[過去ログ] 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―6― (1002レス)
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1: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2018/03/19(月)23:23 ID:ElIf3Cc30(1/8) AAS
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・東部『王都へと続く街道』―

 ザッザッザッザッ

マークス「よもや、ここまで何の襲撃もないとは……」

レオン「小さな襲撃くらいあるものだと思っていたんだけど、思った以上に白夜軍の戦線は下がり始めているのかもしれないね」

マークス「やはり、王都の守備を万全に喫するつもりなのかもしれん。いずれにしても、行軍は先遣隊の索敵が済んでいるここまでだな」
省17
983: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/10/10(木)20:20 ID:0n10eZ/T0(5/18) AAS
「嘘です。いつもだったら、何をするにも良い訓練になるって口癖のように言うのに、そんなことほとんどなかったじゃないですか。レオニーらしくないですよ」
 リシテアに言われて、そうかもしれないと改めて思う。この頃は何事も訓練だ、無駄はない方がいいとか、そんなことを考えている余裕はなかった。多分、言葉よりも精神の方が崩れない様に気を配っていたんだと思う。わたしが思っている以上に色々と限界だったのだ、結果的にこんな醜態をさらす羽目になった。本当に、やることなすこと空振りするというのはこのことだろう。
「駄目だね、わたし……。どうにかなるかと思ってんだけど……」
「そういう時もありますよ。今回の事はそう簡単に受け入れることは難しいと思います。先生も慎重に動くとは言っていましたけど、納得できているわけじゃないみたいですから。だけど、先生の事を気遣ってレオニーが悲しんじゃいけないってことは無いと思います」
 そう言ってリシテアはベッドに腰おろして、わたしの背中をやさしく摩る。いつか、わたしがリシテアのことを気遣った時とは逆だった。
「はは……、これじゃわたし、子供みたいだ」
「いいえ、レオニーは子供なんかじゃありません。いっぱい頑張っているじゃないですか」
 背中を摩ってくれる手はとても暖かくて、もう我慢しなくても大丈夫と言われている気がした。だから、静かにわたしは泣いた。不思議だったのは、一人で悲しむよりもずっと安心して涙を流せたことで、その間もリシテアは何も言わずに待ってくれた。
 少しして、ようやく落ち着くとわたしは体を起こした。リシテアはわたしに目元を拭く様にと手拭いを差し出してくれる。甘い香りがして、なんだかとても落ち着いた。
「もう大丈夫ですか?」
省10
984: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/10/10(木)20:26 ID:0n10eZ/T0(6/18) AAS
-3- リシテア×カトリーヌ
(支援Bまでのネタバレがあります)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 雨が降り始めたのは、丁度修道院に戻る途中でした。
 最初、ぽつぽつという弱い雨だったから、帰ろうと思えばどうにかなったと思う。だけど、買ったばかりのお菓子が濡れるのを嫌って軒下に隠れた。結果、雨脚は激しくなりわたしは動けなくなっていた。
「はぁ、どうしてこういう日に限って雨が降るんですか……」
 今日はお菓子の市場があった。そこで並ばないと買えない絶品スイーツが売られると聞いて、早朝から頑張った。頑張って手に入れたというのに、この仕打ちはどうかと思う。
「はぁ、やっぱりカロンの紋章は雨にとことん愛されているんですね。正直、こんな愛情いらないっていうのに」
 雨脚は弱まる気配を見せなくて、だんだんと湿気が増して来るのを感じた。買ったスイーツは湿気に弱いクッキーだから、尚更空を睨むように見上げてしまう。この雨の被害にあっているのか、どこからか駆け足の音が聞こえる。多分、衣の準備をしてなかった人が家路を急いでいるんだと思う。多くの不幸を生むこの雨に、なんだか無性に腹が立った。 
「もう、本当になんなんですか」
省12
985: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/10/10(木)20:32 ID:0n10eZ/T0(7/18) AAS
「ははっ。しかし、リシテアはアタシと話すとき、気を抜いてくれるようになったみたいだな」
「え、そうでしょうか?」
「ああ、多分だけど前のアタシとアンタの間柄だったら、話しかけてもその袋の中身を教えてはくれなかったと思うからさ」
「そんなことは……」
 いや、多分そうだと思う。わたしは子供扱いされたくないって思っている。そして、カトリーヌ様のような人の前では出来るなら大人として振舞いたいと思ってる。
「はい、多分そうですね。きっと前のままだったら、カトリーヌ様にも何を買ったのか教えてなかったと思います」
「はは、正直だね。でも、そう考えるとアタシはアンタが隠さずにそれを教えてくれることがうれしいよ。こんな雨が降った日だけど、悪くないって思えるよ」
 笑いながらカトリーヌ様は濡れた髪を整え始める。雨が降る日は決まって何かがある日、良いことも悪いことも平等に起こる日で、わたしの体にもう一つの紋章が刻まれた日も雨が降っていた。だから、雨が降る日は悪い日というイメージが付いて回る。だけど、今日はそういう日じゃない気がした。
「あの、カトリーヌ様……」
「なんだい、リシテア」
省13
986: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/10/10(木)20:40 ID:0n10eZ/T0(8/18) AAS
 ピエリリス 短編1
『暗夜の寒さも悪くない』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「白夜に比べて暗夜は寒くて嫌だねぇ」
