[過去ログ] 【艦これ】提督「…さて、と」 (1002レス)
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982: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/18(土)23:27 ID:YrO8cEV80(1/13) AAS
その頃……


飛龍「(蒼龍が山口さんに連れてかれて、暇ぁ)」

飛龍「山口さんてば、蒼龍ばっかり連れ回してるなぁ。……やっぱ、胸か?!」

飛龍「……ま、面倒じゃなくて良いけどサ。間宮行こっかなぁ……♪」

鼻歌を歌いながら、ぶらりぶらりと雨上がりの夕暮れを歩く。そこに、雨後の湿気た空気を吹き飛ばすような風が吹き、飛龍の髪を撫ぜた。

飛龍「あーきもち……」

間宮の甘味を思うと、自然と唾液が出る。飛龍の足取りは軽く、心は浮ついた。
来訪者があるまでは。
飛龍の元を訪れた者は、その前に立ちふさがり、飛龍の歩みを止めた。
瑞鶴である。

飛龍「……私間宮行きたいんだけど」

瑞鶴「……飛龍さんにお願いがあって来ました」

飛龍「何?」

瑞鶴「私に、戦い方を教えてください」

飛龍「……北のひよっ子は礼儀を知らないのかい?司令官通しな。
大体、加賀が居るだろ。教え方甘いみたいだけど、ひよっ子にはあいつで十分だよ」

瑞鶴「……そこをなんとか、お願いします!」

飛龍「……加賀に大恥かかせる事になるって事、わかってる?北提の顔にも泥を塗ることになるよ」

瑞鶴「……なんとしても、私は!強くなりたい……強くならないと、いけないんです!」

飛龍「ふぅーん。心意気は認めてあげるよ。でもパス」

瑞鶴「……そこを、なんとか!」

瑞鶴は飛龍にすがりつく。
飛龍は嫌そうな顔を隠そうともしない。

飛龍「……しつこいなぁ……」

瑞鶴「お願いします!」

飛龍「私は英雄提督は嫌いだけどさ、加賀に嫌がらせしたい訳じゃ無いんだ。この事は黙っててやるから、もう帰んな」

瑞鶴「……お願い、します!」

飛龍「……」

はぁぁぁぁ〜と長い溜息。

飛龍「私は口先だけの奴は嫌いだ」

瑞鶴「……はい」

飛龍「とりあえず訓練所に行こうか。練度と……根性、見せてもらおう。教えてあげるかはそれ次第」

瑞鶴「……はい!」


ーーそしてこの日、瑞鶴は初めて訓練で血を吐く事になる。
飛龍の教導の代償として。

983: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/18(土)23:32 ID:YrO8cEV80(2/13) AAS
艦娘酒屋前、外


ガチャ、とドアが開き、艦娘が一人、酒屋から出て来た。

川内「……もう行くんだ、加賀。早かったね」

その出て来た艦娘に、入り口で座り込んでいた艦娘が話しかけた。

加賀「……盗み聞き?最低ね」

川内「アハハ。そう言うなよ、提督の大切さん」

加賀「……チッ」ツカツカツカ

川内「あ、おーい!どこ行くのさー……あーあ、行っちゃった……折角、瑞鶴がヤバい事してるって教えてあげようとしたのに……」

ガチャ
不知火「……何してるんですか、川内」

川内「あ、提督の頼り人」

不知火「……それが何か?」

川内「……急に自身を得たなぁ……」

不知火「……そう言うあなたは、提督の何なんですか?」

川内「ーーは?」

沈黙。

不知火「……私は帰ります」フンス

テクテク

川内「あ、おい!……って行っちゃったよ……」

川内「やれやれ、ほんと、二人とも素直なんだから……」

川内「……アハッ♪
アハハッ
アハハハハ!」

川内「あいつら馬鹿だなぁ!実に馬鹿だなぁ!」

川内「お互い提督に直接言い寄れば良いのに!無駄な衝突して勝手に理解しあって!ありがたいよ、全く!アハハ!」

川内「単純だなぁ!すぐ、お互いの言葉信じて!」

川内「これで、加賀は北提の元で大人しくなるだろうし!本調子に戻った不知火は、榛名をしっかり管理するだろうし!」

川内「アタシにもチャンスが出来たじゃん!」

川内「アハハ!……ハハ……」

川内「……」

川内「……アタシ、いつから、こんなんなったんだっけ……いつから、かつての仲間の言葉、素直に聞けなくなったっけ……アタシ、提督のなんだっけ……?」
984: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/18(土)23:32 ID:YrO8cEV80(3/13) AAS
川内「……クソッ……見苦しいなぁ……」

