[過去ログ] 【たまには】サモンナイト萌え12【そんなカプも】 (1001レス)
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886: 04/06/11 22:52 ID:5qmDWREW(1/8) AAS
響く剣戟。飛び交う怒声。
暁の丘に繰り広げられる戦いは、今正に熾烈を極めんと激しく気炎を巻き上げる。
そんな戦場の一角で、刃と刃の間を巧みにすり抜け、縦横に飛び交う妖精が異界の門を開け放とうとしていた。

「出てきてくださぁ〜いっ!」
その小さな体の何処に籠められていたのかという程の魔力が虚空へと弾け、古の王が築き上げた隔世との境界を穿つ。
時を空間を越え現れたのは、清廉な緑の葉に飾られ、見る者全てを惹きつける花精が一人。
静かに開かれた丸い双眸。桜色の小さな唇と、同じ色をした花弁を象る髪。横に突き出した耳朶の少ない耳。
その面にはまだ幾分かの幼さが残るものの、魅力の点では決して成熟した同族のそれに劣っているというわけでない。
文字通り華が咲き零れるかのような微笑を伴い、花精――ドライアードは舞い始める。
舞に併せて伸ばされる指の先から光が溢れ、そして鼻腔を擽るような甘い芳香が周囲へと放たれた。
省9
887: 04/06/11 22:52 ID:5qmDWREW(2/8) AAS
“――お願いです、手に持っている武器を棄てて下さい”
鈴を転がしたかのような涼やかな声が頭に響く。
刹那の駆け引きに命を賭ける戦場で武器を棄てろなどという馬鹿げた言葉さえ、帝国兵士達は全く疑問に思わず手にした得物を放り出した。
一部隊が完全に無力化し、安堵のため息をもらす小妖精。
「いつもありがとうございます、ヒラヒラさん」
振り返り自分の背後に浮かぶ花精ににっこりと微笑む。
ドライアードにも勝るとも劣らない主の笑顔に、彼女もまた笑みで返した。

しかし、彼女達は気付いていなかった。
部隊の背後に、一人の人影があったことを。
そして、その人影の首下に輝くネックレスが完全なる精神防壁を展開する力があることを。
省14
888: 04/06/11 22:54 ID:5qmDWREW(3/8) AAS
「――――!」
「しっ、シマシマさん!?」
「ったく……マルルゥ、お前は頭に血が上ると飛び出し過ぎるから出しゃばんなってあれほど言っといただろうが」
無傷な方の腕を使い、フバースの男――ヤッファは無造作な手つきで突き刺さった飛具を引き抜く。

「!!」
その勢いに乗じて噴き出す鮮血に、ドライアードが怪我をした本人よりも悲痛な面持ちで顔を顰めた。
声には出さずとも彼女の表情に自分への気遣いを感じ取ったのだろう。ヤッファが何でもないとばかりに大仰な身振りで肩を竦める。
「お前もおろおろすんな、毎度の事だろうが。……心配すんなって、お前達みたいなヤワな鍛え方しちゃいねえよ。この程度ならちっとばかし筋肉で締めときゃ勝手に止まる」
言うが早いか、見る間に出血は収まり、飛具が突き刺さっていた痕は毛皮に隠され、毛皮を汚す赤色のみにその痕跡を残すだけとなった。
手の中の飛具を投げ捨て、二人に見せたどこか皮肉気な眼差しとは打って変わった荒々しい眼光を目の前の軍人へと向ける。
省11
889: 04/06/11 22:55 ID:5qmDWREW(4/8) AAS
轟声。

草が、風が、石が、大地と空までもが震えているかのような錯覚。
目の前のビジュはおろか、周囲の帝国軍兵士、延いては味方の護人や海賊一家までもが何事かと振り向くような大音声。
マルルゥなどに至っては危うく気を失いかけ、慌ててドライアードが墜落しそうになった彼女を受け止めた程である。
ヤッファの“雄叫び”を真正面から受け止めて腰を抜かさなかっただけでも、ビジュは賞賛されるべきだろう。

