カルネアデス・プリズム(名探偵コナン×竜とそばかすの姫) (156レス)
カルネアデス・プリズム(名探偵コナン×竜とそばかすの姫) http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/
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12: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/10(水) 20:01:39.68 ID:mpYq59rk0 「ああ、グラタンはいつも通り美味しいわよ。 仕事柄、詳しい事は言えないんだけどね。 先生も私も随分手を尽くした仕事で結果がBAD END。 しかも、理由が全然関係ない只々ありふれたハードラック。 それでぷっつり終わりなんだからやり切れない」 「お疲れ様です」 「うん」 安室の労いに緑が返答し、緑は食事に戻る。 「御馳走様」 手を合わせた緑が、カウンターに紙袋を置く。 「お土産。今度これで何か作ってもらおうかしら。 文字通り馬力がつく奴」 緑の言葉に、紙袋を持ち上げた安室が中身を取り出す。 「生食用ですか」 「ええ」 「明日来ていただけるなら、タルタルステーキ等どうでしょう?」 「いいわね。明日のランチにそれお願い。今夜はこれから一仕事」 「これからですか?」 緑の言葉に梓が聞き返す。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/12
13: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/10(水) 20:03:28.94 ID:mpYq59rk0 「ええ、資料の整理をね。 只でさえ気が重い事件で気が重い終わり方だったのに、 だからこそ、今回は貴重な案件だから うん十年後に回顧録が書ける様に記録しておくって先生がね。 もちろん表に出す時は分からない様に脚色する事になるけど、 早い内に記録は整理しておくって」 「特に記憶は変わってしまいますからね」 「そういう事」 安室の言葉に緑が答える。 「だから今夜は家でもお茶漬けね」 「柴漬けですか?」 「残念、野沢菜よ。 御馳走様、今日も美味しかった」 ============================== 今回はここまでです>>1-1000 続きは折を見て。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/13
14: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/11(木) 02:42:21.85 ID:bhK3+YVq0 それでは今回の投下、入ります。 ============================== >>13 × × 「哀ちゃん?」 休日の西多摩駅前でバスに乗ろうとしていた鈴木園子は、 停留所の先客に気付いて接近した。 「こんにちは」 園子の挨拶に、灰原哀がぺこりと頭を下げる。 「一人?」 「ええ」 「珍しいわね。何時もの子達は?」 「あの子達は博士と一緒に仮面ヤイバーショー。 私はこっちの方が良かったから」 「って事は、やっぱり目的地同じって事?」 「多分、そういう事になるわね」 「へぇー、哀ちゃんにそんなアウトドアな趣味がねぇ」 「あら、時々キャンプなんかにお付き合いさせてもらってるわ。 もっとも、今回は江戸川君に聞いてちょっと興味が湧いただけだけど」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/14
15: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/11(木) 02:46:33.16 ID:bhK3+YVq0 「ふうん。じゃあガキンチョと一緒で良かったんじゃない? 哀ちゃんならついでに一人ぐらい乗せてくれたでしょう」 「別に、電車とバスで来られる場所だから そこまでしてもらう事でもないわ」 「ふうん」 何処か意味ありげな園子に、哀はちょっとじとっとした視線を向ける。 そして、園子は、後々の事を考えて 「蘭ねーちゃん」と言ってみたい衝動を懸命に堪えていた。 そのまま、到着したバスに乗り込む二人だったが、 車内では特に言葉を交わす事も無い。 目的の停留所で降車た二人は、山々を背景にした町並みの道を歩き出す。 途中、軽くクラクションが鳴らされ、 二人がそちらを見ると、アルテシアに跨って二本指を立てたライダーが ヘルメットの下の口をにっと笑わせるのが見えた。 ーーーーーーーー 「こんにちは哀ちゃん」 「こんにちは」 野外駐車場の入口で、目線を合わせて挨拶する毛利蘭に 灰原哀は小さく挨拶を返す。 「よっ」 軽く声を掛けるコナンに、哀が一見ちょっと面倒くさそうに手を挙げる。 「やあー、哀ちゃん」 「こんにちは」 両腕を広げて実ににこやかに声を掛けて来た世良真純に さくっと挨拶してするりと向きを変える灰原哀であった。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/15
