[過去ログ] マミ「私は……守りし者にはなれない……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第三章 (805レス)
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325: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/24(金)12:51 ID:VriKYHuB0(1/3) AAS
>>323
ageんなよsageろ
無駄な考察()雑談でスレ消費すんなよな
こんな流れで自分語りしたい奴が多いから特オタはうざがられるんだよ…
326
(2): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/24(金)15:38 ID:VOw+xBIy0(1) AAS
↑一言多い。 それのことを言ってるんですよ

あと牙狼は特撮じゃなくてハイパーミッドナイトアクションドラマ。二度と間違えないでくださいね。
327: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/24(金)16:26 ID:VriKYHuB0(2/3) AAS
>>326
それ真面目に言ってるの?
牙狼のジャンルは特撮考えても特撮だろ。世間でもそういう認識な気がするが
328: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/24(金)16:29 ID:VriKYHuB0(3/3) AAS
>>326
それ真面目に言ってるの?
牙狼のジャンルはどう考えても特撮だろ。世間でもそういう認識な気がするが
ハイパーミッドナイトアクションドラマ()とか痛すぎるぞ…
329: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/24(金)16:29 ID:opqL9sKno(2/2) AAS
信者装った荒らしやろ
とりあえず投下くるまで静かに待とうや
330: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/24(金)17:41 ID:GnnpNzhxo(1) AAS
お客さん気取りと仕切りたがりが沸くのは
長く続いたスレの恒例行事
331: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/24(金)23:49 ID:hX8b2KpAO携(1) AAS
作品が面白いから考察にしろ雑談にしろ話題が広まるんであって、微笑ましい程度のものやんか
どいうところに興味を引かれたとか、どういう場面を疑問に感じたとか、それも立派な感想なんだし
そこにウザいとか中二とか()とか喧嘩腰で突っかかっても荒れるだけで仕方ない
332: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/24(金)23:53 ID:KqjT/9FF0(1) AAS
ここの連中は頻繁にキャラdisにはいるから嫌い
333: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/24(金)23:58 ID:PIUdxf540(1) AAS
他人の感想なんか気にするなよ
SSだけ読んだっていいんだから
334: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/24(金)23:59 ID:vhES0/yH0(1) AAS
末尾みてみ
荒らしてるのは一人だから
335: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/25(土)01:52 ID:l/ycx821o(1) AAS
なんだこいつらやべえ
341: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/25(土)09:07 ID:aQ6NFxFAO携(1) AAS
「まどマギSSスレをゲートに出現するホラーか!?」

『鋼牙!数が多すぎるぞ』
342: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/25(土)19:19 ID:nqJIVwoUo(1) AAS
黙ってNGに登録……できない。
あれ何で?
343
(1): ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2013/05/27(月)02:52 ID:ucO/ckBgo(1) AAS
ちょっと半端なので今日は見送り
もう少し書き溜めて、明日には必ず
344: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/27(月)21:01 ID:cCOTcaOp0(1) AAS
>>343
楽しみにしてます。

ではここで牙狼情報。

スピンオフ映画『牙狼外伝〜桃幻の笛〜』の公式サイトがリニューアル。 外部リンク:garo-project.jp
注目はキャスト。なんと翼の妹、山刀鈴役の子の名前が。
345
(2): ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2013/05/28(火)03:16 ID:7gQivhLPo(1/9) AAS
遅くなりました。
元はと言えば自分の発言のせいかもしれませんので、少しだけ。

>>318
牙狼にせよ、まどかにせよ、単独の話題は他に相応しい場所がある為、
そちらを優先してほしいのは確かですが、必ずしも止めてほしいという訳ではありません。
>>228で曖昧な書き方をしたのは窮屈になるのを避ける為であり、
何より注意などでレスが消費されることや、険悪な雰囲気になること、荒れることを避けたかったからです。
ですので、善意からとは思いますが、指摘していただく必要はありません。
言葉が足りずに、申し訳ありませんでした。

