の目的が『ママに会いたいから』…だというの
だから、何とも後味の悪い話だった。

 そして彼の21人目の犠牲者になる予定だったのは他でもないこの私だった。
 すべてが終わった今でも、その事を思い出す度ゾクリと背筋が寒くなる。
 母への執着と無意識の憎悪、歪んだ妄想から生みだされた血と膿と錆に塗れた異質な
世界で、何度も執拗に追い回された記憶のせいか元々精神的にそう強い方ではない私は
事件の後しばらく悪夢に魘されては飛び起きる夜が続いた。

 夢の中ではいつも私は何の武器も持たないまま、只管猫に追われるマウスのように
暗闇の中を手探りで逃げ惑っている。
203: サイレント/ヒル4(2/6) 2010/04/12(月) 15:35:31 ID:vz4p8vBQ0(3/7)調 AAS
(…あり得ない、これは夢だ。すべては終わったことなんだ)
 背後から感じる肌を刺すような嫌な気配がだんだんと私に近づいてきて、そして紅い
闇の中から死神のようにあの男が姿を現すのだ。ウォルター・サリバン。
 逃げ道を壁に塞がれて、為す術もなくゆっくりと目の前に迫るその男の名を震える
口唇で紡ぐ私に、彼は幼子のように小首を傾げて笑う。
 長身で逞しい体躯、アッシュブロンドの髪には所々血がこびり付き端正な顔に酷薄な
笑みを湛えた殺人鬼が、魂を狩る大鎌の如く何人もの犠牲者の血を吸った錆びた手斧を
私の目の前でゆっくりと振り翳す。
 逃げなくてはと思っているのに私の両の足はぴくりとも動いてはくれない。このまま
ぐずぐずしていたら確実に柘榴のように呆気なくこの頭を割られ、絶命するのが分かっ
ているというのに。
「ウォルター…」
 振り絞るような、掠れた己の声を嘲笑うようにウォルターは口端の笑みを深めて躊躇い
もなく手斧をこちらに向かって振り下ろした。

「うあぁぁッ……?!」

 一瞬にして視界は眩い光に包まれて、じりじりと照りつけてくる午後の太陽の強烈な
日差しにココが異様な異世界などではなく、サウスアッシュフィールドハイツの近くに
ある小さな公園のベンチの上だということを思い出し、私は安堵の溜息を吐いた。

 周りの喧騒をぼんやりと聞きながら額に伝う嫌な汗を拭う。
 まだ夏には随分とはやいというのになんという陽気だろう。
 己が先程まで肌に感じていた温度との差にあらためてアレが夢だったのだとはっきり
確認する事が出来て、私はベンチの背にだらしなく体を凭れさせたままずるずると項垂れた。
 空は雲一つ無く真っ青に晴れ渡り、木々は青々と芽吹き花壇には色とりどりの花が咲き
乱れている。
 そんな光景に、草臥れ不健康にやつれた己のなんと不釣り合いなことか。
 青褪めた顔で俯く己の狭い視界を、子供の小さな靴が軽やかに横切っていく。
 幼子の笑い声が響き渡る平和な公園の風景に、ホッとすると同時にもう一つ失念していた
ことを思い出した。
204: サイレント/ヒル4(3/6) 2010/04/12(月) 15:37:04 ID:vz4p8vBQ0(4/7)調 AAS
 今こうしてベンチに座っているのは自分だけ。
 そういえばあいつは?あの男はどこに行っ…
 思わず反射的に腰を浮かせて立ち上がろうとしたところで、上げた視界の真正面に捉えた
光景にへなへなと力が抜けてしまった。

 明るい公園の片隅で、軽快な音楽をかけながらキャラメルポップコーンを売る小さな可愛
らしいワゴン。そしてたっぷりのポップコーンを湛えている、そのアクリルで出来た箱の
側面にべったりと片頬を押し付けるようにして興味津々中を覗き込んでいる長身の男。
 …可哀想に、販売員がすっかり怯えた顔でワゴンから距離をとってしまっているではな
いか、これでは営業妨害も甚だしい。
 傍らを通り過ぎる親子連れの「ママァ、あのお兄ちゃんなにやってるの?」「シッ、見
ちゃダメよ」という頭の痛くなるようなやり取りに私は渋々と重い腰を上げた。

