なりきりリレー小説スレッド (152レス)
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107: 希望へと歩み寄るモノ◆r7Y88Tobf2 2016/09/06(火)21:52 ID:p8T3DASU(39/41) AAS
「では、今言った通りこの場所を拠点にして大きなチームを作りますわよ。
 放送は確か12時でしたわね…その放送を聴いたら、二人一組のペアで同志の捜索に当たりますわ。
 そしてもう一組はこの場で待機し、安全を確保……よろしいですわね?」
「はいっ!」
「おう!」
「了解っ!」

確認を込めた美弥子の指揮に全員が頷き、方針が確定する。
現在の時間は9時頃。定期放送の12時までには約3時間の余裕があり、休憩を摂るには十分な時間だろう。
ペアは例の如く天子とルーシー、アキレスと美弥子の二人一組だ。尤もこれは、天子達の希望によるものだが。
省54
108: 音楽のおくりもの◆r7Y88Tobf2 2016/09/10(土)23:59 ID:p8T3DASU(40/41) AAS
「……僕が、あの人を死なせたのか……?」

頭を抱え苦悶の表情を浮かべる少年、桐生真雄は静かに会場での出来事を思い返していた。
このバトルロワイヤルの元凶であるアジ、そしてアリスの目の前に立ち反抗を決意した自分。
だがその直後、まるで自分らに見せつけるかのように名も知らぬ女性の首輪が爆発される事になってしまった。
その原因の一端は間違いなく自分であり、結果その惨劇を目の前で見せられ嫌でも思い知らされてしまったのだ。
人が死ぬ光景を、それも自分の目の前で見てしまったのだ。忘れられるわけなどないだろう。

「…………」

首筋の枷にそっと触れる。
指先に伝わるのはひやりとした無機質な感触で、今自分の命が風前の灯だという事を実感させられる。
思わず頭部を失ったヘレネの遺体を思い出し――込み上げられる胃液が喉を焼いた。
省22
109: 音楽のおくりもの◆r7Y88Tobf2 2016/09/11(日)00:00 ID:p8T3DASU(41/41) AAS
(……これがあれば、僕の能力も使える……!)

桐生真雄の能力、それは音に意思を乗せるというものである。
意思の乗せられた音を聞いた物はそれを受け取り、例えば「切る」意思を持った紙ならば刃物のような切れ味を持つ。
普段は音楽プレーヤーから流れる音を使用していたが、音ならばそれに限った話ではない。
無論自分が演奏しなければいけないというデメリットはあるものの、無手よりは遥かに心強い。
試しにポロン、と音を鳴らしてみる。澄み渡った音色からは余程の高級品であることが伝わった。

なんにせよこれは重要なキーアイテムだ。
丁寧に手元に置き、再びデイパックを漁り出す。
と、真雄の指先に触れたのは、一冊の分厚い植物図鑑と赤色のマントだった。
省48
110: 2016/09/14(水)15:40 ID:M4/OMZk2(7/17) AAS
【???/1日目 午前】

彼の者は何時だって突然であった。不意に目の前を埋め尽くす絶望の、その色は白い。
白は何色にでも染まるなんて、そんな話は嘘だ。目が眩む程の絶対の純白は遍くモノを呑み、他色の存在など一片たりとて許さないだろう。
純粋故の無垢、無垢故に孕む狂気は誰に理解される事もない。否、理解する事など出来はしないだろう。無垢なる純白に生物は耐えられやしないのだから。
それに比べ純黒のなんと心地の良いことか。何も見えぬ黒の中、何も見る必要の無い漆黒の闇は正しく己のみを見つめる事が出来る。
他を閉ざし自己のみに耽る。臆病の色。さりとて生物は闇を恐れ本質的には求めている。無間の安心感が約束されたその色を。

