[過去ログ] アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ3 (397レス)
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264: 2007/10/01(月) 21:59:11 ID:7vravoGN(1)調 AAS
全撤廃というか、テンプレなんてそもそもないじゃん
外部のやっこさんが勝手にルールつくってきただけだし
265: 2007/10/01(月) 23:14:28 ID:cc9RJvAf(1)調 AAS
ローカルルール云々の話はスレ内容とは全く関係ない話になることと、
長期化が予想されスレの健全な運営に悪影響を及ぼすことが予想されます。
なので、議論は以下のスレを利用してください。
このスレ上で議論をすることはこのスレにとってマイナス以外の何者でもありません。
自治/ローカルルールスレ Part1 2chスレ:anichara
この「2ちゃん上のスレ」でどうぞ。
266: この手に堕ちた腐りかけの肉塊 ◆oRFbZD5WiQ 2007/10/02(火) 00:27:12 ID:iORhm0k9(1/8)調 AAS
なにがおもしろいのか、はたまた、見るもの全てが愉快でたまらないのか。
シータの隣を歩く、マオと名乗った長身の青年は、己の喜悦を動作で表すように両の手を叩いていた。
(なんで、こんな状態でそんなに楽しそうにしていられるんだろう。それに――)
つい先程――いや、既に随分と時間は経っているが、彼女の主観では先程――、自分とパズーしか知らないような事を、
否。パズーですら完全には知らぬ事を正鵠に言い当てた、彼は一体何者なのか。
あのムスカという軍人の関係者か、それとも、
(ラピュタの王族、かも)
そう、あのムスカのように。
◆ ◆ ◆
滑稽滑稽、まさに滑稽だ! とマオは嘲う。
自分の思考が読まれている事など理解の埒外の彼女は、必死に理由を求める。
そう、自分の思考をトレースされた、その理由を。
その小さな頭に入った灰色のそれを必死に稼動し、自身の経験を順序だてて回想し、考える。
どうすれば、そこまでわたしを調べる事ができるの? どこで、わたしたちを知ったの?
(ホントに滑稽だね! なんたって、考えれば考えるほど、僕に情報を与えていくワケなんだから!)
制限で弱まったギアスでは読み取れない箇所の記憶まで、勝手に浮上させ、その上分かりやすく整頓までしてくれる!
それはなんのため? そう、自身の身を守るためだ――実際、それは無意味。否、無どころか負。ゼロどころかマイナス。
なのに、彼女はこんなに必死に――これを笑わずにして、いつ笑うというのか!
「マオさん、あまり大きな声で笑わない方が……」
「ん? ああ! これは済まないね。ボクの笑い声を聞いて悪い人が集まったら大変だからね!」
そう言って笑うと、シータは僅かに渋い顔をする。そして、内心に仕舞いこまれた本音が流出する。
<分からない……この人が分からない。あんまり信用できないかも>
懸命な判断だね、と内心で思う。もし自分が彼女の立場だとして、このような男を信用するかと言えば、断じて否だ。
だが、信頼など豚にでも食わしてやればいい。
彼女はあくまで手駒。キングを守るため、敵のキングを落すために疾駆するポーンに過ぎない。
いや、例えるならば、チェスよりも将棋の方がいいかもね。あれは確か、相手の駒をも利用できたはずだ。
「ところでマオさん、なんでこっちに向かうんですか? 人を探すなら、レールウェイという乗り物に乗った方がいいと思うんですけど」
「ああ、それはだね!」
ぱんっ、と。自身の喜悦を象徴する喝采を止めると、くるり、と芝居がかった動作で振り向いた。
「いくら殺し合いを止める、って言ってもボクらじゃ力不足だと思うんだ。君は戦い慣れているわけでもないし、ボクだって腕っ節は平均的なものさ。
おっと、だったらなおさら、中心部に向かって仲間を集めた方がいい、と思ったね?」
びくん、と思考を言い当てられた事に驚いたのか、体を揺らす。
思考が読める事を公言する気はないが、この程度なら「いや、そんな顔をしてたからね!」とでも言えば済む事だ。
267: この手に堕ちた腐りかけの肉塊 ◆oRFbZD5WiQ 2007/10/02(火) 00:28:37 ID:iORhm0k9(2/8)調 AAS
「それが違うのさ! 街は確かに人が多い、けど同時に殺人者もまた多く潜んでる可能性が高いんだよ!
エリア11では急がば回れ、というコトワザがあるらしいじゃないか。まさにそれだね。焦って動いたあげく殺された、なんて笑い話にしかならないからねぇ。
だからね、あまり人がいない場所をぐるっと見て回って、ゆっくり人を集めるのさ。街に行くのは、それからでも遅くはないはずだよ。
それに、あっちに観覧車が見えるだろう? ああいった目立つ建造物には人が集まりやすいと思うんだ。街ほどではないにしろね。
安全に、けど、なるべく多くの人と会うための苦肉の策なわけさ!」
いや、それはタテマエだ。本音を言うと、わざわざ人が集まるところに自分から進んで行きたくないだけだ。
それを誤魔化すために、適当を言っただけなのだが――考えてみればそれも正鵠を射ているかもしれない。
バックの中身を思い出す。
一つは、イレブンが昔愛用していたとされる武具だ。赤というよりは朱く輝く戦国時代の甲冑に、一振りの刀。
そして、オドラデクエンジン。説明には永久機関、と書かれていたが、それもどのくらいアテになるのかは不明だ。
これだけ。これだけだ。この状態で真っ向勝負を仕掛けられたら、果たして切り抜けられるかどうか。
なら、と思い、バックから鎧を取り出す。未だ漆黒に包まれた空の下、それは非常に目立っていた。
「……これは?」
「外側を回る、といっても危険な事は変わりないからね。身を守る物くらいは手渡すさ。
それにほら、見てごらん? これ、小さな子でも装着できるくらいのサイズなんだ!」
君が怪我しちゃいけないからねぇ、と言って手渡すと、シータの思考が若干柔らかくなった。
<……でも、心配はしてくれてるみたい。そこまで疑ってかからなくても――>
馬鹿め、と思う。
それを手渡したのは、あくまで保身。もし戦いの場になれば、武器を持っているという事を理由に、先陣を切らすための布石だ。
(まあ、思った以上の効果があったみたいだけど)
信頼など、豚にでも食わしておけばいい。確かにそう考えた。そして、今もそれは変わっていない。
だって、ここにいるではないか。信頼という餌を喰らい、肥え太る豚が。自分が肉にされる事を知らず、餌を貪る家畜が。
「あの、お礼といってはなんなのですけど……これを」
笑い出したくなる衝動を抑え、彼女の掌に載るそれを見る。
それは扇。中華連邦でもよく見る、一般的な形のそれだ。
だが、触れる感触は冷たい金属のそれ――そう、鉄扇だ。
「あまり強そうな物ではないんですけど、武器がないと不安だと思うから」
「いやいや! 気にしなくてもいいさ、武器として扱った事はないけど、知識としては知ってるものだからね!
これはこれで構わないよ!」
268: 2007/10/02(火) 00:28:39 ID:NDR+bFC6(1/4)調 AAS
269: この手に堕ちた腐りかけの肉塊 ◆oRFbZD5WiQ 2007/10/02(火) 00:29:48 ID:iORhm0k9(3/8)調 AAS
使えない、と内心で毒づく。チェーンソウでも出してくれたら、心から賞賛してあげてもよかったのだが。
(まあ、さすがに高望みかな)
陸と陸とを繋ぐ道路に差し掛かる。
位置はC-1とB-2の丁度境目くらいだ。
◆ ◆ ◆
がしゃん、と甲冑が音を立てる。
纏った赤色のそれは重く、だが、適度に安心感を与えてくれる。
重い、という事は金属であるという事。金属であるという事は、頑丈であるという事。
気休めなのかもしれないが、少女の心をある程度静めるには十分な力を持っていた。
道路を通り抜けると、遠くに見えていたあの車輪も巨大に見えてくる。
マオが観覧車と言ったそれは、どうやら乗り物らしい。けれど、同じ場所をぐるりと回るだけで、前に進めそうな気がしないのだが。
「おっと、観覧車を知らないのかい? 子供の頃、親に連れてってもらったり、親がいなくても遊園地を遠くから眺めたりはしたと思うけどねぇ。
まあ、いいさ。あれは乗り物といっても車や飛行機と同列じゃあないんだよ。山に登って風景を眺めるのを、全部機械で行ったものだと考えればいい」
そうですか、と答え、観覧車という名の車輪を見上げる。
原色を基調としたそれは、見ている者を陽気にさせる効果があるのだろう。
だが、それは本来、家族連れの子供が抱く想いだ。間違っても、殺し合いに無理矢理引き込まれた少女が抱く感想ではない。
事実、シータはあのぐるぐると回る個室を、まるで棺みたいだ、とすら思ったほどだ。
「棺、それも間違いじゃぁないね。こんな状態であそこに乗っている事に気づかれたら、狙い撃ちだ。
それに、螺旋王とかいう男に向かっていった、あの正義のヒーローのような彼。
彼が放ったビームみたいな奴で破壊されたら、そのまま横倒し。戦うまでもなくザクロになれるよ」
その言葉に、思わず身震いをしてしまう。
嫌なイメージから逃れるように視線を背け――
「……え?」
それを見た。
◆ ◆ ◆
270: 2007/10/02(火) 00:29:58 ID:NDR+bFC6(2/4)調 AAS
271: 2007/10/02(火) 00:30:10 ID:yqPO1emG(1)調 AAS
272: この手に堕ちた腐りかけの肉塊 ◆oRFbZD5WiQ 2007/10/02(火) 00:31:06 ID:iORhm0k9(4/8)調 AAS
いきなりだった。
観覧車を知らない事、彼女の言うラピュタ。それらを総合し、全く別の世界から来たのかなこの子は、と馬鹿げた空想をしていた、その瞬間だった。
圧倒的なノイズ。整理される事のない思考の奔流が、マオの脳を一瞬で犯した。
うるさい、うるさい、うるさいッ! 鼓膜が破けてしまいそうだ!
このガキ、さっきまで静かだったくせに、急にこんな――!
「ぐ――ほら、シータ、落ち着きな。一体なにが、……!?」
安心させるように言って、初めて気づいた。
(思考が……読み取れない!?)
慌てて意識を集中。脳細胞全てを、シータという少女の思考の整理に当てる。
だが、氾濫した川の如く流れるそれを、整理するどころか受け止める事すら叶わない。
これが――これが制限か!
普段ならば、多少錯乱していようとも、その思考を完全に理解する自信がある。
だが、今はどうだ? まるで理解できない。せいぜい、『死』『殺人』『血』、そんな断片的なモノを拾えたくらいだ。
<殺――血が、ががが――乗ってるるるるる人――こん――無――ざ、ざざざ――惨>
気が狂いそうだ。今ほどC.Cの声を聞きたいと思った事はないかもしれない。
その、狂わせるような思考を漏らす少女を見やる。
嫌だ嫌だ、と言うように首を振るうその姿。瞬間、怒りが炸裂した。
「――ッ! うるさい!」
嫌なのは、こっちだ!
がんっ! と。兜に包まれた頭部に、鉄扇子を思い切り叩きつける。
ぐらり、とシータの体が揺れ、思考が一瞬途切れる。
<――え? わたし、殴られ……?>
「……ああ、大丈夫かい? すまないね、錯乱していたようだから、ちょっと失礼させてもらったよ」
未だ軋む頭を押さえつつ、なんとか体裁を取り繕う。
「それで、どうしたんだい。そんなに取り乱して」
「その……あそこに」
あそこ? とシータが指差す方に視線を向けると、
「……ああ」
273(1): 2007/10/02(火) 00:31:27 ID:NDR+bFC6(3/4)調 AAS
274: この手に堕ちた腐りかけの肉塊 ◆oRFbZD5WiQ 2007/10/02(火) 00:32:15 ID:iORhm0k9(5/8)調 AAS
あれか、と地面に倒れ伏すそれを見た。
赤。濃厚な赤ワインにも似た赤色だ。
ならば、この少女はワイン樽か。もっとも、胸元に穿たれた穴から流れ出るモノはなく、生命を出し切った後だという事が見て取れた。
そう、それは死体だ。虚空を見上げる、命無き人型。
「なるほど、これを見て取り乱したんだね。……うん、君が取り乱すのもすごくよく分かるよ。
これは酷いよね。――そうだ! ボクがちゃんと埋葬してあげるから、君は観覧車の傍で待っていてくれないかな?」
そう言うと、シータは若干うろたえつつも、こくりと頷いてくれた。
去っていく背中が見えなくなるのを確認する。そして、
「しっ!」
その遺骸を、焼きつくような怒りを以って蹴り飛ばした。
爪先が頭蓋に突き刺さり、陥没。機能停止した脳みそがシェイクされる。
「君がこんな場所で死んでるから、ボクが酷い目にあったじゃないかッ!
死んでからも他人に迷惑をかけるんじゃない! この、愚図め!」
踵が顔面を抉る。頭蓋骨が崩壊し、内部に納められた脳が潰れる。どろり、と隙間からそれらしきモノがこぼれた。
それでも飽き足らぬ、そう言うように鉄扇子を用い、全体重を以って胸を突き刺していく。
そう、何度も何度も。肋骨をパウダーに、臓器をミンチにするまで止めない、そう言うように。
ああ、チェーンソウが、いや、もっと武器らしい武器があればよかったのに。
そうすれば、この肉を解体しコンパクトにした後、そこらのゴミ箱にでも放り込んでやるのに。
皮膚と内部の肉が混ざり合い、屈強な戦士ですら目を背けたくなるような状態になって、ようやくマオは冷静を取り戻した。
「――は、ぁ。まあ、いいさ。もう、二度と会うこともないだろうからね」
また、他人の思考を聞き続けなくてはならないのか、と思うと陰鬱な気分になってくる。
早く、早くC.Cの声が聴きたい。お願いだ、このままじゃあ本当に狂いそうだ。
記憶に残るC.Cの声を思い出しながら、シータが待っているであろう観覧車に足を進める。
それを、こぼれ落ちた眼球で柊つかさは眺めていた。
いつまでも、いつまでも、きっと永遠に見続けている事だろう。
◆ ◆ ◆
275: 2007/10/02(火) 00:33:01 ID:NDR+bFC6(4/4)調 AAS
276: この手に堕ちた腐りかけの肉塊 ◆oRFbZD5WiQ 2007/10/02(火) 00:33:24 ID:iORhm0k9(6/8)調 AAS
帰ってきたマオの息は荒かった。
それも仕方のない事だと思う。人一人を埋めるために、一体どのくらい土を掘ればよいのか。
それを、道具なしでやり遂げたのだ。これで息を乱さぬはずが――
(あれ?)
ふと、その両手を見る。
(土で汚れて、ない?)
「ああ、遅れてごめんね。水道を探してたんだ。さすがに泥まみれじゃいけない、と思ってね」
そうマオは言うが、それにしたって服まで汚れていないのは不自然だ。
不自然――だけれど、取り乱した自分を下げさせる配慮のある人間だ。そこまで悪い事はしていない、と信じたいが――
(……分からない、わたしには分からない)
親切だと思うときもある、怪しいと思うときもある。
自分は、どちらを信じればいいのだろうか――?
【B-2/観覧車の前/1日目/黎明】
【マオ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:疲労 低
[装備]:マオのバイザー@コードギアス 反逆のルルーシュ 鉄扇子@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-
[道具]:支給品一式 オドラデクエンジン@王ドロボウJING
[思考]
1:ヘッドホン(C.C.の声が聞ける自分のもの)を手に入れたい
2:ギアスを利用して手駒を増やす。手駒は有効利用
3:ゲームに乗るか、螺旋王を倒すか、あるいは脱出するか、どれでもいいと思っている
4:どれを選ぶにせよ、ルルーシュに復讐してからゲームを終わらせ、C.C.を手に入れる
[備考]
マオのギアス…周囲の人間の思考を読み取る能力。常に発動していてオフにはできない。
意識を集中すると能力範囲が広がるが、制限により最大で100メートルまでとなっている。
さらに、意識を集中すると頭痛と疲労が起きるため、広範囲での思考読み取りを長時間続けるのは無理。
深層意識の読み取りにも同様の制限がある他、ノイズが混じるために完全には読み取れない。
*また、錯乱などといった思考の暴走には対処しきれない事に気づきました。
*異世界の概念はあまり信じていない様子。
*シータの知りうるラピュタ関連の情報、パズーやドーラの出会いをほぼ完全に知りました。
277(1): この手に堕ちた腐りかけの肉塊 ◆oRFbZD5WiQ 2007/10/02(火) 00:34:32 ID:iORhm0k9(7/8)調 AAS
【シータ@天空の城ラピュタ】
[状態]:迷い
[装備]:日出処の剣士の鎧と剣@王ドロボウJING
[道具]:支給品一式 支給アイテム0〜1個(マオのヘッドホン、武器は入っていない)
[思考]
1:ゲームを止めるという言葉を信じて、マオについていく
2:信頼すべきか否か、迷っている
3:今のところは信頼に傾いている
[備考]
マオの指摘によって、パズーやドーラと再会するのを躊躇しています。
ただし、洗脳されてるわけではありません。強い説得があれば考え直すと思われます。
*マオがつかさを埋葬したものだと、多少疑いつつも信じています。
*マオをラピュタの王族かもしれないと思っています。
【日出処の剣士の鎧と剣】
真っ赤な色で小柄な女性でも装着が可能。相手に顔も見られないし、強度もそこそこ。
【オドラデクエンジン】
永久機関で作られているエンジン。機械に組み込めばすごいことになりそう?
【鉄扇子】
呉先生が愛用する扇子。鉄製なので重くて頑丈
B-2にはボロボロになったつかさの死体が転がっています。場所は変えてはいません。
278(1): ◆oRFbZD5WiQ 2007/10/02(火) 00:35:41 ID:iORhm0k9(8/8)調 AAS
投下終了です。
支援してくださった皆さん、どうもありがとうございました。
279(1): 蘇れ、ラピュタの神よ ◆WcYky2B84U 2007/10/02(火) 01:09:01 ID:NE2pJTu2(1/5)調 AAS
ガリッ、ガッ、ガガッ、ガリガリッ、ガッ――――――――――
夜明けを間近に迎え、薄ぼんやりと日の光が差し込む病院の廊下に、奇妙な音が響く。
ガガガッ、ガガガッ、ガッ、ガッガッ――――――――――――
極めて不規則に、そして極めて不愉快なその音色が奏でられているのは…廊下の片隅にポツンと位置している、物置部屋の扉。
その扉の極僅かの隙間から伸びる銀色の物体から、この気の滅入るメロディは流れていた。
ハァ、ハァ、ハァッ…クソッ…もう少しだというのに―――――
よくよく耳を澄ましてみれば、不協和音の中に、もう一つの音が混じっているのが聞き取れる。
それは、その部屋の中に潜んでいる……正確には、その部屋の中に『閉じ込められている』何者かの声。
ガガガッ、ガガガガッ、ガリッ、ガリッ、ガッ――――――――
クッ…あ…と…少し……あと少しだっ――――――――――――
そして………その時はやって来た。
ガガガガガガガガガガガガガガガガッ――――――――――――パリン。
今まで鳴っていた騒音とは対照的な、爽やかな音が病院内を反響する。
その音が意味するものは、この扉に掛けられていた戒め……すなわち、鍵の破壊。
そして、忌々しい束縛が解かれた今こそ―――そこに封じられていた、『神』を名乗る男が復活する!
「ハァッ!ハァッ!ハァッ………!!で、出れたッ……出れたぞぉッ……やっと、やっと出れたッ……!!」
………倒れるように扉を押し開け、そのままの勢いで地面に這い蹲りながら、汗だくの顔で腑抜けた笑みを浮かべるという情けない姿で。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------
280: 2007/10/02(火) 01:09:16 ID:AdAq8Xz3(1/3)調 AAS
281: 蘇れ、ラピュタの神よ ◆WcYky2B84U 2007/10/02(火) 01:10:06 ID:NE2pJTu2(2/5)調 AAS
この病院前にて、突然現れた東洋風の男………戴宋に敗北したムスカがこの物置部屋に閉じ込められてから、
最早三時間強の時間が経っていた。
「クッ……クソッ……あの男…ッ…わざわざ、鍵をかけるなど姑息な真似を………よくも……」
体力と気力の限界を向かえ、立つ事もままならぬ状態でムスカが毒づく。
ムスカが気絶した『フリ』をしていた事に気づいていたのか、はたまた用心深い性格だったのか…
戴宋がその手で物置部屋の扉に仕掛けた、物置の中に存在したナンバー式のチェーンロックはスペック以上の働きを見せていた。
息苦しい密閉された空間。手の中に有るのは頼りない一本のアサシンナイフのみ。
いつあの男が帰ってくるともわからない状況の中で、扉をこじ開けて出来た隙間からナイフを差込みチェーンの切断を試みる。
焦燥、絶望、恐怖……嫌と言うほどに味わった忌まわしい感情を思い出し、ムスカの表情がさらに歪む。
だが………その表情は徐々に和らぎ、厭らしい笑みへと変わっていく。
もう、自分を縛っていた物は無いのだ……後は、そう……あの男に復讐するのみ!!
『ラピュタの王』すら超え、『ラピュタの神』となった自分を散々コケにしてくれたあの男を許すわけには行かぬ!!
「ククク……ハハハハハ…そうだ……ラピュタの神たる、この私の恐ろしさ…それを奴に身を持って教えてやろうじゃないか…!」
狂ったように笑いながら、体に力を込めてゆっくりと立ち上がる。
恐れる物など何も無い!!あるはずも無い!!私はラピュタの神なのだから!!!
………………………………………………………………………………………………………………………………だが。
パリン。
「……………………………………………………………………………………………………………………………は」
その驕りは、ムスカの右手から発せられた小さな……非常に小さな音によってあっさりと崩される。
「………………………………………………………………………………………………………………………………」
ゆっくりと、右手を開き中を見る。
その中には、棒状の物体が『二つ』。
ムスカを救出するという役目を終えただけのアサシンナイフは、折れていた。完膚なきまでに。
無理も無い事である。三時間強もの間、鎖との摩擦による不可に耐え抜いていたのだ。
しかも、ただでさえ不安定な体勢での摩擦。鎖ではなく扉や壁に衝突したのも、一度や二度では無い。
たった一本のアサシンナイフにしては、むしろ大健闘だったと言えるだろう。
282: 2007/10/02(火) 01:10:23 ID:lDnLJDSl(1)調 AAS
283: 蘇れ、ラピュタの神よ ◆WcYky2B84U 2007/10/02(火) 01:11:15 ID:NE2pJTu2(3/5)調 AAS
しかし、今のムスカにそれだけの事実を受け止めるだけの余裕があるはずも無く。
「…………………ふ……………………ふざ……ふざ……」
まるでおこりの様に、ムスカの体がブルブルと震え始め。
「…………ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
溢れ出す感情のまま、ナイフだった物を地面へと叩き付けた。
そのまま軽い音を立てて、二本の金属ゴミはどこかへと消えていく。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………!!」
ナイフを叩き付けたポーズのまま、ムスカは荒い息をつく。
そして徐々にその息が収まり始めるのと比例して、彼の表情は青く染まり始めた。
無い。
もう…自分には武器が、ない。
ディパックの中にあるのは、ただの葡萄酒の空き瓶のみ。それは武器と呼ぶには余りにも貧弱。
自分は今、丸腰だ……もし、この状態で誰かに襲われたら?
…………死ぬ?ラピュタを継ぐ者である自分が、神と崇められるべき自分が………死ぬ?
