[過去ログ] 「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part9 (1002レス)
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932: コドクノオリ「籠の中の……」 2013/10/03(木)22:39 ID:IRjAdFpWo(3/7) AAS
 ならばと腕をついて体を跳ねさせようとして、それもできない程近くで結界の光が久信の体の動きを止めた。
 ……なんだ?
 目の前にいつの間にか結界があった。
 ……こんな所にまで結界があるのかよ!
 完全に狭い箱に閉じ込められる形になって、体はどうやっても動かない。
 ……さっきかごめかごめの結界が完成した時か……!
 修実が息を呑んだ音を聞きながら、久信は言う。
「――ッ、かごめかごめは籠、つまり牢屋にいる囚人についての唄っていう都市伝説があったな」
「はずれ」
 横に振り抜いた手斧を引き戻して、郭は答える。
省12
933: コドクノオリ「籠の中の……」 2013/10/03(木)22:40 ID:IRjAdFpWo(4/7) AAS
「後ろの正面――」
「――!」
 あと1フレーズもなく、郭が手にした斧が降ってくる。
 結界の破壊は間に合わない。
 修実が陥った状況もこのようなものだったことから、元より、彼はこうして閉じ込めた相手を刻むのが主な戦い方なのだろうと分かる。
 完全に相手のペースにはまってしまった。
 ろくに身動きができない棺と化した結界の中で、とにかく郭の攻撃を防ごうと、腕を斧の着地点に合わせて、
少しでも被害を食い止めようとした久信は、背中からの強いゆさぶりで体が狭い棺の中でうつ伏せに近い状態に半転させられた。
「修実姉?!」
「……ッ」
省20
934: コドクノオリ「籠の中の……」 2013/10/03(木)22:43 ID:IRjAdFpWo(5/7) AAS
 修実は先の一撃の影響の見られない、しっかりとした声で応答した。
「信じたくはありませんでした。皆が私を殺そうとするなんて」
「お前が悪いんだ。実家に帰ろうなんてな。
あれだけ共犯意識が根付いていた町でそんなことを宣言するから、事実の発覚を恐れた連中がよってたかって襲い掛かるんだ」
「それは、貴方もですね」
「当然だ。あそこで俺がどれだけ儲けてきたと思う」
「――郭! お前はそんな理由で、お前たちは修実姉を!」
 郭はせせら笑いを浮かべた。
「お前はこいつの封印を解いた奴……ああ、お前はこの女の弟だな?」
 郭は合点がいったというように嗤う。
省26
935: コドクノオリ「籠の中の……」 2013/10/03(木)22:44 ID:IRjAdFpWo(6/7) AAS
 修実姉をこんなに苦しめるなんてこともなかったのに。
 飛びそうになる意識を怒りで繋ぎ止める久信に、郭の言葉が入り込む。
「修実ちゃんは小さいころからずっと便利な道具として使わせてもらって、こんなになったあとも商品として役にたってくれるんだから、本当に馬鹿な子だなあ」
 久信の怒りに燃料を雪ぐ一言と共に送られてきた一撃は、これまでとは違う、横殴りの一撃だった。
 修実が体を捻ってなんとか手斧を久信に当てられることは防いだものの、
修実と久信を繋いでいた蛇が切断され、横殴りの衝撃によって修実の体が久信の背中からほんのわずかに離れてしまった。
 そして、
「かーごめかーごーめー」
 かごめかごめの童謡が唄われ、修実の体を掴み直そうとしていた久信の手が、新たに出来上がった結界の壁に阻まれてしまった。
 郭のかごめかごめの結界は、大きな籠の中をいくつかの小部屋に分けて、多くの者を別々に捕える事ができるようになっているようだ。
省23
936: コドクノオリ 2013/10/03(木)22:52 ID:IRjAdFpWo(7/7) AAS
修実の悲鳴はその筋の人が聞けばエレクチオンせざるを得ない代物と思ってくだされば

