[過去ログ] さやか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第二夜 (1002レス)
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970: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/26(土)16:38 ID:/o0WKI/SO携(2/2) AAS
超絶スタイリッシュ執事格闘技VS銀幕風人斬り剣術か、見てみたいが傍から見るとレイヤーどうしが死闘を繰り広げている様にしか見えないな
しかしマーク武藤のアクションは全牙狼キャラの中でも最高だと思う
「只者では無いな貴様、勝負しろ!」
「…」
「…?」
「ペラペラペラペラ(ちょいちょいおっちゃん!わいはキサマちゃうねん、コダマやねん!HAHAHA!)」
「!?」
971: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/26(土)18:20 ID:iytM/C8w0(2/2) AAS
「・・・・・・・っwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「ほむらちゃん?!」
デデーン♪
QB『暁美ほむら、アウトー。』
972: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/31(木)19:11 ID:sOo1ONGm0(1) AAS
≫970
両方とも魔獣装甲が出来る点で共通してるね。
△牙狼マギ的2月の行事☆
カオル「鋼牙、節分もホラー狩り・・・だよね。」
杏子「零、お前チョコは好き・・・か?」
973: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/01(金)23:38 ID:/6rFK71SO携(1) AAS
考えてみると魔戒騎士って年がら年中豆まきしてる様なものか、邪気を払う的な意味で
しかし、
・豆持って鬼はー外ーしてる鋼牙
・鬼のコスチューム着て逃げ惑う鋼牙
どっちを見ても確実に俺の腹筋が心滅獣身する自信がある
974: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土)21:11 ID:ZQl3h/9j0(1) AAS
ゴンザ「鋼牙様、今年の恵方は南南東にございます」
鋼牙「うむ」
レオ「カオルさん、ほむらさん、もともと節分の豆捲きや恵方巻きの習慣は魔戒法師が厄除けや願掛けのために始めたものが市井に伝わったものなんですよ。」
QB『恵方巻きならいいのを知っているよ。』
前に上がった二期小説の話だが
なぜシグマの煽動に乗った法師がけっこういたのか合点がいくように
バラゴの父みたいなDQN騎士が法師をメタクソに扱き使う話とかも面白そうですよね
975: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2013/02/04(月)02:25 ID:OQarjnjQo(1) AAS
インフルエンザが回復してから、体調よりも勘を取り戻すのに手間取っていました
明日にはどうにか投下したいと思います
遅れた分、なるべく早く進めていきたいです
48時間の一挙放送も可能な限り参加したいですし
976: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/04(月)02:30 ID:CsVv0j4SO携(1) AAS
インフルだったのかーお大事に
いつでも待ってるよ
977: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/05(火)02:41 ID:bSU8f1Sbo(1/6) AAS
*
パシッ、パシッ。
乾いた音が連続して響く。
零が、杏子の頬を軽く左右に張った。
いつものように牙を剥いて怒声を返すことを期待したが、音は空しく闇に消える。
杏子の眼に光は戻らない。微かに呻きは漏らすものの、相も変わらず虚空を見つめるだけ。
『ダメみたいね、ゼロ』
「だな。これ以上は後が怖い。ま、あんまり女の子の顔を叩くのも気が引けるし」
つい昨日、路地裏の決闘で平然と顔を狙った蹴りを放った男とは思えない言い草。
しかし戦いと、無抵抗な少女を殴るのは訳が違う。
今の彼女からは、あの時の闘志も殺気も感じられない。まるで人形。
感触からして、強く叩いても傷が残るだけで無意味だろう。
ショックと痛みで気付けという強引な方法では効果がないようだ。
零はおどけて言ったが、内心では焦りが芽生え始めてもいた。
「ホラーの術にはまったにしても、封印されてからも効力が続くなんてあるのか?」
『ないとは言えないけど……モロクにそんな前例はないから、少し考えにくいわね。
恐らくだけど、ホラーの術はとっくに解けているはず』
「……どういうことだ?」
『この娘が自分で戻ってこないのよ。ホラーの術を受けて、精神が同調しているのかも』
978: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/05(火)02:51 ID:bSU8f1Sbo(2/6) AAS
シルヴァの推理に零は首を傾げ、暫し考え込む。
つまり、何らかの暗示を掛けられ、解放後も催眠状態が続いている?
