[過去ログ] ガンダムヒロインズMARK ??I (152レス)
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48: フェニックステイル第35話 2021/05/30(日)17:10 ID:nhL4kqtL(8/11) AAS
「――南ァ無・ジオン……っ……」
盛大な火球の中で確かに己を貫いたビームのイメージを、どくどくと精液を注がれていく自らの胎内で貫かれる卵子のイメージに重ねて感じる。
ひとりの少女から『母』になっていく自分をどこか遠くから見下ろすように認識しながら、少女の意識は再び、ふっつりと途切れた。
「おっ……? お、おい。だ、大丈夫か……? おーい……」
 ベッド上でしばらく彼女を抱きしめながら射精の余韻を謳歌したあと、ロブは完全に意識を失った彼女に気づいた。呼びかけながら目の前で手を振ってみても反応はない。
「ああ……。やれやれ……、やっちまった。まーた、調子乗って壊しちまったか……」
 ようやく自身を少女の中から引き抜くと、混じり合った濃厚な精液と愛液、そして血液がぬらりと糸を引いた。
「何だよ、この血……。別に、俺のがデカすぎたから、ってわけでもないよな……。まさか、この子……あれで処女、だったのか……? いや、何も言ってなかったよな」
ひとまず脈と呼吸があることを確認し、密着していた上体を離してそっとベッドに横たえる。そして気づいた。
「ン……? う、うわっ!? なんだコレ!?」
省17
49: フェニックステイル第35話 2021/05/30(日)17:11 ID:nhL4kqtL(9/11) AAS
 だが、もしも。
 もしも彼女が何らかの手段で生き残り、そして、それをトラキア隊の誰かが密かに捕らえ、スーツケースに閉じ込めてここまで連れてきたのだとしたら。
 その過程で拷問なり尋問のために何かおかしな薬物でも使用し、彼女の理性や体質に重大な悪影響を与えていたのだとしたら。
 ロブが今まで体験したこの異常な現象には、ほぼ全ての説明が付いてしまうのではないだろうか。
「…………」
 冷たい汗が背中を流れ落ちていく。
 あの戦闘後に敵の捕虜を捕らえた、などという報告はどこからも出なかった。彼女が大ジオン仏道の捕虜だとしたら、彼女を捕らえてここまで連れてきた誰かは、完全な違法行為を犯していたことになる。表沙汰になれば厳罰は免れ得ないだろう。
 そして、あの戦闘とその後に、そうした一連の行動が可能だった人物はといえば――
「サントス伍長」
「はいいいぃぃっ!?」
省15
50: フェニックステイル第35話 2021/05/30(日)17:12 ID:nhL4kqtL(10/11) AAS
 どこまで話せばいいのか。どう誤魔化せばいいのか。どこまで知られてしまったのか。
 無意味と分かり切った上っ面の会話を条件反射だけで続けながら、マコトは全力で現状の分析と次に打つべき一手を考え続け、ロブは恐怖と絶望の中でもはやかつての威容など見る影もなくしなびた自身を今さら隠すことも出来ないままに、無意味な返答を続けていた。
 そのとき、少女の方で何かが光った。
無防備に両足を開き、ロブに何度も貫通され大きく押し開かれながら白濁液を垂れ流していた少女の膣口からへその辺りで、電光のような何かがパリッ、と煌めいた。
「ん……?」
一瞬、そんな光景が見えた。
――ような気がした、と思った次の瞬間――
「ゔッ!!」
 下腹の内側で手榴弾でも炸裂したかのように、少女の腹が爆発的に膨らんだ。
みぞおちへ巨人の鉄拳でも受けたかのように少女は目を剝いて仰け反り、膣口からは圧迫された精液が水鉄砲のように噴き出す。腹の膨らみに蹴飛ばされた乳房がデタラメに弾け飛び、母乳の飛沫を撒き散らしながら暴れ狂った。
省15
51: フェニックステイル第35話投下終了 2021/05/30(日)17:13 ID:nhL4kqtL(11/11) AAS
今回は以上です。次回以降はしばらく非エロ場面が続きます。
追ってハーメルンとpixivに挿絵付きの完全版を投稿します。
よろしければ「フェニックステイル」で検索して、そちらもご確認ください。
ご感想などいただけますと励みになります。
52: 2021/06/21(月)02:37 ID:MlgskLdh(1) AAS
真面目な話、ティファってアルタネイティブ社に居た時
どんくらい強姦&中絶させられてたんだろ?
