[過去ログ] 宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど (1002レス)
上下前次1-新
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
次スレ検索 歴削→次スレ 栞削→次スレ 過去ログメニュー
936: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:24 ID:/Z+V/y3V0(7/20) AAS
『何をやったのか知らないが…!私達の血の結晶が…そんな付け焼き刃に…!』
ニュンペーは腕部のビーム砲を放つ。これまでは内蔵兵装はエネルギー節約で極力使いたくなかったのだろうが、そうも言っていられなくなったらしい。形振り構わなくなったのがわかる。
ビーム砲を躱しつつ、敵の落とした薙刀を取り戻す。
「私に長物は向かない。だから…」
再度薙刀を分割し、二刀流に持ち替えた。
「その付け焼き刃、2本ならどう?」
『戯れるな!』
ニュンペーは脚部のクローを駆使して接近戦を挑んできた。こちらの捌く2本の刃に、カポエイラの様にタイミングを上手く合わせてくる。
「…いける」
こちらからも敵のリズムに合わせる様にして攻防を繰り広げる。そして、そのリズムを意図的に崩した。斬りかかるその時に一部のアポジモーターを作動させることで、動作スピードを瞬間的に早めたのだ。
省10
937: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:24 ID:/Z+V/y3V0(8/20) AAS
「こなくそ…!」
蹴りの勢いそのままに宙返りし、ガンダムは手首を失った左腕で駄目押しに殴りつける。
『ッッッ…!』
抵抗を試みるニュンペーだが、少尉はもう反撃の隙を与えなかった。半壊した左腕が火花を散らすのも構わず、使えるだけのスラスターを加速させながら両腕で連打を繰り出す。
「あんた達が…!どれだけ…!強かろうが…!」
ひとつ、またひとつとスラスターが死んでいく。上がらなくなる左腕。
「どんなに…!私を…!憎もうが…!」
息も絶え絶えになりながら、残る片腕で力の限り殴りつける。倒れそうになるニュンペーに、その時間すら与えない。
「私は…死ねないッッッ!」
振り被った拳で最後の一撃を叩き込む。ようやくニュンペーは、その場に崩れ落ちた。
938: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:24 ID:/Z+V/y3V0(9/20) AAS
満身創痍のガンダムは、半壊したニュンペーを見下ろした。立つことすらままならなくなった敵機は、頭を垂れずにいるのが精一杯の様だった。ガンダムは残っていた最後のビームサーベルを右手に持とうとしたが、マニピュレータが言うことを聞かない。
「もう…勝負は着いたよ…」
『ふざけるな!お前達がそれで良くても…私は…!』
ニュンペーがここにひとりで居るということは、他の部隊は全滅したということだろう。母艦が見当たらないのは気掛かりだが、友軍らしい友軍は何処にもいない。
『私には…!もう…何も残っちゃいない…!!』
苦し紛れに撃たれたビーム砲が頬を掠める。2発目は無かった。エネルギーが底を尽きたのだろう。ニュンペーはだらりと右腕を下げた。
「あんたひとりでどうするっていうのよ」
『例え首1つになろうと…お前らに噛み付いたまま死んでやる…』
少尉は思わず溜息をついた。
「物騒なこと言う割にさ…。結構甘いよね」
省7
939: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:25 ID:/Z+V/y3V0(10/20) AAS
少尉は死に興味を抱いた。しかし事の本質は違ったのだろうと、今になって思う。現状を打破できない自分自身に言い訳がしたかったのだ。何でもいいから自分の生に意義が欲しかった。そんな気持ちを誤魔化すように、対岸にある死を羨望したのかもしれない。
しかし、そんな自分を救い出してくれたのが…ワーウィック大尉であり、フジ中尉であり、グレッチ艦長だった。
