[過去ログ] 少年サンデーバトルロワイアル part6 (107レス)
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18: 普通の子ども ◆hqLsjDR84w 2013/01/24(木)22:07 ID:wqitE5aZ(9/20) AAS
 
 問いかけると、美神さんは目を丸くした。

「もっと凹むと思ってたんだけど、結構タフね。
 うちの横島くんだったら、間違いなく二週は引きずるんだけど」
「そんな余裕、ありませんよ」

 そう、落ち込んでいる余裕はない。頭を切り替える。
 僕は普通の子どもにすぎないんだから、その分抗うんだ。
 全部なかったことにするのが無理なら、いまできることをやってやる――!

「落ち込んでたら、キース・ブラックの思うつぼだもの。
 一番の敵は、結界でも首輪でも殺し合いに乗った参加者でもない。
 諦めようとする自分自身の弱い考えが、なにより戦わなきゃいけないんだ」

 美神さんの目を見て言い切ってから、勢いよく頭を下げる。

「だから――覆っている結界を取り払う方法を教えてください」

 GSとして働いている美神さんにとって、結界の知識はそうそう明かせぬものだろう。
 おキヌさんの言葉通り利益優先主義であるのならば、なおさらである。
 ゆえに頭を下げる。
 それでもダメならば、他のなにかを考える。
 そう思っていると、美神の返事より先にエンジン音が響いた。

「……ッ!?」

 反射的に顔を上げると、美神さんとおキヌさんもそちらを見つめている。
 朧さんだけが一人、そちらに視線をやらずにあらぬ方向を眺めている。

「警戒する必要はないですよ。
 迫ってきている男が殺し合いに乗っている可能性はありません。
 苛立ちこそ溢れ出していますが、殺気は漂っていませんし――それに」

 エンジン音は、僕らから少し離れたところに止まった。
 原付を止めると、乗っていた男性がゆっくりと歩み寄ってくる。

「なにより、彼は最速のスプリガン――ジャン・ジャックモンドですから」

 長く伸ばした金色の髪を風になびかせて、ジャンさんは朧さんに鋭い視線を飛ばす。

「おいおい、なにバラしてんだよ。一応機密事項だろうが、そいつは」
「ふふ。元より、アナタは知りたければ知れというスタンスではないですか」
「はッ! 俺たちに軽々しく手ェ出したら終いだって、バカどもに知らしめてやるだけだろ」
「現状、手を出されていますけどね」
「だから分からせてやるんだろうが、あのしたり顔のキザ野郎によ」
「そう上手く行っていないようですが」
「ちッ。久々に会ったってのに見透かしたみてえな口調は変わんねーな、朧。
 でもその通りさ。なにも間違っちゃいねー、ボコられっぱなしだ。だが終わっちゃいねー。生きてる以上は、あの野郎に分からせてやる。
 アンタだって、言われるがままってワケじゃねーんだろ。もしそうなら、こんなガキたちがアンタと一緒にいられるはずがねえ」

 言いながら、ジャンさんは朧さんから視線を外す。
 辺りを見渡そうとして――ある一点でオブジェのように静止した。

「…………」

 そちらでは、美神さんがおキヌさんの背後に身を隠していた。
 けれどおキヌさんは幽霊であるので、まあ、うん。
 美神さんの姿は、見事に透けて見えている。
 それはもう完全に。まったくもって丸見えだった。
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