【デレマス】 偶像ルネッサンス (91レス)
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1: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/21(日)22:56 ID:gNqPAssWo(1/10) AAS
○長富蓮実・安部菜々・服部瞳子 などが登場します。

○以前書いた
長富蓮実「ザ・ラストガール」
vip2chスレ:news4ssnip
というSSが、このお話の前日譚に当たりますのでよろしければそちらもどうぞ
(読まなくても分かるようにしています)

SSWiki : 外部リンク:ss.vip2ch.com
72: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)00:19 ID:uFnZQdOAo(8/26) AAS
 
「うん、あんたほど面白いアイドルはそうそういない」
「わ、私は一応真剣なんですが……」
「褒めてるんだよ」
「そ、そうですか……ありがとうございます」

本音で答えてくれるのはありがたいが、そこはもう少し言葉を選んでほしかったなと、菜々は頭を掻いた。

「俺が担当してるもう一人のアイドルがいるんだ。 まずはそいつに会って欲しい」
「そうなんですか……どこに居るんです?」
「苦手なダンスの自主レッスン、してるらしい」
「へぇ……」
省6
73: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)00:22 ID:uFnZQdOAo(9/26) AAS
 
プロデューサーに気づいた少女が、すっくと立ち上がってペコリと一礼する。

「プロデューサーさん、お疲れさまです」
「おう、長富。 新人を連れてきたから、紹介するわ」
「あっ。 ……こないだの……!」
「こ、こんにちは……あはは……」

菜々は遠慮がちに手を振ってみせた。

「は、初めまして、安部菜々っていいます……え、えと、じゅ、17歳、です」

なんとなくいつも通りの自己紹介がはばかられて、控えめな挨拶になってしまう。
緊張しているように受け取ったのか、少女が気を遣ってくれた。
省4
74: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)00:23 ID:uFnZQdOAo(10/26) AAS
 
「ああやって、自分らしく! っていう感じで立派に活動してらっしゃるのがとっても羨ましくて。 私も見習いたいなって、思っていました」

「……そ、そんな風に思ってもらえてたなんて……ナナ、嬉しいです!」

舞い上がって思わず少女の両手を掴み、ブンブンと振り回してみせる。
うふふ、と笑い続ける少女と、「何やってんだ」とも言いたげなプロデューサーがやけに対照的に映った。

「菜々さんみたいな方とここでまた出会えて、私、幸せです」
「あ、ありがとうございますっ! よろしくお願いします!」

手を握り合ったまま、あ、と少女が続ける。
省7
75: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)00:25 ID:uFnZQdOAo(11/26) AAS
 
「それにしても……蓮実ちゃん……とっても可愛らしい名前ですね!」

「私も気に入ってます」

思い出したようにレッスンの邪魔をしてしまった心配をしたものの、蓮実はおかまいなく、ちょうど終わったところですから、と言ってくれた。

「話終わったんなら、今度は二人を交えてミーティングと行こうか。 事務室に戻るぞ」
「はい、分かりました」
「は、はい……!」

蓮実の返事に、菜々もとっさに合わせる。
ミーティングとやらが何をする場なのか皆目見当はつかないものの、ようやく仕事の話だ。地下アイドルではない、本物のアイドルとしての第一歩。
省10
76: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)00:27 ID:uFnZQdOAo(12/26) AAS
 
「お、佐藤」

そう呼ばれた女性は、大げさなリアクションでプロデューサーに軽くスキンシップを交わした。プロデューサーの方はというと、躱した、という感じが見て取れた。
意に介さず女性は言葉を撃つ。

「おひさ〜。 最近連絡もくれないしさ、はぁと寂しいぞ☆ 何してんの?」
「いや別に、新人研修」
「へぇ〜……この二人が新人サン?」

そう言って女性は菜々と蓮実の二人を交互に見つめた。

「安部菜々です!」
「長富蓮実です」
省3
77: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)00:31 ID:uFnZQdOAo(13/26) AAS
 