「ふっ、ふっ、ふっ……ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
先ほどと同じ言葉を叫びながら、今度は手に持っていたディパックを壁に叩きつける。
だが、どれだけ周りの物体に怒りをぶつけようとも、ムスカの中の恐怖は消えない。
武器だ。何でもいい、武器が必要だ。
血走った目で辺りを見回す。もう二度と入るまいと誓った物置部屋の中すら覗き込み、武器を探す。
だが……何も無い。まともな武器として使えそうな物は、存在しない。
「クソッ、クソッ、クソッ、クソッ、クソォッ!!」
口汚い罵りの言葉を吐きながら、部屋の中に積まれていた道具をそこら中にぶちまける。
最早ムスカの顔に、先ほどまでの高揚感や余裕など見て取る事は出来ない。
あるのはただ、いつ自分の命が狙われるのかと怯え続ける小心者の表情だけ。
「どこだッ!?私の武器はどこにある!?かの雷のような、神たる私に相応しい武器が無いというのか!?
そんな筈は………ッ!?そう、だっ………!!」
ヒステリックな叫びが中断され、ハッとした表情でムスカが呟く。
ムスカの脳裏に、天啓のようにある事実が浮かんだのだ。
「あそこ、あそこだ……!!あそこに、武器が……!!」
熱病にでも浮かされたかのように、ムスカがフラフラと歩き出す。
目指す場所は、病院の入り口。壁に手を着き、半分以上体をもたらせながら引きずるように移動する。
自分の記憶通りならば、あそこに武器が……だが、もしも?
反語と共に、ムスカは最悪のパターンを想像する。
もしも、あの忌々しい東洋風の男が、自分を閉じ込めた大罪を抱えたあの男が、『アレ』に気づいていたら?
息が荒い。心音がうっとおしい。汗が目に入る。
そうなったら、自分はもうどうしようも………?
ああ、嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。何もかもが腹立だしい。もしもこの手に飛行石があれば、ラピュタの雷があれば全てを焼き払って…!
しかし何も無いぞ?今の自分には何も無い。何故だ?何故こんな事に!?ああ、頼む、気づかないでいてくれ……!!
精神と肉体、両方の多大な疲労を抱えながら、『神』を名乗った男は哀れにも『神』に祈る。
そしてようやく男は………病院の入り口に到着した。
284: 2007/10/02(火) 01:11:44 ID:LwA42mVl(1/6)調 AAS
285: 2007/10/02(火) 01:11:56 ID:AdAq8Xz3(2/3)調 AAS
286: 蘇れ、ラピュタの神よ ◆WcYky2B84U 2007/10/02(火) 01:12:23 ID:NE2pJTu2(4/5)調 AAS
「そう、ここだ……!この辺りに………!!」
体当たりするように扉を押し開け、必死の形相で付近に視線を巡らす。
「どこだ……どこにある!?」
駄目だ、見るだけでは見つからない!
最早なりふり構わずに、地面に這い蹲りながら目当ての物を探す、探す、探す、探す………………
「見つけた………!!見つけた、見つけたぞぉお!!!」
四つん這いの状態で、頭だけを植え込みの中に突っ込んだ状態で、ムスカは歓喜の声をあげた。
そのまま、その中から引っ張り出したのは、やや焦げ目の付いたディパック。
このディパックは、彼が最初に殺した少年…エドワード・エルリックに支給されていた物。
先の二連続戦闘の衝撃の為か、植え込みの中へと放り込まれていたそれは、
ここを立ち去った戴宋に気づかれる事も無く今まで隠れていた。
「武器、武器、武器、武器、武器だ!!」
人目も憚らず大声を上げながら、ディパックの中身を漁り支給品を探す。
そして………ついにムスカの手が硬い何かに触れる。
「……………ッ!!」
ごくり。生唾を飲み込んだ音が、妙に大きく聞こえた。
ゆっくりと、中の物を握り締め、取り出す。
「……………………ハッ………ハハハッ……ハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!」
笑う。哂う。嗤う。手の中にある支給品を見て、ムスカは愉しげに笑う。
「素晴らしい………!神たる私に相応しい武器だ………!!」
ムスカの手に握られている物は………二つの銃口を持つ奇妙なキャノン砲。
片手に嵌め込んで撃つタイプのそれは、異世界へと飛ばされたとある科学者が、親友の為に死に物狂いで作りだした武器。
ここでは無い、また別の世界…砂漠に包まれたその世界にのみ存在する特殊な金属で作成されたこのキャノン砲は、
見た目に反して片腕で軽々と扱えるほどに軽く……その威力は、その世界最強の存在を二撃で絶命に至らせる程絶大。
無論、『神』ならぬムスカがそこまで詳しい事情を知るわけも無い。
だが、それでもムスカはこの武器の有用性を感じ取り……ただただ歓喜のままに笑い続けた。
その姿はまるで…ようやく目当ての玩具を見つけて喜んでいる、無知な幼子のようであった。
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287: 2007/10/02(火) 01:12:58 ID:QUDoUruO(1/7)調 AAS
288: 2007/10/02(火) 01:13:06 ID:SIE15ucP(1)調 AAS
289: 2007/10/02(火) 01:13:31 ID:AdAq8Xz3(3/3)調 AAS
290: 蘇れ、ラピュタの神よ ◆WcYky2B84U 2007/10/02(火) 01:13:32 ID:NE2pJTu2(5/5)調 AAS
武器は手に入った。ならばもう、恐れるものは何も無い。
そう考えながら、ふと手元の時計を見る。
「………放送までは、後1時間弱と言った所か……」
何となしにそう呟いた所で、ムスカの体から力が抜ける。
「…流石の私も、いささか疲れたな……」
精神的な疲労。肉体的な疲労。二つの疲労は今も容赦なくムスカの体を襲い続けている。
ようやく武器を入手し、気が抜けた今となっては、それに抗うのは難しい。
ならば、休息を取るか……幸いにも目の前には病院がある。適当な病室を借りて休むとしよう。
「だが、放送を聞き逃すのは避けたい所だな……」
エドのディパックから水と食料のみを自分のディパックに詰め込みながら考える。
放送によって流されるのは死亡者の情報に、禁止エリアの情報…どちらも聞き逃すのは大きなデメリットとなる。
「ふん、一時間ほど疲労に耐える程度、どうと言う事も無い…」
そんな事を喋りながらゆっくりと立ち上がるも、その顔に浮かぶ疲労の色は濃い。
彼が放送の時までその意識を保つ事が出来るのか……『神』ならぬ『神』を名乗る男には、それを知る由も無い。
【D-6/総合病院・入り口付近/1日目/早朝・放送1時間前】
【ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ(ムスカ大佐)@天空の城ラピュタ】
[状態]:精神・肉体共に激しく疲労、背中に打撲、強い眠気
[装備]:ダブルキャノン@サイボーグクロちゃん (残弾30/30)
[道具]:デイバック、支給品一式(食料-[大量のチョコレート][紅茶][エドの食料(詳細不明)])、葡萄酒の空き瓶
[思考]:
基本:すべての生きとし生ける者に、ラピュタ神の力を見せつける。
1.病院内の適当な病室に入り、休息する。ただし放送までは起きていたい。
2.東洋人(戴宗)に復讐する。
3.パズーらに復讐する。
4.出来れば『平賀源内のエレキテル』のような派手な攻撃が出来る武器も欲しい。
最終:最後まで生き残り、ロージェノムに神の怒りを与える。
※ムスカが第一回放送まで眠らずに居られるかどうかは、次の書き手さんにお任せします。
※エドに支給されたランダムアイテムは、ダブルキャノン@サイボーグクロちゃんのみでした。
※病院内の物置部屋(1F隅に存在)は扉が開け放った状態のまま酷く荒らされています。
また、その付近に切れたチェーンと『折れたアサシンナイフ@さよなら絶望先生』が転がっています。
※病院入り口に、水と食料だけが抜かれたエドのディパックが放置されています。
【アイテム補足】
【ダブルキャノン@サイボーグクロちゃん】
異世界サバイバル編にてゴーくんが作り上げた武器。異世界独自の素材で出来ている為、非常に軽い。
四角い形状で、その名の通り二つの銃口が並んで存在している。
ガトリングガンと同じく片手にはめ込むタイプで、引き金を引く毎に上と下のそれぞれの銃口から弾丸が発射される。
その威力は強力無比で、異世界編のラスボス、バイスの体に一撃で風穴を開けるほど。
(ただしこれは原作のみ描写で、アニメ版には放送コードに引っかかった為か穴が開く事は無かった。
それでも原作と同じくバイスへのトドメとして使われている為、威力は同程度だと思われる)
ちなみに残弾表示の30発とは、上の弾倉に15発、下の弾倉に15発の、合計30発という意味。
291: Vanishing One ◆RwRVJyFBpg 2007/10/02(火) 02:05:08 ID:mVzuG3Gn(1/8)調 AAS
空の色が変わっていく。深い黒から藍、そしてやがて青へ。
太陽は地平線に手をかけ、その体を起こし始める。全てのものを、等しく照らし出すために。
あれほど深かった闇は、昇りつつある昼の王によって、少しずつその体を削られていく。
あと数刻もすれば、夜の支配は完全にこの世から姿を消すだろう。
だが、世の中には消えない闇もある。
A-1地区。海沿いに行儀よく立ち並ぶ倉庫のうちの一つ。その中にそれはあった。
ぽっかりと口を開けた鉄扉の奥、闇は隠れるように潜んでいた。
――ガツッ、ゴォン、カラカラ……
黒い空間から音が響く。奥で何かが動いている。
音は粗く、無造作で、暴力的な所業を想起させる。何かを投げ、落とし、打ち壊してから漁る。
倉庫の主が行っているのは、どうやらそんな作業のようだった。
唐突に音が止む。
残響だけがコンクリートの海岸を低く流れて、消えた。
あとには、打ち寄せる波が静かに囁く声が響くのみ。
倉庫の中の闇はしばらく沈黙を保っていたが、間もなく、鉄扉の口から新たな音が漏れ出した。
――コツ、コツ、コツ……
足音とともに、鉄扉から出てきたのは男だった。
まるで、闇が分かれて人の形を成したかのような男――ヴィシャス。
彼は、傷の男スカーとの戦闘で失われた武器の代わりを求め、倉庫の中を探索していたのだった。
「……チッ」
ヴィシャスは自分の右手に握られているをモノを忌々しげに睨み、舌打ちをする。
白っぽい錆が浮いた鉄パイプ。
それは、小一時間探し回って見つけられた最良の武器だった。
「…………ツッッ!」
彼はしばらくの間、人形のようにただ立っていたが、不意に思い立つと
パイプを刀に見立てて居合いの構えを取り、間をおかず抜き打った。
ぶゎんと太い風切り音が鳴る。それが消えないうちに持ち替え、今度は縦の斬撃を刻む。
上から振り下ろす一撃。
もしその剣先に人がいたなら紅い中身を弾けさせるであろうソレは
しかし、コンクリートを穿つことなく返され、逆袈裟の斬り上げへと転化する。
縦、横、斜め、大振り、小振り、踏み込みながら、引きながら、ヴィシャスは舞う。
我流の型に載せて紡がれる剣舞には、洗練された美が内在していた。
その美を支えていたのは、剣に宿るギラついた凶暴さ――いわば殺しの功夫だった。
彼の採る一挙手一投足、その全てが『人を殺す』という目的に対して無駄なく収斂し
見る者にある種の機能美を意識させるほどに練り上げられていたのである。
「オオオッ!!」
右上から左下。気合いとともに大きな半円を刻むように鉛管を振り下ろし、ヴィシャスは動きを止めた。
銀糸のような髪が揺れ、そして戻る。
真冬に着るようなコートを纏っているにもかかわらず、顔には汗の粒ひとつ浮かんでいない。
見事な剣舞。もしここに観客がいたならば、手を叩いて彼の業を賞賛しただろう。
……だが、その表情は演舞とは対照的に、いささか苦々しいものであった。
「……なまくらめ」
彼の不愉快は専ら、手の中の鉛管に向けられていた。
292: 2007/10/02(火) 02:05:42 ID:LwA42mVl(2/6)調 AAS
293: 2007/10/02(火) 02:05:54 ID:QUDoUruO(2/7)調 AAS
294: Vanishing One ◆RwRVJyFBpg 2007/10/02(火) 02:06:11 ID:mVzuG3Gn(2/8)調 AAS
――必要なのは新しい武器だ。
無数に立ち並ぶ倉庫の間を歩きながら、ヴィシャスは考えていた。
これから自分は、80人以上の人間と生死を賭けた戦争をすることになる。
しかも、相手はただの人間ばかりではない。
あの広間で尋常でない力を見せ付けた螺旋王や、不思議な技を使う傷の男……そしてスパイク。
他にも一筋縄ではいかない連中がわんさかいるだろう。
そんな戦いを乗り切っていくには……この鉄パイプではあまりに力不足だ。
重さも、クセも、有効的な使い方も、得意とする刀剣とはあまりに違いすぎる慣れない武器。
そんなものに自らの命を預けるわけにはいかない。
刀剣を……せめて銃火器を手に入れなければ。
「武器……やはり奪うしかないな」
歩を進めながら、ひとりごちる。
そう、このゲーム内で武器を手に入れる最も手っ取り早い方法は他人のものを奪うことだ。
ヴィシャスが長刀を支給されていたように
この殺し合いに参加している人間には何らかの武器が配られているようだ。
それならば、適当な参加者を殺し、デイパックを奪えば、それなりのモノは手に入るはず。
彼はそう考えていた。
だが、この作戦には一つ大きな問題がある。
武器というのは戦うために存在する道具である。
それを奪うために戦いを挑めば、当然、その牙の前に身を晒すことになる。
下手をうてば、自分が狙っていた武器にみすみす命を捧げることにもなりかねない。
そして、そのリスクは、欲する武器が良いものであればあるほど跳ね上がる。
「ダンスの相手は選べということか」
戦う状況は慎重に選ぶ必要がある。相手の腕前、持っている武器、襲撃のタイミング。
どれか一つでも読み間違えれば、武器を奪うどころか、逆に命を盗られてしまう。
場合によっては、敢えて獲物を見逃したり、敵に背中を見せたりすることも考えねばならないだろう。
狡猾に、したたかに、何より確実にやらねばならない。
自らのやるべきを定めると、ヴィシャスは倉庫の一つに身を潜ませた。
通路からは死角になるような位置に入ったことを確認すると
静かにデイパックを降ろし、地図を取り出す。
武器を奪うためには、まず、人を探さなくてはならない。
先ほどの海岸から見えたドームと観覧車の位置から類推するに、今、自分がいるのはおそらくA-1地区のほぼ西端。
こんな端のエリアにいては、他の参加者との遭遇は望めまい。
できれば、適度に人の集まるところまで移動したいところだが、果たしてどこへ動くのが妥当な選択か……
地図の全体を油断なく見つめ、彼は思案する。
そのときだった。
突然、どこからともなく強い風が吹き込んできた。
突風はヴィシャスと地図を等しく舐め、彼の銀髪と地図の端とを大きくめくり、はためかせる。
意外な邪魔者を疎ましく感じ、彼は風の出所を半ば無意識に睨みつけた。
見ると、倉庫の窓が開いている。風はここから吹き込んできたようだった。
窓の外には、一面の造成地、砂と石ころの空き地が広がっていた。
おそらく、埋め立てられて以来、そのまま放置されているのだろう。
人工的に均された荒野は、薄明けの光に照らされて、徐々にその寂しい表層を晒そうとしている。
そして――
(ゥン?)
その朝焼けの大地に、こちらに背を向けた一人の少女が直立していた。
295: 2007/10/02(火) 02:07:46 ID:QUDoUruO(3/7)調 AAS
296: Vanishing One ◆RwRVJyFBpg 2007/10/02(火) 02:08:02 ID:mVzuG3Gn(3/8)調 AAS
木津千里はイラついていた。
倉庫街の西の端にして造成地の東の端、コンクリートと土の分かれ目。
きっちりと分かれたそこに、彼女はきっちりと背を伸ばし、シャンと立っていた。
四角四面に整備された土地は彼女の嗜好に沿うものであったが、それでも彼女はイラついていた。
その怒りは貧乏ゆすりに転化され、毎分きっちり60回のペースで大地に刻まれている。
何故、A-1からA-8まできっちり踏破するはずだった彼女が、こんなところでイラついているのか?
それにはもちろん理由があった。
事の発端は、地図だった。
A-1からA-8を効率よく移動するためのルートを確認するため
支給された地図を見ていた彼女は、あることに気がついてしまったのだ。
(この地図の外ってどうなってるんだろ?)
ある意味あたりまえのことではあるが、この地図には、地図の外に関する情報が一切書かれていない。
ただ、正方形で区切られた一地域が、さらに64個のエリアに区切られているだけだ。
しかし、描かれてる地形を見る限り、この地域の外には全く陸がないというのも考えにくい。
だとすれば、ここに描かれていない部分の土地は一体どうなっているのか。
自分たちは殺し合い、最後の一人を決めるように言い渡された。
必然的にそれが行われるための地域は限定されているはずだ。そうでなければ困る。
地図の範囲を超えて散らばった参加者を、手がかりなしに殺していくなどまず不可能だ。
だから、千里はこの地図の内だけが、殺し合いが行われ得る範囲なのだと勝手に思っていた。
だが、よく考えてみれば、その事実は何によって担保されているのか?
(そういえば、禁止区域に入ったら、首輪がどうとか言ってたわね)
螺旋王の言葉を思い出す。
なるほど。もし、地図の外に出たら、首輪が爆発し参加者の拡散を防ぐ、ということか。よく考えられている。
千里は自らの出した結論に納得したが、それは同時に新たな疑問をも発生させた。
(だけど、地図の外ってどこからなのかしら?)
デイパックには、縮尺の大きい、大雑把な地図しか同梱されていなかった。
つまり、参加者はそれに頼る限り、禁止区域の境目をおおまかにしか知ることができない。
だが、禁止区域の境界というのは、参加者の生死を分ける大事な一線だ。
その位置をおおよそでしか知ることができないというのはあんまりではないだろうか。
千里は考えた。
おそらく、名簿をわざわざ名前順に並べるほどきっちりした螺旋王のことだから
地図の内と外との境目には、さぞ、きっちりとした境界線が引かれているに違いない。
多分、ただ線が引いてあるなんて生ぬるいものではないだろう。
聳え立つ壁が境界線沿いに隙間なく並んでいたり
監視員のおじさんたちがアサルトライフルを構えて警告していたりするに違いないのだ。
そう思うと、千里の心は否応なしに躍った。
ここに来て以来、彼女は、はっきりしないアレコレに次々と晒されたため、ストレスが溜っていた。
この辺りで螺旋王の見事なきっちりぶりを目に刻み、癒されたいと思うのは
度を越えて几帳面な彼女の人格を考えれば、当然の道理であろう。
一度、きっちりへの疼きに憑かれると、彼女の行動は早かった。
とっさにきびすを返し、A-1の端へと歩き始めたのである。
時は現在へと戻る。
結論から言ってしまえば、千里の期待は、完膚なきまでに裏切られた。
そこには線はおろか、天を衝く壁もなければ、銃を持った監視員もいなかった。
ただ、視界いっぱいに広がる造成地が横たわっていただけだ。
造成地の向こう側には様々なものが見えている。
木に覆われた岬、工業地帯、ビル街らしき四角柱の固まり……
そこへ行こうとする者を妨げるための何かは影も形も見えなかった。
だから、木津千里はイラついていた。
「区切るならキッチリ区切りなさいよ!あーイライラする」
297: 2007/10/02(火) 02:09:17 ID:LwA42mVl(3/6)調 AAS
298: 2007/10/02(火) 02:10:34 ID:QUDoUruO(4/7)調 AAS
299: Vanishing One ◆RwRVJyFBpg 2007/10/02(火) 02:11:50 ID:mVzuG3Gn(4/8)調 AAS
ヴィシャスは窓のある壁を背にしながら、俄かにほくそ笑んでいた。
(まさか、こうまで都合のいい人間が現れてくれるとは思わなかったぞ)
窓の隙間から少しだけ顔を出し、外の少女を改めて見やる。
注目すべきはその腰にさされた二振りの日本刀だ。
(フッ、俺は運がいい。得意のエモノ。それが2本とはな)
彼は偶然、千里の姿を目にして以降、彼女から見えない位置に身を潜ませ、観察を続けていた。
10代後半の女。しかも、こちらに背を向け、気づく様子もない。
本来ならば、この程度の人間に、別段慎重な態度をとる必要はない。
背後から奇襲して殺し、さっさと武器を奪ってしまえばよい。
だが、仮にも彼女もこの殺し合いに選ばれた参加者である。先の男のように特殊な能力を持っている可能性は否めない。
女子供と舐めてかかれば、手痛いしっぺ返しを喰らう結果に終わるかもしれない。
ゆえに、ヴィシャスは事を急がず、冷静にターゲットを分析していた。
だが――
(間違いない。素人だな。この女)
半袖のセーラー服や、スカートの裾から覗く肉体
造成地の果てを見つめながら行う、ちょっとした立ち振る舞い
そして、おそらく警戒しているつもりなのであろう周囲への目視。
そのどれもが、彼女が戦いの訓練など全く積んでいない素人であることを示していた。
そうと分かればやることは一つ。
速やかに襲い、嬲り、奪う。それで終わりだ。
彼は方針を固めると、チラと脇に目をやった。
ちょうどこの倉庫と彼女との最短距離を結ぶ線上に、向こう側へと出ることができる裏口のドアがある。
ドアをそっと開け、女の下に走り、鉄パイプを振り下ろす――その過程を頭の中で描いてみる。
おそらく、鉄塊が頭を割る前に、女はこちらに気づくだろう。だが、気づいたときにはもう遅い。
この距離ならば、逃走のアクションをとるより前に、彼女を物言わぬ肉にすることができる。
もしかしたら、しばらく尾行し、隙を窺う必要があるかとも考えていたが
どうやら、そんな手間は無用の長物であるようだ。
ヴィシャスは足音を立てぬよう裏口ににじり寄る。
静かにノブをまわすと、ドアはわずかな器械音を漏らした後、わずかに開いた。
最後にこれからのミッションを短時間で軽く反復すると、一気にドアを開け放つ。
(その刀、もらったぞ!)
彼は鉄パイプを地擦りに構え、走り出した。
土を蹴る軽快な音だけが響く。
女は何を考えたのか、フラフラとエリア外の方へ歩を進めているが、特に問題はない。
まずは足だ。足を止めてからトドメをさす。
距離が近づく。剣の射程まであと4秒、3秒……今だ!