「……ぼちぼち動き始めたみたいだな。早速おっ始める奴らにチームを組む奴ら……くくくっ、劣等共が無い知恵絞ってるサマは滑稽じゃねぇか」

純白の部屋に備え付けられた大型モニター。それを眺めほくそ笑むのは純白のドレスを身に纏う女性、龍の眷属アジ=ダハーカだ。
モニターに表示されるのは周辺地域の地図と、そこに点在する赤い印は参加者たちを縛る枷が機能している証。
つまりモニター上から赤い印がひとつ消えた時、ひとつの命がこの狂気めいたゲームの犠牲となったという事を意味している。
省24
111: 2016/09/14(水)15:41 ID:M4/OMZk2(8/17) AAS
「バカかてめぇは!? 私らが直接ゲームに干渉するなんて、バトルロワイヤルの根本からぶっ壊すようなもんじゃねえか!
あいつらの、私ら主催に対する不信感と敵対心を煽るだけだ! 結束されるのが一番面白くねえのはてめぇもわかってんだろ!?」

アジは激昂する。当然だろう、理不尽なゲームに理不尽に参加させられ、あまつさえそのルールすら運営者側の匙加減によって捻じ曲げてしまおうというのだ。
アジの主張はマトモであり至極正論である。目的が何であろうと、バトルロワイヤルという体でこの様な催しを開催しているのだ。アリスにとってはどうなのかわからないが、アジに限れば遂行の綻びとなるものは看過できるものではない。
参加者ひとりひとりの力でみれば自分に及ぶべくも無いとの確信はあるが、その力が個から群となれば話は別だ。如何に劣等と断ずれども、彼らは無力なる烏合の衆ではないのだから。

「それが何か問題かしら? ふふ、アジさん。貴女の目的はこのゲームを運営するコト?
違うでしょう? ええ、きっと違うわ。だって貴女の瞳はずっと遠くを視ているもの。
だめよだめ。いけないわ、手段にとらわれては。本当に大事なものが視えなくなってしまうから。
それに、さっき言ったでしょう? お互い好きにしましょうって。そんなに怖がっていてはらしくないわ、アジさん。
ふふふ……いいわ。それでも私を止めるのならば……いいのよいいのよ、それでもいいのよ。怖がりさんには『枷』をつけてあげても。
省11
112: 2016/09/14(水)15:42 ID:M4/OMZk2(9/17) AAS
【映画館/1日目 午前】

「先程の映画、二時間半程であったか。既に何処かしらで戦闘が行われていると見るべきであろう。
つまり我々は後発組、より一層の慎重さが求められる事となる。あまり軽はずみな行動は控える様」
「お前のせいでな! ……ったく、おっさんと呑気に映画なんて観てる場合じゃないってのに……ルーシー……」

映画館を後にするふたり。陽光に照らされた木山鏡子は瞼を細めながら友人の名を呟く。
かつて己が命を賭しても彼女と、彼女の世界を護りたいと思った。そしてそれはこの場においても変わらない。
一度死んだ身、それがどうして再び肉体を持ってこの場に現界しているのか確かなことはわからないが、恐らくはあのアリスの力によるものだろう。以前もそうであった様に。
木山鏡子。彼女は自由世界と言われるリベルタスにおいて一度死んでいる。最初に蘇った時はアリスの強力な力により魂が現世に縛り付けられた為だ。そして今回、二度目の復活に鏡子は自分でも驚くくらい冷静であった。
それは自分の為すべき事がわかっているからだ。最初に蘇った時と何も変わらない。大切なモノを護る――自分の存在理由はそれだけでいい。かつてそうした様に、またここでもアリスを斃しそれを為す。

「いつだって護ってやるさ……だから私が見つけるまで、死ぬなよルーシー」
省13
113: 2016/09/14(水)15:43 ID:M4/OMZk2(10/17) AAS
「……? 鏡子、待て。何か来る」

歩みを止めるルーラー。鏡子を制する様に口を開く。その視線の先には僅かな、しかし確かな空間の歪みが確認できる。そしてそれは加速度的に大きくなって。

「……っ!! 知っている……! 私はアレを見た事があるっ……!! 忘れもしない……忘れられるもんか……!!」

絶望。それは人の未来を奪うモノ。望むモノを、見ていた光を包み隠し見えなくするモノ。
それは何時だって突然だ。突然に現れて人の明日を奪う。それを前にある者は首を垂れある者は背を向けて、そしてある者は喰われてしまう。
しかし人は知っているのだ。知っていたのだ。ただ自分の目指す光が眩しすぎて、何時だって側にある絶望に気付かないだけなのだ。気付かないフリをしているだけなのだ。
だからそれに直面した時、人は何も見えなくなってしまう。そして人は怒る。その理不尽さに。そして人は泣く。その無慈悲さに。
ぽっかりと口を開けて待つそれに立ち向かう事が出来るのは極僅か、一部の人間だけだ。既に絶望を知り、抗う術とその力を持った戦士だけ。

