【今こそ】ロシア語入門・初級スレッド【ロシア語】 (553レス)
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509: (ブーイモ MMb2-P7MY) 11/04(月)23:09 ID:S6JgDlFzM(4/4) AAS
しかしながら、古スラブ語形 *ovot'e(ovotje)のゲルマン語起源説は、
その後ロシア語語源辞典としては最も有名な、М. Фармер の辞典では否定された。
何故なら、スロベニア語 ovočje、クロアチア語 voće、ブルガリア語 овоще、ウクライナ語 овочі のように、それぞれの言語においた、語尾の子音が規則的に対応するからである。
つまり、古スラブ *tj と *kt はスラブ語によって異なる発達をしており、西スラブ諸語では c [ts]、東スラブ諸語では ч となる。
南スラブ諸語ではその反映が分かれて、スロベニア語なら č、セルビア語とクロアチア語では ć、ブルガリア語なら щ [št]、マケドニア語だと ќ [kj] となる。

ロシア語形が本来ならウクライナ語形のように *овочи となる筈なのにそうなっていないのは、それが教会スラブ語形の借用だからである。
スラブの使徒・キリルとメトディウスが中心となって制定したところの古代教会スラブ語は、彼らの故郷であるギリシャのテサロニキの方言が基礎となっており、
当時のその地の南スラブ語では、古スラブ *tj、*kt の反映は現代ブルガリア語と同じ [št] であった。
ウクライナ語方言形 овоште も又古代教会スラブ語形を直接借用したものである。
こうした一連の規則的な音変化の反映は、借用語としては相当古い時期(遅くても紀元後2-3世紀頃)
と想定しないと考えにくい。
従ってこれは借用語ではなく、古スラブ語が印欧祖語より引き継いだものと考える方が自然である。

詳細は高度に専門的かつ複雑になるため割愛するが、ラテン語 augeo「私は増やす」、リトアニア語 augti、ドイツ語 wachsen、デンマーク語 vokse(後者3語はいずれも「育つ、成長する」の意)と同じ印欧語根から出て、
*ow-og-tī- >*ovokti-「育った(熟した)もの」から先の古スラブ語形が派生して来たとも充分考え得る。
(更に、語頭の o- は、セルビア語やクロアチア語のように脱落する可能性がある)

そうしてみると、特にドイツ語と直接接する地域のスラブ語が、ドイツ語 Obst の影響(形態上の類似)を受けてか
「果物」という意味で固定して使うことが多かったとしても、
本来は単に育ったものということだから、野菜の意味で使われても不思議は無いし、そもそもカボチャとメロンのように、
果物と野菜の明確な区別は、一般人の日常生活に必須なことでもなかったとしたら、別に混同されても何ら弊害は生じなかったのだろう。
中期英語の ovet が、果物と野菜どちらの意味でも使われたと言うことが、そのことを強く示唆していると思われる。
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