郭がいた組織とそのお膝元の町は、きっとB級映画とかでよくある
 アメリカの郊外の村とかマジホラー
 的な町だったんだろうなと想像して頂ければと思います
937
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/05(土)23:56 ID:EmQK1IFAO携(1) AAS
コドクの人乙ですー
郭悪よのう。嫌いじゃないぞ
938: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/06(日)02:33 ID:Ngu9E5f3o(1/7) AAS
>>937
どうもです。
所詮は御山の大将なので諸々の魅力に欠けますがこんなのもそれはそれで
悪い意味で人間っぽくて嫌いじゃないです

さて続きをば
939: コドクノオリ「    」 2013/10/06(日)02:35 ID:Ngu9E5f3o(2/7) AAS
 久信を切断しようとしていた手斧の一撃が、鱗が浮かんだ女性の手によって止められた。
「なんだと?!」
 一方的に攻撃を加えていた郭は、自分の一撃が止められるとは予期していなかったのだろう。
驚いた顔で止められた手斧を眺めている。そして、そんな彼を更に驚愕させる事態が起きた。
 斧を押しとどめている二本の腕、それに続いて更に二本の腕が伸びて、手斧の柄の部分を掴んだのだ。
 それだけではなかった。
 追加で、更にもう二本の腕が、今度は未だ手斧に狙われている久信の体を掴んで、彼の体を腕の主の元へと引き寄せた。
 郭の結界を破壊し、また彼の武器を封じて久信を引き寄せた腕の数は都合三対、六本だった。
 そして、それらの腕の主は、
「なんだ、それは……?」
省2
940: コドクノオリ「    」 2013/10/06(日)02:36 ID:Ngu9E5f3o(3/7) AAS
   @

 修実のもとに引き寄せられた久信は、驚きで動きを止めている郭を見て、まあ、そういう反応になるだろうと内心で頷く。
 今、郭の前には、先程までダルマ状態で失われていたはずの腕を肩から六本も生やした修実の姿があるはずなのだから。
 郭の口が再び「何だ?」と動く。それに被せるように、修実が告げる。
「郭さん。私、あの封印の中で、たくさんの呪いを受けたんです」
「呪いだと?」
 郭は何を言っているのかいまいち分からない、といった様子で掴まれている手斧から手を離して、新たな手斧を抜いた。
「町の連中の中には呪いに関する都市伝説の契約者はいなかったはずだ!」
 修実をにらみつけて声を荒げる郭を見て、久信は確信した。
省17
941: コドクノオリ「    」 2013/10/06(日)02:37 ID:Ngu9E5f3o(4/7) AAS
 修実は退こうとしていた郭に、蛇の下半身で這いずって近づいた。
地面を滑るような動きに対して郭が何らかの反応をするよりも早く、修実は郭が持つ手斧を、両腕を、両足を、胴体を。六本の腕でそれぞれ握り、そして絞める。
 割れ砕けて散った結界の代わりに、外からの月の光が窓枠だけとなった窓から入ってくる。
 月光に照らされてはっきりと浮かび上がった修実の姿は、人の上半身に六臂を備え、蛇の下半身を持つ異形のそれだった。
「なんだこれは! 蛇の能力は体に鱗を生やして硬化するのが精一杯だったはずだ。こんな異形の体……都市伝説に呑まれたか!?」
「いいえ」
 修実は冷厳な眼差しで郭を見据え、己の罪業を詠み上げる。
「恨みと怨嗟と呪いと毒気が充満するあの閉じられた籠の中で、私は発狂しかけた頭で向かってくる全てを、生き残るために殺し尽くしたんです。
 そうして私の手によって殺し尽くされた生き物の怨念は、唯一の生者であり、彼らの攻撃の標的だった私に集中して、この身を喰らおうとしました。
 ですが、瀕死だった私は、これらも全て生き残るために喰らい返して利用し、失った血や体の欠損を繋ぎ止めました」
省16
942: コドクノオリ「    」 2013/10/06(日)02:38 ID:Ngu9E5f3o(5/7) AAS
 合点がいかない、といった風の郭に修実が応じる。
「蠱毒、という呪術をご存知ですか?」
「巫蠱の類だな。それがいったいなんの関係がある」
「そうですね……では蠱毒を作る方法をご存じでしょうか?」
「作り方だと……?」
 呟く郭。
 久信は蠱毒という呪法について簡単に概要を思い出す。
 毒虫や、動物を箱に閉じ込めて、狭い空間で喰らい合わせ、最後に生き残ったモノを使って呪いを行使する呪術を蠱毒という。
「生き物を一つの閉鎖された空間に詰め込んで、殺し合わせることで作る呪詛。それが蠱毒です。
 まるで私が置かされた状況のようではないですか?」
省5
943: コドクノオリ「    」 2013/10/06(日)02:39 ID:Ngu9E5f3o(6/7) AAS
「状況を元にしてあの場で都市伝説が生まれたのか、町の住人の誰かが蠱毒の都市伝説と契約していたのかは分かりません。
ですが、私は、その呪術の最後の生き残りの生物になったのです」
 蠱毒によって生まれる呪いの中核は、それが犬を使ったものならば犬蠱、蛇を使ったものならば蛇蠱といい、
仮に、もしも仮に人を蠱毒の呪術に使ったのであるのならば、それは人蠱といわれるものとなる。
 蛇蠱として、そして人蠱として、蠱毒化した異界の内部で結実した異形の怪物。
 それが、現在の小野修実の正体だった。
 幽霊船の結界を吹き飛ばすことができたのも、蠱毒の強力な呪詛を利用したからに他ならない。
 今の修実は、それだけの事ができる新たな力を抱えていた。