「――アリスッッ!!!」
省22
114: 2016/09/14(水)15:44 ID:M4/OMZk2(11/17) AAS
「……なんだ? お前アリスを前にして怖気付いたってのか? チッ、ならいい! 臆病者は去れ! 私ひとりでやってやる――」
「そうではない。思い出せ、我らの頸に付けられたこの枷を。これがある限り、我々は奴に勝つ事はできない。
どれだけ優勢に立とうとも、奴の操作ひとつで我々の命は終わってしまうのだからな。
故に一先ずは、この場は冷静になれ。機を待つのだ。我らの決戦は此処ではない」
「くっ……! くそ……!!」

ルーラーの言葉にハッとする鏡子。苦虫を噛み締めた様な表情を浮かべ地面を殴る。激情に任せて首輪の存在を完全に失念していた鏡子は、最初に見せられた首輪が作動した光景――ヘレネの死に様を思い出すと悔しそうにアリスを睨み付けた。

(……しかしどうする? 一先ず退却すると言ってもこの怪物が相手。そう易々と逃がしてくれる訳もない。
奴がこの我々の前に現れた理由はなんだ? 主催である奴らが直接我々に手を下すなどは考えにくい。何か別の目的がある筈)

ルーラーは鏡子とは対照的に冷静であった。退却する方法、アリスの目的。この場における最善策を模索する。その才は死して英霊となって尚健在である。

「……アリス、と云ったな。貴様の目的は何だ? 何故この様な不躾な理不尽を一方的に課し、更には何故我々の眼前に現れた?
省10
115: 2016/09/14(水)15:45 ID:M4/OMZk2(12/17) AAS
『……自分でも笑ってしまうけれど、私は求めているのよ。だから貴方たちにも、可能性をあげるわ。その為にわざわざ貴方たちの前まで出向いてきたんですもの』

す、とアリスが手を翳す。その直後、鏡子とルーラーの頸に存在した違和感が消えた。ふたりを縛る枷が外されたのだ。
想像し得る事象を遥かに超えた、しかし紛れもない現実。ありえない現状を受け止め、理解するためにふたりは言葉を失った。
それを見てアリスは嗤うのだ。淑女の様に慎ましく、少女の様に無邪気に。

『ふふふ、それで戦えるのでしょう? なら思う存分見せて? 貴方たちが護ろうとしているモノを。貴方たちが希望と呼ぶモノを。
果たしてそれらがこの私の前で真実であり得るのか。可能性として存在できるモノなのかどうか。
このアリスの――三千世界の高みに至り、生まれ出でしその瞬間より未来永劫を過去とした万物の霊長――至高のアリスの眼の前で!!!』

瞬間。世界が反転する。否、視覚的には何も変わってはいない。ただそう感じてしまう程の絶対的な力の奔流がアリスという少女の体内に渦巻いているのがわかる。
それはアリスの周囲の空間を歪ませる程に濃密で、等しく命を持つモノとして疑いを持つ程に禍々しく、そして畏れと憧憬を感じる程に神々しくもあり。

――これが至高《アリス》
省10
116: 2016/09/14(水)15:46 ID:M4/OMZk2(13/17) AAS
『少しは期待したけれど、やっぱりこんなものでしょうね』

何が起きた? 短時間だが意識を失っていたのだろうか。アリスの声が耳に届けばルーラーは地に伏した自身の身体をニーズヘグを支えに起き上がらせる。
状況を確認すれば衣服が所々損傷している。そして顔に手を当ててみれば仮面が無い。どうやら破壊されてしまったらしい。眉間を伝う温かいモノは額が割れたのだろう。

「何を……貴様、何をした?」
『ふふ、それすらもわからなかったのかしら? 少しだけ力を放出しただけ。殺すつもりでやった訳ではないけれど、貴方は軽傷で済んだみたい』