16: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/11(木) 02:48:39.90 ID:bhK3+YVq0 「じゃあ、俺は仕事して来っからよ」 「うん」 毛利小五郎と蘭が言葉を交わす。 かくして、防犯アドバイザー兼地域番組ゲストとして 招待されていた小五郎と一旦別れ、 園子を含む一行は近くの河川敷へと出発した。 ーーーーーーーー 「メイプルリバー杯、高校生の部」 土手から河川敷を眺めながら園子が口に出す。 河川敷では、係員や見るからに ウォータースポーツな人達が行き来していた。 「比較的新しい大会だけど、学生カヌーの世界ではなかなかの顔になってるわ」 園子が言った。 「確か、日本全国をブロック分けして 一ブロックから一校乃至二校、だったかしら?」 「へえー、よく知ってるねー哀ちゃん」 哀の言葉に真純が反応し、哀は小さく頭を下げて視線を逸らす。 「なかなか、見応えがありそうだね」 「うん、カヌーもそうなんだけど」 真純の言葉に、園子が含みを残して一同が歩き出す。 「あっちが応援エリア。事前登録したメンバーで 各校少人数の応援パフォーマンスが認められてるんだけど」 言いながら、園子は係員や学生が点在している河川敷のエリアを見回す。 「ちょっと早かったかな」 蘭が言い、スマホを操作し始めた。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/16
17: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/11(木) 02:50:45.65 ID:bhK3+YVq0 ーーーーーーーー 「あちらに見えますのがー、 西多摩市北部住民センターでございまーす」 何か思う所があったのか、道路に戻り暫く歩いていた一行の先頭で、 鈴木園子は開き直ったかの様に前方に見える建物を案内した。 「に、してはちょっとお洒落だね。ロッジみたいだ」 半ば林に埋もれる様に見える瀟洒な建物に、真純が感想を漏らす。 「元々のセンターが最終的に今の基準での利用が無理って事になって、 経営難になった地元企業から丁度いい物件を買い取ったって事よ。 本館がセンターで、別館のレストランは縮小して 食堂売店その他として第三セクターで運営してるって」 開いた門扉から敷地内に入り、 建物に向かう道すがら真純の言葉に園子が説明を加える。 それを聞いていた真純は、すっと制動の仕草で掌を差し出すと 丸で猫の様な足取りですすすっと動き出した。 真純が一挙に立木への距離を詰めた、と、思った時には、 立木の陰から飛び出した者が、 とん、と、真純に黒ズボンの腿を軽く蹴られて飛びのいていた。 次の瞬間、黒い塊が真純に急接近する。 「学生服?」 哀が呟いた通り、黒は学ランの上下だった。 ごうっ、と、真純と学ランが一迅の風の如く動き、 白いTシャツの上に袖だけ通された黒い詰襟の裾と その上で額に占められた白鉢巻きの緒が翻る。 構え直した真純は、舞い上がっていた自分の帽子を左手でキャッチした。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/17
18: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/11(木) 02:52:38.44 ID:bhK3+YVq0 「空手だね、蘭君の知り合いかい?」 「まあね、ちょっと驚かせてやろうって思ったんだけど、 僕の方が驚いたかな? 少し会わない間に バリツ使いからブルース・リーに乗り換えたのかな毛利君?」 「ボクが蘭君の? それは光栄だね。 確かに、蘭君はウィザード級の絶対的完全犯罪スペシャリストを 向こうに回してでも逢瀬を楽しむに値するぐらいには魅力的だからね。 だけど、郵便受けに人形が踊って、空気孔からロープが這い出た部屋の暖炉に 呪いの附木を放り込まれてから誤解でした、なんて喜劇は御免被るよ」 「ちょっと、世良ちゃんっ」 (お゛いー、俺をなんだと思ってんだよ) 園子が肩を震わせる横で、蘭が声を上げる。 一瞬真純から視線を向けられ、哀の意味ありげな笑みを横目に 心の中でコナンは独り言ちる。 「戯言だよ。大体、僕の知る限り 恋をするなら相手は男性の筈だからね毛利君は」 「ミチルくんっ」 アハハハと快活に笑ってから続けた学ランに、 蘭が立て続けの突っ込みを走らせる。 「初対面?」 「聡いんだよ、あいつは」 哀の密やかな問いに、コナンが何処か苦い口調で密やかに応じる。 「で、改めてこちらの伊達女、君達の知り合いかい?」 「でしょう、イケメン女の揃い踏みじゃない。 ええ、私達の友達で港南高校のういしみちる君よ」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/18
