千冊読書日記 (455レス)
上下前次1-新
218: ぺろぺろくん 2017/02/20(月)21:14 AAS
◇ジョン・ダニング 『災いの古書』
見え見えなんだけど、読まされちゃうというのは上手いんだろう。
例えば、好きになるのはいつでも人の男や女というタイプがいて、なんだか
悲惨で見ていられない。
どんな悲惨さなのかなかなか喩えづらいのだが、こんなふうに言っている。
>「今まで行ったことのない土地に引っ越すつもり。シアトルがいいかもし
>れない。昔から、雨が好きだったから。いい考えだと思わない?」
>「それであなたが幸せになれるのならね」
>「幸せがどんなものか、わからない」
219: ぺろぺろくん 2017/02/23(木)23:26 AAS
◇スティーヴ・ハミルトン 『解錠師』
世評が高かったわりには、いろいろと残念な作品。
なんといっても、ラジオライフ版教養小説というのがいただけない。
ピッキングにせよ、サヴァン症候群にせよ、ポケベルにせよ、もうちょっとつっこめば面白
くなるところでスウェーしてしまう。
「金庫を開けるのは女を口説くように云々」の記述があって、例えば今どきのギタリストが
「ギターを弾くのは女を扱うように」と言ったとしたら、それは認知症だろう。
それと同様に、現代作家としての職務放棄とも思える。
220: ぺろぺろくん 2017/02/27(月)21:17 AAS
◇チャールズ・ウィルフォード 『炎に消えた名画』
驚愕のラスト二行。
滝本誠氏の解説がすばらしく、読後の感興が深まる。
チャールズ・ウィルフォードの自伝によると、
>八歳で孤児になると、次に死ぬのは自分だと早々に認識する。
>人生の見方は現実的になり、夢想として捉えることはない
扶桑社ミステリーの一作だが、呆気に取られたミステリー・ファンも
多かっただろう。
221: ぺろぺろくん 2017/03/12(日)21:34 AAS
◇チャールズ・ウィルフォード 『マイアミ・ポリス 部長刑事奮闘す』
なんと一週間かかって読んだのはこれだけ。
大将のところの改装を手伝いながら、主夫業にいそしんでいたため、この為体。
その間にも、アマゾンで投げ売りをしている業者があって、100冊ほど買い込んで
しまった。
題名の通りのユーモア警察小説&悪党物語だが、王道を行かないところがいい。
222: ぺろぺろくん 2017/03/15(水)20:13 AAS
◇チャールズ・ウィルフォード 『危険なやつら』
自分好みの人情話が満載。
マイアミで最も女をひっかけやすい場所はどこか?
>マイアミので一番簡単に尻軽女をひっかけられる場所は性病科だよ。
>ちょっと前に治療したばかりだし、悪い病気を移される心配がない。
まあ、これを「知恵」とるか「人情」ととるかだが……。
こんな危険なネタがずいぶん拾えた。
223: ぺろぺろくん 2017/03/20(月)20:53 AAS
◇ジャック・カーリイ 『デス・コレクターズ』
サイコ・サスペンスだろうが、著者自身に病んだ部分がないのでスリルがない。
「ほん」ではなくて「ぼん」といっていたのは誰だったか……。
「マンガぼん」、「裏ぼん」、「トンデモぼん」と、侮蔑的に揶揄されるもの。
「サイコぼん」だろう。
224: ぺろぺろくん 2017/03/22(水)21:26 AAS
◇カール・ハイアセン 『復讐はお好き?』
アホ亭主への復讐話で、540ページ。
まあ、よく読ませるもんだと感心はするものの、キャラクターに肩入れできないと
ちょっと悲惨なことになる。
もうちっとヘビーなものに手を出したいのだが、余裕がない。
225: ぺろぺろくん 2017/03/25(土)21:00 AAS
◇ゴンブローヴィチ 『バカカイ』
二十世紀初頭生まれのポーランドの亡命作家による短篇集。
テーマは「稚拙」。
「富国強兵」や「高度経済成長」になじめない生理を抱えていることを、稚拙という。