こんな自分に、手を差し伸べてくれた。死への本当の恐怖を知り、傍らに置き、そして実際に我が身を投げ出す理由すら生まれた。それでも尚生きていたいと願える今の少尉にとって、彼女の声は悲痛に思えた。
きっと自分が多くを得た裏で、彼女は多くを失ったのだ。その幾つかは少尉が奪ったのかもしれない。横凪に腹を裂いたいつぞやのガルバルディを思い出す。
別のガルバルディや青い大きな機体も、ここに居ないということはそういうことだろう。ガブスレイも静かに沈黙している。
彼女は、独りだった。
940: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:25 ID:/Z+V/y3V0(11/20) AAS
「私はもう…あんたから何も奪わない」
ひとり呟き、ウィード少佐とニュンペーに背を向けると、ガンダムはよろよろと歩き出した。もし撃てるならば、撃てばいい。彼女にはその資格があるだろう。しかしきっと撃たないだろう。彼女自身が、それを望んでいるようには到底思えなかった。
ただ、その憤りをぶつける相手が欲しかったのだと思う。だから少尉もぶつけられるだけの全てで応えた。それでも、というのなら仕方がないかもしれない。
すると、背後で大きな爆発が起こった。振り返ると、ニュンペーは跡形もなく自爆していた。
「…馬鹿。死ぬことないじゃない」
思わず、少尉の頬に涙が伝う。この戦いで、本当の敵は何処にいたのだろう。少なくとも今の少尉には答えが見つからなかった。
「何か…ここんとこ泣いてばっかり…。大尉…」
機体各部のエラーがモニターを埋め尽くし視界が赤くなっていく中、少尉はマラサイを探した。
59話 形影相同
941: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:26 ID:/Z+V/y3V0(12/20) AAS
「周辺に敵は居ないな!?」
「はい!いつでも出れます!」
グレッチ艦長の呼び掛けに、グレコ軍曹も必死で応えた。彼女もよく頑張ってくれている。
追撃に出たMS隊以外の回収が済み、ワーウィック大尉達を追ってシェルターから出港するところだった。
「しかし…まさか上層部が逃げ出すとはな。敵ながら現場の兵が不憫だ」
傍でロングホーン大佐が腕を組んでいる。敵の襲撃時に彼がMSで出ると言い出した時は必死で止めた。血気盛んな男だとはわかっていたが、まさかここまでとは思っていなかった。
942: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:27 ID:/Z+V/y3V0(13/20) AAS
出港した先に広がっていたのは、激しい戦闘の跡だった。残骸ばかりで生存者は見当たらない。
「必死こいて探せ!まだ大尉もゲイルちゃんも戻ってねぇんだ!」
グレコ軍曹達に通信で呼び掛けさせながら、艦長自身も艦橋の窓に貼り付いた。動いている機体があればそれだけでわかるのだが、まるで墓場の様に静まり返っている。
「何処行った…?何処にいるんだよ…」
目頭が熱くなるのを感じながら何度も見渡す。スクワイヤ少尉のことはまるで自分の娘の様に思っていた。大尉と一緒にいた時は思わず怒ってしまったが、内心今の彼なら任せてもいいと思っていた。その彼も見当たらない。
「状況は!?大尉達はまだ戻ってないんですか!?」
勢いよく扉を開けて入ってきたのはフジ中尉だった。彼も負傷しているように見える。
「わからねぇ…何処にもいないんだよ…」
艦長は帽子を深く被って呟いた。
「そんな筈ないでしょう!?私も出ます!見つからない筈がない!」
省1
943: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:27 ID:/Z+V/y3V0(14/20) AAS
艦長の落とした肩をロングホーン大佐が叩く。
「艦長、そろそろ増援も来る。彼らが来てからの捜索というのは…」
「何言ってんです!?もし今!あいつらが怪我でもして助けを待ってたら!誰が助けるってんですかい!?」
目を見開き、思わず艦長は大佐に怒鳴った。ハッと我に返り血の気が引いた。もうこれで今までのゴマすりも何もかも無に帰った。
「艦長…」
「…も、申し訳…」