53: フェニックステイル第36話投下準備 2021/06/24(木)22:34 ID:mPo0pFSG(1/20) AAS
今回は長引きます(おそらく本文だけで13レス以上)。
54: フェニックステイル第36話 2021/06/24(木)22:36 ID:mPo0pFSG(2/20) AAS
「ん……はぷっ。んちゅっ、……はぷうぅ……っ」
 P−04から離れた新サイド4暗礁宙域の深部を、1隻の民間貨物船が行く。
 派手なペイントで『ジャンクハンター・ゴアズ』と表記された船体には、複数の空コンテナと3機のRB−79『ボール』、そして1機のMS−09R2『リック・ドム?』が係留されていた。
 そして、その船に乗り組んでいるのはジャンク回収業者――この新サイド4宙域では『境界漁民』とも呼ばれるジャンク屋たちである 。
 新サイド4に前進拠点P−04を構える地球連邦軍及びルウム農協と、同宙域に潜伏しながら戦力を拡大し続けてついには広大な絶対防空圏『聖域』を構えるまでに至った、強大なジオン残党軍ルスラン・フリート。
 その両者がかつて激しく激突し、今は静かに対峙しつつ拮抗している両勢力圏の『境界』は同時に、8年前のルウム戦役で崩壊した数十のコロニーとそこから生じたデブリが手つかずで漂う、大量の有価値ジャンクの宝庫とも言える。
 境界漁民とは、そこで一獲千金を夢見て操業するジャンク屋たちの別称だった。
 新サイド4暗礁宙域はまさに地球連邦軍とジオン残党軍の最前線であり、他のサイドで活動するジャンク屋以上に危険な環境へ身を置くことにはなる。だがそこでは、かつて行われた破壊が撒き散らしたジャンクの規模も桁違いなのだ。
 わずか一日で20億人の市民を殺してのけた地球圏史上最大の虐殺劇、ルウム戦役の残骸は、血塗られた富の芳香とともに今なおL1軌道を漂い続けている。
 そしてジャンク回収船の船橋では一人の若く屈強な男が、まだ幼さの残る顔立ちの少女を抱いてその唇を貪りながら、旧式パイロットスーツの上から乳房を自在に揉みしだいていた。
省17
55: フェニックステイル第36話 2021/06/24(木)22:37 ID:mPo0pFSG(3/20) AAS
 今回の『漁』でさらなる金と力を手に入れたら、彼女たちに手を出してみるのも乙なものだ。確か連中は借金を抱えていたはずだ。それならひとつ債権でも買い取って、追い込みがてら迫ってみるとするか――
「しゃ、社長」
「あァ?」
 パティの程良い大きさの乳房を愛撫しながら、さらなる欲望の算段を弾いていた最中に割り込まれて、パサベイは話しかけてきた通信士を不機嫌そうに睨む。通信士はその眼光に竦みながらも、なんとか言葉を継いで報告した。
「つ、通信が入っています。接近する『騎士団』機からです」
「――騎士団から? ここでか。チッ……しゃあねぇ、出せ」
「あんっ」
 パサベイはその目に殺気を宿すと荒く吐き捨て、抱いていたパティを乱暴に船橋の脇へと押しやる。無重力に押し出された少女は切なげに喘いでみせつつ、乱れたスーツの前を素早く直しながら船橋正面のモニタを見た。
 すぐに通信が接続され、モニタに金髪の美女が映し出された。凛々しく涼やかな青い目元に、冷たい雰囲気を讃えている。
 新型の連邦式パイロットスーツの胸元を押し上げる膨らみは、男が抱いていた少女のそれよりゆうに二回りは豊かだ。それでいて引き締まった身体に隙は無い。