19: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/11(木) 02:54:56.08 ID:bhK3+YVq0 真純の問いに園子が答えた。 確かに、160センチを過ぎた辺りかと言う、およその所は中肉中背。 さっぱりショートカットした艶やかな黒髪に やや童顔で黒目がちの整った顔立ちは美少女寄りの美少年を思わせる。 癖っ毛でやんちゃっぽさが先に立つ真純とも好対照とも言えたが、 逆に、ミチルの方はほっぺの絆創膏が玉に瑕だった。 「世良真純、最近帝丹高校に転校した蘭君、園子君のクラスメイトだ」 真純が名乗りを上げ、右手を差し出す。 「改めまして、ういしみちるです、よろしく」 一度左手のスマホに「初士路留」と表示してから、路留は真純の手を取った。 「港南高校か」 「うん、ミチル君がこっちに来るって聞いてたから 合流しようって連絡取り合って」 真純の言葉に、スマホを掲げた蘭が答えた。 それを聞き、真純がすっと路留との距離を縮める。 「………念のため聞くけど、君は女性って事でいい?」 「港南高校応援団客分、僕が口癖でミチル君が渾名の女の子。 初士路留をどうぞよろしく」 ごく小さな声で尋ねる真純に、路留がにっこり笑って bow and scrapeで応じた。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/19
20: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/11(木) 02:56:32.39 ID:bhK3+YVq0 「そ、ミチル君は蘭のライバルだからね。 港南高校女子空手部のエースで応援団の花形。 渾名がミチル君で十人に一人はミチル様。 港南の王子様とは彼女の事よ」 園子が、何故かオーホホホと高笑いでもしそうな勢いで簡潔に説明してくれた。 「そうそう、甲子園でも格好良かったんだから」 「ああ、聞いたよ。あの時は大変だったね」 (ああー、大変だったよ。 流石にオメーの晴れ姿迄は気が回らなかったな) それに続けて蘭と路留が言葉を交わすのを見て、コナンが思い返す。 「ふぅーん、そのこれは武勇伝?」 「どっちかと言うと青春の痕跡かな? うん、只のニキビ、後始末に失敗してね」 指で頬を掻く真純に路留は苦笑して答える。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/20
21: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/11(木) 02:58:01.41 ID:bhK3+YVq0 「王子様、ねぇ」 「ん? ………うげっ」 真純の視線を追って、園子がたじろいだ。 「ちょっとそれ、 前会った時は世良ちゃんよりちょいマシぐらいだったじゃない」 「何気に失礼だな、園子君は。 ボクらでついついネタにしてるものだから、 失礼したの、ボクから謝るよ」 「んー、まあ、そうなんだよね。 鈴木君とは都大会でもご無沙汰だったっけ。 ここ何カ月かで急に大きくなったからね、 空手にも学ランにもバランスが悪くて正直困る」 「だよね」 軽く嘆息する路留に、蘭が応じた。 「やっぱり大変だよね、そんなに急だと特に。 下着とか用意出来てる?」 「まあ、なんとかなってるよ」 「困ってるなら言いなさいよ。 可愛いのでもスポーティーのでも勝負下着でも、 何カップのでも買える様に用意するから」 「アハハ、鈴木君は頼りになるね。ところで………」 (い゛っ………) すっと足を動かし、 一旦真正面からコナンを見下ろす路留にコナンがたじろいだ。 そして、コナンの真ん前で片膝空気椅子とでも言うべき体勢になって すっと目を細める路留を前に、コナンの後ろ足がずずずと後退し つつつーっと汗の伝う顔はつつーっと横を向いていた。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/21
