[過去ログ] 自衛隊がファンタジー世界に召喚されました 44章 (1001レス)
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691: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:34:39 ID:??? AAS
え……ダメですか?
692: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:35:18 ID:??? AAS
読み切り中編

元1だおー

バディのいた風景

大陸の地に散った日本人ならざる日本人達に捧ぐ
693: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:36:12 ID:??? AAS
某県某市 陸上自衛隊某教育隊

僕、竹内孝明が自衛隊に入隊した理由は三つあった。
一つは、三年前に召喚された日本が大陸の覇権、というより資源確保のための『帝国』との戦争に事実上勝利したこと。
事実上というのは、停戦≠ネらば受け入れる用意がある旨を帝国特使が日本国政府に伝え、
消耗しきっていた双方は『帝国』の大陸からの撤退という譲歩により戦争の一応の集結を見たからである。
ネリェントス攻略作戦失敗や、その後の笠間議員の在日米軍密議事件で世間が揺れている頃の話だった。
もう一つは、不景気だったこと。自分のような高卒に、各種手当てのついた公務員の身分は魅力だった。戦争さえないなら特にだ。
最後に、これがもっとも大きかったのだが、自衛隊で純粋に特殊な経験をしてみたいという冒険心だった。
これは戦時中から考えていたことで、学校では変人扱いされていたけれど、
将来特に何かやりたいことがあるかと聞かれれば何もない僕にとって、
戦争さえなければ自衛隊はこの世界のあちこちに行くことのできる数少ない職業であり、それはとても興味のそそられるものだった。
あえて並べればこんなものだが、正直なところ、
大学で勉強する熱意もなく、かといってニートにもなりたくはない、というあまり誇れた動機ではなかった。
694: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:36:42 ID:??? AAS
そんな自分だから、教育隊では地獄を見るという漠然とした不安もあった。
けれど、入隊してから僕を待ち受けていたのは、予想外に早い、未知との遭遇だった。
そう、僕が知らない内に、この日本という国は、色々と試みていたみたいで……

今日は教育隊に来て二ヶ月のもう夏真っ盛り、つまりそろそろ野外総合演習や期末点検も近づいたある日だった。
訓練場に区隊集合している僕はどこか物寂しげなラッパ吹奏を聞きながら、降りていく日の丸に不動の姿勢で敬礼をかざしていた。
一個中隊が揃って遠くの国旗に向かっている様子は、客観的に見ればかなり壮観ではないかと思う。
国旗降下の終わりを告げる小気味いいラッパを聞いて、各班ごと解散、という区隊長の言葉に班長らがそれぞれの班員に課業終了を下達していく。
真夏の暑さに首筋に汗をかき、睨むような表情ばかりだった新隊員らに笑顔が咲く。
国旗降下が終わった後、新隊員のやることは決まっているのだ。
飯か風呂かPX。班当直や区隊当直、中隊によっては中隊当直を除く新隊員らにとってのリフレッシュ・タイムの始まりだ。
695: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:37:14 ID:??? AAS
「レプ!」

僕は振り返ると真っ先に後列の『バディ』に声をかけた。
後列に『バディ』を並ばせるようになったのは、別に日本人が格上だとかいった理由ではなく、
教育隊として、どう見ても斉一にならない異種族″ャ成の『バディ』を前列に並ばせるわけにはいかなかったからだ。
僕の声にピクンと耳が反応した『バディ』がこちらに跳ねてくる。

「あい! レプ二士!」

たどたどしいが、元気に満ちた言葉で応えたのは、僕のバディ、レプだった。
一見すると十三、四歳くらいの赤毛の少年に見えるレプは、作業帽から可愛らしい犬耳をぴょこりと覗かせ、
尻にはふさふさの尻尾が、特別に切り込みを入れられたズボンから生えている。
彼は『ワーウルフ』……獣人族の一人だった。
他の隊員、つまり僕の同期達も、自然とそれぞれのバディと連れだって思い思いの課業後の予定を話していた。
696: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:37:46 ID:??? AAS
「俺達食堂行くけど、他行く奴いねえ?」

同期の一人が声を上げた。

「……今日の献立は何だ?」
「おめえらエルフ好物の野菜カレーだぜ」
「……共に行こう。我が盟友よ」

エルフ族のセティスが随分と堅苦しい言葉遣いで言うと、彼のバディの坂本が苦笑する。
食堂へ行く六人が、ジャンケンで指揮者を決めて隊列を組んで歩いていく。指揮者はダークエルフのルシスだった。
教育隊では、屋外での単独行動は基本的に禁止されている。
必ず、二人以上で隊列を編成し、指揮者を立てて歩調を合わせて目的地に行進せねばならない。
面倒この上ないが、それも教育の一環で、それで金をもらっているのだから仕方がない。
しかし、自衛隊の深緑の作業服姿で美しい顔をしたエルフやダークエルフ、獣人族などの多種多様な種族が、
一様に歩調を合わせて歩いている光景は異様なものがあった。
僕たちはもう見慣れたが、二ヶ月前ほどではないにせよ今でも外柵沿いにはマスコミの車などが止まってカメラを向けていた。
日本が召喚されてから諸々の事件・事態の責任を負って前内閣が総辞職した後に新しく就任した内閣は、
反戦融和政策を打ち出し、管理下にある大陸からの難民受け入れなどを積極的に行った。
697: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:38:26 ID:??? AAS
前政権が国を守るために必死になって半鎖国政策をとってきたのを、
資源問題も解消に向かいつつあり、更に戦争が事実上集結したとなっては意味を成さなくなり、
召喚された日本は大きな転換期を迎えていた。
戦時中から問題だった広大な大陸の管理(支配・統治という言葉はタブーらしい)
のコスト増大と自衛隊の兵力不足にも抜本的な解決策を検討するとし、その一環として採用されたのが『外人志願者制度』と呼ばれるものだった。
危険な大陸の未開地へ正規の自衛隊員を派遣するリスクというものを今までに思い知らされてきた政府は、
日本の絶対防衛圏内のみに正規自衛隊部隊を配置し、その他は特務部隊によって維持・管理すべきだとの防衛大綱の見直しが決定されたのだ。
特務部隊とは、少数の正規自衛官を指揮官とし、その隷下に日本国に忠誠を誓った異種族の隊員を置くという前例のない試みだった。
国会やメディアでもこれは大きく取り上げられ、日本国籍を有さない他民族に武器を持たせることの危険性や法的な不備について議論が紛糾した。
しかし、予想外に国民世論は割れた。反対意見の方が若干ではあるが少なかったのである。
ネリェントスや停戦間際の帝国の乾坤一擲の反撃による死傷者の数に、
国民に一部の反戦団体のような偏ったものではなく、全体として厭戦意識が上昇していたため、
何より大幅なコスト削減により自分達の税負担の少なくなるこの制度への支持率が高まったのだ。
698: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:38:57 ID:??? AAS
戦後、自分の国を守るのに自分達の血を流さない伝統は、ここでも生きていたのかもしれない。
教え子を戦場に送るな、と叫んでいた団体は、この制度に反対としながらも、かつてのようなデモや抗議をしなかった。
自分の教え子でなければ、誰が死のうがどうでもよかったのかもしれない。
いや、どうでもよくはないが、命の優先順位はあくまで日本人が一番であり、異種族は二の次だったのは事実だろう。
命に貴賤はないと叫んでいたのは、いったい誰だったのだろう。そう感じる者は多かったが、口に出しはしない。
誰もが自分の血を流さず、税の負担も少ない夢のような案を否定できない立場にあったのだ。
戦争というものが現実の存在となったとき、理想論がどれほど無力なものかを思い知り、打ちのめされていた日本人に浮上したのは、
自分の国は自分の手で守ろうと立ち上がる気概ではなく、いかに自分の手を汚さずに身を守るかというエゴイズムだった。
699: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:39:29 ID:??? AAS
「間隔ほちょー数えっ」

唱うような美声で、ダークエルフが歩調を取っているのが聞こえる。
可決されるまで、日本人の誰もがこの制度の決定的な問題点を懸念していた。そう、果たして志願者が集まるかどうかというものだ。
帝国を撃退したはいいが、管理という詭弁を弄し、実効支配を敷くこの日本という国の自己中心的な国家政策に、
賛同するこの世界の人々がいるわけがない、というのが一般的な認識だったのだ。
しかし、予想を大きく裏切り、志願者は殺到した。
試験採用枠二千に対し、志願者の数は二万を超えていた。
主として獣人族・ダークエルフ族・淫魔族・吸血鬼・領海内の一部マーメイドなどで、
志願種族は全部で二十種族に登った。種族全体で動ける者全員が志願した部族さえあった。
しかし、マスコミも取材はするものの、あまり大きく報道することは無かった。
後ろめたかったのだ、日本人の誰もが。いや、後ろめたいのではない。情けないのかもしれない。自分達の手で自国さえ守れないという事実に。
かつて発足したばかりの自衛隊がそうであったように、彼ら外人隊員達に、国も国民も無関心を決め込んだのだった。
戦争が終わったのが大きかった。国民の大多数は再び国防から関心を失いつつあったのだ。生々しい現実から目を背けたかったのだろう。
日本人は昔から、臭い物には蓋という、血の教訓を次に生かせない民族だった。
そんな国のために、命を捨てる覚悟などする気は、僕には毛頭ない。
700: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:40:03 ID:??? AAS
自衛隊に入ったのも、就職難だからで、別に国が守りたいわけではなかった。
しかし、二ヶ月を過ぎて、僕の心には、自分自身言い表しようのない違和感のようなものが芽生えていた。

「わぅー! レプもかれーは大好きですぅ」

パタパタと尻尾を振りながら、レプが僕を見上げてくる。頭一つ分、彼とは身長差があった。
なら一緒に行けば良かったのに、と思うが、それが彼の僕への気遣いだというのは分かっているから、あえて何も言わない。
『バディ』 自衛隊で使われる、運命共同体となることを義務づけられた二人組の呼称。
日本の旗を持つ以上、自衛隊員として、そして日本人としての最低限の素養が必要だとされた彼らには、
三ヶ月の教育期間が設けられ、そこで正規の新隊員と共に教育を受けることでそれを身につけることになった。
その一期生の一部が編入されたのが、僕の教育隊、それも僕のいる中隊だった。