川内が虚しい気持ちで夕日を眺めていると、酒屋の扉からまた誰かが出て来た。そして、川内に呼び掛ける。

ガチャ
「……おい、お前」

川内「……なんだい?」

不機嫌な川内がギロリと入り口を睨むと、そこには酒屋の主任が居た。

主任「む!その顔は夜戦隊の……また貴様か!」

川内「……げっ」

主任「言い逃れは出来んぞ!よくもまた、店の中で暴れてくれたな!」

川内「……いや、今回は本当にアタシじゃーー」

主任「問答無用!ここに居るという事は、休暇中だな?!さぁ、掃除してもらうぞ!……割ったグラスの分の皿洗いもな!」

川内「えちょ、待って待ってヤダヤダヤダぁぁぁ!」

首根っこを掴まれた川内は、ズルズルと店の中へ引き摺り込まれた。

川内「加賀っ不知火っ覚えてろよぉぉぉぉ!」
バタン!
985: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/18(土)23:33 ID:YrO8cEV80(4/13) AAS
鎮守府庁舎


コンコン
提督「失礼致します」

中央長官「入れ」

ガチャ
提督「遅くなり、申し訳ございません」

中央長官「急に呼び出したのは此方だ。気にするな」

提督「は……」

中央長官「……君の居るサセン島に配備されている艦娘は榛名、足柄、不知火に鳳翔。隼鷹と雷は兎も角、戦力だけを見るならば、ある程度揃っているな」

提督「はい」

中央長官「英雄提督。君に命令を下す」

提督「はっ」

中央長官「近く、南方海域に敵主力級の出現が予想されている。
南方方面軍サセン島防衛隊は更に練度を高め、これに備えよ」

提督「はっ!謹んで拝命いたします」

中央長官「ついては、これを渡しておこう」スッ

提督「……?(小箱?)」

中央長官「開けてみろ」

提督「失礼します」ぱかっ

提督「……これは……!……廃棄されたのでは……?」

中央長官「中身に関して、私は一切関知しない」

提督「……」

中央長官「困った事に、もう一箱有ったのだが、加賀が『勝手』に持って行ってしまった」

提督「……それは……しかし……」

中央長官「私は君を理解しているつもりだ」

提督「……」

中央長官「……加賀には本土にて『それなりの』訓練を積ませる。『あくまでも教官とする為』にな。しかし、今後どうするかについては、元上司の、君の意見を大いに取り入れるつもりだ」

提督「……」

中央長官「話が逸れたな……そのことはよく検討しておいてくれ。どうせ直ぐには動かせん」

提督「……はい」

中央長官「さて、赤城らはまだ動きを見せていない。だが、これまでの経験から、君の居場所が判れば、そこに敵が殺到することは予想出来る」

提督「……」

中央長官「今回の会議の結果に従い、情報開示し、今は防衛線を固める。君には、その奥で練度を高めておいて貰おう。今はまだ、息を潜めていろ」

提督「はっ」

中央長官「決戦の際は作戦の決定に伴い、部隊の再編を行う可能性があるだろうが、現時点で編成の変更予定はない。今の艦隊で最善を尽くせ」

提督「はっ」

中央長官「詳しい作戦等は検討の後、追って通達する。……君が今すべき事は、その小箱を持ってすぐさま島に戻り、部下と情報を共有し、防衛戦略を練る事だ」

提督「はっ!」

中央長官「他の南方方面軍とも連携して、抜かりなく頼むぞ。……行ってこい」

提督「はっ!失礼いたします」
986: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/18(土)23:36 ID:YrO8cEV80(5/13) AAS
宿舎


コンコン
提督「帰った」

ガチャ
不知火「お疲れ様です」

榛名「お疲れ様です!」

提督「ああ。……急だが、明日の便で島に戻る事になった。準備をしておけ」

不知火「……!そうですか。わかりました」

榛名「はい!」

提督「頼んだ」
バタン


提督の部屋


提督「中央長官も無茶をなさる……こんな物を用意するとは、な」

提督はチラリと手元の箱を見た。

提督「やれやれ、退去に伴う書類の処理を急がねばな……お陰で挨拶に回る暇もない」

提督は部屋の机に座り、書類作業を始める。
暫くして、ふと呟いた。

提督「……いよいよ、現実的になってきたな……赤城達との戦いが」

そう言って、提督は胸元に手を遣り、ペンダントが無いのを思い出す。

提督「……結局、誰に渡したんだか。超硬合金だし、御守りにでもと思ったが……」

987: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/18(土)23:38 ID:YrO8cEV80(6/13) AAS
翌日、港