「佐藤心で、しゅがぁはーとって呼んでね!しゅがはでもいいよぉ☆ こいつは一年間全く呼んでくれなかったけど! よろしくね♪」

「それは別にいいだろ」

プロデューサーは面倒そうに彼女をあしらっていた。

「ちょっと呼ばれてるからもう行くけど、新人さん二人ともマジでよろしく☆ 頑張って! プロデューサーはさっさと連絡よこしてね! ヤクソクね☆ バイ☆」

マシンガンのように言い放って、すたこらと去ってしまった。あっけにとられていた蓮実が、小さく口を開く。
省8
78: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)00:32 ID:uFnZQdOAo(14/26) AAS
 
 *

「さて。一通り事務所の紹介も終わったところで、二人が一緒にいる理由はもう分かるよな?」

数箇所寄り道をしたのちにようやく事務室へたどり着いた3人は、事務の女性──ちひろの付き添いも含め、今後の活動についての作戦会議が始まった。

「……私たちでコンビを組む、ってことですか?」
「正解」

蓮実の答えも、菜々の予想も的中したようだ。
省8
79: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)00:43 ID:uFnZQdOAo(15/26) AAS
 
「細かい計画なんてない。俺がお前らを一緒にしようと思ったのは……面白そうだったから」
「面白そう……」
「二人ともな。 そんでもって、二人にぴったりな目標がある」

プロデューサーがちひろに軽く目配せをして、うなずいたちひろがPCをカタカタと操作し始めた。

「長富にはもう話したけど――お前らの目指す先は、『アイドルの頂点』だ」

蓮実は少し置いてから控えめに頷き、菜々は突然現れた壮大なワードに戸惑いを見せる。

「ぶっちゃけ『トップを目指します!』ってのは大体のアイドルが目標として掲げるもんなんだが、
 俺が言ってるのはそういう他のやつらがぼんやりと思ってるような概念的な話じゃない。 “1位”になるってこと」
「……1位?」
省9
80: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)00:49 ID:uFnZQdOAo(16/26) AAS
 
「知ってます! すっごく大きなトーナメントのオーディション大会ですよね?」
「そうなんですか?」

プロデューサーが頷く。

「あぁ。初開催は2000年、そこから毎年行われてた。
 IUで優勝したアイドルは、どれをとっても名実共にトップアイドルと言って差し支えない、どでかい存在ばっかりだ」
「そうですそうです! 私、日高舞が3連覇を決めた瞬間テレビで見てましたもん!! もうホントにホントにすごくて……
 でも、最後の2010年大会を境になくなっちゃったんですよね。
 皆がLIVEバトルで対戦してるところ、すっごくワクワクして、とっても面白かったのに……って、待ってください」
「そういうことだ、驚くなよ。 そのIUが……今年、7年ぶりに開催されることになったってワケ」
省13
81
(1): ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)00:53 ID:uFnZQdOAo(17/26) AAS
 
がんばってください、とばかりに小さく拍手するちひろとは裏腹に、蓮実と菜々は黙りこくる。
しばらく考えてみたあと、ようやく菜々が口を開いた。

「で、でも……IUって、すっごく厳しい大会なんですよね……ナナたちみたいな新人が、簡単に勝てるとは思えないんですが」
「確かに」

プロデューサーはあくまで否定せず、

「ほんっとうに厳しい言い方をするとだな──お前ら二人は」

蓮実を指さし、
省8
82: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)00:54 ID:uFnZQdOAo(18/26) AAS
>>81訂正
「それででいいのか──ってことだよ」

「それでいいのか──ってことだよ」
83: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)00:56 ID:uFnZQdOAo(19/26) AAS
 
「「…………」」

──よくないに決まってる、けど。
ネガティブな反論を押し殺して、菜々は蓮実の顔をちらと覗いた。
じっとプロデューサーを見つめている。

「お前らはまだ二人揃ってようやくアイドルになれたばっかの、アイドル界の序列における底辺中の底辺。 しかも癖の強い“ワケあり”のアイドル、ってとこかな」
「そりゃ、そうですけど……」
「それが想像してみろ。 そんなワケありの底辺アイドルが……IUの大舞台で勝ち上がって、優勝して、正真正銘のトップアイドルになる様をさ」
「…………」
「そうなったとき、お前たちの立場は変わる」
省7
84: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)01:04 ID:uFnZQdOAo(20/26) AAS
 