 そんな声が耳に入って来た。確かに白夜と比べれば暗夜は寒いですよね、なんて暢気に思う。白夜にも寒い場所はあるだろうけれど、あまりにも陽の光が入らない暗夜の大地はもっと寒い。
 本格的な冬の到来はまだ先ですが、徐々に寒さが磨かれつつあって、外を出歩く人たちが羽織る外装も厚くなっている。もちろん、例に漏れず私も少し厚手です。
普段のティアンドルだけでは肌寒いからと羽織ったコートは、寒さを忘れさせてくれるほどに暖かかくて、ホッと息が漏れた。
凍えた世界に飛び出た安堵が靄になって消えていくのを眺めていると、視線の端に同じような靄が浮かんで私の靄に交じっていく。
「えへへ、リリスの吐息にピエリのも混じっちゃったの」
それが溶けてなくなるのを、隣にいたピエリさんは楽しそうに眺めていた。私の吐息とピエリさんの吐息、それは僅かな時間を共に過ごして消えていった。
省13
987: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/10/10(木)20:44 ID:0n10eZ/T0(9/18) AAS
「ピエリさんと初めて会ったのは、確かアミュージアでの戦いでしたよね」
「そうなの。ピエリがカムイ様を捕まえに行ったら、あなたが立ち塞がって来て驚いたの」
「カムイ様を守るためですから。まぁ、直後にピエリさんに叩き落とされちゃいましたけどね。あの時、結構痛かったんですよ?」
「仕方ないの。あの時は敵同士だったの。敵同士だから殺されても恨みっこなしなのよ」
 ピエリさんはそうケロッと言うけれど、実際その通りなので私は何も言い返さない。結局、戦争というのはそういうもので、自分が付く旗の色で戦う相手が変わったりもする。知り合いであろうとも、旗の色が違えば殺し合うことになるのが戦争ですから。
「でも、リリスはすごいの。ピエリ、リリスの事思いっきり叩き落としたのに、合流した時、あんまり気にしてなかった気がするの」
「確かに怪我はしましたけど、気にすることもなかったです。それを言えば、ピエリさんだって気にしてなかったと思いますけど?」
「うん、ピエリまったく気にしてなかったの。それに、あそこで戦ってなかったらピエリはリリスの事なんて忘れてたと思うの。だから、あそこで叩き落として置いて正解だったの」
「うーん、出来れば叩き落とすことなく覚えててくれるほうがいいんですけど」
 昔の話をしていると、どうも当時の古傷が痛むような気がしてきます。現にピエリさんに思いっきり叩かれた脇腹辺り、そこがムズムズと痛み始めたような気がした。
省15
988: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/10/10(木)20:49 ID:0n10eZ/T0(10/18) AAS
 ピエリリス 短編2
『私はあなたの痕になる』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 小さな圧力で目が覚めた。
 それはとてもか細いけれど、なんだか逃がさないという意思を示すみたいに私の体を引き寄せている。
 自身の人ならざる竜の体を包む交差した二つの腕、その束縛から逃れようと身を捩る。
 抜けられない、どうやら尾鰭があの子の下敷きになっているようだ。下敷きになっているけど痛くないのは、この高級なベッドのおかげでしょう。決して、下敷きにしている存在の体重が軽いからではないと思う。あんなに大きくご立派なものを二つも持っているのに、これで軽かったら不公平です。一説にはカミラ様と同じくらいだともいうし、そんな人が体重まで軽いなんて言語道断許されない。
 そんなことを思いながら私は逃げることのできない体をそのままに、拘束主であるピエリさんの目覚めを待つ。
 少しして、カーテンの隙間から差し込む太陽の光が瞼に掛かった。眩しさに顔をしかめていると、背後から怪訝な声が聞こえてくる。同時に二つの腕の力が弱くなった。
 尾鰭に感じていた重みがゆっくりと緩和されていき、やがて消え去る。ようやく自由になった尾鰭を動かそうとしたけれど、ずっと下敷きになっていた所為か思ったよりも動いてくれない。そして、腕の拘束はまだ解かれていない。
省11
989: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/10/10(木)20:54 ID:0n10eZ/T0(11/18) AAS
 人としての姿で立って、すぐに気になるのは今の格好だ。なにせ、今の私は何も着ていない。そして、視線の先には昨日着ていた衣服の一式がくしゃくしゃに放置されている。私の体系にお似合いの奥ゆかしい下着一式はベッドの近くにポトリと落ちていた。
 そして、その隣に私の数倍くらいが収まりそうな大胆なブラが落ちていて、やはり選ばれる人と選ばれない人というのが存在するのだなと改めて思った。
「ピエリさん、体は痛みませんか?」
 髪をゆっくりと梳かしながら訪ねる。ピエリさんの体には色々と跡が付いている。訓練での怪我、戦闘での負傷もある。だけど、今一番目立つのはうっすらと浮かぶ赤い腫れで、それは私が付けた痕だ。
「体は痛くないの。でもリリス、体のあちこちに痕を付けるのは止めてほしいの。このままじゃマークス様に怒られちゃうのよ。それに見える所に痕が付いてるとみんなが見てきて、とっても恥ずかしいの……」
 頬を染める彼女を見て、昨夜のことがモヤモヤと思い出される。私の指がピエリさんをどう弄んだのかは私だけの秘密。そして、その首筋と背中に何度も行った求愛の証は私が彼女を独り占めしているという証だった。
「ふふっ、もう皆さんに知られている事なんですから。別に気にすることじゃないと思いますよ。私はピエリさんのすべてが大好きですから」
「そ、それはうれしいの。ピエリもリリスの事大好きなの」
「なら問題ないですよね?」
 うなじに残した痕に指を這わせると、ピエリさんの口から甘い息が漏れた。子供の様でいながら、その中身はとても成熟している。だけど、精神が成熟しているわけではないからこそ、私が触れる度にその成熟に私という存在を溶け込ませたくなるのだ。
省10
990: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/10/10(木)21:01 ID:0n10eZ/T0(12/18) AAS
 ピエリリス 短編3
『壊れたあなたの隣なら』

