[過去ログ] お姫様でエロなスレ14 (382レス)
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171: 2012/07/03(火) 20:11:18.37 ID:drYjBdNg(1/10)調 AAS
では、流れを読まず投下します。

ユゥとメイリン10
8レスの予定
172: ユゥとメイリン10 1/8 2012/07/03(火) 20:13:19.00 ID:drYjBdNg(2/10)調 AA×

173: ユゥとメイリン10 2/8 2012/07/03(火) 20:15:20.84 ID:drYjBdNg(3/10)調 AAS
「……どれい?」
メイリンは一瞬、大きな目を更に大きく見開いた。
「ユゥはわたしの従僕でしょ? なんで奴隷なの?」
急に問い返されて僕は戸惑う。
「えーと、そのふたつの違いが分からない……」
「刺青も焼印も押されてないのに、何で奴隷なの? 逃げ出して良民に紛れたら、分からなくなるじゃない。」
彼女は、奴隷と言うのは固定された身分で、消えない印をつけて所有された人たちのことだと言う。
「ユゥは捕虜。身柄はこの家で預かり、わたしが使うことを許されている……いまは。」
僕は頭を抱えた。そう説明されても、何が違うのか分からなかった。
「だからぁ、奴隷じゃなくて捕虜なんだから、何年かすれば放免されるでしょ。」
放免──?
もちろん聞いたことも無かった。ずっと何かしら踏みつけられて生きてゆくのだと思っていた。
それが故郷の人々を助けてもらった代償なのだと。
「じゃあ……万が一、今回一緒に行けなかったとしても、何年かして放免されたら、メイリンの任地に行ける?」
僕は少しほっとする。二度と会えなくなるわけじゃないんだったら、何とか耐えられるかもしれない。
でもメイリンは、僕の言葉を聞いた途端にきゅっと眉を寄せて思いっきり拗ねた顔をした。
「そんなこと……! わたしの……を断ったユゥを、わたしの領地に受け入れるはず、無いじゃない…!!」

…………………………………………………………………………………えっ?
なんかすっごい空耳を聞いたような気がする。
きっとそれは僕の願望とか妄想とかで出来ているに違いない。だってあまりに都合が良すぎる。
「いま、なんて言ったの、メイリン?」
メイリンは顔を真っ赤にして拗ねている。
「ユイウ兄様から聞いたでしょ。確かに伝えたって、そう言ってたもん。」
「聞いてない、聞いてないよ。誓って言うけど、それを匂わせるようなことは、一言だって聞いてない。」
もし欠片ほどでもそれを思わせるようなことを言われたら、僕は天まで舞い上がっていたに違いない。
「だって兄様が、何度もよぉく言って聞かせたって。」
「僕がいつも言われていたのは、『妹は誰にでも優しい』、『お前はただの下僕』、『勘違いするな』、
『身分を弁えろ』。それだけだけど。」
「だって…、だって…、兄上様が、女の方からそんなことを直接言うのははしたないって言って……。
自分がちゃんと伝えたから、お前は黙ってろって……!!!」
メイリンは少しずつ僕の言ったことを聞いてくれているようだった。真っ赤なまま目を見開いてぷるぷる
震えている。

「一言も聞いてないよ。命を賭けてもいい。」
だからもう一度言って、と言おうとしたとき、メイリンはもう風のように駆け出していた。
「どういうこと?! どういうことなの?! 兄上様!! ユイウ兄様──!!!!」
ふわりと風に靡く裳裾を翻し、凄い速さで回廊を駆け抜けてゆく。

暫く茫然としていた僕は、ユイウ様が昼間は出仕していて邸の中にはいないことを思い出す。こんな
中途半端な空耳を聞いたまま放っておかれるのは御免だ。
なんか、メイリンの口から、求婚、という言葉が出ていたような。ただの願望かもしれないけど。

