インディーアイドル板 交流スレ / しまむじろ / すの▲かぼ / ポチひとし / イモタオサム (739レス)
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209: 2023/12/29(金)16:54 AAS
経緯
第5使徒ラミエルが第3新東京市に侵攻する。
ラミエルはビームによる遠隔攻撃を備えており、エヴァ初号機は一度敗退していた。

近づくことすら困難な状況。これに対して、葛城ミサトは遠距離からの狙撃を提案する。
だが、作戦に使用する陽電子砲(ポジトロン・スナイパー・ライフル)には、大量の電力が必要だった。
そこで、全日本国民の協力の下、日本中の電気の供給をストップし、すべての電力を陽電子砲に集めることとなる。

射撃者は初号機に搭乗する碇シンジ。
サポートは零号機に搭乗する綾波レイ。
210: 2023/12/29(金)16:55 AAS
他媒体におけるヤシマ作戦
テレビシリーズ第壱話から第六話までをセルフリメイクした劇場用アニメ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』でも、同様の作戦が行われた。
211: 2023/12/29(金)16:56 AAS
ゲーム『スーパーロボット大戦シリーズ』でも、何度かこの作戦が登場している。
その際クロスオーバーが行われることが多く、『F完結編』ではゴラオン(聖戦士ダンバイン)から、『α』では光子力エンジン(マジンガーZ)とゲッター炉(ゲッターロボ)をトロニウムで繋げたものから、『MX』では電童のハイパーデンドーデンチ(GEAR戦士電童)からエネルギーが供給された。『第3次Z』では原作通り日本全国から電力を集めたが、最後の一撃は出撃ユニットすべてにあらかじめ付けておいた外付けプラグでエネルギーを集めて仕掛けている。
『V』では第6の使徒襲来直前までNERVの戦力を接収しようとする地球連邦軍と戦っていたため、前述にあるような凝った準備は出来なかった(零号機の盾は準備できていた)が、ポジトロンライフルは地球連邦軍の別動隊で動いていたヤザン・ゲーブルとジェリド・メサが初号機に手渡しし、エネルギーはヤマトの波動エンジンから直接送るというやり方で実行に移すことが出来た。
212: 2023/12/29(金)16:56 AAS
PSO2では新劇場版をモチーフとしたコラボクエストが配信。
巨大船団の居住区に突如現れた第6使徒(PSO2には「幻創種」という「人々の恐怖や願望、想い」等が実体化した敵性存在が存在する。この第6使徒はその幻想種で、作中登場するシンジ達もその幻想種に分類される)に対し、艦の動力源の97%をポジトロンライフルに集中させている間機動兵器のA.I.Sに乗ったプレイヤーが陽動を担当するスパロボに似た流れ。
アクションRPGと言う土俵でとにかく新劇場版以上に様々な形に変わり、コアの位置もそれに伴って変化する為手応えのあるクエストになっている。また、その前後のストーリーも作品の世界観に併せて構成されており隙がない作り。
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(1): 2023/12/29(金)16:57 AAS
東日本大震災における「ヤシマ作戦」
2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震による発電所被害の影響を受け、関東圏内では電力供給能力が著しく低下している。
この事態を乗り切るため、電力消費のピークとされる18:00~20:00に節電を呼びかける運動がTwitterによって行われはじめた。
ハッシュタグは「#84MA」。

また、エヴァンゲリオン公式ブログでもこの活動をキャッチし、賛同を表明している。

この時間帯に限らず、各自でできうる限りの節電をよろしくお願いします。
214: 2023/12/29(金)16:57 AAS
NERV本部から支援物資が届きました!!