あり得ない話ではないが、どうにも腑に落ちなかった。
何かが引っ掛かっていた。
そもそも、これまであまり経験のない事態ではあるのだが。
だが、続くシルヴァの言葉で、得心が行った。
『彼女たちは常識で計れる存在じゃないわ。
そうね……もし、彼女自身も幻惑魔法とか使えるとしたら』
「自分で自分に幻を見せているってことか? それなら覚めないのも道理だろうが……」
ひとまず納得した零は、
「にしても、あんこちゃんにそんな芸当ができたとしたら大変だ。
昨日使われてたら、ちょっとヤバかったかもな」
魔戒騎士に催眠や精神操作の類は通用しないが、幻惑魔法と言うなら他にも手段は考えられる。
こちらを幻惑するホラーも存在し、苦しめられたこともある。
法師ならまだしも、そのすべてを騎士の自分が防ぎ、見破れたかどうか。
あの状況で杏子が全力を出さなかったのは不思議だが、
ともかく自分の認めた彼女の全力は、まだまだあんな程度ではないということ。
零は薄く笑った。少し嬉しくなったのだ。
『じゃあ普段は何らかの理由で封印していた、とか?』
「それを今は無意識に発現させている、と。しかし、どんな幻を見てるんだかな」
零は、杏子の頬をペチペチ叩いて笑みをこぼす。やはり反応は微弱。
野良犬か、酷い時は狂犬にもなる少女だが、こうなると張り合いがない。
979: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/05(火)02:53 ID:bSU8f1Sbo(3/6) AAS
「よほど楽しくて覚めたくなくなる夢か……」
――いや……それなら、こんな辛そうな表情はしないか。
この顔を見るに、辛くても目を背けられない、向き合わざるを得ない幻。
なかなか覚めないのは、終わりがないから、だろうか。そんなふうに思った。
悔やんでも悔やみ切れない、かと言って、どうすればよかったのか。
延々と答えの出ない自問を繰り返している。
例えるなら、そう――零にとっての"あの夜"の出来事のような。
『さぁ? 見当もつかない。
でも彼女が魔法を掛けているのだとしたら、ホラーと同じ幻ではなく、
別の……彼女のイメージに因るでしょうね』
彼女の過去。
興味がないと言えば嘘になるが、知る必要も、その資格もない。
誰にだって触れられたくない過去はある。
もし、そこに踏み入る資格があるとするならば、
何があろうと、とことん付き合う意思を持つ者だけ。
あらゆる弊害を受け止める覚悟を決めた者だけだろう。
そして、零にはそんなつもりは毛頭なく、だからこそ軽々しく口にできる。
「何にせよ、これじゃ埒が明かない。頼んだぜ、シルヴァ」
『いいの?』
980: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/05(火)02:57 ID:bSU8f1Sbo(4/6) AAS
「ここに置いてもおけないだろ? さっきの戦闘で派手にやり過ぎた。
誰か来るかもしれないからさ」
彼女の為と言うより、自分の為に。
得にならないばかりか、不利益でしかないからだ。
杏子がこのまま幻に囚われて帰ってこないのも、誰かに発見されて保護されるのも。
杏子が何を見ていようが関係ない。無理にでも戻ってもらう。
たとえ甘い夢に浸っていようと、辛い過去を直視することで何らかの答えを見出そうと。
零が双剣を抜き放ち、その内の一本を左手の甲に添え、魔戒剣にシルヴァの艶めかしい唇が触れる。
鏡のように磨かれた、もう一本の剣身には杏子の姿を映した。
剣を重ね、杏子を映したまま唇が触れた箇所を打ち鳴らす。
キィーーン、と長く澄んだ高音と共に、青白い光が波紋状に広がり、杏子の身体を通り抜けた。
杏子はビクンと大きく震えると、前のめりに倒れる。
その様は電源を切られ、強制的に停止させられた機械を連想させる。
零が杏子の術を断ち切り、一瞬で意識を奪ったのだ。
零が身体を抱き留めても、目蓋は閉じられたまま、何の反応も示さない。完全に意識を失っていた。
「よっ……と」
両腕で杏子を抱え上げる零。
腕の中で眠る少女は想像より、ずっと軽かった。
とても激戦を潜り抜けてきたとは思えない、華奢な身体。強く力を込めれば壊れそうなほど。
981: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/05(火)03:03 ID:bSU8f1Sbo(5/6) AAS