――だが、鉄パイプが彼女の白い脛を捉えることはなかった。
300: 2007/10/02(火) 02:12:48 ID:LwA42mVl(4/6)調 AAS
301: Vanishing One ◆RwRVJyFBpg 2007/10/02(火) 02:13:09 ID:mVzuG3Gn(5/8)調 AAS
ヴィシャスが襲撃の算段を立てている頃、千里もまた、考えていた。
地図の区画が確実なものではないことを確認したにもかかわらず、彼女は立ち去ろうとしない。
こんなところに突っ立っていても、一切の得はないというのに。
何故か。
彼女はまだ、禁止区域の線をはっきりさせることを諦めていなかった。
確かに、螺旋王は境界線を引いてはくれなかった。
だが、だからといって、物事をはっきりしないままで放置しておく木津千里ではない。
そして、そのために有効な手段ももう考えてある。
あとは、それを実行するだけなのだが……彼女は未だ踏ん切りがつけられずにいた。
「う――流石に勇気がいるわね。でも、やっぱり境目はきっちりしたい……」
それもそのはず。
何故なら、彼女の考え付いた『手段』というのはあまりに単純明快で、かつ、危険なものだったのだから。
千里のアイデア、それは、自ら禁止区域に向かって歩を進め
その境界を明らかにするという、あまりに向こう見ずなものだった。
一歩間違えれば、首輪が爆発し、首と胴とが永遠に泣き別れとなってしまう。
「……ほ、ほら、別に禁止区域に入ったらすぐ首輪が爆発するって決まったわけじゃないし。
きっと、警告くらいはあるわよね?」
確かに、その可能性はゼロではない。
もし、禁止区域に入った人間の首輪が即時に爆発する仕組みになっていたとするなら
そのつもりもなく、わずかに足を踏み入れてしまった人間の命さえ、主催者が奪ってしまうことになる。
殺し合いの過程にこそ価値のあるこのゲームで、それはあまり好ましくないだろう。
だが、それはあくまでも予測に過ぎない。
「さすがに命は惜しいしなあ……ああ、でもやっぱり、きっちりしたい。きっちりしたい」
木津千里はリスクとリターンとを天秤にかける。
リスク、自らの命が永遠に失われる可能性。
リターン、禁止区域の境界線がきっちり分かり、気が晴れる。
普通の人間ならば、まずリスクを回避する場面だろう。
だが――
「きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい」
不幸なことに、木津千里は――
「きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。
きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。」
他の人よりも少し――
「きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。
きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。
きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい」
はっきりしないことが苦手であった。
「きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。
きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。
きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。
きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい。きっちりしたい」
302: 2007/10/02(火) 02:14:40 ID:QUDoUruO(5/7)調 AAS
303: Vanishing One ◆RwRVJyFBpg 2007/10/02(火) 02:15:35 ID:mVzuG3Gn(6/8)調 AAS
気がつくと、彼女は歩いていた。
行き先はもちろん地図の外、禁止区域だ。
思い切ってしまえば意外と足取りも軽い。
土を蹴る軽快な音だけが響く。
そのテンポはまるで走っているかのように速い。
はじめに立っていた位置からは、もう随分進んだ気がする。
(そろそろ境界線かしら?)
千里がそう思うのと、視界が明転するのとは、ほぼ同時だった。
304: Vanishing One ◆RwRVJyFBpg 2007/10/02(火) 02:16:47 ID:mVzuG3Gn(7/8)調 AAS
「……バカな」
呟かずにはいられない。
ヴィシャスはうろたえ、そして、呆気にとられていた。
それも無理はない。
何故なら、さっきまで目の前にいたはずの女が忽然と掻き消えてしまったのだから。
呆けていたのも束の間、彼は鉄パイプを油断なく構え、周囲を警戒する。
全方位360度をくまなく走査するが、女の気配はどこにもない。
どうやら、逃げられてしまったようだ。
「……私としたことが、ブラフにかかったということか」
相手はこちらに気づいていないふりをしていた。つまりはそういうことだろう。
それならば、先ほどの不可解な行動――エリア外への移動――も納得がいく。
おそらくは、急に掻き消えることで襲撃者の混乱を誘い、禁止区域に踏み込ませて
首輪を爆破しようという腹だったに違いない。
なるほど、身体が鍛えられていなくとも、頭の方はそうでもないというわけか。
ヴィシャスは、一瞬だけ、感心するような顔を見せたが
その表情は、すぐに、苦虫を噛み潰したようなものへと塗り替えられた。
「一人用の位相差空間ゲート……そう考えるのが自然か?
何にせよ、やってくれたものだな」
強く歯を噛み締める。
上質の獲物をお預けにされた狂犬の横顔は、どこまでも凶暴だった。
【A-1西端/造成地/1日目-早朝】
【ヴィシャス@カウボーイビバップ】
[状態]:少し蹴られた時のダメージ有
[装備]:鉄パイプ
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:参加者全員の皆殺し。元の世界に戻ってレッドドラゴンの頂点を目指す。
1:不機嫌
2:武器の補充
3:皆殺し。ただし、武器が手に入るまでは戦う相手を選ぶ
4:スパイクと決着をつける
5:強そうな相手とは勝負を楽しみたい
305: 2007/10/02(火) 02:17:49 ID:QUDoUruO(6/7)調 AAS
306: 2007/10/02(火) 02:18:49 ID:JgeXTUes(1)調 AAS
307: 2007/10/02(火) 02:18:52 ID:y+hqlHbf(1)調 AAS
308: Vanishing One ◆RwRVJyFBpg 2007/10/02(火) 02:19:35 ID:mVzuG3Gn(8/8)調 AAS
「へ?」
一瞬の明転のあと、千里の目に飛び込んできたのは……一面の緑だった。
朝の柔らかな光が、薄布のように木々の隙間から差し込み、ぼんやりと辺りを照らしていた。
思わず一歩を踏み出すと、パキパキという音。
見ると、地面は落ち葉や小枝、柔らかそうな腐葉土で包まれていた。
右、左、右。周りを見渡してもあるのはただただ木、草、木。
青臭く、湿っぽい自然の香りを鼻腔に感じながら
木津千里は突っ込むのも忘れ、しばしの間、放心していた。
【A-8東端/森/1日目-早朝】
【木津千里@さよなら絶望先生】
[状態]:健康
[装備]:ムラサーミャ&コチーテ@BACCANO バッカーノ!
[道具]:普通のデイバッグ、支給品一式(食料-[1kg.のカレー、3缶][2リットルの水、3本])
[思考]:
基本:きっちりと実験(バトルロワイアル)を終了させる。
1.呆然。一体何がどうなったの?境界線は?
2.きっちりと端から端まで舞台を捜索する。
3.糸色望先生と出会ったら、彼との関係もきっちりとする。
4.食事(カレー)をする前に、どこかでお米を調達したい。
[補足]
※この会場の西端と東端、北端と南端は繋がっています。
どこかの端からエリア外に出ると、逆の端の対応する位置へとワープします。
※木津千里はA-1の西端からエリア外に出た結果、A-8の東端へとワープしました。
309: 2007/10/02(火) 22:55:32 ID:DY+53/dh(1/5)調 AAS
47 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 00:23:15 ID:z.zoAFPg0
>>45
えっとごめん、どこですか?
…剣の設定をよく知らずに記憶だけで書いてしまって実はびくびくしてました。
48 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 00:34:28 ID:XmfeFWds0
投下乙でしたー
素晴らしき人…やはり所詮は十傑集一の小物だったか…
個人的に、月の石の伏線に思わず手を打ちました。上手いなぁ…
そしてゆたかとDボゥイにフラグが!フラグが!!ゆーちゃん逃げてー、その人ロリ(ボルテッカァー!!
ところで気になった所が一つ
>※ヒィッツカラルドの支給品(0~2)が近くに転がっています。
ヒィッツカラルドの支給品は『月の石のかけら』と『フィーロの帽子』で二つ埋まっているので、支給品が(0~1)では無いでしょうか?
49 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 00:36:38 ID:64Qfmpvg0
月の石上手い!
ゆーちゃんの活躍も燃えた!
高攻撃力のマーダー失ったのは痛いけど、Dボゥイの無力化でお釣りが来る小物だからよし!
あと予約スレにも書いたけどトリップつけてね。
50 : ◆1sC7CjNPu2:2007/10/01(月) 00:37:16 ID:vP4XECFc0
>>48
痛恨のミスです
指摘あり(涙)
51 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 00:37:48 ID:nHlXM9HA0
>>47
単純に乖離剣は真命?言うだけじゃ攻撃できないということです
エヌマ・エリシュは真命じゃないし
そもそも乖離剣に真命があるかも不明
ギル自身が「名はない。自分はエアと呼んでいるが」って言ってるし
まぁ、持ち主のギルがエアって呼んでるから真命もエアになるのかもしれんけど
何か勘違い等してて見当はずれなこと言ってたらすいません
52 : ◆1sC7CjNPu2:2007/10/01(月) 00:41:10 ID:vP4XECFc0
>>49
面目ありません
以後気をつけます
感想ありがとうございます、やばいすごい嬉しい
310: 2007/10/02(火) 22:57:47 ID:DY+53/dh(2/5)調 AAS
53 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 00:41:19 ID:Pugo68mEO
投下乙です
流石素晴らしき人。(ある意味)期待を裏切らないw
DボウイかっこいいよDボウイ。今度は守れて良かったな
あと一つ、タイトルは声優ネタですね。よくあってたですよ
54 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 00:43:22 ID:XD8W6GvE0
さすがは十傑集最弱の男だww赤影さんに助け求めて殺されちゃうだけのことはあるなw
でもDボゥイに重傷負わせたのは立派だったぜ
55 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 00:49:07 ID:EFBA8DJc0
乙
ゆーちゃん頑張ったところで「サラマンダーキタ!」と思ったらそれどころじゃなかった件w
南無
56 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 00:50:47 ID:X4s3Cs6g0
ゆーちゃんかわいいよ、ゆーちゃんかっこいいよ!
GJ! まさかこんな序盤で本気で燃えさせてくれるとは思わなかった! 感動した!
57 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 00:52:25 ID:uAAEkWIs0
素晴らしき人の素晴らしさは素晴らしかったな
なんかもう読んでる途中もマーダーとしての輝きが素晴らしすぎて
「ああ、こいつここで死ぬんだろうな…」って簡単に予想できた
てか原作登場時のネタ全部やるんだもんよw
58 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 00:53:44 ID:Jiheu5n60
流石ヒィッツ! 他のマーダーに出来ないことを(ry
そういやDさんとシンヤ、案外近い位置にいるのね。ボロボロのDさん見たら中の人が酸欠になるような勢いで叫びまくりそうだw
59 : ◆5VEHREaaO2:2007/10/01(月) 00:59:00 ID:z.zoAFPg0
投下乙。Dボウィかっこいいー
>>51
アニメの最終話1話前だと、エヌマ・エニッシュとギルが言って剣から衝撃波が出てたので
自分の感覚だとあの設定です。
原作だとそうだと言われても正直対応できません。アニメのランサー戦とかで説明されていたとしたらごめんなさい。
60 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 01:10:00 ID:nHlXM9HA0
>>59
俺が言いたいのは「『エヌマ・エリシュ』は真命ではない」ということです
「武器を発動させるためのキーワード」とか他に言い方・やり方はあるのでは?、ということ
あとエヌマ・『エリシュ』です
61 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 01:16:30 ID:64Qfmpvg0
× 真命
○ 真名
双方ともwikiくらいは一応見ておいたほうがよいかと。
62 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 01:19:20 ID:nHlXM9HA0
うわ本当だ
失礼しました
63 : ◆5VEHREaaO2:2007/10/01(月) 01:24:13 ID:z.zoAFPg0
wikiなどで確認したところ自分も間違ってました。
とりあえず、展開に大きくは関わらないので、ちょこっと2ndwikiを修正してきます。
申し訳ありません。
64 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 01:27:05 ID:64Qfmpvg0
実は俺もFateよくしらないんだけど、ちょこっとググったら
「ゲーム原作では」ギルの台詞に「エアの真名に対抗する手段などない」とあるようです。
ただ諸説あり過ぎてよくわからんですね。Fate詳しい人にあとは任せます。
311: 覚悟はいいか? ◆o4xOfDTwjY 2007/10/02(火) 22:58:21 ID:IYg7WGtg(1/5)調 AAS
夜の闇は未だ色褪せず。空は相変わらずの漆黒を保ち、少し赤みのかかった満月は、この殺し合いにはお似合いの色だった。
その空の下、仲間の為に殺人を決意した男、ロイ・マスタングは新たなる獲物を探している。一面に広がる草原を歩き渡り、駅を目指していた。
彼の世界にモノレールなるものは存在しなかったが、駅というものは存在していた。
駅があるということは、モノレールとは汽車みたいな何かの乗り物だろう、彼はそう考えた。
もしそうだとしたら、移動のために人が集まるのではないだろうか?
人が集まる場所なら、新たな殺しの対象を見つけ出すのに効率が良いし、仲間を見つけるにも効率が良い、のだが…
「私がこんな殺し合いに乗ってると知ったら、あいつらはどういう顔をするだろうか…」
彼としては、仲間には積極的には会いたい気分ではなかった。
自分が殺し合いに乗ってると知れば、ホークアイやエルリック兄弟、そして死んだはずのヒューズも全力で止めるだろう。
もし彼らに会った場合は…
「ふっ… だが、そう簡単に会うこともないだろう」
その答えは保留とした。
今は邪魔者を殺すことを考えていればいい。
イシュヴァール殲滅戦の時のように、淡々と焼き殺せば…
そう考えた瞬間、自らが殺したイシュヴァール人の姿が走馬灯のように浮かぶ。
「いかんいかん。私としたことが。あの時、すでに過ちなど犯しているのだ。覚悟などとっくに出来ている」
そう自分に言い聞かせ、再び彼は歩み始める。
◇◇
312: 2007/10/02(火) 22:58:56 ID:DY+53/dh(3/5)調 AAS
65 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 01:32:50 ID:Kqd72gCU0
英雄王はエアと呼んでいるが乖離剣自体は無銘。
エヌマエリシュはエアの最大出力時の名称である。
エヌマエリシュを発動させる場合はエアに対してではなくエヌマエリシュに対して真名の開放が必要。
って感じだと思うよ。
だから真名の開放でOK。
66 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 01:35:13 ID:Kqd72gCU0
ちょっと上の説明が訳わかんなかったので簡単に言うと。
武器の名前と真名は別、ないし一致するとは限らないってことです。
67 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 01:35:34 ID:4KWwwaJg0
>>52
けっこう遅れたけど投下乙
素晴らしい人はサラマンダー化するまでもなく逝っちゃいましたかw
後、Dさんにゆーちゃん格好いいよー
アックス撃破後でランス登場前か…はたしてロワ内でブラスター化できるかな?
68 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 01:39:33 ID:IqQ62fR.0
別ルートでは手加減してるとはいえ何も言わずにエア使ってるからなー
エヌマエリシュとかただ最大出力の時に意味なく叫んでるだけな気がしないでもない
でも明確な設定はないんだしアニメ準拠なんだしぶっちゃけ適当でいいかと
69 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 01:56:31 ID:0FNS4CsM0
>>52
あがたーっ!
木津千里をきっちり分け目から真っ二つにする未来予想図が見事に真っ二つw
みんな小物、小物というけど縁故採用が強い十傑集において、実力のみで上がってきたヒィッツはかなりの強者なんだぜ?
しかし、書き手さんにはGJを送ろう。ヒィッツに帽子を被せるとはわかっているじゃあないかw
70 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 02:45:05 ID:7gUYiJzo0
とりあえず素晴らしき人が弱いんじゃなく他が化け物揃いだと言うことをどうかどうか理解して下さい・・・・
唯一の心残りは名言2
「今日は特別でね、もう一人来てるんだ」
がなかったことか・・・・まぁ死者スレで映えんだろうなw
71 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 09:56:31 ID:5B1k4pdU0
『ただ撃ち貫くのみ』で糸色望の旅立ちセット@さよなら絶望先生[遺書用の封筒が欠損]
が無くなってるんですがどうしたんですか
72 : ◆1sC7CjNPu2:2007/10/01(月) 10:05:11 ID:/RprbzBk0
>>71
表記ミスです・・・ミス多いぞ、俺OTZ
感想をくれた方、即wikiに乗せてくれた方、ありがとうございます
序盤でヒィッツを殺っちゃう展開は自分でもロワ進行的にどうかと思っていましたが受け入れてもらって幸いです
・・・うん、次はもっと考えて殺りますw
73 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 16:12:22 ID:AbWEB0jo0
初歩的な質問ですまん。
俺専ブラ使いはじめてちょっとしかたってないんだが、
作品投下の際、その作品の修正とかいうのが時々投下されてるんだけど
これは荒らしなのかどうなのか判断がつかないんだ。
透明あぼんすべきなのかな?
74 :名無しセカンド:2007/10/01(月) 16:27:29 ID:XDr9S.yoO
問題なく荒らしなので投下中書き手のトリ抽出してさっさと視界から消去しましょう
313(1): 覚悟はいいか? ◆o4xOfDTwjY 2007/10/02(火) 22:59:32 ID:IYg7WGtg(2/5)調 AAS
ランサーはあまり気乗りしている様ではなかったが、二人はこのゲームに参加している知り合いについての詳しい情報や、お互いの世界のことについて話し始めた。
ある程度の情報交換が終わると、エリオは暗視双眼鏡で外の様子を確認する。
北向きの方向に設置された窓から外を見渡す。二つの丸の中の狭いその視界に、一面の野原が映る。
しばらく双眼鏡を左右に動かしながら、可能な限り、外の様子を確かめた。
とくに異常はなし、そう思い双眼鏡から目を離そうとした瞬間、何かが動いているのを確認した。
人だ。どうやらこっちに向かって来ている様子だ。
「ランサーさん、人を発見しました。どうします?」
「あ?そうだな…」
モノレールの到着まで約15分ほど。停車時間は20分もある。その参加者と接触するには十分な時間だろう。
「会ってみる価値はあるだろうな」
「ええ、僕もそう思います。知り合いの可能性もありますし…」
エリオは偽・螺旋剣を手にとり立ち上がる。
一方、ランサーは動かない。渋い表情でエリオを見つめている。
「坊主、俺はさっき言ったよなぁ?殺す殺さないの覚悟はできてんのかって?答えを聞かせてもらおうか?」
「それは…」
エリオは言葉に詰まる。
ランサーに最初にこの質問を問われて、ずっとその答えを探っていた。
「僕はどんな人であろうと殺したくはない。殺し合いに乗ってたって、話し合えばわかる人だっていると思います。でも、もし話してもわからないような人がいるなら…」
エリオの頭の中で大切な仲間の姿が浮かぶ。
それは、年上ながらも同僚として毎日厳しい訓練を一緒に乗り越えてきたスバルとティアナであり、桃色の髪を揺らして優しく微笑みかけるキャロでもあった。
スバルやティアナは頼りになる人だが、人殺しをするような人ではない。
そしてキャロも優しい性格で、絶対に人を殺すようなことはしない。むしろデバイスなしでこの戦いに放り込まれ、今頃震えているのではないだろうか?
エリオは、優しいキャロの未来を血で汚したくなかった。
だから、決意した。
守るためなら、自分が「殺す」という覚悟を背負いこむと。
「殺し合いに乗った相手なら容赦はしません」
エリオの瞳は決意に満ちていた。覚悟を決めた目つきだった。
ランサーはそれを見ると、ニヤリと笑みを浮かべて立ち上がった。デイパックからナイフを取り出し、右手で軽く振る。
「エリオ・モンディアルと言ったな…。なかなか見込みのあるガキだ。今の決意、しっかり胸に刻んどけよ。…じゃねえと、死ぬからな」
「…はいッ!」
「じゃ、行くぞ」
◇◇
314(1): 覚悟はいいか? ◆o4xOfDTwjY 2007/10/02(火) 23:00:36 ID:IYg7WGtg(3/5)調 AAS
F−5エリアの駅の二階。そこにある乗車場のベンチに2人の槍使いは腰を降ろしていた。
モノレールの運行時間を確認したところ、次の北方面行きのモノレールは『3:30着 3:50発』と記されていた。
「あと1時間ぐらいでしょうか…」
「おいおい、長ぇえな…」
静寂が訪れる。気まずい雰囲気になったので、エリオはとっさにランサーに話を持ちかけた。
「あの…、せっかく時間があるんですし、お互いの持つ情報を交換しましょうよ」
「けっ、しゃあねえなあ…」
草原を歩き続けると、ロイは駅とおぼしき建物を発見した。
そして、その建物から出てきた2人の人間。
周りは見晴らしの良い草原であり、満月による月明かりも手伝って、何百メートルか離れた位置でも2人の姿は確認できた。
ロイはランタンとライターを取り出し、慎重に一歩ずつ歩み始める。
互いの距離は次第に狭まっていく。
そして距離が約10メートルほどに狭まったところで、ロイの攻撃が始まった。
ライターから発火された火が一気に前方へ広がり、エリオとランサーを燃やさんとする。
しかし、槍使いである2人の反応は俊敏であった。
それぞれ左右に跳躍し、襲いくる炎をかわしていた。
「ふっ、かわしたか。だが、今度は逃がさんぞ。覚悟はいいか?私はできてるッ!」
こうして、焔の錬金術師と2人の槍使い、両者の戦いが始まりを告るのであった。
【ロイ・マスタング@鋼の錬金術師】
[状態]:健康、両方の掌に錬成陣
[装備]:ランタン、拳銃型ライター
[道具]:支給品一式、ランダム不明支給品x2
[思考]
基本思考:知り合い以外の全参加者を殺害、脱出の道を探る。
1.エリオとランサーを殺す。
2.マース・ヒューズを始め、仲間を守る。会った時の対応は未定。
3.それ以外の参加者の殺害。
4.発火布の手袋を探す。
315: 2007/10/02(火) 23:01:21 ID:QUDoUruO(7/7)調 AAS
316: 2007/10/02(火) 23:01:46 ID:n0Gz5vXe(1/4)調 AAS
317(1): 2007/10/02(火) 23:01:59 ID:DY+53/dh(4/5)調 AAS
75 :73:2007/10/01(月) 17:06:49 ID:a47tF7960
>>74
dクス。さっそくアボンしてくる。
76 :名無しセカンド:2007/10/02(火) 00:08:36 ID:XN.AJAC6O
ただでさえ少ないGロボ勢が減ったのか
希少価値高い無差別マーダーなんだし、殺すには早いだろと思ったが、まあ、それもバトロワの魅力か
77 :名無しセカンド:2007/10/02(火) 00:41:32 ID:ZjMhqjfc0
投下乙です。 な ん と い う 外 道 っ ぷ り !
さすがマオ様。そこに痺れる憧れ(rシータもいい感じに揺れてきてこの二人の行く末に目が離せません。
78 :名無しセカンド:2007/10/02(火) 00:43:57 ID:2i61x1xA0
投下GJです。
シータ逃げて〜〜。その人悪い人だから!
しかもこのまま行くと高確率でカフカとぶつかる・・・。
79 :名無しセカンド:2007/10/02(火) 00:46:40 ID:S7L5oNcE0
投下乙。
なんかマオが自爆しそうな予感。
駄目だ。カフカの思考を読み取って、マオが潰れる瞬間が思い浮かんでしまう。
80 :名無しセカンド:2007/10/02(火) 00:52:28 ID:IlYILy1A0
>>79
文字通り過負荷で、か。
いやしかし、かがみんとぶつかるみたいだし、案外すり抜けるかも
81 :名無しセカンド:2007/10/02(火) 00:54:05 ID:oaBs.ivUO
乙
マオやべぇwシータと二人きりでも既に狂いかけかよ
マオにとっちゃカフカはガチ天敵だからなぁ、しかもヘッドホン無しとか堪えられる訳がないw
82 : ◆WcYky2B84U:2007/10/02(火) 01:07:51 ID:y1KpAHlA0
投下乙ですー
つかさがー!つかさが大変な事にー!!
外道だなぁマオ…まだマーダー化してる訳じゃないのにここまで憎たらしくなるキャラも珍しいw
さて、短いですがそろそろ投下しようかと思います。支援頼みますねー
83 :名無しセカンド:2007/10/02(火) 01:09:03 ID:S7L5oNcE0
了
84 : ◆WcYky2B84U:2007/10/02(火) 01:14:34 ID:y1KpAHlA0
投下終了しましたー
……おかしい、俺はムスカを強化しようと思っていたはずなのに、むしろ弱体化してるような…!?w
85 :名無しセカンド:2007/10/02(火) 01:16:38 ID:IlYILy1A0
乙ー、やっぱりムスカはこんなところで終る奴じゃないか。
にしても、情けないwww情けないでござるよムスカwww
86 :名無しセカンド:2007/10/02(火) 01:16:42 ID:kbYYNVO2O
ハハハ、ムスカは何度でも蘇る!