「レプ、カレー食べたいなら今日PX食堂の方でカツカレー安い日だよ?」
「わぅー!? それは本当なのでありますか!?」
「……昨日話したばっかりだったろ?」

PX行く奴いねえ、との同期の声を聞き、そちらに歩いていく。
……会った時のことを思い出すと、この二ヶ月で彼らと僕たちは驚くほどの強い絆を持ったように思う。
701: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:40:45 ID:??? AAS
新隊員過程を異種族の世話をしながら過ごすなど聞いていなかった僕たち第二中隊の新隊員らは当初、
彼らと初めて会った時、どう接すればいいかわからなかった。
先に隊舎について居室で待機していた彼らとの体面。
僕の場合、レプとの出会いは、後から他の同期に聞いた話と比べれば、すんなりとしたものだった。
君が……レプくん?
居室に入った僕の目に飛び込んできたのは、まるで野良犬のように窓際のベッドの一つに丸くなって寝ている可愛らしい少年の姿だった。
気配に気付いた彼は、目にもとまらぬ身のこなしで跳躍し、僕の目の前に着地すると、犬が行儀よくお座りしたような姿勢で、
私物の入ったバッグを抱えた僕を曇りのない真っ直ぐな瞳で見上げた。
あい! よろしくおねがいいたします! ごしゅじんさま!
今振り返れば、すんなりとはいったけど普通ではなかったな。
でも、他の同期達のように、高慢なエルフに貴様は我が盟友にふさわしくない!≠ネんて言われなかっただけ良かったのだろう。
彼らとの生活が始まってから、いざこざは絶えなかった。
数え上げればきりがないが、レプに限ってみれば、まず、入浴の風習がなかった。
702: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:41:22 ID:??? AAS
獣人族であり、流浪の民の出身の彼は、生まれてからずっと水のほとんどない砂漠で育ったため、
日本に来るまでバケツ一杯以上の量の水をみたことさえなかった。出会った初日、班長に引率されて行った浴場で、
身体の洗い方をまるで幼児に教えるように教えてやったのが、レプとの関係の始まりだった。
たーいんわ、わがくにのへいわとドクリツを守るジエータイのシメイをジカクし……つねにとくそーをあきない……
そこ、あきない、じゃなくて、やしない、だよ
わうー……ムズカシイ
自分も右も左も分からない新隊員で忙しい中、レプの面倒まで見なければいけない生活は想像以上にハードだった。
エルフ族やダークエルフ族などと違い、人間らしい教育をほとんど受けていないレプは特に無知な分野が多かった。
飲み込みは早いものの、時としてそれは僕を苛立たせ、思わず彼に辛く当たってしまうことも多かった。
タカアキ……この教程にかいてあること……
それくらいなら隣の居室のダークエルフのあいつに教えてもらいなよ。あいつは字が読める
わぅー……アイロンかけてる途中だから話しかけられなくて
僕だって今は靴磨いてんだ! いちいち俺なんかに頼るなよ!!
最初は僕に限らず、バディの世話に不満を漏らす新隊員は少なくなかった。
しかし、それは入隊式を境に次第に少なくなっていった。理由は一つ、過酷すぎて互いに支え合わねばやっていけないことに気付いたからだ。
703: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:41:54 ID:??? AAS
僕にとってそれが具現化したのは、戦闘訓練が始まった頃だった。
総合訓練場での血反吐を吐くような戦闘訓練の後の隊列を組んでの駆け足の中、
体力の限界に達した僕は今にも倒れそうな状態でよたよたと走っていた。
竹内ぃ! てめえ何さぼってんだ? あぁ?
班長の怒号と共に、蹴りが尻に叩き込まれる中、隣にやってきたのは、レプだった。
タカアキ、ショージューを……
死にかけている僕を心底心配そうに覗き込み、そっと僕の手から小銃を取り上げる。
ずしりと重いこの六四式小銃さえなければ、ただの駆け足でしかない。なんとか僕はその日の訓練を乗り切った。
……ごめん
わう?
訓練後の武器手入れの時、僕は思わずそう呟いていた。
レプはずっと二丁の小銃を抱え、僕の横を併走してくれた。励まし続けながら、決して見捨てることなく、嫌な顔一つせずに。
冷たく当たる僕を、何の打算もなく支えてくれた。僕はその時初めてバディの意味を理解したのかもしれない。
わぅ……ひきがねしつぶの組み立て……
貸せよ
わぅ?
ったく、なんでこんなややこしい造りになってんだろな、この銃は……ほら、できたぞ
……ありがとうタカアキ
いいよ、こんくらい
レプと僕はそれ以来、何をするにも一緒だった。最初は面倒に感じていた日本の生活の指導も、今ではむしろ楽しいくらいだった。
704: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:43:11 ID:??? AAS
レプは、純真無垢な少年だった。
僕は今まで、ここまで真っ白な心を持った人間を見たことがない。
喜怒哀楽を隠さず、誰かを騙したり、陰口を囁いたりせず、無条件に人を気遣い、とるに足りない些細なことに感動する。
僕は親友というものを、どこか嘘くさく、馴れ合いの中に生まれる幻影のように感じていた。
今では、それが自分が誰も信じず、見返りがなければ人と関わりを持とうとしない心の貧しさゆえに、
親友というものを持ったことがなかったからではないかと思うようになっていた。
自衛隊という閉鎖世界で、過酷な生活と訓練に忙殺される中、人との関わりだけではなく、人を頼り、同様に助けなければならない環境は、
人は、一人では何と無力なことなのかを思い知らせ、そして、人は一人ではないから大きなことをなしえることを肌で理解させる。
レプは、僕が生きてきた十八年で、初めてできた親友なのかもしれなかった。

「タカアキ。カツカレー! かつかれー!」
「はいはい。分かったよ」

僕らはPXに向かって行進を開始した。
身長差は関係なく一分間百二十歩、歩幅は七十五センチ、腕の振りは前に四十五度、後ろに十五度。
指揮者はレプだ。
705: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:44:19 ID:??? AAS
「タカアキ、明日はどこへ行くわぅ?」
「お前はどこ行きたい?」
「わぅ! もっかいエキマエの焼き肉食べ放題に行きたい!」
「いつもいつも安上がりな外出だなぁ」
「わぅ? 嫌わう? あ、お疲れ様です!」

すれ違う三曹にぴしりと敬礼をするレプ。
上官に欠礼は許されない。指揮者になって雑談しながらそういったことにきちんと気を配れるようになれば、自衛隊生活が馴染んできた証拠だ。

「タカアキ殿、レプ」

背後から隊列に加わってきた同期の姿に僕は後ろをちらりと一瞥する。
ダークエルフの志願者、ルールカだ。
まだ少年の幼さを残す、僕らと同年代の新隊員だった。班は違うが区隊が同じだから、レプほどではないが仲の良い相手だった。
僕の班の十二名の内、六名が亜人種などの異種族だった。
獣人のレプが一人、ダークエルフが二人、エルフが一人、インキュバスが一人、竜族が一人だ。
706: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:45:38 ID:??? AAS
異種族が半数を占める僕の所属する第二教育中隊は、他中隊から『ゲテモノ中隊』と蔑んで呼ばれ、
柄の悪い他中隊隊員との間で乱闘騒ぎが起こったこともあった。
食堂で列に割り込んだ他中隊員をハーフエルフの隊員が注意したところ、
日本人様に指図するんじゃねえ、と相手が逆ギレし、
その態度に激昂したハーフエルフのバディの隊員がそいつに掴みかかったのを発端に、
不良隊員達と『ゲテモノ中隊』こと第二中隊との間で警衛隊が駆けつける程の全面戦争に発展したのだ。
精霊魔法がテーブルをひっくり返し、ビースト化した獣人たちが不良どもを千切っては投げる阿鼻叫喚の修羅場だった。
中核になっていた二十人が警衛隊に捕まったが、何故か特に罰はなかった。
第二中隊長の棚村一尉は、若い頃を思い出して実に爽快だったぞ、我が中隊の圧勝だったようだしな、
とその性格ゆえに三佐に昇進できないという噂を肯定する言葉を翌日の中隊朝礼で残し、それ以来このことは一種のタブーになった。
喧嘩では第二中隊に勝てないことを証明したと一部の新隊員は喜んでいたが、将来的に三曹の昇進に響かないか心配する者もいた。
707: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:46:27 ID:??? AAS
「ルールカ、どうしたんだ?」
「シゲ殿が明日皆で海水浴なるものへ行く者がいないか探しておられたのですが」
「シゲちゃんが? ああ、そういや結構前にそんなこと計画してたな」
「タカアキ殿とレプはどうなされる?」

とても同い歳とは思えない老成した口調で、ルールカは尋ねてくる。
自衛隊は縦社会だが、反面、横の繋がりも強固だ。回覧板を回すわけでもないのに、こうして情報があっという間に浸透する。
また、概して志願者は正規隊員、つまり僕のような純正日本人隊員に対して敬意を払う傾向があった。
堅苦しいからやめようや、とある隊員が提案したが、宗主国の人間なのだから尊称されて然るべき、と返されて断念したらしい。
高校を出て間もない多くの新隊員は、宗主国、という言葉の意味を知らなかった。
尊称されようが、されまいが、第二中隊の新隊員同士の結束は硬くなったし、次第に誰も気にしなくなって今に至っている。

「わぅー! 海海ー!」
「行きたいか?」

大きく頷くレプは、どうやら砂漠育ちで海が珍しいらしかった。
海水浴場なら焼きトウモロコシとかかき氷とか売ってるだろう、と教えると目を輝かせた。

「では、私の方からシゲ殿にお伝えしておきましょう」
「ああ。よろしく」
「わぅー!」
708: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:47:07 ID:??? AAS
二二五○(午後十時五十分)

ベッドに入った状態で、僕らは一日を締めくくる儀式を迎えようとしていた。
居室の外の廊下から、非常階段を下りてくる当直陸曹の足音が静まりかえった隊舎に微かに響き、
ドアを開ける音と共に廊下に立っていた今日の一班の班当直の新隊員が代表して気をつけの号令を廊下に響かせる。

「報告します。一区隊、班当直三名を除く総員三十三名、事故無し、現在員三十三名。就寝準備完了」
「ん、各班ごと消灯」

若い当直陸曹は本来なら確認すべき居室内の新隊員らの姿を確認することなく、それだけを残してさっさと去って行ってしまう。
二ヶ月を過ぎ、もうミリミリに締め上げなくてもいいだろう、と若い当直陸曹は気をきかせてくれたようだ。
夏制服に教育隊の班当直を表す、白い下地に青い線の一本入った腕章を着けた班当直の姿が居室の入り口に立った。
この夏場に驚くほど白い肌のエルフの若者、セティスだった。
入隊当初、エルフ特有のプライドの高い性格が災いし、班内で一番揉めた人物だった。
709: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:47:51 ID:??? AAS
まず、エルフと同等か、それ以上の種族は人間と竜族以外はいないという選民意識を持っていた。
防衛庁と外務省、更には文部科学省の協議の結果、
外人隊員の中での民族差別の一掃は日本国憲法の内容からしても絶対条件とされていたため、
種族別に部隊を分けることはあえてしなかった。
そのため、エルフとダークエルフが衣食住を共にするという、
この世界の常識からすれば狂気の沙汰に等しい部隊が誕生することになったのだ。
教育隊での僕らのような正規隊員とのバディ制度も、これに関係している。
あくまで日本人と同じという意識を持たせることが重要だとされていたのだ。それはマスコミへのアピールという側面ももっていたように思う。
入隊当初、面と向かった対立はなかったものの、エルフとその他の種族との目に見えない隔たりは僕らの悩みの種だった。
他にも、ダークエルフは孤立するし、竜族は恐れられるし、獣人は常識がないなど、問題は山積していた。
食堂では、綺麗に種族ごとに席が分かれ、その現実が表面化していた。
だが、さして教育隊は事態を重く見ていなかった。
そもそも、教育隊という場所はそんな単独行動が許されるほど甘い課程ではない。
雪解けが訪れたのは中隊対抗駅伝大会の前の頃だった。
食堂での他中隊との乱闘騒ぎの後ということもあり、ゲテモノ中隊に負けるなという共通意識が駐屯地内に蔓延していたのだ。
710: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:48:30 ID:??? AAS
中隊朝礼で、中隊長は言った。
おめえらは負ける
事実、そうだった。
エルフ族は日本特有の蒸し暑い気候は不慣れで、長距離走はとても無理だった。
竜族は元の姿に戻らねばただの人と変わらないし、あの姿では走ること自体無理な話だ。
頼みの綱は獣人族だが、自衛隊の駅伝大会は原則的にグループ走だ。
つまり、三人一組、五人一組などで一区間を走り、全員がゴールしない限りタスキを渡せないのだ。
第二中隊は大会の公平性を期すとして、単一種族でのグループ走を教育群司令部から禁止されていた。
獣人族だけがぶっちぎりで差をつけるという戦法は通用しない。
中隊内で、エルフ族の立場が悪化した。
頑なな彼らは、自分達だけで練習するばかりで、編成表の多種族と顔を会わそうともしない。
そんなある日、怨敵とされるダークエルフ族の新隊員が訓練場のエルフ族の集団に一人歩いて行って、こう問いつめた。

中隊の名誉と、お前達エルフ族の名誉と、どっちが重いんだ?

睨み付けてくるエルフ達に怯むことなく、そのダークエルフは冷静だった。

恥知らずなダークエルフよりは名誉に厚い!

エルフの一人が吐き捨てるように言い返す。
ダークエルフは静かに首を横に振った。
711: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:49:27 ID:??? AAS
俺は中隊の名誉の方が、そしてニホンの名誉の方が重い。
このニホンという国に部族は救われ、安住の地を約束してもらった。俺の不治の病だった妹も救ってもらったんだ。
その恩に報いたい。
だからここに志願した。こうしてジエータイインとして取り立てて頂いた以上、部族の誇りや他種族への恨みは二の次だ

エルフ達の表情は次第に変わっていく。

俺はこの中隊を愛している。
暗殺者として孤独に生きてきた俺を仲間として迎えてくれたこの中隊を。
お前達は愛していないのか?