こうして見ると、ただの少女にしか見えない。
魔法の力を借りていても、決して楽ではなかっただろう。
鍛えに鍛えた魔戒騎士でさえ、そうなのだから。
その戦闘力と、勝利の為に躊躇せず自らを傷つけた覚悟。
口にはしなかったが、素直に称賛に値する。
杏子の太股には、彼女自身が拵えた槍傷。
そこから滴り落ちた血が、今も床に赤い染みを作っている。
深手ではないが、放置もできない。
ひとまず状況を確認し、可能なら応急処置を施す。
振動で痛みを与えぬよう、壊れ物を扱うように、零は静かに階段を下りる。
二人の関係からすれば最もあり得ないが、知らない者が見たなら、きっとこう思っただろう。
さながら姫と騎士のようだ、と。
982: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/05(火)03:06 ID:bSU8f1Sbo(6/6) AAS
切りがいいのでここまで。続きは明日か明後日にはいけると思います
一期10話でザルバがやった洗脳解除?
ザルバにできるならシルヴァにもできるのかな、と
もしできない設定があったり、的外れな考察だったらすみません
描写は想像です
983: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/05(火)10:40 ID:goZ0wbqAO携(1) AAS
>>1乙
なるほどアスモデイの時のアレか。
984: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/05(火)13:22 ID:J8hapftSO携(1) AAS
空を駆ける金色の>>1乙
この2人が騎士とお姫様やっててなによりです
985: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2013/02/08(金)02:29 ID:f2GR6sIZo(1/2) AAS
ちょっと難航中ですが明日の一挙までにはなんとしても
986: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/08(金)23:54 ID:f2GR6sIZo(2/2) AAS
*
頬に柔らかい感触と、微かな刺激。
誰かの呼ぶ声が聞こえる。
「……ちゃん。起きろよ、あんこちゃん」
「うぅ……ん」
唸りながら身を捩る。
長い夢を見ていた。
ずっと暗くて深い場所にいた。例えるなら、底なし沼でもがいていたような。
そのせいか、酷く頭が重い。なかなか目を開く気になれなくて、聞き流していた。
それでも声は止むことはなく、頬が柔らかく叩かれる。
そうこうしている間に、ゆっくりとだが五感が蘇ってきた。
観念して薄らと目を開くと、そこには。
笑顔。
これは誰だったろう。輪郭がぼやけて判然としない。
でも、何故か心が安らぐのを感じた。
自分に向けられる微笑みが、今はこんなにも温かい。
やがて目の焦点が合い、杏子は数秒遅れて人物を認識する。
「お目覚めですか、お姫様」
気取った口調で戯言を吐き、恭しく頭を垂れた男。
その顔は忘れもしない。杏子が今、最も嫌っている相手。
魔戒騎士、涼邑零。
987: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/09(土)00:50 ID:icOT/Ycyo(1/4) AAS
「って……め……」
杏子は言い返そうとしたが、喉が掠れて上手く声が出せなかった。
ムカつくニヤケ面を引っ叩こうにも、まだ四肢の感覚が鈍い。
だから皮肉とからかいに答える代わりに、顔をしかめた。この上なく嫌そうに。
「元気そうで結構」
苦笑して、零は立ち上がった。
不思議と腹は立たなかった。
彼が杏子の反応を予想していたように、彼女もまた、零の反応を予想していたから。
しかし何より、怒る気力もなかった。
「ここは……?」
力のない声で問う。
「見ての通り、廃ビルの玄関」
周囲を見回せば、なるほど、訊くまでもなかった。
流れ込んでくる冷えた空気。雨音が近くに聞こえる。横を向くと、雨粒が跳ねていた。
いつの間にか外は雨が降っていたのか。
隣から飛んだ時点では降っていなかったはずだから、まだ降り始めたばかり。
見る限り、人の姿も気配もない。これなら、少しの間は大丈夫だろう。
爆音や破壊音を不審に思ったとしても、雨なら確かめに行くのも億劫に感じるもの。
