千冊読書日記 (455レス)
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1: ぺろぺろくん 2016/05/01(日)19:47 AAS
千冊読むのにどれくらいかかるだろうか?
2年ぐらいかなと楽観しつつも、5年かかるかもしれない。
このスレッドは便宜上、書き込み不可でいきます。

◇『SUDDEN FICTION―超短編小説70』 文春文庫

アメリカの作家による、ショートショートが70作。
誰にでも、夢にしか登場しない学校や、駅前のロータリー、病院の待合室があると思う。
私の場合には、夢にしか登場しないパチンコ屋というのが何軒かあって、必死にメモを取っているところで眼が覚める。
ショートショートのツボというのは、その夢にしか登場しない幻のスポットを現出させることだと認識した。
夢にしか現れない母親は、いつも戸口に立っている。
夢にしか現れない父親は、どこに行っても鼻つまみ者で、
省4
238: ぺろぺろくん 2017/04/15(土)20:01 AAS
◇常盤新平 『遠いアメリカ』

30年ほど前に、投げだしたままになっていた本。
直木賞受賞作で、けっこう期待して手に取ったはずだ。
恐る恐る読み返してみると、これがあの常盤新平かと目を疑うような貧乏臭い話。
村上春樹が小説の執筆をはじめたときに、日本語で書き出すと日本文学のカラオケ
をはじめてしまう自分に気がついて、いったん英語で書いてから和訳したという。
日本語で書くことは、地縁・血縁・学閥といったしがらみを引き受けることでもあっ
たらしい。
浅間山荘事件の時に、お父ちゃんやらお母さんが駆り出されてきた、あれだ。
「イエスの方舟」から「オウム事件」を経て、日本語のしがらみから解放されたと
省7
239: ぺろぺろくん 2017/04/15(土)21:31 AAS
◇常盤新平 『ニューヨーク紳士録』

ニューヨークで活躍した作家・出版人50人のちょっといい話集。
池波正太郎の日記にも
>こういうものを書かせたら天下一品
と記されていただけあって、まさに常盤新平の真骨頂。
ここで邦訳の出ているものはほぼ読んでいるのだから、やはり彼の強烈な影響下
にあったのはたしか。
奇しくも今年の二月には、
ジョゼフ・ミッチェルの『マクソーリーの素敵な酒場』の邦訳が出た。
実に30年目の奇跡。
省2
240: ぺろぺろくん 2017/04/16(日)20:11 AAS
◇常盤新平 『雨あがりの街』

たまたま常盤新平の小山にぶつかったので、今日も二冊片づけた。
リアルタイムで目にしていたときには、常盤氏のエッセーは山口瞳のエピゴーネンとし
か思えなかったのだが、けっこういいものもある。
十年近く前にBS・NHKでやっていた『木造駅舎の旅』というミニ番組が好きでよく
見ていたが、そこには美少女の自意識を持たない美少女が映っていて微笑ましかった。

>夕方の喫茶店はちょっとおそろしい気がする。なにしろ、オフィス・ガールたちでたい
>ていの喫茶店は満員であり、音楽と彼女たちの話し声で、こちらの神経がまいってくる。
>なぜ喫茶店などでつまらぬおしゃべりをしてるのか。早く帰って、家事の手伝いでもす
>ればいいのに。
省2
241: ぺろぺろくん 2017/04/16(日)20:15 AAS
◇常盤新平 『ニューヨーク五番街物語』

タイトルに釣られて手に取った人の中には、「この本っていつまで経っても男と女が出て
こないんだけど、不良品なんじゃないかしら?」と思った人もいたのではないか……。
唯一、男と女が登場する部分が秀逸。
元ショー・ガールの妻が夫を伴って、つまらないミュージカル・コメディーの初日に訪れる。
芝居の途中で、夫は立ちあがると銃を三発発砲する。
撃たれたのは、妻の元恋人だった。その元恋人は、
>夜ごと彼女をハダカにして、赤いビロードのブランコに乗せて、そのブランコを押していた

上祐史浩という人は、日本ではじめてセックスに勝った男として記録されているが、ニューヨ
ークという街はセックスの敗残者たちの街とも言える。
242: ぺろぺろくん 2017/04/18(火)20:57 AAS
◇常盤新平 『そうではあるけれど、上を向いて』

まあいつものことであるけれど、肝腎のこれを読み返したいと思っていたやつが
出てこないんだな。『アメリカが見える窓』ていうやつかな……。
未読だったものを5冊読み通してみたところ、アーウィン・ショーの翻訳者という
イメージとはちょっと違った、貧乏話のうまい東北人だった。
「アルト・ハイデルベルヒ」を一晩中なんども読みかえして、涙がこぼれてきてし
かたがなかった国語の若い教師の話がよかったし、

>「あの回転木馬には貧しく生きることの美しさがありましたね」
>同感だった。あの薄暗いドームのなかには平凡に、貧しく、つつましく生きる美し
>さがあった。だから私たちはいつまでも見ていたのである。
省2
243: ぺろぺろくん 2017/04/18(火)21:23 AAS
◇イヴァン・クリーマ 『僕の陽気な朝』