「…………っ」
凶眼は狂眼となって獲物を狙う。
両の手から伸びた爪は担い手の意識を反映してか、海に沈み行く夕日を受けて鈍い光を放ち、敵を切り裂くのは今か今かと解放の瞬間を待つ。
その姿に気圧されながらも、自分の矜持に縋り付いてビジュが猛った。
省13
890: 04/06/11 22:56 ID:5qmDWREW(5/8) AAS
「ォオラァッ!」
「ひ、ひあぁぁっ!?」
ビジュがその一撃を避けることが出来たのは、足元の窪みに躓いたという偶然の産物である。
だが尻餅を付いた状態では、続く斬撃を避けることなど到底適わない。

今度こそ外さないと、ヤッファは爪を突き刺すように引き絞ったが、次の瞬間突然両の足を大きく曲げ、弾かれたように横へと飛び退いた。
入れ違いにヤッファのいた場所へ、上空から突如現れた無数の光刃が雨のように降り注いでいく。
その全てがリィンバウムとは異なる世界では広く知れ渡る神器の数々。
限りなき聖の加護を受けた武具は、担い手の無いこの世界でも意思あるかの如くに標的に対して切れ味を遺憾なく発揮する。
“打ち砕く光将の剣”だ。
省15
891: 04/06/11 22:57 ID:5qmDWREW(6/8) AAS
衝撃音。

「ぐっ!」
「ガァッ!?」
一撃を受けたヤッファだが、引き換えにギャレオの二の腕に三本の線を引き立てた。
自ら飛び込んだ事が幸いし、ギャレオの拳が完璧な威力を出す前にヒットしたのだ。
さらに一撃では終わらず、二度、三度と同様の攻防が繰り返される。
後退は無い。あるのはただ、目の前の敵を粉砕するのみ。
防御に回す力は全て攻撃へ。血が舞い骨が軋む音が木霊する。

何度目かのギャレオの拳がヤッファの左脇腹を捉え、ヤッファの蹴りがギャレオの右肩を打ち抜いた。
省11
892: 04/06/11 22:58 ID:5qmDWREW(7/8) AAS
「――――!――――!!」
ヤッファの背後から細い腕が伸び、彼を止めようと必死に抱きつく姿。
ドライアードだった。
愛らしい目から湧き出る泉のように涙を零し、ふるふると首を振ってヤッファを引きとめようとしている。
「なっ……!? おい、何してんだよ、離せっ!」
「ダメですシマシマさん! これ以上けがしたらシマシマさんが死んじゃいますよぅ!」
見ればドライアードに習い従うように、マルルゥまでもが鬣に縋り付きヤッファを止めようと躍起になっていた。

留めるというよりはじゃれ付いていると言った方が近いかもしれない三人のやりとりを見て、ギャレオは構えを解く。
本音を言えば、向こうが退いてくれるのは願ってもいない事だった。
省14
893: 04/06/11 23:01 ID:5qmDWREW(8/8) AAS
「ああっ! ヒラヒラさん!?」
「――――――――」
マルルゥが驚きの声を上げる。
ヤッファの一撃を受けたドライアードは、何が起きたのか分からないといった風な目で、自らの創を見つめ、やがてそのままふらりと倒れてしまった。
ドライアードに走った傷痕を見て、熱く滾っていたヤッファの血はまるで嘘のように冷め、目にいつもの青い輝きが戻る。
「あ………! す、すまねえ、大丈夫か!?」
一歩を踏み出そうとしたヤッファだが、突然思い出したかのような全身の激痛にその場へと倒れ込んだ。
「ぐ、お……! 畜生、思ってた……よりもや、やべえ、な、こいつは……!」
「うわわわわ、シマシマさんまでぇ!?」
省7
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