加えて月のない雨の夜、わざわざ暗黒の廃墟を訪れる勇気のある人間も少ない。
988: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/09(土)01:18 ID:icOT/Ycyo(2/4) AAS
「……あんたが?」
ここまで連れて来たのか。
最後まで言わずとも、零は意図を理解して頷く。
「意外と重くて大変だったぜ」
言わなくてもいい、余計なひと言まで添えて。
杏子は顔を上げ、零をキッと睨みつけるが――ほどなくして、しゅんと萎むように目を伏せた。
やはりダメだ。怒る気にもなれない。
寂寥感とでも言うのか。泥のように重く、心にこびり付いている。
ただひたすら虚しくて、悲しくて、心が燃え立たない。
俯いて視線を彷徨わせていると、不意にそれが留まった。
目に入ったのは、真っ直ぐ伸ばした両足。スカートは捲くれ上がり、太股は露わになっている。
片側の太股に白い布が巻かれていた。
「もう出血が止まりかけてるんだから、大したもんだな。魔法少女ってのは」
零の言う通り、白い布の中央には赤が滲んでいたが、ほとんど広がる様子はない。
傷口を拭って布を巻いただけの簡単な処置だが、とりあえずは充分と判断したのだろう。
魔法少女の自己治癒力は高い。そこに本人の意思は介在していないが、それでも思う。
――あぁ……あたしは、まだ生きようとしてる。生きたいと思ってるんだ……。
数秒、遠い目をした後に杏子は身体を起こし、壁に手をつき膝を曲げる。
989: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/09(土)01:45 ID:icOT/Ycyo(3/4) AAS
が、足に力を込めた瞬間、
「っっ……!!」
太股に痛みが走って、思わず動きを止めた。
昂っていた戦闘中はまったく気にならなかったのに、悲鳴が漏れそうになって咄嗟に噛み殺す。
「まだ動くな。もうちょっと安静にしといた方がいい」
零に肩を押されて元の姿勢に戻されても、抵抗もできなかった。
大人しく壁にもたれる杏子。そこから1mほど離れた向かいの壁に、零も寄りかかる。
無理を承知で立ち上がろうとしたのに、深い意味はない。
上から見下ろされるのは不快だったが、屈まれても困るので、それはいい。
強いて言うなら、独りになりたかったのかもしれない。
零の前でだけは、弱い自分を見せたくなかったのかも――。
およそ十分は経っただろうか。
その間、一切の会話はなかった。目を合わせもせず、互いに降りしきる雨を淡々と眺めていた。
出血は完全に止まり、動いても痛みが少なくなった頃、
「それで? これからどうする?」
零が口を開いた。
突然の、それも主語を省いた質問に、杏子は怪訝な顔で、
「はぁ? どうするって、何がさ」
「言ったろ、協力してくれたお礼。約束は守るよ。ご馳走でも、決闘でも」
990: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/09(土)03:26 ID:icOT/Ycyo(4/4) AAS
ここまで
続きは一挙放送が終わるまでには
991: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/09(土)04:01 ID:515NuK8AO携(1) AAS
乙です。
杏子は未だに零を名前で呼ばないですね。もう意地でも呼ばないのかな、あんこ呼ばわりが直るまで…^^
992: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/09(土)12:47 ID:MjTjCXrW0(1) AAS
乙タヴィア。
いくら公式嫁が故人だからといってちょっといちゃつきすぎだぞ零くんwwいいぞもっとやれ。
993: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/09(土)21:27 ID:B7Z5dbCSO携(1) AAS
乙
まーた零はあんこちゃんの太ももを(ry
そろそろ第三夜かな?
994: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/10(日)17:55 ID:fNsmJ+oAO携(1) AAS
( ゚∀゚)o彡゜ふともも!!ふともも!!