  ピエリは壊れてる、おかしいって多くの人が言ってくる。どうしておかしいのかを聞くと、誰もが普通じゃないからだって云う。殺すことに戦場と何か違いがあるのかを聞いても、敵だから殺してもいいんだって、みんなは云う。みんな、人の命を奪っちゃダメだってピエリの事を悪物みたいに云う。言うから、ピエリは何時もここに入り込む。
 星界の端にひっそりと佇む神殿、時々カムイ様だけしか訪れないそこはピエリのお気に入りの場所になっていた。
「それが必要な事なら、殺してもいいのではないでしょうか? 私もカムイ様を守るためでしたら、どんな相手であろうとも殺すでしょうからね」
 リリスはそう言ってピエリの横に座る。リリスはなんだかとても不思議な子で、ここにピエリが入り込んだ時に知り合った。なんだか、変な動物みたいな恰好をしてる時もある。ピエリから見ても不思議な子だった。
「ピエリ、イライラすると人を殺したくなるの。みんな、それがダメな事だっていうの。敵は倒さないといけないから殺してもいいって言うけど、ピエリには違いが分からないの」
「違いはありませんよ。理由がなんであっても人を殺している事実は変わりませんから」
 リリスはピエリの言葉に簡単な答えを返してくれる。よくわからないけど、みんな人を殺すことに色々と理由を付けてるから、リリスの答えは聞いてて分かりやすかった。
 それだけじゃなくて、リリスからはラズワルドと同じですごく血の匂いがした。ピエリと同じいっぱい人を殺してきた匂い、そのことをラズワルドに聞いたら、仕方なかったからって答えた。だけどリリスは、いっぱい殺したって言って、それ以外に何も言わなかった。
省8
991: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/10/10(木)21:06 ID:0n10eZ/T0(13/18) AAS
「ふふっ、眠っちゃいましたか」
 私に頭を撫でられて眠くなったのか、ピエリさんは肩に寄り掛かるようにして眠り始める。神殿の中に彼女の寝息だけが漂い始めると、私はその左右に纏めた髪を優しく撫でた。
 今日も、こうして私の下にやってきてくれたこの子に感謝するように。
 あの日、みんなの目線に耐えかねて神殿に逃げ込んで来たピエリさんの事は今でも覚えている。とても辛そうな顔をしていて、私を見た時も拒絶されるかもしれないという顔をしていたと思う。それが、狂ったお父様に消されそうになった私と重なった気がした。
 ピエリさんの価値観は、恐らく多くの人に受け入れられることは無いと思う。そして、その受け入れない人たちは殺すことの意味を何かで塗りつぶさないといけない人たちで、そんな人たちにピエリさんが苦しめられている姿は見るに堪えない。そして、誰も彼女なりの意味があるかもしれないと考えたりはしなかった。
「……あなた達が思っている以上に、ピエリさんは純粋なんですよ」
 思い出す、ピエリさんが前に話してくれたこと。従者に殺されてしまったお母様の話。お母様の記憶がピエリさんにとっての考えの根底なのだと私は思う。それは愛情の欠如ではなく、愛情が大きかった故に彼女はこのような価値観を得たのだと思う。
 酷く落ち着かない、殺しを行った従者がいるように感じる恐怖、そしてお母様に会いたいという子供としての願い。それが混ざり合って、ピエリさんは成長を止めたのだと思う。
 そして、そんな不安定な彼女を私は隣で支えたいと思った。私がカムイ様以外の誰かを支えたいと思ったのは初めてのことだと思う。だけど、私にはピエリさんの心の時間を動かす方法が全く分からないし、動かそうとも思わなかった。
 ピエリさんの中で止まった時間、それを動かすためには色々な事をしなくちゃいけない。だけど、それは今のこの支えている時間を崩しかねないもので、私はそれを失うことに恐怖を覚える。
省7
992: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/10/10(木)21:11 ID:0n10eZ/T0(14/18) AAS
 ピエリリス 短編4
『美味しいご飯』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 目の前に置かれた未調理生肉を見て、またか……と私は思ってしまった。
「えっと、リリスさん? どうかしましたか」
『い、いえ、何でもありませんよ。その、いただきます……』
 私は置かれた生肉を頬張るために口を大きく開ける。
 まずは一口目、生肉特有のちょっとした生臭さが広がる。
 続いて二口目、噛みしめる度にちょっとだけ血の臭いが広がる。
 最後の三口目、正直このままでは辛いので一気に飲み込んだ。
省11
993: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/10/10(木)21:16 ID:0n10eZ/T0(15/18) AAS
