[過去ログ] アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ7 (321レス)
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243: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火)22:56 ID:F68nI5NF(1/15) AAS
水を掻き分けて移動する。腹部の傷に容赦なく当たる水流に、ヴィラルは苛立たしげに顔を顰めた。
下水道の中ほどで立ち止まると、糞、と吐き棄て側面のコンクリートに腰を降ろす。天井には小さな電灯が並んでおり、内部は暗いものの真の闇ではない。
下水、そう呼ばれる地下水道は汚らしいものだと思っていたのだが、臭いこそあるものの、水は思いのほか澄んでいた。
いや――よく見れば下水の端に、滑った汚れが張り付いている。しばらく前は、生活廃水が流れていたはずだ。水が澄んだのは、
この会場から営みが消えてからだろう。
「……螺旋王も、一体なにを考えているのだろうな」
瞳を閉じながら、小さく呟く。声は思いのほか反響していた。
自分はこういった『索敵』は行わなかった。
小さな勢力には部下を向かわせるし、自分が向かうような相手はダイガンザンなどの戦艦でも確認している。
そう、ヴィラルは戦艦から射出され、目的地に降り立ち、愛機たるエンキで焼き払う――それが、今までの彼の戦い方だった。そして、
数日後にも同じような任務を執り行うはずだったのだが――
「いや、止そう」
考えても仕方がない。ありえたかもしれない未来を夢想し、現実から目を逸らすのはなんと愚かな事か。
自分は人間掃討軍極東方面部隊長なのだ。そのような些事を気にかけている暇があれば、一人でも多くの人間を殺さねばならない。
その為にも、今は休まねばならないのだが――
「……どうやら、そうも言ってられないらしい」
足音が徐々に、けれど確実にこちらに向かってきていた。
思わず舌打ちをしてしまう。万全の――いや、せめて十全の状態であれば、飛んで火に居る夏の虫とばかりにその命を断ち切ってやる自信はある。
だが――じくじくと痛む腹部の傷が、そして体全体を圧迫するように圧し掛かる疲労が鎖となり、ヴィラルの身体能力を奪っていた。
黒光りするワルサーを闇に突きつけ、立ち上がる。幽鬼のように、ゆらゆらと体が揺れてしまう。
銃という武器はあまり慣れてはいないのだが、今、この場面においては好都合だ。
なにせ、この狭い通路での遠距離武器だ。間合いにさえ入れなければ、例え立ち止まっていたとしても相手を殺す事が出来るだろう。
己の疲労を隠すように、力強く言い放つ。
「わざわざ殺されに来るとはな……つくづく愚かだよ、貴様らニンゲンは」
「はっ――誰が、誰に殺されるってんだ?」
自信に満ち満ちたその声、けれど、奥底には燃えるような怒りがあるように思えた。
それは、まるで炎。全てを覆い、焼き尽くす紅蓮の灼熱。
遠く響いていた足音は、既に手が届きそうなほどに近くから聞こえている。
「獣人倒すと心に決めて、ガンメン奪ってぶちのめす。妙な場所に連れてこられようと、貫き通すぜ男の意地を!」
小さな電灯に照らされ、ぎらり、と何かが輝いた。それがV字のサングラスだと気づいた瞬間、男は腰の剣を抜き放っていた。
「よう、まさかこんな場所で会うとは思わなかったぜ……ヴィラル」
V字のサングラスに覆われた剣呑な瞳、それを煌かせて、言った。
――しばし、秒針が半周ほど巻き戻る。
銃を構えたまま、ヴィラルは頭を回転させる。
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