僕はメイリンが外出の用意をしたのかと思って、馬車の様子を見るため厩に先に行ってみた。それから
門番にも聞いてみた。どちらにもメイリンは来ていないようだった。メイリンが外出するようなら、
引き止めて、せめて僕に報せて欲しいと頼んでそこを離れた。
それからメイリンの房室にも行ってみたが、やはりメイリンの影は無かった。
174: ユゥとメイリン10 3/8 2012/07/03(火) 20:18:36.25 ID:drYjBdNg(4/10)調 AAS
なんとなく、僕は邸の南側に足を向けた。いつかメイリンが言っていたのだ。一人になりたいときそこへ行くと。
北向きの庭園には、まだ僅かに残雪があった。けれど南向きの庭にはもう雪は無く、代わりに白い梅の花びらが
残雪のように地面を彩っていた。
清冽な香りの中、梅園の一角に、大き目の庭石が配置されている場所がある。そうっと足音を殺して近づくと、
庭石の向こうにメイリンの細い編み髪が見えた。膝を抱えて座り込んでいる。
「メイリン。」
僕が声を掛けると、彼女はびくっと肩を震わせた。
「何で泣いてるの。」
メイリンは目を真っ赤にして泣きはらしていた。ひっく、としゃくりあげる声が聞こえる。
「もう、いいもん。ユゥだって、いきなり言われても困るだろうし。」
はっきり聞く前からいきなりいいもんとか言われても困る。まだ返事をする暇さえ与えられていない。
メイリンの顔を覗き込むように、僕は腰を下ろす。泣きはらした顔も、やけに可愛い。
「まだ聞いてない。」
「ユゥはいつだってわたしに、つれないもん。一緒にいるのは良くても、結婚するのは嫌なんだ。
わたしが、我儘だから?」
妙な方向に考えが暴走してるみたいだ。どうしてそこで泣いてるのか、訳が分からない。メイリンと
結婚するのを嫌がる男なんて、いるはずないのに。

「メイリンに、我儘なところなんてないよ。」
メイリンは、いつだって優しくて、思い遣りがある女の子だ。邸の使用人たちだってそう言っている。
「じゃあ、じゃあ、わたしと、結婚する?」
「する。」
もちろん即答した。考える必要が、あるとは思えなかった。むしろメイリンが泣く必要が分からない。

メイリンはそこで、いきなり飴を貰った子供のように顔を上げる。
「本当? 嫌々じゃない? わたしが、自分の領地に受け入れないって言ったから。」
もう涙は止まっている。まったく女の子は変わり身が早い。
「嫌がる理由が無いよ。」
「だって、ずっと返事、くれなかったし。」
「聞いてないものには、返事のしようが無いよ。」
メイリンはだって、と口を尖らせる。そのさますら、食べてしまいたいほど可愛い。
「あのさ、そういう種類の伝言をユイウ様経由で伝えようとしても、永遠に伝わらないと思うよ。僕だって、
妹がそういう状況だったら、伝えたって言って死んでも伝えないと思うし。」
あのユイウ様が、可愛い妹のメイリンからの結婚の打診なんてことを、どんな理由があっても僕に
伝えるとは思えなかった。というか、突然の話で全く実感が湧かない。
メイリンは、だって兄上様が二人とも、ちゃんと伝えてあるって言ったもの! と何度も繰り返す。
どうやら、メイリンと兄君たちの間では、メイリンからの求婚の申し入れは伝えたものの、僕が迷って
返事を引き延ばしているという話になっていたようだ。
どうして僕がそんな勿体ないことをするものか。冗談もいい加減にして欲しい。
そしてメイリン自身は、女性がそういうことを言い出すのははしたない、というしきたりに渋々従って
直接問いただすのは控えさせられていたらしい。普段の積極性からは考えられないが、婦人学とか
持ち出され、「婦女子のはしたない行為は最も嫌われる」と言いくるめられてたとかなんとか。
175: ユゥとメイリン10 4/8 2012/07/03(火) 20:20:48.59 ID:drYjBdNg(5/10)調 AAS
「すぐに返事が来ない時点で、変だって思わないの。」
「だって、ユゥの考えてることなんか何ひとつ、分からない。」
メイリンはぷっと柔らかそうな頬を膨らませる。
「はじめてなんだもの。家族以外の男の子と仲良くなるのも、仲良くなりたいと思ったのも、その……、
そういうこと、したのも、ぜんぶ。」
メイリンが可愛すぎて気が遠くなりそうだった。生まれておよそ十七年間、家族以外の女の子に
縁の無かった僕には、いつだってメイリンは刺激が強すぎる。
「だから、ユゥの考えてることなんか、ぜんぜん、わかんない。」
ぎゅっと膝を抱きかかえて丸くなっているメイリンのこめかみに、強引にくちづけた。もっとこっちを
向いて欲しい。僕の理性は今にも弾け飛びそうだった。
「メイリン、したい……ねえ、いい?」
「あっ……、だめ」
メイリンは僕の口にぺたりと手のひらをつけて押し戻そうとした。労働を知らない彼女の手のひらは、
白くてなめらかだ。その指には、うっすらと剣だこがあるけれど。それもまた可愛らしい。
僕はその手を逃がさないよう自分の手を重ね、やわらかな手のひらをちゅっと音を立てて吸いたて、
舌を出して舐めしゃぶった。こんなやり方で今の僕が押し留められるはずがない。
「どうして? 僕の妻になってくれるんでしょう? そしたら君は、僕の、僕だけのものでしょう?」
自分で言ってて、頭のどこかが焼き切れそうだった。これで否定されたら、急転直下で死ねそうだ。
メイリンはおずおずと次の言葉を唇に載せた。