ここからは皆様に向けてですが、もし気遣っていただけるなら
SSについて◎ 牙狼とまどかについて〇 それぞれ単独について△ それ以外×
といった具合で、△はそこそこに、それ以外は何であれスルー推奨でお願いできればと思います。

雑談や議論や考察からはネタを拾ったり、誤りを訂正できたりするので、とても助かっています。
このSSは多くの方に支えられてできています。
いつもありがとうございます。今後もご協力いただければ幸いです。

以上、長文失礼しました。
346: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/28(火)03:20 ID:7gQivhLPo(2/9) AAS
 まどかが靴に履き替え、校舎を出る頃には、外はすっかり暗くなりかけていた。
 風は冷たく、夜の匂い。空は分厚い雲に覆われ、月が陰っている。早く帰らないと一雨くるかもしれない。
 もうじき最終下校時刻。夜と言っていい時間だ。こんな遅くまで学校に残るなんて、滅多にない経験だった。

 しかも前回までと違って、校内をぐるり見渡しても人の気配はない。
 ほとんどの生徒は既に下校しているのだろう。運動部も多くが部活動を終えていた。
 文化祭などの特別な行事での居残りは、なんだか胸が弾んだのを思い出す。

 いつも見る昼間の学校と同じ場所なのに、違う風景がここにある。
 しかし、今のまどかは、とてもじゃないが特別な気分に浸れる心境になかった。
 人のいない学校の物寂しさも相まって落ち込んでくる。

 ほむらの一言一句が残響のように、ずっと繰り返されている。
 何もわかっていない。何も気付いていない。
 会ってまだ二日なのに、まるで以前から知っていたかのような口振り。
 いくら記憶を辿っても面識はない。ただ、夢の中で言葉を交わした気がするだけ。

「ダメだぁ……やっぱりわかんないや」

 首を左右に振り、モヤモヤを振り払う。 
 あまり考えないようにしよう。でないと、また頭痛が再発しそうだった。
 たぶん今は頭を休ませる時なのだ。そう言い訳して、思考を放棄した。

 そう言えば、ほむらはどうしただろうか。自分の方が先に出たから、まだ校内にいるのだろうが――。
 
「どうしよう。待った方がいいのかな……」

 先に帰れ。その言葉を、どう解釈すべきか。
 勝手に帰宅していいのか。それとも、先に行って待っていてという意味か。
 普通に考えるなら前者だ。これまで一緒に帰ったこともない。ほむらの家も知らない。
347: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/28(火)03:23 ID:7gQivhLPo(3/9) AAS
 でも、自分の看病で居残ってくれたのだとしたら、さっさと帰るのは申し訳ない気がする。
 かと言って、今は一緒に帰るのも居心地が悪かった。
 あんなことの後で何を話したらいいのか、どんな顔をして隣を歩けばいいのか。
空気が重くなるのは間違いなかった。

 まどかは迷いに迷って、校門へと歩き出す。
 滅多にない機会だ。悩んでいても仕方ない。この空気を少し味わうのも悪くないと思った。
 ゆっくり向かいながら、ほむらが来れば誘ってみよう。出会わなければ先に帰ろう。
我ながら消極的だと思ったが、決断を保留して成り行きに任せることにした。

 足は高めに上げ、一歩を大きく、しかし緩やかに。
後ろ手に鞄を持ったまどかは、気分を切り替えてのんびり歩く。
 見滝原中学は、まるで美術の本に出てくる外国の建築物のように豪奢だ。
荘厳な校舎は、夜にはまた違った趣を感じさせた。

――ライトアップとかしたらキレイなんだろうなぁ……。

 などと見上げていた時だった。
 ニャー、と近くで鳴く声。
 見ると、校舎の陰から黒猫が顔を出していた。

「うわぁ〜っ」

 歓声をあげたまどかは、満面の笑顔で瞳を輝かせた。
 その声に黒猫はビクッと身体を震わせたが、

「大丈夫、怖くないよ〜。ほら、おいでおいで」

 まどかが屈んで手を差し伸べると、警戒しながら近寄ってくる。
そして恐る恐る指先に鼻をくっつけてヒクヒクさせる。鼻息がくすぐったい。
348: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/28(火)03:26 ID:7gQivhLPo(4/9) AAS
 一しきり匂いを嗅ぐと、やがて自分から身をすり寄せてきた。
 こうなると撫でても抵抗されなかった。