22: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/11(木) 03:00:03.59 ID:bhK3+YVq0 「マイクロフトだったかな、毛利君の想い人は?」 「ミチルくんっ!」 「ボク、新一兄ちゃんの親戚だからー」 「ほおー」 つ、つ、つ、と顔の向きを正面に戻したコナンは、 にっこり笑う澄んだ瞳を見て、洪水の汗をイメージしていた。 「今の判じ物を即座に理解出来るんだ。 それなら流石、彼の血筋と言った所だね。 お子様に口が軽かったのは毛利君と言う事かな?」 「もうぅーっ、この子は江戸川コナン君、 新一のお母さんの親戚で、今は私の家で預かってるの」 「江戸川コナンです」 「ふぅーん、随分可愛い声だね。 僕は初士路留、工藤新一君とも、まあ、顔見知りなのかな」 (ああー、知ってるよ) コナンは心の中で毒づいていた。 「そうか、工藤君の親戚か。 このちびっこで見事な切り返し。と、すると」 立ち上がった路留は、コナンに背を向けてちょっと上を向く。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/22
23: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/11(木) 03:02:07.73 ID:bhK3+YVq0 「君の正体は、さしずめ謎の秘密結社に改造手術を受けて小さくなった 平成のシャーロック・ホームズと言った所かな?」 「そうなんだ。ボクの正体は 改造手術を受けて変身能力を身に着けた仮面ヤイバーなんだー。 ワァーッハッハッハッ」 両腕を斜め上に向けて高笑いするコナンの前で 振り返った路留はくくくっと笑い、 年下の男をうまくだましてケッコンしたおばさんやら 名○偵○シンなるキャラクターやらが出没するアニメであれば ぽわーんと大汗が浮かぶ様な微妙な空気が漂う。 「ハハハッ、そっか、仮面ヤイバーか。 それは頼もしい事だね。 仲良しの工藤新一君にもよろしく、リトル・ホームズ」 からから笑った路留が腰を屈めて右手を差し出し、 コナンがそれを握ってからちょっとその場を離れる。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/23
24: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/11(木) 03:04:28.40 ID:bhK3+YVq0 「………灰原」 「言っておくけどブスとか鴆毒とか ソクラテスニンジンとかの処方はやってないから スコップでも枕でも自分で用意してちょうだい」 「ああ、俺は旅に出る。探さないでくれ」 「大丈夫よ、あの子達にはちゃんと説明しておいてあげるから 新キャライケメングラマーお姉ちゃんに迫られて 蘭姉ちゃんの眼前で見せた江戸川君の勇姿をmovieで見せたら 説得力十分でしょう。まあ、仮面ヤイバーを 無断独占した事に就いては追及必至でしょうけど」 「フサエブランド新作」 「オーケー。本当にどうしたのよ? らしくないわね。 何か余計なものに目を奪われて思考を狂わされたのかしら?」 「バーロ。言っただろ、あいつは聡いんだ。 君は黒ずくめの男に毒薬を飲まされて体が縮んでしまった工藤新一だろう、 って言い出したって驚かねーよ」 「そこは驚いてよ」 哀の返答を聞きながらコナンは嘆息した。 工藤新一は、初士路留が苦手だった。 路留は体育会系の見た目と実力の一方で相当な読書家で、 毛利蘭と工藤新一がそれぞれ得意分野で一目置く程に観と勘に優れている。 友達の友達として時々顔を合わせていた工藤新一から見て、 深く付き合えば面白い友人になりそうな魅力的な人物である事は否定しなくとも、 当面の所は、工藤新一流のキザをふわりと交わされる 苦手が先に立つ、そんな相手だった。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/24
25: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/11(木) 03:07:25.49 ID:bhK3+YVq0 「お疲れ様」 目の前の哀が目を見張った、と、思った時には、 コナンはほぼ真横から頬の触れ合いそうな距離で路留の声を聞いていた。 思わず「ひっ」と声を出して 後退しようとしたコナンの背中がぼんっと跳ね返される。 「可愛いお子様、って言うのも大変だね」 それだけ言ってコナンの後ろで立ち上がった路留は、 ひらひら手を振ってその場を離れる。 「あれれー、気に入られちゃったかなー」 それを見て、腰を抜かしていたコナンに声を掛けて来たのは園子だった。 「あの子、あれで苦労人だからねー。 ガキンチョみたいにみょーに賢い子見ると、気になっちゃうのかなー」 (知ってるよ) ============================== 今回はここまでです>>14-1000 なんか、この時点で既に世良ママと釣り好きの社長の合わせ技みたいな オリキャラさんの登場になりました 続きは折を見て。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/25