省18
56: フェニックステイル第36話 2021/06/24(木)22:38 ID:mPo0pFSG(4/20) AAS
 この新サイド4暗礁宙域のように、ジオン残党軍や宇宙海賊など怪しげな武装勢力が跋扈し、地球連邦軍による対処も追いつかない危険宙域で活動する自社及び契約企業の作業要員の安全を守るため、ブッホが地球連邦軍の認可を受けて設けた警備会社。
 それがブッホ・セキュリティ社、通称『ロナ騎士団』だった。
 ロナ騎士団の勢力は、連邦軍やルウム農協などと比べればごく小さなものに過ぎない。だがここで重要なのは、ロナ騎士団はジオン残党軍ルスラン・フリートと完全に敵対しているわけではない、ということだ。
 例えば境界漁民たちが『聖域』近くで操業していて、ルスラン・フリートに拿捕されるような事態が生じたとする。このとき連邦軍や農協が助けを求められたところで、致命的な戦闘に挑むか、あるいは完全に無視するかの二択しかない。
 そして境界漁民たちにとって、前線でのプレゼンスにおいて連邦軍や農協がルスラン・フリートに完全に押し負けつつあることは、もはや周知の事実であった。救援など期待できない。
 しかしルスラン・フリートと完全に敵対しているわけではないロナ騎士団ならば、そこには交渉の余地が出てくるのだった。
 そのロナ騎士団の構成員、特にMSパイロットたちは最高の家庭環境で育ち、最高の教育を受けてきたエリート揃いなのだという。
 確かに、中には融通の利かない地球連邦軍や、ジャンク屋たちなどただの使い走りだとしか思っていない節さえ感じさせるルウム農協などより、よほど親身になってくれる騎士もいなくはない。
 だがロナ騎士団の大半はこの女騎士のように、とにかくお高く止まった面々だ。油断ならない――少なくとも、パサベイとパティはそう思っていた。
 なにせブッホ・ジャンクは境界漁民たちの後方拠点と、彼らが回収してきたジャンクの販路までもを握っているのだ。
省17
57: フェニックステイル第36話 2021/06/24(木)22:39 ID:mPo0pFSG(5/20) AAS
「…………」
 ロナ騎士団の2機が回収船から十分に遠ざかったのを確認してから、男は船橋の前列へ向かって言葉を投げた。
「おい。進路を変えるぞ。前方15キロ、あのコロニー残骸の下に回れ」
「はっ……? し、しかし、社長。その経路では、騎士団機との通信が維持できなく――ブッ!!」
「馬鹿かテメェは!?」
 途中まで言おうとしたところで、彼はパサベイに思い切り後頭部を蹴飛ばされてコンソールに潰れた。
「話聞いてなかったのかこのボケ、あいつらもお宝の噂を聞きつけてんだよ! このままブッホの騎士どもに一部始終を見られてたら、せっかくお宝を収めても奴らにいいように搾られちまうだろうが。
 奴らはこれから帰り道だ、いったん隠れてやり過ごすんだよ!!」
 瞬間的にキレた社長はそのまま大声を張り上げながら、パサベイは部下の頭を激しく何度も蹴りつけた。コンソール上に頭を踏みにじりながら威圧する。
「だいたいテメェの見張りが適当だから、今もブッホのクソ騎士どもにコソッと近づかれたんだろうが! 先に見つけてりゃあうまく撒けてたかもしれねぇのによ。境界じゃあ目ン玉皿にして見とけって言ったろ?