「ふふっ。ネコちゃんかわいい〜。それにふわふわ」

 黒猫の体格は小さく、まだ幼いようだった。だから警戒心も薄いのかもしれない。
 少女らしく可愛いもの好きなまどかは、暫く猫を愛で続けた。
 黒猫も一分ほどは大人しく可愛がられていたのだが、不意に身を硬くすると、まどかの手をすり抜ける。

「あれ、嫌われちゃったのかな……」

 しかし、まどかを嫌ったのではなく、近くで何らかの気配を感じ取って、逃げた。
そんなふうな印象を受けた。
 黒猫はまどかから数メートル離れると、身を低く前足を突っ張る。
牙を剥き、唸る声からも警戒しているのは明らか。

「ねぇ、どうしたの? なんでそんなに――」

 黒猫の目線の先にあるのは、体育館の裏口。ちょうど、まどかの位置からは角になっていて見えなかった。
 立ち上がって近付いても、黒猫は反応しない。
 まどかは黒猫の背後から、角を覗き込み――。
 

「え……あ……」

 言葉を失った。
349: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/28(火)03:28 ID:7gQivhLPo(5/9) AAS
 それはあまりに自然に、何をするでもなく、そこにいた。
しかし、周囲の景色からは明らかに浮いた――たとえるなら、画用紙に落とされた一点の黒。
決して世界に溶け込むことのない異物。

 形も大きさも猫に近いものの、顔のあるべき位置には、ウニさながらの棘を生やした球体があるのみ。
目も鼻も口もない。描き殴ったような白い輪郭もいびつで、毛も皮も肉も内臓もないのか、内にはただ闇を内包している。
 この世の生物とは思えない、その異形が何なのか、まどかには一目でわかった。
 
「魔女の……使い魔……」

 呟くと同時に、ぞわっと総毛立つ。
 即座に伸ばした首を引っ込めて、身体を掻き抱く。全身の震えで見つかる気がして、腕に力が入る。

――なんで! 
どうして、使い魔がこんなところに!? 
どうしよう……どうすれば――

 理解した。足下の猫が警戒していたのは、あれだったのだと。
 視線が安定しないあたり、見えてはいないのかもしれない。
それでも良くないものが近くにいることを、本能で感じているのだろう。
猫に霊が見えるなんて嘘だと思っていたけれど、今は少し信じる気になった。

 マミから聞いた話では、使い魔も人を喰らう。
魔戒騎士や魔法少女にとっては雑魚でも、ただの人間には立派な脅威。見つかれば危険に変わりない。
 なのに今、ここにはマミも鋼牙もいなかった。
350: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/28(火)03:32 ID:7gQivhLPo(6/9) AAS
 頼れるとしたら、ただ一人。
 魔法少女である、暁美ほむら。
 まどかは助けを求めて周囲を見回すが、彼女の姿はない。
猫と戯れている間に帰ってしまったのだろうか。

 まさか大声を張り上げて呼べるはずもなく、全神経を緊張させたまま、まどかは立ち尽くしていた。
 それでも、ここ数日で少しは慣れたのだろうか。こんな状況でも、辛うじて思考を止めずにいられる。
 その時だった。
 ボールの跳ねる音が体育館から響いたのは。

「――っ!」

 声と一緒に心臓が飛び出そうになり、まどかは慌てて口を塞ぐ。
 体育館には煌々と明かり。小窓からそっと中を窺うと、
ジャージ姿の女子が一人、バスケットボールを抱えて運んでいた。
 おそらく部員が自主練に残り、そろそろ切り上げるところか。

――お願い! どうか見つからないで……!
"あの娘が"が狙われませんように――

 自分よりも、今は彼女が心配だった。彼女は何も知らない。危機に気付くことすらできないのだから。
 まどかは祈りながら、再び角から顔を覗かせる。
 だが、まどかの願いとは裏腹に、使い魔はのそのそと体育館に向かっていた。

――ダメ! 行かないで!