26: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/14(日) 02:00:41.16 ID:5h8GnX5I0 それでは今回の投下、入ります。 ============================== >>25 ーーーーーーーー 「ちょっと待って、忘れ物」 一度は住民センターから応援会場に移動しようとしていた 初士路留が方向を変えてセンターの中に移動し、 コナン達もその後をついて移動していた。 路留はちょっとロビーを見回し、通路がある方向へすたすたと移動すると、 自動販売機で買い物を始める。 ミネラルウォーターを購入した路留の周囲に 他の面々と一緒になんとなく付き合っていたコナンだったが、 集団の中で何人かが怪訝な顔をし、 それ以外の者はぴりっと鋭い雰囲気に包まれた。 「蘭姉ちゃん、おじさんに報せてっ!」 「分かった」 まず世良真純が先頭に立って階段を駆け上がり、 蘭に向けて叫んだコナンがその後に続いた。 ーーーーーーーー 「なんだ、仕事中………」 住民センター一階事務室の応接セットで、 スマホの電話を受けた小五郎が応答する。 「ん? ああ、分かった。危ない事するんじゃねぇぞ」 電話を切った小五郎が目の前の職員を見る。 「今、この建物で花火等を使う予定はありましたか?」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/26
27: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/14(日) 02:03:04.31 ID:5h8GnX5I0 ーーーーーーーー 「ねえ、ここ応援生徒の控室があるんだよねっ?」 立て続けの乾いた爆発音を追って二階に上ったコナンが、 並走する路留に尋ねた。 「そうだよ、実行委員会で僕らのために 二階と三階の部屋を借りてくれてるんだ」 世良を先頭にコナン達が到着したのは、 階段もある二階エレベーターホールだった。 (悲鳴!?) それは、ここにいる全員に聞こえたであろう明らかな悲鳴。 女性の悲鳴、それも、些か場慣れしたコナンにも 強烈な負の感情が伝わって来ていた。 ダッ、と、駆け出した路留がエレベーターホールを出る。 そこから左右に廊下が展開している。 路留は、すっ、と息を吸った。 「何かありましたかっ!?」 (右側!!) 路留が叫び、耳を澄ませたコナンは言葉にならない声を察知する。 「もしもし、大丈夫ですかっ!?」 部屋に見当を付けた真純が、 「研修室」のプレートがついたドアをノックする。 「ねえ、ミチル姉ちゃん。本当はここに学校名が張ってあったの?」 「ああ、見ての通りさ………これは、血か?」 ミチルが、すぐそばにある床設置式看板と、そのもう少し先にある、 同じ規格の「港南高等学校」の張り紙がされた看板を見比べて言う。 こちらのドアの前にある看板には、張り紙が無い一方で コナンであれば路留の呟きがその通りだろうと言う事が理解出来る 微かに擦り付けた様な赤黒い痕跡があった。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/27
28: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/14(日) 02:04:50.69 ID:5h8GnX5I0 「やだ、やだ、たす、やだ………」 「踏み込もう!」 「そっちかっ!!」 中からの声を把握したコナンが提案した時に、 職員を連れてエレベーターホールを出た小五郎の声が聞こえた。 「女の人の悲鳴が聞こえた、ここから助けを求めてる」 「今行くっ」 コナンの声に小五郎が応じた。 「センターの者です、何かありましたか? 開けますよ」 職員がもう一度ノックをしてドアノブを回した。 ーーーーーーーー 控室として使われている研修室に踏み込み、一同は足を止める。 一同の前では、研修用に長机が並ぶスペースと出入り口との間に 少女が一人座り込んでいた。 ここにいた職員の視覚情報からの第一情報を述べるならば、 それは長い黒髪の高校生ぐらいの少女で、 一見して制服らしい白いブラウスに臙脂のタイ、紺色のスカートの服装で 両手で顔を覆い座り込んでいる、と言う状態だった。 園子が目を見開き、何か言おうとするが言葉が出ない。 (何だ、この臭い? 爆竹と………焼肉?) 「傷を確認してっ!」 さっと目で現場を確認するコナンの側で、 叩き付ける様に叫んだのは灰原哀だった。 少女の手首から伝い落ちる赤い液体が、 白いブラウスに見る見る面積を広げている。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/28