投下乙
87 :名無しセカンド:2007/10/02(火) 01:17:52 ID:iG5gUWzg0
乙
クロちゃんマジ武器の宝庫じゃねぇか。
ムスカに使いこなせるのかどうかわからんなww
88 :名無しセカンド:2007/10/02(火) 01:23:53 ID:g3KltpB20
>>oR氏 投下乙ー。これはいい外道w 今後も頑張っていって欲しいところだぜ。
何だか既に死亡フラグがちらついてる気がしないでもないけどw
あと、気になった点をいくつか。
日出処の『剣士』ではなく『戦士』が正解っす。
あと、日出処の戦士の鎧は狼を模したような甲冑で、日本風な要素は刀が日本刀っぽい程度なのでその辺もひとつ。
>>84
そしてこちらも乙ー。
流石ムスカだ、ほんの数話で強マーダーからヘタレマーダーへと転身しても何ともないぜw
89 :名無しセカンド:2007/10/02(火) 01:24:41 ID:6E5d5S/20
投下乙
ムスカいい味だしてるなぁwww
318: 2007/10/02(火) 23:03:09 ID:DY+53/dh(5/5)調 AAS
90 : ◆oRFbZD5WiQ:2007/10/02(火) 01:27:31 ID:IlYILy1A0
うー、なんでもありスレの情報を頼りに書いたが、やっぱり現物見てないと難しいか。
鎧は狼っぽい要素を含んだ西洋甲冑、でおkですか?
91 :名無しセカンド:2007/10/02(火) 01:30:31 ID:S7L5oNcE0
>>84GJ
ムスカ取り残されちまった。
武器は当たりだけどエレキテル装備のときより頼りなく見えるぜ。
92 :名無しセカンド:2007/10/02(火) 01:35:39 ID:iG5gUWzg0
>>90
こちらのイメージの11話を見ていただければいいかと
外部リンク[htm]:ash.jp
93 :名無しセカンド:2007/10/02(火) 01:39:05 ID:g3KltpB20
>>90
大体そんな感じでOKだと思いますよ。
……原作引っ張り出してみたら鬼にも見えてきたのは内緒orz
94 :名無しセカンド:2007/10/02(火) 01:40:36 ID:iG5gUWzg0
連レスですが、↑を見てもわかるように「どうみても顔見えちゃうじゃん」というツッコミが入りそうですが、
なぜかJINGの世界では誰も見えてなかったぽいので、よほど接近して見ないとわからない……と思います。
95 : ◆oRFbZD5WiQ:2007/10/02(火) 01:49:22 ID:IlYILy1A0
>>92-94 >>88
重ね重ねありがとうございます。当たり前の事ですが、やっぱりイメージだけで書くと失敗しますね。
今から修正した後、仮投下スレに投下させて頂きます。
96 : ◆oRFbZD5WiQ:2007/10/02(火) 02:04:45 ID:IlYILy1A0
修正案、投下しました。
あれの他に、剣士と戦士の誤植がありましたが、それについてはwiki掲載後に修正を予定しています。
いえ、文字の修正程度なら覚えたのですが、それ以外はまだ勉強中で<wiki
色々とご迷惑をおかけします。
────以上ここまで、報告終了
319: 覚悟はいいか? ◆o4xOfDTwjY 2007/10/02(火) 23:04:05 ID:IYg7WGtg(4/5)調 AAS
【エリオ・モンディアル@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:健康
[装備]:偽・螺旋剣@Fate/stay night
[道具]:支給品一式、防水性の紙×10@現実 、暗視双眼鏡@現実
[思考・状況]基本:このゲームの破壊。
1.ロイへの対応、できれば戦いは避けたい。
2.話しても殺し合おうとする人間ならば殺す覚悟。
3.ランサーについていく。
4.仲間と合流。
【ランサー@Fate/stay night】
[状態]:疲労(小)、精神的疲労(小) どちらも戦いには支障のないほどには回復。
[装備]:ハンティングナイフ
[道具]:支給品一式(地図と名簿を除く)、ヴァッシュの手配書(一枚)、
不明支給品0〜2個(槍・デバイスは無い)
[思考・状況]基本:このゲームを管理している奴らとの戦いを愉しませてもらう。
1.ロイへの対応
2.言峰、ギルガメッシュ、ヴァッシュの三人に借りを返す。
言峰とギルガメッシュは殺す予定(ヴァッシュについては不明)。
3.ゲームに乗った強者と全力の戦いを愉しむ。
4.できればまともな槍が欲しい。
5.ゲームに乗っていない相手でも実力を測るくらいはしたい。まずはエリオと手合わせ。
※参加時期は本編での死後。そのため言峰の令呪は無効化しています。
『モノレールについて』
駅間の移動時間は10分、駅での停車時間は20分。3時間で1往復となっています。
320: 2007/10/02(火) 23:04:55 ID:0MALIJrb(1)調 AAS
>>317
乙でございます
どうもこちらに修整をまた針に来そ〜だな
321: 覚悟はいいか? ◆o4xOfDTwjY 2007/10/02(火) 23:07:57 ID:IYg7WGtg(5/5)調 AAS
>>313 訂正
F−5エリアの駅の二階。そこにある乗車場のベンチに2人の槍使いは腰を降ろしていた。
モノレールの運行時間を確認したところ、次の北方面行きのモノレールは『3:30着 3:50発』と記されていた。
「あと1時間ぐらいでしょうか…」
「おいおい、長ぇえな…」
静寂が訪れる。気まずい雰囲気になったので、エリオはとっさにランサーに話を持ちかけた。
「あの…、せっかく時間があるんですし、お互いの持つ情報を交換しましょうよ」
「けっ、しゃあねえなあ…」
ランサーはあまり気乗りしている様ではなかったが、二人はこのゲームに参加している知り合いについての詳しい情報や、お互いの世界のことについて話し始めた。
ある程度の情報交換が終わると、エリオは暗視双眼鏡で外の様子を確認する。
北向きの方向に設置された窓から外を見渡す。二つの丸の中の狭いその視界に、一面の野原が映る。
しばらく双眼鏡を左右に動かしながら、可能な限り、外の様子を確かめた。
とくに異常はなし、そう思い双眼鏡から目を離そうとした瞬間、何かが動いているのを確認した。
人だ。どうやらこっちに向かって来ている様子だ。
「ランサーさん、人を発見しました。どうします?」
「あ?そうだな…」
モノレールの到着まで約15分ほど。停車時間は20分もある。その参加者と接触するには十分な時間だろう。
「会ってみる価値はあるだろうな」
「ええ、僕もそう思います。知り合いの可能性もありますし…」
エリオは偽・螺旋剣を手にとり立ち上がる。
一方、ランサーは動かない。渋い表情でエリオを見つめている。
「坊主、俺はさっき言ったよなぁ?殺す殺さないの覚悟はできてんのかって?答えを聞かせてもらおうか?」
「それは…」
エリオは言葉に詰まる。
ランサーに最初にこの質問を問われて、ずっとその答えを探っていた。
「僕はどんな人であろうと殺したくはない。殺し合いに乗ってたって、話し合えばわかる人だっていると思います。でも、もし話してもわからないような人がいるなら…」
エリオの頭の中で大切な仲間の姿が浮かぶ。
それは、年上ながらも同僚として毎日厳しい訓練を一緒に乗り越えてきたスバルとティアナであり、桃色の髪を揺らして優しく微笑みかけるキャロでもあった。
スバルやティアナは頼りになる人だが、人殺しをするような人ではない。
そしてキャロも優しい性格で、絶対に人を殺すようなことはしない。むしろデバイスなしでこの戦いに放り込まれ、今頃震えているのではないだろうか?
エリオは、優しいキャロの未来を血で汚したくなかった。
だから、決意した。
守るためなら、自分が「殺す」という覚悟を背負いこむと。
「殺し合いに乗った相手なら容赦はしません」
エリオの瞳は決意に満ちていた。覚悟を決めた目つきだった。
ランサーはそれを見ると、ニヤリと笑みを浮かべて立ち上がった。デイパックからナイフを取り出し、右手で軽く振る。
「エリオ・モンディアルと言ったな…。なかなか見込みのあるガキだ。今の決意、しっかり胸に刻んどけよ。…じゃねえと、死ぬからな」
「…はいッ!」
「じゃ、行くぞ」
◇◇
322: こうだな 2007/10/02(火) 23:09:28 ID:4zs1cwNC(1)調 AAS
F−5エリアの駅の二階。そこにある乗車場のベンチに2人の槍使いは腰を降ろしていた。
モノレールの運行時間を確認したところ、次の北方面行きのモノレールは『3:30着 3:50発』と記されていた。
「あと1時間ぐらいでしょうか…」 「おいおい、長ぇえな…」
静寂が訪れる。気まずい雰囲気になったので、エリオはとっさにランサーに話を持ちかけた。
「あの…、せっかく時間があるんですし、お互いの持つ情報を交換しましょうよ」 「けっ、しゃあねえなあ…」
ランサーはあまり気乗りしている様ではなかったが、二人はこのゲームに参加している知り合いについての詳しい情報や、お互いの世界のことについて話し始めた。
ある程度の情報交換が終わると、エリオは暗視双眼鏡で外の様子を確認する。 北向きの方向に設置された
窓から外を見渡す。二つの丸の中の狭いその視界に、一面の野原が映る。
しばらく双眼鏡を左右に動かしながら、可能な限り、外の様子を確かめた。
とくに異常はなし、そう思い双眼鏡から目を離そうとした瞬間、何かが動いているのを確認した。
人だ。どうやらこっちに向かって来ている様子だ。
「ランサーさん、人を発見しました。どうします?」
「あ?そうだな…」
モノレールの到着まで約15分ほど。停車時間は20分もある。その参加者と接触するには十分な時間だろう。
「会ってみる価値はあるだろうな」
「ええ、僕もそう思います。知り合いの可能性もありますし…」
エリオは偽・螺旋剣を手にとり立ち上がる。
一方、ランサーは動かない。渋い表情でエリオを見つめている。
「坊主、俺はさっき言ったよなぁ?殺す殺さないの覚悟はできてんのかって?答えを聞かせてもらおうか?」
「それは…」
エリオは言葉に詰まる。
ランサーに最初にこの質問を問われて、ずっとその答えを探っていた。
「僕はどんな人であろうと殺したくはない。殺し合いに乗ってたって、話し合えばわかる人だっていると思います。でも、もし話してもわからないような人がいるなら…」
エリオの頭の中で大切な仲間の姿が浮かぶ。
それは、年上ながらも同僚として毎日厳しい訓練を一緒に乗り越えてきたスバルとティアナであり、桃色の髪を揺らして優しく微笑みかけるキャロでもあった。
スバルやティアナは頼りになる人だが、人殺しをするような人ではない。
そしてキャロも優しい性格で、絶対に人を殺すようなことはしない。むしろデバイスなしでこの戦いに放り込まれ、今頃震えているのではないだろうか?
エリオは、優しいキャロの未来を血で汚したくなかった。
だから、決意した。
守るためなら、自分が「殺す」という覚悟を背負いこむと。
「殺し合いに乗った相手なら容赦はしません」
エリオの瞳は決意に満ちていた。覚悟を決めた目つきだった。
ランサーはそれを見ると、ニヤリと笑みを浮かべて立ち上がった。デイパックからナイフを取り出し、右手で軽く振る。
「エリオ・モンディアルと言ったな…。なかなか見込みのあるガキだ。今の決意、しっかり胸に刻んどけよ。…じゃねえと、死ぬからな」
「…はいッ!」
「じゃ、行くぞ」
323: 2007/10/02(火) 23:10:11 ID:n0Gz5vXe(2/4)調 AAS
324(1): 覚悟はいいか? ◆o4xOfDTwjY 2007/10/02(火) 23:13:17 ID:UOhsYye5(1)調 AAS
>>314 訂正
草原を歩き続けると、ロイは駅とおぼしき建物を発見した。
そして、その建物から出てきた2人の人間。
周りは見晴らしの良い草原であり、満月による月明かりも手伝って、何百メートルか離れた位置でも2人の姿は確認できた。
ロイはランタンとライターを取り出し、慎重に一歩ずつ歩み始める。
互いの距離は次第に狭まっていく。
そして距離が約10メートルほどに狭まったところで、ロイの攻撃が始まった。
ライターから発火された火が一気に前方へ広がり、エリオとランサーを燃やさんとする。
しかし、槍使いである2人の反応は俊敏であった。
それぞれ左右に跳躍し、襲いくる炎をかわしていた。
「ふっ、かわしたか。だが、今度は逃がさんぞ。覚悟はいいか?私はできてるッ!」
こうして、焔の錬金術師と2人の槍使い、両者の戦いが始まりを告げた。
【ロイ・マスタング@鋼の錬金術師】
[状態]:健康、両方の掌に錬成陣
[装備]:ランタン、拳銃型ライター
[道具]:支給品一式、ランダム不明支給品x2
[思考]
基本思考:知り合い以外の全参加者を殺害、脱出の道を探る。
1.エリオとランサーを殺す。
2.マース・ヒューズを始め、仲間を守る。会った時の対応は未定。
3.それ以外の参加者の殺害。
4.発火布の手袋を探す。
325(1): 2007/10/02(火) 23:19:18 ID:gSUKvm09(1)調 AA×
![](/aas/anichara_1190992762_325_EFEFEF_000000_240.gif)
2chスレ:anichara
326: 2007/10/02(火) 23:40:38 ID:42xbvMb5(1)調 AAS
>>325
ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ乙
327: 覚悟はいいか? ◆o4xOfDTwjY 2007/10/02(火) 23:44:28 ID:n0Gz5vXe(3/4)調 AAS
>>324
場所と時間の表記を忘れていました。
【F5/駅付近の草原/1日目/黎明】
でお願いします。
毎度ミスばかりで申し訳ありません。
328: この呼び方では迷惑ですか? ◆lbhhgwAtQE 2007/10/02(火) 23:46:32 ID:aDTDtLj/(1/9)調 AAS
八神はやてと文字通り手痛い別れをした後。
少年パズーは、市街地の中央を目指すべく道路を東進していた。
「シータ……いるかなぁ……」
向かう先に探す少女がいるという確証はない。
だが、市街の中心部ならば人も集まるであろうし、その集まる中に彼女がいる確率も高いはず。
パズーは、そんな自分の勘を信じて歩き続ける。
すると、そんな時……
「きゃあっ!」
「うわぁっっととと!!」
突如、女性が路地から飛び出してきて、パズーに衝突しそうになってきた。
しかし、幸いにも、女性はぶつかる直前に立ち止まったので、双方に怪我はなく済んだようだ。
「あ、危ないなぁ……」
「ごめんなさい。少し急いでたもので……。坊やの方は大丈夫?」
「う、うん」
「そう。なら、よかった……」
女性は安堵したように息をつく。
パズーはそんな女性の様子を見て、ひとまず殺し合いに乗ってる人物ではないんだろうなと推測する。
そして、それと同時に彼は女性のその容姿を見て、あることを思い出した。
つい先ほど出会った少女が口にしてくれたある人物についての情報を。
「あ、あのさ、一つ聞いてもいい?」
「え?」
「あのさ……おばさん、シャマルって人?」
「……は?」
329: 2007/10/02(火) 23:47:08 ID:kEQYQS1p(1/4)調 AAS
330: 2007/10/02(火) 23:47:55 ID:J6UIEUWO(1/4)調 AAS
331: この呼び方では迷惑ですか? ◆lbhhgwAtQE 2007/10/02(火) 23:47:55 ID:aDTDtLj/(2/9)調 AAS
――で、次はシャマルやね。シャマルはなぁ、短めの金髪した女の子やね。年は……まぁ、あたしよりも年上っぽいかなぁ?
あたしと同じような服か緑色の騎士服を着とると思うよ。んで、一番重要なんはね……この子のバストがこれまたえろえろってところや!
金髪ショート、はやてより年上っぽい女性、軍服、そして豊かなプロポーション。
それらの情報から、目の前の女性を“シャマル”と推測したパズーだったが、どうやらそれは違ったようだった。
女性は、そんなパズーの事情を聞き、納得すると手短に自己紹介をする。
「私はアメストリス軍東方司令部所属の中尉、リザ・ホークアイよ。残念ながらシャマルという人じゃないわ。で、坊やは?」
「ぼ、僕はパズー。シータって女の子を捜してるんだけど、おばさん知らない? 黒くて長い髪した僕と同い年くらいの子なんだけど……」
すると、リザはパズーのとあるフレーズにこめかみをピクリと動かすものの、すぐに表情を元に戻し首を横に振る。
「悪いけど知らないわ。ここに来てから普通の人間に会ったのはあなたが初めてだし――」
「そっか……」
「それじゃ、私からも質問してもいいかしら?」
「う、うん、いいよ」
パズーは、はやてに言われた『焦るな』という言葉を思い出し、すぐにでも駆け出したい気持ちを抑えてリザの話を聞く。
すると、やはりリザも自分やはやて同様に、人を探しているようだった。
彼女が探しているのは四人の男達。
しかし、その容姿について説明されてもパズーには全く見覚えの無い人物ばかりであった。
パズーが、その事を素直にリザへと伝える。
「ごめん、全然知らないや」
「そう……。それなら仕方ないわね」
「でも、その知り合いって人達に会ったら、僕伝えておくよ。おばさんが探してたってこと」
ここでリザはこめかみを小刻みに震わせる。
理由は勿論、自分に対して二度も用いられたあのフレーズ。
だが、リザはそれでも極めて冷静な態度を取り続ける。
軍人として。大人の女性として。
「あ、ありがとう。それは頼もしいわ……ね」
「うん、そういうことだから、僕はそろそろ行くね! それじゃ!」
「あ、ま、待ちなさい!」
駆け出そうとするパズーをリザは既の所で引き止める。
「どうしたの? まだ何か聞きたいことでもあるの?」
「いえ、そうでなくて……。あなた、そっちに行こうとしていたってことは、市街地の方に行こうとしてるんでしょう?」
「そうだよ。施設みたいのが集まってる場所ならシータもいるかなぁと思ってるんだ」
人探しをしているのならば、その判断は正しいだろう。
ただし、そこに集まる人間の中には、パズーが期待する人間の他にもいるわけで……。
「私も、これから北の方に向かおうとしていたの」
「へぇ〜。そうなんだ」
「だから、途中まであなたに同行させてもらってもいいかしら?」
トンネルで遭った怪物のような参加者が市街地にも紛れているかもしれない。
ならば、そのような地に少年を一人で行かせるわけにはいかない。
弱者を守るのが軍人としての義務ならば、リザも目の前の少年を放っては置けなかったのだ。
332: 2007/10/02(火) 23:48:04 ID:5iNsg2hJ(1)調 AAS
333: 2007/10/02(火) 23:48:55 ID:n0Gz5vXe(4/4)調 AAS
334: この呼び方では迷惑ですか? ◆lbhhgwAtQE 2007/10/02(火) 23:49:18 ID:aDTDtLj/(3/9)調 AAS
◆
一方、所変わって市街地外縁部にある中華料理店内部。
そこには二人の女性がいた。
「まーったく! 飯出す場所だってのにシケてんねぇ、この店はぁ!」
一人は恰幅のいい中年女性。
彼女は、厨房の奥にあった冷蔵庫を漁りながら、文句を垂れていた。
「これじゃ、うちの船の厨房の方がマシだよ」
そう言いつつ、中年女性は冷蔵庫から肉や野菜などの食材を回収してゆく。
そして、そんな女性の傍で何もすることなく立っている華奢な少女が一人。
「あ、あのドーラさん。何をしていらっしゃるんですか?」
「何って、食べるモンを探してるに決まってるじゃないか!」
「でも、食べるものでしたら、元々カバンの中に……」
「あんな味も素っ気も無いモンだけなんかやってられるかい。――ったく、爆弾と刀渡すくらいなら、飯もいいのをよこせってんだよ、あの螺旋王とやらも」
ドーラと呼ばれた女性は、ブツクサと文句を言いながらも冷蔵庫漁りを続ける。
どうやら、彼女には腰に差す刀の他に、見慣れた爆発物を支給されたようだ。
『ドイツの滑空王も愛用の逸品』と書かれていたが、別にそのようなことはどうでもいいことだった。
「ほらよ、受け取りな!」
そして、ドーラはその冷蔵庫の中から何かを掴むと少女に投げて渡す。
「え? あわわ!!」
少女が受け取ったそれは、チャーシューとレタス(生)であった。
「ニア、女の子だったらね、ちゃんと栄養あるもん食べないとダメなんだよ」
「どうしてですか?」
「どうしてって……そりゃあ、ちゃんとしたもの食べないと肌にも悪いしねぇ、それになによりイザって時に力が出ないだろう」
「なるほど! 確かにそうですね!」
ニアと呼ばれた少女は無邪気な笑みを浮かべる。
それを見たドーラは、やや苦笑気味だ。
「まぁ、そういうことだよ。分かったら少しはかじっておきな。そろそろ腹も空いただろう?」
「そうですね。それでは頂きます!」
笑顔のままニアは手にしたチャーシューをかじり、咀嚼する。
続けて、レタスを一枚ちぎると、それも口に。
「おいひいです!」
「あぁ、分かったから、一々感動したように言わんでおくれ」
「らっへ、おいひいんですもの」
「あのねぇ、女の子だったら食べながら喋るんじゃないよ。そんなんだと男に逃げられちまうよ」
その言葉にニアは口を閉じると、食事を中断する。
「……ん、どうしたんだい? もう腹一杯になっちまったのかい?」
「いえ……。ただ、シモン達も今頃おなかをすかせていないかと思ってしまいまして……」
335: 2007/10/02(火) 23:49:48 ID:J6UIEUWO(2/4)調 AAS
336: この呼び方では迷惑ですか? ◆lbhhgwAtQE 2007/10/02(火) 23:50:33 ID:aDTDtLj/(4/9)調 AAS
自分はこうやって、食料を調達出来たからいいものの、ここに今いないシモンやヨーコはどうしているのだろうか?
ドーラ曰く“味も素っ気も無いモン”しか口に出来ないのではないだろうか?
そうなると、自分だけこうやって美味しい食事をしているのはいけないことなのではないのか?
