遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」 (296レス)
上下前次1-新
219: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/16(木)21:50 ID:ao9AIwU40(4/6) AAS
だが、あの無類の酒好きがマスターの店にすら顔を出さないとすれば話は別だ。仮に、店で俺と鉢合わせるのすら避けたいと彼女が思ったとしよう。それでもなお我慢しきれずに、店にフラフラと飲みに来る。それが、あの遊び人という女なのだ。ましてや、半年以上も自分の意思で酒を我慢するなど天と地がひっくり返ってもありえない。そこに、第三者の介入があると推測するのはもはや必然であった。
「いえね、貴方の様子を見て、そのような気はしていたのですが、確証はありませんでしたので。こういった形になり、とんだ失礼を致しました」
「……俺の様子を見ただけで、そこまでわかるのか。流石マスターだ」
「……?あぁ、勇者様は普段から鏡をご覧にならないのですね」
「どういう意味だ?」
省7
220: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/16(木)21:50 ID:ao9AIwU40(5/6) AAS
「……と、なると今日ココに来たのは正解だったかもしれません」
なんか、話を逸らされた気がする。
「どうでしょう。私と手を組みませんか?」
「手を組む?」
省8
221: 今日はここまでです◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/16(木)21:51 ID:ao9AIwU40(6/6) AAS
ふと窓の外をみると、手持無沙汰に事務所の周りをぶらぶらとしていた炎魔将軍と目が合ってしまった。炎魔将軍は、押っ取り刀で部屋に入ってきた。
「せせせせ先代っ! 無事ですか!?」
「やぁ、これはすみません。私が、枷を解いてあげたんですよ」
「はい?」と疑問符を頭に浮かべている炎魔将軍に、俺はマスターの後ろからあかんべーを見舞ってやる。炎魔将軍は歯をむき出しに、何事かを言おうとするがマスターに遮られ「ぐぬぬ」と悔しそうな顔を見せた。ざまあみろ。
「いえね、彼にも見せてあげようと思いまして」
省9
222: 2019/05/17(金)01:09 ID:PRrXoHHDO携(1) AAS
乙
大方の予想を裏切ってまさかのドライ…な訳ねーか
223: 2019/05/17(金)15:36 ID:Qj5KZLGlO携(1) AAS
冒険が終わるかと思ってヒヤヒヤした
224: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/22(水)21:54 ID:n2QIU6Th0(1/5) AAS
炎魔将軍が先頭に立ち、そのあとにマスター、そして俺が続く。階段を降り、大樽の間を進んでいくと背の高い円筒状の構造物が見えてきた。円筒状の先は円錐となっており、倉庫の天井を突き破りそうな勢いだ。
「ビールが何でできているかは知っているな?」
炎魔将軍が前を向いたまま、唐突に声を発した。その口ぶりから察するに、マスターではなく俺に問いかけているのだろう。
「麦だ」
「まあ、その通りだ。正面向かって右手のサイロには大麦が、左手のサイロには麦芽が入っている」
省6
225: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/22(水)21:54 ID:n2QIU6Th0(2/5) AAS
先ほどのやり取りからも伺い知れたが、炎魔将軍はマスターに頭が上がらないらしい。まあ、マスターは先代の魔王であるのだし当然と言えば当然か。
「ところで……麦芽ってなんだ?麦とは違うのか?」
俺の質問に、炎魔将軍がため息をついた。
「麦芽は、麦に水を与えて芽を出させたものだ。そうすることで、麦の中の糖分が増すんだ」
「糖分を増やす?つまり、ここでは甘いビールを作るってことか?」
省9
226: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/22(水)21:55 ID:n2QIU6Th0(3/5) AAS
「さっき言った麦の中の糖分を取り出しているんだ、当然麦芽ジュースは甘い」
大釜の横を、木箱を抱えて大男たちが通っていく。木箱の中には、緑色をした植物の芽のようなものが詰まっていた。
「麦芽ジュースができたら、隣の釜に移してホップを加えます」
なるほど、大男たちが運ぶ木箱の中身。あれがホップなのか。
省9
227: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/22(水)21:55 ID:n2QIU6Th0(4/5) AAS
俺のもがき苦しむさまを、二人は一頻り笑ったのち、再び通路を歩きだした。しばらく進むと、倉庫の入り口付近、パイプの伸びた大樽のあたりにたどり着いた。
「この大樽の中には、先ほどの麦芽ジュースに酵母を加えたものが入っています」
「ほほう。つまり、この大樽の中で今まさにビールが作られているということですね」
「なんだ、大樽の中で魔物が作業しているのか? 酷い作業環境だ」
省6
228: 今日はここまでです◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/22(水)21:56 ID:n2QIU6Th0(5/5) AAS
ビールを飲めると聞くと、どうにも浮足立ってしまったのか俺たちは足早に応接室へと戻った。炎魔将軍に促され俺はソファに腰を下ろす、だがマスターはそれを固辞し、窓際で倉庫で働く男たちへ熱いまなざしを向けていた。
「勇者と命がけのやり取りをしたばかりだというのに、みなよく働くものですね」
「……幸い、身体だけは丈夫な連中ですので」
俺は、フンと鼻を鳴らす。別に、俺が悪いことをしたとは思っていない。魔物と勇者が出会えば、剣を交えるのはごく自然なことなのだ。だが、ここでせっせと真面目に働いている連中を見た後だと、そんな連中をコテンパンに伸してしまったことに、僅かにではあるが罪悪感が浮かんできてしまう。
省9
229: 2019/05/22(水)22:07 ID:jFHF2Qqxo(1) AAS
麦芽が甘いからさ!