「だって……喪中、だもの。」
「……っっ!!」

雷で打たれたような衝撃だった。なぜ拒まれてるのだろうとしか考えなかった自分を恥じる。死者を
弔うための禁欲期間。そういう習慣は、もちろん僕たちの習慣の中にも一応ある。
父の死は国に決められた死で、突然に知らされ見届けることすら許されなくて、実感の無い、遠くに
たなびく煙でしかなかった。父のためになにひとつ、葬式はおろか、異郷の中で服喪することすら
出来なかったけど、確かに僕は肉親を亡くしたのだ。
「……僕の、ため?」
そんな中で、メイリンだけは、一緒に祈ってくれたじゃないか。
メイリンはこくりと頷く。
「ユゥの父上の喪中にはしたないことして、嫌われたくないし。」
嫌う。嫌うって。一体どこからそんな発想が出てくるんだろう。
分からないのはメイリンの方だ。
そしてメイリンは、いつだって上手に僕の理性を壊す。
「一体いつまで、我慢すればいいの。」
「えっと……?」
メイリンは眉を寄せて考え込む。
「父に対する服喪期間は、二年……?」
「無い無い無いないないないっっっっ!!!!!」
思わず大声を出してしまった。出たメイリンの曖昧性知識。
「それは確かシン国の公職の規定であって、ものに応じてもっと色々な解禁期間が、あるでしょう。」
二年とか、生き物としての生理の限界を軽く凌駕している。
メイリンは小首を傾げる。
「じゃあ、四十九日?」
「それも、長すぎ。」
そんなに長く待たされてたまるか。
176: ユゥとメイリン10 5/8 2012/07/03(火) 20:23:05.90 ID:drYjBdNg(6/10)調 AAS
「僕らのクニでは、七日経つと家の中から死者の魂が離れるって言って、そのとき一通りの喪が
あけるんだけど、それでどう?」
「ユゥがいいなら、それでいい。」
メイリンは素直に頷いた。
「七日、もう経ってるよね。」
僕は心の中で日数を数えた。正確に言うと、今日の正午で丸七日。こういう場合は当日から起算するから、
昨日の夜で喪が明けた計算になる。しまった半日損した。

メイリンの顎を軽く持ち上げると、今度は抵抗しなかった。桜桃のような美味しそうな唇に、僕のそれを重ねる。
貪って、全部食べてしまいたい。いつもより性急に深く口付け、メイリンの柔らかい舌を、甘い口中を味わう。
こうしてメイリンに触れるのは、一体どのくらいぶりだろう。衣から立ち昇るかぐわしい香りに、
その体の細さと柔らかさに、唇の甘さに陶然とする。こうして唇を合わせているだけで、うっかりすると
達してしまいそうだ。

「あ……こんなところで、それ以上は、だめ……。」
メイリンは僕の腕の中で体をくねらせた。その視線はとろんと蕩けて、濡れて艶めいている。僕を押し返そうと
する腕の力はとても弱くて、まるで誘っているかのようだ。
「ふた月も、君に触れてなかった。これ以上焦らされたら、死んでしまいそう……」
メイリンは大きな瞳をしばたかせて、不思議そうに聞く。