 ニコニコの笑顔で差し出されるおいしそうなお肉。それを私はパクリと口にした。昼間に食べた未調理生肉とは比べ物にならないおいしさが口の中に広がる。一噛みする度に溢れ出る肉汁、お肉本体も柔らかくて食べやすくお肉そのものの味を肉汁と一緒に逃がさない。アクセントにと適量に振られたコショウが食欲を倍増させ、口の中が肉の暴力で支配される瀬戸際、そこに間髪入れずスプーン一杯分のライスが差し出された。ピエリさんだ!
「ライスも一緒に食べるとおいしいの。はい、もう一回あーんなの!」
 私にそれを拒む理由は無かった。あーんとライスを頬張る。星界に光が溢れるような感動が広がった。肉という暴力はライスという抱擁によって幸福へと進化する。濃厚な肉汁の風味がライスと溶け合っていくその流れに、私は久しぶりに料理というもの、いいえご飯という物を取ったのだと理解した。
「まだあるから、たくさん食べるといいの」
 その言葉に素直に従い、私は残ったライスと肉をすべて平らげたのだった。
『す、すみません。その、食べさせてもらってしまって……』
「気にしないでいいの。お料理作り終わってお片付けに入ろうとしたら、お腹が空いたって声が聞こえて、ご飯作って持ってきてあげただけなのよ」
『え、も、もしかして私の声、聞こえていたんですか……』
 迂闊でした。私の声、どうやら神殿の壁を突き抜けて聞こえていたようです。
『そうだったんですね。あ、ちゃんとお話しするのは初めてですよね。私はリリス、この星界の管理と運用を任されています』
省15
994: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/10/10(木)21:29 ID:0n10eZ/T0(16/18) AAS
 ピエリリス 短編5
『結んだ思いは、最後まで』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「リリスも、ピエリと同じリボンを付けるの。そうすれば、ピエリと御揃いになれるのよ」
 神殿にやって来たピエリさんは、私に縞々模様のリボンを手渡してきた。どうしてかということを考えながらも、とりあえずそのリボンを受け取って、私はピエリさんに目を向ける。
 口に咥えて受け取ったリボンはやはり大きい。けど、それ以上に印象的だったのは受け取ってもらえてうれしそうにするピエリさんの姿である。
『そんなにうれしいんですか?』
「うん、うれしいの。リリス、すぐに受け取ってくれなかったから気に入らないかと思って、ちょっと不安になっちゃったの」
『柄とかそういうのは嫌いじゃありませんよ。その、どうして私にこれを送ってくれたのか、全然見当がつかなくて……』
「ん、簡単なの。リリスは友達で命の恩人だからなの!」
省10
995: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/10/10(木)21:32 ID:0n10eZ/T0(17/18) AAS
 ピエリさんが私を抱きかかえる形で神殿の台座に腰かける。カチーフを解いた私の頭部を数回優しく撫でてから、今さっき手渡したリボンを綺麗に結んでいく。そのリボンは強すぎず、でも簡単に取れない様にと丁寧に飾り付けられた。
「ふふーん、これでリリスもピエリと御揃いさんなの〜」
 鼻歌交じりにリボンを結んでいくピエリさん、とても楽しそうな声が私の中に入り込む度にうれしいと思う私と、きっと後悔することになると囁く私がいる。
 それはピエリさんと私自身、どちらにも投げかけているように思えてくる。ピエリさんには聞こえない、口にすればいいのに口に出来ないのは、きっとこの関係を私がすこぶる気に入っているからだ。こうやって、膝の上に乗せてもらいながら世話を焼いてくれるピエリさんとの関係、それを自分から壊していくことなんてできない。
「えへへ、出来たの! うんうん、もっともっと可愛くなったのよ。リリスも見るの!」
 リボンを付けた自分の姿を確認させるように、ピエリさんは手鏡を向けてくる。鏡の中に映った私、最初は無表情だったけれど、気が付けばすごくうれしそうにしているのが分かる。私の心は正直に、今この時を幸福に感じていた。
「えへへ、リリスが気に入ってくれてうれしいの。ピエリ、頑張った甲斐があったのよ」
『はい、なんだか新鮮でいいです。それに、うん、ピエリさんの云う通り、お揃いなのが嬉しいのかもしれません。あなたは、私の、お友達ですから』
 その言葉がこの状況を招いた原因だと思う。私はどこかで憧れていたのだ、他のみんなにもあるように、私自身だけの誰かとの繋がりが持ちたかった。
「うん、お友達なの! あ、そうなの、この戦いが終わったらピエリとお買い物に行くの。ピエリのお気に入りのお店、いっぱい教えてあげるのよ」
省13
996: ◆P2J2qxwRPm2A [saga] 2019/10/10(木)21:41 ID:0n10eZ/T0(18/18) AAS
 以上でこのスレでの更新は終わりになります。
 少ししましたら新スレを立てさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 レオニーは同性関係で支援B終わりが多すぎるのはなぜなのか……
 リリスはもっと、多くのキャラクターと触れあってもいいと思う。
 
