[過去ログ] アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ7 (321レス)
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243: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火)22:56 ID:F68nI5NF(1/15) AAS
水を掻き分けて移動する。腹部の傷に容赦なく当たる水流に、ヴィラルは苛立たしげに顔を顰めた。
下水道の中ほどで立ち止まると、糞、と吐き棄て側面のコンクリートに腰を降ろす。天井には小さな電灯が並んでおり、内部は暗いものの真の闇ではない。
下水、そう呼ばれる地下水道は汚らしいものだと思っていたのだが、臭いこそあるものの、水は思いのほか澄んでいた。
いや――よく見れば下水の端に、滑った汚れが張り付いている。しばらく前は、生活廃水が流れていたはずだ。水が澄んだのは、
この会場から営みが消えてからだろう。
「……螺旋王も、一体なにを考えているのだろうな」
瞳を閉じながら、小さく呟く。声は思いのほか反響していた。
省27
245: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火)22:58 ID:F68nI5NF(2/15) AAS
(……誰だ、このハダカザルは)
青い短髪に、がっしりとした体躯。デイバックは右肩に引っ掛けている。
肌には刺青が彫られたその姿は、ニンゲンの中でも更に存在意義の薄い荒くれ者にも見える。
だというのに――この男はなぜ、自分を知っている?
(エンキを用いて焼き払った村の生き残り、か?)
なるほど、それは正しく思える。例えニンゲンであろうとも、仇の相手を覚える頭はあるはずだ。
省32
248: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火)22:59 ID:F68nI5NF(3/15) AAS
「はっ……消えうせろ、ハダカザル!」
(マズ――!?)
思考思考思考、思考だ! 考えろ!
親父の死骸を見た時のように、時間の流れが遅くなる。
ヴィラルの勝利を確信した笑みが腹立たしい、ゆっくりと引き金を引く指に焦りを覚える。
糞、と内心で吐き棄てる。
こんな時に、シモンがいてくれりゃぁ――
省31
249: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火)23:00 ID:F68nI5NF(4/15) AAS
「な――ッ!?」
赤い旋風が、眼前まで迫っていた。
慌てて頭を逸らすが間に合わない。ざり、と頬の肉がこそげ落ちた。
「ぐ――き、さま!」
「はっ。奇策はきかねぇ、って言ってたくせに、ざまぁねぇな」
赤い雫を垂らす真紅の槍。それを棒切れでも扱うようなぞんざいな握りで持つ眼前の男。
失態、なんという失態だ。そもそも、戦闘中だというのにデイバックを降ろさなかった時点で、バックに注意を向けるのは当然だろうに!
省29
251: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火)23:01 ID:F68nI5NF(5/15) AAS
「なら!」
落下の速度を利用し、踵を振り下ろす。案の定、その長槍でガードしてくるカミナ。
だが、ヴィラルは焦る事無く更に力を込める。
カミナの表情が引き攣った。左肩の裂傷が疼きだしたのだ。
瞬間、ほんの僅かな間に力が緩まる。その間隙を縫うように――一気に押し出す!
「うお――ぁあ!?」
水柱を立て、下水に落下するカミナを確認する事無く、ヴィラルはすぐさま下水を逆走した。
省30
254: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火)23:03 ID:F68nI5NF(6/15) AAS
「早く、休まねば――」
一番手近な建物である空港。そこに入ると、格納庫らしき場所に入り込んだ。
中は異常な程にだだっ広い。本来は戦艦サイズのガンメンも入りそうなのだが、今はツギハギの見えないコンテナが複数、置いてあるだけだ。
「――ふう」
小さく息を吐き、シートに体を預けながら、そのコンテナを見やる。
サイズはみなバラバラだ。ガンメンが複数入りそうな物もあれば、ギリギリ一体入るかどうか、という物もある。
疑問に思い、ゴーカートを近くまで寄せてみるが、やはりツギハギは見えなかった。
省25
256: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火)23:04 ID:F68nI5NF(7/15) AAS
苛立ちがつのる。もし、あいつをこのまま放っておいたら、今度はヨーコたちも殺されてしまうかもしれない。
「いや――」
小さく呟き、頭を振る。
それでは、シモンの死を認めてしまったようではないか、と。
「俺は、自分の目でみねぇかぎり、ぜってぇ信じねぇ」
省30
257: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火)23:05 ID:F68nI5NF(8/15) AAS
あのガンメンモドキの心ない言葉によって頭が沸騰した時、あの女を絞め殺してやろうかとは思ったのは確かだ。
遠くから響いてくる女の声を聞きながら、ふう、と息を吐く。
オーケー、落ち着いてきた。
やっぱりケンカは熱いハートにクールな頭脳だ。
「なんだ、マトモな奴も、いるんじゃねえか」
『そして……な。今、一人で脅えてる子がいたら聞いて欲しいんよ。
私が、そして同じような気持ちの人が絶対他にもおる! だから心配する必要なんてないんや!