「ユゥも、そういうこと、したくなるの?」
「なっ……!!」
何言ってるの。あどけなくさえ見える表情で、何てこと言い出すの。
「だって、誘うのも命じるのも、いつも、わたしだけだった。」
メイリンは少し拗ねたようにそう言う。
「あ……、ぼっ……!!」
あるじはメイリンで、僕はその下僕だった。そういう決まりだったでしょう。僕はあまりのことに、
口をぱくぱくさせるばかりだ。
「別に、ユゥから誘ってはだめ、なんて言ったことないし。」
何言い出してるの。どうしてこの期に及んで、そんなこと言うの。健全な若い男の性欲嘗めてんの。
めちゃくちゃにされたいの。それとも僕をめちゃくちゃにしたいの。
メイリンはいつも上手に僕を壊す。

「君が好き、好き、すき。欲しい、欲しい、ちょうだい──!」
力の加減も何もかも忘れて、思いっきり彼女の身体を抱きしめた。華奢なメイリンの感触と香りが僕の全身を
満たす。彼女のほっそりとした両腕がゆっくりと僕の背中を撫でて、ぎゅっと抱き返してくれたときには、
なぜだか泣きそうになった。もしかすると本当は、泣いてしまっていたかもしれないけど、そんなことは
もう憶えていない。
メイリンの裙の合わせ目をより分けて足の付け根をまさぐると、そこはすでにしっとりと熱く濡れていて、
僕の指を迎え入れた。
少し湿り気の残る梅園の下草の上に彼女を押し倒す。ちょっと恥らうような表情を見せたけれど、それ以上の
抵抗はもう無かった。

爆発寸前の僕は余裕もなく、綺麗に着飾ったメイリンの襟元を緩めることもなしに、脚を開かせた。
慌しく自分のそれも取り出して、潤みの中心に押し当てる。充分に濡れていても、久しぶりのそこは、
記憶よりもずっと狭かった。
「ひっ……! いっ……! あ、あぁ……!!」
僕に貫かれてメイリンは、激しく身悶えた。桜色の衣に包まれたままの胸が、大きく上下している。
まるいその膨らみに誘われるように手を伸ばし、それから捏ね回すように揉みしだいた。
頬には、うっすらと涙の跡がある。ばかみたいだ。僕がつれなくて泣いちゃうなんて。僕はいつだって
君に夢中じゃないか。こんなにも。
僕は舌を出して、薄い塩の味がする涙の跡を舐め上げる。メイリンの悲しいことは全部、僕が食べてあげたい。
177: ユゥとメイリン10 6/8 2012/07/03(火) 20:25:07.65 ID:drYjBdNg(7/10)調 AAS
「痛い? メイリン。」
僕の方は沸き上がる快感と多幸感に、気が遠くなりそうだ。僕の問いかけにメイリンは、ぎゅっと閉じていた
目をうっすらと開く。
「さいしょ……だけ。いまは……いたく、ない。」
動かずにいられたのは、その辺までが限界だった。僕の中で少しでも長く愉しみたい気持ちと、早く頂点を
極めたい気持ちがせめぎあっていたけど、どちらもメイリンの魅力には勝てるはずも無かった。
「メイリン、君の中……、すごく、キツい……。気持ちよくて、もう出ちゃいそう……。このまま、
中に出して、いい?」
「だめっ……、任地についたら、たくさん……することがある……。まだ、だめ。」
激しく突き上げられる中でも、メイリンはそこのところはきっぱりしていた。『まだ』ってことは、
『そのうち』があるってことだ。僕はそれだけで満足して頷き、最後までメイリンを責め立てる事に集中する。
限界は、すぐに来た。

「あぁっ、ユゥっ、ユゥっ!」
高く細い声に耳朶を擽られながら、彼女が纏ったままの下衣の中に精を吐き出した。

     *     *

柔らかな日差しが二人を包み、早春の風が汗ばんだ肌を柔らかく撫でていた。
「あ…あ…、こんなところでは、駄目だって言ったのに……。」
恥ずかしげにそう抗議するメイリンは、それでも僕の腕の中に抱かれたままでいる。
丸く小さな白梅の花弁がいくつも舞い降りる頃になっても、離れるのが勿体なくて身体を動かすことが出来ない。
「だめ、って言う割には、いつも結局は許してくれるよね、メイリンは。」
「もう。ユゥはいつもずるい。」
僕の言葉に、メイリンはぷっと頬を膨らます。
「ずるいのはメイリンだ、いつだって。」
きっと僕は、メイリンのためなら炎の中にさえ飛び込んでゆくのだろう。ともかくずるい。可愛いのは、
それだけでずるい。
「僕はメイリンが、好きなだけ。」
いつもなら恥ずかしいこんな台詞も、肌を合わせているうちはするっと口に出せてしまう。きっと、
メイリンの肌が暖かくて、気持ちがいい所為だ。