そのような不安がニアの脳裏をよぎったのだ。
だが、そんな思いを見透かしたかのようにドーラは彼女の背を叩く。
「なーに、お前さんみたいのがそんな心配しなくてもいいんだよ! そいつらはそいつらでよろしくやってるだろうさ!」
「本当……でしょうか?」
「あぁ、きっとね。そのシモンやヨーコっていうお仲間は、そんな柔な連中じゃないんだろ?」
「はい! ヨーコさんは銃の名手でガンメンに臆することなく戦っていますし、シモンはグレンラガンで皆の先頭に立ってくれています。どちらとも強い方です!」
それを聞いてドーラは頷く。
「なら、大丈夫さ。きっとね」
「そう……ですね。そうですよね!」
「あぁ。だから今は飯食うことだけに集中しな」
ドーラはそう言うと、自らも肉や野菜に豪快にかぶりつき、陶器瓶に入った液体を鯨飲する。
どうやら、冷蔵庫の中身とは別に紹興酒も見つけたようだった。
「ぷはぁっ! 東洋の酒も捨てたもんじゃないねぇ。……でも、これからのこと考えると酒もあんまり飲まないほうがいいかもしれないか」
酔っていたせいで殺された、などという結末は死んでも御免だ。
それこそあの世の夫に腹を抱えて笑われそうだ。
名残惜しいと思いながらも、ドーラは瓶を置く。
そして、二人が早めの朝食を終えると……
「さて、それじゃ聞かせてもらうかね。お前さん達の事についてを詳しくさ」
「そうですね。そろそろお話しなくてはなりませんね。私達やお父様の事……」
337: 2007/10/02(火) 23:51:41 ID:kEQYQS1p(2/4)調 AAS
338: この呼び方では迷惑ですか? ◆lbhhgwAtQE 2007/10/02(火) 23:51:40 ID:aDTDtLj/(5/9)調 AAS
ニアは話す。
自分がシモンに拾われた後に起きた出来事を。
人間、獣人、ガンメン、大グレン団、四天王、首都テッペリン、そして螺旋王。
ニア自身は元々人間と獣人の対立はおろか、人間とは何かすら知らなかったので、その情報の殆どはシモン達からの受け売りだった。
だが、それでもドーラの耳にそれらの情報はきちんと届いた。
そして、ドーラはその情報に思わず困惑する。
「あたし達人間が地下に閉じ込められてる世界ねぇ……そんなの聞いたことないよ」
「では、ドーラさん達はシモンやヨーコさんのように地下に住んでいたわけではないのですか?」
「勿論さ。むしろあたしら海賊は空に住んでるようなものさね」
タイガーモス号での息子や息子分の部下達、同年代の偏屈な機関長との生活をドーラは思い出す。
もし、ニアの話が本当ならば、あの海賊暮らしすらも禁じられているという事になる。
「本当に人間は地下暮らしだったのかい?」
「はい。シモン達からはそう聞いてます。だからシモン達は大グレン団を立ち上げてお父様に立ち向かおうとしていたのですが……」
だが、その大グレン団一世一代の大作戦であるテッペリン攻略を前にしてニアはここに呼び出された。
シモンやヨーコ達とともに。そして、呼び出したのは他ならない獣人の長、螺旋王ロージェノム。
ニアの顔には困惑と不安が入り混じった表情が次第に浮かぶ。
そして、そんなニアを見ていたドーラは……
「そんな顔されると信じるほかないじゃないか。ほら、信じるからそんな顔しないでおくれ」
「ドーラさ――わぷっ!」
ドーラは唐突にニアを抱きしめた。
ニアは必然的にドーラの豊満な肉体に飲み込まれる。
しかし、それは苦しいというよりもどこか温かく……。
「要はそのシモンやヨーコ達と合流して、脱出方法を見つけてここからもとの大グレン団とかいうところに戻れば良いわけだろう? なんとかなるさね」
「ドーラさん……」
その言葉にはどこにも確証はない。
だが、彼女のぬくもり、そして荒っぽいながらも優しさの含まれた声に、ニアは安堵を覚える。
すると、ドーラはようやくニアを拘束から解放する。
「……どうだい、少しは落ち着いたかい?」
「はい……ありがとうございます。ドーラおばさま」
「ま、それなら何よりだ――――って、んん? おばさま?」
ドーラは、ニアの自分に対する呼び方を思わず聞き返してしまう。
「はい、おばさまです。何だかそう呼びたくなってしまいました」
「おばさま……ねぇ」
「あの……この呼び方は迷惑ですか?」
ニアは不安そうにドーラを見やる。
だが、ドーラは決して不満げな顔はしていない。
むしろ、そこには彼女をそう呼んでいた少女を懐かしむ顔があり……
「別に構わないさ。好きにしておくれ」
「はい! 好きにさせてもらいます! ドーラおばさま!」
339: 2007/10/02(火) 23:51:58 ID:LwA42mVl(5/6)調 AAS
340: 2007/10/02(火) 23:52:59 ID:kEQYQS1p(3/4)調 AAS
341: 2007/10/02(火) 23:53:20 ID:J6UIEUWO(3/4)調 AAS
342(1): この呼び方では迷惑ですか? ◆lbhhgwAtQE 2007/10/02(火) 23:54:28 ID:aDTDtLj/(6/9)調 AA×
![](/aas/anichara_1190992762_342_EFEFEF_000000_240.gif)
343: この呼び方では迷惑ですか? ◆lbhhgwAtQE 2007/10/02(火) 23:55:37 ID:aDTDtLj/(7/9)調 AAS
◆
ニア達が情報を交換していたその頃。
彼女らのいた中華料理店を横目に道路を歩いてゆく二つの影があった。
パズーとリザだ。
「なるほど……。つまり、そのムスカという男が軍隊を引き連れてシータという少女を連行していったと」
「そうなんだ。本当に酷い奴らだろ? シータは何も悪いことしてないのに」
「軍を使って子供……しかも少女を無理矢理……か。確かに卑劣ね」
とは口で言うものの、アメストリスの軍、そしてそれに属する自分も人のことは言えないだろうなとリザは内心思う。
何せ、軍はかつてイシュバールにて上層の命令だったとはいえ、無数の無辜の民を老若男女関係なく殺害したのだから。
そして、それに自分も加わっていたわけで……
「だから僕は、ムスカに見つかる前に……誰かに襲われる前にシータを助けたいんだ!」
「そうね……」
しかし、この少年はそのような世の中の不条理さを知らないように見える。
理想はいつか必ず叶う――そう主張しているような瞳をしていた。
自分もかつては持っていただろうその瞳。だが、今は……
「でも坊や。もしそのシータがムスカって男やほかの誰かに襲われかけていたらどうすつもり?」
「そりゃあ、勿論……」
「あなたはその時、その奇妙な刃物で刺せるかしら? あなたにとっての敵を」
「そ、それは…………」
酷な質問だったかもしれない。
だがそれは、その時が来たならばすぐに答えを出さなければならないもの。
迷っていては、手に入れられるものも手に入らないのだ。
「人は何かの代償なしに何かを手に入れることは出来ない」
「え?」
「つまりはそういうことよ。そのシータを守りたいなら、きっとあなたは誰かを犠牲に――」
「そんなことしない! 僕は……誰も殺さないでシータを守ってみせる!」
リザの言葉をパズーは断固否定する。
そのような返答が来るのは、今までの少年の様子からすれば想像するに容易かった。
だが、現実はそうは甘くない。……彼もいつかそれを知る日が来るだろう。
例え自分がそれを口にしなくとも。
「……そう。あなたの決意はよく分かったわ」
「コトミネって神父といい、おばさんといい、同じ質問ばっかりしないでほしいや」
三度こめかみがピクリ。
だが、リザは相も変わらずそこで取り乱すことなく会話を続けた。
344: 2007/10/02(火) 23:56:10 ID:kEQYQS1p(4/4)調 AAS
345: 2007/10/02(火) 23:57:14 ID:LwA42mVl(6/6)調 AAS
346: この呼び方では迷惑ですか? ◆lbhhgwAtQE 2007/10/02(火) 23:57:45 ID:aDTDtLj/(8/9)調 AAS
「そ、それで、話は変わるけれど一つ聞いて良いかしら?」
「ん? 何?」
「そのナイフで思い出したのだけれど、坊やが配られたのはそれだけなの? 他に武器は?」
「う〜ん、実はこれ、さっき言った神父から貰った物なんだ。僕のカバンに入ってた武器はヘンテコな銃くらいで――」
銃、その言葉にリザは目を見開く。
「坊や、その銃っていうのはどんな物? 年式は? 拳銃かしら? それともライフル?」
「うぅん。トリモチと飛ばすオモチャみたいな奴だったんだ。ハヤテって人に渡したら、一応武器になるって言ってたけどね」
パズーの言葉にリザの表情は一気に落胆に変わる。
オモチャでしかも他人に譲渡した後では、全く話にならない。
やはり、警察署を頼るしかないようだ。
「……あ、そうだ。もしかしたら僕に使い方が分からないだけかもしれないから、僕の支給品見てみる?」
「いいのかしら?」
「まぁ、僕はこれがあれば何とかなるし、使い方分かるならあげるよ」
リザはパズーから渡されたカバンを受け取ると、その中身を確認する。
するとまず出てきたのは、タロットカードだ。
『殺人事件の見立てに使われた曰く付き』と記された縁起でもない説明書が梱包されていたが、実際の所は何の役にも立たなそうだった。
そして、次に出てきたのは、親指ほどの大きさをしたプラスチック製の何か。
透明で中には金属で出来た何かが入っており、説明書には『大容量16M!』と書かれていたが、リザには何のことかは理解できない。
「……どう? 役に立ちそう?」
「残念だけれど、私にも使い道は見出せそうにないわね」
「そうかぁ……」
デイパックをパズーに返すとリザ達は再び歩き続ける。
すると、直に彼らは大通りが分岐するT字路にたどり着いた。
「ここを左に行けば、市街地の中央。デパートみたいな施設が集まっている地点ね」
「うわぁ、なんか要塞みたいな建物が一杯見えるなぁ……」
辺境の鉱山街暮らしが長かったパズーにとって、日が昇りかけて明るくなりつつある空に照らされる無数のビルディングは圧巻だった。
「デパート経由でも北上すれば警察署は近い……か。なら、大佐達を探す意味でもそっちを回ってみても意味がありそうね……」
地図を見ながら考え込むリザであったが、それと対照的にパズーは浮き足立っていた。
「ねぇ、早く行こうよ。シータがいるかもしれないんだから!」
「え、えぇ、そうね……」
「よし、それじゃ行こうか、おばさん!」
――ぷちん。
ここまで保ってきたリザの理性は、そこで勢い良く切れた。
そして、彼女は少年の肩をつかむとその頭頂部目掛けて……
――ごちん!
それはパズーにとってはデジャヴュな経験。
だが、彼にはなぜそうなったのか、未だに理解できずにいた。
――――――おばさんとおばさま。
――――――その呼称は時に人に安心を、またある時は痛みを呼び起こすものであるようだ。
347: 2007/10/02(火) 23:58:47 ID:J6UIEUWO(4/4)調 AAS
348: この呼び方では迷惑ですか? ◆lbhhgwAtQE 2007/10/02(火) 23:59:52 ID:aDTDtLj/(9/9)調 AAS
【E-7/T字路/一日目/早朝】
【パズー@天空の城ラピュタ】
[状態]:健康だが右頬と頭頂部に鈍い痛み
[装備]:ルールブレイカー@Fate/stay night
[道具]:荷物一式 タロットカード@金田一少年の事件簿 USBフラッシュメモリ
[思考]
基本:とにかくシータを一刻も早く探す
1:親方のゲンコツより痛いや…………
2:リザと市街地まで向かう
3:言峰の言葉が気になる。だけど人は殺さない
4:六課メンバー、クロやロイ達を見つけたら声をかける
5:焦らないようにする
※六課メンバー、クロ達、ロイ達の名前、容姿をある程度覚えました。
【タロットカード@金田一少年の事件簿】
タロット山荘殺人事件にて、見立て殺人のモチーフにされたカード一式。
アンティーク的な価値がある以外は、極めて普通のカード?
【USBフラッシュメモリ@現実】
16Mの容量がある外部取付型記憶端末。中身は不明。
【リザ・ホークアイ@鋼の錬金術師】
[状態]:健康
[装備]:ダーツ23本 、マタタビの勇姿(後ろ姿)を撮ったデータが一枚入っています。
[道具]:デイバッグ、支給品一式、泉そうじろうのデジタルカメラ説明書付@らき☆すた
[思考]
基本:ここから脱出する。殺し合いをするつもりはない。
1:せめて、お姉さんと呼びなさい
2:ロイ・マスタング大佐、マース・ヒューズ中佐、エルリック兄弟 と合流する。
3:2の為にまずはパズーと行動を伴にしつつ市街地を軽く捜索。頃合を見てパズーとは別離したい。
4:トンネル付近に潜む怪物を警戒。
5:改めて警察署で銃器を調達する。
6:20時間後にHー6の温泉に戻ってマタタビに協力を要請する。
※リザ・ホークアイの参戦時期はアニメ本編15話辺り。 そのため彼女の時間軸では、マース・ヒューズはまだ生存中です。
※改めて道路沿いに北上中。
※『線路の影をなぞる者(レイルトレーサー)』の名前を聞きましたが、名簿に記載されていないことに気づいていません。
※ディバッグに穴が開いてしまったので、持ち運びが不便。いつもより歩行速度に影響が出ています。
※マタタビと情報交換をしてません。マタタビを合成獣の一種だと考えています。
※マタタビの温泉再建について、パズーにはまだ話していません。
>>342 現在地修正
【F-7北端/中華料理店内部/1日目/早朝】
349: 手修整 2007/10/03(水) 00:02:03 ID:cJ0LWB60(1/2)調 AAS
八神はやてと文字通り手痛い別れをした後。
少年パズーは、市街地の中央を目指すべく道路を東進していた。
「シータ……いるかなぁ……」
向かう先に探す少女がいるという確証はない。 だが、市街の中心部ならば人も集まるで
あろうし、その集まる中に彼女がいる確率も高いはず。 パズーは、そんな自分の勘を信じて歩き続ける。
すると、そんな時……
「きゃあっ!」
「うわぁっっととと!!」
突如、女性が路地から飛び出してきて、パズーに衝突しそうになってきた。
しかし、幸いにも、女性はぶつかる直前に立ち止まったので、双方に怪我はなく済んだようだ。
「あ、危ないなぁ……」
「ごめんなさい。少し急いでたもので……。坊やの方は大丈夫?」
「う、うん」
「そう。なら、よかった……」
女性は安堵したように息をつく。 パズーはそんな女性の様子を見て、ひとまず殺し合いに
乗ってる人物ではないんだろうなと推測する。 そして、それと同時に彼は女性のその容姿を見て、
あることを思い出した。 つい先ほど出会った少女が口にしてくれたある人物についての情報を。
「あ、あのさ、一つ聞いてもいい?」
「え?」
「あのさ……おばさん、シャマルって人?」
「……は?」
――で、次はシャマルやね。シャマルはなぁ、短めの金髪した女の子やね。年は……まぁ、あたしよりも年上っぽいかなぁ?
あたしと同じような服か緑色の騎士服を着とると思うよ。んで、一番重要なんはね……この子のバストがこれまたえろえろってところや!
金髪ショート、はやてより年上っぽい女性、軍服、そして豊かなプロポーション。
それらの情報から、目の前の女性を“シャマル”と推測したパズーだったが、どうやらそれは違ったようだった。
女性は、そんなパズーの事情を聞き、納得すると手短に自己紹介をする。
350: 微修整 2007/10/03(水) 00:04:26 ID:ngcg/2zP(1)調 AAS
一方、所変わって市街地外縁部にある中華料理店内部。
そこには二人の女性がいた。
「まーったく! 飯出す場所だってのにシケてんねぇ、この店はぁ!」
一人は恰幅のいい中年女性。 彼女は、厨房の奥にあった冷蔵庫を漁りながら、文句を垂れていた。
「これじゃ、うちの船の厨房の方がマシだよ」
そう言いつつ、中年女性は冷蔵庫から肉や野菜などの食材を回収してゆく。
そして、そんな女性の傍で何もすることなく立っている華奢な少女が一人。
「あ、あのドーラさん。何をしていらっしゃるんですか?」
「何って、食べるモンを探してるに決まってるじゃないか!」
「でも、食べるものでしたら、元々カバンの中に……」
「あんな味も素っ気も無いモンだけなんかやってられるかい。――ったく、爆弾と刀渡すくらいなら、飯もいいのをよこせってんだよ、あの螺旋王とやらも」
ドーラと呼ばれた女性は、ブツクサと文句を言いながらも冷蔵庫漁りを続ける。
どうやら、彼女には腰に差す刀の他に、見慣れた爆発物を支給されたようだ。
『ドイツの滑空王も愛用の逸品』と書かれていたが、別にそのようなことはどうでもいいことだった。
「ほらよ、受け取りな!」
そして、ドーラはその冷蔵庫の中から何かを掴むと少女に投げて渡す。
「え? あわわ!!」
少女が受け取ったそれは、チャーシューとレタス(生)であった。
「ニア、女の子だったらね、ちゃんと栄養あるもん食べないとダメなんだよ」
「どうしてですか?」
「どうしてって……そりゃあ、ちゃんとしたもの食べないと肌にも悪いしねぇ、それになによりイザって時に力が出ないだろう」
「なるほど! 確かにそうですね!」
ニアと呼ばれた少女は無邪気な笑みを浮かべる。
それを見たドーラは、やや苦笑気味だ。
「まぁ、そういうことだよ。分かったら少しはかじっておきな。そろそろ腹も空いただろう?」
「そうですね。それでは頂きます!」
笑顔のままニアは手にしたチャーシューをかじり、咀嚼する。
続けて、レタスを一枚ちぎると、それも口に。
「おいひいです!」
「あぁ、分かったから、一々感動したように言わんでおくれ」
「らっへ、おいひいんですもの」
「あのねぇ、女の子だったら食べながら喋るんじゃないよ。そんなんだと男に逃げられちまうよ」
その言葉にニアは口を閉じると、食事を中断する。
「……ん、どうしたんだい? もう腹一杯になっちまったのかい?」
「いえ……。ただ、シモン達も今頃おなかをすかせていないかと思ってしまいまして……」
351: 微修整 2007/10/03(水) 00:07:06 ID:cJ0LWB60(2/2)調 AAS
「そ、それで、話は変わるけれど一つ聞いて良いかしら?」
「ん? 何?」
「そのナイフで思い出したのだけれど、坊やが配られたのはそれだけなの? 他に武器は?」
「う〜ん、実はこれ、さっき言った神父から貰った物なんだ。僕のカバンに入ってた武器はヘンテコな銃くらいで――」
銃、その言葉にリザは目を見開く。
「坊や、その銃っていうのはどんな物? 年式は? 拳銃かしら? それともライフル?」
「うぅん。トリモチと飛ばすオモチャみたいな奴だったんだ。ハヤテって人に渡したら、一応武器になるって言ってたけどね」
パズーの言葉にリザの表情は一気に落胆に変わる。 オモチャでしかも他人に譲渡した後では、
全く話にならない。 やはり、警察署を頼るしかないようだ。
「……あ、そうだ。もしかしたら僕に使い方が分からないだけかもしれないから、僕の支給品見てみる?」
「いいのかしら?」
「まぁ、僕はこれがあれば何とかなるし、使い方分かるならあげるよ」
リザはパズーから渡されたカバンを受け取ると、その中身を確認する。
するとまず出てきたのは、タロットカードだ。
『殺人事件の見立てに使われた曰く付き』と記された縁起でもない説明書が梱包されていたが、
実際の所は何の役にも立たなそうだった。
そして、次に出てきたのは、親指ほどの大きさをしたプラスチック製の何か。
透明で中には金属で出来た何かが入っており、説明書には『大容量16M!』と書かれていたが、リザには何のことかは理解できない。
「……どう? 役に立ちそう?」
「残念だけれど、私にも使い道は見出せそうにないわね」
「そうかぁ……」
デイパックをパズーに返すとリザ達は再び歩き続ける。
すると、直に彼らは大通りが分岐するT字路にたどり着いた。
「ここを左に行けば、市街地の中央。デパートみたいな施設が集まっている地点ね」
「うわぁ、なんか要塞みたいな建物が一杯見えるなぁ……」
辺境の鉱山街暮らしが長かったパズーにとって、日が昇りかけて明るくなりつつある空に照らされる無数のビルディングは圧巻だった。
「デパート経由でも北上すれば警察署は近い……か。なら、大佐達を探す意味でもそっちを回ってみても意味がありそうね……」
地図を見ながら考え込むリザであったが、それと対照的にパズーは浮き足立っていた。
「ねぇ、早く行こうよ。シータがいるかもしれないんだから!」
「え、えぇ、そうね……」
「よし、それじゃ行こうか、おばさん!」
――ぷちん。
ここまで保ってきたリザの理性は、そこで勢い良く切れた。
そして、彼女は少年の肩をつかむとその頭頂部目掛けて……
――ごちん!
それはパズーにとってはデジャヴュな経験。
だが、彼にはなぜそうなったのか、未だに理解できずにいた。
――――――おばさんとおばさま。
――――――その呼称は時に人に安心を、またある時は痛みを呼び起こすものであるようだ。
352: 2007/10/03(水) 00:17:24 ID:A3N7DHy9(1)調 AAS
修整乙
353: 紙の子どもたちはみな踊る 1/5 ◆AZWNjKqIBQ 2007/10/03(水) 07:01:11 ID:KJ2p7o8B(1/5)調 AAS
――アニタ・キングは不幸な少女だ。
◆ ◆ ◆
アニタは東向きの窓の外、昇り始めた太陽が稜線を浮かび上がらせるそちらへと掲げた剣に再び注視する。
それは、ただ剣と呼ぶには奇妙な物体だった。なにしろ、それには斬るための刃がない。
美しい装飾の施された黄金のガードの先から伸びるのは、赤い線の走る黒い円柱。
しかし、コマンドを与えてその力を解放すれば、纏う風が空を切る刃と化す――そう、アニタは理解している。
掲げた剣はその大きさに見合った重量がある。
アニタは利き手を柄の根元に、反対の手を柄の端へと移動させて腰を下ろしてそれを構える。
彼女のまだ幼い体格と比べると大きいその剣を構える様は、どちらかというと剣よりも騎乗槍のそれに見えた。
剣を向ける先と視線を合わせると、アニタは緊張の面持ちでその「言葉」を口から吐いた――。
◆ ◆ ◆
アニタ・キングは不幸な少女だ。
何故かと問われると、それは枚挙に遑がない。
しかし、此処で語るに必要な分だけを取り出していけば、まず一つ ――彼女には大いなる資質があったと言うことだ。
ただしそれは天ではなく、人の……それも、邪まな願いによってもたらされたものだった。
彼女には両親と呼ばれる存在がいない。
記憶を失っている――からではない。また、すでに死去しているからという意味でもない。
アニタ・キングは親と呼ばれる存在から生まれてきた人間ではない、という意味だ。
と言っても、別に虚空から生まれ出てきたわけでもない。
ありていに言えば――実験により。それは遺伝子操作。つまりはそういう事だった。
何故かビブリオマニア(蔵書狂)でなければ獲得できないとされる特殊能力――紙使い。
それを人工的に生成させようという計画。それは成功し、その成果が彼女――アニタ・キングである。
歴代の紙使いから抽出した膨大な遺伝子の中より、時間をかけて選り分けられたいくつかの遺伝子。
これを植え込まれ、試験管の培養液の中から誕生した彼女は生まれながらにして紙使いであった。
これが、本人も知らない彼女に与えられた大いなる資質だ。
最強の紙使い同士の遺伝子情報によって組み合わされた彼女の才能は、
未だ発展途上ながらも潜在的には彼女が姉と慕う二人をも、更には今までのどの紙使いよりも高い。
それが、彼女の不幸の一つ。何故ならば、それによって剣はその力を開いてしまったのだから。
354: 紙の子どもたちはみな踊る 2/5 ◆AZWNjKqIBQ 2007/10/03(水) 07:02:17 ID:KJ2p7o8B(2/5)調 AAS
◆ ◆ ◆
その光も音もない衝撃に、アニタは硬直した。
剣を掲げた身体がまるで鉛になったように動かない。
それが、剣によって力が奪われているという事に気付いたのはその半瞬後だった。
その感覚にアニタは、中身を吸い上げられ萎んだ紙パックの入れ物を連想する。
(は、放さないと……! 全部……持っていかれる……)
アニタは指先へと意識を走らせるが、まるで接着されているかのように指は剣から離れない。
そしてさらに一瞬の後、起動に足る力を吸い上げたのか、剣はゆっくりと力を解放し始めた。
◆ ◆ ◆
アニタは剣の力を解放するに足るまでの力を持っていた。
それは彼女の中に存在する、二重の螺旋を描く特異な遺伝子。
それによってもたらされた身体を巡る紙使いとしての能力が一種の魔術回路として機能したからなのか。
はたまた、螺旋王がこの実験によって探し出そうとしている新たな螺旋力を生み出しているからなのか。
それはまだこの段階では断言には至らない。
ただ彼女が不幸なのは、解放するには足りても御するにはまだまだ力不足だったということ。
人間を遥かに超越した存在である英霊。その中でも突出した存在である英雄王――ギルガメッシュ。
彼にしか所持することを許されていない史上最強の剣――乖離剣・エア。
全力で振るえば天すらも断つと言われる神器。
それに徒な好奇心で触れるその報い。それを彼女は思い知ることになる。
◆ ◆ ◆
英雄王の剣のその剣身を構成する円柱。
それが途中に入った分かれ目より互い違いに回転を始め、その隙間から勢いよく空気を噴出する。
激しく空気を噴出したその後に残る真空――それこそがこの剣の刃。
それは一瞬にして剣を中心として真空刃によるフィールドを形成し、そしてそれは――、
――剣を構える人間に対しても容赦はしなかった。
355: 紙の子どもたちはみな踊る 3/5 ◆AZWNjKqIBQ 2007/10/03(水) 07:03:24 ID:KJ2p7o8B(3/5)調 AAS
想像を超えた力に目を見張るアニタが最初に感じたのは、右手に走った激痛だった。
反応して視線を移したそこに見たものを、彼女は信じられ――いや、信じたくないと思ってしまった。
手を守るはずのガードの下より排出された高圧の空気によって、右手は手首より先が失われていた。
そこから溢れ出た大量の血が、暴風にのってアニタの身体を強く叩き真赤に染めている。
次の瞬間に上げられたアニタの絶叫は、さらに勢いを増した暴風によって掻き消された。
◆ ◆ ◆
彼女には剣を解放する力しかなかった。それが彼女の不幸だ。
宝具から溢れ出る力を御する魔術知識もなければ、自らを襲う力に対する魔法耐性もなかった。
さらに不幸だったのは、彼女が唯一持つ特殊能力が紙使いだったということだ。
◆ ◆ ◆
乖離剣・エアより噴出した空気と真空刃により、アニタの身体は部屋の反対側へと叩きつけられていた。
吹き飛ばされる直前、本能的に発動した紙の防壁により彼女は辛うじて即死を免れたが、
本棚に叩きつけられ半ばまで紙に埋まった彼女の身体は見るも無残な有様に成り果てており、
それは見る者に死ぬよりも辛いと思わせるに十分なものだった。
また、剣の力を解放された場となった部屋の惨状も燦々たるものだ。
暴風と真空刃が吹き荒れた室内は万遍なく切り刻まれており、一切無事なものが存在しない。
そして、剣先を向けていた窓は窓枠どころか、その壁ごと削り取られて朝日を部屋の中へと取り込んでいた。
東より射す強い陽光が、部屋であった空間に舞い散る無数の紙切れに反射し、そこを黄金に照らしている。
真赤に染まった床に降り注ぐ白い紙吹雪。それを見つめるアニタの目はさっきよりも一つ少ない。
その子どもらしいあどけなさを残していた顔は無数の斬撃により切り刻まれ、片目は割れて機能を失っていた。
顔だけではなく裂傷は全身に及んでいる。真空刃は易々と紙の防御を突破し、彼女を切り刻んでいた。
最初に失った右手は手首より骨が露出し、残ったもう片手の方も指がいくつか足りていなかった。
防御の及ばなかった両足は膝から先が両足ともになく、とめどなく血液を床に零している。
脇に走った大きな残撃は覆っていた肋骨を断って肺にまで達しており、傷口からブクブクと血泡を垂らしていた。
(……なんで?)