その日が、中隊にとっての転機、いや、もしかしたらこの世界でも歴史的な転機だったのかもしれない。
ぽつり、ぽつりとだが、エルフ族は課業外の合同練習に参加するようになってきたのだ。
僕の班でもセティスが加わり、グループ走のメンバーが初めて全員参加で練習が行われるようになった。
夏に突入し、セティスは少し走っただけで汗だくになって息を切らした。
高校時代に陸上部だった同期は、セティスの弱点を見つけ出し、そこを強化するメニューを組んだ。
セティスは身軽で瞬発力はある。足りないのは肺活量だ。すぐに肺活量を増やすには腹筋を鍛えるといい。
区隊のホープであるレプも、セティスのことをいつも気遣った。
僕は僕で、彼の筋肉痛が酷くならないように、入浴後のマッサージや湿布貼りなどに協力した。
712: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:50:24 ID:??? AAS
こうして中隊が一つにまとまっていく中、遂に迎えた駅伝大会。
第二中隊は参加チーム十五チームの中、七位という結果に終わった。
大会終了後、しょうがねえな、と苦笑する僕ら正規隊員の横で、泣き崩れる隊員達がいた。
エルフとダークエルフが、共に肩を抱き合って、泣いていた。
ほとんどの異種族隊員達が悔しさのあまり、涙を流した。そこに種族の壁はもうなかった。

セティスは今では皆のことを『盟友』と呼び、末代まで語り継ぐと大真面目な顔をして話す、相変わらず高慢だが憎めない奴だ。

「消灯する」
「うん、おやすみ」

別に決められているわけでもないのに、電気のスイッチに真正面から向き合い、
まるで魔法でも唱えるかのような真剣な眼差しでスイッチを切るエルフの姿は、いつ見ても笑いを誘った。
真っ暗になった居室内で、ボロのエアコンの音だけがうるさいが、もう慣れた。
今日は華金、明日は休養日だ。新隊員にとって一週間で一番嬉しい日である。
ややあって、十一時を回ったことを知らせる消灯ラッパの吹奏が心地よく耳に入ってきた。
今日は炎天下での基本教練という、戦闘訓練の次にやりたくない訓練だったためか、身も心も疲れ果てていた僕は、
尾を引くような長い消灯ラッパの音を聞き終わらない内に、夢の世界へと旅立っていた。
713: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:51:32 ID:??? AAS
翌日

○八三○(午前八時三十分)

私服に着替え、当直室で外出証を受領した僕らは、正門前に隊列を組んで行進していた。
海水浴に行くことになったのは、僕とレプ、起案者のシゲちゃんこと重松二士を含む十人だった。
全員がそれぞれのバディと一緒で、計五組のバディが共に外出する形になっていた。
レプは入隊当初、難民として日本に渡航した際に、NGO団体からもらったダボダボの上下ジャージしか服を持っていなかった。
入隊してからしばらくたって初任給が支給された時、僕が似合いそうな服を買ってきてやってから、ようやくレプは外出できるようになったのである。
生まれてから私服というものを持ったことがなかったレプは、初めて服を着ると飛び上がって喜んだ。
それはユニクロのセールで買った安物揃いだったのにもかかわらず、
彼は洗濯してから大事にアイロンをかけ、たたんでロッカーにしまうほど大事にしていた。
レプを始め多くの異種族隊員らにはファッションという概念がないため、
日本社会に順応できるようにそういったものを教えてやるのもバディの務めの一つだった。
何度か教えたものの、いまいちよく理解はしていないレプだが、
今日も僕が買ってきたジーパンとTシャツ、靴はコンバースという無難な格好で出てきていた。
714: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:52:16 ID:??? AAS
認めたくはないが、自衛隊の服を着ていないレプは、美少年と形容して差し支えない容姿をしていた。
情熱的に赤い髪の毛はシャンプーをするようになって輝きを増し、さらさらと風に揺れ、汚れを知らない円らな瞳は母性本能をくすぐられる。
耳がある関係で、レプのような獣人族の隊員は僕らほど髪の毛を切らないで良いという規則が作られていた。
それに加えて中性的な華奢な体つきをしているため、今のレプはまるでボーイッシュな女の子のように見える。
だが、獣人族のレプはこの貧弱そうな身体に驚くべき身体能力を秘めている。
戦闘訓練など、他中隊がわざわざ見に来るくらいだ。
伏せた状態で前方の約十五メートルのボサまで速駆け移動するときなど、
班長が号令を発してから二秒もかからずに移動しているという人間離れした能力を見せ、
最後の突撃発起の時は、全員敵を威圧すべく雄叫びを上げながら突撃を敢行するのだが、
猛獣が獲物に襲いかかるかのような雄叫びに、初めてのときなど同じ班員が腰を抜かしたほど迫力のある声を駐屯地に響かせた。
反面、こういった泥臭い訓練に不向きなのがエルフ族の隊員だった。セティスは僕と同じくらい戦闘訓練を嫌っている。
だが、セティスは実弾射撃で中隊トップを争った。第二中隊の射撃の上位十人は、全員エルフ・ダークエルフ族だ。
ちなみに実弾射撃の成績は、僕は五十点中二十六点、レプは二点だった。レプはクリック修正の計算法が理解できなかったのだ。
715: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:53:10 ID:??? AAS
「左向けぇー止まれ」

指揮者の重松二士から号令をかけられた僕らは警衛隊員の前で一糸乱れぬ教練動作で停止した。

「外出証の提示」

重松二士の指示に、しっかりとズボンに縛着した身分証と、その中に入っている青いプラスチック・プレート式の外出証を警衛隊員に見せ、
いいよ、と気軽な警衛隊員の声にそれを再び大事にポケットにしまう。

「右向け前へー進め」

同じように隊列を組んだまま、僕らは正門を出た。
昔から自衛隊の街として、新隊員の若者を受け入れてきたこの街も、おそらく困惑していることだろう。
バスに乗り込んできた亜人種の面々に、バスの運転手と乗客は目を丸くしたのを見て、僕はそう思った。
716: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:54:18 ID:??? AAS
海水浴場に到着してから、レプは目の前に広がる海原に大はしゃぎだった。
泳ぐということを娯楽とする感覚がない異種族の同期達は、買ってきた海パンと露出した肌に最初居心地悪そうにしていたが、
日本人の多くが気にせずに泳いでいるのを見て、慣れてきたようだった。
休日ということもあり、海水浴場は賑わっていた。
田舎で、綺麗な砂浜が自慢のここは、シーズンとなれば県外からも人が集まるらしい。
今回、重松二士を中心に若い連中が集まれば、ナンパをしようという話が持ち上がらないでもなかったが、
教育隊にいる以上、そんなことは無理なことは皆重々承知で、純粋に泳ぎにきたのだった。
また、海に馴染みのない種族に海での遊び方というものを教えたいという同期思いな重松二士の思いもある。
僕は一通り泳いでから、浜で一休みしていた。
照りつける日差しをしばらく肌に感じたかった。
隣でレプが、買ってきた焼きトウモロコシをがつがつと食べている。
紺色の地味なスクール水着のような海パンに少年体型のレプは、どこからどうみても自衛官には見えなかった。

「あの、ちょっといいですか……?」

女性の声だった。振り向くと、そこには四、五人の水着の少女達の姿があった。
声をかけられる理由が分からなかった僕は思わぬ状況に、一瞬ぎょっとしたが、ややあって彼女らの目的が判明した。
彼女らはバッグからカメラや携帯を取り出し、僕ではなく、トウモロコシを幸せそうに食べるレプに視線を注いでいる。
717: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:55:38 ID:??? AAS
なるほどね。
苦笑した僕は、代表者らしいメガネをかけた少女に言った。

「こいつでしたら、いくらでも写真撮っていいですよ」

高校生くらいだろうか、僕が言うが早いか少女達は歓声を上げてレプに群がった。
レプは自分に何が起きているのか分からず、三本目のトウモロコシをくわえたまま、きょとんとしている。
そのあどけない様子が彼女らをヒートアップさせたらしく、カメラの撮影音が激しくなった。
気付けば、波打ち際でも同じようにダークエルフの同期が女の子達に写真を撮られていた。
やれやれ、いいよな顔のいい連中は。
僕はそう思いながら、同時に、理由はどうあれこうして好意的に彼らの写真を撮りに来る日本人がいることが嬉しかった。
入隊してからの彼らを取り巻いた外出先のフラッシュのほとんどは、マスコミの後先考えない人権侵害に等しいものだったのだから。

自衛隊内の雰囲気はどうですか?
日本国政府に忠誠を誓われたそうですがどんな気持ちですか?
最前線に送られることに不安はありませんか?
一部にあなた達が入隊を強制させられたとの報道がありますが事実なのですか?

浴びせられる容赦ない質問からバディを救うのも、僕たちの務めの一つだった。
ある日娯楽室のテレビで異種族隊員に関するニュースをやっていて外人志願者制度の闇に迫る≠ニいう特集が目にとまった。
718: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:56:21 ID:??? AAS
そこで、外出中だったのかインタビューというものが何なのかよく分かっていない様子の異種族隊員を捕まえた女性レポーターが、
日本国政府から部族の方々へ圧力があったらしいということについてどう思われますか、と唐突な質問を投げかけていた。
いったいどの種族・部族なのか、そして政府が圧力をかけたという真実も曖昧なその質問に、
困惑したウサギ耳の異種族隊員は助けを求めるように隣のバディらしい若者を見つめる。
身分証を縛着しているチェーンがポケットに見えたことから、明らかに正規新隊員だと分かる。
正規新隊員は見るに見かね、バディの手を引いてその場を去ろうとした。
カメラはドキュメンタリーな感じで二人を追い、
女性レポーターがまるで悪をあばこうとする決死の取材だといわんばかりの厳しい口調でマイクをその正規新隊員に向ける。
どうして連れて行くのですか? 聞かれて何か都合の悪いことがあるのですか?
全員が志願して入隊したと話しても信じないことを分かっているのか無言だったその隊員は、
顔にモザイクがかかっていたが、私服の様子などからみて僕らと同じように若い新隊員であることがうかがえた。
最後にはその新隊員は執拗なテレビクルーに頭に来たのか、撮るな、と不機嫌そうに言ってカメラに手を被せた。
映像のテロップには、監視についていた私服自衛官に連行される亜人種の若者、と浮かんでいる。
演出というものが、どれだけ真実をねじ曲げているのかを知った僕らは、背筋に冷たい汗が流れるのを感じたのだ。
719: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:57:05 ID:??? AAS
「やれやれ……ニホンの貴婦人方は熱烈な歓迎ぶりですね」

レプがビーチバレーをしましょうと女子高生達に拉致されていくのを見送ってからしばらくして、ルールカがやってきた。
苦笑を浮かべるその端正な顔は、男の僕が見ても格好良いと思う。

「平和なもんだよ」

僕は遠くでビーチバレーをしているレプと少女達を眺めながら少し憮然として言う。
好意的なのは嬉しいが、彼女らは政治や国防など頭になく、ただ可愛い、カッコイイという感覚で異種族隊員達を見ているのだろう。
例え彼らの立場を理解していたとしても、国防や戦争というものを現実として感じている者はあの少女達の中には、まずいないだろう。
この国で、全てを分かって彼らを好意的に受け止めている者はいないのではと思う。

「素晴らしいことです」

立ったまま静かに応えるルールカを、僕は見上げた。浅黒い肌が、エキゾチックな魅力を醸し出している。
ルールカはいつも冷静で表情の変化に乏しいため、冗談なのか本気なのか分からなかった。
720: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:58:08 ID:??? AAS
「なぁ」
「はい?」
「こんな国の平和ためなんかに、死ぬんじゃないぞ……」