「これが今の私。
 なんとしても生き残ろうと足掻いて、足掻いて、足掻いた末に全ての毒を平らげて異形と化した化け物。
省3
944: コドクノオリ「蠱毒の澱」 2013/10/06(日)02:44 ID:Ngu9E5f3o(7/7) AAS
というわけでこれが修実の正体というか、なれの果てでした。
姦姦蛇螺の扱いは蠱毒で作られた産物といった感じ、都市伝説とは若干出自が違うナニか。という扱いです。
もう少し詳しくはまた次回

検索すれば姦姦蛇螺の怪談は出てくるのでそちらを見てもらうのもまたよしです。
 修実と怪談の内容を比べてもらうのも一興かと
945
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/06(日)21:13 ID:Tx2K4C3AO携(1) AAS
コドクの人乙ですー
タイトルそういう意味だったのか
946: タイムリミット 2013/10/08(火)18:53 ID:f/KEkE1AO携(1) AAS
彼女が歩くと、俺も歩く
彼女が止まると、俺も止まる
彼女が歩き出す・・・が、俺は止まったまま

「何してるのよ、紫鏡」

彼女・・・俺の契約者は訝しげに俺を振り返る
俺は「紫鏡」20歳まで俺の名を覚えている者は、20歳の誕生日に死ぬ呪い

なんだってそんな俺と契約する奴がいるかって?
契約者・・・宮野シオリは複雑な家庭に育ち、そこでまあ色々あったらしく、二言目には

「オトナは汚い。あたしは汚いオトナになりたくないから、その前に死ぬ」
省16
947: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/10(木)00:16 ID:35Ch0SGzo(1/8) AAS
乙です
切羽詰まった状態から紫鏡さんがうまい回避方法を発見する事に希望を託すしかないですな!
幼児退行とか(手段? 知らぬ!
948: コドクノオリ「姦姦蛇螺」 2013/10/10(木)23:14 ID:35Ch0SGzo(2/8) AAS
 姦姦蛇螺という怪談がある。
 あるところに、呪術師の一族があり、一族の中でも特に強力な力を持っていた呪術師の女性がいた。
彼女は、あまりに強すぎる力をもつがゆえに、親族にもねたまれていた。
そんな呪術師は、ある時、山の神を討伐してくれという依頼を受けた。
 依頼をしてきた村の住人は、呪術師の親族の手引きもあって、討伐に来た呪術師の女性の手足を切断して、弱った女性の身を山の神に捧げた。
 その捧げものを以って神を鎮めようとしたのだ。
 呪術師は山の神に食われながらも逆に山の神を乗っ取り、六臂に蛇の下半身を持つ異形、姦姦蛇螺として、自らを裏切った一族も、騙した村の住人たちも祟り殺した。
 これが姦姦蛇螺の怪談。
 修実の姿はまさに、村も親族も祟り殺した姦姦蛇螺そのものだった。
949: コドクノオリ「姦姦蛇螺」 2013/10/10(木)23:15 ID:35Ch0SGzo(3/8) AAS
   @