床に広げられた旗の中央に描かれた大きな目玉へと視線を落としたアニタはそう思う。
運命と言うものの何もかもが一方的にやって来る。人生そのものが暴風の中に放り込まれたものの様。
不幸な少女は何も知らない。だからどうしてなのかも解らない。
なんで紙が使えるのか。どうして記憶がないのか。どうしてこんな目にあっているのか。
どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? 一体、自分は何者なのか?
356: 紙の子どもたちはみな踊る 4/5 ◆AZWNjKqIBQ 2007/10/03(水) 07:04:31 ID:KJ2p7o8B(4/5)調 AAS
(……死にたくない)
訳が分からないまま死ぬなんて嫌だ――と、アニタは残された力を振り絞る。
残された左手の内の、残った薬指と小指だけで床に散らばった紙を摘み力を込める。
傷のせいだけでなく、剣に吸い取られた分も力は失われており、触れる紙の反応は鈍い。
アニタは普段、数枚から数百枚程度の紙しか操作しないためにその疲労は微々たるものだが、
彼女の姉の一人であるマギー・ムイは時に数十万枚の紙を同時に操り、その後は消耗に倒れこむこともある。
今の自分の状態に姉の姿を連想すると、アニタの頬に涙が伝った。そしてそれはすぐに血に交じり床に落ちる。
(……まー姉。……みー姉)
紙を操る二人の姉を頭に思い浮かべ指先に力を込める。
程無くして、部屋中にサワサワと紙の擦れる音が響き始める。
(死なない……! 絶対!)
積もった紙の一部が蛇の頭の様に持ち上がり、一本の線となって傷口へと纏わりつく。
さらに部屋に響く音も大きくなり、ざわめく中からもう一本、二本と真っ白な線が飛び出しアニタを包む。
思い描く姉の姿に倣い紙を操り、包帯代わりに傷口に紙を当てる。
だが、無情にも血を吸った紙は力を失い、再び傷は露出される。
それでもアニタは繰り返し紙を操り傷口へと当てる。今度は何枚も重ねて……しかし、それでも。
(……帰る。絶対、……帰る!)
アニタの意気に合わせてまだ白い紙はざわめく。
何かに挑むかのように白い線はアニタの身体へと群がり、血に触れて落ちても次々とやってくる。
彼女とその周り。赤黒く血の色に染まったそこに群がる白い蛇の様は、
死者すらも救うとされるギリシャの神アスクレピオスが手を差し伸べているかのようにも見える。
だがしかし、現実にはその逆だった。
紙に血を吸わせることは、徒に失血を早めている事に他ならないと、朦朧としているアニタは気づいていない。
彼女は今、痛みも苦しみも忘れ、ただひたすらに願っているだけだ。
(……帰る! ……帰る! ……帰る! ……帰る!)
床に積もった紙の色に比べると、アニタの身体はもうすでにどす黒く。動かないため物の様に見える。
半眼の片目もすでに虚ろで、光を映しているようには見えず、口から息が漏れている様子もない。
ただそれでも、紙だけがひたすら無心に彼女を包み込もうと動いている。
部屋中の紙が主を慕うように彼女の周りへと殺到するが、それも――、
(…………まー姉。…………みー姉。)
彼女の指先が冷たく動かなくなると、同じように動かなくなりそして――、
(…………ごめん。もう)
聞こえない断末魔を上げるかのように立ち昇ると――、
(…………………………帰れ、ない)
――散華した。
357: 紙の子どもたちはみな踊る 5/5 ◆AZWNjKqIBQ 2007/10/03(水) 07:05:37 ID:KJ2p7o8B(5/5)調 AAS
賑やかだった紙の揺れる音が静かに止んだ後、
死色に染め上げられたそこで、ただ一本の黄金の剣だけが光を返して輝いていた。
◆ ◆ ◆
こうして不幸な少女は、物語の最後の頁を捲り終えた。
このアニタ・キングという物語をどう読むかは、それぞれの読者の自由だ。
不幸と銘打ったが、それも読み方次第では別の物へと変化するかもしれない。
ともかくとして、結局彼女は因縁の相手である読子・リードマンや菫川ねねねと再会することはなかった。
一つの世界から召喚された3人の女性。
――歴代最強の紙使いにして、最狂のビブリオマニア。読子・リードマン。
――紙上の創造主にして、至上の創造主。菫川ねねね。
――紙の座へと座るために創造された、紙の申し子。アニタ・キング。
その内の誰もが、螺旋王の掲げた目標に達するにたる物語の持ち主ではあったが、
惜しくもアニタ・キングの物語はここにて読了された。
残りの二人の物語。それらは一体どういう結末を迎えるのか?
――それは、また別の本のお話である。
【C-6/民家の一室/1日目/早朝】
【アニタ・キング@R.O.D(シリーズ) 死亡】
※民家の一室は乖離剣・エアの起こした暴風と真空刃によって大きな被害を受けました
※同じく、そこにあった支給品なども大きな被害を受けました
※デイバックは切り刻まれ中身が散乱しています
※「乖離剣・エア@Fate/stay night」は全くの無傷です
※「ハイドの魔本@金色のガッシュベル!!」の状態は不明。後続の書き手に一任します
※床に敷かれていた「大グレン団の旗@天元突破グレンラガン」は血に染まり、また切り刻まれています
※部屋の中には分解された本のページが溢れかえっています
358: 2007/10/03(水) 23:41:44 ID:Mc3vYX8h(1/2)調 AAS
267 : ◆Haf2Sq.37.:2007/10/02(火) 22:19:34 ID:mAwk4gGc0
すいません。少し遅れると思います。待っていただけないでしょうか。
268 : ◆o4xOfDTwjY:2007/10/02(火) 22:57:06 ID:UGKO1y6w0
投下開始します。
269 : ◆o4xOfDTwjY:2007/10/02(火) 23:14:53 ID:HKOUOU9c0
投下終了です。
途中で文の順序を間違えて、読みにくくなってしてしまいました。
深く反省します。すみませんでした。
270 : ◆lbhhgwAtQE:2007/10/02(火) 23:44:06 ID:TIVJ5IuM0
パズー、リザ・ホークアイ、ニア、ドーラ 投下します。
9レス程度ですが、お暇がある方は支援のほどよろしくお願いします。
271 : ◆lbhhgwAtQE:2007/10/03(水) 00:15:31 ID:AGnPKSjg0
忘れてた……orz
こちらでも投下終了報告をば。支援ありがとうございました。
272 :名無しセカンド:2007/10/03(水) 02:14:16 ID:wgrB.QLU0
時間帯別キャラ表です。参考までに
【深夜】
(無予約)
スバル/ヒューズ/東方不敗/衝撃/ロイド/清麿/ラッド/はじめ/ミリア/高遠/
キール/ガッシュ/アレンビー
(予約済み)
言峰
【黎明】
(無予約)
スパイク/読子/ジェット/ティアナ/クロ/ヴァッシュ/相羽シンヤ/ヨーコ/ジン/エド/
可符香/ドモン/間桐慎二/ギル/奈緒/泉こなた/アル/士郎/なつき/
シュバルツ/チェス/ヴィラル/エリオ/ランサー/クアットロ/ウルフウッド/シモン/舞衣/
戴宗/明智/ロイ/スカー/シャマル/カミナ/V//マオ/シータ/
かがみ/アイザック/静留/ジャグジー
(予約済み)
はやて/アニタ/ミー/クレア
【早朝】
(無予約)
剣持勇/マタタビ/ねねね/フォルゴレ/イリヤ/絶望/カレン/ルルーシュ/
Dボゥイ/ゆたか/木津千里/ヴィシャス
【放送前】
ホークアイ/ニア/ドーラ/パズー/ムスカ
273 : ◆LXe12sNRSs:2007/10/03(水) 03:39:51 ID:fxhBEr.20
相羽シンヤ、ジン、ヨーコ、ラッド・ルッソ、高嶺清麿、東方不敗マスターアジア予約します。
274 : ◆AZWNjKqIBQ:2007/10/03(水) 07:00:14 ID:mydcf6WI0
「アニタ・キング」 投下します。
275 : ◆AZWNjKqIBQ:2007/10/03(水) 07:06:23 ID:mydcf6WI0
投下終了しました。
359: 2007/10/03(水) 23:43:05 ID:Mc3vYX8h(2/2)調 AAS
276 : ◆lsM4Q2L1ws:2007/10/03(水) 07:15:02 ID:sPFguDt20
ギャー!!
ラッドと清麿予約されてルー
修正して投下しようかと思ったけど
くやしいので仮投下の方に置いときますサー
277 : ◆lsM4Q2L1ws:2007/10/03(水) 07:40:46 ID:sPFguDt20
書いてみて解ったが、執筆というのはとても疲れる作業である。
何が言いたいかというと>>273様もし作業に入っておらず、よろしければゆずってもらえないだろうか。
「ルール違反だとはわかっていても」とか言う修飾語を付けても、書き込むこと自体許されることではないが。
徹夜明けのついでに書いてしまう。
正直すみません。
278 :名無しセカンド:2007/10/03(水) 08:22:59 ID:qGlPiwLoO
>>277
それはダメでしょう。ルールですから。
付け加えるとLX氏は1stの最多書き手であり、その高いクオリティにみんな期待してたりします。
279 :管理人★:2007/10/03(水) 08:58:59 ID:???0
> ◆lsM4Q2L1ws 氏
節度ある行動を期待します。
280 : ◆lsM4Q2L1ws:2007/10/03(水) 09:03:11 ID:sPFguDt20
>>278
おおっ!!唯でさえ首をつらないといけないのに、良く見たらLX氏。
2ndに光臨ですか。
後よろしかったら、初めての長文(短文も含めほとんど書いたことはありませんでした)であり参考にしたいので。
改善点を指摘していただけないでしょうか?
仮投下の「死より忌むべきもの」です。
281 : ◆lsM4Q2L1ws:2007/10/03(水) 09:04:43 ID:sPFguDt20
>>279
申し訳ございません、たいへん失礼をいたしました
こんな程度で「節度」だって
360: 2007/10/04(木) 00:28:17 ID:GgO9qWqS(1)調 AAS
融通しようとしただけなんだから多めにみてやってもいいのに
361: 2007/10/04(木) 00:33:40 ID:wMULqT93(1)調 AAS
怖いねー
362: 2007/10/05(金) 21:43:54 ID:HR+Utl9F(1)調 AAS
削除議論板でバトルロワイアル
363: 誰かが死ぬのが怖いのか? ◆LXe12sNRSs 2007/10/05(金) 23:13:08 ID:Oj+1+lxJ(1/12)調 AAS
彼の行くべき先は――――……南。
相羽シンヤは、消防車の二人組を追うことを断念し、南下して新たな獲物を索敵する道を選択した。
紙を使う少女、そして先ほどの少年。虫ケラ同然と認識していた下等生物ですら、この場ではラダムのテッカマンと対等であることがわかった。
「……おもしろい。ゲームを成り立たせるなら、バランスは大事だしね……ククッ、なかなかおもしろい趣向じゃないか、螺旋王」
あの少年への屈辱は、後で倍にして返せばいい。今は一刻も早く、首輪のサンプルを入手し学校に戻らねばならない。
首筋を覆う金属物質に触れ、シンヤは妖艶に微笑む。これを外すと豪語していた人間……彼を待たせすぎるのも悪いだろう。
シンヤは路上に一旦腰を落ち着かせると、デイパックの中から水筒を取り出す。
1リットル容量の魔法瓶は、どこの雑貨店にでも置いてありそうなシンプルなデザイン。
これが、カリバーンに続くシンヤのもう一つの支給品だった。
「へぇ……これはなかなか」
水筒からいくらかを汲み取り、シンヤは一気に飲み干す。味について称賛する気はないが、思わず感嘆したのはその効果のほどだ。
全身から疲れがスーッと取り除かれていくような、不思議な昂揚感を覚える。
それどころか、右手に負った掠り傷は跡も残さず消え、脱臼の痛みにいたってはほとんど消失した。
これがシンヤの第二の支給品――ファウードの回復液。魔導巨兵ファウードの肝臓から分泌される、回復効果を持った栄養液である。
「さて……これより南には誰がいるかな?」
来るべき放送、そしてその先に待つブレードとの決着を心待ちにし――それでも、シンヤは成果を焦りはしなかった。
しかし、彼の行く先に待つのは……。
【C-7北部/道路上/一日目/早朝】
【相羽シンヤ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:健康
[装備]:カリバーン@Fate/stay night
[道具]:支給品一式、ファウードの回復液(残り700ml)@金色のガッシュベル!!
[思考]
1:南下し、新たな標的を捜す。
2:適当な参加者を殺し、首輪を手に入れる。
3:制限の解除。入手した首輪をロイドに解析させ、とりあえず首輪を外してみる。
4:テッククリスタルの入手。
5:Dボゥイの捜索、及び殺害。
【ファウードの回復液@金色のガッシュベル!!】
魔導巨兵ファウードの肝臓から分泌される、回復効果を持った栄養液。1リットル容量の水筒に収められている。
疲労はもちろんのこと、出血や外傷にも効果がある模様。
364: 2007/10/05(金) 23:13:51 ID:1fYYmi4l(1/8)調 AAS
365: 誰かが死ぬのが怖いのか? ◆LXe12sNRSs 2007/10/05(金) 23:14:13 ID:Oj+1+lxJ(2/12)調 AAS
◇ ◇ ◇
「マネキンどもが夢の跡……このお店の衣装たちも、俺なんかをミイラにするよりおねーさんみたいなキレイな人を包んだほうが幸せだったろうに」
「こんなくだらない余興の舞台に置き去りにされたのが天命ね……って、小洒落たこと言ってないで、さっさとここを離れるわよ。もちろん、あんたの運転で」
ジンとヨーコ、シンヤの魔の手から辛うじて逃れた二人だったが、彼らはまだ追っ手が来る可能性を否定してはいない。
車の運転方法を熟知していないヨーコが踏んだ、唐突すぎる急ブレーキによって、カーブ先の衣料店に放り飛ばされたジン。
ヨーコは横倒れになったマネキンの山々から彼を救い出すと、纏わりついた女性ものの衣服を片っ端から剥ぎ取っていく。
こうしている間にも、あの襲撃者はヨーコたちを追ってきているかもしれない。
拭いきれない危機感に苛まれ、ヨーコの手つきは少しばかり乱暴になっていた。
「いたたっ! おねーさん、それ服じゃなくて俺の髪の毛だよ!」
「へ? ああ、ごめんごめん」
ジンをミイラ状態にしていたドレスやらコートやらを取り払うと、ヨーコは早々に消防車へ戻ろうとした。
その、どこか不安の陰りが見られる顔を案じてか否か、ジンはヨーコの肩を掴み待ったをかける。
それは、これから起こりうるであろう事態への、警告の意が込められていた。
「おねーさん……どうやら、あの車の赤は俺たちがドライブするには目立ちすぎるらしい。どこかで迷彩色にでもカラーチェンジしようか?」
「そんな暇があったら、きっぱり乗り捨てるわよ……でも、目立ちすぎるってのは確かに問題かもね」
衣装店から脱出したジンとヨーコの視線の先には、消防車を跨ぎ、男性が二人。
白いスーツに金髪の米国人と、学校指定のワイシャツを着た日本学生。
ジンの格好に比べればなんてことはない二人組だったが、ヨーコにとっては、またもや未知との遭遇だった。
「俺たちはこの殺し合いには乗っていない! あんたたちはどうだ!?」
◇ ◇ ◇
静けさに包まれた街路に、突然の走行音。次いで鳴り響いた、ゴムを擦るようなブレーキ音。
二つの異音を察知した高嶺清麿とラッド・ルッソという二人組は、急いで駆けつけジンとヨーコに遭遇した……とのことだった。
「なるほどな……走行中の消防車に飛び乗り、車上から奇襲を仕掛けようとしたジャンパーの男か……本当に人間なのか、そいつ?」
「見た目はね。歳は俺よりもちょーっと上くらいかな。かなり危ない感じだったけど、なんとか撃退できたよ」
「俺からすれば、その襲撃を察知して、車上でそいつとやり合ったっていう君も十分人間離れしてるんだが……」
ジンの語るあらましを聞き、高嶺清麿と名乗った少年は半ば呆れた顔を作る。
大人びた雰囲気を醸し出してはいるが、おそらく実年齢はシモンに近い。耳を怪我しているようだが、彼も何者かに襲われた経緯があるのだろうか。
(さっき襲ってきたヤツといい……殺し合いはもう始まってるってことか。ホント、うんざりする)
路上で談合している間も、ヨーコは周囲への警戒を解かなかった。
消防車が止まってから既に数十分。ジンとやり合ったジャンパー姿の追っ手は、未だ姿を現さない
希望的に解釈するなら諦めてくれたのだろうが、敵はあの男だけではない。いつ第二第三の襲撃者が現れるかわからないのだ。
それに、
(……この殺し合いを主催しているのが螺旋王なのだとしたら、敵は人間だけじゃない。
獣人……それもガンメンに乗ったヤツが、何人かいても不思議じゃないわ)
366: 誰かが死ぬのが怖いのか? ◆LXe12sNRSs 2007/10/05(金) 23:15:23 ID:Oj+1+lxJ(3/12)調 AAS
螺旋王どころか、獣人もガンメンも知らないというジン。格好の特異性から考えれば、おそらくはこの清麿とラッドという男たちも。
獣人たちの凶暴性、そしてガンメンの打破しようのない強度も、知りはしないのだろう。
あれは、ちょっとやそっと身体能力が優れている程度ではどうにもならない。
ガンメンに対抗できるのはガンメンのみ。それこそグレンラガンのような。
それが叶わずとも、リットナーの男衆を総動員するくらいしなければ、ガンメンは攻略できない。
せめて愛用のライフルがあれば心強いのだが、あいにく今は、たった一人の人間に命を脅かされるのが現実だった。
「……走行中の車に飛び乗って、運転手に襲い掛かり、そのまま車上で剣戟戦ねぇ……クックック。
いいねいいねぇ。アクション俳優もビックリの大胆さじゃねーの。
さぞかし自分は強い、こんなに強い自分は死ぬはずがない、そう思ってるんだろうなぁ……あーヤベ、ゾクゾクっときた」
ヨーコが当人にしか理解しえぬ不安を重ねる中、ジンと清麿の会話を端で聞いていたラッドが、突如不敵に笑い出した。
口元に手を当て、わざとらしく笑声を漏らすその様は、まったくウケていない喜劇で一人だけ爆笑している感性の違う観客のようだった。
ヨーコはまだろくに自己紹介も済ませていないラッドに得体の知れぬ不快感を覚えたが、その不快感の正体はすぐに判明することとなる。
――彼、ラッド・ルッソの感性は、ここにいる誰のものと比べても、ズレすぎているということが。
「よーし、決まりだ! 今からそいつブッ殺しに行こう! そうだそれがいい! 第一号はそいつで決定!」
出会いから数えて、ジンとヨーコに対しラッドが放った第二声が、これだった。
そいつ、即ちジンとヨーコを襲った男、即ち相羽シンヤを、ブッ殺す。ラッドの提案は、ストレートにふざけていた。
もっとも、それはヨーコの捉え方にすぎない。言った本人はド真面目であり、ブッ殺すという表現も、比喩でもなんでもなくそのままの意味である。
「ちょっと待て。今俺たちが一番にやらなきゃいけないのは、脱出するための仲間を集めることだ。
そいつが危険人物なら確かに放っては置けないが、なにも今迎え撃つ必要はないだろ。それに、殺しは――」
「あぁン? そりゃなんだ、命令か? それともお願いか? 前者だったとしたらそりゃ大きな勘違いだぜキヨマロォ……。
俺はおまえの仲間になってやるとは言ったが、部下になったつもりはねぇ。俺とおまえは対等だ……従う義理なんかねーわけよ。
それともなにか、おまえは俺の親父か? それとも上司? まさか学校の先生とか言っちゃうんじゃねぇよなぁー!」
唖然とするヨーコの目の前で、ラッドは清麿の顔面スレスレまで強面を肉薄する。
口調の荒々しさは常のものだが、この男、感情の起伏が驚くほど激しい。
嬉々としてブッ殺しに行こうと提案したかと思えば、今は清麿の些細な異論でお怒りモードだ。
まるでガキ大将……ヨーコはこの時点で、ラッドに対してそんな『甘い認識』を持ち始めていた。
清麿の身体が地面に対してほぼ四十五度、ほとんど押し倒されそうなくらいまで追いつめられると、ラッドはなんの前触れもなく身を引いた。
そして、今度は『怒』の表情を再び『喜』に戻す。
「あそーだ。いいこと思いついたぞ俺は。キヨマロ、おまえは仲間を作ってここから脱出してぇ。俺は思う存分殺し回りてぇ――」
一瞬、この男から耳を疑いたくなるような行動理念が聞こえてきたような気がしたが――まさか、幻聴だろう、とヨーコはとりあえず流す。
「両者の言い分を叶えるにはだ……俺が、おまえの、邪魔するヤツを片っ端から殺してけばいい。ハッ、これで万事解決なんじゃねーの!?」
いや、幻聴などではなかった。
実際に相対するのは初めてだが、このラッドという男。
いわゆる『殺人狂』らしい。
「俺が、そんなヤツはいない、俺の邪魔になるようなヤツは存在しないと言ったら、おまえは誰も殺さないのか?」
「んなわけあるかよ……冷めるぜキヨマロ。おまえの邪魔するヤツってのはつまりだ、この殺し合いに乗ったヤツ、それ以外にいるか?