「すまない、ウォルター。睡眠不足が祟ったのかな」
「ん、目が覚めたのか。珍しくよく寝ていたからな、起こしてはいけないと思って………
どうしたんだ?ヘンリー。寝ていた割には顔色がひどく悪いぞ。悪い夢でも見たのか」
 彼の気遣いは有難いが、『夢の中で過去のあなたに殺されそうになっていました』とは
流石に言えやしない。
 曖昧な笑みを浮かべて「夢の内容は忘れてしまったよ」と取り繕いながら歩み寄り、
やんわりと屈んだ彼の肩に手を置いた。
「ウォルター、そうワゴンを抱え込んでしまっては皆の迷惑になるよ。スナック菓子は家
にあっただろう?」
 スーパーマーケットで買ってきた大袋入りのポテトチップスが確か棚にあった筈だ。そう
告げれば彼は子供のように口唇を尖らせて、ポップコーンが弾けるところを見るのは初めて
なのだと言った。
205: サイレント/ヒル4(4/6) 2010/04/12(月) 15:38:10 ID:vz4p8vBQ0(5/7)調 AAS
「ポンポンと弾けて実に面白い」
 瞳をきらきらと輝かせワゴンを飽きもせず眺め続ける端正な横顔に、やれやれと今日何度
めか分からない溜息を吐いた。
 この男、教団施設に監禁されていた子供時代、大量に詰め込まれた書物のおかげで私では
到底無理な大学に悠々合格出来た程の優秀な頭脳をもってはいるが、その癖普通の子供があ
たりまえのように受ける親からの愛情と云うものを何一つ与えられなかった為、こういう
方面に関しては信じられないぐらいに疎いことに驚かされた。
 アルバイトらしき若い店員が途方に暮れた顔で、私とウォルターの間で何度も視線を往復
させているのもそろそろ居心地が悪くなってきた。
 20代も半ばを過ぎた外見の男がワゴンにへばり付いている光景はそりゃ気味が悪いだろう、
そのワゴンが自分の商売道具なら尚更のことだ。君の気持ちは痛いほどによくわかる。
 逃げ腰の彼を手招きで呼んで、私はポケットから数枚のコインを取り出しながら人差し指
を立ててみせた。

「すまない、1つ貰えるかな」
 ポップコーンワゴンに同化していた大男が、私の言葉に瞳を輝かせ子犬のようにピョコンと
顔を上げた。
「いいのか?ヘンリー」
「ああ、…たまにはね」
 本当は夕食前の買い食いはあまり良くないんだけど、そう窘めるように続けた私の声は、
憎らしいことに彼の耳には全く届いていないらしく店員がポップコーンを紙袋に掬い入れる
間もずっと彼の視線はそちらに釘付けだった。
 ぶんぶんと激しく振り立てられた透明な尻尾が彼の尻に透けて見えるようでなんとも可笑
しな光景に苦笑いが零れた。
 嬉々として店員から温かい包みを受け取るウォルターの姿に瞳を細めて、私は先にベンチ
へと戻ることにした。
 ポップコーンが弾ける様が物珍しい、…確かにそれも欲しがる理由の一つにあるのだろう
が彼がポップコーンに惹き付けられたきっかけは多分、私たちの周りに広がるこの光景なの
だろう。
206: サイレント/ヒル4(5/6) 2010/04/12(月) 15:39:49 ID:vz4p8vBQ0(6/7)調 AAS
 隣のベンチも、そのまた隣も。
 公園のあちこちで仲睦まじくポップコーンを摘まむ親子の姿がなんとも微笑ましい、長閑
な午後のひととき。
 幼い頃に母親の愛情を与えられなかったどころか親の顔すら知らないまま棄てられたウォルター
にとって、この菓子が親子の絆を結ぶ魔法のアイテムに見えたとしても不思議ではないだろう。
 思わず笑ってしまう程特盛りにサービスされたポップコーンを、溢さないよう慎重に運んで
きたウォルターの為に隣を空けて並んでベンチに腰掛けると、案の定。

