[過去ログ] 【剪定】庭木の手入れその16【移植】 (1002レス)
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996: 04/09(木)14:14 ID:SmymS3X8(11/15) AAS
彼はホームセンターや100円ショップを巡り、安い木材や金具を買い集めました。
そして道の駅の隅や海辺の駐車場で見よう見まねで車内のDIYを始めたのです。
後部座席を取り外し、フラットな床板を張り小さな折りたたみ式のテーブルを作り付けました。
窓には断熱材を自作して貼り付け。カセットコンロ一つでご飯が炊けるように工夫しました。
今まで、家の電球を替えることすら「遅い」と妻に罵られていた伸介さんですが、自分のためだけに作る空間はどれだけ不格好でも愛おしいものでした。
釣った魚を海辺で自ら捌き、小さなフライパンで塩焼きにして食べる。
ただ、それだけのことが高級レストランのフルコースよりも何倍も美味しく感じられました。
わずか2畳にも満たない薄暗い軽バンの車内が。 伸介さんにとって人生で初めて手に入れた「本当の自分の城」となったのです。
そんな生活を始めて1ヶ月が過ぎた頃。伸介さんは、立ち寄った海辺のオートキャンプ場で一人の男性と出会います。
彼の名前は大樹さん 45歳。ピカピカのキャンピングカーではなく伸介さんと同じように使い込まれたバンで一人旅をしている。
省8
997: 04/09(木)14:15 ID:SmymS3X8(12/15) AAS
実はこの大樹さん、現代のノマドワーカーたちの間で絶大な人気を誇る匿名ブログの執筆者でありのちに伸介さんのこの不器用で純粋な旅の記録を「ある定年退職者の最高の反逆」として書き綴ることになるのですが、それはまた別の話です。
大樹さんと出会い、自分の選択が間違っていなかったと確信した伸介さん。
しかし、過去というものは、そう簡単には彼を自由にしてくれませんでした。
季節が秋に変わろうとしていたある日の夕暮れ。海辺でコーヒーを沸かしていた伸介さんのスマートフォンがけたたましく鳴り響きました。
画面に表示された文字は「由美子」。着信拒否にするのを忘れていた妻からの数ヶ月ぶりの電話でした。
伸介さんは深くため息をつき通話ボタンを押しました。「ちょっと!!あなた、今までどこで何をしてたのよ!!」
鼓膜を劈くような、聞き慣れた金切り声。しかしその声には以前のような絶対的な高圧感はなく、どこか焦りと恐怖が混じっていました。
「…海辺にいる。何か用か?」
「用か、じゃないわよ!」「今すぐ家に帰ってきなさい!庭の雑草は伸び放題だし、お風呂の換気扇も壊れたのよ!それに…それに…」
由美子さんの声が震えていました。
省2
998: 04/09(木)14:16 ID:SmymS3X8(13/15) AAS
しかし、現実は甘くありませんでした。
彼女のクレジットカードのリボ払いの残高は彼女自身の想像を遥かに超えて膨れ上がっていたのです。
さらに伸介さんが家を出たことで、彼の銀行口座に入金される年金の大半を勝手に引き出すことが難しくなり、あっという間にキャッシュフローがショートしました。
2000万円あった退職金も彼女が内緒で作っていた投資詐欺まがいの負債の穴埋めと、見栄を張った豪華な旅行ですでに底を突きかけていたのです。
「お願いだから帰ってきて!あなたの名前で新しくローンを組んでちょうだい! 生命保険も解約して!このままじゃ、家を差し押さえられちゃう!ねえ、あなた、家族でしょ!? 私を見捨てる気!?」
かつて「優秀なATM」としてしか夫を見ていなかった妻のあまりにも身勝手で惨めな哀願。
「魚臭い」「二度とその面見せないで」 と言い放ち、深夜の路上に夫を放り出した張本人が、お金に困った途端に「家族でしょ」とすがりついてくる。
伸介さんは、自作の小さなテーブルの上に置かれた、100円ショップのマグカップを見つめました。
その横には、今日自分で釣って、自分で開いた小さなアジの干物が転がっています。
40年間この妻のために、この家族のために、血を吐くような思いで満員電車に揺られ、頭を下げ続けてきた自分の人生。
省10
999: 04/09(木)14:17 ID:SmymS3X8(14/15) AAS
夕日が海に沈みかけ空と海が燃えるようなオレンジ色に染まっています。 伸介さんの目からまた一筋の涙がこぼれました。
しかし、今度の涙は悲しみでも解放感からだけでもありませんでした。
40年間の自分の人生の半分が完全に終わったという「喪失」と「受容」の涙でした。すべてを失った。妻も、家も。財産も。
しかし彼の心の中には、かつてないほどの確かな「温かさ」がありました。
誰にも支配されない誰の評価も気にしない、自分自身の足で立ち、自分の力で生きているという実感。
「さて、明日はどこの海へ行こうか」
伸介さんはカセットコンロの火をつけました。小さな炎が、彼の2畳の城を優しく照らし出します。
彼が手に入れた「最高の自由」は、 誰から見れば、孤独で惨めな老後かもしれません。
しかし、伸介さんの顔には、 現役時代のどの瞬間よりも深く穏やかな笑みが浮かんでいました。

さて、画面の前の皆様。
省9
1000: 04/09(木)14:17 ID:SmymS3X8(15/15) AAS
第二の罠は、「家族の中の孤独」です。
一人暮らしで誰もいない部屋に帰る孤独も辛いものですが、最も残酷な孤独とは、「家族という他者」に囲まれながら、誰からも必要とされず理解されない孤独です。
伸介さんは4LDKの豪邸に住みながら2畳の軽バンよりも狭い肩身の思いをしていました。物理的な距離が近いからといって心の距離が近いとは限りません。
むしろ、期待がある分だけ家族から向けられる冷たい視線は、他人のそれよりも深く心をえぐるのです。
そして第三の罠。それは「見栄とプライド」です。
妻の由美子さんは、「高級住宅街に住む裕福な奥様」という虚飾のプライドを守るために夫を犠牲にし、借金を重ねました。
しかし伸介さんの方にもプライドはありました。「自分が我慢すれば波風は立たない」「世間体があるから離婚はできない」と。
現実の問題から目を背け続けたのもまた、一種のプライドであり、自己欺瞞だったのです。
もし彼がもっと早く由美子さんの金銭感覚や暴言に対して本気で向き合っていれば結末は違っていたかもしれません。
皆様の「家」は、今、本当に安らげる場所でしょうか?
省10
1001
(1): 1001 ID:Thread(1/2) AAS
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1002
(1): 1002 ID:Thread(2/2) AAS
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