恐らく魔術に対する抵抗がルーラーを軽微なダメージで済ませたのだろう。それでもアリスの扱う膨大な魔力は人間が使用する魔術とは根本から違うものであり、アリスにとって簡易的な魔力放出でも無力化には至っていない。
鏡子は、とルーラーが視線を動かしたその先。彼女は地に伏しぴくりとも動かない。呼びかけても返事がないことから完全に気を失っているか、あるいは――。

『仮面で疵でも隠しているのかと思っていたけれど、そういう事でもなかったようね? お髭がダンディズムで、ふふ……まるでどこかの世界の独裁者みたい』
「……貴様の想像通り、そのどこかの世界の独裁者が私だ。真名をアドルフ・ヒトラーと云う。まさか異世界の人ならざる者にまで知られているのは流石に驚愕であるがね」
『まぁ貴方が誰であろうと私にとってはどうでもいいのだけれど。ではどうしましょうか、アドルフさん。潔く諦めますか? 元より人間が私に立ち向かうなんてやっぱり無理だったのよ。自刃するなら止めはしないわ』
省13
117: 2016/09/14(水)15:47 ID:M4/OMZk2(14/17) AAS
ジーク・ハイルの大号令と共に火を吹く銃火器、雨の様に降り注ぐ爆弾、出鱈目な程に巨大な砲弾を吐き出す砲門。独逸第三帝国が、人類史が誇る暴力が業火となりてアリスを包み込む。
凡そ一個の生命体を殺すには過ぎた火力、それはルーラー自身も理解している。決して狂奔した訳ではない、力に溺れそれを振り翳し嗤う男でもない。
判断したのだ、此処で為さねばならぬと。決戦なのだ、人類史の存続を願う。人の未来は人によってのみ選び取られなければならない。人でない彼の者にそれが為されるなど、人類を渡す訳にはいかないのだから。

「……惜しむらくは。私と、我が独逸が未だ存命であったのならば、必ずや貴様のその力を解析し人類の力とする事が出来たのだが……それは最早叶わぬ夢。フフフ、フハハハハハハハハハハ!!」

ルーラーは嗤う。英霊となりて尚人として夢を想う自分に対して。人をやめて尚人類史の糧となる物を求める独裁者に対して。
ルーラーの嗤い声がベルリンの空に木霊する頃、アリスを包み、その全てを食らいつくさんとしていた炎は不自然に消失していた。その残火すら一片と残さずに。

『人の飽く無き欲求、飽く無き欲望。それが生み出すものを人の叡智と呼ぶのなら、やはり人間は愚かと言わざるを得ないわ。
でも、そうね。持たざる者が憧れ、欲するのは当然のことなのかしら? 全てを持つ私には理解できないけれど。
ふふ、理解できないものを愚かと片付けてしまうのは、私の思考も些か貧弱かしら?』

ルーラーの耳に届いたアリスの言の葉は眼下からではない。ルーラーの足場、宙に浮かぶ戦艦を更に見下ろす様にアリスは浮遊していたのだ。
省15
118: 2016/09/14(水)15:48 ID:M4/OMZk2(15/17) AAS
「勝手に諦めてんじゃねぇーーーーーーッ!!!」

声の主は木山鏡子。恐らく戦闘の轟音で目を覚ましたのだろう。地に伏すルーラーとアリスとの間に割り入る様に近接した鏡子はアリスにアナザームーンを振り下ろす。
不意打ちではあったもののアリスは後方へと跳び難なくこれを回避、そして息を荒げる鏡子をその金眼が見やる。

『あら、鏡子さん生きてらしたのね。相変わらず諦めが悪いわ。ひとりで出てきたって何もできない事はわかっているでしょう――』
「黙れ! できるできないじゃない……! お前に言ったってわからないだろうが、やらなきゃならないんだ! お前を殺すまで私は何度だって立ち塞がってやる!
――おいルーラー! お前自分の仲間が諦めてねーのに何でお前が諦めてんだ!? しっかりしやがれ!」
「……仲間……だと……?」

ルーラーは鏡子の言葉に重い半身を擡げれば、己の視界に映るそれに眼を疑った。燃え盛る炎の中ひとつ、またひとつと立ち上がる人影を見れば己が頬を伝うものを止める事など出来はしない。
親衛隊、独逸国防軍――最期は散り散りになってしまったが、確かに彼らとは同じ夢を見ていた。独逸の、ひいては人類の為と同じ希望を抱いていた同胞たちであり――仲間であった。

