サイコの図書館【2】 (142レス)
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1: 2009/11/02(月)19:02 ID:FgsuaFZo0(1) AAS
      ◎ Psycho's Book Shelf. ◎

サイコ様の秘蔵している書籍を鑑賞する場です。
なにしろサイコ様のコレクションなので何でもありに決まっています。

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   | ̄ ̄ ̄|   すごいのが入ったんですけど‥‥みます?
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省6
123: 2011/02/02(水)17:13 ID:6zX.Z7yA0(6/7) AAS
「悪魔の思惑2」 5

「鳴瀬弁護士はあなたを守りたかった、しかし、これだけで済むとは思えない、彼も正義も」
「俺はどうなっても構わないと思っています。
 元々発端は俺なんだし、メディアに叩かれようが全てを失おうが、覚悟は出来ています」
「あなたはそのつもりでも、鳴瀬弁護士はどうでしょう。命に代えてもあなたの名誉を守るのではありませんか。
 しかし、あなたの命を盾にとられてはそれも叶わなくなる。何故ならあなたを愛しているから、
 あなたの命を守るためなら、全てを公表する事も辞さない。
              しかし、それよりももっと確実に守るには、全てを知っている正義より先に先手を打つ事だ・・・」

「それは、鳴瀬さんが隈田さんを手にかけるという事ですか?」
「直接はそうしなくても、事故に見せかけるとか・・・」
省9
124: 2011/02/02(水)18:47 ID:6zX.Z7yA0(7/7) AAS
「悪魔の思惑2」 6

迫沢に別れを告げて、執務に没頭する毎日は何と無味乾燥なことか。
復讐に燃えて日々孤独に暮らしていたあの頃よりも、更に孤独を禁じえない。
それ位迫沢の存在は、鳴瀬の心深い部分に食込んで消える事はなかった。

「先生、多田法律事務所の多田先生から、至急内密にお会いしたいと、お電話が入っています」
道島事務長が入室してきて告げた。

「多田先生が?」
先月のパーティーが直接には初対面だったが、法曹界ではそれなりに名の通った人物である。無碍には出来ない。
こちらから事務所にお伺いしますと伝えたが、内輪の話なので事務所は不味い、指定の場所に来て欲しいと言ってきた。

「先生、大丈夫ですか?」
省54
125: 2011/02/03(木)14:01 ID:J0AMMLbw0(1/2) AAS
「悪魔の思惑2」 7

「どうしたんですか?私は、あなたがそうだと言っている訳ではない。
 ただ、このまま見過ごす訳にもいかない。何しろ隈田は私の古い友人の一人息子なのでね」

鳴瀬は引きとめようとする多田の方を振り返って言った。

「あなたは嘘を言っていますね。
 もし、本当に何の確証も無く隈田さんの妄想だと思われているのなら、私をここには呼ばなかったはずです」
「お怒りは尤もですが、しかし・・・」

多田の顔色が変わる。
省34
126: 2011/02/03(木)15:19 ID:J0AMMLbw0(2/2) AAS
「悪魔の思惑2」 8

迫沢は渋谷署管内で起きた強盗殺人の捜査で、昼夜を問わず聞き込みに追われていた。
あれから実家にも殆んど帰っていない。
鳴瀬の事が心配だったが、あの首尾一貫した弁護士がそう簡単に折れてくる筈も無い。

『 全く、強情なんだから、いったい誰に似たんだ 』

そう思いながら、彼の母親の事を想う。
鳴瀬から母と弟を奪ったのは他ならぬ自分だった。そう思うと、今の自分が一層切なかった。

間もなく強盗殺人の犯人と思われる若い男が捕まった。
偶然にも、接見にやって来たのは鳴瀬だった。
省35
127: 2011/02/16(水)03:27 ID:7YSDibCY0(1/2) AAS
「ランチタイム」1/2