榛名「いやぁ、入港は大変だったのに、出港は緩いもんですね。手続きが……」

提督「そんなものだ」

不知火「提督、お時間の方が迫っています。皆様にご挨拶を……」

提督「そうだな。少し、行ってくる」

………
……



提督「南方長官、本来ならば此方からお伺いせねばならぬ所を、申し訳御座いません。……お世話になりました」

南「構わん、こちらこそ世話になった」

提督「そう仰って頂けると、光栄です。情報開示や防衛戦略等、課題は山積しておりますが、必ずやこの戦い、勝利しましょう」

南「勿論だ」

南がスッと手を差し出した。
提督はそれをガシッと掴み、二人は握手を交わす。
そこへ、駆けて来る一団があった。

太郎「提督さー金剛「テイトクー!遅れてsorryネー!」

翔鶴「ちょっと金剛?!」

提督「太郎君、金剛、翔鶴……すまないな、わざわざ」

太郎「そんな!とんでもありません」

金剛「テイトクー寂しいヨー!」

提督「そうかそうか」よしよし

金剛「えへへ……」

提督「……やっぱり、姉妹だな」

金剛「?……what……?」

提督「こちらの話だ。……太郎君、例の件はくれぐれも慎重にな」

太郎「……はい。……私も翔鶴の艤装の改修が済み次第、直ぐに戦線に復帰します。その際、もし宜しければ、是非演習を……」

提督「構わん。こちらからお願いしたい位だ」

太郎「ありがとうございます!……船旅、お気をつけて」

翔鶴「……」ぺこり

提督「ああ。またな」

金剛「Bon Voyage、テートク!」

提督「Merci、金剛」

988: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/18(土)23:39 ID:YrO8cEV80(7/13) AAS
………
……



提督「見送りご苦労さん」

川内「えっへっへ!」

神通「……」ペコ

提督「……川内、随分と疲れているようだな」

川内「……朝まで皿洗って掃除しててたからねぇ……」

提督「……?」

川内「ま、それは良いよ。……アタシ、振られちゃったみたいだね」

提督「まぁ、最初から断っていた話だ」

川内「……」

提督「お前達は強い。本当に私の力となる心算が有るのなら、今は待て。そう遠くない日に、私の方からお前達を呼ぶ事になる」

川内「……それは夜戦隊として、だよねぇ」

提督「そうだな」

川内「……わかった!死ぬ前に呼んでよ?」

提督「……ありがとう。では、私は行く……これ以上、危険な真似はするな。良いな、川内」

川内「しないしない!」

提督「それは嘘つきの顔だな……」ハァ

川内「……ほんとだって」

提督「川内。一線は越えるな」

川内「……わかってるよ」

提督「私を失望させるなよ」

川内「うん」

提督「……じゃあな。また、会おう」

川内「バイバイ!」

神通「お気をつけて」


川内「行ったか。……ダメだよ、提督。赤城が、いつも言ってたろ。『一番以外に、価値は無い』って」

川内「……アタシはまだ諦めて無いぜ」

神通「……」

川内「……行くぞ神通」

神通「はい」

989: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/18(土)23:41 ID:YrO8cEV80(8/13) AAS
………
……



英雄提督が本土を離れるらしい。
その情報と共に、昨晩行方知れずだった瑞鶴は帰って来た。
全身ボロボロの状態で。

加賀は今すぐにでも走り出したかったが、瑞鶴をそのままにしておけなかった。
しかし、龍驤が、瑞鶴は見といたるから行っといで、とその背中を押す。
加賀は感謝の言葉と共に、港へ向けて駆け出した。


