右京「タイムパラドクスゴーストライター?」 (82レス)
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28: [saga] 2020/07/01(水)01:08 ID:A7tKNGJh0(28/33) AAS
「つまりこういうことです。佐々木先生はアシが付かないように地方で窃盗を行っていた。
その際に高知にある伊月さんの自宅に忍び込んで偶然にも彼女が描いていたホワイトナイトの原稿を盗み見した。そして彼女の作品を盗作したのではないでしょうか。」

「馬鹿な…どうして先生がそんなことを…」

「失礼ながらお尋ねしますが佐々木先生はホワイトナイトを描く前は何をなさっていたのですか?」

「さあ…僕は彼がホワイトナイトを描いた時からしか知らないのでそれほど付き合いは長くなくて…」
省13
29: [saga] 2020/07/01(水)01:09 ID:A7tKNGJh0(29/33) AAS
「あの…今の話は本当なんですか…?」

そこへ宗岡と入れ替わるかのようにとある男が現れた。
年齢は宗岡よりも上で無精髭を生やした中年の男だ。

「私は菊瀬といいます。以前まで佐々木くんの担当をしていた者です。」

「以前まで?それはどういうことですか。」
省11
30: [saga] 2020/07/01(水)01:11 ID:A7tKNGJh0(30/33) AAS
「つまらない…ですね…」

ハッキリとそう言ってしまった。失礼かと思われるが事実そうだから仕方ない。
右京は勿論だが冠城やそれに同席している伊月から見てもこの漫画は余りにもつまらないものだった。

「これ…あれですよね…お宅の看板漫画の…」

さらに冠城が指摘するが作画もほぼジャンプで長寿漫画と化している某海賊漫画に影響されたらしくその劣化版になっている。
これでは作風に個性など感じられない悪く言えば落書き漫画の域を脱していないまである。
省13
31: [saga] 2020/07/01(水)01:12 ID:A7tKNGJh0(31/33) AAS
「……ひとつ質問します。この原稿を佐々木先生はホワイトナイトを描く直前に持ち込んだわけですね。
その次にホワイトナイトを持ち込んだ。その期間はどれほど掛かりましたか?」

「やけに早かったでしたよ。確かボツにしてからその翌日にホワイトナイトを持ってきましたからね。」

ありえない。その話を聞いた右京たちの考えがそれだった。
佐々木哲平はこれまで某海賊漫画の劣化版風な漫画を描いていた。
持ち込み漫画は大抵の場合、ネームといった下書きで持ち込まれる。
だからといってこれまでの作風を180°変えて次の日に持ち込むなどそんなことがあるはずがない。

「菊瀬さん。僕はどうしても佐々木先生がホワイトナイトを自分で描いたとは思えませんがあなたはどう思いますか?」
省5
32: [saga] 2020/07/01(水)01:19 ID:A7tKNGJh0(32/33) AAS
「それにしても何故そんな急遽連載が決まったのですか?普通なら会議に掛けられ慎重な判断が下されて掲載になるのではありませんか。
僕たち部外者からしてもこれは些か性急だったと思えますよ。」

「それは…恥ずかしい話ですが…うちの雑誌…中堅どころが軒並み最終回を迎えましてね…だからその穴を埋めるにもホワイトナイトが適任だったんですよ。」

どうやら佐々木哲平はタイミングにも恵まれていたらしい。

「ところで聞きたいんですけど…佐々木くんが盗作を行ったというのは本当なんでしょうか…?」
省19
33: [saga] 2020/07/01(水)01:20 ID:A7tKNGJh0(33/33) AAS
とりあえずここまで
続きは近うちにあげます。
34: 2020/07/01(水)21:02 ID:IYtSzWsl0(1) AAS
乙でした、菊瀬も救われそうで嬉しい
35: 2020/07/01(水)21:33 ID:BhLtC2Il0(1) AAS
乙、最初斜め読みしてジャンプでGペンが暴れてるって間武士でも出て来たのかと思ったが
あっちは丸ペンだったか
36: 2020/07/02(木)01:44 ID:Ck2azYKxo(1) AAS
相棒クロスとは面白いな
37: [saga] 2020/07/02(木)22:20 ID:0AxqYuWp0(1/38) AAS
集英社を出てから一時間後、冠城の愛車でシルバーのカラーが特徴なスカイラインがあるアパートの前で止まった。
コーポ谷岡、木造建ての古いアパートだ。車をアパート付近の駐車場に停めると右京、冠城、それに伊月の三人はアパートのとある部屋の前に立った。
部屋のドアにある名札には『佐々木』という苗字が記されていた。
編集部の菊瀬から教えてもらった佐々木哲平の部屋がここだった。