おつおつ
230: 2019/05/23(木)22:21 ID:ZEWDd6aDO携(1) AAS
乙
甘いくせに苦いモノ飲みたいってんだから人はわからんものだわね
231: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/23(木)22:26 ID:PetabUOy0(1/3) AAS
「しかし、妙ですね」
窓の外を眺めていたマスターが、振り向くことなく、まるで自分に言い聞かすように呟いた。
「どうかされましたか?」
「いえね炎魔将軍、どうして魔物たちは人の姿に化けて仕事をしているのです?慣れない姿は大変でしょうに」
省7
232: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/23(木)22:27 ID:PetabUOy0(2/3) AAS
「具体的には、どうなってきているのですか?」
「魔族とは、そもそもみな姿かたちが違えども一つの群れのようなものです。ミノタウロスもオーガもオークも等しく群れの一員であり、その頂点には魔王様が君臨しています。魔王様が黒を白と言えば、それは白になり。犬を猫だと言えば、それは猫となります。しかし、その絶対的な関係性が魔物たちが人間性を手に入れたことで薄れつつあるのです」
「人間性……?」
「所謂、アイデンティティを獲得したということでしょうか?」
省7
233: 今日はここまでです◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/23(木)22:27 ID:PetabUOy0(3/3) AAS
「こういうのって、ジョッキに注いで持ってくるもんじゃないのか……?」
「どうせ、おかわりするんだ。こっちのほうが早いだろう?」
俺は、若干呆れつつも「まあ、それもそうか」と妙に納得してしまっていた。
炎魔将軍に促され、樽にジョッキを突っ込みビールをすくいあげる。魔族の造った酒か、如何ほどの物であろうかと早速口に運ぼうとするとマスターがそれを制してきた。
省6
234: 2019/05/23(木)22:56 ID:1KR36vJWo(1) AAS
いいなこういう雰囲気!
おつおつ
235: 2019/05/25(土)02:33 ID:VOOSCTBDO携(1) AAS
乙
久しぶりにビール飲みたくなってきた
236: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/25(土)17:30 ID:qW+Kebhi0(1/10) AAS
んぐんぐんぐ。
まるで乾いた砂地に染みこむかのように、俺の身体はビールを受け入れていく。気が付けば、ジョッキは空になっていた。俺は、当然の権利を行使するがごとく樽から二杯目のビールをすくいあげた。
「……どうだ?」
炎魔将軍は、その強面に似合わぬ不安げな表情を浮かべている。とても先ほどまで命のやり取りをしていた者に向ける顔とは思えない。
「まぁ、普通だな」
「そ、そうか! 」
省6
237: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/25(土)17:30 ID:qW+Kebhi0(2/10) AAS
……誰かと酒を酌み交わすのは久しぶりのことだ。認めたくないことではあるが、たとえその相手が忌々しい炎魔将軍だとしても一人で飲むより何倍も愉快だった。千鳥足テレポートの成功率が、複数人だと上がるという話は実のところそこに理由があるのかもしれない。
「しかし、すごい設備だな」
酔うことのできなくなった身体ではあるが、その場の雰囲気に飲まれたのかつい本音が口をついて出てきてしまう。対する炎魔将軍は……こっちは、喜びのあまりか杯を重ね続け顔が真っ赤になりつつある。いや、もともと赤い顔をした男だったが、その赤さがより増している。
「ああ、ここまで辿り着くのに5年かかった……。お前に魔王軍を壊滅させられた後、各地に散っていた仲間を集めつつ、密造酒市場を武力で握り、少しずつ資金を貯め。ようやく、これだけの設備を手に入れた。おかげで、魔王軍はいますっからかんだ」
省9
238: ◆CItYBDS.l2 [saga] 2019/05/25(土)17:31 ID:qW+Kebhi0(3/10) AAS
「少なくとも、現魔王様の支配下にある魔物たちは魔王軍壊滅以降そんなことはしていない。一部、魔王様の手を離れた魔物についてはあずかり知らぬがな。どうする……それでもお前は、魔王様を手にかけるのか?」
言葉が出ない。俺は本来であれば猛き青春に捧げたであろう貴重な時間を、全て魔王探索へと傾けてきたのだ。だが、魔王はとっくの昔に王国と戦う手段を放棄していたとなれば、俺のこの6年間は何だったというのだ。決して誰かに強制されていたわけでは無い、ただ女神に力を授けられた勇者としての使命感に突き動かされていただけではある。だがそれでも、それがすべて無為なものであったとなれば。
いや、そうではない。今の俺は、魔王を倒すためだけに旅を続けていたわけでは無い。旅のさなかに出会った彼女がいる。俺の旅は決して無為なものではなかった。少なくとも、彼女と出会い生まれて初めての恋をした。むしろ、俺の6年間はそのためにあったと言っても過言ではないではないか。
炎魔将軍の言葉を反芻する。「それでもお前は、魔王様を手にかけるのか」。答えはYESだ。邪魔な耐性の力を捨て去るには、彼女を追いかけるには、それしか手立てがないのだ。
省5
上下前次1-新書関写板覧索設栞歴
あと 58 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル
ぬこの手 ぬこTOP 0.011s