ロングホーン大佐の体格の良さが際立って感じる。殴られるのかと思い目を瞑った。が、彼は踵を返した。
「私もMSで捜索に出る。戦闘ではないぞ…文句はあるまい?」
「へ…?いや、そりゃしかし」
「負傷兵の気持ちも考えず、挙げ句艦長にも怒鳴られてしまった。これでは示しもつくまいよ。なあ?」
省12
944: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:28 ID:/Z+V/y3V0(15/20) AAS
『おーい』
そこには、見るからにくたびれたスクワイヤ少尉とワーウィック大尉の姿があった。ガンダムのコックピットの中の様だ。
「お前ら…!無事か!今何処だ!?」
『座標を今送ります。大尉を回収するまでは良かったんですけど…いやー、ガンダムがガス欠起こしちゃって。駆動系も言う事聞かないから身動き取れなくなっちゃったんですよ。ってか通信機器も壊れかけ…やっと繋がったけど』
少尉は何でもないことの様に笑う。
「お前…!下手したら置き去りになってたぞ!?」
涙と鼻水が止まらない。生きていてくれて良かった。
『うわっ、ちょっと、艦長汚い…』
「何とでも言え!…ああ…良かった…良かった…」
ひと目を憚らずに泣きじゃくった。他のクルー達も鼻をすすったり笑い合ったりしている。
省5
945: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:29 ID:/Z+V/y3V0(16/20) AAS
ボロボロのガンダムを回収し、時同じくして到着した増援の艦隊と合流する。もう少し早く来てくれれば救えた命もあっただろう。しかし、これでもロングホーン大佐が手回ししてくれた結果だ。本来ならもっと遅れていたと考えれば、これで手を打つより他無かった。
現場の後処理は到着した部隊に任せて、アイリッシュの面々には暫しの休養が言い渡された。合流部隊との擦り合わせがあるロングホーン大佐を拠点に残し、アイリッシュはコンペイトウの別ドックへと回った。
最後のシェルター攻防戦でかなりの損傷を負ったこの艦も、そろそろ修繕しなければならない。
「ここは任せる」
ブリッジをクルー達に預けると、艦長は医務室へと小走りで向かった。
「あ、艦長」
スクワイヤ少尉の気が抜けた声がした方を見ると、ベッドに寝ているパイロット達を見つけた。暇そうに欠伸をする少尉と、本を読んでいた様子のフジ中尉。大尉が1番重症な様で今も眠っているが、後の2人も安静にしていなければならないと聞いている。
「やっと顔を出せた。お前ら大丈夫か?」
「大丈夫に見えます?」
「少なくともゲイルちゃんは大丈夫そうだな」
省7
946: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:29 ID:/Z+V/y3V0(17/20) AAS
「…艦長ですか」
大尉が目を覚ました。
「おお、騒がしかったか?すまんな」
「いえいえ、十分に寝ました」
「お前らはほんと落ち着きがねぇな。こんな時くらいゆっくりしてりゃ良いのによ」
「艦長が1番煩いでしょ、どう考えても」
「何だと?」
少尉に噛み付くと、別の患者を世話していた医師が口元に指を立てた。艦長は申し訳なくなってシュンとした。
「…ほら、怒られた」
少尉が意地悪く笑う。
省9
947: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:30 ID:/Z+V/y3V0(18/20) AAS
スクワイヤ少尉は自室で目を覚ました。比較的軽傷だった彼女とフジ中尉はワーウィック大尉よりひと足早く回復後、暫しの休息を許されていた。ベッドから起き上がり、のそのそと着替える。昨夜に聞いたコンペイトウの近況を思い出していた。
コンペイトウ制圧後、エゥーゴの部隊は戦闘で半壊した基地の整備を進めていた。基地に残されていた少数の捕虜を受け入れつつ、拠点の調査や捕虜の証言などで基地の役割の全容が見えてきていた。
ロングホーン大佐達の読み通り、ティターンズは大量破壊兵器…コロニーレーザーの建造に着手していた。コンペイトウはその資源の加工・中継なども担っていた様だ。しかし既に粗方の作業は終えていたらしく、拠点としての役目を一定終えた後だったことが伺える。