「ここが佐々木哲平のアパートですか。見たところ古そうな建物ですねぇ。」

「大金を持っているような様子は見受けられませんね。これだと佐々木哲平の懐事情はかなり苦しいんじゃないですか。」

これなら佐々木哲平が窃盗を行っていたとしても不思議ではない。
現段階で佐々木哲平が罪を犯したのだとすればそれは高知の伊月の自宅に忍び込み窃盗を行ったかもしれないという可能性。
確かにこれなら辻褄が合うかもしれない。だが…
38: [saga] 2020/07/02(木)22:21 ID:0AxqYuWp0(2/38) AAS
「右京さんの推理ですけど俺としてはどうにも納得がいかないんですよね。」

「はぃ?そう思う根拠は何ですか。」

「ホワイトナイトですよ。佐々木哲平が窃盗犯だとしたらアシが付かないようにわざわざ高知に出向くほどの用心深い人間なんですよね。
それなら伊月ちゃんから盗作した漫画をタイトルやキャラの名前も変えずにそのまま載せるのはおかしいと思いませんか。」

冠城が右京の推理に疑問を思うのはそこだった。
何故地方まで遠出して窃盗を行う用心深い人間が忍び込んだ先の家で盗作した漫画をタイトル名も変えずにそのまま載せているのか?
これではホワイトナイト自体が窃盗した証拠になってしまい自ら犯した窃盗が明らかになる恐れがあるはずだ。
その疑問について実は右京も同じことを考えていた。
省8
39: [saga] 2020/07/02(木)22:22 ID:0AxqYuWp0(3/38) AAS
「自宅にいるお母さんに連絡を取りました…けど…盗られたモノは何もないって…」

右京は伊月に自宅へ連絡して何か盗られた物はないか確認をしてもらった。
だが盗られた物は一切ないという。つまり佐々木哲平は窃盗の目的で伊月の家に忍び込んだという疑いはないということ。
しかし伊月のホワイトナイトを佐々木哲平が盗作したという疑惑は晴れてはいない。

「あの…部屋に入らないんですか…?」

そんな考え込む右京と冠城に伊月が思わずそんなことを聞いた。
そのことを聞かれて二人は思わず苦笑いを浮かべてしまう。
実を言うとそこが問題だった。伊月には関係のないことだが特命係は捜査権限がない。
そのため今の段階で家宅捜索を行うなど出来るはずもない。
省3
40: [saga] 2020/07/02(木)22:23 ID:0AxqYuWp0(4/38) AAS
「佐々木哲平さんについて変わったこと…?」

「ええ、なんでも構いません。少しでも気になることがあれば答えて頂けませんか。」

右京が訪ねたのはこのアパートの大家だ。
佐々木哲平の周囲で何か異変は起きていないかと尋ねた。
すると大家は考え込んだ末にあることを話した。

「そう言われても佐々木さんは一ヶ月前に部屋を空けてつい最近戻ってきたばかりだから何もわからないよ。」
省13
41: [saga] 2020/07/02(木)22:24 ID:0AxqYuWp0(5/38) AAS
一方でこのアパートのとある部屋で机に向かって黙々と執筆活動をしている青年がいた。
髪型はボサボサで後ろ髪を縛り服はまるで何日も洗濯してないかのような不衛生さを漂わせる青年。
彼の名は佐々木哲平。現在自分があらぬ容疑を掛けられているとは予想もせずある作業に追われていた。

「よし…それで…ここは…いいぞ。順調だ。」

そんな哲平が机の前でせっせとホワイトナイトの連載に向けて執筆を行っていた。
既に一夜ほど徹夜しているが漫画家として初めての連載だ。力が入ってしまうのも無理はない。
ちなみに哲平は原稿用紙の傍にあるモノを置いて作業に取り掛かっていた。
モノ書きであれば傍にネタとなる資料を置くのは必然。だがこれは単なる資料とはわけがちがう。

「これがあればもう何も恐くない。こいつは神さまが俺に与えてくれた奇跡なんだ。」
省5
42: [saga] 2020/07/02(木)22:25 ID:0AxqYuWp0(6/38) AAS
「佐々木哲平さんですね。警視庁特命係の杉下と冠城です。少しお話があります。」