僕は本音を漏らしていた。
死んでほしくなかった。
かけがえのない、同期達に。
こんな、血の上に成り立っている平和を、当たり前のような顔をして享受している国のためなどに。
民族としての誇りのない国民、責任回避に躍起になる政府。
その犠牲者が、彼らだ。
誰の責任でもなく、全ての日本人の責任だった。
後からいくらでも、私は反対していた、と言えるのだから、自分の発言や無関心に気をつかう必要はない。
目を背けようとすればいくらでもできる。
政府が悪かったといえば自分の責任は無くなると思っている無責任さ。
それは、民主主義の弊害などではなく、日本人の意識の歪さによる結果だ。
徴兵制の復活には反対、しかし、自分が戦場に行くのでなければどうでもいい。
純粋なレプ。憎めないセティス。誠実なルールカ。
何故彼らに、この国の人間ではない彼らに背負わせたんだ。
政府でも帝国でもない、僕たち日本人全員が彼らを巻き込んだのだ。

「タカアキ殿」
「……なんだよ?」
「人を殺したことはおありですか?」

ルールカの言葉を理解するのに、僕はしばらくかかった。

「な、ないよ!」
「そうですか」

ルールカは微笑んだ。
話題の過激さとは裏腹に、涼しげな表情だ。
しかし、何故突然こんな話を始めるのか、僕には分からなかった。
721: 元1だおー 2006/04/08(土) 15:59:32 ID:??? AAS
「素晴らしいことです」
「何がだよ?」
「私は大勢この手で殺めました」

さらりと口からこぼれたその言葉に、僕は息を呑んだ。

「それが当たり前でした。部族のため、妹のため、数え切れないほど殺しました。戦場で、暗殺で……」

ルールカは僕の隣に世間話をするような自然な様子で腰を下ろした。

「私には歳の離れた妹がいます。
妹は生まれつき身体が弱く、暗殺者として使い物にならなかったため、病に伏したとき、
口減らしに死なせてしまおうと部族で話し合われました」

僕は何も言えなくなっていた。
この涼しげな美しい少年に、そんな血なまぐさい過去など、まるで想像できなかった。

「私は妹を救うため、より多く殺すようになりました。帝国の命令以外の、私怨での暗殺依頼も請け負って」

彼は波打ち際を見つめながら、思い出すように語り続ける。

「私は妹のためだけに生きていました。妹のためなら、どれだけ汚濁にまみれても辛くはなかった。
そして、ただ一つ私は願っていました。
妹が病から解放され、いつか、生まれてからずっと笑顔を見せたことのない妹が、笑ってくれることを……
それさえ叶えば、私は地獄の業火に焼かれてもよかった」
722
(1): 元1だおー 2006/04/08(土) 16:00:16 ID:??? AAS
滔々と語るルールカの横顔を、僕はじっと見ることしかできなかった。

「それは思いもよらない形で叶いました」

「ある日私の部族は帝国軍の撤退を助けるために、ある街を死守せよと命令されました。
押し寄せてくる異世界の魔軍を相手に、戦えば死、退いても帝国軍に敵前逃亡で処刑される運命でした」

「どの道助からないと絶望した私は、最後は妹のそばにいてやろうと決め、防衛拠点の神殿に隠れました」

「部族の仲間も、もう疲れていました。親兄弟、妻や子供を亡くした者ばかりだったのです。
私達は、最後の時を待ちました。そして、神殿の扉が開いた」

「なだれ込んできた魔軍は、私達を殺そうとはしなかった。それどころか……連れ去られた妹は、一週間後不治の病から解放されて戻ってきた」

「私は問いました。あなた達はいったい我らに何を望みますか、と。こんな厚遇を受けて、何の見返りを要求されるか怖かったのです」

「しかし彼らは苦笑してこう答えました。敵にならなければそれだけでいいよ≠ニ」

「そして開放されて数ヶ月が過ぎて、私は見ました。妹が、歩けるほどに回復した妹が、一人、花を摘んで微笑んでいる姿を……」

「それから新しく、私には生きるべき理由ができました……」

ルールカが顔を上げてこちらを見た。

「それが、このニホンという国に尽くすことです」
723: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:00:56 ID:??? AAS
空をカモメが長閑な鳴き声を出しながら飛んでいく。
僕は、鈍器で頭をなぐられたかのような衝撃に襲われていた。
分かっていたはずだった。彼らが、全てを納得してここにいることを。
日本人としての後ろめたさに、自分が心のどこかで、彼らに日本を嫌いになって欲しいと望んでいたのだ。
嫌って、嫌々任務についている、それなら、日本人は納得し、それなら仕方がない、政府が悪いのだと言い逃れができる。
政府を批判することで、自分に責任がないのだと錯覚できるのだ……。
だが、彼らはそうではない。そんな安直な覚悟ではないのだ。
それが僕には、最も辛いことだった。

「わぅー! ミユキさんずるいわぅー!」
「あーもうっ! レプくんかぁーわいい!」

遠くの無邪気なレプの表情が胸を突いた。
僕は、この国が余計に嫌いになった。彼らが愛するこの国が、憎くてしょうがなくなった。
724: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:02:42 ID:??? AAS
二週間後

課業外、教練用作業服のプレスが終わってアイロン台を返納するために娯楽室に行くと、大勢の同期達がテレビに釘付けになっていた。
どうしたんだ、とその中にいたルールカに尋ねると、反乱だ、とどこか興奮した口調で答えが返ってきた。
反乱、という言葉がいったい何をどう表すのか推測できなかった僕は、急いでアイロン台を集積棚に返納すると同じくテレビに向かった。
テレビ画面には、大陸各地域で武装蜂起、というテロップが大きく浮かんでいた。
まさか、と僕は思った。
帝国との戦争の事実上の終結に影響を受けたのは、日本だけではなかったのを思い出したのだ。
帝国の大陸からの撤退は、日本と同盟関係にあった反帝国陣営やパルチザン組織にとっても大きな転機だった。
日本の自衛隊が届かぬ地域も多かったとはいえ大陸を掌握していたため、表だった変化は現れなかったものの、
政権交代後の政策変化により自衛隊の撤退が大陸のあちこちで始まった結果、地域紛争が発生し始めたのは、以前から問題になっていた。
そして、今日のこのニュースは、ついに日本に対して宣戦布告をした新興国家連合の出現を伝えていた。
725: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:04:33 ID:??? AAS
敵であった帝国と違い、かつて味方として自衛隊と行動を共にしていたため、
自衛隊の弱点も、補給が十分でないことも全て分かっているのだ。
そして、反戦融和政策をとる現政権なら、自衛隊に守られていなかった在留邦人を人質にとれば、
独立も、日本への一方的な食糧支援の打ち切りも認めさせることができると踏んでいたようだ。
反旗を翻した新興国家群は、大陸でも穀倉地帯として日本が重要視していた場所であり、日本政府としても手放すことができない。
しかし、人質となった在留邦人の数は何と一千人を超えていた。
戦争が終結したため、民間企業の進出や、様々な団体が視察や研究目的に駐在していたらしい。
急遽、撤退中だった自衛隊は再編成され、交渉と平行して邦人救出作戦の準備も進められるであろう事を軍事評論家の中年男が話している。
また、不穏な動きを見せている国や武装集団はこれだけではないという資料もフリップに示していた。
一通りの説明が終わった後、政府の対応は、と映像が切り替わる。
防衛庁の記者会見で、制服の肩に幾つもの星を光らせた統合幕僚長が映し出される。
幕僚長は深刻な表情で、今後の自衛隊の動きを説明した。
まず、人質をとって要求を突きつける新興国家群に対して精鋭の自衛隊部隊を急派して対応すること。
そして次に、不穏な動きを見せる国や武装集団を暗に示し、そういった脅威集団を牽制すべく、
その危険のある地域へ、一時的な措置として外人志願者部隊を派遣すること。
726: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:05:19 ID:??? AAS
外人志願者部隊……?

僕たちは、バディの姿を確認した。
そんな、そんなことが……あるわけが。
そう思った瞬間、聞き慣れない調子のラッパ音が隊舎を駆けめぐった。
起床でも消灯でも国旗降下でも、昼休みを知らせる間延びたラッパでもない。
どこか、まとわりつくような緊張と不安を聞く者の心の奥底に混入させるようなラッパだった。

「非常呼集ラッパだ……」

娯楽室の誰かが、呟いた。
727: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:06:03 ID:??? AAS
二日後

「少ないな……荷物」

ベッドの上に纏められたレプの荷物を見下ろして、僕は思わず呟いていた。
夕焼けが居室を朱に染め、ぽつんとベッドの上に置かれた雑嚢やテッパチが物悲しい陰影をつくっている。

「おそれおおくもテンノーヘーカからたまわった装備であります」

レプはどこで覚えてきたのか、多分意味を分かっていない時代錯誤な言葉で答える。
これからは私服は必要ないからといって、レプは僕に、まるで返納物品のように綺麗に折りたたんだ私服を渡した。
全然僕のサイズと違うこの服を、どうしろってんだ。
苦笑して僕は、余裕があるなら持って行け、と突き返した。
レプの中では、私服は自分のものというよりは僕から貸してもらっているような感覚だったのかもしれない。
もともと新隊員の私物などロッカー一つに収まってしまう程度の物しかないのだから、少ないのは当たり前だ。
しかし、レプの私物はそれを顧みてもなお少なかった。
他の異種族隊員にしても同じだった。あっても、部族に伝わる魔法具や武具といった類だ。
刀剣類は規則で持ち込めないので、そういったものに限られてくる。
空っぽになった古びたロッカーは、見ているだけで人の心をその中身同様に空虚な気持ちにさせる。
728: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:06:57 ID:??? AAS
それはレプも同じだったのか、すぐに閉めると、無くさないように紐で首にかけていた鍵から紐を取って、鍵穴にさした。
最後に、ロッカーの扉にマグネットで貼ってあった『レプ』という名札を少し見つめてから、はがした。
ベッドのベッドパッドは洗って畳まれ、クリーム色の毛布の端は、まるで機械で切り取った断面のような見事な四角形を調えていた。
バウムクーヘン、上手になったな。最初はあいつ、たたみ方さえしょっちゅう忘れてたのに。
初めてこの居室に入ってきたときと同じ姿になったレプのベッドとロッカーを見ると、
ここにレプという少年が暮らした痕跡は何一つ残っていないことに気付く。
当たり前のことだ。しかし、僕にはそれが怖くてしようがなかった。
もし、レプと生きた時間が幻だったと言われれば、そうかもしれないと思ってしまいそうで、不安だった。

「レプ……」
「わぅ?」
「怖いか……?」

聞いてはいけない問いだった。
だが、そのとき僕は、聞かなければいけないような気がしていた。
バディの不安を、恐怖を、不平を、不満を、あらゆる思いを聞き、記憶に刻まなければいけない。そう思っていた。
今日、僕たちのバディは、旅立つ。いや、そんな生やさしい言葉ではない。
これは『出征』だ。
政府は異常事態に対してなりふり構わなかった。
現在教育中の外人志願者隊員を総動員し、
大陸北部で不穏な兵力集結を続ける都市国家群と、その同盟の王国の軍に対する牽制とする。
新興国家群のテロに等しい武装蜂起への対応に正規部隊を向かわせる余裕のなさにより、
驚く間もなく僕たちのバディは出発準備を命令されていた。
あと少しで教育隊を卒業するこの時期に、あまりにも意外な形でバディは異国の地へ出征していく。
正規隊員である僕らを残して。
729: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:07:51 ID:??? AAS
「怖いわぅ」

