[過去ログ] 宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど (1002レス)
前次1-
抽出解除 必死チェッカー(本家) (べ) 自ID レス栞 あぼーん

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
次スレ検索 歴削→次スレ 栞削→次スレ 過去ログメニュー
930: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:19 ID:/Z+V/y3V0(1/20) AAS
 スクワイヤ少尉はようやくワーウィック大尉を発見した。辺りには敵味方のMSの残骸が散っており、その中に大尉のマラサイを視認出来た。
「また水色!?」
『ニュンペーだ。最後くらい覚えていくといい』
 例の試作機から女の低い声がした。こちらと同じチャンネルに繋いでいるのか。
「大尉!無事ですか!?」
『ん…一応…な。しかし…待ちくたびれたぞ』
 返答があるものの、機体を見るからに大丈夫とは思えない。両腕をもがれている上各部の損傷も激しく、これ以上の戦闘は不可能だろう。
『少し…休ませてくれ…』
「はいはい」
 着地し、ニュンペーと名乗った試作機と相対する。かなり消耗している様子だが部位の欠損もなく、大尉に比べれば綺麗なものだ。
省11
931: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:19 ID:/Z+V/y3V0(2/20) AAS
「!…速い」
 瞬時に懐に潜り込まれる。慌てて応戦しようとしたが、敵の方が速い。ライフルを構えていた腕を取られ、あらぬ方向へ曲げられた。MS故に関節の自由度は高いが、それでもかなりの負荷が掛かる。
 その上この至近距離では、斬りかかろうにも薙刀ではリーチがあり過ぎる。
「だったら!」
 薙刀の下部を切り離し、長柄のビームサーベルに切り替えた。逆手に持ち替え敵に突き立てにかかる。流石に狼狽えたのか、それを躱しながらニュンペーは再び距離を取った。
『…先程のマラサイの方が骨があったかな』
「大尉は強いよ。でも私も強い」
『2人して手負いも倒せずに?』
 そういうニュンペーの手には、ガンダムが持っていたライフルが握られている。腕を取られた時だとこちらが気付くのとほぼ同時に発砲してきた。

「泥棒!」
省19
932: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:20 ID:/Z+V/y3V0(3/20) AAS
『小賢しい真似を…!』
 衝撃で体勢を崩しながらも、ニュンペーは苦し紛れに右肩の拡散ビーム砲を放つ。正面からそれを浴びたガンダムは、両腕で身を庇いながらも大きなダメージを被る。
「何なのよ!内蔵武器あったの…?」
 敵が後ろへ下がるのを確認すると同時に、モニターがやや乱れる。サブカメラをやられたらしい。
「はあ…あんたやるね。名前は?」
『今更聞いてどうする?』
 爆散した自らの左腕からライフルをもぎ取ると、再び発砲してきた。付かず離れずの距離で敵の射撃を躱す。
「何か武器は…?」
 逃げ回りつつ辺りを探すと、友軍が落としたらしいビームライフルを見つけた。その場に転がる様にしてそのライフルを拾うと、膝立ちで狙いを定め敵を撃つ。
『そういえばいつものネモが居ないな!』
省17
933: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:21 ID:/Z+V/y3V0(4/20) AAS
『撤回するわ…。強いね…あんたも』
「そりゃ…どうも…」
 お互いに息を切らしながら睨み合う。こちらを見下すニュンペーのモノアイが赤く光っていた。
『いいね…教えてあげる。私はドラフラ・ウィード少佐』
「…ふん。ゲイル・スクワイヤ少尉よ」
『ゲイル…スクワイヤ?』
 ウィード少佐が聞き直した。
『ああ、思い出した。あんたが例の?』
「何よ…」
『あんたの親父さん知ってる。もう死んだって聞いたけど』
省8