そういう奴等は総じて『俺が最強』、『俺が生き残る』、『俺が死ぬわけない』、そんなこと考えてるヤツばっかだ。
こいつらの話に出てきた男なんてまさにそれよ。自分が死ぬはずがないと信じてやがるから、そういう無茶ができる。
こいつら二人とも殺せてねぇってのになぁ――アー、おもしれぇ! さぞ悔しがってんだろうなぁ!
……ここで俺がこいつら殺したら、そいつ、もっと悔しがるかな?」
367: 2007/10/05(金) 23:16:43 ID:AjFGe+Fu(1/4)調 AAS
368: 2007/10/05(金) 23:16:52 ID:DSAX8Da3(1)調 AAS
369: 誰かが死ぬのが怖いのか? ◆LXe12sNRSs 2007/10/05(金) 23:17:17 ID:Oj+1+lxJ(4/12)調 AAS
テンション定まらぬラッドの視線が、狂気の念に固定され、ヨーコに向く。
ヨーコは不覚にも、ゾクッ――としてしまった。
ガンメンから感じるそれではない。体感したことのないような、新種の恐怖……『人間の狂人』が放つ殺気だった。
蛇に睨まれた蛙のように竦むヨーコと、今にもやらかしかねないラッド、両者が数秒睨み――合うかと思われたが、間に小柄な影が割って入る。
その人物こそが、この異質な談合の場で、唯一ラッドの狂気に干渉されない――自由すぎる少年だった。
「あ? なにおまえ? ナイト気取り?」
「ナイトね……そりゃ見当違いかな。ほら、俺って誰にも縛られない存在だからさ」
そうだ。このジンという少年は、いきなり拉致され殺し合いを強要されても、他参加者の襲撃に遭っても、まったく自己のペースを乱さなかった。
そして今も、ラッドという危険極まりない狂人と相対してなお平静を保っている。
「あー……もしかしてアレ? 俺ツエーから、女の前で格好つけても平気なくらいツエーから、こんなところで殺されるはずねーとか思ってる?
そうか、そうだよなぁ。見た目からしてゆるそうなツラしてんもんなぁ。
一秒後に自分がタコ殴りにされてて、二秒後にその痛みに悶絶してて、三秒後にショック死してる未来なんて信じられねぇよなぁ。
俺ぁよ……そういうヤツを殺すのが大好きなんだ。『自分は安全だ』と信じてやまない、どこぞの田舎貴族みたいに緩みきったヤツ。
そんな奴等がよ、いきなり命の淵に立たされるんだ。想像してみろ、ゾクゾクするだろ!?
どんな顔すると思う!? どんな命乞いすると思う!? 知りてぇよなぁ〜俺も知りてぇ! だから、死ね!」
言って即刻、ラッドはジンに向かって拳を突き出した。
情け無用の右ストレート。手加減などという文字は、この男の辞書には存在しない。出会ったばかりでも、それくらいはわかる。
息を飲む暇もなく、目を背ける暇もなく、それでもヨーコは咄嗟に身を引いてしまい、
ジンは、ラッドに殴られぶっ飛ばされた。数メートルほど。
「――なッ!?」
命中したのは顔面。軌道は地面に対して並行だったが、なぜかジンは、一発のパンチで宙高く舞い、後方のヨーコすら飛び越え、数分前に埋もれていた衣料店の中に逆戻り。
突き破られたショーウインドウが、またもやジンの体を店内のマネキンたちの下へと誘う。
盛大な物音を立てて店内の床を転がり、そしてジンは、再び女性物の服に塗れた。
思わず声を漏らすほど、不自然かつ大胆なぶっ飛ばされ方だった。ラッドのパンチの威力がそんなにも強烈だったのかと言えば、そうではない。
あれはどう見ても、ジンがわざと大袈裟にぶっ飛ばされてみた。そうとしか捉えられない。
それは傍観者であったヨーコと清麿、ジンを殴ったラッド自身も、皆同じ見解だった。
衣料店から音がやみ、三者がしばし呆然とし、ほどなくしてジンが這い出てきた。
その有様は、以前のようなミイラ状態ではなかったものの、見るからにヨロヨロで、パンチ効いてますよーと主張しているようなものだった。
「ってて……メチャクチャ痛いね、これ。こんなん何度も食らってたら本当に死んじゃう。もうカンベ……ってあれ?」
飄々とした態度で舞い戻るジンだったが、周りのリアクションは薄い。
それどころか、ラッドの凶悪な面相はさらに凍てつき、清麿の顔は微かに青ざめていた。
「……なんだよ、拍子抜けするじゃんかよ。俺は軽いジャブのつもりで打ったんだぜ。
それでまず相手を沈めるだろ、そっからマウントポジションを取る。んで、そっからタコ殴り。……ってのによぉ。
なに? ハデにぶっ飛ばされりゃ俺が満足するとでも思ったわけ? だからあんなスタントマンみてぇなカッコしてみせたの?
それってさぁ……おちょくってる? 俺、おちょくられてる? ……ふざけんじゃねぇぞォォォォォ!!」
「ヤバッ、墓穴掘った――!?」
370: 2007/10/05(金) 23:17:37 ID:1fYYmi4l(2/8)調 AAS
371: 2007/10/05(金) 23:17:44 ID:AjFGe+Fu(2/4)調 AAS
372: 誰かが死ぬのが怖いのか? ◆LXe12sNRSs 2007/10/05(金) 23:19:28 ID:Oj+1+lxJ(5/12)調 AAS
さすがのジンも、この短時間ではラッドという男の本質を計りきれなかったらしく、彼を宥めるために取って見せたスタントプレーも、逆効果に終わった。
今さら後悔してみたところで、ラッドのボルテージが治まるはずもない。元々最高潮だったテンションは、清麿で下がり、ジンで暴落した。
もはや、彼は目の前のふざけた揺る顔を血に染めなければ気が済まないだろう。それは、一時の協力関係を結んだ清麿とて止められるものではない。
だが、止めなければジンが殺される。ジンとラッドの実力差のほどは定かではないが、鮮血が飛び散ることは確実。
そして、『また』死がやってくる。
死を見るのは、もう嫌だった。
「……なに、こんどはおまえがそいつを守るって? ……おいおい、ここは自殺志願者ばかりか? マジ冷めるぜ」
今度は、さっきとはまるで逆の構図。
殺意の矛先にされたジンと、ジンに殺意を向けるラッド。その間に、ヨーコが割って入っていた。
大の字に手を広げ、全身でジンを守るという意志を表示する。
視線は真っ直ぐ、ラッドの双眸を睨み返している。
一歩も引く気はない。ジンの盾となり、代わりにぶっ飛ばされるだけの覚悟があった。
――もう、誰も死なせたくない。誰かが死ぬ姿なんて、見たくない。
ヨーコの奥底では、自分ではない、他者の死に怯える震えた精神が蔓延していた。
誰かを守るために、あるいは己を証明するために、死んででも意地を貫き通す――そんなのは、どこぞのバカのすることだ。
「……殺すとか、殺されるとか、みんなしてバカじゃないの?
そんなくだらないことに、あたしを、あたしの周りの人を、巻き込まないでよ……!」
ぽつりと、ヨーコがそんな言葉を漏らした。
もう、悲しむのには疲れた。取り残されるのは御免だ。涙を流すのも、感傷に浸るのも、思い出してまたすすり泣くのも、もう。
「……あ、そうか。おまえアレか、誰かが死ぬのが怖いのか?」
ふと、ラッドの口調から棘がなくなった。
かと思うと、瞳に滾らせていた殺意もフッと消え、強張っていた肩も柔らかくなる。
一見して、ジンに殴りかかることをやめたかのような体勢。そして、そのまま。
「死ぬのが怖い……んじゃなくて、誰かが死ぬのが怖い。身近にいる人間が死んで、取り残されるのが怖い。
そういったトラウマを抱えてるヤツの目だよ、おまえの目。……誰? 誰が死んだのよ? ちょっと俺に話してみ?
家族? 親戚? 恋人? もしくは友達? まさか子供とか? あーでもアレだよな。そういうのあるよな!
悲しむのは疲れる、取り残されるのは御免、涙を流すのも感傷に浸るのも思い出してときたますすり泣くのも、全部面倒。
それは自分が死ぬより怖い……いるよなぁそういうヤツ。死を見るのに怯えてるヤツ……ま、そういうのは俺の好みじゃねぇんだけどよ」
顔を至近距離まで近づけられ、マシンガンのような勢いで照射される言霊の弾丸。
そのすべては正確にヨーコのハートを射抜き、顔から生気を失わせていた。
「でもあれだな、おまえは中途半端だ。ならいっそ楽になりたいと思うでもなく、死んだヤツの後を追おうともしない、いやできない。
絶望に浸りきってねぇ。そういうヤツの身近な人間を俺が殺して、また悲しませるってのもそりゃそれでおもしろいけどよ……やっぱ俺の趣味じゃねーや。パス」
373: 2007/10/05(金) 23:19:37 ID:1fYYmi4l(3/8)調 AAS
374: 2007/10/05(金) 23:19:50 ID:AjFGe+Fu(3/4)調 AAS
375: 調整 2007/10/05(金) 23:21:02 ID:z8Uxx3S7(1/5)調 AAS
◇ ◇ ◇
「マネキンどもが夢の跡……このお店の衣装たちも、俺なんかをミイラにするよりおねーさんみたいなキレイな人を包んだほうが幸せだったろうに」
「こんなくだらない余興の舞台に置き去りにされたのが天命ね……って、小洒落たこと言ってないで、さっさとここを離れるわよ。もちろん、あんたの運転で」
ジンとヨーコ、シンヤの魔の手から辛うじて逃れた二人だったが、彼らはまだ追っ手が来る可能性を否定してはいない。
車の運転方法を熟知していないヨーコが踏んだが、唐突すぎる急ブレーキによってカーブ先の
衣料店に放り飛ばされたジン。 ヨーコは横倒れになったマネキンの山々から彼を救い出すと、
纏わりついた女性ものの衣服を片っ端から剥ぎ取っていく。
こうしている間にも、あの襲撃者はヨーコたちを追ってきているかもしれない。
拭いきれない危機感に苛まれ、ヨーコの手つきは少しばかり乱暴になっていた。
「いたたっ! おねーさん、それ服じゃなくて俺の髪の毛だよ!」
「へ? ああ、ごめんごめん」
ジンをミイラ状態にしていたドレスやらコートやらを取り払うと、ヨーコは早々に消防車へ戻ろうとした。
その、どこか不安の陰りが見られる顔を案じてか否か、ジンはヨーコの肩を掴み待ったをかける。
それは、これから起こりうるであろう事態への、警告の意が込められていた。
「おねーさん……どうやら、あの車の赤は俺たちがドライブするには目立ちすぎるらしい。どこかで迷彩色にでもカラーチェンジしようか?」
「そんな暇があったら、きっぱり乗り捨てるわよ……でも、目立ちすぎるってのは確かに問題かもね」
衣装店から脱出したジンとヨーコの視線の先には、消防車を跨ぎ、男性が二人。
白いスーツに金髪の米国人と、学校指定のワイシャツを着た日本学生。
ジンの格好に比べればなんてことはない二人組だったが、ヨーコにとっては、またもや未知との遭遇だった。
「俺たちはこの殺し合いには乗っていない! あんたたちはどうだ!?」
◇ ◇ ◇
静けさに包まれた街路に、突然の走行音。次いで鳴り響いた、ゴムを擦るようなブレーキ音。
二つの異音を察知した高嶺清麿とラッド・ルッソという二人組は、急いで駆けつけジンとヨーコに遭遇した……とのことだった。
「なるほどな……走行中の消防車に飛び乗り、車上から奇襲を仕掛けようとしたジャンパーの男か……本当に人間なのか、そいつ?」
「見た目はね。歳は俺よりもちょーっと上くらいかな。かなり危ない感じだったけど、なんとか撃退できたよ」
「俺からすれば、その襲撃を察知して、車上でそいつとやり合ったっていう君も十分人間離れしてるんだが……」
ジンの語るあらましを聞き、高嶺清麿と名乗った少年は半ば呆れた顔を作る。
大人びた雰囲気を醸し出してはいるが、おそらく実年齢はシモンに近い。耳を怪我しているようだが、彼も何者かに襲われた経緯があるのだろうか。
(さっき襲ってきたヤツといい……殺し合いはもう始まってるってことか。ホント、うんざりする)
路上で談合している間も、ヨーコは周囲への警戒を解かなかった。
消防車が止まってから既に数十分。ジンとやり合ったジャンパー姿の追っ手は、未だ姿を現さない
希望的に解釈するなら諦めてくれたのだろうが、敵はあの男だけではない。いつ第二第三の襲撃者が現れるかわからないのだ。
それに、
(……この殺し合いを主催しているのが螺旋王なのだとしたら、敵は人間だけじゃない。
獣人……それもガンメンに乗ったヤツが、何人かいても不思議じゃないわ)
376: 2007/10/05(金) 23:21:08 ID:1fYYmi4l(4/8)調 AAS
377: 誰かが死ぬのが怖いのか? ◆LXe12sNRSs 2007/10/05(金) 23:21:33 ID:Oj+1+lxJ(6/12)調 AAS
言い終えると、ラッドはヨーコから視線を背け、消防車へと足を伸ばす。
「で、どうするよキヨマロ? 俺は今から、そいつら襲ったっていう男を殺しに行くけどよ、おまえ、来る?」
「……一つだけ条件がある。俺が仲間と判断した奴には手を出すな。もちろん、さっきみたいにこの二人に殴りかかるなんてもってのほかだ」
「そりゃあ、俺が最初に提案した条件を飲むってことか?」
「そう受け取ってもらって構わない。あんたの最終的な目標が螺旋王を殺すことなら、道は同じはずだ」
これが、清麿の下した最大限の譲歩だった。
ラッドという男が、自分のか細い腕では制御できない自由奔放な人物であるということは、胃が痛くなるほどわかった。
だからといって、彼と離別し野に放っては、それこそ他の善良な参加者の身が危険になるかもしれない。
一度手にしてしまった手綱、清麿には繋ぎ止める義務がある。いつ振り解かれるとも限らない危うい綱だが、せめてこの命がある内は。
――清麿がそんなことを決意する片隅で、ヨーコは呆然と立ち尽くしていた。
「よぉし決まり! ジン! それにヨーコっつったな。さっきのはナシ、水に流して忘れてくれ!
これからはフレンド、いやブラザーだ。楽しく殺ろうぜ。んで、さっそくだけど、車出してくれや」
「なら、俺が運転するよ」
「おう! 頼んだぜジン!」
意気揚々と乗車するラッド、それに次いで清麿が、続いてジンが乗ろうとするが、その前に。
「あんまり考え込まない方がいいよ、おねーさん。ピクニック気分で楽にいこう」
「ジン……」
硬直していたヨーコの肩をポンと叩き、励ますジン。まるで、いざとなったら俺が守るよ、とでも言わんばかりの気障な仕草だ。
二度も衣料店の中を転がりまわったせいか、ジンの笑顔は埃塗れになっていた。余裕綽々で、目立った外傷もない。
ヨーコが要求すれば、年中無休で微笑みかけてくれるような気さえする。
だからこそ、失うのが怖い。
「おーい! さっさと出発しようぜー! 朝飯はそいつをブッ殺し終わった後のハイな気分で食いてぇからなぁ!」
逸早く乗車を済ませたラッドが、クラクションを鳴らしてジンとヨーコを急かす。
足はまだ、前へ進む気にはなれなかった。それでも、ジンに腕を引っ張られ、不本意なまま消防車へと連れられていく。
――カミナは死んだ。己を示し、己を貫き、己に従い死んだ。バカだと思った。
しかし、それは仕方がなかったことなのかもしれない。無理を通して道理を蹴っ飛ばす、彼の信条は死を恐れず、死に近しい。
悲惨な見解を述べるなら、早死にする性格。彼が彼として生きていくなら、いずれは必ず壁にぶち当たる。
彼がその壁を、死という運命を乗り越えるには、仲間の手助けが必要だったのだ。
だが、ヨーコにはそれが果たせなかった。
(誰かが死ぬのが怖いのか?……か。その通りかもね)
ヨーコは、ジンが死ぬのが何より怖い。自分の死よりも恐ろしい。
出会ってまだ数時間しか経っていない、縁も義理もない関係だが、彼はこの世界において、現状最もヨーコに近しい存在だ。
それが消え、失ってしまうのが、たまらなく怖かった。
他人の死は他人の死、などと目を背けることはたぶんできない。カミナのときのように、失意に溺れるに違いない。
それを理解していて、わざわざ死地を闊歩する気になどなれようか。なれるはずがない。
小隅でビクビクと怯えていられるなら、ぜひそうしたい。なのに、自分の周りはバカばっかだ。
あのバカとは性質は違うにしても、ヨーコに言わせればバカには違いない。男はバカばっかだ。
378: 誰かが死ぬのが怖いのか? ◆LXe12sNRSs 2007/10/05(金) 23:22:47 ID:Oj+1+lxJ(7/12)調 AAS
(ジンはカミナとは違う……あんな無茶はしない。だから、きっと大丈夫よ……)
それでもやはり、ヨーコは『死』が怖かった。
【A-6/南東の道路のカーブ付近/1日目/早朝】
【ジン@王ドロボウJING】
[状態]:小程度の疲労。全身に小程度のダメージ。運転手。
[装備]:鈴木めぐみの消防@サイボーグクロちゃん
[道具]:支給品一式、予告状のメモ、夜刀神@王ドロボウJING×2
鈴木めぐみの消防車の運転マニュアル@サイボーグクロちゃん、鈴木めぐみの消防車の鍵
[思考]
基本:螺旋王の居場所を消防車に乗って捜索し、バトル・ロワイアル自体を止めさせ、楽しいパーティに差し替える。
1:不本意だが、ここで揉め事を起こすのもアレなのでラッドに付き合う。
2:いざとなったらヨーコを連れて逃げる。
【ヨーコ@天元突破グレンラガン】
[状態]:精神不安定。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:この状況が本当に現実か判断しかねている。が、ひとまずはジンに同行する。
1:不本意だが、ラッドに付き合う。
2:ジンに死んで欲しくない。
※ヨーコは最初の螺旋王の説明をまるで聞いていません。カミナがいたことすら気づいてません。
※鈴木めぐみの消防車@サイボーグクロちゃんの機能説明の情報等はマニュアルに書いてある模様。
貯水量は現在(100/100)。ちなみにゲル○グには変身出来ません。
運転席を初めとして全体がボロボロになっていますが、走行や放水は問題なく行えます。
※デイパックの中に収納されているため、ラッドが超電導ライフルを持っていることには気づいていません。
379: 調整 2007/10/05(金) 23:23:27 ID:z8Uxx3S7(2/5)調 AAS
螺旋王どころか、獣人もガンメンも知らないというジン。格好の特異性から考えれば、
おそらくはこの清麿とラッドという男たちも。
獣人たちの凶暴性、そしてガンメンの打破しようのない強度も、知りはしないのだろう。
あれは、ちょっとやそっと身体能力が優れている程度ではどうにもならない。
ガンメンに対抗できるのはガンメンのみ。それこそグレンラガンのような。
それが叶わずとも、リットナーの男衆を総動員するくらいしなければ、ガンメンは攻略できない。
せめて愛用のライフルがあれば心強いのだが、あいにく今は、たった一人の人間に命を脅かされるのが現実だった。
「……走行中の車に飛び乗って、運転手に襲い掛かり、そのまま車上で剣戟戦ねぇ……クックック。
いいねいいねぇ。アクション俳優もビックリの大胆さじゃねーの。
さぞかし自分は強い、こんなに強い自分は死ぬはずがない、そう思ってるんだろうなぁ……」
「あーヤベ、ゾクゾクっときた」
ヨーコが当人にしか理解しえぬ不安を重ねる中、ジンと清麿の会話を端で聞いていたラッドが、
突如不敵に笑い出した。口元に手を当て、わざとらしく笑声を漏らすその様は、まったくウケて
いない喜劇で一人だけ爆笑している感性の違う観客のようだった。
ヨーコはまだろくに自己紹介も済ませていないラッドに得体の知れぬ不快感を覚えたが、その
不快感の正体はすぐに判明することとなる。
――彼、ラッド・ルッソの感性は、ここにいる誰のものと比べても、ズレすぎているということが。
「よーし、決まりだ! 今からそいつブッ殺しに行こう! そうだそれがいい! 第一号はそいつで決定!」
出会いから数えて、ジンとヨーコに対しラッドが放った第二声が、これだった。
そいつ、即ちジンとヨーコを襲った男、即ち相羽シンヤを、ブッ殺す。ラッドの提案は、ストレートに
ふざけていた。
もっとも、それはヨーコの捉え方にすぎない。言った本人はド真面目であり、ブッ殺すという表現も、
比喩でもなんでもなくそのままの意味である。
「ちょっと待て。今俺たちが一番にやらなきゃいけないのは、脱出するための仲間を集めることだ。
そいつが危険人物なら確かに放っては置けないが、なにも今迎え撃つ必要はないだろ。それに、
殺しは――」
「あぁン? そりゃなんだ、命令か? それともお願いか? 前者だったとしたらそりゃ大きな勘違い
だぜキヨマロォ……。俺はおまえの仲間になってやるとは言ったが、部下になったつもりはねぇ。
俺とおまえは対等だ……従う義理なんかねーわけよ。
それともなにか、おまえは俺の親父か? それとも上司? まさか学校の先生とか言っちゃうん
じゃねぇよなぁー!」
唖然とするヨーコの目の前で、ラッドは清麿の顔面スレスレまで強面を肉薄する。
口調の荒々しさは常のものだが、この男、感情の起伏が驚くほど激しい。
嬉々としてブッ殺しに行こうと提案したかと思えば、今は清麿の些細な異論でお怒りモードだ。
まるでガキ大将……ヨーコはこの時点で、ラッドに対してそんな『甘い認識』を持ち始めていた。
清麿の身体が地面に対してほぼ四十五度、ほとんど押し倒されそうなくらいまで追いつめられると、
ラッドはなんの前触れもなく身を引いた。
そして、今度は『怒』の表情を再び『喜』に戻す。
「あそーだ。いいこと思いついたぞ俺は。キヨマロ、おまえは仲間を作ってここから脱出してぇ。
俺は思う存分殺し回りてぇ――」
一瞬、この男から耳を疑いたくなるような行動理念が聞こえてきたような気がしたが――まさか、幻聴だろう、とヨーコはとりあえず流す。
380: 2007/10/05(金) 23:24:11 ID:1fYYmi4l(5/8)調 AAS
381: 調整 2007/10/05(金) 23:25:13 ID:z8Uxx3S7(3/5)調 AAS
「両者の言い分を叶えるにはだ……俺が、おまえの、邪魔するヤツを片っ端から殺してけばいい。
ハッ、これで万事解決なんじゃねーの!?」
いや、幻聴などではなかった。 実際に相対するのは初めてだが、このラッドという男。
いわゆる『殺人狂』らしい。
「俺が、そんなヤツはいない、俺の邪魔になるようなヤツは存在しないと言ったら、おまえは誰も殺さないのか?」
「んなわけあるかよ……冷めるぜキヨマロ。おまえの邪魔するヤツってのはつまりだ、この殺し合いに
乗ったヤツ、それ以外にいるか? そういう奴等は総じて『俺が最強』、『俺が生き残る』、『俺が死ぬわけ
ない』、そんなこと考えてるヤツばっかだ。こいつらの話に出てきた男なんてまさにそれよ。自分が死ぬ
はずがないと信じてやがるから、そういう無茶ができる。
こいつら二人とも殺せてねぇってのになぁ――アー、おもしれぇ! さぞ悔しがってんだろうなぁ!