「おお……オオオオ……! 最早枯れたものだと思っていたが、これ程人間として諸君らと戦えた事を嬉しく思った事はない……!
省17
119: 2016/09/14(水)15:48 ID:M4/OMZk2(16/17) AAS
鏡子の咆哮――刹那、それと同時に『神殺しの神槍ロンギヌス』と化したアナザームーンを構え、持てる力の全てを振り絞りアリスへ向かって投擲する。
よく見ればロンギヌスを形作る光は曖昧であり、リベルタスで起きた奇蹟の時のように完全な状態で現界されていない事がわかる。
恐らくは依代となる人の願いの力、その規模が足りていない、小さ過ぎるのだ。しかしそれでも鏡子はこの一擲を躊躇することはない。死に体ながらも立ち上がった英霊たちの意思を無駄にはできない。
打ち出される様に投げられたロンギヌスは爆発的な速度で以ってアリスへと迫る。アリスは上方へと跳躍する事でそれを回避しようとするも、美しい光の尾を引きながらロンギヌスは何処までもアリスを追尾し、遂に穿つ。
上空で炸裂する光は超新星爆発の如く眩く世界を白く染め上げる。やがてその光が霧散すれば世界は色を取り戻す。在るべき世界、その光景も。

「最早見事と云う他にあるまい……どちらもな」
「ウソだろ……!? 悪い、あんたらの力無駄にしちまったよ……バケモノめっ!」

上空より落下したアナザームーンは在るべき姿を取り戻し大地に突き刺さる。そしてその直上にはアリスが未だ圧倒的な存在感を示しふたりを見下ろしていた。
どうやら先の一撃を左手で受け止めたのだろう。ドレスの左袖だけがボロボロに吹き飛び、掌からは赤い血液が滴っている。
やはり足りなかったのだ。アリスを斃す為にはもっと莫大な力がいるということだ。それこそ人知を超越した、奇蹟の様な力が。
省14
120: その先に見るものは 2016/09/14(水)15:54 ID:M4/OMZk2(17/17) AAS
【映画館/館内シアター 午前】
【木山鏡子@旧俺能】
[状態]:疲労(大) 火傷(小) 打撲(小)
[装備]:『アナザームーン』@境界線
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ルーラーと共闘する。出会った奴は話せそうなやつとは話す。話せないやつは倒す。
ライダーは倒せるようなら倒す。
1.アリス……必ずもう一度斃倒す! でもその前に少しだけ休憩だ。
2.ルーシー……必ず護るから。
省38
121: 【最善への希求】◆r7Y88Tobf2 2016/09/15(木)03:52 ID:QYZ6qcAA(1/15) AAS
歩き続けて約一時間ほど、イムカ達一行は無事病院地点へとたどり着いた。
ニアの体力を考慮し途中休憩を挟みながらであったため予定よりも遅れてしまったが、敵に遭遇しなかったのは僥倖と言えよう。
前方に病院が浮かび上がった辺りで、イムカはふと立ち止まり二人の進行を制した。

「待て二人共、私が先にあの病院に危険がないか見てこよう」
「えぇっ!?……ひ、一人じゃおっかねぇってんですよぉっ…?」
「同意。我々は今や一つの団、独りでの行動は身を滅ぼします。
 指揮を執る者が倒れたら崩壊を招く。それは、宗教においても変わりはないのです」

イムカの突然の提案にニアは勿論、今まで押し黙っていたアルトリアでさえも反対の意を述べる。
ニアの反対は予測できていたもののアルトリアまでも彼女に同意するとは予想外だった。
しかし予定は狂わせない。三人で足並み揃えて地雷原に突入するほど、イムカは愚か者ではないのだ。
省18
122: 【最善への希求】◆r7Y88Tobf2 2016/09/15(木)03:53 ID:QYZ6qcAA(2/15) AAS
「…………」

気配を一切遮断し、慎重に病院へと歩き進めてゆくイムカ・グリムナー。
流石軍のエキスパートといったところか、その姿は見惚れる程に美しくそして様になっている。
もしも場所が場所でなければナンパの一つや二つは起きていたであろうそれも、この場では意味を成さない。
やがて病院の前へと辿り着き、イムカは僅かに安堵の表情を浮かべ再三周囲へ警戒を促した。