 不意に使い魔が足を止めた。が、まどかの願いが通じた訳ではない。
351: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/28(火)03:35 ID:7gQivhLPo(7/9) AAS
 使い魔は、館内から漏れた光で照らされている範囲に立ち入ろうとはしなかった。
おそらく光を嫌う性質を持っているのだろう。

 ホッと一息ついたが、危機は去っていない。
 体育館の電気が消されるか、彼女が明かりのない場所に移動するか。
彼女がやらなくても、他の誰かが消すとしたら同じことだ。必ず犠牲が出る。
 遅かれ早かれ、使い魔は動く。遅くても数分以内には、早ければ一分と待たず。
 
 もう一度、周囲を見回して、ほむらを探す。
 やはり彼女の姿はない。
 既に日は沈み、視界は狭くなっている。
ところどころに電灯はあるが、首を振っただけで見つけられるとは思えない。
 
 これから夜が更けるにつれ、闇も深まる。
あれが自由に行動できるようになるのは、もはや時間の問題だった。
 
 先刻、ほむらに言い返せなかった悔しさから握った拳。
 それを今は別の意味で、より固く、強く、握り締める。
 
 迅速かつ静かに、この場を離れ、ほむらを探す。
 それが考え得る限りで最善の手段。
352: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/28(火)03:38 ID:7gQivhLPo(8/9) AAS
 しかし、

――でも、そんなの絶対に間に合わない……。

私が……やらなきゃ!――

 心の中で声がした。
 声に従い、身体が動く。
 まどかは足下の小石を掴み――使い魔目掛けて投げた。

 何故そんなことをしたのか、まどか自身にも理解できなかった。
 ただ、勇気なんて呼べるほど崇高な感情じゃない。
 もっと脆く、あやふやな、得体の知れない衝動に駆られていた。

 小石は頼りない放物線を描いて、目標の手前でカツンと地に落ちる。
 使い魔は不気味に首を捻じ曲げ、まどかの方を向いた。
 その顔には、やはり目も鼻も存在しないが、まどかは直感で悟った。
自分が、獲物として捉えられたことを。 
353: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/28(火)03:42 ID:7gQivhLPo(9/9) AAS
ここまで
次も日曜に間に合えば
今回はわかりにくいかもしれません
見滝原中学は普通の中学校じゃないので
どう書いていいか、よくわからなかったり
354: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/28(火)04:08 ID:CZCCSSSGO携(1) AAS

361
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/28(火)09:08 ID:jzawf3lAO携(1/2) AAS
乙!
中学にオリジナルの使い魔。こういうオリジナルの展開は大歓迎です!
362
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/28(火)11:35 ID:JetrlOqSO携(1) AAS

見滝原中はいろいろ特殊だから詳細に書くのは難しいだろうな

>>361
これオリジナルじゃなくて、暗闇の魔女の使い魔じゃないかな
363: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/28(火)22:31 ID:jzawf3lAO携(2/2) AAS
>>362
ほんとだ!
ゲームやらないから知らなかった。

えっ、暗闇では無敵って……えっ!?
364: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/29(水)07:24 ID:uUiChWjuo(1) AAS
本編ではティロフィナの塵になる場面しか出番なかったうえに
魔女本体は未登場なくせして魔女図鑑のカタログスペックだけは強そうなズライカさんじゃないですか
365: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月)10:44 ID:7t1BDC2AO携(1) AAS
投下は来週かな?
366: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2013/06/10(月)02:04 ID:j2Al/keCo(1) AAS
なんやかんやあって遅れています
うまくいけば明日にでも投下できると思うのですが
もうしわけありません
367: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/06/16(日)23:56 ID:dIMx0AmUo(1) AAS
 小石を投げてすぐ、まどかは踵を返して駆け出した。一目散に。脱兎の如く。
 とにかく全力で走る。重くて邪魔な鞄はすぐに放り捨てた。
 振り向くと、使い魔もまた走り出していた。