「ほら、ヘンリー」
「………」
 深い翠色の瞳を輝かせて、いそいそと私の鼻先に一粒のポップコーンを突き付ける彼の姿。
 確かに周りの皆はそうしている。が、
 幼子とその親、もしくは若いカップル同士ならばとても微笑ましい光景なのだろうが私も
ウォルターもいい歳をした大人で、男同士だ。
 不思議そうにこちらを眺める老夫婦の視線がある意味拷問に感じられる。
「あの、ウォルター、私は…」
「ほら、あーんだ。ヘンリー」
 真顔で迫るな、怖いから。分かったよ、分かった食べればいいんだろう食べれば。
 ひくり、と自分の口唇の端が引き攣ったのがよくわかる。一旦言い出した事は絶対に撤回
せず、やると決めたらそれがたとえどんなに迷惑なことでも遣り遂げる男だということを
嫌という程知っているからこそ、私は深い溜息と共に早々に白旗を揚げた。
 ぱくりと私が口で受け止めたそれにウォルターはにっこりと笑い、下手糞な口笛を奏で
ながら自分の口にも2粒3粒と放り込み上機嫌で咀嚼する。
「大切な存在と分け合う食事というものは私が思っていた以上にいいものなんだな、ヘンリー」
 再び差し出されたポップコーンと同じタイミングで頭一つ分高い位置から降ってきた優しい
声色は、余りにも不意打ちすぎて私の喉をひどく詰まらせた。
207: サイレント/ヒル4(6/6) 2010/04/12(月) 15:41:56 ID:vz4p8vBQ0(7/7)調 AAS
 噎せる私の背を笑いながら叩く大きな掌からはもうあの血の臭いはしない。
 犯してしまった過ちは消せるものではないが、過去に囚われすぎて前を向かない人間は神が
差し伸べた慈悲の手に気付くことも出来ない。それはいつか私が彼に言った言葉。
 儀式の失敗と共に彼が一度に失ってしまった、母親、信仰、それからこの世に存在する意味。
 …おそらく帰る場所も、だろうか。
 それらをすべて自分一人で埋めてやれるなどとは思わないが、彼の狂気を止められる最後の
楔としての役割だけでなく、私自身の意思。ヘンリー・タウンゼントの望みとしてこれからの
生を彼と共に探していこうと思った。
 その決意に後悔など微塵もしてない。

「これだけの量があると食べきるのも一苦労だな」
「無理しなくてもいいさウォルター。残りは部屋に持ち帰って、ポップコーンミルクを作ろう」
「何だそれは?ハハ、ヘンリーは本当にいろいろなことを知っているな」
「ミルクとポップコーンを同じ量だけカップに用意するんだ、まぁ口で説明するよりもやって
みせる方が早いかな」
 心底感心したという顔で食べかけのポップコーンを片付け、彼はベンチから先に立ち上がり
私に向かって自然な仕草で大きな手を差し伸べてくる。
 そんなウォルターの手をとりながら、私は彼がこれまで願っても決して得る事が出来なかった、
『当たり前の幸せ』を一つでも多く伝えていこう、まずは私が幼いころに母に拵えて貰った単純
だが優しいおやつからはじめてみようか。と。そんなことを静かに考えていた。
 この夢のような平穏がいつまでも続く事を心の底から強く祈りながら。

「…あの、すまないが部屋まで手を繋ぎっぱなしというのは勘弁してくれないか…周りの視線が…」
「遠慮するなヘンリー。水臭いぞ」
「……いや別に遠慮しているわけではなくて」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
208: 2010/04/13(火) 01:12:31 ID:1xQr1do6O携(1)調 AAS
>>189
ここに投下して下さった御蔭で、私は貴女のドラチャイに出会えた
ありがとう
209: 2010/04/13(火) 01:16:12 ID:g0+nzrumP(1)調 AAS
からまれて連投自重してるジャンルの姐さん方もいるんだけどなー
サイト作った方がいいんじゃね、いろんな意味で
210: 2010/04/13(火) 01:59:09 ID:Q+xPtDRgO携(1)調 AAS
>>201
姐様ありがとう!
久々にウォルヘン読んで禿萌えた
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