レプは正直に答えていた。そもそもこの獣人の少年は、嘘をつくということを知らない。

「でも、大丈夫わぅ」
「なんで?」

レプは天井を見上げ、うーん、と考える仕草を見せた。
舌っ足らずな彼には、説明ほど難しいものはないのかもしれない。
彼はややあって、ぱっと表情を輝かせて僕を見た。

「タカアキや班のみんなや班長や、ミユキさんや、焼き肉屋のおじさんや、それとそれと……」

やはり考えはまとまっていなかったのか再び、うーん、と呻る。

「いっぱい、いっぱいの人のためなら、レプ、戦える」

一点の曇りもない、いつもの純粋な少年の顔だった。

「ニホンのために戦ったら、天国の父様や母様も、レプのこと、きっと誇りに思ってくれる。ニホンの人も、きっと喜んでくれる」

彼は、日本にきてからの記憶をたどっているのか、遠い目をした。
僕はこのバディのことをあまりにも知らなかった。彼がどんな少年時代を送ってきたのか、断片的にしか知らない。
それでも良かった。
重要なのは、レプにとって、どれだけ楽しい思い出がこの教育隊での日々にあったかなのだ。
僕と過ごした時間を、十八年の人生で最も楽しかった日々を、彼も同じように思ってくれているかなのだ。
それ以外のことは、僕にとってはどうでも良かった。レプは僕のバディ。唯一の、親友。それだけでいい。
例えルールカのように人を殺めた過去があろうが、目を背けたくなるホロコーストを経験していようが、大切なのは、ただそれだけだ。
730: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:08:24 ID:??? AAS
「レプの国は、この国。この緑がたくさんあって、広い海がある、この国。レプ達を殴ったりしない、優しくしてくれる人達のいるところ」

レプは、今まで見せたことのない落ち着いた、大人びた表情を浮かべた。

「だからレプ、大丈夫わぅ。大丈夫、だけど……」

その落ち着いた表情が、実は悲しみに暮れているものだと理解したとき、レプはよろりと僕の胸に顔をうずめた。
絆創膏を貼った、か細い指が、僕の作業服の襟を握る。
ぺたりと耳は垂れ、尻尾も力無く丸まっている。

「タカアキと、離れたくない……」

消え入るような声で、レプは呟いた。
僕は何も言わず、そっと彼の赤毛を撫でてやった。少しだけ、尻尾が嬉しげに揺れた。
何故こんな別れ方をさせる。
何故一緒に卒業させてくれない。
何故大陸の連中はまた戦争を始めたんだ!?
誰かも分からぬ相手への憎悪が膨れあがった。
しかし、それはすぐに消える。
作業服越しのレプの頬の温かさが、そんな考えてもしょうがないことを、溶かしてしまうようだった。
僕は撫でる手を、そっとレプの頬に添えた。
レプと目線を合わせて、溢れそうになる涙を気取られないように、ぐっとこらえて、笑う。
731: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:08:56 ID:??? AAS
「レプ。俺とお前はずっとバディだ。俺も……お前のためなら、どんな敵が相手でも、戦える」
「本当わぅ?」
「ああ」
「……ありがとう」

夕日に照らされるバディの顔を、僕ははっきりと記憶に焼き付けた。
どこかから誰かが泣く声と、怒鳴るような歌声が聞こえてきた。
以前、酒に酔った中隊長が隊舎に乱入して唱っていた軍歌だ。
調子はずれに、涙混じりの男達の歌声は、次第に隊舎に広がっていった。
732: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:09:37 ID:??? AA×

733: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:10:14 ID:??? AAS
いつの時代だよ、これは。今は二一世紀だぞ。
だが、その馬鹿馬鹿しさの中にある皆の思いが波になって襲いかかり、僕は堪えきれなかった。
結局僕も、バディを抱きしめて、わんわんと泣いた。

黄昏の中、三ヶ月を駆け抜けたこの教育隊、この居室で……バディがいた風景で。
734: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:11:06 ID:??? AAS
それからの僕の卒業式までの日々は、まるで抜け殻のような日常だった。
大陸の情報は邦人を人質を取られた新興国家群の武装蜂起に関するものばかりで、
外人志願者部隊の情報は、出港の様子が取り上げられただけだった。
海上自衛隊の輸送艦は正規部隊に回されていたのか、二千人の外人志願者部隊の乗り込んだ船は、民間から徴用したフェリーなどだった。
埠頭に集結し、乗り込んでいく亜人種達の顔は一様に使命感に満ちていて、
旧式の装備品を統一性もなく支給されている部隊の士気とは思えなかったのが印象的だった。
マスコミを最初から信用していないのか、防衛庁の広報官や外人部隊の指揮官の正規隊員がインタビューに答えるだけで、
生の異種族隊員の声は流れなかった。
熱を入れて報道されるのは、大陸の人質の安否だけだった。
それ自体は悪いことでは別にない。
例え異種族隊員の情報をもっと流したところで、彼らの熱意が国民に正確に伝わりはしないだろうという諦めもある。
国民にとって戦争は忌むべき非日常であり、日常を過ごす上で一刻も早く忘れたいものだし、できることなら直視もしたくない。
気にするのは自分達の税負担の増加や徴兵制の復活など、日常を侵されるかどうかの範囲だ。
日本人でさえない異種族の話など、関心があるわけがなかった。
735: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:11:57 ID:??? AAS
僕たち数の半減した第二中隊の隊員達は、静かに期末点検を終え、無気力に卒業を待った。
班長達も新隊員の心の喪失感を分かっているのか、元気のない僕らを怒鳴りはしなかった。
たった三ヶ月の間に、心と身体の一部のようになっていたバディが出征してしまった。
自分達は、どうだ。
安全な日本の駐屯地内で、三食を食堂で食えて、温かいベッドで眠れる。
やりきれないのだ。僕を含めた第二中隊の新隊員達は。

新しい情報が飛び込んできたのは、卒業間近の最後の休養日の風呂上がりだった。
卒業を間近に、今までの訓練課程に比べれば、荷物の整理や床のワックスがけなど、
自由で穏やかな時が流れていたが、第二中隊の隊員にとっては苦痛でしかなかった。
卒業前ということで、他中隊の新隊員らは同期との最後の思い出作りに、
この時期だけ例外となる禁酒規則を破った宴会を密かに行ったりしていたが、
僕らはただ、一日中駐屯地内の居室で寝ころんでいた。人数が半分になってしまった各居室は、不気味なほど静かだった。
分刻みの生活を三ヶ月続けてきた中でも、珍しく何もすることがなかった僕は、娯楽室にテレビを見に行った。
その時、同期の一人が娯楽室から血相を変えて飛び出してきた。
どうしたんだ、と聞くより早く、彼は僕を見て叫んだ。

「ロスーキ都市国家群が宣戦布告したぞっ!」

その瞬間僕は全身から血の気が引く音を聞いた。
ロスーキ都市国家群は、危険な兆候が見られるとしてレプ達外人志願者部隊が向かった国だ。
僕は娯楽室に駆け込んだ。
736: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:13:23 ID:??? AAS
ニュース速報で、あの軍事評論家が説明している最中だった。
日本の自衛隊が警戒態勢を敷いている今、無茶な行動には出ないだろうとの予想を裏切り、
外人志願者部隊を引きつけるだけ引きつけて宣戦を布告した都市国家群の思惑は、新興都市国家群と似たようなものだとしていた。
帝国との戦争以来、この世界の弱肉強食の利害関係を忘れ、あまりにも日本は弱味を見せすぎたのが原因だった。
日本の自衛隊を恐れながらも、弱点を知った大陸の権力者達は、弱った獅子の首を取ることを躊躇しなかったのだ。
新興国家群の脅迫に対し、人命尊重の精神で武力行使に出ない日本国政府の対応は、
くすぶっていた火種である都市国家群に、自分達にも日本を相手にして勝算があると判断させてしまったのだ。
支配領域に足を踏み入れても何の抵抗もないことに、安心していた先遣隊二百名は、奇襲攻撃を受けて既に全滅。
撤退をしようにも、本隊はあまりにも相手の領内に深入りしすぎていた。
帝国との戦争を日本に任せ、ひたすらに戦力を温存していた都市国家群の軍は、
四万の大軍をもって千八百名の外人志願者部隊を包囲していた。
合戦を想定していない上、補給線の確保や航空支援なども皆無だった外人志願者部隊は、完全に孤立。
現在も戦闘が継続中らしかった。

「に、二百人も死んだのか……!?」
「嘘だろ!」

娯楽室一杯に集まった同期達が信じられないといった様子でテレビを見ている。
737: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:14:17 ID:??? AAS
これは嘘だ。嘘に違いない。嘘であってくれ。
出征する日のレプの夕焼けに照らされた顔が不意に浮かんだ。
二百人。今この第二中隊にいる新隊員の数よりも多い。
そんなにも多くの、異種族隊員が、死んだ。
もし、その中に、レプがいたら……。
そんなはずはない。レプみたいな明るさだけが取り柄の奴を、先遣なんて重要な部隊に組み込むわけがない。
きっと大丈夫だ。きっと。
だが、今も戦闘は続き、しかも包囲されている。
テレビで見た出港時のあの旧式の装備と、補給の望めない状況下で、どこまで持ちこたえられるか分かったものではない。
その事実と、レプが間違いなくその渦中にいるという現実が、僕の頭を駆けめぐって、絶望という二文字を浮き彫りにした。
今、いったいレプはどうしているんだろうか。
戦闘に参加していないだろうか。負傷していないだろうか。
そこまで考えて、今の自分の姿に気付いた。風呂上がりのジャー戦姿だ。
僕らはいったい何をしている。
同じ自衛官で、同じ教育隊で、同じだけの訓練しか受けていない彼らは、今戦場にいるのに。
僕の中で、何かが切れた。
ざわざわと同期達が話し合う中、僕はある決心をした。
738: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:14:57 ID:??? AAS
「みんなっ!」

僕は娯楽室に響き渡る大声を張り上げた。
一瞬で、同期達は静まりかえった。
僕はつかつかと歩いていってテレビを消し、振り返って宣言した。

「俺はバディを見捨てたくない」

同期達が息を呑むのが分かった。

「お、俺達だってそうさ」
「でもどうしようもねえんだもんよ……」

予想したとおりの反応が返ってくる。

「確かに、な。何もしてないだろ?」
「そうだよ。仕方ない……」
「仕方ない? 何か行動を起こしたのか?」

嘲笑するように同期を見つめ、尋ねる。

「それは……命令だし」

誰かが言ったその煮え切らない言葉に、頭が一気に沸騰した。

「お前らバディより命令の方が大事かっ!? 命令に逆らったら死ぬのか? この自衛隊に、そんな厳罰あったか!?」

あいつらはみんな、文字通り死ぬ覚悟までしていた。僕らは、言い訳しかしていない。
739: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:15:39 ID:??? AAS
「つまり何もしてこなかった俺達は、ただ命が惜しいだけの腰抜けだ! バディを見捨てて、のうのうとテレビの前で悶々としてるだけのな!」

血走った目で、僕は同期達を睨めつけた。

「……俺はそんなのもう嫌だ」
「じ、じゃあ、どうすんだよ?」

恐る恐る尋ねてきた同期に、ゆらりと視線を向けて、僕は言う。

「直訴すんだよ。俺達を前線送りにしてくれって血判持って、お上にな」

同期達がどよめく。
馬鹿な、おかしい、といった言葉が聞こえた。
そんなこと、どうだっていい。もう僕は自分が正気だなんて思っちゃいない。
どうせ、これからマスコミに嗅ぎつけられて、散々な目を見るのは分かっている。
軍国主義者と罵るがいい。馬鹿な奴だと蔑むがいい。狂っていると恐れるがいい。
僕はもう迷わない。
バディのため……親友のためなら、どんなに怖くても、どんな相手でも、戦えると誓った。
これはその一発目だ。
待ってろ、レプ。
お前には、教えたいことがまだたくさんあるんだ。見せたいものもたくさんあるんだ。
お前は僕より幸せになるべきなんだ。
740: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:16:23 ID:??? AAS
守ろう、一緒にお前の祖国≠。

そして帰ろう……この、お前が愛した、平和な日本≠ノ。

 (終)
741: 元1だおー 2006/04/08(土) 16:19:47 ID:??? AAS
−お断り−
作中の新隊員らのやってることは軍組織として、
許されるものじゃないとかいった批判はご勘弁ください。
742
(1): 元1だおー 2006/04/08(土) 16:25:51 ID:??? AAS
ってなんか横柄な文章だな。
すみません。感想やご批判どしどしください!
743
(1): 2006/04/08(土) 16:29:03 ID:??? AAS
とりあえず乙、そして長いよ!
まぁゆっくり読ませてもらいま
744: 2006/04/08(土) 17:03:53 ID:??? AAS
長ったるいだけの駄文
745
(1): 2006/04/08(土) 17:04:44 ID:??? BE AAS
最後がカコイイ!!
同じ状況に置かれたら漏れも同じことすると思う
746
(1): 2006/04/08(土) 17:13:06 ID:??? AAS
乙です
全編が日本国内の日常で主人公に何も起こらない話でしたね。
ここぞ! とクライマックスを強調したりテンションの起伏が欲しいです。