 走りは見た目と同じくネコ科のそれに近いのだが、関節が存在しないのか、四肢は前後左右、自在に動いた。
かなり不気味だったが、鈍足のまどかよりも遅いのが、せめてもの救いだった。
 狙い通りに使い魔の注意はこちらに向き、狙い通りに追ってきている。
 
 館内の少女は何も知らずに片付けを続け、黒猫もどこかへ逃げた。
 人ひとりの命が救われた。これでよかったんだ。後悔はしていない。
 そう思おうとしたが――。

 無理だった。
 後悔ならしている。投げた瞬間に。
 そして今も。何故、あんな馬鹿なことを、と。

 だが、半分。もう半分は、これしかなかったという自己弁護。
 それに、まどかに後悔している暇はなかった。

 今は、これからどうするかが最優先事項だ。
 落ち着いて考えられる精神状態ではなかったが、それでも。
絶対に思考を放棄してはならない。考えなければ、待っているのは絶対の死。
 
 故に、走りながら必死に知恵を絞る。
 マミは今頃、約束の店に着いているだろうか。それとも、まだ向かっているだろうか。
アドレスを交換していないので、さやかを介して連絡がついたところで戻るまで数十分かかる。
 鋼牙に至っては、どこにいるのか見当もつかない。
368: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/06/17(月)00:03 ID:batJAy8lo(1/11) AAS
 やはり、頼れるとしたら、ほむらしかいない。
 自ら進んで危機に陥っておきながら、都合良く頼る自分を、彼女は厳しく非難するだろう。
軽蔑されても、罵られても文句は言えない。本当に、心から申し訳ないと思う。

 それでも助けを求めれば無碍にはしないはず。
まどか自身にも、そんな卑怯な打算が胸の奥に潜んでいる可能性を否定しきれなかった。

――ごめんね、ほむらちゃん……。
でも、お願い。今だけは……――

 頭を振り、自責の念を振り切って、次の段階に進む。その間も、決して足は止めない。 
 では、ほむらに縋るにはどうすればいいか。
 思い返してみると、自分は校門への最短ルートからは外れていない。
黒猫との戯れにしたって、そんなには移動していないし、誰か後ろを通れば気付いたと思う。

 つまり、ほむらはまだ校門の外には出ていない。裏門などから出ていない限りは。
 なるべくルートを外れないように走りながら、ほむらを見つけられればよし。
もしかしたらもしかして、使い魔を撒けるかもしれない。
 
 確実どころか高いとも言えない可能性だが、まどかには賭けるより他になかった。
 職員室にでも逃げ込むという手もあるが、これは最後の手段。
使い魔が諦めなければ、無関係な他人が多く巻き込まれる。諦めたとしても、代わりに誰かが犠牲になる。 
それは絶対に避けたかった。

 まどかは真っ直ぐには走らず、蛇行したり、かと思えば真横に走ったりした。
使い魔から距離を取るには非効率だが、これには理由がある。
 ひとつは校舎内に入らない為。
明かりが消えていたり、施錠されている扉もある校内よりは、外の方がまだ走りやすい。
369: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/06/17(月)00:09 ID:batJAy8lo(2/11) AAS
 そして、もうひとつ。
 僅かでも明るい場所を選んでいたからだった。
 月は陰っているとはいえ、まだ仄かな光は差しているし、ところどころ電灯も設置されている。
電灯の下を潜った時、疑惑は確信に変わった。

――あの使い魔……やっぱり光が嫌いなんだ。
光の近くでは動きが遅くなってる。
私なんかに追い付けないのも、月光や学校の光で鈍くなってるのかも――

 これからは暗くなる一方だ。
 すなわち、この月がまどかの生命線。
 月が完全に雲に隠れてしまわないよう、神に祈りたい気分だった。

 それから数分、校舎を三周はしただろうか。
 まどかの体力は限界に近づいていた。
最初のうちは足を溜め、呼吸を整える余裕もあったが、月は祈りを裏切るかのように、雲間に隠れてしまった。

