右京「タイムパラドクスゴーストライター?」 (82レス)
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8: [saga] 2020/07/01(水)00:35 ID:A7tKNGJh0(8/33) AAS
「もう鬼滅の刃は終わりです。これからはホワイトナイトの時代ですよ。」

ホワイトナイト、それは先ほどまで課長が読んでいたジャンプの表紙をほぼ独占している漫画だ。
中身は読んでないが表紙に載っている甲冑姿の主人公らしき少年が冒険する内容だというのはなんとなくだが予想はついた。

「読んだ感想はどうですか?そう面白すぎるでしょ!
キャラも設定もドラマ展開も完璧!!文句のつけようがない読み切り!!むしろ僕は読み切りだけで泣いた!!」

あの偏屈な青木がここまで絶賛するとは珍しいと思い冠城も一応雑誌を手に取り読んでみた。
読んでみた感想は確かに悪くはないのかもしれない。
絵も無難に描けているし話もそこそこ構成されていて悪くはない。
それでも冠城には青木ほどこの漫画が面白いとはどうしても思えなかった。
省3
9: [saga] 2020/07/01(水)00:36 ID:A7tKNGJh0(9/33) AAS
「どうですか杉下さん。ホワイトナイトこそ令和のジャンプを象徴する漫画成り得る存在ですよ。」

「いい加減にしなさい。そういってキミが以前に勧めたサムライ8はどうなりましたか。無惨な最期だったではありませんか。」

「それは…あのNARUTOの作者が原作やってたんですよ!誰だって期待して当然でしょ!けど今回のホワイトナイトは名作になると断言してみせますよ!」

「それで打ち切りになるとすぐに他の作品に乗り換える。キミの悪いところですね。けど僕は忘れていませんよ。
サムライ8の1〜2巻同時発売のせいで鬼滅の刃17巻を発売初日に手に入れられなかった無念を…」
省8
10: [saga] 2020/07/01(水)00:37 ID:A7tKNGJh0(10/33) AAS
「ところで青木、まさか仕事を放り出して漫画の自慢しに来たわけじゃないだろ?」

「当然ですよ。職場で堂々と漫画を読めるアンタたちとちがってサイバー犯罪対策課の僕が暇なわけないでしょ。
さっき千代田区神保町の交番から応援の要請がありました。それで暇そうな特命係に行ってもらいたくて呼びに来たんですよ。」

それならそうと早く言えばいいだろと青木を小突きながら冠城は出かける準備を行った。
今だに口論している右京を引っ張り出して二人は千代田区の神保町へと向かった。
11: [saga] 2020/07/01(水)00:39 ID:A7tKNGJh0(11/33) AAS
「いや〜まさか本庁の方々が来られるとは…」

「頼まれたらなんでも引き受けるのが特命係ですのでお気になさらず。それで状況は?」

「それがどうにも妙な話でしてね。」

千代田区の派出所を訪れた右京と冠城はそこの駐在である警官から大まかな状況を聞いた。
数時間前に神保町である通報を受けた。とある出版社の前で制服姿の少女が凶器を用いて若い男を襲っている。
その通報を受けてこの警官が駆けつけると被害者の男性はいなくなったがなんとかこの少女を補導することに成功。
だが少女は事情を打ち明けることもなく黙秘を貫いたまま。正直どうしたらいいのか見当もつかないのでお手上げな状況らしい。
省11
12: [saga] 2020/07/01(水)00:42 ID:A7tKNGJh0(12/33) AAS
「これはつけペン、それもGペンですね。」

「Gペン?それって漫画を描く時に使うっていうペンのことですよね。」

「ええ、これはかなり使い込まれている年季の入ったモノですよ。」

確かに凶器に使われたペンは長いこと使い込まれた手触りだ。
しかしそうなるとかなり奇妙だ。制服姿の女子高生がGペンを持って男に襲いかかった。
そこにはどんな動機があったのか気になるところだ。
省8
13: [saga] 2020/07/01(水)00:43 ID:A7tKNGJh0(13/33) AAS
「…今の刑事さんの推理だけどちょっとちがいます。」

そんな時、これまで黙秘を貫いてきた少女が急に話しだした。
それから少女は大事に抱えていたモノを右京たちの前に見せた。
ちなみに彼女が抱えていたのは原稿用紙だ。それも漫画だ。
まさか右京の推理通りこの少女が漫画を描いていたとは意外だ。
だが一番に気になるのは表紙のタイトルだ。

「ホワイトナイト…?」

どこかで聞いたようなタイトルだなと思ったがそういえば青木が絶賛していた漫画がそんなタイトルだったことを冠城は思い出した。
省9
14: [saga] 2020/07/01(水)00:45 ID:A7tKNGJh0(14/33) AAS
「そういえばこの子を補導した現場は集英社の前でしたね。」

警官が思い出したように補導した現場のことを伝えてくれた。
集英社といえば誰もが耳にする大手出版社だ。
ホワイトナイトが掲載されている少年ジャンプも集英社が発行している週間少年漫画。
これで色々と事件の背景が見えてきた。