ロックンロールや匿名メディアが登場する以前に、稚拙な人たちはどうやって正気を
保っていたのだろう?と、いつも考る。
〈お勝手ジャングル〉に抵抗する、ロックンロールがここにある。
226(1): ぺろぺろくん 2017/03/25(土)21:02 AAS
◇鎌田東二 『霊性の文学 言霊の力』
著者が寺山チルドレンらしき人物なので、買い置いていたもの。
世界的・歴史的に高名な著者が並ぶ中で、「山尾省三」の名があるのが目を引いた。
日本のヒッピー運動の草分け的存在だったと思うが、久々に目にした。
>人の道から「けもの道」に入って行く時、「その距離の二乗に比例するかのように
>人の生理は野性に還る」
公衆道徳の支配の及ばない、伝言・パーティー・初期のインターネットはまさしく、
「けものみ道」だっただろう。
だからいまのインターネットには血が騒がないというのもあるだろう。
227: ぺろぺろくん 2017/03/30(木)20:08 AAS
◇久世光彦 『百閒先生 月を踏む』
不思議なほどネコにもてて、留守番ネコにまで居つかれてしまっているときがあった。
実生活はかなり荒んでいて、民家のブロック塀にローリングソ・バットを入れて崩壊
させたこと二ケタに乗るほどで、伝言をはじめるちょっと前だったか。
霊感系の人に言わせると
>きみ、それ死相が出ているよ
その数年後、当時のノリのまま、レビック伊藤に直電をしてみたら
>おまえそのうちタチの悪いのにとっ捕まって、シャレになんないことになるぞ!
と、言われた。
内田百閒の幻想譚のリアリティはまさに死への近接で、次元をひとつ余計にもってし
省1
228: ぺろぺろくん 2017/04/04(火)21:16 AAS
◇鎌田東二 『霊性の文学 霊的人間』
>>226の続編
賢治、ヘッセ、ノヴァーリス、ウィリアム・ブレイク、ゲーテ、宣長、秋成、篤胤、
足穂、イエイツ、ハーン、遠藤周作
と、いずれもなじみのある名前。
それに加えて、歴史の教科書でしか目にしたことがない『空海」と、以上のメンバー
が霊的人間として取り上げられる。
村上春樹が言っていたけど、小説を書くときには
>作者である自分と、読者、それに『うなぎ』かな、の三人がいる
この『うなぎ』がいるかどうかが、意外と大きい。
229: ぺろぺろくん 2017/04/06(木)19:59 AAS
◇内田樹 『下流思考』
教育現場が長い人だけに、どれを読んでも示唆を受けることが多い。
反学校神話にはこんな短絡的なものがあるらしく、ギャグではないらしい。
>学校で悪い成績を取ることは人間の価値を高める
少なくとも上位5パーセントに入っていないと、学校を否定する権利は与えられない
と思う自分なんかは、さしずめ「長距離走者の孤独」世代とでも呼ばれるのか。
これは絶対ギャグだと思うのだが、そうではないらしい
省1
230: ぺろぺろくん 2017/04/07(金)21:36 AAS
◇内田樹・平川克美 『東京ファイティングキッズ・リターン』
武術のキャリアもながい人だけあって、得る所が多かった。
>腕を上げるというような動作ひとつにしても、そのために使っていない身体の部分
>があると、「もったいない」という気がしてきた。
語っているのは舞踊ではなくて、合気道です。
>正中線も体重の移動も腰の回転も呼吸も目付も内臓の筋肉も、もう使えるものは総
>動員します。
省2
231: ぺろぺろくん 2017/04/08(土)18:55 AAS
◇内田樹 『疲れすぎて眠れぬ夜のために』
>不愉快な人間関係に耐えていると、生命エネルギーがどんどん枯渇してゆきます。
こういう文言こそ、教育方針に折り込むべき。
実際、弁護士や精神科医は老け込むのが早いそうだ。
ナースもやばそうだ。
もっとも、耐えるよりも殴るタイプなので、こっちが不愉快な人間だったのかもしれないが。