 使い魔の動きが、にわかに機敏になる。
もはやなりふり構っていられず、全力疾走でやっと距離を保てる程度。

「はぁ……はぁ……」

 足が、胸が、脇腹が痛い。息が苦しい。マラソンでも、ここまで苦しくなかった。
 それでも走りを止められない。ペースを落とすことさえ、死に繋がる。
 霞みがかった視界。それが突然に揺れて地面が迫り、

「あぅっ!」

 まどかは転倒した。
370: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/06/17(月)00:14 ID:batJAy8lo(3/11) AAS
 ただでさえ足下が暗いところに、前と上ばかりに注意がいって、ちょっとした段差に気付けなかった。
結果、つまずき、地面を滑った。
 
 終わった。もう逃げられない。自分はここで死ぬ。
 弱気な考えが脳裏を過ぎる。
 しかし――。

 次の瞬間には、まどかは豪然と身を起こしていた。
ついた両手を掻くように後ろに払い、同時に両足で地面を思いっきり蹴る。
 完全に立ち上がるのももどかしく、低い姿勢からクラウチングスタートに近い形で、再び走り出した。

 倒れていた時間は三秒にも満たなかっただろう。
 走りながら状態を確かめる。
 左足首に違和感がある。右の膝が擦りむけて痛い。手のひらには血が滲んでいた。

――でも……まだ行ける。走れる!

 にもかかわらず、目の輝きは未だ失われていない。
 一昨日のさやかの怪我に比べれば、全然軽い。この程度でへこたれていては、さやかに笑われる。
 そうやって精一杯、己を鼓舞する。

 これまでは、マミや鋼牙の背中に隠れていれば、彼らがなんとかしてくれた。
 今は違う。
 助けを求めるのは同じでも、そこまでは自らの力だけで生き残らなければ。
 
 生への渇望が、死の恐怖が、まどかを衝き動かしていた。
 倒れていた分の距離は詰められたが、走り出してからの差は縮まっていない。
変わらない速度を保てている証拠だ。
371: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/06/17(月)00:20 ID:batJAy8lo(4/11) AAS
 既に残り少ない体力もほぼ使い果たし、気力で足を動かしている状態。
 それでも、まどかは希望を捨てていなかった。
自分が、自分で思うよりも強かったこと。少しだけ自信を持てる、勇気が湧いてくる気がした。
 
 もう少し走れば、また電灯の下に出られる。
 光と、僅かな安心。そして今度こそという希望を求めて、角を曲がった先。

 そこには、厚く高い壁が立ちはだかっていた。

「え……」

 サァッ――と、まどかの表情から血の気が引いていく。
 火照った身体と汗が一瞬にして冷える気がした。
 
「嘘……なんで……!?」

 右も左も、通り抜ける隙間などない完全な行き止まり。
 目で見たものが信じられず、ぺたぺた手で触れて確かめる。紛れもなく本物の壁だ。
 これは結界の中なのか。それとも使い魔の幻覚か。いや、そのどれでもない。

 導き出されるのは、ごく単純な結論。
 道を、間違えた。

 ありふれた、普段なら他愛のない失敗。
だが、絶え間なく判断を迫られ、ひとつひとつの選択が生死を分ける現状では致命的だ。最悪と言っていい。

 同じ場所でも、昼と夜では景色が異なる。
慣れ親しんだつもりでも、曲がる場所を一本間違えるくらいはある。
 加えて、転んだことの焦りと、体勢が変わったことにより、道を誤った。
372: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/06/17(月)00:28 ID:batJAy8lo(5/11) AAS
 しまった、と振り向いた時には手遅れだった。
 暗闇でも輪郭はわかる、黒い何かが角を曲がったところで蠢いている。
引き返すのは不可能。