2011年3月14日夜、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』にて、主にクライマックスのヤシマ作戦部分を中心に画コンテを担当した樋口真嗣氏が、上記非公式節電キャンペーンを応援すべく、スタッフと共に輪番停電(計画停電)の該当エリア表示用イラストを作成し、pixivにアップした。
イラストは停電対象外地域のものも含めて数種あり、自分が該当する地域を選択して利用するかたちとなっている。
215: 2023/12/29(金)16:58 AAS
そしてその次の日、イーハトーヴの人たちは、青ぞらが緑いろに濁り、日や月が銅あかがねいろになったのを見ました。
 けれどもそれから三四日たちますと、気候はぐんぐん暖かくなってきて、その秋はほぼ普通の作柄になりました。そしてちょうど、このお話のはじまりのようになるはずの、たくさんのブドリのおとうさんやおかあさんは、たくさんのブドリやネリといっしょに、その冬を暖かいたべものと、明るい薪たきぎで楽しく暮らすことができたのでした。
216: 2023/12/29(金)17:00 AAS
おとら狐ぎつねのはなしは、どなたもよくご存じでしょう。おとら狐にも、いろいろあったのでしょうか、私の知っているのは、「とっこべ、とら子」というのです。
「とっこべ」というのは名字でしょうか。「とら」というのは名前ですかね。そうすると、名字がさまざまで、名前がみんな「とら」という狐が、あちこちに住んでいたのでしょうか。
217: 2023/12/29(金)17:01 AAS
さて、むかし、とっこべとら子は大きな川の岸に住んでいて、夜、網打ちに行った人から魚を盗とったり、買物をして町から遅く帰る人から油揚げを取りかえしたり、実に始末におえないものだったそうです。
218: 2023/12/29(金)17:01 AAS
慾よくふかのじいさんが、ある晩ひどく酔っぱらって、町から帰って来る途中、その川岸を通りますと、ピカピカした金らんの上下かみしもの立派なさむらいに会いました。じいさんは、ていねいにおじぎをして行き過ぎようとしましたら、さむらいがピタリととまって、ちょっとそらを見上げて、それからあごを引いて、六平を呼び留めました。秋の十五夜でした。
219: 2023/12/29(金)17:02 AAS
「あいや、しばらく待て。そちは何と申す」
「へいへい。私は六平と申します」
「六平とな。そちは金貸しを業わざと致しおるな」
「へいへい。御意ぎょいの通りでございます。手元の金子きんすは、すべて、只今ただいまご用立致しております」
「いやいや、拙者せっしゃが借りようと申すのではない。どうじゃ。金貸しは面白かろう」
「へい、御冗談、へいへい。御意の通りで」
220: 2023/12/29(金)17:02 AAS
「拙者に少しく不用の金子がある。それに遠国に参る所じゃ。預かっておいてもらえまいか。もっとも拙者も数々敵を持つ身じゃ。万一途中相果てたなれば、金子はそのままそちに遣わす。どうじゃ」
「へい。それはきっとお預かりいたしまするでございます」
「左様か。あいや。金子はこれにじゃ。そち自ら蓋ふたを開いて一応改めくれい。エイヤ。はい。ヤッ」さむらいはふところから白いたすきを取り出して、たちまち十字にたすきをかけ、ごわりと袴はかまのもも立ちを取り、とんとんとんと土手の方へ走りましたが、ちょっとかがんで土手のかげから、千両ばこを一つ持って参りました。
221: 2023/12/29(金)17:03 AAS
ははあ、こいつはきっと泥棒だ、そうでなければにせ金使い、しかし何でもかまわない、万一途中相果てたなれば、金はごろりとこっちのものと、六平はひとりで考えて、それからほくほくするのを無理にかくして申しました。
「へい。へい。よろしゅうござります。御意の通り一応お改めいたしますでござります」
222: 2023/12/29(金)17:03 AAS
蓋を開くと中に小判が一ぱいつまり、月にぎらぎらかがやきました。
 ハイ、ヤッとさむらいは千両函ばこを又一つ持って参りました。六平はもっともらしく又あらためました。これも小判が一ぱいで月にぎらぎらです。ハイ、ヤッ、ハイヤッ、ハイヤッ。千両ばこはみなで十ほどそこに積まれました。
「どうじゃ。これだけをそち一人で持ち参れるのかの。もっともそちの持てるだけ預けることといたそうぞよ」
 どうもさむらいのことばが少し変でしたし、そしてたしかに変ですが、まあ六平にはそんなことはどうでもよかったのです。