934: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:21 ID:/Z+V/y3V0(5/20) AAS
 スクワイヤ少尉は耳を疑った。父がティターンズに居たのか。
「何で…父さんが」
『…は?私が知る筈無いだろ。ニューギニア基地はとっくに陥落してる。あんたらエゥーゴが落としといて何を』
 ニューギニア基地はワーウィック大尉が前に居た戦線だ。父が連邦の人間だということは知っていた。恐らくそれなりに高い地位に居たであろうことも。わざわざ母方の姓を名乗って、七光りを隠そうと躍起になっていたところもあった。
 しかし、それがティターンズだったとは聞いていなかった。この女の言う通りなら、特務部隊故に知らなかったのか。
『…余計なことを話したみたいだね。気にしないで。すぐにあんたもあっちに逝くんだし』
 ガンダムから薙刀をもぎ取ると、ビーム刃を掲げた。
『…あんた達はフリードやラムの仇だ。でも、敬意は払う。だから一瞬で終わらせてあげる…それがせめてもの情け』
935: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:22 ID:/Z+V/y3V0(6/20) AAS
「私…何も…知らなかった…」
 ニュンペーが薙刀を振り下ろす。荒れたモニターが明るくなった。
「…余計に死ねないじゃない」
 フジ中尉から貰った端末のロードが100%を示す。それと同時に表示された言葉は"形影相同"。
「中尉…だから意味わかんないってば」
 緊急で左肩の接続を切り離し、ギリギリで薙刀を躱した。残る右腕に乗るニュンペーの脚にしがみつき、そのまま引き倒す。
『何を…!』
 形勢を逆転し、跪いたニュンペーの前に立つ。
「私が本当は誰だろうと…」
 離した左腕を拾い上げ、再度接続する。過剰な負荷のせいか、接続部から煙が上がった。
省15
936: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:24 ID:/Z+V/y3V0(7/20) AAS
『何をやったのか知らないが…!私達の血の結晶が…そんな付け焼き刃に…!』
 ニュンペーは腕部のビーム砲を放つ。これまでは内蔵兵装はエネルギー節約で極力使いたくなかったのだろうが、そうも言っていられなくなったらしい。形振り構わなくなったのがわかる。
 ビーム砲を躱しつつ、敵の落とした薙刀を取り戻す。
「私に長物は向かない。だから…」
 再度薙刀を分割し、二刀流に持ち替えた。
「その付け焼き刃、2本ならどう?」
『戯れるな!』
 ニュンペーは脚部のクローを駆使して接近戦を挑んできた。こちらの捌く2本の刃に、カポエイラの様にタイミングを上手く合わせてくる。
「…いける」
 こちらからも敵のリズムに合わせる様にして攻防を繰り広げる。そして、そのリズムを意図的に崩した。斬りかかるその時に一部のアポジモーターを作動させることで、動作スピードを瞬間的に早めたのだ。
省10
937: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:24 ID:/Z+V/y3V0(8/20) AAS
「こなくそ…!」
 蹴りの勢いそのままに宙返りし、ガンダムは手首を失った左腕で駄目押しに殴りつける。
『ッッッ…!』
 抵抗を試みるニュンペーだが、少尉はもう反撃の隙を与えなかった。半壊した左腕が火花を散らすのも構わず、使えるだけのスラスターを加速させながら両腕で連打を繰り出す。
「あんた達が…!どれだけ…!強かろうが…!」
 ひとつ、またひとつとスラスターが死んでいく。上がらなくなる左腕。
「どんなに…!私を…!憎もうが…!」
 息も絶え絶えになりながら、残る片腕で力の限り殴りつける。倒れそうになるニュンペーに、その時間すら与えない。
「私は…死ねないッッッ!」
 振り被った拳で最後の一撃を叩き込む。ようやくニュンペーは、その場に崩れ落ちた。
938: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:24 ID:/Z+V/y3V0(9/20) AAS
