[過去ログ] アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ7 (321レス)
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268: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火)23:14 ID:F68nI5NF(15/15) AAS
「……あら?」
ふと、ヴィラルの腹部に視線を向ける。
そこには醜い赤色が張り付いていた。応急処置はしてあるようだが、既に開いてしまっている。
「ああ、これか? 少々不覚を取ってな」
「駄目よこれじゃ……ちょっと、失礼するわね」
そう言うと、ヴィラルの上着を脱がしにかかる。
そうすると、少しだけ不安が薄らいだ。
やはり、普段と同じ事を行うと、精神が落ち着くものなんなのね、と思う。
「な――なにを!」
「動いちゃ駄目、大人しくしてね」
上着を脱がす。傷口は――やはり開ききっている。今、こうやって座っているから血液自体は止まっているが、
このまま動けば血液が多量に流れ出す事だろう。
シャマルはまず、デイバックからペットボトルを取り出し、傷口を軽く濯いだ。
「ぐ――」
「はいはい、ちょっと我慢してね」
傷口の汚れを落すと、今度は自分の体を覆うマントを破る。そして、それを傷口に巻いた。
本当はもっと綺麗な布が欲しかったのだが、今は贅沢を言っていられる状態ではない。
ぎゅっ、と縛り血液を押し止めると、奪い取った上着をヴィラルに返す。もっとも、酷く濡れたそれを着る気はないようだが。
「……感謝する」
「ううん、礼はいらないわ」
だって、これは自分が落ち着くためにやったようなもので、普段のように他人を心配して行ったものではないのだから。
だが、ヴィラルは「いや」と頭を振って、言った。
「王都の戦士は礼儀を重んじる……シャマル、この礼は必ずすると約束しよう」
それだけ言うと、ヴィラルはそのまま横になった。
「少しだけ眠る。もし誰かが来たら起こしてくれ」
それだけ告げると、すぐさま寝息を立て始めた。
その、ふとすれば自分勝手な行動だが、シャマルにはそれに安らぎを感じていた。
まるで獣のような凶暴な顔。だが、幸せそうな顔で丸くなる姿は、見ていて微笑ましくなる。
「ふふっ」
そうして、シャマルは何時間かぶりに笑った。仮初めの笑みでもなく、自虐の笑みでもなく、心の底からの笑みを。
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