省13
58: フェニックステイル第36話 2021/06/24(木)22:40 ID:mPo0pFSG(6/20) AAS
「おお……すごい。なんか、本当に『ディナー』っぽい……」
 十人ほどの人間が入ってなお余裕のありそうなミケリヤ邸の食堂には、すでに皿と食器が整然と並べられ、隣接する台所から食欲をそそる匂いが届いていた。
 示された時間に三三五五と集まってきたトラキアMS隊の来客たちと同様、アイネ・クライネ伍長も食卓を遠巻きにしながら手持無沙汰に立ち尽くしている。
 プラント到着後初めての夕食は、サブリナ・ミケリヤ少尉とマコト・ハヤカワ准尉の2家族が主催して、トラキアMS隊から招いた来客と顔を合わせる会食だった。
 そしてアイネは結局この時間まで、ミケリヤ邸で割り当てられた自室へ入る時間もないまま、上官たるトラキアMS隊長マコトから預かったその娘ミコトに延々と振り回され続けていた。
 ミコトはその母親似の可愛らしい顔立ちに浮かべる表情こそあまり大きく動かさないのだが、動作と感情の振り幅は非常に活発だった。
 プラント最下層部の一区画を使って箱庭のように設けられた、ミケリヤ邸・ハヤカワ邸の各地をミコトがじっくり見せて回ってくれたおかげで、アイネはこれから当分の間寝起きすることになるのであろう一帯についての理解を深めることが出来た。
 そしてもう一点、アイネが骨身に染みて理解したことがあった――ミコトはアイネの乳房に、並々ならぬ強い関心を抱いている。
 何しろ手で、顔で、頭で、胸で、とにかくミコトは全身全力でアイネの乳房を触ってくるのだ。アイネに隙あらばキャミソールを剥き下ろして裸の乳房を転び出させようと企む、無邪気な幼女の邪悪な意志の存在を強く感じさせられていた。
 夕食前にはミコトが帰宅してようやく解放されたとはいえ、これからこの調子がずっと続けば身が持たないのではないかと思う。いや、ミコトはとても可愛いから、そういう意味では癒されるのだが……。
省15
59: フェニックステイル第36話 2021/06/24(木)22:41 ID:mPo0pFSG(7/20) AAS
「う、うう……。わ、わかったよシー姉……。オレが悪かったよ……」
 それでも、そんな女児が困り眉毛の下で大粒のエメラルドグリーンを思わせる瞳に涙を溜めはじめると、さすがに男児の方も何か察したのか、そこでおとなしく押し黙った。
 女児は小さく震えながら、アイネの前まで進み出て会釈した。
「あの、はじめまして。わたしはミケリヤ家の長女、シータ・ミケリヤと言います。弟のジローが本当に失礼なことを言ってしまってごめんなさい。弟にはわたしの方から、後でよく言い聞かせておきます」
「こんばんは、シータちゃん。私はアイネ・クライネ。お母さんのサブリナ少尉にはお仕事でお世話になっています。えっと、ジロー君、……びっくりしちゃったけど、もうしないでね」
「うっ……」
 膝を折って目線の高さを合わせながら、アイネは二人へ微笑みかけた。そこまでするとジロー少年にも通じたようで、男児は少しばつの悪そうな顔で目線を逸らしながら、小さく「ごめんなさい」と口にした。アイネは頷き、とりあえず許すことにした。
 ――何しろすでに、もっと強烈なのを食らっていることでもあるし。
「ありがとうございます!」
 姉のシータは微笑むと弟のジローの手を引き、他の面々への挨拶回りを始めていく。どうやらアイネ以外は初対面ではないらしかった。
省19
60: フェニックステイル第36話 2021/06/24(木)22:42 ID:mPo0pFSG(8/20) AAS
「ダメだよミコちゃん、そんなことしちゃダメ! ミコちゃんの席はこっち! こっちだよミコちゃん!!」
 アイネたちゲスト組の対面で自分も席に着いていたシータが身を乗り出し、もはや食堂唯一の良心としてミコトの暴挙をやめさせようと説教しはじめたが、ミコトはまったく反応しない。