 満身創痍のガンダムは、半壊したニュンペーを見下ろした。立つことすらままならなくなった敵機は、頭を垂れずにいるのが精一杯の様だった。ガンダムは残っていた最後のビームサーベルを右手に持とうとしたが、マニピュレータが言うことを聞かない。
「もう…勝負は着いたよ…」
『ふざけるな!お前達がそれで良くても…私は…!』
 ニュンペーがここにひとりで居るということは、他の部隊は全滅したということだろう。母艦が見当たらないのは気掛かりだが、友軍らしい友軍は何処にもいない。
『私には…!もう…何も残っちゃいない…!!』
 苦し紛れに撃たれたビーム砲が頬を掠める。2発目は無かった。エネルギーが底を尽きたのだろう。ニュンペーはだらりと右腕を下げた。
「あんたひとりでどうするっていうのよ」
『例え首1つになろうと…お前らに噛み付いたまま死んでやる…』
 少尉は思わず溜息をついた。

「物騒なこと言う割にさ…。結構甘いよね」
省7
939: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:25 ID:/Z+V/y3V0(10/20) AAS
 少尉は死に興味を抱いた。しかし事の本質は違ったのだろうと、今になって思う。現状を打破できない自分自身に言い訳がしたかったのだ。何でもいいから自分の生に意義が欲しかった。そんな気持ちを誤魔化すように、対岸にある死を羨望したのかもしれない。
 しかし、そんな自分を救い出してくれたのが…ワーウィック大尉であり、フジ中尉であり、グレッチ艦長だった。
 こんな自分に、手を差し伸べてくれた。死への本当の恐怖を知り、傍らに置き、そして実際に我が身を投げ出す理由すら生まれた。それでも尚生きていたいと願える今の少尉にとって、彼女の声は悲痛に思えた。
 きっと自分が多くを得た裏で、彼女は多くを失ったのだ。その幾つかは少尉が奪ったのかもしれない。横凪に腹を裂いたいつぞやのガルバルディを思い出す。
 別のガルバルディや青い大きな機体も、ここに居ないということはそういうことだろう。ガブスレイも静かに沈黙している。
 彼女は、独りだった。
940: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:25 ID:/Z+V/y3V0(11/20) AAS
「私はもう…あんたから何も奪わない」
 ひとり呟き、ウィード少佐とニュンペーに背を向けると、ガンダムはよろよろと歩き出した。もし撃てるならば、撃てばいい。彼女にはその資格があるだろう。しかしきっと撃たないだろう。彼女自身が、それを望んでいるようには到底思えなかった。
 ただ、その憤りをぶつける相手が欲しかったのだと思う。だから少尉もぶつけられるだけの全てで応えた。それでも、というのなら仕方がないかもしれない。
 すると、背後で大きな爆発が起こった。振り返ると、ニュンペーは跡形もなく自爆していた。
「…馬鹿。死ぬことないじゃない」
 思わず、少尉の頬に涙が伝う。この戦いで、本当の敵は何処にいたのだろう。少なくとも今の少尉には答えが見つからなかった。
「何か…ここんとこ泣いてばっかり…。大尉…」
 機体各部のエラーがモニターを埋め尽くし視界が赤くなっていく中、少尉はマラサイを探した。

59話 形影相同
941: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:26 ID:/Z+V/y3V0(12/20) AAS
「周辺に敵は居ないな!?」
「はい!いつでも出れます!」
 グレッチ艦長の呼び掛けに、グレコ軍曹も必死で応えた。彼女もよく頑張ってくれている。
 追撃に出たMS隊以外の回収が済み、ワーウィック大尉達を追ってシェルターから出港するところだった。
「しかし…まさか上層部が逃げ出すとはな。敵ながら現場の兵が不憫だ」
 傍でロングホーン大佐が腕を組んでいる。敵の襲撃時に彼がMSで出ると言い出した時は必死で止めた。血気盛んな男だとはわかっていたが、まさかここまでとは思っていなかった。