次スレも大胆に行ってみよう
995: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/11(月)00:40 ID:YBVQg99/o(1/5) AAS
「あぁ……」
すっかり忘れていた。熱が冷え切っていた。
あんなに固執していたのに。
ここ数日、零を探して駆け回っていたのも、わざわざ戦闘に乱入したのも、その為だったはずなのに。
「けど、これからもう一勝負ってのは流石に俺も疲れてるし、あんこちゃんだってその足だろ。
また後日、仕切り直しってことで……」
もちろん、エスコートの方なら大歓迎だけど。
そう冗談めかして言う零を、杏子は見ていなかった。
――こいつの目に、あたしはどう映ってたんだろう。
いや、それ以前に、あたしはどんな人間だったろう――
誰にも頼らず、手を差し伸べたりもしない。
ドライな現実主義者。一匹狼の魔法少女。歴戦の古兵。
もっとも、彼にしてみれば血気に逸る未熟者扱いだろうが。
意識して振舞っていた訳ではないが、こんなところだろうか。
他人との関わりを避けてきたので、客観的な自分がわからない。
深く関わったと言えるのは二人だけ。
他にも色々と想像するのだが――。
すべてが"しっくりこない"。
かつてない奇妙な感覚だった。
今なら鏡を見ても同じ感想を抱きそうな気がする。
――あたしは……あたしがわからなくなった……?
996: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/11(月)01:21 ID:YBVQg99/o(2/5) AAS
では何故、何が変わったのだろうかと考える。
原因はすぐに思い当たった。
たぶん、ホラーに見せられた幻。
炎と氷。現実と虚構。
相反するふたつが溶け合う中で、杏子はまざまざと見せつけられた。
まずは二人の男女が愛し合う光景。
二人は幸せそうだった。
自分には手に入らない幸福だが、妬む気が湧かなかったのは経験のなさ故か。
最初こそ理解が追い付かなかったが、次第に悪い気はしなくなった。
公園、レストラン、コンサートホール、二人の部屋、ベッド。
どこでも二人の間には笑顔と愛の囁きがあった。
それだけに、恋人たちの不幸、そして無残な結末には胸が痛みもした。
男の死も、女が堕ちていく過程も、ホラーに憑依される最期も。
哀しいと思う。恐ろしいと思う。
しかし、所詮は他人事。それだけなら、こんな気持ちにはならない。
ホラーが見せた第三幕――いや。
あれは本当に、ホラーが見せた幻覚だったのか。
零に揺り起こされるまでに見ていた夢。
同じように、ある貧しくも幸せな家庭が崩壊するまでの一部始終だった。
997: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/11(月)02:03 ID:YBVQg99/o(3/5) AAS
初めてではなかった。むしろ、嫌になるくらい見飽きていた。
数えきれないほどの悪夢。
それでも夜毎うなされ、目覚めた時には汗だくになった。
最後の幻を見た時、ふたつの悲劇が杏子の中で重なった。
恋人たちと家族、どちらも崩壊の最後の引き金を引いたのは人間だ。
或いは後者は既に人間ではなく、魔法少女という異形だったのかもしれないが。
――そういや、誰かが言ってたっけな……。
幸せは長くは続かないと。
人は変わる。
人は死ぬ。
どんな想いも、いつかは消えてなくなる。
親子も兄弟も友達も恋人も。
強く絆で繋がった大切な者同士でさえ、変化と別離から逃れられない。
人は幸せな時の中で生きていけはしない。
この世界の絶対的な摂理。
なら、愛とは一瞬の幻想に過ぎないのか。
そんなこと、頭ではとっくにわかりきっていたはず。
それでも――。
998: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/11(月)03:13 ID:YBVQg99/o(4/5) AAS
これまで他人が破滅するのを無感情に見過ごす程度には汚れていても、
破滅する様を眺めて溜飲を下げたり、まして自分の手で突き落としはしなかった。
そこまで腐ってもいないつもりだった。
杏子が罪を犯しながらも一線を越えなかった理由。
まだ心のどこかで、この世界を信じていたからかもしれない。
自分の境遇は自業自得と受け入れていても。
それでも、どこかに幸せは転がっていて、
それを掴んだ人間は変わらぬ幸せの中で生きていけると。
故に、二人の結末は痛烈に突き刺さった。
考えてしまったのだ。
たまたま自分が幸福の輪から弾き出されること。
最初からそんなものは幻想で、世界のどこにも存在しなかったこと。
果たして、どちらが真実で、どちらが幸せなのだろうか。
この二人に限らない。
思い起こせば、魔女を追う過程で多くの悲劇を目にし、同時に見過ごしてきた。
自分が見過ごしてきた哀れな魔女の餌たち。その家族、友人、恋人。
魔女の口付けによって引き起こされたであろう不幸の連鎖。
それらは、すべて事前に防ぎ得たのだとしたら。
――だからって……じゃあ……どうすればよかったんだよ……!
