[過去ログ] 【あかほん・濱中】氏家ト全 31時間目【妹・生徒会】 (658レス)
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514: ◆ZAtwiNsO4g 2011/04/25(月)00:40 ID:5hzQ+Edh(1/14) AAS
>>509 乙です〜。

お久しぶりでございます。しばらく冬眠してました。
起きたら役員共の新刊とアニメが出てました。見てたらまた妄想が湧いてきました。とっても嬉しいです。
書けちゃったんで投下します。
スズ×タカトシです。
タイトル:そして、二人
以下、諸注意と言うか、内容に関する雑記。嫌な予感したらNG推奨。

・大体40改行×12レスの予定。
・キャラ違いは二次創作の華。
・エロが書けるシチュエーションは思いつかなかった。ごめんなさい。
省4
515: ◆ZAtwiNsO4g 2011/04/25(月)00:41 ID:5hzQ+Edh(2/14) AAS
恋仲でも血縁でもない男女二人っきりのシチュエーションが発生する原因は、実はあまり多くない。
特別に友情を育んだ仲でない限り、二人になる必然性が薄いからだ。
或いは仕事の残業仲間。或いはたまたま同じ帰り道。或いは町中での出会い。
常に「偶然」と言う言葉が付き纏うだろう。
しかし数少ない必然による二人っきりのシチュエーションも、ない訳では無い。
例えば……先輩二人が卒業してしまい、役員が二人だけになった生徒会。

  *

十一月も下旬となると、風に冬の匂いが交じり始める。
茶色く枯れた木の葉が宙を舞う校庭を見下ろす津田タカトシは、身を震わせながら生徒会室の片隅に鎮座する石油ファンヒーターに電源を入れ、その正面にしゃがみ込んだ。
職員室からのお下がりが一番に回ってくるのは、生徒会の特権か、或いは生徒会顧問の横島ナルコの横暴か策略か。人望でない事は分かるのだが。
省20
516: ◆ZAtwiNsO4g 2011/04/25(月)00:42 ID:5hzQ+Edh(3/14) AAS
萩村と津田の一つ下の学年、一年生には生徒会役員はいない。
来年の一年生は生徒会に入るだろうか。或いは、今の一年生の中にも、来年は生徒会役員を志すものが現れるかもしれない。
だが、もし現れなかったら?

「会長も、一応オレ達の事考えてくれてるのかな」

未だにストーブで身体を温めている津田は、振り返った先にある長机に置かれた紙束を見てそう言った。
「来年に備えて出来るだけ早く片付けられるように練習しろ」と書かれたメモが、紙束の脇に添えられている。

「会長、締める所はちゃんと締めてるからね」

萩村は言ってから、頭の中で天草が「あぁ、締めてるぞ、下の口とか」と得意げに言い放ち、隣で七条が「私も縄を締めてるわ」と微笑んでいる想像がわき起こったのを全力で否定した。
傍らで頭を振り回す萩村を怪訝な目で見た後、津田はようやく立ち上がって自らの定位置に座り、紙束に手を伸ばす。
省18
517: ◆ZAtwiNsO4g 2011/04/25(月)00:43 ID:5hzQ+Edh(4/14) AAS
どんな顔をしていいのか分からないと言うのが、彼女の本音であった。

「……私は」

一瞬の間。そして、彼女の小さな唇は津田にとっては意外な言葉を吐く。

「このままでも大丈夫だと思う」

あらかじめ用意していた原稿を読み上げるように、感情の起伏なくそう答えた萩村。
頭一つ下にある萩村の頭頂部を、津田は怪訝な顔で見やった。
省23
518: ◆ZAtwiNsO4g 2011/04/25(月)00:44 ID:5hzQ+Edh(5/14) AAS
そして校則の欄を隅から隅まで眺めやって、ようやくその一文を発見して目を剥いた。
恐らく、元々適用される事を前提としていない校則なのだろう。いざと言う時の穴を潰す、形だけの。
再来年の事を考えると、この校則の世話になるかもしれない。津田は赤ペンでアンダーラインを引いた。

「良くこんなの覚えてるな。凄い端っこの方に書いてあるぞ」
「これくらいアンタも覚えておきなさいよ。次期生徒会長なんだから」

萩村の鋭い指摘を受けて、津田は頭を掻きながら手帳を胸ポケットに収めた。
萩村は、生徒会役員の勧誘には消極的……と言うよりは、最早否定的である。
再び理由を尋ねようとする津田に、萩村は先んじて口を開いた。

「生徒会は自らの意志で来る者のみを受け入れる」

今年の春の天草の言葉を、萩村は繰り返した。
省21
519: ◆ZAtwiNsO4g 2011/04/25(月)00:44 ID:5hzQ+Edh(6/14) AAS
まるで、逃げているようだ。
津田の目にそう映ってしまう程、萩村の背中は彼女の焦りを感じさせていた。

「………………」

一人取り残された津田は、再び窓の外に目を向けた。
数人の女生徒が、マフラーに首を埋めながら桜才学園から薄暗い町へと下校していくのが見える。
つい数日前までこの時間は、もう少し日が高かった筈である。随分と日が落ちるのが早くなった。
光陰矢の如し。一日一日が多忙によって、或いはちょっと卑猥で愉快な青春によって、あっという間に過ぎ去っていく。
……来年の今頃は、果たしてこの生徒会室に誰が居るのだろう。
津田は考えてみるが、すぐに思考を切り替える。
……今すべきは、書類整理。これ位はさっさと終わらせて、会長を安心させてやろう。
省25
520: ◆ZAtwiNsO4g 2011/04/25(月)00:45 ID:5hzQ+Edh(7/14) AAS
安心、とは少し違う。だが、胸の奥がじんわりと暖まるような、そんな穏やかな感情が湧いてくるのだ。
ようやく落ち着いてきた心を胸に抱え、萩村は生徒会室の扉を開ける。
その先に居た津田は、真剣な顔でノートにペンを走らせている。
手に握っているのは萩村のペン。そしてノートも同様に、萩村の会計帳。