そこに現れたのは右京と冠城だ。するとどうだろうか。
刑事を名乗る男たちが訪ねてきた瞬間、哲平は思わず顔面蒼白となり額には冷や汗がビッショリと垂れていた。
何故このタイミングで警察が現れたのか…?
一瞬で頭の中が真っ白になり思考が停止してしまうほどだ。

「あの…警察が何のご用で…?」

「佐々木さん、あなたこの一ヶ月間留守にしていたそうですね。
大家さんが一ヶ月前に起きた雷で部屋に異常がないか訪ね回ったのにあなたの部屋だけ確認が取れていないそうです。
そこで何か異常がないか調べさせてください。」
省5
43: [saga] 2020/07/02(木)22:26 ID:0AxqYuWp0(7/38) AAS
「何ですか…これは…?」

さすがの右京も部屋にある電子レンジを見た瞬間に思わず躊躇した。
この部屋の台所付近に設置された冷蔵庫の上に置かれた電子レンジ。
何故ならこの電子レンジは溶解したかのような状態。
明らかに火事を起こして焼き焦げてしまった状態で置かれていた。
この電子レンジの上に置かれていいるロボットの玩具も禍々しく溶解して酷い惨状だったことが伺えた。

「これは…一ヶ月前の落雷によるものですね。」

右京から問われると哲平は思わず目を背けてしまった。
どうやらそのようだ。それにしても酷い有様だ。一歩間違えば全焼していたかもしれない。
省4
44: [saga] 2020/07/02(木)22:27 ID:0AxqYuWp0(8/38) AAS
「右京さん…これを見てもらえますか…」

机の方を調べていた冠城があるモノを発見する。
その冠城だがどういうわけか様子がおかしい。一体何を見つけたのかと尋ねるとそこには一冊の雑誌が置かれていた。少年ジャンプだ。

「少年ジャンプですね。これがどうかしましたか。」

「よく見てください。この雑誌の年号が十年後の2030年になっているんですよ。」
省8
45: [saga] 2020/07/02(木)22:29 ID:0AxqYuWp0(9/38) AAS
「ホワイトナイト…何故…?」

巻頭に『ホワイトナイト』と記されていた。内容を読むとホワイトナイトの第一話が掲載されていた。
一体どういうことだろうか。ホワイトナイトまだ読み切りのみで一話などジャンプには掲載されていないはずだ。
だがこの少年ジャンプには既に一話が掲載されている。
ちなみに読んだ感想だがこちらの方が圧倒的に面白い作品に仕上がっていた。
作画においても話の構成でもすべてこちらの方が圧倒的に上だ。
ところでだがこちらのホワイトナイトだが内容の他にもうひとつ異なる点があった。

「アイノイツキ…まさかこのホワイトナイトは伊月さんが描いたものですか…」

右京はすぐに今週号の少年ジャンプを取り出して作者名を確認した。
省8
46: [saga] 2020/07/02(木)22:30 ID:0AxqYuWp0(10/38) AAS
(チーン)

今度はレンジから音がした。まさかあの壊れた電子レンジがまだ動いているのか?
気になった右京はすぐにレンジの中を開けた。

「これは…少年ジャンプ…?」

中を開けるとそこには少年ジャンプがあった。すぐに日付を確認すると2030年と記されていた。
同じく十年後の雑誌が現れた。それも電子レンジの中からという不可解な現象。
省7
47: [saga] 2020/07/02(木)22:31 ID:0AxqYuWp0(11/38) AAS
「実はあの落雷のあった日から電子レンジからこうして未来から少年ジャンプが送られてくるんです。」

落雷のあった日、つまり徹平が集英社にホワイトナイトを持ち込む前日のことだ。
渾身の出来だった作品を菊瀬からボツを喰らい哲平は絶望していた。

「俺…25歳までに漫画家になった成功したかった…
けどいつもボツばっかりで正直もう限界だった。それで諦めようとした時だ。
落雷が起きて電子レンジから未来の少年ジャンプが届いたんだ。」

それが一連の真相だった。その後は簡単に推理できた。
哲平は届いたジャンプを読んで本来のホワイトナイトに感動した。
それから何を思ったのかホワイトナイトを自分で描いてそれを編集部に持ち込んだ。
省4
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