942: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:27 ID:/Z+V/y3V0(13/20) AAS
 出港した先に広がっていたのは、激しい戦闘の跡だった。残骸ばかりで生存者は見当たらない。
「必死こいて探せ!まだ大尉もゲイルちゃんも戻ってねぇんだ!」
 グレコ軍曹達に通信で呼び掛けさせながら、艦長自身も艦橋の窓に貼り付いた。動いている機体があればそれだけでわかるのだが、まるで墓場の様に静まり返っている。
「何処行った…?何処にいるんだよ…」
 目頭が熱くなるのを感じながら何度も見渡す。スクワイヤ少尉のことはまるで自分の娘の様に思っていた。大尉と一緒にいた時は思わず怒ってしまったが、内心今の彼なら任せてもいいと思っていた。その彼も見当たらない。
「状況は!?大尉達はまだ戻ってないんですか!?」
 勢いよく扉を開けて入ってきたのはフジ中尉だった。彼も負傷しているように見える。
「わからねぇ…何処にもいないんだよ…」
 艦長は帽子を深く被って呟いた。
「そんな筈ないでしょう!?私も出ます!見つからない筈がない!」
省1
943: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:27 ID:/Z+V/y3V0(14/20) AAS
 艦長の落とした肩をロングホーン大佐が叩く。
「艦長、そろそろ増援も来る。彼らが来てからの捜索というのは…」
「何言ってんです!?もし今!あいつらが怪我でもして助けを待ってたら!誰が助けるってんですかい!?」
 目を見開き、思わず艦長は大佐に怒鳴った。ハッと我に返り血の気が引いた。もうこれで今までのゴマすりも何もかも無に帰った。
「艦長…」
「…も、申し訳…」
 ロングホーン大佐の体格の良さが際立って感じる。殴られるのかと思い目を瞑った。が、彼は踵を返した。
「私もMSで捜索に出る。戦闘ではないぞ…文句はあるまい?」
「へ…?いや、そりゃしかし」
「負傷兵の気持ちも考えず、挙げ句艦長にも怒鳴られてしまった。これでは示しもつくまいよ。なあ?」
省12
944: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:28 ID:/Z+V/y3V0(15/20) AAS
『おーい』
 そこには、見るからにくたびれたスクワイヤ少尉とワーウィック大尉の姿があった。ガンダムのコックピットの中の様だ。
「お前ら…!無事か!今何処だ!?」
『座標を今送ります。大尉を回収するまでは良かったんですけど…いやー、ガンダムがガス欠起こしちゃって。駆動系も言う事聞かないから身動き取れなくなっちゃったんですよ。ってか通信機器も壊れかけ…やっと繋がったけど』
 少尉は何でもないことの様に笑う。
「お前…!下手したら置き去りになってたぞ!?」
 涙と鼻水が止まらない。生きていてくれて良かった。
『うわっ、ちょっと、艦長汚い…』
「何とでも言え!…ああ…良かった…良かった…」
 ひと目を憚らずに泣きじゃくった。他のクルー達も鼻をすすったり笑い合ったりしている。
省5
945: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:29 ID:/Z+V/y3V0(16/20) AAS
 ボロボロのガンダムを回収し、時同じくして到着した増援の艦隊と合流する。もう少し早く来てくれれば救えた命もあっただろう。しかし、これでもロングホーン大佐が手回ししてくれた結果だ。本来ならもっと遅れていたと考えれば、これで手を打つより他無かった。
 現場の後処理は到着した部隊に任せて、アイリッシュの面々には暫しの休養が言い渡された。合流部隊との擦り合わせがあるロングホーン大佐を拠点に残し、アイリッシュはコンペイトウの別ドックへと回った。
 最後のシェルター攻防戦でかなりの損傷を負ったこの艦も、そろそろ修繕しなければならない。
「ここは任せる」
 ブリッジをクルー達に預けると、艦長は医務室へと小走りで向かった。
「あ、艦長」