 その傍らでジローが頭の後ろで両手を組みながら、軽く馬鹿にするように言い放った。
「ほんっと、ミコはガキだよなー! もうすぐ7歳だってのに、未だにオッパイ大好きなんだもん。オレはもう大人の男だから、オッパイなんかとっくに卒業したけどな!」
「うっ……」
 得意げに鼻の穴を膨らませながら、ジローがミコトへ謎のマウントを取りにかかる。ミコトはこれも馬耳東風だが、流れ弾が変なところに着弾したらしくシュンが具合悪そうに俯き、マリエルが異様に冷たい視線を向けた。ロブとガルノフに変化はない。
「よーしお前ら、お待ちかねの料理が出来たぞ!! ……ってアイネ、何してんの?」
「ミ、ミコトちゃんが……」
 そこへようやく、料理満載の鍋や大皿を持ったサブリナとマコト、そして初めて顔を見る成人男性の3人が台所から顔を出した。ミコトはこの期に及んでなお動じるも飽きることもなくアイネの乳房を弄んでいる。母親に対しても反応を見せていない。
 サブリナの夫らしき男性の目の前で、乳房をミコトのおもちゃにされている――最高に気まずい状況のまま、アイネはとりあえず自己紹介した。
省18
61: フェニックステイル第36話 2021/06/24(木)22:43 ID:mPo0pFSG(9/20) AAS
「戦後すぐから北米大陸の穀倉地帯がごっそり焼けた星屑特需後しばらくの間は専らコメとか穀物主体だったんだけど、その後は地球圏の農業生産の立ち直りに合わせて多角化が進んできたんだよね。今じゃ水産から畜産に酒造まで手広くやってるよ」
「えっ、プラントで畜産もできるんですか!?」
「まあ、ちょっとずつだけどね――ああ、そうか。アイネはテキサス生まれだっけ。さすがにあんな大規模じゃないし、コロニーと違ってプラントだとうまく行かないことも多いみたいだけど、なんだかんだと畜産技術の復活も進んでるみたいよ。
 今お前らの皿の上に載ってるのも、ルウム農協ブランドのリアル牛肉だぜい」
 おおっ、とどよめきが漏れた。合成肉ではなかったのだ。口に入れてみれば、確かに美味しい。
「すごい……畜産業まで復活しているなんて……」
 感動するアイネの膝上では、ミコトもアイネの乳房を背もたれにしながら黙々と、アイネの皿から料理を口に運んでいた。
 アイネは食事を口まで運ぶたびに、黒髪の光沢に天使の輪を宿したミコトの頭を汚さないように気を遣いはしていたが、逆に言えばその程度で済んでしまっている。
 それになんだかんだ言っても、膝の上で機嫌良さそうに食べるミコトの後ろ姿は、可愛いのだ。
「まあ、これもマコトたちがトラキアに残って、P−04から外に繋がる航路を守ってくれてるおかげなんだよね。こっちに残ってる私らだけじゃあ、この食卓は用意できないんだ。――感謝してるよ、本当」
省13
62: フェニックステイル第36話 2021/06/24(木)22:44 ID:mPo0pFSG(10/20) AAS
 うーむ、とアイネは唸り、苦笑するサブリナとロン、そしてミケリヤ姉弟から質問を浴びせられながら寂し気に笑うマコトを見た。ミコトの頭をそっと撫でながら海老フライをつまみつつ、ふと思い出してサブリナの方に尋ねた。
「そうだ。そういえば、……『境界漁民』って何なんですか?」
「あー、境界漁民はねえ。あいつら別に、特に魚介とか関係ないんだよね……。まあ、要するにジャンク屋なんだよ。
 うちのソギル准将閣下とルウム農協が組んで、免許持ちがP−04に入って連邦軍に予備役登録すれば、ジャンク屋用のボールを貸し出すってキャンペーンで人を集めたんだよね。それで有価値ジャンクを回収して儲けてる若いのが大勢いるわけ」
「なるほど、それで漁民……。境界、っていうのは?」