加賀「……提督!」

提督「……探したぞ、加賀」

加賀「私、もよ……」

全力で駆けて来た為、息が荒い。
それを落ち着けていると、提督が話し始めた。

提督「……昨晩、中央長官から懐かしい物を受け取った」

そう言って懐から取り出した物は。

加賀「それは……私も、その前の日に頂いたわ」

それを提督が無言で元の場所に戻すと、暫しの沈黙が訪れた。

提督「今まで色々すまなかった」

加賀「提督……」

提督「……私は、お前を近くに置きたくなかった。少なくとも、赤城とケリをつける迄は」

加賀「……知ってますよ。不知火から、聞きました」

提督「何?……言ったのか、奴は……」

加賀「あの子も、色々抱え込んでいたわ」

提督「……そうだろうな。不甲斐ない話だ。全部を赤城に丸投げしていた、そのツケだな」

加賀「あの人は、もう居ないわ。ちゃんと、不知火を見てあげて頂戴」

提督「……心掛けよう」

990: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/18(土)23:45 ID:YrO8cEV80(9/13) AAS
加賀「……そして、私は大丈夫よ。教官になる事に決まりそうなの。もう……戦う事も無いわ」

提督「……生憎だが、そうも言ってられなくなった」

加賀「え?しかし、中央長官の……」

提督「……相変わらず、お前は少し頭が硬いな」

加賀「何をーー」

ムッとした加賀の頭を優しく撫ぜる。

提督「よく考えてみろ。中央長官が俺とお前に渡した物を。このタイミングだ。明らかに赤城を意識しているだろう」

加賀「……という事は、これは、まだ機能するのですか?……これを使う事は禁じられて……まさか、また使えと……」

提督は狼狽する加賀を見て苦笑し、言った。

提督「本部も余裕が無い、という事だ」

加賀「……しかし」

提督「……真面目なのは、お前の美徳だな」

加賀「っ……」

再び髪を撫でる提督に、加賀は俯いて喋れなくなる。

991: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/18(土)23:46 ID:YrO8cEV80(10/13) AAS
提督「なぁ、加賀」

加賀「……はい」

提督「俺は最近、ふと自分がわからなくなる事がある」

加賀「……」

提督「俺は何をしているのか、とね……」

加賀「……人生、そんな日もあるわ」

提督「ふっ。加賀センセの有り難いお言葉だな」

加賀「馬鹿にしてるわね……頭に来ました」

提督「そんな事はない。怒るな、怒るな。……まぁ、なんだ。今は本土の最新鋭の授業とやらをみっちり受けてくれ、加賀センセ」

加賀「……その、センセって言うの、やめて欲しいのだけれど」

提督「俺は良いと思うぞ」

ははは、と笑ってから、提督は踵を返した。

提督「……そろそろ、時間だ。また連絡する」

加賀「そう……キチンとお願いね」

提督「ああ」

加賀「……」

提督「……」

加賀「……行かないの?」

提督「……なんか、最後に一言くれないか」

背を向けたまま、提督は加賀に頼んだ。
その背中は少し寂しそうで。
加賀は少し考え込み。

加賀「……」コホン

加賀「……こ、困ったら先生に相談なさい?」

992: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/18(土)23:46 ID:YrO8cEV80(11/13) AAS
提督は思わず振り返ると。
加賀の頬は染まり、綺麗な栗色の瞳は、斜め下を見つめていた。
羞恥心からか、指がモゾモゾと動いている。

提督「……それは、ありがたい事だ。心に留めておくよ」

恥じ入る加賀の姿を記憶に納め、提督は笑う。

提督「今度こそ、行く」

加賀「コホン……気をつけて」

提督「……また会おう」

加賀「……はい」

………
……



提督「待たせたな」

不知火「いえ、大丈夫です」

提督「よし、では、不知火及び榛名は艤装を受け取り、高速輸送船へ向かえ。輸送船内の艤装収容施設にて合流しよう」

不知火「了解です。行きましょう、榛名さん」

榛名「は、はい!」

不知火と榛名は艤装を受け取る為、提督の元を離れて行く。

提督「やれやれ、最後まで慌ただしい日々だったな……」

993: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/18(土)23:50 ID:YrO8cEV80(12/13) AAS
提督「…さて、と」

もうすぐ昼だ。
太陽はぐんぐんと高度を増して行き、その光は中央鎮守府を綺麗に照らしている。
しかし、ひとたび海を見れば、遠くに黒い、大きな積乱雲が見える。
嵐が来るか。そう、心の中で呟いて、提督は船へと歩き出した。


994: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/04/18(土)23:57 ID:YrO8cEV80(13/13) AAS
投下終わりです

このスレ内で終わらせようとした為、かなり強引な終わり方ですが、本土編はここまで
お付き合いありがとうございました!

次スレもよろしければ、お願いします

【艦これ】赤城「……さて、と」提督「昔話を、しようか」
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明日も埋まって無ければ、本編と関係のない、1レスで完結する話を投下していこうかと考えています

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