エンド・オブ・ジャパンのようです (266レス)
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146: ◆vVnRDWXUNzh3 [saga] 2023/02/01(水)23:04 ID:qlo4HhBq0(1/4) AAS
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今でも、はっきりと覚えている。“あの時”の胸の高鳴りを。脳を、心臓を鷲掴みにされたが如き圧倒的な衝撃を。

たった一人の男の演説によって、敗北への諦観が勝利への渇望に、死の絶望が生の希望に塗り替えられる有様を。
たった一人の男の雄叫びによって、火山と岩と砂とほんの少しの草木しかない殺風景な島に、目に見えぬ巨大な炎が燃え盛る瞬間を。

まるでつい数秒前に目にしたが如く、自分はその光景を想起できた。

《敵艦載機群第6波並びに第7波、総数500超なおも鎮守府に接近す!到達まで推定あと400秒!!
省12
147: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/02/01(水)23:09 ID:qlo4HhBq0(2/4) AAS
ただ、自衛官として経験を積み、深海棲艦と長らく戦っていく内に、自分の中で“あの時”の上層部の判断を一概には否定できなくなったのも確かだ。

艦娘の“実装”が未だ行われていなかった当時、事実を直視するなら自衛隊は人民解放軍に対して劣勢だった。
陸軍の単純兵力はトリプルスコア、北朝鮮軍のように兵装性能においてこちらが圧倒的な大差をつけているわけでもない。
空母戦力は既に六個の【防空機動艦隊】を運用していた日本側に数字上だけなら分があるものの、日中間の距離は近現代戦闘機ならものの数十分〜数時間で0にできる。在日米軍を考慮に入れても保有戦闘機それ自体の物量差を埋めるほどのアドバンテージとは到底言えなかった。

何よりも、核兵器とそれに伴う弾道ミサイル技術。如何に防空・海防に優れた戦力を自衛隊が持っていたとしても、都市に甚大な被害を与える弾道ミサイルが雨霰と降り注げばその迎撃は困難を極める。況してや核搭載のそれが着弾すれば、例え一発でも数万人から数十万人の命が一瞬にして国土から消え去るのだ。

まぁ、核兵器についてはそもそも前提が「抑止力」であり、日本もアメリカによる“核の傘”の恩恵を受けていた以上単純な戦力比に加えるべきではないかもしれない。だが核を差し引いても、どのみち当時の日本にとって、自衛隊にとって人民解放軍が「格上」であったことは動かしようのない事実だろう。
その「格上」の軍事組織を手も足も出ず叩き潰した怪生物の大軍団を迎え撃ち押し留めようとするなら、自然何かしらの“犠牲”が必要だったのは間違いない。

(………そうか、成る程。
省5
148: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/02/01(水)23:14 ID:qlo4HhBq0(3/4) AAS
ASEAN、オーストラリア、そして中国。列強の海空軍を尽く捻じ伏せ薙ぎ払い、欧州やアフリカでは既に沿岸部への浸透を始めていた、弱点どころか正体すら禄に解明されていない得体のしれない化け物の大軍団との戦いを控えていた“あの時”と立場としては同じだ。

確かに、戦力自体は今回の方が恵まれてはいる。艦娘がおり、基地航空隊があり、しっかり最新式の対空砲や装甲車、ミサイルが数こそ少ないが用意され、戦闘員の人数もこの事変が起こる直前に幾度かの増強が間に合い一先ず1500に迫る程度には確保されている。
だが、向かってくる深海棲艦の数は6年前の数倍にもなり、その旗艦は今までに前例がないほど凶悪かつ強力な存在で、ここにいる艦娘たちより遥かに練度が高い艦隊でもまるで歯が立たなかった存在だ。しかも今この瞬間に攻勢をかけてきている分に関しても、その物量の底は不明でそもそも【学園艦棲姫】以前にこれらさえ凌ぎきれるかどうかは解らない。

「…………クソっ、とまれ……止まれよ…………震えるなよ……寒くねえだろっ………」

「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない……お母さん……私死にたくない………!」

自分は、まだ“耐性”がある。だがアレを経験したのはこの場では自分だけ。何なら今この鎮守府内にいる隊員の大半は、石田一等海尉らが前線に出張ってしまったこともあり艦娘実装後の安定的な戦いしか知らない若い連中だ。
省4
149: ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga] 2023/02/01(水)23:22 ID:qlo4HhBq0(4/4) AAS
……口下手な自分なりに考え抜いた渾身のジョークを盛り込んではみたのだが、残念ながら反応は皆無に等しかった。やはり慣れないことはするもんじゃないと、平静を装って話を続けつつほんの僅かに内心で後悔した。

「これから始まる、否、既に始まっているこの戦闘が、楽なものになるとは自分には言えん。必ず生きて帰れるなどという無責任な言葉は吐けん。

きっと激しい戦いになる。長く辛く厳しい戦いになる。この中の何人もが傷つき、或いは死ぬ。艦娘ですら、全員が轟沈せずに済むという保証はない。気の利いた鼓舞ができず済まないが、一陸尉の見解としてはそれが正直なところだ。

だが、思い出してほしい。我々がどこに所属しているかを。

我々が、自衛隊であるということを」
省15
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