プロローグで非日常をだーっ!! と飛ばしてから本編に入るなど「つかみ」の工夫があってもいいと思います。
747: 2006/04/08(土) 17:53:17 ID:??? AAS
はいはい民間人は無理解民間人は無理解
748: [age] 2006/04/08(土) 18:20:38 ID:??? AAS
>>743>>745>>746
作者自演乙
749: 2006/04/08(土) 18:23:12 ID:??? AAS
萌えと右翼
750: 元1だおー 2006/04/08(土) 18:48:30 ID:??? AAS
とりあえず不評っぽいですね……右翼かぁ。
751: 2006/04/08(土) 18:59:59 ID:??? AAS
同一の世界だからといって民間人の無理解を執拗に引っ張る時点で、
自衛隊経験がネタの自家中毒を起こしているように思える。
752: 元1だおー 2006/04/08(土) 19:06:04 ID:??? AAS
妙な新境地挑戦意識を持たないほうがいいってことでしょうかね……反省。

いや、私一人を見て自衛隊を誤解しないで欲しいところ……お恥ずかしい限り。

しばらく頭を冷やすことにします。
応募作に思想的な話を全然入れてなくてこっちで暴発したのかも……
753: 2006/04/08(土) 19:15:14 ID:??? AAS
登場人物の境遇と心理描写がうまくできていて、
面白いと思います。
ただ、
思想的な問題についてですが、個人的な感想を言わせてもらえば、
骨組みとしてはよいのですが、短い中に閉じ込めようとしすぎた為に、
味の素の濃すぎるスープのようになってしまったのではないでしょうか?

最後の終わり方についてですが、なんだか熱血バトル漫画みたいで、
それはないんじゃないかな、と。

全体的に改良すればもっと面白くなると思うし、
また、そうするだけの価値もあるのではないでしょうか?
754: 2006/04/08(土) 19:17:26 ID:??? AAS
乙です。
盛り上がった形で終わりってジャンプの打ち切りみたいで…
そこまで書くなら、その先まで書いてよかったのではと。
755
(1): 2006/04/08(土) 19:42:14 ID:??? AAS
小官の小官節を読みたくなってくる
切ないけれども燃える奴が
756: 2006/04/08(土) 19:48:30 ID:??? AAS
>>755
少官自演乙
757: 2006/04/08(土) 20:00:45 ID:??? AAS
思想が強烈過ぎて作品の面白さが半減してる。
なんていうか野暮だね。
思想をもっとスマートに表現する方法を見つけた方が良いと思う。
悪意が露骨過ぎて何度トリップしかけたことか・・・

思想的な告発なら、如何に日本という国が恵まれた国なのか、というダークエルフの
>>722の台詞みたいによりソフトに示したほうが良い。或いは彼らの志願理由に添う形でね。

他に主人公に悪意や告発が向かないのも読者に不快感を与えると思う。
散々責任だとかなんだとか言いながら、何一つそれらの告発は主人公には向いていない。
こういう一人称モノで悪意を主人公にも向けるというのはまず無理なのかもしれないけど
それなら無理に告発するのはやめた方が良い。
読者は主人公(作者)に告発されるだけで反撃する術がない。
こういう一方通行な作品は嫌われるよ。
758: 銀輪 ◆2LyZBX0jcM 2006/04/08(土) 20:15:05 ID:??? AAS
乙です。
同期。
うーん、いい響きですな。彼らの活躍も、見てみたいものです。

では自分も氏に触発されまして、
銀輪部隊、続き投下。
759: 銀輪 ◆2LyZBX0jcM 2006/04/08(土) 20:23:19 ID:??? AAS
フエルバは、温暖な森に生息する。外見上は、何の変哲も無い、ただの樹木の様な印象を受けるが、枝分か
れの付け根に捕食用の「口」を持つ、珍しい肉食植物である。
主に地表に根を張り、稀に樹木の節目に根付いて成長することもある。主茎の長さは最大で65エルヴェ(
1エルヴェはエルフの、耳の根元から先端までの長さである)、直径は8エルヴェになる個体が発見され
ている。
主食は、森に生息する小、中型の動物である。自在に動く根で獲物を捕らえ、強い酸で満たされた「口」の
中へ持っていき、獲物を溶かして吸収する。「狩り」のやり方は独特で、獲物を二匹捕らえ、片方を捕食し
、片方に操り糸のような細い糸を刺し、操ることで新たな獲物を誘う習性がある。この糸には微弱な魔力が
通っており、少しずつ刺した獲物を蝕み、果てには自己の体の一部としてしまう。
森の中でいなくなった恋人と再会する、というナータ地方の昔話「オリョルの森」は、このフエルバの犠牲
者の目撃談から派生したものではないか、という見方もある。実際何件か、ナータ地方において、子供や老
人がフエルバの犠牲になった事例がある。その事例において、まだ息のある犠牲者に繋がれた糸を断ち切っ
り、犠牲者が途端に死んでしまう、という痛ましい事件があった。断たれた糸に通う魔力が、繋がれた犠牲
者の体に死をもたらす、との見方が有力であるが、原因は不明である。
                   『魔法植物の分布と生態』J.H.ウェスリントン著

「・・・つまり、切るなと。」

とてつもなく面倒な任務だった。
いつまた動き出すか判らない操られた隊員はそのままにして、本体を八つ裂きにせよ。増援は、無い。
隊員の命がかかっているとはいえ、戦力は少ない。
しかも、迅速に敵を倒しても、隊員がたすかる保証はないのだ。
大田は怒りのメーターが振り切れて、体の力が抜けていくのを感じた。

「・・・了解、任務開始する。通信終わり」

それだけ言うと、大田は受話器を置いた。

「聞けお前ら、これから我々はあの連中を操っていたハエトリグサの化け物をやっつけに行く。」
760: 銀輪 ◆2LyZBX0jcM 2006/04/08(土) 20:24:37 ID:??? AAS
力ない様子を部下に見せるのは、矜持が許さなかった。大田は努めて意気軒昂に、班員皆に伝わる大声で指
令を下す。

「任務にあたって、班を二つに分ける。小平と林はここに残って連中を見張れ。敵襲の可能性は薄いが、何
 かあったときは無理をするな。・・・見捨てるのも止むなしだ。」

元々分の悪い任務なのだ。無茶はさせたくなかった。・・・それでも無茶なのだが。
命ぜられた二人は、神妙な顔で、勢いよく返事をした。

「他の三人は、俺と一緒に糸をたどって、討伐だ。・・・敵の習性からして、行方不明の連中が生きている
 可能性は、かなり低い。敵を倒すことに集中するんだ。」
「了解!」
「りょ、了解!」
「了解。」

少しどもったのは篠崎だった。強張った顔から怯えが見て取れた。
大田は咎めなかった。任務前に水を注したくなかったし、そんな余裕も無かったのだ。
前進号令と共に、さらに人足の減った銀輪部隊は、操り糸を追って歩き出した。無論、徒歩で。

”大陸”の内陸部、オステン王国の北西には、低い山が連なり、広葉樹林が広がっている。
温暖で住みよい気候であるが、通行が不便なため人の手が余り入っていない地域である。陸上自衛隊は当面
の防衛線としてこの山岳地帯を想定しており、点々と前線基地を創設し、少しづつであるが道路の敷設を行
っている。
この地帯を西に行くと、やがて広大な平原が現れる。オステン王国の街道には山岳地帯を迂回し、南からこ
の平原へ行くルートがあるが、日本はまだこのルートを使わせてもらえない。オステンと正式な国交を結ん
でいないからである。
オステン領に近いこの森に戦線を構築するのも、実はイリーガルすれすれなのであるが。
761: 銀輪 ◆2LyZBX0jcM 2006/04/08(土) 20:27:21 ID:??? AAS
「起伏が激しいな・・・」

そんなことはお構いなしに、大田達は歩いていた。小一時間、すでに糸は道から外れ、まばらな林の中、積
もった腐葉土と草むらの上を走っている。大田は班を先導して、それを辿っていった。

「あ、あの木の根元に引っかかってますよ」

柏が指差した方向を見ると、確かに、大木の根元へ糸が伸びているのが判った。
大田は、その幹の太さに一瞬唖然となる。幹というより、臼のような太さだった。
林の中で、一際大きく見える大樹。養分を独占しているのか、周囲に樹木が生えていなかった。
しかし大田は特に警戒もせず、糸をたどって樹へと近づいていった。

「・・・?」

最初に「何か」を感じ取ったのは、篠崎だった。
縦隊の三番目にいた彼は、その樹の周囲・・・樹木が他になくて開けている・・・に踏み入った瞬間、全身
に怖気が走るのを感じた。自衛官としては臆病、いや小心者の彼だからこそ、この場に走る「何か」・・・

つまり、殺気を敏感に感じ取ったのだ。

「い、一曹!」
「!?」

声をあげた時にはすでに遅く。
突如視界が炸裂し、土と草が跳ね上がる。足元が崩壊し、四人の縦隊は散り散りに吹き飛ばされた。

「ぐわっ!」

一瞬の浮遊感の後、大田は背中から地面に叩きつけられた。
山の地面は柔らかかったが、背中から胸板へ突き抜ける衝撃に、肺が縮み上がるような感覚を覚えた。
朦朧とする頭を二、三回振り、必死に状況を確認しようと努める。吹き飛ばされた方向を見回すと、茶色く
掘り起こされた地面に、点々と迷彩色が見て取れた。
762: 銀輪 ◆2LyZBX0jcM 2006/04/08(土) 20:28:05 ID:??? AAS
「生きてるか、お前ら!」

咄嗟に叫んだ。
その声に呼応して、三つの人影が、のろのろと動き出す。何とか全員生きていた。
心なしか、泣き声も聞こえた気がした。おそらく篠崎あたりが喚いているのだろう。

「退却だ、とにかく退け!」

89式小銃の金座を「レ」に設定しながら、大田は援護の体制に入る。
大田はこの時、自分達は炸裂魔法の類で攻撃された、と踏んでいた。ならば近くに魔術師が隠れている筈で
ある。牽制のため、照準もつけずに引き金を絞った。

「急げ!あの土手の向こうに隠れろ!」

大木の周辺から死角になっている土手を指差しながら、小銃を乱射する。そこは大田達が糸をたどりながら
やってきた方向で、そこなら敵がいる可能性は薄い、と踏んだからだ。
我先にと土手の向こうへルパンダイブする部下達を少々情けなく思いながら、三十発弾倉が空になるのと同
時に大田も逃げ出した。

「なんだったんだ、今のは・・・」
「敵の襲撃じゃないんですか?」
「それにしちゃ・・・」

土手際から頭だけひょっこり出して、双眼鏡で辺りを見回してみる。
それらしい人影は無く、辺りには鬱蒼とした森と、炸裂による僅かな土ぼこりのみが見えた。
しかし、違う発見はあった。双眼鏡で見ると良くわかる。
たどっていた糸は、あの大木の根元から現れていた。兼ねてよりの目標をついに発見したのだ。

「そうか・・・あの木が・・・」
「どうしました?」
「伊上、擲弾銃であの木を撃て。弾頭はHEATだ!」
763: 銀輪 ◆2LyZBX0jcM 2006/04/08(土) 20:28:44 ID:??? AAS
伊上は一瞬呆けた顔をしたが、一瞬睨みつけると我に返り、すぐに行動を始めた。発射器に擲弾を取り付け
、金座を「タ」に設定した。土手のてっぺんに小銃の被筒を据え、狙いを定める。
パン、と軽い音がして弾頭は銃身を離れ、硝煙が飛び散った。
瞬間、命中する筈の擲弾は、その幹に当たる前に炸裂し、その皮を少しだけ吹き飛ばすのみに留まった。