鳴瀬は、職業柄変な輩に付け狙われる機会が多かれ少なかれあった。
幸い今まで実害はないが、鳴瀬の容姿と物腰の柔らかさもあいまって
狂信的なファンも結構な数存在しており、手紙の中にはストーカーじみた
ものもある。
すべて記入済みで残すは鳴瀬が判子を押すだけという状態の婚姻届が
届いたこともあった。無視をしていたらその後何枚も送られてきたので
鳴瀬もさすがに怖くなり直筆で丁重にかつ理由も述べきっぱりと断る手紙を
書いて送り返した。

鳴瀬自身、それが正解とは思っていなかったがそれ以外に思いつかなかったのだ。
省41
128: 2011/02/16(水)03:31 ID:7YSDibCY0(2/2) AAS
「ランチタイム」2/2

「大体なんでそんな平気な顔してるんですか、俺は」
「胡麻がついてる」

鳴瀬の指摘に出鼻を挫かれたが、自分が今何を言おうとしていたのか
すぐに思い出して迫澤はそこで口を閉ざした。
『俺は心配で』なんて、心配する権利がはたして自分にあるだろうか。

あんなにもはっきりしていた関係性は、二人が目的を失った途端とてつもなく
曖昧なものへ変化していた。二人きりになった時に流れる景色も、薄ぼんやりと
した色彩で捉えどころがない。

気付けば鳴瀬の顔が先ほどより近くにあった。下唇に鳴瀬の親指が触れている。
省32
129: 2011/03/22(火)01:18 ID:8vxj/zQs0(1/2) AAS
「セシリー癖」1

糸が切れたようにふっつりと目が覚めた。
寝室は暗く、遮光カーテンの隙間からは僅かの光さえ零れてこない。
迫沢の眠りはとても健全で、一度寝入ってしまうと夜中に目を覚ますことなんて殆どない。
はて、と思っていると、背後で掛け布団が波打って空白の生まれる気配があった。
同居人とは一つの寝台で互いに背を向けるように眠っている。
その人は芹沢が目を覚ました事には気付いていない様子だった。
どうかしたんですか、と、声をかけるかどうかを悩んでいる間に、鳴瀬はこっそりとベッドを抜け出してしまった。
ぺたりぺたりとスリッパの足音が遠ざかって、音を立てずにドアを出て行く。
こんな真夜中にどうしたのだろうと思いながら、ナイトテーブルに手を伸ばして目覚まし時計を引き寄せる。
省20
130: 2011/03/22(火)01:19 ID:8vxj/zQs0(2/2) AAS
「セシリー癖」2

声を掛ける必要はないだろうかと考えていると、突然頭上に影が差した。
そしてほぼ同時に、ふふ、と、小さな笑い声が降ってきた。
彼が好むアールグレイの匂いがする。

「こどもみたい」

かわいい、と、慈しむ為の声音が言うので、一瞬呼吸が止まった。
飲み物で温まった指先に頬を突付かれて、どうしたらいいのか分からなくなる。
平常心と心の中で唱えながら寝たふりをすることに全力を傾けていると、
スタンドの明かりが消され、ようやく鳴瀬が身を横たえたようだった。
同衾相手に触れないように気を付けながら、ごそごそと収まりの良い位置を探って、
省16
131: 2011/04/08(金)10:53 ID:1.K0Dx3Y0(1/2) AAS
「悪魔の思惑3」1

強盗殺人の被疑者である男らしき人物が事件当夜ほぼ同時刻に、自転車の人間とぶつかって言い争いになった
現場を目撃したという証人が見つかった。
雑誌を踏んだ踏まないで揉めていて、人相風体が被疑者にほぼ間違いがないという理由で釈放されるに至った。