メイリンは僕の衣の襟の辺りをもじもじと弄びながら、頬を染める。
「あ、あのね、ユゥ。わたしと結婚するって言ったの、嘘じゃない、よね?」
「そっちこそ。」
取り消されたくないのは僕のほうだ。
「えっと……、わたしがユゥの家に嫁ぐのではなくて、ユゥがわたしのところに、婿入りしてもらうことに
なるの。いい?」
「ああ、そういえば、そういうことに、なるだろうね。」
細かいことは考えてなかったけど、実際にはメイリンはこの国の皇族のすっごいお姫様なんだから、僕の方が
メイリンに合わせることになるのだろう。
「それから、領主はあくまでわたしで、ユゥはその夫。……でも、ユゥのこと大切に、するから。」
「僕は君の傍にいて、君の手助けをしてあげる……そういうこと?」
メイリンが南山の領地を得たのも、メイリン自身が頑張ったからだ。そのことについて異論は無かった。
メイリンは嬉しそうな表情で、うんうんと頷く。
「うん、そういう、こと。」
178: ユゥとメイリン10 7/8 2012/07/03(火) 20:27:08.45 ID:drYjBdNg(8/10)調 AAS
それから急に体を起こして、神妙な顔で言う。
「そして、これはとっても大切なことだけど、ユゥは、わたしの他に妾を置いてはだめ。」
「めかけ?」
「二番目以降の、妻のこと。」
僕はちょっと考えた。妻と言うのは大抵、一人なものではないのか。
「僕ら桂花の民の間では、一人なのが普通だと思うけど。」
「違うもん! ユゥの一族の男たちも、みんなこっそり妾を持ってるの! わたしちゃんと、調べたんだから!
でも駄目! ユゥはだめ!」
メイリンは顔を真っ赤にして叫んだ。メイリンはいつも、妙なことに詳しい。
「……ユゥが他の女の人ともするなんて、わたし、耐えられないもの……。」
急にしおらしくなって俯くメイリンを、僕は危うく押し倒すところだった。僕はメイリンのくるくると
良く変わる表情に弱いみたいだ。
「そんな風に言われたら、どんな約束をするより効きそうだ。ねえ、メイリンの方は?」
「わたし?」
メイリンは自分に話題が振られることなど、予想もしていないようだった。
「メイリンの方は、他の夫を持つつもりなの。」
「まさか。生涯たった一人の夫に仕えることこそ女のよろこび。母上がいつもそう仰ってる。貞節を
守ることは、当然のつとめ。」
メイリンは薄めの胸を張って言った。
「つまり、メイリンには僕だけで、僕にはメイリンだけ。そういうこと?」
「そう、そう、そういう、ことなの。」
僕の言葉にメイリンは、ぱあっと花がほころぶように笑う。

でも、なんだろう。何かがひっかかる。何かを、ずっと前に言ってたような……?
「そうだ、確かメイリンは『そういう普通は嫌いだ』って言ったんじゃ、なかったっけ?」
随分前のことだ。僕とメイリンが初めて会った夜に、メイリンがそう言った。僕はえらく酔狂なお姫様だと
思ったんだっけ。
「それはっ……! だって、ちゃんと選ぶためには、多少の試しは、許されるべきっ……!!」
メイリンはかっと顔中を朱に染める。
「『ものは試し』?」
たしかあのとき、メイリンはそう言った。
「そう、そうっ!! 試してみて、わたしが気に入り、ユゥが気に入れば、夫にしていいって、そういう約束、
だったもの!!」