「な、なにぃ!?」

大田は一瞬、目を疑った。擲弾がその幹に到達する刹那。
炸裂で掘り起こされた地面から、一斉に細い蔓が飛び出し、擲弾を阻んだのだ。
蔓の一本が弾頭を起爆させ、HEAT弾のメタルジェットは幹のはるか手前でその威力を殺された。

「め、面妖な・・・」

大田でさえ、目の前の異様な光景にたじろいだ。
無数の蔓が足元をすくったのを、魔法の炸裂と勘違いしていたのだ。
擲弾の爆煙が晴れると、蔓はその幹に絡みつき、動きを止めた。どうやらこれが元の姿のようだ。

「柏、パンツァーファウスト!!」
「はいっ!」

待ってましたとばかりに大声で返答してから、柏はてきぱきとパンツァーファウストの射撃準備にかかった。

「俺たちが注意を引く。合図したら撃て。」

大田は柏と残り、他の二人を土手沿いに大木の側面に回りこませた。
攻撃を阻む蔓をひきつけ、本命のパンツァーファウストをぶつける作戦だった。
手ごろな位置に陣取り、早速伊上と篠崎に射撃を命じる。
伊上はグレネード、篠崎はMINIMIを、照準もそこそこに撃ち始める。
防御にはいった大木の蔓をへし折り、吹き飛ばしていく。蔓は盾のように、篠崎達の正面に集中しつつあっ
た。
それを、大田は好機とみた。
764: 銀輪 ◆2LyZBX0jcM 2006/04/08(土) 20:29:48 ID:??? AAS
「今だ!」

大田が叫ぶ。
しかし、計画通りに行けば発射された筈のパンツァーファウストが放たれることは、無かった。
柏がいるはずの方へ目を向けると、

「いっそーーーう!!」

いつの間にか忍び寄った蔓に足を絡めとられ、逆さ吊りにされた柏が、スリングに結わえたパンツァー
ファウストをぶらぶらさせながら泣き叫んでいた。

「柏ぁ!」

蔦は順調に柏を幹へと持っていく。
枝の分かれ目がバキバキという音と共に裂け、大口をあけて、柏を飲み込む準備を完了させた。
裂けた面の内側は、グロテスクな鮮紅色。ヌラヌラとしていて、生物の粘膜を連想させる色だった。

「柏が食われちゃう!」

篠崎はほとんど恐慌状態だった。

「伊上、枝の分かれ目にグレネード!」

大田は咄嗟に命じた。伊上は何とか照準を合わせ、大田の期待通りの部分に擲弾を打ち込んだ。
捕食に気を取られていたのか、蔦が擲弾を阻むことは無かった。
メタルジェットが裂け目の一部分を焼ききり、爆風で吹き飛ばした。

「う、わああああ!」

柏を掴んでいた蔦が、まるでもだえ苦しむかのように大きく振れる。
不幸にもそのまま投げ飛ばされ、柏は土手の向こう側に転落し、大田達から見えなくなった。
最大の攻撃手段が、戦線離脱してしまった。
765: 銀輪 ◆2LyZBX0jcM 2006/04/08(土) 20:30:32 ID:??? AAS
「一曹、柏が!」
「わかっとる、くっそ!」

悪態をついて大田は小銃を投げ捨て、空手に銃剣を持った。

「一曹!?」
「パンツァーファウストを取りに行く。お前ら、援護しろ!蔓に絡め取られるんじゃないぞ!」
「は、はい!」

それだけ言うと、大田は柏が落ちた土手へと走り出した。
背後では、注意を引くための全力射撃の音だけが聞こえていた。

「ッ!?」

突然右手に反発力がかかる。引っ張られた腕を見ると、手首に蔦が絡み付いていた。無我夢中で銃剣の刃を
当て、力任せに引っ張ると、さしもの丈夫な蔦も削がれるように切り千切れた。

「柏!」

柏の転落した土手には、転がった拍子に腐葉土が掘り起こされ、真新しい地面が真っ直ぐ、点々と顔を出し
ていた。大田がその跡を目で追うと、土手の終わり辺りに泥だらけの迷彩服が倒れていた。
銃剣をしまって駆け寄り、ぐったりとした体を抱き起こす。

「しっかりしろ柏!」

幸い柏には目立った外傷は見られなかった。しかし幾らかの鼻血が、あごを伝って迷彩服の襟を汚していた。
泥と、幾らか血のついた頬を平手で叩いて、意識の確認を行った。
二、三回、大田の平手が往復すると、柏は喉の奥から搾り出すような声を出して、目を開けた。

「い、いっそう・・・」
「大丈夫か、どこか痛むところはあるか?」
「左腕が・・・うぅ・・・」
766: 銀輪 ◆2LyZBX0jcM 2006/04/08(土) 20:31:27 ID:??? AAS
どうやら胸も打ったらしく、柏はヒューヒューと苦しそうに喘ぐ。
大田が少し左腕に触れると、びくりと過敏な反応を催した。よく見ると肘関節から先が、変に捻じ曲がって
いる。

「パンツァーファウストをもらうぞ。」

大田は冷静に、しかしどこか義憤を帯びた声で言った。
彼の肩に絡んだスリングをはずし、幾らか泥が付着した黒い重火器を担ぐ。
それから柏の頭を上げ、胸元を緩めて呼吸しやすいようにした。

「気は確かにあるな?」
「はい」
「苦しくないか?」
「はい・・・」

その返事をもらうと、大田は早速、土手をあがっていった。
班長の後姿に、柏は少しだけ、ぼんやりと感激を覚えた。

「一曹だ、パンツァーファウストを持ってる!」

篠崎が、射撃の手を止めて、側面の土手からひょっこり現れた大田を指差した。

「撃つつもりだ、援護射撃!」

何とかかんとか自分を絡めとろうとする蔦と格闘していた伊上も、無理やり射撃姿勢にはいった。
二人は敵を引き付けるべく、猛然と引き金を絞る。

「人間様に逆らうとどうなるか、見せてやるぞ・・・」

大田は努めて冷静を保とうとしたが、無理だった。柏の惨状を見て、怒りを抑えられなくなっていた。
視野が狭まり、照準具と大木の幹しか見ていなかった。
無論、死角から迫る蔦など、見えようはずも無い。
767: 銀輪 ◆2LyZBX0jcM 2006/04/08(土) 20:32:07 ID:??? AAS
「なぁぁぁ!?」

大田も柏と同じような状態になってしまった。
何とかパンツァーファウストを取りこぼさずにはすんだが、大ピンチだ。
今度こそ逃がすまい、と、再び大木・・・肉食植物フエルバが大口を空けた。

「伊上、もう一回撃てよ!」
「今再装填してるんだ!」

運悪く、ライフルグレネードによる援護が遅れ、大田は「大口」の中身がはっきり見える距離まで吊られて
しまった。
その時、大田は見た。
奇妙な液体が蠢く、怪物の口内、そこに浮かぶ三つの塊。
外形をすっかりなくしてもなお、それは人間と判断できた。鉄帽と、すでに棒のようになった小銃も見える。
無我夢中でパンツァーファウストを担ぐ。逆さ吊りだから、ほとんど背負うような構えだった。
自由な足を開き、バックブラストに配慮した。

「くらえや!」

バム、という音の後に、轟然と爆発が起きた。
口内に吸い込まれるように飛び込んだ対戦車ロケットは、その体内で暴れまわり、内側から幹を破壊した。
液体や幹の破片が飛び散り、大田もあおりを食らって吹き飛ぶ。
脳が揺すぶられ、大田の意識はだんだんと薄れていく。
故郷の家族が脳裏に浮かび、やがてヴェールを纏うように、ぼんやりと消えていった。

「・・・そう、いっそう・・・」
768: 銀輪 ◆2LyZBX0jcM 2006/04/08(土) 20:32:39 ID:??? AAS
声が聞こえる。
だるい。まぶたを開くのも重労働だ。

「しっかりしてください一曹。目を開けてくださいよ。」

やっと開いた、薄ぼけた視界に、鉄帽が三つ写った。

「・・・生きてる」
「運が良かった。吹っ飛ばされた時は駄目かと思った。」
「木に引っかかったおかげで、重症を負わずにすんだんです。」

体を動かすことに挑戦する。ぴりぴりと痛みが走るが、どうってことはなかった。
上体を起こすと、一瞬くらりと眩暈をもよおす。見回すと、三人ともボロボロ。柏は、折れた左腕を、即席
の三角巾で吊っていた。

「大丈夫ですか、無理はせずに」
「いや、大丈夫だ。敵はやったな?」
「はい、バラバラです。周辺に敵影もありません。」
「・・・遺体はどうだ?」
「・・・確かに三人、確保しました。・・・顔は判別できませんでしたが」

全員、顔色が悪い。何とか体裁の取れるよう、現場処理をやったのだろうか。
何ともいえない、後味の悪い空気が漂っていた。
任務には成功したが、銀輪部隊は大打撃を被っている。
皆、これ以上何もしたくなかった。することもなかった。早くここを立ち去りたかった。

「・・・帰るか。」
「一曹、動けますか?外傷は軽そうですが・・・」
「どうってこと無い。操られてた連中がどうなっとるか、早く知りたい」
「わかりました」
「現場の座標を記録しておく。篠崎、距離を測れ。伊上、方角みてろ。」
769: 銀輪 ◆2LyZBX0jcM 2006/04/08(土) 20:34:22 ID:??? AAS
全員無言で、今や本体をバラバラにされ、すでに役割を果たさない操り糸をたどって、大田達は撤収した。
辺りは静かで、そこら中に飛び散った破片と、爆発のあとの消し炭と、諸々の肉片以外、激戦を証明するも
のはなかった。

一言もなく歩き続け、何とか操られた隊員達との遭遇地点にたどり着いた。
測距などをやっていたので時間がかかり、辺りは薄暗い夜の帳が落ち始めていた。

「・・・すみませんでした、我々が不甲斐ないばかりに」
「情報がなきゃ、俺たちだってああなっていた、気に病むな・・・」

比較的早期に本体を破壊できたおかげで、操られていた三人の隊員は正気を取り戻していた。
時を追うごとに、フエルバは操る対象を侵食する。もっと時間がたっていたら、あるいは彼らはあの植物の
虜となってしまっていたかもしれない。それを食い止めたのは、間違いなく大田達の勲功であった。
しかし、大田は憂鬱な気持ちだった。
彼らに「戦死公報」を届けなければならなかったからだ。

「うぅ・・・」

上司を助けることもかなわず、あまつさえ敵に操られて友軍に発砲したのだ。処分は覚悟している。
彼らは口々にそう言った。

「班長、通信はいりました。任務ご苦労、帰還せよ、と。」
「さ、撤収だ。最後尾は伊上。先頭は林。自転車は使えん。どうせ戦死確認でバッタが来る。」

遂に自転車をも打ち棄てた銀輪部隊は、星の瞬き始めた東へと向かって撤収を始めた。
大田はふと疑問に思う。あれがこの世界の日常なのだろうか、と。アレは自然現象なのだろうか、と。
技術や科学で上を行く日本であるが、落とし穴はいくらでも存在するのだ。今日の様な。
自転車で落とし穴にはまりたくはないな、と思った。
770: 銀輪 ◆2LyZBX0jcM 2006/04/08(土) 20:34:54 ID:??? AAS
言葉代わりに 日の丸振って
呼べば答える マライ人
椰子の木陰の休止も済めば
さらば征こうぞ 戦線へ
走れ 走れ 走れ
走れ日の丸銀輪部隊・・・

駐屯地で流行の歌が、耳の裏側で響いていた。
  終
771: 2006/04/08(土) 20:37:16 ID:??? AAS
シャムたんマダー?
772: 銀輪 ◆2LyZBX0jcM 2006/04/08(土) 20:38:26 ID:??? AAS
第三話終了。
最終投稿が2月16日・・・遅筆過ぎて涙が出ますな。
スレもまたいでしまいましたが、何とか終わりました。