小学校の4年だった、愛知から千葉へ転入してきた初日、教室の窓から飛び出していったまま
二度と顔を見ることのなかった児童がいた。
女の子に小便をひっかけたことに激怒した父親が、息子の包皮をアロンアルファーでチャック
してしまったためだったという。
そのまま長野の親戚に引きとられたとかで、名前も顔も知らない。
28歳のソープ嬢は、警察官である父親に中学の3年になるまで小便をひっかけられていて、
家出した。
いまでも自宅や父親の勤務先に電話をかけると、こう言う。
>てめえの娘はソープ嬢になってやったよ
省4
244: ぺろぺろくん 2017/04/20(木)21:24 AAS
◇ジェイ・マクラーティ 『運び屋を追え』

ローレンス・ブロックばかりではなく、二見文庫といえどもこういう
めっけ物がある、と信頼を置いている書評氏が書いていたのが頭に残
っていてつい手に取ったのだが……。
やられた。
裏表紙のあらすじが一番の読み物とは……。
245: ぺろぺろくん 2017/04/20(木)21:31 AAS
◇丸谷才一 『低空飛行』

このスレッドをはじめたのが去年の五月一日だから、ちょうど一年で
250冊程度しか読めなかったということになるか。
しかも、甚だ内容の薄いものが目立つ、まさに低空飛行の一年だった
ような。
こんどの時間待ちの友は、丸谷才一。
これもずいぶんあるんだなあ。
246: ぺろぺろくん 2017/04/22(土)21:12 AAS
◇石垣りん 『ユーモアの鎖国』

石垣りんは自分にとって近くて遠い。
というのは、生活は詩人にして家出主義者ということだろう。

>小学生の頃、貧富の差の激しい生活を構えの外に見せた家々と、そこから出てくる子ども
>たちが同じ教室に集まったとき、私は家を離れてきたそのかたち、子供だけの世界、子供
>だけでつくった一軒の新しい家が欲しい、と思いました。年をとって、夢はなおざりにな
>りましたが、現実の家は私の背に屋根のようにハリツいて離れません。日本人の大多数が
>抱いている家の意識から解放され、一度家を出てみたら――これは私の祈り、私の願いご
>とです。

もう二度と相見えることのない魂がもう一度集まる場所を、おれが小説にしてやるからな、
省1
247: ぺろぺろくん 2017/04/24(月)21:19 AAS
◇丸谷才一 『青い雨傘』

丸谷エッセイはその博覧強記ゆえマイナーな人名が飛び交うため、いま読んだ方が
味わいがあるかもしれない。
ネット検索すればズラズラ出てくるし、そのために図書館で人名辞典を引くのは野暮
ったかったからね。
248: ぺろぺろくん 2017/04/25(火)21:37 AAS
◇富岡多恵子 『厭芸術浮世草紙』

>ナグサミものとしての芸術を拒み、現実そのものに迫ろうとする真にラディカルな
>異色のエッセイ集

と、タイトルと帯タタキが勇ましいわりには内容は一般的というか、若い。
それもそのはずで、著者、28歳頃の作品だ。
このころの富岡多恵子なら、全然恐くない。

>ニホン語は愛をかなでるのにむいているようにはおもえない。

というか、「おまえが欲しい」とか言うと、GS野郎だと思われてしまうところに日本
語の悲しさがある。
というものの、それはGSが悲しいのか、日本語が悲しいのか?よくわからない。
249: ぺろぺろくん 2017/04/27(木)19:51 AAS
◇森 達也 『東京番外地』

この人の本は内容が追っついていかないことは承知の上で、ついつい手に
取ってしまう。編集部のタイトルの妙とういうのもあるが、なんといって
も最高だったのは『職業はエスパー』。

東京ディズニーランドの建設地として舞浜のほかに候補に挙がったのは、
清水、御殿場、川崎、横浜
それに加えて「リンちゃん事件」の死体遺棄現場となった我孫子市も含ま
れていたという。
谷津遊園のあとにディズニーランドができるという夢物語は、小学生のころ
から聞かされていた話なので、てっきり既定路線だと思い込んでいたがそん
省3
250: ぺろぺろくん 2017/04/27(木)21:11 AAS
◇嵐山光三郎 『桃仙人』

師弟の関係というのはつくづくいいものだと思い返したところで、師弟ものが読み
たくなって、嵐山と深沢七郎の師弟。

>オヤカタ(深沢七郎)が素晴らしいとほめるシャツやズボンや靴は、どこがいい
>のか、ぼくにはさっぱりわからないのだ。
>オヤカタはダンディな服は大嫌いだった。ヨーロッパ調のブランド品が嫌いなのは
>わかるとしても、ロカビリー調やヤンキーの派手な服を嫌う。赤シャツは好きなの
>にアメリカ調を好まない。ならば和風の渋い地味めの文人流が好きかというと見向
>きもしない。
>一緒に町を歩いていて、オヤカタが、
省10
251: ぺろぺろくん 2017/04/28(金)20:43 AAS
◇カトリーヌ・アルレー 『21のアルレー』