「うちらP−04側の防空圏とルスラン側の防空圏の境界あたりが、いちばん手つかずのジャンクが残ってて連中的においしいらしいんだよね。そこでジャンクを漁って活動するから『境界漁民』……そのまんま。
 うまくやれば割と儲かるらしいけど、ブッホの下請けみたいなもんでもあるし……まあ、大変そうよね」
「すごく若い女の子たちもいましたよね……」
 アイネが第113整備基地で見かけたボール乗りと思しき少女たちは、明らかにアイネたちより年下だった。せいぜいミドルティーン程度ではなかったか。
「うん、若い娘たちもいるね……最近は身寄りが無くてもボールを乗りこなせるぐらいの技量があって、ここで経験を積もうとしてる地元の娘たちも結構育ってるから。
省11
63: フェニックステイル第36話 2021/06/24(木)22:45 ID:mPo0pFSG(11/20) AAS
 一瞬言いよどんだサブリナに、アイネは思わず続きを促す。サブリナは料理に目を落としながらも手を止め、声を下げながら続けた。
「あの辺の境界宙域にはルスラン以外にも、なんか……『良くないもの』が出るっぽいんだよね」
「――『良くないもの?』」
「そう。なんか、理屈では言い表せないもの。人間の常識を超えてる、っていうか……とにかく、普通じゃないもの」
「まさか……ジオン残党の、ニュータイプ用サイコミュ兵器でしょうか?」
 かつての一年戦争においてソロモン攻略戦の直後、連邦艦隊を襲った正体不明の敵による謎の攻撃があった。
 戦後7年が経過した今ではジオン公国軍が開発したニュータイプ用モビルアーマーによる超長距離攻撃だったとされているが、当時はその正体に関して様々な憶測が流れ、非科学的なものも多く含まれていたという。
「うーん……どうも、そういうのじゃないっぽいんだよね。そこまで具体的なものじゃない。ただ、分からないんだけど、どうも……あの辺には何か『人じゃないもの』が、いる気配がある」
「人じゃない、もの……?」
「あいつらが……残党軍や海賊の類だとは、思えない……」
省20
64: フェニックステイル第36話 2021/06/24(木)22:46 ID:mPo0pFSG(12/20) AAS
 リック・ドム?が、そして3機のボールが、脚とマニピュレータを使って押し出す反動でジャンク回収船の船体からゆっくりと離れた。十分な安全距離を取ったところで4機は旋回し、スラスターを噴かす。
 正規のMS運用対応艦艇の装甲なら、いきなり甲板上でスラスターを噴かして発艦しても問題はない。だがジャンク回収船『ジャンクハンター・ゴアズ』には、まだその灼熱の噴流に問題なく耐えられるまでの改修は施されていなかった。
 まず道案内役を務めるパティ・リンデンのボールが先導し、そのすぐ後ろにパサベイ・ゴアのリック・ドム?が、そして社員2人のボールが続いていく。
 パサベイ機はドム系MSの代名詞とも言える武装をまったく装備していないため、それだけで機体のシルエットは独特に見えた。射撃兵装のジャイアント・バズが無いのは当然としても、背中へたすきに掛けているはずのヒートサーベルも無いのだ。
 兵装らしきものとしては、代わりに前腕部へビームサーベルがマウントされているだけだった。
 ジャンク屋業務で用いる解体装備と考えるなら、刃に一度でも熱を入れればほぼ使い捨てになってしまうヒートサーベルより、繰り返しの使用にも耐えられるうえ廃熱の心配も少ないビームサーベルの方がずっと優れているのは、実用性と経済性の面からも当然と言える。
 さすがにビームサーベルまでは許した連邦軍からも、マシンガンやバズーカといった類のMS用射撃兵装は認められていない。だが同じく許可されたボールの低反動砲を分解して、MS用ハンドキャノンを仕立てられるだけの技術力は彼らにもあった。
 だから随伴するボールの1機が頭頂部に装備する連装低反動砲が奇妙なかたちをしているのも、いざとなれば取り外してリック・ドム?が手持ちで構えられる射撃兵装として運用するための『抜け道』を用意するためだった。