 何故修実はこうも、都市伝説になりきっていないような怪談に語られる化け物と似た姿になったのか。
その疑問に対して、久信は二つの理由があるのでは、という見解を持っている。
 まず一つ目は、一族の中で異常ともいえるほどの力を持ち、それが元となって組織や町の人々に殺されかけ、
その過程で両手足を失ったという、修実が辿った人生が、かの怪談で語られる呪術師のそれと似ていたこと。
 もう1つが、かごめかごめの童謡には、1人の子どもを何人もの子供で囲んで歌を口ずさみながら回り、
真ん中で目をつぶる子供が最後に自分の真後ろにいる人物の正体を当てる。という遊びがあり、この遊び自体に語られている都市伝説に曰く、
この遊びは真ん中の子供に神霊を降ろす呪術であるというものだ。
 修実は、かごめかごめが作り出す結界の中、その場にいる全てのモノに取り囲まれて悪意を向けられ、襲われた。
省12
950: コドクノオリ「姦姦蛇螺」 2013/10/10(木)23:17 ID:35Ch0SGzo(4/8) AAS
 ならば、郭に今こうして対峙する修実は、郭が偶然にも作り上げた呪術の被害者たちの恨みそのものでもある。
 恨みの対象である郭は、修実から逃げる算段をつけようとするように、視線をあちらこちらにさ迷わせている。
 対する修実は郭を見据えたまま、目線を動かす気配がない。
 無慈悲ともいえる表情を浮かべる修実の姿は、久信も間近でまじまじと見るのは初めてだった。
 以前この姿になった吉井を見たのは、姉が居た町へ彼女の安否を確認に居た時だった。
 封印を破壊したばかりで意識も朧だった彼女。
久信はこの状態の姉を、姉と認識するところから始まって、修実が落ち着いて意思の疎通ができるようになり、
怨念によって膨れ上がった彼女の力を抑えこむために修実の中に根付いた新たな力を極力封印し、
蠱毒の影響で生成された手足も全て封じてダルマ状態になってもらうまでの間、一連の綱渡りのような事態がせわしなく続いたせいで、じっくりと彼女の姿を眺める余裕はなかった。
 月光の下、改めて見る修実の姿は、美しかった。
省22
951: コドクノオリ「姦姦蛇螺」 2013/10/10(木)23:18 ID:35Ch0SGzo(5/8) AAS
 締め上げを徐々に強めながらそう口にする修実から本気の殺意を感じ取って、床に置いておかれた久信は慌てて止めに入った。
「待った修実姉! そいつからは証言を引き出さなくちゃいけないから、そこまでだ」
「多少痛めつけるくらいならばかまわないでしょう。証言ができるように、こうして喉だって潰さずに残してあるのよ?」
「修実姉!」
 修実の蛇身を殴ると、修実はそれで初めて久信の存在に気が付いたように目を瞠った。
「――ぁ」
 背をビクッと震わせ、瘴気を徐々に収めていく。
 全てを収めた後、修実は久信に目を合わせて、眉尻を下げた。
「ごめんなさい」
「いいんだよ」
省8
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