グリーフシードの予備も尽き、ソウルジェムの濁りが危うかったことも何度かある。
真面目に使い魔を根こそぎ狩っていたのでは、今頃どうなっていたか。
ただ、確かなことはひとつ。
自分には最初から楽園を夢見る資格すらなかったのだ。
999: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/02/11(月)03:42 ID:YBVQg99/o(5/5) AAS
――だったら、あたしは……いったい何の為に生きてるんだろう……。
わかっている。
全部、覚悟の上で決めたこと。今さら後悔なんてしない。
不意に感傷的になってしまい、虚しくなっただけ。
思考を打ち切り、立ち上がる杏子。
軽く爪先で床を叩く。ほとんど痛みは消えていた。
冷たい雨に踏み出すと、
「……今日はいいよ。興が殺がれちまった……」
零を見向きもせずに言った。
何の為にここに来て、何をしたかったのか。それを見失って、一緒に戦意も消えてしまった。
もう、ここに留まる意味もない。
ずぶ濡れになりながら杏子が歩みを再開すると、背後で水溜まりを叩く靴音。
その直後に、
『放っておきなさいな。いい薬かもしれないわ。これで迂闊にホラーに近付かなくなるでしょうよ』
とシルヴァの声。
暗い眼差しで振り向くと、零も雨の中を追ってきていた。
彼は何を言うか迷っていたが、やがて杏子の背中に一言を投げ掛けた。
「あんこちゃん! 今日の分の借り、次の機会に取っとくぜ」
杏子はギリ、と歯を噛み鳴らす。白くなるまできつく握られた拳には爪が食い込み、
――何が借りだ……!
命助けられて、あんな醜態晒して……!
とっくに貸しなんて返されて、お釣りがくる。
むしろ借りを作ったのはあたしの方じゃねーか……!――
一瞬、怒りという名の炎が燃え上がるが、それもすぐに雨で掻き消される。
虚しい。今は何もかもが虚しかった。
冷え切った心を抱え、杏子は傷付いた足を引き摺って去っていく。
零は暫し小さくなる背中を見送っていたが――やがて自らも背を向け、逆方向へと歩き出した。
1000: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2013/02/12(火)02:09 ID:h9MsaQuTo(1) AAS
遅くなりましたが新スレです
長い間お付き合い頂きありがとうございました
次スレでもよろしくお願いします
杏子と零の話は、伝えたいことが上手く伝えきれなかった気がします
精進します
次スレ
マミ「私は……守りし者にはなれない……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第三章
vip2chスレ:news4ssnip
1001(1): 1001 Over 1000 Thread AA×
外部リンク:vip2ch.com
1002: 最近建ったスレッドのご案内★ Powered By VIP Service AAS
マミ「私は……守りし者にはなれない……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第三章 @ 2013/02/12(火) 02:05:11.37 ID:h9MsaQuTo
vip2chスレ:news4ssnip
【安価、再構成スレ】Aクラスに勝利して良い設備を奪いとる! @ 2013/02/12(火) 01:47:04.40 ID:oUtgGOa90
vip2chスレ:news4ssnip
P 「告白かー」 小鳥「!」ガタッ! @ 2013/02/12(火) 01:19:41.53 ID:xCkHYMHjo
vip2chスレ:news4ssnip
イロトリッドリニ ヒッカルセカイヲツクッテクゥーwwwwww @ 2013/02/12(火) 01:07:55.41 ID:yDEWzx37o
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