 まどかは、前に活路を求めるしかなかった。
打つ手がないと認めれば、それは死を受け入れるのと同じだから。

 見上げる先には、5メートルはある高い壁。向こう側は見えない。
 この向こうは、もう敷地外だったろうか。
都合良く通行人は期待できないし、だいいち誰に、どう言って助けを求めればいいのだろう。
普通の人間は使い魔に抗えない。視認すらできないのに。

 壁は特に出っ張りはなく、場所によっては指が掛かるかどうか。
運動力に優れた男子ならいざ知らず、体力の尽きかけた女子に登れる壁ではない。
 侵入者を防いでくれる壁が、今は逃亡を阻む絶望の檻に思えた。
 
――諦めちゃダメだ。考えるんだ……考えなきゃ……。

 その間にも、使い魔はじりじり距離を縮め、それだけで集中を乱される。
 まどかを完全に追い詰めているにもかかわらず、使い魔は一気に襲いかかりはしない。
 なぶっているつもりか。いや、おそらく違う。

 使い魔の姿が、はっきりと見える。
 雲の切れ間から再び顔を覗かせた月のせいだ。淡い月光が辺りを照らし始めている。
 しかし動きを鈍らせる程度で、止めるには至らない。 
373: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/06/17(月)00:35 ID:batJAy8lo(6/11) AAS
 今さら出てきても、どうにもならないのに。
 現状を打破する妙案は、そう都合良く浮かんではくれなかった。
 せめて抵抗を試みようにも、石ころひとつ落ちていない。
まどかはただ、恨めしげに月を見上げるしかできなかった。

 使い魔は、どうやって人を喰うんだろう。
 丸呑みにされるのか。バリバリ齧られるのか。ドロドロに溶かされるのか。
 まどかが壁に手を着けたまま横に動くと、使い魔も合わせて動く。当然、何の意味もない。

 こんなことなら、マミに聞かされた話を、もっと噛み締めるべきだった。
 ほむらの忠告を肝に銘じるべきだった。
 後悔しても、もう遅い。偶然は二度も続かない。助けは来ない。
 キュゥべえすら来てくれない。今なら契約だって、一も二もなく頷いていただろうに。

「ほむらちゃん……マミさん……!」

 助けを求める祈りの声さえも、

「……仁美ちゃん、さやかちゃん、タツヤ、パパ、ママ……」

 やがて力を失い、目蓋に浮かぶ親しい人たちへの惜別に変わる。
 絶望が、心を蝕んでいく。
 涙が零れそうになる。
 これまで両足を支えてきた意志が、ついに消える寸前。

 後頭部を着けた背後の壁から、音が聴こえた。
 それが、誰かが壁を蹴ったのだと認識したと同時。
 月光を影が遮った。
 まだ丸い月を真っ二つに分かったのは確かに人間。
374
(1): ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/06/17(月)00:42 ID:batJAy8lo(7/11) AAS
 見上げたまどかは、目を見張った。
 逆光で顔は窺えないが、その姿に見覚えがあった。

 夜風に翻る白のロングコート。
 左手に握られている赤い鞘。
 抜き放たれた刃は、月光に映えて金色に輝いていた。

 まどかは、その人物を知っていた。
 彼が剣を頭上に構えて落ちてくる。
 時間にすれば一秒にも満たなかったが、その姿は鮮烈な印象と共に、まどかに刻み込まれた。

――あぁ、……きっと、さやかちゃんもこうだったんだ……。

 そして、次の瞬間。
 まどかの眼に映ったのは、彼の広い背中。
風切り音――次いで、土を踏み締める音と断末魔。

 剣士の顔を、改めて確認する。
 魔戒騎士、冴島鋼牙。
 一昨日と昨日、さやかやマミを助け、まどかの命も守ってくれた恩人だった。

「怪我はないか?」

「冴島さん……どうして……」

 振り向く鋼牙にまどかが覚えたのは、感謝よりも安堵よりも、まず戸惑い。
 こんな嘘みたいな偶然――いや奇跡が起こり得たのが、何より不思議だった。
 鋼牙は答えない。沈黙を保ったまま、こちらを見ている。
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