「走れ日の丸銀輪部隊」は軽快な雰囲気の歌なので、あまりこんな湿っぽい話にはあいませんね・・・
773: 2006/04/08(土) 20:45:31 ID:??? AAS
こんなん出たよ

銀輪の成分解析結果 :

銀輪の58%は株で出来ています。
銀輪の39%はカテキンで出来ています。
銀輪の3%は罠で出来ています。
774: HAPPY ENDが好きな生粋の一般市民 2006/04/08(土) 21:04:36 ID:??? AAS
>>742
今後は空の具合次第ですか。まあダメポなんでしょうが。
775: 2006/04/08(土) 21:07:11 ID:??? AAS
無理解?門外漢なんだから仕方ないじゃん。
776: 2006/04/08(土) 21:10:24 ID:??? AAS
ルールカでZZガンダム思い出した
決め台詞が「こんなあたしを愛しちゃう」
最後にジュドーとくっついちゃうんだよね
777: 自体験だが 2006/04/08(土) 21:14:25 ID:??? AAS
陸上自衛隊の図鑑(表紙90式)を机に置いといたら、それを見た母が

「こんなの税金の無駄なのよ」

と言った。
親父は俺が軍事関係の書物を買い漁ってるのを見てネチネチ文句言うので

「趣味なんだよこういうのは」

と言ったら

「戦争がすきなんだな、いいか、昔のおじいちゃん達は・・・」

と説教された。
やっぱそういう風潮なんじゃないか、今の日本は。
778: 2006/04/08(土) 21:18:27 ID:??? AAS
佐世保とか軍に関わった歴史のある街では自衛隊への感情も悪くないというが
779: 2006/04/08(土) 21:24:54 ID:??? AAS
軍事に賛成、理解がある人と反発する人がカップルになる可能性は低いんだから
両親が二人とも軍事に反発していてもおかしくない。むしろ両親で意見が違う方が
めずらしいと言える
780
(2): 自体験だよ 2006/04/08(土) 21:59:09 ID:??? AAS
うちの両親も、特に母が自衛隊廃止論者。つか中韓より。

楽しいよ?
根拠無い発言に理由と事実を挙げる度、母の口数が次第に少なくなり、仕舞には「もういい」と何度も言いながら逃げる様を眺めるのは。
781
(2): 自体験だが 2006/04/08(土) 22:05:07 ID:??? AAS
>>780
やめとけ。空気悪くなるから。
俺もお説教はちゃんと聴くぞ。それなりの反論もするが、当たり障りない程度だ。

しかし、彼女というものがいないからわからんのだが

思想とか政治とか軍事を語るものなのかね、恋人達って。
782: 2006/04/08(土) 22:17:55 ID:??? AAS
そんな恋人の会話はガンダム位だから安心汁www
783
(1): 2006/04/08(土) 22:34:55 ID:??? AAS
>>781
安保の世代はそうだったんじゃないかな
784: 780 2006/04/08(土) 22:38:42 ID:??? AAS
>>781
うん、そうする。
論破する度心が痛むのも確か。

私も彼女いないんで断言できないが、二人きりの時間を堅苦しい話で潰されたら、……怒るだろうねぇ。
785
(1): 実体験だが 2006/04/08(土) 23:16:24 ID:??? AAS
>>783
うちの親父は50才・・・直撃?
資本論とか、左翼系の本も沢山持ってる。
天皇制についての本もあったからちょっと読んでみたら、
「天皇制の打倒は資本主義の打倒によって達成される」
なんて書いてあって力が抜けた。
思想的に平行線の人たちとは、いくら論戦しても無駄。
786: 2006/04/08(土) 23:26:12 ID:??? AAS
年寄りになるほど頭固くなるしね。家族は必要が無けりゃ無理に論破する事もないわな。
787: 2006/04/09(日) 01:40:16 ID:??? AA×
>>785

788
(1): 2006/04/09(日) 05:28:56 ID:??? AA×

789: 2006/04/09(日) 08:43:42 ID:??? AAS
>>788
どこのお寺のお坊様ですか?
790
(1): 2006/04/09(日) 10:02:44 ID:??? AAS
HOI2で廃人になりつつある馬鹿の独り言でふが
いちだおー氏
思想臭が薫って正直面白くないでふ
文章そのもの、表現のレベルだけは非常に向上しておられるのでふが
此処等辺りで別方向に作風を変えて見ては如何でふ?
話はできる限り分かりやすく、そして単純な物がよいと思いまふ
791
(1): 2006/04/09(日) 12:07:54 ID:??? AAS
元メソウサこと元1の悪意には読んでいて目眩がする

これでもう半歩だけ踏み出して、
自衛隊経験と「民間」への敵意が虚勢と安直な残虐描写に結びつけば小官2号の一丁上りだね
792: 2006/04/09(日) 12:19:57 ID:??? AAS
>>790
自衛隊とゆーものを扱うのだからどうしても思想とは切っても切れないのではないかと。
ちなみにオイラは右翼寄り。個人的には思想臭が漂っている作品も好きだがなあ。
左右問わずに。

ただここまで書いといて辞めるのはエグいですぜ旦那
793: 2006/04/09(日) 12:24:25 ID:??? AAS
いちだおー氏は分家のラノベスレあたりで武者修行してきたら良いかもしれないな
794: 2006/04/09(日) 12:26:30 ID:??? AAS
>>791
元1だお氏と小官の作品は全然自分の中では結びつかんがなあ。
虚勢と安直な残酷表現を出すだけの作品と同列に考えるのは如何なものかと。
795
(1): 2006/04/09(日) 13:39:50 ID:??? AAS
モノホンの自衛官と話をしたことがないからわからんのだが、
「現場の人間」は本当に右翼的思想を持っているのだろうか。
海自では「海軍精神」というものを古き良き伝統としているようだが。
796
(1): 2006/04/09(日) 13:41:29 ID:??? AAS
右翼だろうと左翼だろうと思想がかった匂いのする作品は詰まらん。
軍板は腐れ自衛官とプロ市民の匂いがきつくていかん。
797: 2006/04/09(日) 13:45:36 ID:??? AAS
>>796
>軍板は腐れ自衛官とプロ市民の匂いがきつくていかん。

そんなもんが気になる時点であなたも匂いを発する人たちと同類なわけで。

>右翼だろうと左翼だろうと思想がかった匂いのする作品は詰まらん。

これは同意だが。
798: 元1だおー 2006/04/09(日) 14:02:31 ID:??? AAS
>>795
大多数はもってません。
たとえもっていても口には出さないんで、
酒に酔ったときに何かの拍子に口からこぼれたりして意外に思ったりすることはありました。
それに関しても、街宣車に乗ってる人たちとはかなり違った感じのものなので、
右翼と分けていいものかは微妙です。
だいたい普通の人と変わりません。変わってるのは私みたいなごく一部です。

>思想がかった話はつまらない
……肝にめいじて出直してきます。
799: 2006/04/09(日) 14:07:36 ID:??? AAS
自衛隊に入ってからSSの中の思想的部分が増え出したように見える
800: 元1だおー 2006/04/09(日) 14:10:26 ID:??? AAS
自分じゃ気づかないものなのかもしれないですね。
801
(2): 2006/04/09(日) 14:49:24 ID:??? AAS
>元1だお氏
「ごく一部の」単なる悪意しか感じられない書き込みの極右極左はほっときましょうや。
これからもがんがってくだされ。
802
(2): 2006/04/09(日) 14:56:17 ID:??? AAS
>>801
よかったのか?ホイホイ>>801なんかとっちまって。
オレはノンケでもかまわず喰っちまう漢なんだぜ。
803
(1): 801とったひと 2006/04/09(日) 15:42:41 ID:??? AAS
気づかんかたよ。801・・・・・・・
もう穴があったら入りたい。
804
(1): 2006/04/09(日) 16:30:28 ID:??? AA×
>>803

805: [age] 2006/04/09(日) 16:42:52 ID:??? AA×
>>802>>804

806: 2006/04/09(日) 17:40:59 ID:??? AA×
>>802>>801

807
(3): 2006/04/09(日) 17:42:14 ID:??? AA×

808: 2006/04/09(日) 18:10:38 ID:??? AAS
Q 元1の思想傾向についてはどうよ?
809: 2006/04/09(日) 18:23:03 ID:??? AAS
Q むしろ小官の思想傾向についてはどうよ?
810
(1): 2006/04/09(日) 18:25:30 ID:??? AAS
>>807
あんた誰?

>不思議と幹部陸曹の場合は『勉強熱心』と言う事で褒められたり尊敬されたりする

軍として当然だろ。自身の職業に詳しいことは良い事だ。
それを不思議だなんて言ってるようじゃ出世は無理だ。
そこら辺、あんたらが普段馬鹿にする娑婆とはかなり違いがありますね。

まあ、曹階級が戦前の以来の精強を維持してるようで、納税者としては安心した。
小官や緑の言うとおりなら相変わらず士官クラスは上に行けば行くほどグダグダのようだが・・・
811: 2006/04/09(日) 18:26:46 ID:??? AAS
>戦前の以来の
訂正:戦前以来の

失礼。
812
(1): 2006/04/09(日) 18:28:33 ID:??? AAS
>>807
疑問はイパーイあるが、こんだけ教えてくれ。

Q1. 戦闘演習は年何回の割合であるの?
Q2. まだ海さんとは仲が悪いの?
Q3. (いわゆるアキバ系の)オタクはどの位の割合で混ざってる?

とくに3。
この前秋葉原に行ったとき、制服姿の自衛官集団を見たので。
813
(1): 2006/04/09(日) 18:41:52 ID:??? AAS
ぷっ
自衛官の萌えオタ比率を知らんのか
今まで自衛隊が舞台のエロゲや萌えアニメが作られなかったのが不思議なくらいなのに
814: 小官 ◆qG4oodN0QY 2006/04/09(日) 20:07:37 ID:??? AAS
>>807はてさりすと氏では無いかな? SS更新まだだしな?

小隊検閲、中隊検閲、大隊検閲、うーん、あとCTかねぇ? 演習場整備やら駐屯地整備もある。
あとは実射に他中隊の実射支援、創隊記念やらパレード準備やら…! 人選で頭痛いわ!
CTは小官の場合、中核となるiによってお呼ばれする。普通科の連隊略称で14CTやら33CT
やらと呼称される。4半期によって分かれる。ま、推測せよ。小官の所は夏場に北海道で実射。

海サンとは正直、接点が余り無い。ある所は有るのだろうね。

オタク? 居るぞ腐る程? キャラ萌えクンは特に小官の誘導尋問に引っ掛かってくれるw
815: 小官 ◆qG4oodN0QY 2006/04/09(日) 20:13:20 ID:??? AAS
帰郷広報かハタマタ移動中か通勤中か…?

何れにせよ小官が陸士の頃、娑婆での制服着用は公用外出か近距離通勤時、
それか行事出席かだな? ウケ狙いで私服で外出して、外で着替えると言う
逆転現象が起こっても不思議では無い世の中だが。
816
(1): 2006/04/09(日) 20:17:24 ID:??? AAS
あ、召喚だ。

演習ない平日はなにやってんの?
ひたすら筋トレ?書類整理?
それとも営内で遊んでんの?
817
(1): 小官 ◆qG4oodN0QY 2006/04/09(日) 20:21:41 ID:??? AAS
Q むしろ小官の思想傾向についてはどうよ?

 ん? 思想の無い、腐った奴はキライだ。これで良かろう? 
元1サンのアレで思想臭がする、と言ったらアカヒやサンケイすら
読まん、人間としての背骨が無いアホ餓鬼、と言ったレベルだろうな。
思想臭がするから面白くない、と言うなら…大人しくラノベ読め。以上。

 小官から言わせて貰えば、だ。ノンポリで通用する今の風潮が駄目。
左翼、右翼と言われる人間の主張を最低限理解しておかないとな?
 作中でどちらか一方に片寄らせるから鼻に吐いたのだろうがね。

 小官はトリマー、舵取り、日和見主義者。要はバランスなのだよ。
肝腎なのはリアリストで無ければならん所だ。夢想家では生きて行けん。
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