 残りの数レスですが、マクベス戦が終わった時に書く短編決めに使おうと思います。
 よろしければご参加していただけると幸いです。

・風化雪月の百合的なもの(今回と同じで複数)
・リリスの星界的な話
・マキュベス
省3
997: 2019/10/10(木)22:44 ID:Ime3lwko0(1) AAS
・風化雪月の百合的なもの
998: 2019/10/12(土)17:34 ID:k42DpUOMO携(1) AAS
風化雪月の百合的なもの
999: 2019/10/13(日)23:52 ID:0jchkVp4O携(1) AAS
マキュベス
1000: 2019/10/21(月)15:56 ID:CN0cHGJDO携(1) AAS
風花雪月
1001
(1): 1001 Over 1000 Thread AAS
AA省
1002: 最近建ったスレッドのご案内★ Powered By VIP Service AAS
女「私の王子様」 @ 2019/10/21(月) 02:44:33.58 ID:oVOzrQGUo
  vip2chスレ:news4ssnip

みほ「昨日沙織さんと一緒にいたよね....」 @ 2019/10/21(月) 02:14:52.71 ID:8PDOZRM+0
  vip2chスレ:news4ssnip

ココア「……殺し合え?」 @ 2019/10/21(月) 00:42:10.15 ID:Y8TE6cYqo
  vip2chスレ:news4ssnip

桃「シャミ子を走らせてたらシャミ子が倒れた」 @ 2019/10/20(日) 23:40:42.55 ID:06K62MaI0
  vip2chスレ:news4ssnip

【ローゼン】翠星石「菊の方がいいですぅ!!」 @ 2019/10/20(日) 23:29:00.79 ID:XkGnzIhg0
  vip2chスレ:news4ssnip
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