「んー…」
背伸びをして制服の皺を伸ばす。休息と急に言われても何をしたら良いかわからない少尉は、とりあえずブリッジへと向かった。
948: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:30 ID:/Z+V/y3V0(19/20) AAS
「おう!お前らは休んでて良いんだぞ?」
腕組みしたままグレッチ艦長が振り返った。
「そんな事言われても、こんな場所じゃバカンスって気分でも無いし。…少し痩せました?」
「おっ、そうかな?」
艦長が少し嬉しそうに腹をさする。多分飲酒の量が減っているのだろう。酔っている暇もなかったか、酔えなくて飲むのを辞めたのか。
「まあ…まだ飛び出てますけどね、そのお腹」
「お前とは胃袋が違うんだ、胃袋が」
艦長はそういってさすっていた腹をポンと叩いてみせた。
「ま…後で教えようと思ってたんだがな。…キリマンジャロ、落としたみたいだぜ」
「へえ。じゃあ地上の大きな拠点はひと通り攻略出来たんですね…」
省13
949: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/23(木)23:31 ID:/Z+V/y3V0(20/20) AAS
艦長の自室前までやってきた。
「お前、俺の部屋来るの初めてだなそういや」
そう言いながら扉を開けた艦長は、どうぞといった風に手で部屋へと促した。
「へー、意外と片付いてるもんですね」
少尉が部屋へ足を踏み入れると、小綺麗な空間が広がっていた。見るからに高そうなオーディオやウィスキーのボトルが目に入る。月面でのゴタゴタの中で積み込んだと思うと、力の入れる場所を幾らか間違えている気もしないではないが。
「まあ適当に座れ。…水でいいか?」
「コーラとかないんですか?」
「オーケー、水でいいな」
「聞く意味ありました?」
「生憎切らしててな」
省13
950: 2020/07/25(土)12:03 ID:XOoY++GB0(1) AAS
乙!
951: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/27(月)00:04 ID:xPbph6ya0(1/6) AAS
いつかこんな日が来るのだろうとは思っていた。グレッチ艦長は軽く溜息をついた。
「先にひとつ言っとくが、お前の親父さんは確かにティターンズだった。だが、だからって悪人だった訳じゃあない。寧ろ出来た人だった…怖いくらい」
スクワイヤ少尉は、手に持った水に映る自らの顔を見つめている。
「昔の話になるが、俺は当時イケイケのバリバリだった…」
それを聞いた少尉が笑って鼻をこする。艦長としては少しでも気を楽にして聞いてほしかった。実際には、当時の艦長は今よりももっと気弱だったものだ。
「そんな俺も、戦艦が沈むとなればどうしようもなくてな。ソロモンでの戦いで乗艦がやられた。だが…当時の上官は退くことを良しとしなかった」
口にしながらその時のことを思い返す。
952: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/27(月)00:05 ID:xPbph6ya0(2/6) AAS
一年戦争において、ソロモン戦は敗北の許されないものだった。グラナダを叩くにしろア・バオア・クーを叩くにしろ、ソロモンは絶対に抜かねばならない。そのプレッシャーもあったのだろうが、それでも艦は沈む時には沈むのだ。
ましてジオンの巨大MAなどと交戦になれば、簡単に基地を攻略など出来はしない。メガ粒子砲を艦体に受け、いよいよとなった当時の上官の焦りと恐怖で歪んだ顔を思い出す。
「…クルーも道連れに玉砕なんて訳にいかねぇ。当時副官だった俺は脱出を提言したよ。上官はおかしくなっちまって、あろうことか俺に銃を向けやがった…。俺が命令を聞けないと言ったその時さ」
イカれた上官に撃たれるのが先か、艦が沈むのが先か。いずれにせよ死を覚悟したその時、全身が血で塗れた。
「…上官はその場で撃ち殺された。ヴォロ・アイバニーズ…お前の親父さんにな。同じ艦に乗ってたんだ。あっちはパイロットだった。