省33
259: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火)23:06 ID:F68nI5NF(9/15) AAS
AA省
260: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火)23:07 ID:F68nI5NF(10/15) AAS
「ありがとうございました。僕たちは訓練に戻りますね」
「シャマル先生、ありがとうございましたー!」
ええ、気をつけてね。そう言って手を振ろうとしたその時、なぜだか、奇妙な不安に囚われた。
あのまま行かせていいのだろうか?
このまま見送ってしまうと、世界が崩れてしまうような気がして、酷く恐かった。
「二人とも――!」
待って、と叫ぼうとした、その瞬間。世界は水面のようにゆらめき、溶けて行く。
省29
262: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火)23:09 ID:F68nI5NF(11/15) AAS
「あの、それはどういう……?」
「隠す必要はない」
いや、普通に隠すわよ。
マントの端をギュッ、と握りながら、内心で怒りの言葉を呟く。
だが、この男が言った言葉は、シャマルにとって想定外のものだった。
「貴様、ニンゲンではないな?」
省34
263: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火)23:10 ID:F68nI5NF(12/15) AAS
「女、なにを黙っている」
「……こんな状況で言うのもなんだけど、名前を聞く時は自分から名乗るのが礼儀じゃないかしら?」
これは、一種の賭けだ。もしこれで逆上した襲い掛かってくれば、武器を持たぬ自分などすぐさま殺されてしまう。
だが、今の情報では足りない。この男を騙しきるには、情報が足りないのだ。
じっ、と男の顔を見る。
彼は「ふむ」と、それもそうだと言うように頷いた。
「ふむ。それは失礼をした。――俺の名はヴィラル。人間掃討軍極東方面部隊長、ヴィラルだ」
省29
264: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火)23:11 ID:F68nI5NF(13/15) AAS
「どうして人間が地上に出ている事に気づけるのか、それを考えた事はない?」
「……基本的には、末端の獣人がガンメンを駆り、地上を探索する。その時に見つけた集落に攻撃をしかけ、
末端の獣人ではどうしようもなくなれば、俺や螺旋王四天王が赴き、破砕する。
……考える必要などあるのか?」
「……だけど、それで分かるのは地上だけでしょう? でもね、私たち機動六課はね、穴倉にいる段階で人間たちを見張るの。
不穏な動きがあれば、すぐさま手近な戦艦に連絡を取って……その、ガンメンを射出してもらう。
……まあ、私たちはあくまで試作部隊だから、有名じゃないんだけどね。知らないのも無理はないかもしれないわ。
省29
267: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火)23:13 ID:F68nI5NF(14/15) AAS
名簿に印をつけつつ、ふと感じた違和感に首を傾げる。
その名を、どこかで聞いたような――ああ、そうだ。
「シャマル、そのキャロという奴は既に脱落している」
「――――え?」
愕然と、呼吸も筋肉の動きも生命の瞬きすらも氷結してしまったかのように、シャマルの動きは止まる。
そんな、と小さく漏らす彼女の姿は酷く弱々しく見えた。
(糞、人間どもが――!)
省28
268: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火)23:14 ID:F68nI5NF(15/15) AAS
「……あら?」
ふと、ヴィラルの腹部に視線を向ける。
そこには醜い赤色が張り付いていた。応急処置はしてあるようだが、既に開いてしまっている。
「ああ、これか? 少々不覚を取ってな」
「駄目よこれじゃ……ちょっと、失礼するわね」
そう言うと、ヴィラルの上着を脱がしにかかる。
そうすると、少しだけ不安が薄らいだ。
省24
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