「鳴瀬さん!」

接見を終えて東署の階段を降りる弁護士に、後ろから刑事が声をかけた。
駆け降りてきたのは迫沢だった。

「待ってください!」
省31
132: 2011/04/08(金)11:58 ID:1.K0Dx3Y0(2/2) AAS
「悪魔の思惑3」2

「多田先生に会われたそうですね」
「・・・ええ」
「先生がシツコクあなたの事を聞いてきて、勿論、俺も詳しい事は話していない」

グラスの中に灯された赤いロウソクの炎を見つめながら、呟くように言う。
乙女チックなところが不自然に見えない、隈田も鳴瀬に負けず劣らず十分に魔性の雰囲気が漂う。

「多田先生の悪い癖なんです。俺はあなたを独り占めしたいから、これからも詳しいことは話はしない」
「・・・・・」
「実は、俺も先生の子羊の一人なんです・・・」

悪戯っぽく笑うが、どこか頼りない。
省34
133: 2011/06/10(金)10:26 ID:yg61uX120(1/5) AAS
「悪魔の思惑4」1

隈田に再開して役半年が過ぎようとしていた。
迫沢とはあの日以来、東署で偶然に出会ってもお互いに完全無視を貫いていた。
鳴瀬は、迫沢は始めから刑事になるために生まれたのだと思いたかった。

その日弁護士は公判を終えてすぐに事務所に直帰していた。
道島事務長は鳴瀬がドアノブを開けるが早いか意外なことを告げてきた。

「先生、大変です。多田法律事務所の所長が自宅で死体で発見されたそうです」
「何ですって?」
「殺人です。夕べ遅くに帰宅されて、その後にナイフのようなもので刺されて殺害された模様です」

昼のニュースで流れたもので、多田法律事務所では大騒ぎになっていた。
省27
134: 2011/06/10(金)11:11 ID:yg61uX120(2/5) AAS
「悪魔の思惑4」2

「鳴瀬さん!」

事務所の近くまで戻ったところで隈田に呼び止められた。

「どうしたんですか?こんな時間に」
「いえ、あなたに急に逢いたくなって、ここで会えて良かった」
「大変な事になっているようですね」
「先生のことですね。夕べ十時ころホテルの部屋に帰宅されて、その後何者かに殺害されました。
 今朝クリーンスタッフが先生の遺体を発見して通報したそうです」
「顔見知りの犯行でしょうか」
「たぶん、先生はああ見えて中々に用心深い方ですからね。
省23
135: 2011/06/10(金)12:11 ID:yg61uX120(3/5) AAS
「悪魔の思惑4」3

鳴瀬は自宅マンションでシャワーを浴びていた。
ふと、自分の前に備え付けられた鏡の向こうに目を落とす。
曇りを拭うようにお湯をかける。
しかし、その先に映る自分の姿をすぐに見ることが出来ない。

ゆっくりと目を開けたその視線の先に、嘗て耶麻乃に刺された脇腹の傷が目に入った。
自分はあの時死ぬはずだったのだ。
ここに今生きている人間は何者なのか。誰のために生き延びたのか。
やはり振り出しに戻ってしまう。
どんなに記憶を封じ込めようと、この傷が消えないと同様に己の犯した罪は消える事は無い。
省28
136: 2011/06/10(金)13:19 ID:yg61uX120(4/5) AAS
「悪魔の思惑4」4

多田弁護士殺害事件は、本人の顔の広さもあって中々捜査陣をてこずらせていた。
数週間がたったある日の夜、久しぶりに早く帰宅した鳴瀬は珍しく貰い物のワインをあけていた。
迫沢に別れを告げてからどれ位の日数がたったのだろう。
もう温もりさえも忘れそうでどうにもやり切れなかった。

二杯目のワインを飲み終わった時、玄関のチャイムが鳴った。
相手は意外にも迫沢本人だった。

「今日は刑事としてやってきました。伺いたいことがあります。開けてください」

部屋の鍵は変えていないから、その気になればすぐに自分で入って来られるはずなのに
あえてこちらが開けるのを待っているのは、刑事としてのケジメなのだろう。
省32
137: 2011/06/10(金)14:27 ID:yg61uX120(5/5) AAS
「悪魔の思惑4」5