――そして、イムカははっきりと”捉えて”しまった。

「…ッ……!」

自分以外の何者かの気配。いや、それは気配というにはあまりに禍々しく微弱なもの。
イムカが知っている言葉で表すのならば最も当て嵌るのは殺気。どちらにせよ、いい感情ではない事は確かだ。
省23
123: 【最善への希求】◆r7Y88Tobf2 2016/09/15(木)03:55 ID:QYZ6qcAA(3/15) AAS
零の周囲の影が濃くなる。釣られて上を向けば、そこには猛スピードで落下する巨大な病院の看板の姿が。
初めて零に喫驚の表情が刻まれるがそれも一瞬。咄嗟に振り抜いた長剣で看板を両断し難を逃れる。
それは1秒にも満たぬ時間の出来事だった。――逆を言えば、1秒の隙が出来たという事。

「イヤーッ!!」
「ぐっ…!」

肉薄したイムカの強力な脚撃は零の肉体を容易く吹き飛ばし、体勢を大きく崩させる。
反撃せんと零も長剣を振るうが、この距離ではイムカの方が断然速い。
振るわれたボディブローは勢いよく鳩尾に叩き込まれ、零は空気を吐き出しゆっくりと膝を着いた。

「ど、うし…て……」
「先程の看板か?……簡単な事だ、あの出鱈目な弾道は君を狙ったものじゃない。看板の留め具を狙ったものだ。
省27
124: 【最善への希求】◆r7Y88Tobf2 2016/09/15(木)03:56 ID:QYZ6qcAA(4/15) AAS
「……! 危ない、ニア――ッ!」
「へっ……?」

瞬間、零の背後から無数の雪玉が展開されニアへと降り注ぐ。
当然ながらニアにそれを対処する術はない。呆けた表情を浮かべる彼女の前へイムカが咄嗟に躍り出た。

「ぁっ…!…づ……っ!」
「い、イムカぁぁっ!?」

右腕で己の顔を覆い盾としたものの、その雪玉はイムカの右腕を瞬く間に凍てつかせてしまう。
全身に伝わる極寒の感触と痛みに気を失いかけるも、ニアの絶叫が鼓膜を叩きイムカの意識を覚醒させる。
ぼやける視界に映し出されたのは、体勢を立て直した零が自身の長剣を手にしている光景だった。

「ニア、アルトリアっ!ここは一旦引くぞっ!!」
省37
125: 【最善への希求】◆r7Y88Tobf2 2016/09/15(木)03:57 ID:QYZ6qcAA(5/15) AAS
「……か、…ひゅっ…」
「イムカあぁぁっ!!」

ニアの悲痛な絶叫を何処か遠くに感じながら、イムカは腹部にじわりと滲む痛みに意識を遠のかせてゆく。
崩れ落ちるイムカの肉体を見下ろし、アルトリアは一切感情の灯らない様子で淡々と血濡れのダインスレイヴを引き抜いた。

「猛省。私は甚大な勘違いをしていました」

常闇の双眸が泳ぐ。
涙を溜めイムカの体を抱き寄せるニアへ、非情なる”法王”の視線が注がれる。

「浄化。そう、浄化こそが我が使命。貴公らの様相を目にして確信しました。
 私が此処に呼び寄せられた理由はただ一つ。穢れを浄化せよという神からの導きなのです」
省14
126: 【最善への希求】◆r7Y88Tobf2 2016/09/15(木)03:58 ID:QYZ6qcAA(6/15) AAS
「なっ……」

アルトリアの凶刃はニアへ到達する事なく、逆にアルトリア自身が仰向けに倒れ伏す形となっていた。
僅かに揺らぐアルトリアの視界に浮かび上がるのは、本来ならば立っているはずのない存在だ。
金色の髪を清風に靡かせて、紫色の双眸を逆光に負けず輝かせるその人物は――

「イ、ムカ……?」

将校イムカ・グリムナーは、ニアの頭に手を置き応える。
髪を梳かすように優しく丁寧に撫でるその様子はまるで、我が子を愛でる母親のように暖かなものだった。

「逃げろ、ニア……出来るだけ、遠く…へ……」
「いや、嫌ですよぉっ!ニアが居なくなったら、イムカは本当にぃっ……!」
省17
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