はあ?!
そんなおいしい話、聞いてないし。断じて、聞いてない。
「わたしはすぐに、気に入ったと伝えた……。でも、ユゥからの返事は、ずっとなくて。」
メイリンはぷっと頬を膨らます。
「だって聞いてないんだから、仕方ないよ。僕が聞いてたのは、『勘違いするな』とか、『身分を弁えろ』
とか、あと『メイリンはいずれ、相応しい家格の男に嫁ぐ』とかもあったっけ。」
そのときの気持ちを思い出して僕は少し、溜息をつく。
──あれは全く、かなりの拷問だった。
「だからずっとメイリンのことは、好きになっちゃいけない女の子だと思ってた。」
それでも、好きで仕方がなかった。綺麗で可愛くて、すっごいお姫様なのに思い遣りがあって優しくて、
でも危なっかしくて、いつも目を離せない。
「メイリンは、僕のものにはならないんだって……。今の関係も、すぐに終わってしまうものなんだって、
思ってた。だから、あんなこと。」
「あんなこと?」
メイリンは澄んだ瞳で聞き返す。僕は少し恥ずかしくなった。
「その……メイリンが、邸を空けて遠くへ行く前、僕は君に乱暴した……!」
あれこそひどい暴走だ。ひとりで何もかも抱え込んで、自分だけで何かを終わらせようとした。
「何もかも、終わらせたかった。僕自身さえも。叶わないなら、これ以上好きになりたくなかった。君に
嫌われてしまいたかった。そして君だけに、罰されたかった。」
179: ユゥとメイリン10 8/8 2012/07/03(火) 20:29:29.36 ID:drYjBdNg(9/10)調 AAS
メイリンは僕の話を聞くと、きゅっと形のよい眉を寄せた。
「あの、馬鹿兄……!」
メイリンが、敬愛してやまない兄上のことを悪し様に言うのをはじめて聞いた気がする。
「ユゥのことを、散々悪く言っておいて……!! 自分が、嘘を吐いて話を混ぜてたんじゃないか……!!」
予想外の怒りの矛先に、僕はちょっと戸惑う。
「蒲州でもしつこく、やめておけとか、あいつにその気はないんだとか!! 鬱陶しいったら!! わたしには、
ちゃんと伝えたから黙って待てとかきつく言ってきて……、ああ、騙されたー! だーまーされたー!」
いつか仕返ししてやるー!!とか、大層な剣幕である。
可愛いくて最強な妹を怒らせたユイウ様のことが、少しだけ心配になる。うん、勿論自業自得だけど。

「ねえユゥ、じゃあもしわたしの申し入れが正しく伝わっていたら、もっと早く返事をくれた?」
「間違いなく。」
メイリンはそれだけでは満足せず、もっと踏み込んだ答えを求めてくる。
「いつ頃には、くれた?」
「メイリンの方は、いつ頃返事したの。」
「うんとね、ユゥの手枷を、外した日には。」
僕はぶっ、と噴き出した。思ったより随分、早かった。それは僕の憶えている限り、この邸に来て
三日目のことだ。
「決断が、早いんだね。」
僕は憶えておこうと思った。メイリンは、いざという時には決断がとても早いお姫様だ。
「だって、なんだかいいと思ったんだもの。一緒にいて楽しいし、お喋りしても楽しいし。」
メイリンはそこできゅっと唇を噛む。
「でも、ユイウ兄様は、ユゥは桂花の民の男だから、自分のクニを滅ぼした軍師の娘に対して、
わだかまりがあるんだって言ったの。父上様も、ゆっくり待ってあげなさいって。だからわたし、
ずっと待ってたの。」

うわあ、なんというまことしやかな嘘。確かにそういう気持ちがあったことは否定しない。本当に
メイリンの兄上は、僕のことをよく観察してる。
「確かにそういう風にも思ってはいたけど、メイリンから夫にしてもいいって言われてたら……見境なく、
即答してたと思うよ。結局は誰も、メイリンの魅力には勝てないもの。」
「他の誰も、必要ない。わたしは、ユゥだけでいい。」
メイリンは、極上の笑みを浮かべて言った。そんなところに、やっぱり勝てないと思う。
考えてみると、初めから負け通しだ。そしてそれも、悪くないと思ってしまうあたりが、すっかり参って
いるっていうんだろう。
それも仕方がない。だって、メイリンは、メイリンなんだもの。

     ──続く──
180: 2012/07/03(火) 20:32:01.06 ID:drYjBdNg(10/10)調 AAS
以上です。

年度末からの生活激変により、自分的にはいいところで滞ってました。
落ち着いてきたので続き。今回は数日後に次まで投下します。
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