……ここで俺がこいつら殺したら、そいつ、もっと悔しがるかな?」
テンション定まらぬラッドの視線が、狂気の念に固定され、ヨーコに向く。
ヨーコは不覚にも、ゾクッ――としてしまった。 ガンメンから感じるそれではない。体感したことのないような、新種の恐怖……『人間の狂人』が放つ殺気だった。
蛇に睨まれた蛙のように竦むヨーコと、今にもやらかしかねないラッド、両者が数秒睨み――
合うかと思われたが、間に小柄な影が割って入る。
その人物こそが、この異質な談合の場で、唯一ラッドの狂気に干渉されない――自由すぎる
少年だった。
「あ? なにおまえ? ナイト気取り?」
「ナイトね……そりゃ見当違いかな。ほら、俺って誰にも縛られない存在だからさ」
そうだ。このジンという少年は、いきなり拉致され殺し合いを強要されても、他参加者の襲撃に
遭っても、まったく自己のペースを乱さなかった。
そして今も、ラッドという危険極まりない狂人と相対してなお平静を保っている。
「あー……もしかしてアレ? 俺ツエーから、女の前で格好つけても平気なくらいツエーから、こんなところで殺されるはずねーとか思ってる?
そうか、そうだよなぁ。見た目からしてゆるそうなツラしてんもんなぁ。
一秒後に自分がタコ殴りにされてて、二秒後にその痛みに悶絶してて、三秒後にショック死してる未来なんて信じられねぇよなぁ。
俺ぁよ……そういうヤツを殺すのが大好きなんだ。『自分は安全だ』と信じてやまない、どこぞの田舎貴族みたいに緩みきったヤツ。
そんな奴等がよ、いきなり命の淵に立たされるんだ。想像してみろ、ゾクゾクするだろ!?
どんな顔すると思う!? どんな命乞いすると思う!? 知りてぇよなぁ〜俺も知りてぇ! だから、死ね!」
言って即刻、ラッドはジンに向かって拳を突き出した。
情け無用の右ストレート。手加減などという文字は、この男の辞書には存在しない。出会ったばかりでも、それくらいはわかる。
息を飲む暇もなく、目を背ける暇もなく、それでもヨーコは咄嗟に身を引いてしまい、
ジンは、ラッドに殴られぶっ飛ばされた。数メートルほど。
「――なッ!?」
命中したのは顔面。軌道は地面に対して並行だったが、なぜかジンは、一発のパンチで宙高く舞い、後方のヨーコすら飛び越え、数分前に埋もれていた衣料店の中に逆戻り。
突き破られたショーウインドウが、またもやジンの体を店内のマネキンたちの下へと誘う。
盛大な物音を立てて店内の床を転がり、そしてジンは、再び女性物の服に塗れた。
思わず声を漏らすほど、不自然かつ大胆なぶっ飛ばされ方だった。ラッドのパンチの威力がそんなにも強烈だったのかと言えば、そうではない。
あれはどう見ても、ジンがわざと大袈裟にぶっ飛ばされてみた。そうとしか捉えられない。
それは傍観者であったヨーコと清麿、ジンを殴ったラッド自身も、皆同じ見解だった。
衣料店から音がやみ、三者がしばし呆然とし、ほどなくしてジンが這い出てきた。
その有様は、以前のようなミイラ状態ではなかったものの、見るからにヨロヨロで、パンチ効いてますよーと主張しているようなものだった。
「ってて……メチャクチャ痛いね、これ。こんなん何度も食らってたら本当に死んじゃう。もうカンベ……ってあれ?」
飄々とした態度で舞い戻るジンだったが、周りのリアクションは薄い。
それどころか、ラッドの凶悪な面相はさらに凍てつき、清麿の顔は微かに青ざめていた。
382: 誰かが死ぬのが怖いのか? ◆LXe12sNRSs 2007/10/05(金) 23:26:41 ID:Oj+1+lxJ(8/12)調 AAS
◇ ◇ ◇
「よーし! 全員乗ったな? シートベルトの用意はオーケー? んじゃかっ飛ばしてくれよジン。急がねぇと子猫ちゃんが逃げちまうからな。
楽しみだなぁワクワクするなぁいよいよ殺せるんだよなぁ! あーもーテンション下がんねぇよどうするコレ? おいどうする!?」
(……正直、こうなるであろうことはだいたい予測していた。予測はしていが……やっぱり、疲れる。
ある意味、フォルゴレやナゾナゾ博士に付き合うより厄介だよ……)
消防車に乗り込みはしゃぐラッドの様子を窺いながら、清麿は心中で頭を抱えた。
――ラッド・ルッソが本人でもセーブしきれないほどの殺人衝動の持ち主であることは、第一遭遇で痛感した。
しかしそれでも、彼の最終目標が『螺旋王を殺す』ことであるならば、仲間にする価値はあると判断したのだ。
ただでさえ、どんな性格、趣向、目的を持った人間がいるかわからない現状、味方にできる人材は少しでも確保しておきたかった。
(要は、ラッドが暴走しないよう俺が気を配れば言いだけの話だ……けど、さっきので自信なくした……。
そういやこいつマフィア崩れとか言ってたな……本当に大丈夫だろうか、俺……)
ラッドと和解し、ジンとヨーコの二人組に遭遇する間、清麿はラッドから些細なプロフィールを聞き出していた。
曰く、ルッソ・ファミリーというマフィアグループに所属していたということ。
曰く、1931年のアメリカ、清麿も知る禁酒法時代からこの地に召喚されたということ。
曰く、フライング・プッシーフットという列車で『派手なパーティー』を開催する予定だったということ。
曰く、自分は安全だと信じてやまない緩い人間を殺すのが大好きであるということ。
などと、知りたくもないが、知ったら知ったで興味深い事柄を中心に。
383: 2007/10/05(金) 23:27:01 ID:PgGx74uX(1)調 AAS
384: 2007/10/05(金) 23:27:49 ID:1fYYmi4l(6/8)調 AAS
385: 2007/10/05(金) 23:28:13 ID:AjFGe+Fu(4/4)調 AAS
386: 調整 2007/10/05(金) 23:28:28 ID:z8Uxx3S7(4/5)調 AAS
言い終えると、ラッドはヨーコから視線を背け、消防車へと足を伸ばす。
「で、どうするよキヨマロ? 俺は今から、そいつら襲ったっていう男を殺しに行くけどよ、おまえ、来る?」
「……一つだけ条件がある。俺が仲間と判断した奴には手を出すな。もちろん、さっきみたいにこの
二人に殴りかかるなんてもってのほかだ」
「そりゃあ、俺が最初に提案した条件を飲むってことか?」
「そう受け取ってもらって構わない。あんたの最終的な目標が螺旋王を殺すことなら、道は同じはずだ」
これが、清麿の下した最大限の譲歩だった。
ラッドという男が、自分のか細い腕では制御できない自由奔放な人物であるということは、胃が痛くなる
ほどわかった。
だからといって、彼と離別し野に放っては、それこそ他の善良な参加者の身が危険になるかもしれない。
一度手にしてしまった手綱、清麿には繋ぎ止める義務がある。いつ振り解かれるとも限らない危うい綱だが、せめてこの命がある内は。
――清麿がそんなことを決意する片隅で、ヨーコは呆然と立ち尽くしていた。
「よぉし決まり! ジン! それにヨーコっつったな。さっきのはナシ、水に流して忘れてくれ!
これからはフレンド、いやブラザーだ。楽しく殺ろうぜ。んで、さっそくだけど、車出してくれや」
「なら、俺が運転するよ」 「おう! 頼んだぜジン!」
意気揚々と乗車するラッド、それに次いで清麿が、続いてジンが乗ろうとするが、その前に。
「あんまり考え込まない方がいいよ、おねーさん。ピクニック気分で楽にいこう」
「ジン……」
硬直していたヨーコの肩をポンと叩き、励ますジン。まるで、いざとなったら俺が守るよ、とでも言わんばかりの気障な仕草だ。
二度も衣料店の中を転がりまわったせいか、ジンの笑顔は埃塗れになっていた。余裕綽々で、目立った外傷もない。
ヨーコが要求すれば、年中無休で微笑みかけてくれるような気さえする。
だからこそ、失うのが怖い。
「おーい! さっさと出発しようぜー! 朝飯はそいつをブッ殺し終わった後のハイな気分で食いてぇからなぁ!」
逸早く乗車を済ませたラッドが、クラクションを鳴らしてジンとヨーコを急かす。
足はまだ、前へ進む気にはなれなかった。それでも、ジンに腕を引っ張られ、不本意なまま消防車へと連れられていく。
――カミナは死んだ。己を示し、己を貫き、己に従い死んだ。バカだと思った。
しかし、それは仕方がなかったことなのかもしれない。無理を通して道理を蹴っ飛ばす、彼の信条は
死を恐れず、死に近しい。 悲惨な見解を述べるなら、早死にする性格。彼が彼として生きていくなら、いずれは必ず壁にぶち当たる。
彼がその壁を、死という運命を乗り越えるには、仲間の手助けが必要だったのだ。
だが、ヨーコにはそれが果たせなかった。
(誰かが死ぬのが怖いのか?……か。その通りかもね)
ヨーコは、ジンが死ぬのが何より怖い。自分の死よりも恐ろしい。
出会ってまだ数時間しか経っていない、縁も義理もない関係だが、彼はこの世界において、現状最もヨーコに近しい存在だ。
それが消え、失ってしまうのが、たまらなく怖かった。
他人の死は他人の死、などと目を背けることはたぶんできない。カミナのときのように、失意に溺れるに違いない。
それを理解していて、わざわざ死地を闊歩する気になどなれようか。なれるはずがない。
小隅でビクビクと怯えていられるなら、ぜひそうしたい。なのに、自分の周りはバカばっかだ。
あのバカとは性質は違うにしても、ヨーコに言わせればバカには違いない。男はバカばっかだ。
387: 誰かが死ぬのが怖いのか? ◆LXe12sNRSs 2007/10/05(金) 23:28:33 ID:Oj+1+lxJ(9/12)調 AAS
まず、ラッドがお天道様の下を平然と歩けるような人種ではないということ。これについては出会いが出会いだったので、さほど驚きはしない。
問題は、彼の住んでいた地が1931年のアメリカ……清麿にとって、大昔の人間であるという事実だ。
螺旋王ロージェノムと、螺旋王に挑みかかっていったテッカマンランス。清麿は彼らを、当初は魔物の関係者ではないかと考えていた。
もちろん、これは考え得る一つの可能性にすぎず、根拠も確証もない。
この殺し合い自体が『魔界の王を決める戦い』となんらかの繋がりがあると想定し、無理にこじつけてみただけだ。
だが、石にされた千年前の魔物たちを復活させ軍団を率いたゾフィス、異世界より魔界に復讐を成さんと画策していたマエストロ……
最低限のルールが定められている魔界の王を決める戦いにも、ある程度のイレギュラーな事態は起こっている。
今回の一件もその一端では……とも思ったが、ラッドの話を聞くに、その線はほぼなくなった。
このジンとヨーコという二人もそうだ。まだ詳細な自己紹介はしていないが、格好からして清麿の住む世界の住人ではないだろう。
現状の判断材料を用いた結論として、今回の一件に魔物や魔界は関与していない。
まったく未知の、それこそ時代や世界すらも支配する、超常的な事象によるもの。
魔界の王をも超越した――それこそ神の所業としか思えなかった。
そして、懸案事項はもう一つ――ラッドと情報交換をする合間に確認した、清麿のもう二つの支給品。
一つは、鏡の欠片。一見してただのガラクタのようにも思えるが、清麿はこの欠片に忘れたくても忘れられない思い出があった。
この鏡の欠片は――かつてグリサという魔物が魔界から持ち出した、禁断の魔道具である。
人間界に持ち込まれる際三つに砕け散ったそれは、全て掛け合わせれば魔物の魔力を大幅に増幅させられる。
実際、清麿とそのパートナーであるガッシュは、魔鏡の力によってパワーアップしたグリサと戦い、苦戦を強いられた。
そのとき失われた魔鏡が、今また欠片となって清麿の手元にある。復元したのか複製したのかは知らないが、これも螺旋王の力の一端と考えるべきか。
不可解なことはまだある。名簿に記載されていた、ビクトリームという名……あのインパクトゆえ、これも鮮明に覚えている。
石版からゾフィスによって蘇らせられた千年前の魔物。そして、本を燃やされ魔界に帰ったはずの魔物。それがビクトリームだった。
そのビクトリームがここにいるのはどういうわけか。わざわざ魔界から呼び出されたのか、
それともラッドのように、魔界に送還される前の世界……清麿にとっての『過去』から呼ばれたのか。
疑問は尽きず、回答はすぐには得られないが、重要視すべきは魔鏡でもビクトリームでもない。
もう一つの支給品である。
(あれが、あの説明書に書かれている通りの代物だとしたら……殺し合いなんてしている場合じゃなくなる)
388: 誰かが死ぬのが怖いのか? ◆LXe12sNRSs 2007/10/05(金) 23:29:37 ID:Oj+1+lxJ(10/12)調 AAS
超電導ライフル、魔鏡の欠片に続く、清麿の三つ目の支給品――それが、『無限エネルギー装置』だった。
説明書が添えられていなければなんの機械か皆目検討もつかなかったが、注意書きを見て逆に戦慄した。
無限エネルギー装置――その概要は、クリーンなエネルギーを常に生み出すことができるというもの。
清麿はこれを、環境保全のためにどこかの科学者が発明した装置なのだと解釈した。だが説明書には、こうも書かれていた。
悪用すると、地球が滅ぶ。つまりは、地球が壊滅するほどの質量エネルギーを生み出すことが可能な装置、というわけだ。
未完成品らしく、核となる『X装置』だけはなかったが、これは所持しているだけで危険すぎる代物だった。
もし清麿が誰かに殺されでもして、荷物が奪われ、この装置をなんらかの方法で機動してしまえば……果たしてどうなってしまうのか。
心配ならとっと手放すなり、破壊するなりすればいい。だが、地球を壊滅させられるほどのエネルギーだ。上手く使えれば脱出の切り札にも成り得る。
要は使い手次第、毒にも薬にも成り得るブラックボックス。その危険性を承知しているからこそ、手元に置いておきたい。
(……この装置のことについては、まだ保留だ。首輪や脱出方法についても。今は深く考えず、信頼できる仲間を増やすことに専念しよう)
陽気なラッド、運転席に座り表情が窺えぬジン、なにやら浮かない印象のヨーコ、三者を見渡して、清麿は改めてそう決意した。
【A-6/南東の道路のカーブ付近/1日目/早朝】
【高嶺清麿@金色のガッシュ!!】
[状態]:螺旋王に対する激怒、右耳欠損(応急処置済み)、軽い貧血
[装備]:イングラムM10(9mmパラベラム弾32/32)
[道具]:支給品一式、イングラムの予備マガジン(9mmパラベラム弾32/32)×5、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!!、無限エネルギー装置@サイボーグクロちゃん、清麿の右耳
[思考]
基本方針:螺旋王を打倒して、ゲームから脱出する
1:ラッドが暴走しないよう注意する。
2:ガッシュ、フォレゴレとの合流。
3:螺旋王に挑むための仲間を集める。その過程で出る犠牲者は極力減らしたい。
【ラッド・ルッソ@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(ランダム支給品0〜1を含む)、超電導ライフル@天元突破グレンラガン(超電導ライフル専用弾25/25)、ファイティングナイフ
[思考]
基本方針:自分は死なないと思っている人間を殺して殺して殺しまくる(螺旋王含む)
1:南下し、ジンとヨーコを襲ったジャンパーの男(シンヤ)を殺しに行く。
2:清麿の邪魔者=ゲームに乗った参加者を重点的に殺す。
3:基本方針に当てはまらない人間も状況によって殺す。
【魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!!】
魔界の禁断具。三つの欠片を揃え、魔鏡を完全な状態にすると、魔物の魔力を大幅に増幅させることが可能。
現時点では、三つの欠片のもう一つはイリヤが所持。もう一つは行方不明。
また、増幅されるのはあくまでも魔力であり、このロワでは魔物にのみ影響を及ぼすものであるとは限らない。
【無限エネルギー装置@サイボーグクロちゃん】
コタローの父が発明したスケールの大きい装置。これを上手く使えばクリーンなエネルギーを常に生み出すことができるが、
悪用すると地球が一つ消し飛ぶと言われている。バラバラにされていた部品が全て組み上げられた状態。
だが、装置の核である『X装置』だけは外されている。
389: 調整 2007/10/05(金) 23:29:48 ID:z8Uxx3S7(5/5)調 AAS
◇ ◇ ◇
「よーし! 全員乗ったな? シートベルトの用意はオーケー? んじゃかっ飛ばしてくれよジン。急がねぇと子猫ちゃんが逃げちまうからな。
楽しみだなぁワクワクするなぁいよいよ殺せるんだよなぁ! あーもーテンション下がんねぇよどうする
コレ? おいどうする!?」
(……正直、こうなるであろうことはだいたい予測していた。予測はしていが……やっぱり、疲れる。
ある意味、フォルゴレやナゾナゾ博士に付き合うより厄介だよ……)
消防車に乗り込みはしゃぐラッドの様子を窺いながら、清麿は心中で頭を抱えた。
――ラッド・ルッソが本人でもセーブしきれないほどの殺人衝動の持ち主であることは、第一遭遇で痛感した。
しかしそれでも、彼の最終目標が『螺旋王を殺す』ことであるならば、仲間にする価値はあると判断した
のだ。 ただでさえ、どんな性格、趣向、目的を持った人間がいるかわからない現状、味方にできる
人材は少しでも確保しておきたかった。
(要は、ラッドが暴走しないよう俺が気を配れば言いだけの話だ……けど、さっきので自信なくした……。
そういやこいつマフィア崩れとか言ってたな……本当に大丈夫だろうか、俺……)
ラッドと和解し、ジンとヨーコの二人組に遭遇する間、清麿はラッドから些細なプロフィールを聞き出していた。
曰く、ルッソ・ファミリーというマフィアグループに所属していたということ。
曰く、1931年のアメリカ、清麿も知る禁酒法時代からこの地に召喚されたということ。
曰く、フライング・プッシーフットという列車で『派手なパーティー』を開催する予定だったということ。
曰く、自分は安全だと信じてやまない緩い人間を殺すのが大好きであるということ。
などと、知りたくもないが、知ったら知ったで興味深い事柄を中心に。
390: 誰かが死ぬのが怖いのか? ◆LXe12sNRSs 2007/10/05(金) 23:30:43 ID:Oj+1+lxJ(11/12)調 AAS
◇ ◇ ◇
……消防車が南へ進路を定め走り去っていった後、ジンが放り込まれた衣料店の屋根に、それを見送る怪しげな人影があった。
全身にかけて紫色、その正体は拳法家が着る道着。そしてその拳法着に包まれているのは、一本結びのおさげが特徴的な老人。
腕を組み仁王立ちという、厳格な態度が姿勢にまで現れている彼の人物こそ、人が東方不敗、またはマスターアジアと呼ぶ男だった。
「……小童共がなにやら騒いでいるかと思えば、なかなかに興味深い話をしてくれる。これより南に闘争の兆し有り、か」
衝撃のアルベルトとの戦いに区切りをつけた後、デイパックを回収し、しばしの休息を済ませ、そして移動しようとしたところに――鳴り響いたブレーキ音。
彼、東方不敗は、ジンとヨーコの急停止から現在に至るまで、影で全ての話を盗み聞きしていた。
「それにしてもあのラッドという男……自ら殺戮の火種を撒こうとは、愚かしいほど若い。だが、それだけに興味がある。
清麿なる小僧に奴が御せるとも思えん。あの車の行く先、もしくは血の雨が降るやもしれんなぁ……フフフ」
不敵に笑い、東方不敗は屋根から跳躍一蹴、軽やかな体捌きで路上に着地する。
女が一人、童が二人、若造が一人、襲撃を仕掛け全員血祭りにあげることも容易かっただろうが、東方不敗はそれをしなかった。
走行中の車を襲撃したというジャンパーの男、そしてそれと車上で渡り合ったというジンなる少年。
さらに、ジャンパーの男を殺すと大声で豪語してみせたラッドなる男、ついでに清麿という少年に、ヨーコという女……。
一見して、思想も感性もバラバラに見える四人組と、明らかにゲームに乗っている風な男。ただ散らすには惜しい気がした。
武闘家としての血が疼いた、というのも理由の一端ではあるが、闘争に参加するならそれに相応しい舞台を用意したい。
それが、これより南の方角に。おそらくは、あのラッドという男が引き金となって。
「より多くの人間を巻き込み、闘争と殺戮を繰り広げる渦と化す……あの若造は、その中心と成り得る資質がある。
数を減らすに、複数名による乱闘は好都合。中には、わしの求める情報を持つ者も居るやもしれぬ。
……それまではあの四人組、せいぜい利用させてもらおうではないか」
あの四人の行く先で争いが起こるというならば、東方不敗はそれに便乗し、大いに盛り上げてやるのみ。
既に見えなくなった消防車を追おうと歩を進めるが――ここで一つ捕捉をしておく。
衝撃のアルベルトとの戦闘前、東方不敗が確認した支給物の中には、フラップターと呼ばれる空中移動用のはばたき飛行機が含まれていたが、彼はこれを使わない。
武闘家たるもの、文明の利便性に捉われてどうするか。自らの足こそ最速の移動手段。
そう言わんがばかりに、東方不敗は南へ向かって駆け出した。その走りは、人とは思えぬほど速い。
フラップターの他にも、ソルテッカマンと呼ばれる気密装甲服、いわゆる攻撃特化型パワードスーツも入っていたが、もちろん東方不敗にそんなものは不要だ。
拳こそ最大にして最強の矛、鍛え上げた筋肉は鎧にも劣らぬ頑強な装甲、武を極めた東方不敗に、これらの支給武器はまったく意味を成さない。
だが、ただ一つ。三つ目の支給品だけは、意味合いが違った。
「螺旋王よ、貴様にこれだけは言っておこう……アレは美味かったとなァ――!」
疾走する東方不敗の姿は、いつにも増して輝いているように見えた。
ひょっとしたら、休憩の合間に食したアレのせいかもしれない。
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