いじめを苦にして自殺するよりも、ぶっ殺して法廷に立つ方がやりがいがあるじゃないか。
まあ、ここだから言えることだ。
232: ぺろぺろくん 2017/04/08(土)19:07 AAS
◇木内昇 『茗荷谷の猫』
往復二時間の電車本と思ったところが、けっこうホネがあって三日がかりになってしまった。
>あの家には、自分の選びそびれた人生がこっそり眠っているように俊男は感じた。取り戻
>そうにも、呼び鈴を押すことすらもうできない。
解説の春日武彦氏が感嘆したのと同じところで、ドキッとしてしまった。
「お互い恋の少ない男と女なんだから仲良くしたら!」
と、上の子から言われて、たしかにつがいの野鳥を見ていると、選びそびれた人生がそこに
あると思ってしまう。
233: ぺろぺろくん 2017/04/10(月)18:52 AAS
◇宇野信夫 『ここのつの話』
歌舞伎作者として高名だが、自分としてはエッセイになじみの深い人だが、
小説がまた実に良い。
無頼派の作家はなぜか必ず妻帯しているのが不思議だった。
もっとも身内の援助なり内助の功がなければ成り立たないものではあるが、
先日、ラジオでこんなエピソードを聞いて納得した。
菊地寛が相馬泰三に文芸家協会への入会を打診したところ、
>小説家に生活の保護など要らぬ、野垂れ死にするまでだ!
と、きっぱり断り、その妻まで
>そのような夫の態度を立派に思います
省8
234: ぺろぺろくん 2017/04/10(月)19:17 AAS
◇ミカエル・ニエミ 『世界の果てのビートルズ』
ジャケ買いのような、タイトルに釣られて買っておいたのだが、「記憶の共同体」
としてのビートルズ本だ。
生地の近くでは鈴木慶一が友人が訪ねてくるのに、
>フランク・ザッパが聞こえてくる家だからすぐわかるよ!
と言ってたらしいが、あいにく十代前半を過ごしたのは千葉の柏で、ビートルズ
の名前を知っているのがせいぜいで、フーやキンクスのLPを持っているのは自分
ひとりだった。
まさに『世界の果てのビートルズ』だが、一部のお屋敷街をのぞけばどの地域でも
そんなもんだろう。
省1
235: ぺろぺろくん 2017/04/11(火)20:59 AAS
◇古沢和宏 『痕跡本の世界: 古本に残された不思議な何か』
あまりにも見事な加筆ゆえに、オリジナル作品が寂しく思えてしまうほどの
書き込み本。
言ってみれば一点ものだから、それを商売にするプロができたら面白いだろう。
かと思えば、新刊紹介ページの作者名の上に泌尿器関連の用語が書き込まれて
いる。
ちなみに、
赤川次郎の上、「結石」「尿道炎」
平岩弓枝の上、「膀胱炎」「腎炎」
真木洋三の上、「尿路腫瘍」
236: ぺろぺろくん 2017/04/13(木)21:22 AAS
◇内田樹 『知に働けば蔵が建つ』
内田氏は、世界中どこにいても同じ行動を取る。
>パリ滞在中にはだいたいホテルの部屋から一歩も出ないでパソコンに向かって仕事をし、
>ベッドに寝ころんで成島柳木や夏目漱石や白川静を読み、ごはんは「ひぐま」の味噌ラ
>ーメン」である。
>日本にいるときも、私は一日中部屋から出ないでパソコンに向かって仕事をして、同じ
>ような時代錯誤的な本を読み、昼ご飯にはうどんかラーメンかカレーを部屋でもそもそ
>と食べている。
懇意にしている精神科医によると
>狂いすぎている人は発症しないんです
省2
237: ぺろぺろくん 2017/04/15(土)19:28 AAS
◇ジョー・ヒル 『20世紀の幽霊たち』
スティーブン・キングとは相性が悪くて、映画も原作もまったく恐くならない。
その代表作ともいわれる『IT』も積ん読20年を超える。
その息子はどうかな?と、手を伸ばしてみたものの……。
大人の事情はともかく、東雅夫氏もほんとうにこれをいいと思っているのか?
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