艦の被弾時に丁度補給へ戻ってきていて、ブリッジのゴタゴタを聞きつけて来てみたら…俺を撃とうとしてる上官の姿が目に入ったってな訳だ」
少尉は何も言わず、またコップを覗き込んでいる。何を考えているのか窺い知ることは出来ない。艦長はそのまま話を続ける。
「上官を殺すなり、俺に向かって『あんたが1番階級が高い。指示をくれ』なんて言うからよ。そらもうクルー連れて皆で一目散に逃げ出した。おかげで皆助かったんだ」
艦が沈んでしまえば、証拠も一緒に消える。わざわざあの上官の事を証言する様なクルーも居なかった。
953: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/27(月)00:05 ID:xPbph6ya0(3/6) AAS
「そんでま…彼とは終戦後も多少交流があったもんでな。…ほんと言うと、ゲイルちゃんがまだガキの頃に何度か会ったりもしてるんだぜ」
「うそん」
顔を上げた少尉が、当時のまだ子供だった頃の彼女と重なる。丁度思春期真っ只中で父親と上手くいっていなかったのか、その父親が連れてきたグレッチ艦長とも殆ど顔すら合わせようとしなかったのを憶えている。
「デラーズ紛争も終わったあたりの頃だったな。長いこと連絡を取ってなかったら、久々にあっちから寄越してきてよ。…自分の身に何かあれば娘を頼むってさ。最初俺は何の事だかさっぱりわからなかった」
「…それってつまり、ティターンズに入るからってこと?」
「そういうことだった。俺がティターンズに入る様な柄じゃない事はあっちも知ってたからな。同じ連邦とはいえ、詳しいことは伏せたんだろうよ」
彼自身、娘が軍に入るとは思っていなかったのだろう。あの手この手で護ろうとしていた。その為に、時には汚い仕事もやった筈だ。気付けば…連絡など取れない様なところへ逝ってしまった。
954: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/27(月)00:06 ID:xPbph6ya0(4/6) AAS
「親父さん…俺に相談出来るのはティターンズに入る前が最後だとわかってたんだろうな。なし崩し的に俺はエゥーゴに入っちまったし。結果的にはそのおかげで上手く行ったけどよ」
「じゃあ…私がいつまでも哨戒任務に就かされてたのは、父さんと艦長のせいってことですか…?」
「まあ…そうだな」
少尉は何かを言いかけてすぐ口を閉じた。言わんとすることは艦長にも痛いほどわかる。
「ゲイルちゃんの為だった。とにかく死んでほしくなかったんだよ…親父さんは」
「それで自分は死んだっていうんですか!?」
艦長を遮り少尉が立ち上がった。コップを持つ手が小さく震えていた。
「落ち着け。…続けるぞ?」
少尉に背を向けるようにして艦長は窓際へ行った。
「この事を知っているのは俺と…ロングホーン大佐だけだ。ティターンズの将校の娘がエゥーゴにいるなんて知れたら、過激なやつが何をするかわからん。とはいえ…この状況下で戦力を遊ばせておくわけにもいかなくなってきた。大佐が最大限に手回しした結果が…」
省2
955: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/27(月)00:07 ID:xPbph6ya0(5/6) AAS
「まあ何にせよ、ゲイルちゃんの活躍で俺達はここまで来れた。もう俺達が守ってやらなくたって…お前はやっていける」
そういって艦長は少尉を見つめた。
「そんなの…身勝手ですよ…」
見つめ返してきた少尉の目には、哀しみや憤りが入り混じっていた。背けたくなる気持ちを抑え、じっと見つめる。
「私のこれまでは…私自身の意志で決めてきたと思ってました。でも…」
彼女が肩を落とす。小さな身体が更に小さく見えた。
「お前はお前だ。父親が誰だろうが、何に乗っていようが、お前はお前なんだ」
「だったら何で父の事を隠していたんです!?何故ガンダムなんか寄越したんです!?」
少尉が半ば叫ぶ様に吠えた。
「ゲイルちゃん…」
省10
上下前次1-新書関写板覧索設栞歴
あと 47 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル
ぬこの手 ぬこTOP 3.101s*