223: 2023/12/29(金)17:04 AAS
「へい。へい。何の千両ばこの十やそこばこ、きっときっと持ち参るでござりましょう」
「うむ。左様か。しからば。いざ。いざ、持ち参れい」
「へいへい。ウントコショ、ウントコショ、ウウントコショ。ウウウントコショ」
224: 2023/12/29(金)17:08 AAS
「豪儀じゃ、豪儀じゃ、そちは左程さほどになけれども、そちの身に添う慾心が実げに大力じゃ。大力じゃのう。ほめ遣わす。ほめ遣わす。さらばしかと預けたぞよ」
 さむらいは銀扇をパッと開いて感服しましたが、六平は余りの重さに返事も何も出来ませんでした。
225: 2023/12/29(金)17:08 AAS
さむらいは扇をかざして月に向って、
「それ一芸あるものはすがたみにくし」と何だか謡曲のような変なものを低くうなりながら向うへ歩いて行きました。
226: 2023/12/29(金)17:09 AAS
六平は十の千両ばこをよろよろしょって、もうお月さまが照ってるやら、路みちがどう曲ってどう上ってるやら、まるで夢中で自分の家までやってまいりました。そして荷物をどっかり庭におろして、おかしな声で外から怒鳴りました。
「開けろ開けろ。お帰りだ。大尽さまのお帰りだ」
227: 2023/12/29(金)17:09 AAS
 六平の娘が戸をガタッと開けて、
「あれまあ、父さん。そったに砂利しょて何しただす」と叫びました。
 六平もおどろいておろしたばかりの荷物を見ましたら、おやおや、それはどての普請の十の砂利俵でした。
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(1): 2023/12/29(金)17:10 AAS
六平はクウ、クウ、クウと鳴って、白い泡あわをはいて気絶しました。それからもうひどい熱病になって、二か月の間というもの、
「とっこべとら子に、だまされだ。ああ欺だまされだ」と叫んでいました。
229: 2023/12/29(金)17:10 AAS
みなさん。こんな話は一体ほんとうでしょうか。どうせ昔のことですから誰たれもよくわかりませんが多分偽うそではないでしょうか。
 どうしてって、私はその偽の方の話をも一つちゃんと知ってるんです。それはあんまりちかごろ起ったことでもうそれがうそなことは疑いもなにもありません。実はゆうべ起ったことなのです。
230: 2023/12/29(金)17:11 AAS
おお、メタ発言ww
231: 2023/12/29(金)17:11 AAS
さあ、ご覧なさい。やはりあの大きな川の岸で、狐きつねの住んでいた処ところから半町ばかり離れた所に平右衛門という人の家があります。
 平右衛門は今年の春村会議員になりました。それですから今夜はそのお祝いで親類はみな呼ばれました。
 もうみんな大よろこび、ワッハハ、アッハハ、よう、おらおととい町さ行ったら魚屋の店で章魚たこといかとが立ちあがって喧嘩けんかした、ワッハハ、アッハハ、それはほんとか、それがらどうした、うん、かつおぶしが仲裁に入った、ワッハハ、アッハハ、それからどうした、ウン、するとかつおぶしがウウゥイ、ころは元禄げんろく十四年んん、おいおい、それは何だい、うん、なにさ、かつおぶしだもふしばがり、ワッハハアッハハ、まあのめ、さあ一杯、なんて大さわぎでした。
232: 2023/12/29(金)17:11 AAS
整いましたww
233: 2023/12/29(金)17:12 AAS
ところがその中に一人一向笑わない男がありました。それは小吉こきちという青い小さな意地悪の百姓でした。
 小吉はさっきから怒ってばかりいたのです。(第一おら、下座しもざだちゅうはずぁあんまい、ふん、お椀わんのふぢぁ欠げでる、油煙はばやばや、さがなの眼玉は白くてぎろぎろ、誰だっても盃さかずきよごさないえい糞くそ面白ぐもなぃ)とうとう小吉がぷっと座を立ちました。
234: 2023/12/29(金)17:12 AAS
平右衛門が、
「待て、待て、小吉。もう一杯やれ、待てったら」と言っていましたが小吉はぷいっと下駄げたをはいて表に出てしまいました。
235: 2023/12/29(金)17:13 AAS
空がよく晴れて十三日の月がその天辺てっぺんにかかりました。小吉が門を出ようとしてふと足もとを見ますと門の横の田の畔くろに疫病除やくびょうよけの「源の大将」が立っていました。