迫沢は拳を握り締めていた。
多田弁護士本人は、寝室ではなくリビングの方で殺害されていたから
寝室のベッドの下に落ちていたカフスは誰も注目しなかった、迫沢を除いては。

「何故、一人で多田の元を訪れたのですか?」
「多田先生は、法曹界では大先輩です。無下に断われるはずがありません」
「断われなくても、多田が長期滞在している部屋を直接訪問するなど、どうかしている!」
「どうもしません!僕は若い女性でも、保護者が必要な子供でもありません!」

酔いが回っているのか、上気している鳴瀬は危うい雰囲気を醸し出していた。

「あなたのその無防備さが、他の人間を惑わせるんだ!」
省36
138: 2011/06/13(月)10:24 ID:LEwm5BJk0(1/3) AAS
「悪魔の思惑4」6

「あの日以来、この大きなベッドで一人で休む事がとても苦痛でした。
 だから、リビングのソファで休んでいました」

「俺も、あの家で一人で寝るのがいやだった。
 だから刑事部屋にシツコク泊ったのもその為です」

本当によく我慢したものだった。

「あなたが強情だからいけないんだ」
迫沢はなじるように言った。
省28
139: 2011/06/13(月)11:28 ID:LEwm5BJk0(2/3) AAS
「悪魔の思惑4」7

「この度は大変な事でしたね。改めてお悔やみ申し上げます」

「あなたからそんな言葉を伺うなんて、それが用向きでここに来られた訳ではないはずですよね」
隈田は落ち着いた口調で迫沢に言った。

「俺と鳴瀬さんの事で伺いました。
 俺の昔の過ちで、あなたの父上をあんな形で死なせてしまった。
 申し訳なかったと、今更ながらにお詫びします」
迫沢は深々と頭を下げた。

「どういう風の吹き回しですか。心境の変化という訳ですか?」
「あなたの気が済むようにしていただきたいと、・・・言っているんです」
省31
140: 2011/06/13(月)11:50 ID:LEwm5BJk0(3/3) AAS
「悪魔の思惑4」8

「鳴瀬さん、海が見たいな」

隈田の元から帰った迫沢はそう言った。

「海ですか?」
「行ってみませんか?」

「どこの海へ?」
「鳴瀬さんのお姉さんが入院している病院の近くの海へ」
省12
141: ◆6jt1g16sYs 2012/06/05(火)21:51 ID:l/She0Hg0(1/2) AAS
『楽しいけれど楽じゃない』(1/2)

鳴瀬と外出し、用件が片付いたのは12時過ぎだった。
連れだって歩くビジネスパーソンたちが手ぶらなのは、気軽に昼食に出かけるためだろう。
仕事だから仕方がないが、少々出遅れたようだ。

童島自身は特に空腹を感じてはいなかったが、
鳴瀬には早めにちゃんとした食事を取らせたいと思い、
それとなくあたりに目を配りながら歩いていた。
(先生は、ご自分のことには本当に無頓着だから……)

「暑くなりましたねえ」
「そうですね、少し蒸すようになりましたね。
省24
142: ◆6jt1g16sYs 2012/06/05(火)21:52 ID:l/She0Hg0(2/2) AAS
『楽しいけれど楽じゃない』(2/2)

二人は元気でよく喋り、控えめな声量ではあるが聞きやすい声で、
童島の耳にも明瞭にその会話の内容が入ってきた。
声が高くなりかけると、如才なく、童島に向けて同意を求めるような、
「すみませんね」とでもいうようなまなざしを投げかけてくるので、
童島も時折眉を動かしたり目で頷いてみたりする。
若く(もしくは若く見え)、貴公子然とした鳴瀬には少々遠慮しているらしいのがおかしい。

鳴瀬は普段通り、マイペースに蕎麦を啜っていた。
童島はその頬のあたりを見るともなしに眺めながら、なんとなく、
(大福が食べたくなってきたな)と思った。
省29
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