29: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/14(日) 02:06:28.35 ID:5h8GnX5I0 「おっし、落ち着け、大丈夫だ」 「呼吸を整えて、張り付いてるなら無理に動かさないでいいから、 動くならゆっくり手を動かして」 少女に駆け寄り、汚れていない二の腕や鎖骨を取りながら 声を掛けたのは小五郎と真純だった。 「これ、誰かにやられたのか?」 「分から、ない」 少女の手がゆっくり顔を離れ、小五郎の問いに少女は震える声で返す。 「おい、救急車と警察だ、刃物で顔を切られてる」 小五郎の声に、蘭と園子が震え上がり路留が息を飲む。 「ちょっとだけ待って。 目に傷があるのか無いのか、それだけでも押さえて」 努めて抑えた口調で尋ねたのは哀だった。 「これ、動いたら頷いてね。うん。目に傷は見えない。 両方の頬骨周辺に横向きの切り傷、まず刃物だね。 気休めかも知れないけど、傷は軽いとは言えないけど 深さや大きさはそれほどでもなさそうで傷口は綺麗だ。 どちらにしても、通報は急いだ方がいい」 指を振った真純が言い、小五郎の首の動きを見て職員が壁の内線電話を取る。 「救急箱、綺麗なハンカチやタオルをあるだけ、 それから水、出来れば封切り前のミネラルウォーターを用意して」 「それから手袋、ゴムかビニールの使い捨て、 無ければビニール袋をまとまった量で」 真純と哀が口々に告げる中で職員が電話のボタンを押す。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/29
30: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/14(日) 02:07:42.56 ID:5h8GnX5I0 「もしもし、……です、こちらに刃物で顔を切られた女性がいます。 消防と警察に連絡を、それから………」 「蘭君、119番に電話を、まず救急車と警察への連絡をオーダーして。 指令台がパンクしない程度なら情報伝達は複数でも確実な方がいい。 園子君は部屋の撮影を頼めるかな。 踏み込んでしまった場所からなるべく動かない様になるべく満遍なく」 「うん」 「分かった」 真純の言葉に蘭と園子もスマホを取り出す。 その側で、路留もどこかに電話をしていた。 「ちょっと待ってろよ、俺からも110番で念押しするからよ。 どの系統にも直結してる本部の通信指令が一番確実なんだ」 小五郎が、震える少女に声を掛けながらスマホを取り出す。 「おじさん」 「なんだぁ?」 「おじさんの携帯の通話記録、 蘭姉ちゃん、爆竹が鳴ってすぐにおじさんに電話してるから」 「分かった、報せておく」 爆竹の残骸に視線を向けたコナンの言葉に小五郎が応じてスマホをタップする。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/30
31: 探竜唱 ◆2k5pFFm6nI [saga] 2021/11/14(日) 02:09:02.73 ID:5h8GnX5I0 ーーーーーーーー 「どう? 動ける?」 「ちょっとうるさい、うん、大丈夫」 「分かった」 当たり前だがしんどそうな被害者の様子を確認すると、 真純は近くの長机をスマホで念入りに撮影する。 「毛利さん、これ使いたい。念のためじっくり撮影してくれますか?」 「分かった」 小五郎の撮影を受けながら、真純は長机からパイプ椅子を動かして 被害者のいる入口近くの空きスペースに移動する。 コナンとしては、部屋前方に当たる長机の上の 奇妙な物体が気になって仕方が無いのだが、まだ触れる訳にはいかない。 「大丈夫? 大丈夫、な訳ないけど、座れる?」 真純が促し、少女は椅子に掛ける。 「ちょっといいかな、目を閉じて、 手を付ける前に傷や出血の手つかずの状態を証拠保全しておきたい。 撮影するよ、ちょっと顔を上げて」 俯いていた少女が、それでも首を小さく縦に振る。 「ありがとう」 真純が言い、撮影行為を行う。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1636540148/31
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