「津田、なにやってるの?」
「あぁ、おかえり、萩村。ちょっと会計の仕事、やってみたんだけど……」

困ったような苦笑いをしながら、取り上げたノートを開いて萩村に向ける。

「案外時間かかるね、これ。オレには出来ないよ」
「アンタねぇ……」

萩村は呆れたような声を吐くが、内心では少しだけ嬉しい気分でさえあった。
省16
521: ◆ZAtwiNsO4g 2011/04/25(月)00:46 ID:5hzQ+Edh(8/14) AAS
楽しそうだっただろうか、今の自分は。

「私、別にそんなには……」
「でも、元気になったみたいで良かったよ」

津田は優しく微笑みかける。
萩村は少し顔を伏せて、今にも喜色を浮かばせかねない口元を必死に抑えつける。

「最近の萩村、落ち着きがなかったから」
「…………」

津田にも気がつかれていたようだ。
鈍そうなくせに、案外洞察力はあるらしい。
次期会長は伊達じゃないかもしれない、と萩村は素直に感心した。
省16
522: ◆ZAtwiNsO4g 2011/04/25(月)00:47 ID:5hzQ+Edh(9/14) AAS
津田はそんな萩村の次の言葉を、黙って待っていた。

「…………私も不安なんだと思う」

萩村は弱音を吐いた。
常に気を張っている萩村が、肉親でない誰かに自分の弱い面を見せるのは初めてかもしれなかった。
その相手が気心知れた津田である事を、萩村は幸運と考える事にした。

「会長も、七条先輩も居なくなって、私達二人だけで生徒会やっていけるのかなって……」

それは紛れもなく萩村の本心。
しかし、それはたったの一部でしかない。
不安は確かにあるが、不安とは違う何かも紛れもなく……と言うよりも、その不安以外の何かの方が遥かに大きい。
もっと前向きな、肯定的な何か。萩村の頭脳でも把握し切れない、しっくりこない、頭の中のもや。
省14
523: ◆ZAtwiNsO4g 2011/04/25(月)00:47 ID:5hzQ+Edh(10/14) AAS
そして逡巡した後、津田は萩村の目を見つめながら、自分の答えを述べる。

「オレ、驚いたよ。萩村でも、そんな風に悩んだりするんだなって」
「……どう言う意味よ」

身長の事でしょっちゅう悩んでいる筈なのだが、津田はその事は今は無視する事にしたようだ。

「萩村っていっつも自信満々だし、頭も良いし失敗とかも全然ないし。
 三人分働くってのも、萩村なら本当にやるかも知れないなって思ったんだ」
「……………………」
「いいよ、萩村。オレも、生徒会には、それなりにやる気がある人が来てほしい。
 ……オレはそうじゃなかったケドね」

津田の意外な言葉に、萩村は顔を上げる。
省22
524: ◆ZAtwiNsO4g 2011/04/25(月)00:48 ID:5hzQ+Edh(11/14) AAS
そんな人間を、世間一般では何という。

「……萩村?」

萩村は立ち上がり、耳まで真っ赤になりながら、津田の隣の椅子さえも通り過ぎて、椅子に座る津田を至近距離から睨みつけるように見つめる。
萩村は、すぐに行動に出た。
机の上に置かれていた彼の腕を高く掲げ、己の身体をその腕の内側に滑り込ませる。

「うわ、ちょ、え」

津田が慌てたような声を上げながら、椅子の上で盆踊りを行なう。
暴れる彼の腕を押さえ込んで、萩村は津田の膝の上に腰掛けて、津田の腕を自分の胴に回して、全身を押し付けた。
省21
525: ◆ZAtwiNsO4g 2011/04/25(月)00:49 ID:5hzQ+Edh(12/14) AAS
生徒会室の温かくて、一部だけちょっと熱くなった空気に、冬の廊下の寒々しい冷風が舞い込んでくる。
その風に長い黒髪を遊ばせる人影が、生徒会室の中に飛び込んできた。
振り返らなくても声で分かる。入って来たのは天草シノ。
萩村の判断は素早かった。即座に津田に額をくっつけて、低い声で唸り始める。

「うーん、熱はないみたいね」
「……………………」
「あ、会長、どうも」

萩村は振り返り、未だに惚けている津田の膝から降り立って丁寧に頭を下げた。
天草は目を点にして口を間抜けに開きながら、津田と萩村の間で視線を往復させた。

「……なぁ、萩村。今」
省21
526: ◆ZAtwiNsO4g 2011/04/25(月)00:50 ID:5hzQ+Edh(13/14) AAS
これには天草は疑う余地を挟まずに、そのままの意味で受け取り、手にしていた鞄を机の上に置いた。

「どれ、私も手伝うとするか……」
「いえ会長。それには及びません」

今しがた置かれた鞄を差し出して、萩村は胸を張った。

「これは私達が処理すべき仕事です。
 会長達は受験勉強でお疲れのようですし、今日はお帰りになった方が良いかと」
「いや、しかしなぁ……」

天草は顔を顰めて、チラチラと萩村の顔色を窺う顔の赤い津田と、身体から苛立ちの空気を醸し出す萩村を見て、閉口した。
何となく、萩村の声色に刺が交じっているのに気がついていた天草は、萩村から鞄を受け取って、もう一度机に置いた。
省9
527
(1): ◆ZAtwiNsO4g 2011/04/25(月)00:50 ID:5hzQ+Edh(14/14) AAS
終了です。お目汚し失礼致しました。
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