「つまりこういうことか。キミは自分で描いたホワイトナイトを集英社に見せに来たと…?」

事情を察した冠城は思わず呆れてしまった。要するに子供がジャンプに掲載された漫画を読んで自分も描いてしまったのだろう。
それで妙なトラブルが起きてしまい今に至ったと…
まったく人騒がせな少女だ。とにかく真相がわかったのならあとは簡単だ。
省2
15: [saga] 2020/07/01(水)00:46 ID:A7tKNGJh0(15/33) AAS
「おや?これは奇妙ですねぇ。」

これまで隣で静かにしていた右京があることに気づいた。
よく見ると右京はいつの間にか少女が大事に抱えていた原稿をペラペラと読んでいた。

「右京さんいつの間に…ていうかそれ勝手に読んでいいんですか…?」

「失礼、僕の悪い癖です。それはともかく奇妙なことに気づきました。ちょっとこちらと読み比べてもらえますか。」
省4
16: [saga] 2020/07/01(水)00:48 ID:A7tKNGJh0(16/33) AAS
「確かに内容はいくつか異なる面が見受けられますね。」

ジャンプで載っていたホワイトナイトは青木が言うようなまあそこそこ面白い漫画に仕上がっている。
話も余計な描写もないので初見の人間でも読みやすいように構成されていた。
対して少女の原稿はネームで恐らくはまだ成書されていないのか作画は乱雑としたものだ。
そしてもう一点、異なる部分といえば作者の名前だ。
ジャンプのホワイトナイトの作者名は佐々木哲平。少女が持っていた原稿に記されていたのは…

「アイノイツキ…ひょっとしてキミの本名か…?」

その問いに少女はコクッと静かに頷いた。
藍野伊月、これでようやくこの少女の名前がわかった。
省15
17: [saga] 2020/07/01(水)00:50 ID:A7tKNGJh0(17/33) AAS
「恐らくその原因こそ伊月さんが先程男性を襲っていたことと関係しているのでしょう。ひょっとしてあなたが襲っていた男性は佐々木哲平ではありませんか。」

そう問われて伊月は再びコクッと頷いた。なんということだろうか。
それから伊月はあることを語りだした。それはこれまでの自身の生い立ちについてだ。

「…私…高知の学校に通ってました。今は不登校です。理由はイジメに遭ったから…」

「それからは部屋に籠って漫画ばかり描くようになりました。それがホワイトナイトです。」
省10
18: [saga] 2020/07/01(水)00:52 ID:A7tKNGJh0(18/33) AAS
「つまりこういうことだな。キミは集英社で佐々木哲平を襲った。その理由は彼が自分と同じ漫画を描いたからということか。」

「…まあそうです…けど…襲ってなんていません!
そのGペンだって使い込み具合を見てくれたら私がどれだけ真剣に漫画を描いているのかわかってくれると思ったからで…」

伊月は襲ったわけではないと主張しているが…
それでも危険な行為だったということには変わりないのでとりあえずは厳重注意のみで済ませた。
あとは念の為に高知の自宅に連絡して伊月の御両親に迎えに来てもらうだけだが…

「一応の事情はわかりました。ですが奇妙な話ですねぇ。全くの赤の他人が同じ作品を描くものでしょうか。」
省5
19: [saga] 2020/07/01(水)00:54 ID:A7tKNGJh0(19/33) AAS
「わかりました。あなたが言っていることを信じましょう。」

「ちょっと右京さん!いいんですかそんなあっさりと信じて!」

「本人がそう言っているのだからそうなのでしょう。
未成年の女子高生がわざわざ高知から出向いてきたのですよ。それには並大抵の覚悟があったはずです。
それに彼女の原稿を読めばわかります。ジャンプのホワイトナイトはまだ掲載されたばかりの読み切り。
それをこうまで細かく描写出来るのは原作者でなければ無理ですよ。」

言われてみればまだ先週号のジャンプが出てから一週間くらいしか経っていない。
その僅かな短期間で赤の他人がこうも完璧に描き切ることが出来るだろうか?
答えはNOだ。つまり伊月は本当にホワイトナイトの原作者なのか。
省8
20: [saga] 2020/07/01(水)00:56 ID:A7tKNGJh0(20/33) AAS
「あ、それちがいますよ。本人がそう言ってましたから。」

「本人が…?それはどういう意味でしょうか。」

伊月は哲平を襲った時の出来事を語った。
その時の哲平は逃げながらも自分は伊月の部屋になど忍び込んではいないと訴えていた。
それから電子レンジがどうのこうのと何か訳のわからないことを言っていた。

「電子レンジ…?それは料理に使うあの電子レンジですか。」
省5
21: [saga] 2020/07/01(水)00:58 ID:A7tKNGJh0(21/33) AAS
「初めまして、少年ジャンプ編集部の宗岡といいます。本日は持ち込みだと伺いましたが…」

なんと右京が伊月を連れてきたのは犯行現場でもある集英社、その建物内のオフィスだ。
そこで編集部の人間を呼び出して伊月が描いたホワイトナイトの原稿を読んでもらおうとしていた。
ちなみに担当してくれるのは宗岡という若い編集だ。