悪女もので知られたフランスの女流推理作家。
言わずと知れた『わらの女』以来、30年ぶりぐらいじゃないかな、この著者のもの
を読んだのは。
意外や、軽い話にいいものがあって、「雌鳥と死」
第二次大戦下のフランス、8歳の少年は祖父母の元で暮らしていた。
ある日祖父が雌鳥を携えて帰ってくる。
いざ、そいつをしめてボイルドにしてやろうとすると、猛然と逃げまわりココッココッ
と大声で鳴いた。そこで少年が訊ねた。
「この鳥、なんて名前にするの?」
省9
252: ぺろぺろくん 2017/04/29(土)21:37 AAS
◇佐藤雅彦 『毎月新聞』

これ文庫新刊で買ったのだが、やはり読了はその8年後となってしまう。
途中80ページほどで投げだしたあとがあった。
それも納得なのは、冒頭第一話の「じゃないですか禁止令」の出来が出色すぎるのだ。
98年当時、私って~な人じゃないですか、私たち~て、~じゃないですか、といった
類の一般論に仮託した主体回避の言説が蔓延したことがあった。
自分はそれに抗すべく、正露丸の口調を真似て

>一般論に悶絶してください

と、切り返すことにしたんだ。
まあ、おかげでずいぶん作らなくてもいい敵が増えたとは思うが。
253: ぺろぺろくん 2017/04/30(日)18:35 AAS
◇パーシヴァル・ワイルド 『検死審問』

チャンドラーが賞賛した数少ないミステリー小説のうちの一つ。
プリーストリーの『夜の来訪者』などと同様、再読、三読のたびにその魅力を増す
ものだが、どうにもそうするだけの余裕がない。
あんまりガツガツしないで絞って読んだほうがいいのだが、その選択眼に自信がな
いものだから、結局手当たり次第ということになってしまう。
254: ぺろぺろくん 2017/04/30(日)18:43 AAS
◇内田 樹 『街場の大学論』

ブログからの寄せ集めなだけに、これはあまり内容がない。
卓見だったのは、

>今日、社会的上位者には教養がない。かわりに「シンプルでクリアカットな言葉遣いで、
>きっぱりものを言い切る」ことと「自分の過ちを決して認めない」という作法が「勝ち組」
<の人々のほぼ全員に共有されている。別にこの能力によって彼らは社会の階層を這い上が
>ったわけではない。たまたまある種の競走力を伸ばしているうちに「副作用」として、こう
>いう作法が身についてしまっただけである。

自分らの世代でいえば、「ガッツ君とガメツイさん」なわけだが、一般的な言い方をすれば、
ただの「駄々っ子」だろう。
省1
255: ぺろぺろくん 2017/05/02(火)19:59 AAS
◇パトリック・マグラア 『血のささやき、水のつぶやき』

89年の翻訳出版。この年はグロの当たり年でメアリー・ゲイツキルの『悪いこと』
の衝撃があまりにも強烈だったため、しばらく失念していたのを春日武彦氏の賞賛で
再注視、入手したもの。
アマゾンの商品説明によると、「米英でベストセラー」ということだが、目を疑うこ
とになるだろう。
しかし魅力的なストーリーであることは確か。たとえば、「失われた探検隊」は

>雨の多かった十二歳の秋、ロンドンの自宅の庭でイブリンは行方不明の探検隊を見つけた。

で始まり

>イブリンが十四歳半になる頃――ちょうど彼女が医者になる決心をしたとき、イブリンの
省2
256: ぺろぺろくん 2017/05/02(火)20:11 AAS
◇内田樹・高橋源一郎選 『嘘みたいな本当の話 みどり』

収録作の採択の規準は高橋の「あとがき」が適確に表している。

ある大学の主催で「エッセイ大賞」の公募が行われた。
大賞に選ばれたのは、父を亡くし刻苦勤勉に粉骨砕身する女子高生のエッセイだった。
しかしその授賞式は、混乱のるつぼに陥った。
受賞者の女子高生がひとりの男性を伴って会場に現れると、こう言った。
「父です!」

受賞は取り消され、この「エッセイ大賞」自体が一回こっきりで消滅してしまったという。
エッセイにウソがあってはならないというのではなくて、「貧乏」と「人の死」というも
のに対して星菫派であるという、貧しい感性を露呈してしまう。
省3
257: ぺろぺろくん 2017/05/03(水)20:44 AAS
◇嵐山光三郎 『昭和出版残侠伝』

この人がテレビの「笑っていいとも 増刊号」のレギュラーだったなんて知らなかった。
なんで平凡社の編集者がこんなに知名度があるのか、一般人侮るべからずと思っていたの
だがこんな秘密が隠されていたのか、というか自分があまりにも世間を知らないだけか。

唐十郎の語る、寺山修司の追悼がかっこよすぎる。
>好きだったんだなあ寺山さんが。寺山さんは、ひとり荒野に立っていた。俺がデビュー
>するときも寺山さんに観てもらった。

最初に好きになる文学者が寺山修司だと、孤絶を余儀なくされるというのはある。
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