 スクワイヤ少尉の気が抜けた声がした方を見ると、ベッドに寝ているパイロット達を見つけた。暇そうに欠伸をする少尉と、本を読んでいた様子のフジ中尉。大尉が1番重症な様で今も眠っているが、後の2人も安静にしていなければならないと聞いている。
「やっと顔を出せた。お前ら大丈夫か?」
「大丈夫に見えます?」
「少なくともゲイルちゃんは大丈夫そうだな」
省7
946: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:29 ID:/Z+V/y3V0(17/20) AAS
「…艦長ですか」
 大尉が目を覚ました。
「おお、騒がしかったか?すまんな」
「いえいえ、十分に寝ました」
「お前らはほんと落ち着きがねぇな。こんな時くらいゆっくりしてりゃ良いのによ」
「艦長が1番煩いでしょ、どう考えても」
「何だと?」
 少尉に噛み付くと、別の患者を世話していた医師が口元に指を立てた。艦長は申し訳なくなってシュンとした。
「…ほら、怒られた」
 少尉が意地悪く笑う。
省9
947: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:30 ID:/Z+V/y3V0(18/20) AAS
 スクワイヤ少尉は自室で目を覚ました。比較的軽傷だった彼女とフジ中尉はワーウィック大尉よりひと足早く回復後、暫しの休息を許されていた。ベッドから起き上がり、のそのそと着替える。昨夜に聞いたコンペイトウの近況を思い出していた。
 コンペイトウ制圧後、エゥーゴの部隊は戦闘で半壊した基地の整備を進めていた。基地に残されていた少数の捕虜を受け入れつつ、拠点の調査や捕虜の証言などで基地の役割の全容が見えてきていた。
 ロングホーン大佐達の読み通り、ティターンズは大量破壊兵器…コロニーレーザーの建造に着手していた。コンペイトウはその資源の加工・中継なども担っていた様だ。しかし既に粗方の作業は終えていたらしく、拠点としての役目を一定終えた後だったことが伺える。
「んー…」
 背伸びをして制服の皺を伸ばす。休息と急に言われても何をしたら良いかわからない少尉は、とりあえずブリッジへと向かった。
948: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:30 ID:/Z+V/y3V0(19/20) AAS
「おう!お前らは休んでて良いんだぞ?」
 腕組みしたままグレッチ艦長が振り返った。
「そんな事言われても、こんな場所じゃバカンスって気分でも無いし。…少し痩せました?」
「おっ、そうかな?」
 艦長が少し嬉しそうに腹をさする。多分飲酒の量が減っているのだろう。酔っている暇もなかったか、酔えなくて飲むのを辞めたのか。
「まあ…まだ飛び出てますけどね、そのお腹」
「お前とは胃袋が違うんだ、胃袋が」
 艦長はそういってさすっていた腹をポンと叩いてみせた。
「ま…後で教えようと思ってたんだがな。…キリマンジャロ、落としたみたいだぜ」
「へえ。じゃあ地上の大きな拠点はひと通り攻略出来たんですね…」
省13
949: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:31 ID:/Z+V/y3V0(20/20) AAS
 艦長の自室前までやってきた。
「お前、俺の部屋来るの初めてだなそういや」
 そう言いながら扉を開けた艦長は、どうぞといった風に手で部屋へと促した。
「へー、意外と片付いてるもんですね」
 少尉が部屋へ足を踏み入れると、小綺麗な空間が広がっていた。見るからに高そうなオーディオやウィスキーのボトルが目に入る。月面でのゴタゴタの中で積み込んだと思うと、力の入れる場所を幾らか間違えている気もしないではないが。
「まあ適当に座れ。…水でいいか?」
「コーラとかないんですか?」
「オーケー、水でいいな」
「聞く意味ありました?」
「生憎切らしててな」
省13
前次1-
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル

ぬこの手 ぬこTOP 4.622s*