「いいんですか右京さん?彼女ガチガチに震えていますよ。」

同席している冠城が右京に耳打ちするが伊月は肩をブルブル震わせながら緊張していた。
恐らくこのような事態を想定していなかったのだろう。
今回伊月はホワイトナイトの件で原作者の佐々木哲平に話をしに来ただけだった。
それがまさか刑事たちに付き添われて憧れの集英社の少年ジャンプ編集部にて自分の描いた原稿を読んでもらうなど普通の少女なら緊張するのも無理もなかった。
22: [saga] 2020/07/01(水)01:01 ID:A7tKNGJh0(22/33) AAS
「…え〜と…藍野さんだよね。この原稿は…どういうことかな…?」

「私が描いたホワイトナイトです。」

「うん、見ればわかるよ。けど僕が言いたいのはこの漫画はキミのオリジナル作品じゃないよね。
新人の持ち込みは本人が描いたオリジナル作品でなきゃいけない。これじゃあ単なる二次創作でどんなに出来がよくても評価に値しないんだ。」

伊月が描いたホワイトナイトには辛辣な評価が下された。
いや、正確に言えば評価に値しないとそう断言されてしまった。
そのことを聞かされた伊月は肩を震わせながら泣くことしか出来なかった。
仕方がない。既にホワイトナイトは佐々木哲平によって世間に注目された作品だ。
伊月が描いたホワイトナイトは単なる二次創作の扱いを受けるのも当然だった。
23: [saga] 2020/07/01(水)01:02 ID:A7tKNGJh0(23/33) AAS
「ひとつよろしいでしょうか。」

そんな悲観する伊月を余所に右京は宗岡にあることを尋ねた。なんとそれは…

「宗岡さんは少年ジャンプの編集を携わっているのならお尋ねしますがそんなあなたの目から見てどちらのホワイトナイトがより面白かったでしょうか。」

「いや、そう言われましても…そもそも藍野さんの描いたものは二次創作なので評価の対象には…」
省9
24: [saga] 2020/07/01(水)01:03 ID:A7tKNGJh0(24/33) AAS
「ところであなた方は藍野さんの保護者ですか?」

「ああ、失礼しました。警視庁特命係の杉下と冠城です。
実は先程この子が騒ぎを起こしましてね…その件でちょっとお伺いしたいことがありまして。」

それから右京は宗岡に先程の一部始終を話した。
先程この集英社の外で佐々木哲平が伊月に襲われて補導されたこと。
さらには伊月がホワイトナイトを描いていたことをすべて打ち明けてみせた。

「キミが佐々木くんを襲った…?それで彼に怪我は!?」
省5
25: [saga] 2020/07/01(水)01:04 ID:A7tKNGJh0(25/33) AAS
「それでは佐々木先生に被害届けを出してもらうわけにはいきませんか。」

「え?被害届…?」

「ええ、実は佐々木先生ですが被害届を出さずにその場から立ち去ったようなんですよ。
ご自身が被害者の立場なのにそこが少し不可解でしてね。」

そう、右京たちが交番に来た時には佐々木哲平は現場にはいなかった。
本来なら事情聴取のために被害者も同席してもらう必要がある。
それに万が一にも後日に怪我が発覚すれば慰謝料の請求も必要だ。
その必要があったはずなのに佐々木哲平は現場から早々に立ち去った。
省7
26: [saga] 2020/07/01(水)01:05 ID:A7tKNGJh0(26/33) AAS
「確かに多忙であるなら被害届けを出している暇はないのかもしれない。
ですが少し思うところがあるのですが被害届けを出さなかった理由は佐々木先生が実は彼女の作品を盗作したからではないのでしょうか。」

右京の発言に宗岡とそれにジャンプ編集部の面々が挙ってこちらを睨みつけた。
冠城もまさかの直球な言動に思わずやり過ぎたと感じた。さすがにこれでは喧嘩を売っているようなものだ。

「いい加減にしてください!いきなり訪ねてきて盗作とはどういう了見ですか!被害者は佐々木くんなんですよ!?」

宗岡は堪らず怒鳴るがそうなるのも当然だ。
現在ホワイトナイトは読み切りで人気一位を獲得した期待の漫画だ。
それなのに新連載を前にしてこんなケチをつけられたのでは堪ったものではない。
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27: [saga] 2020/07/01(水)01:07 ID:A7tKNGJh0(27/33) AAS
「そもそも藍野さんはどこに住んでいるんだ?」

「高知…ですけど…」

「高知?ここは東京だよ!高知までどうやって盗作するというんだ!」

宗岡の疑問に伊月は答えられることなどできない。
むしろ聞きたいのは自分の方だと言いたいくらいだ。
ある日、いつも購読しているジャンプを読んだら何故か自分の描いていたホワイトナイトが掲載されていた。
これまで引き篭っていた時間を使って必死に漫画を描いてきた。
それこそ資料集めから始まり膨大な設定を練ってようやく構成をまとめられたと思った矢先にこの事態だ。
一体何がどうなっているのかなんて伊月にわかるはずもなかった。
省6
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