「これはお前たちにとっての、『復活』の始まりだぜ」
「『復活』……」

以前、彼に名刺を差し出されたときも『復活』という言葉を聞いたような気がする。
菜々にとっての理想の復活。
諦めかけていたのに、諦めきれず、惰性でアイドルを続けていた日々からの復活。
そして隣にいる少女は、その言葉に何を思ったのか。
蓮実にとっての『復活』とは何なのか?
きっと彼女にも、譲れない思いがあるのかも知れない。
まだよくは知らないけれど。
省8
85: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)01:12 ID:uFnZQdOAo(21/26) AAS
 
「菜々さん、優勝、できたらいいですね」
「……蓮実ちゃん、意外と肝が据わってるんですね」
「小心者で本番に弱いタイプよりは、長富くらい大らかでドンと構えててくれたほうがよっぽど助かるね」

プロデューサーは遠まわしに菜々をからかうような口ぶりで言った。

「それに、ダメだったらユニットを考え直すみたいなことは今確かに言ったが、実際そんな心配も必要なさそうだし」

蓮実と菜々が、互いの顔を見合わせる。

「お互い尊重しあえる部分があると思った。お前らなら良いコンビになれるよ」
「ですって、 菜々さん」
「…………」
省9
86: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)01:15 ID:uFnZQdOAo(22/26) AAS
 
 *

その日、IU2017のエントリー会場は都内の比較的小規模なホールで行われ、菜々の予想よりは少し控えめな人数がそこには集まっていた。
とはいえこの会場は関東圏内に居を構える芸能事務所からのみやってくるようだったので、
全国規模で言えばまだまだ大勢の未だ見ぬライバルがいるということなのだろう。

実際に参加するアイドルだけではなく、各事務所関係者、報道陣など様々な人だかりができあがっている。
プロデューサーが所用で少しの間だけ離れてしまった間、蓮実と菜々はお互いがはぐれないようにぴたりとくっついて移動していた。

「あの、346プロダクションさんですか?」

そんな中、いつの間にか数名の記者やカメラマンが二人を取り囲んでいた。しまった、とも言えぬ間に矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
省7
87: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)01:15 ID:uFnZQdOAo(23/26) AAS
 
「では、あなた自身の是非今後の意気込みをどうぞ!」

「わっ……」

そう言って一人の記者が菜々に向かってマイクを向けた。
テレビカメラには、最近流行っているらしいネットTV番組のロゴが貼り付いている。
芸能界、特にアイドル関連の最新情報を届けてくれる珍しいチャンネルだ。

「菜々さん、アピールするチャンスですよ! せっかくですし、ほら、ね」
「……で、でっ、ですよね! ……ごほんっ」

カメラを向けられることは悪い気分ではない。蓮実に後押しされ、思い切って画面の向こう側へめいっぱいの気持ちを届けようと努めた。
省7
88: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)01:16 ID:uFnZQdOAo(24/26) AAS
 
「…………うぅ、今のは、ちょっと失敗だったかも……?」

「いえ、ナナさんらしくてとっても良かったと思います」
「……ありがとうございます、蓮実ちゃん……」

カメラを向けられるのは初めてだったので思わず浮かれてしまって、
本気で失敗してしまったかと気が気でなかったが、蓮実だけは褒めてくれたので良しとした。

その直後、プロデューサーと合流した蓮実と菜々はそそくさと会場を後にする。
IU2017、ゼロからの優勝という大それたビジョンを掲げて、346プロの看板を背負ったワケありアイドルたちはとうとう進み出したのだ。
89: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)01:19 ID:uFnZQdOAo(25/26) AAS
 
 *

数日後、IU2017開催決定の報せと共にエントリー会場での様子がインターネット上で放映された。

『……あっ、あの! 故郷のウサミン星の皆さん、観ていますか!?』

そして「個性的でインパクトがある」という理由で採用された菜々の決意表明のインタビューが、
とある電機店のテレビコーナーの、端にある一台に映し出されている所を、一人の女性が目撃し足を止めたのだ。

『ナナです! IU優勝目指して全力で頑張りますので、是非是非! 応援よろしくお願いしま〜すっ! キャハッ☆』
省2
90: ◆AsngP.wJbI [saga] 2019/04/29(月)01:20 ID:uFnZQdOAo(26/26) AAS
ここまで
91: 2019/07/01(月)08:01 ID:O7+RsEGBo(1) AAS
続きまだ
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