 もっともパサベイたちはこれらの武装でルスラン・フリート哨戒部隊と一戦交えようなどと思っているわけではないし、昨今流行りのエゥーゴとやらに参加するつもりもない。
 ジャンク屋たちが持つMSが武装として最大の真価を発揮するのは、お上の目の届かない軍事力の空白地帯――すなわちこの境界で、同業者たちと獲物を巡って小競り合いするときなのだった。
省11
65: フェニックステイル第36話 2021/06/24(木)22:46 ID:mPo0pFSG(13/20) AAS
 リック・ドム?が十字レール上にモノアイを巡らせ、愛人と社員たちが乗る3機のボールを確認する。
「おい……今誰か、何か言ったか?」
『あたし、何にも言ってないよ』
『俺もです、社長』
『でも、今、何か……聞こえましたよね……?』
「じゃあ、何だ、……今の……」
『コッチニオイデヨ……オネエチャン、……コッチニオイデヨ……!』
『また……!?』
 再び入電。さっきよりもはっきりと、その音声は聞こえてきた。
 近づいてきている。
省27
66: フェニックステイル第36話 2021/06/24(木)22:47 ID:mPo0pFSG(14/20) AAS
『サア、オネエチャンモ、……オネエチャンモ、イコウ……コッチニ、オイデヨ……ジョウハツ、シヨウ……ヒートホークデ、ジュウッテ、ジョウハツ、シヨウ……!!』
『ひっ』
 ヒートホークを握ったまま軽くスラスターを噴かして、傷だらけのザク?の機影がゆっくりとパティのボールへ迫りくる。
「おい、……待てや、コラ」
 だがその行く手にパサベイのリック・ドム?が、ビームサーベルの光刃を伸ばしながら立ち塞がった。
『パサベイ!』
「ヒトの女に手ェ出してんじゃねェ……久々に……キレちまったよ……完全にな……」
『キャパーッ! ジョオーハツゥゥゥーーーッ!!』
 弾かれたような高加速でザク?が跳ねた。速い。
 だが、パサベイは勝利を確信している。得物の長さが違うのだ。パサベイ機のビームサーベルは、ザク?のヒートホークに対して圧倒的にリーチの面で有利だった。
省19
67: フェニックステイル第36話 2021/06/24(木)22:48 ID:mPo0pFSG(15/20) AAS
 ドンッ、とパティ機頂部の低反動砲が火を噴く。だがザク?はすでにそこになく、砲弾はリック・ドム?の胴体を撃ち抜きながら炸裂、機体を巨大な火球に変えた。
「あ、ああ! あああああ、ああ、い、嫌ぁーーーっ!!」
 パティは引き金を引き続け、出鱈目に低反動砲を撃ちまくりながら全力で逃げようとした。敵の姿が見えない。
 あのザク?は何なのだ。ルスラン・フリート所属機のようには見えない。では本当に、本物の『亡霊』だとでもいうのか。
 完全に頭が真っ白になっている。彼女にいま分かっていることは、たったの一つだけ――逃げられなければ自分もあのヒートホークで焼き殺される、ということだけだった。
「アグ!?」
 ガンッ、と真横から機体を圧されたかと思った時には、パティ機はそのままコロニー外壁の残骸に押し付けられていた。サイドモニターいっぱいにあのザク?の傷だらけの機影が、そのモノアイが映し出されている。ヒートホークを構えていた。
『オネエチャアアアンンン、ツゥカァマエタアァ』
「い、いや……い、いや……!! こ、殺さないで……なんでもする、……な、なんでもするからぁ……」
 パティは震える手指でヘルメットを外し、ツインテールの髪と、涙でぐしょぐしょになった顔を出した。接触回線越しに相手のモニタへ自分の姿が映っていることを祈りながら、さらにパイロットスーツの正面ファスナーを下ろしていく。
省20
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