 それは竹へ半紙を一枚はりつけて大きな顔を書いたものです。
236: 2023/12/29(金)17:13 AAS
その「源の大将」が青い月のあかりの中でこと更顔を横にまげ眼を瞋いからせて小吉をにらんだように見えました。小吉も怒ってすぐそれを引っこ抜いて田の中に投げてしまおうとしましたが俄にわかに何を考えたのかにやりと笑ってそれを路のまん中に立て直しました。
237: 2023/12/29(金)17:14 AAS
そして又ひとりでぷんぷんぷんぷん言いながら二つの低い丘を越えて自分の家に帰り、おみやげを待っていた子供を叱しかりつけてだまって床にもぐり込んでしまいました。
 ちょうどその頃平右衛門の家ではもう酒盛りが済みましたので、お客様はみんなでご馳走ちそうの残りを藁わらのつとに入れて、ぶらりぶらりと提げながら、三人ずつぶっつかったり、四人ずつぶっつかり合ったりして、門の処ところまで出て参りました。
238: 2023/12/29(金)17:14 AAS
縁側に出てそれを見送った平右衛門は、みんなにわかれの挨拶あいさつをしました。
「それではお気をつけて。おみやげをとっこべとらこに取られなぃようにアッハッハッハ」
 お客さまの中の一人がだらりと振り向いて返事しました。
「ハッハッハ。とっこべとらこだらおれの方で取って食ってやるべ」
 その語ことばがまだ終らないうちに、神出鬼没のとっこべとらこが、門の向うの道のまん中にまっ白な毛をさか立てて、こっちをにらんで立ちました。
「わあ、出た出た。逃げろ。逃げろ」
 もう大へんなさわぎです。みんな泥足でヘタヘタ座敷へ逃げ込みました。
239: 2023/12/29(金)17:14 AAS
平右衛門は手早くなげしから薙刀なぎなたをおろし、さやを払い物凄ものすごい抜身をふり廻しましたので一人のお客さまはあぶなく赤いはなを切られようとしました。
 平右衛門はひらりと縁側から飛び下りて、はだしで門前の白狐びゃっこに向って進みます。
 みんなもこれに力を得てかさかさしたときの声をあげて景気をつけ、ぞろぞろ随ついて行きました。
240: 2023/12/29(金)17:15 AAS
さて平右衛門もあまりといえばありありとしたその白狐の姿を見ては怖さが咽喉のどまでこみあげましたが、みんなの手前もありますので、やっと一声切り込んで行きました。
 たしかに手ごたえがあって、白いものは薙刀の下で、プルプル動いています。
「仕留めたぞ。仕留めたぞ。みんな来い」と平右衛門は叫びました。
「さすがは畜生の悲しさ、もろいもんだ」とみんなは悦よろこび勇んで狐きつねの死骸しがいを囲みました。
241
(1): 2023/12/29(金)17:15 AAS
 ところがどうです。今度はみんなは却かえってぎっくりしてしまいました。そうでしょう。
 その古い狐は、もう身代りに疫病やくびょうよけの「源の大将」などを置いて、どこかへ逃げているのです。
 みんなは口々に言いました。
「やっぱり古い狐だな。まるで眼玉は火のようだったぞ」
「おまけに毛といったら銀の針だ」
「全く争われないもんだ。口が耳まで裂けていたからな。崇たたられまぃが」
「心配するな。あしたはみんなで川岸に油揚を持って行って置いて来るとしよう」
 みんなは帰る元気もなくなって、平右衛門の所に泊りました。
242: 2023/12/29(金)17:16 AAS
「源の大将」はお顔を半分切られて月光にキリキリ歯を喰いしばっているように見えました。
 夜中になってから「とっこべ、とら子」とその沢山の可愛らしい部下とが又出て来て、庭に抛ほうり出されたあのおみやげの藁わらの苞つとを、かさかさ引いた、たしかにその音がしたとみんながさっきも話していました。
243: 2023/12/29(金)17:23 AAS
山男は、金いろの眼めを皿さらのようにし、せなかをかがめて、にしね山のひのき林のなかを、兎うさぎをねらってあるいていました。
 ところが、兎はとれないで、山鳥がとれたのです。
 それは山鳥が、びっくりして飛びあがるとこへ、山男が両手をちぢめて、鉄砲てっぽうだまのようにからだを投げつけたものですから、山鳥ははんぶん潰つぶれてしまいました。
244: 2023/12/29(金)17:24 AAS
なかなか野蛮な冒頭部分だ
245: 2023/12/29(金)17:24 AAS
山男は顔をまっ赤にし、大きな口をにやにやまげてよろこんで、そのぐったり首を垂れた山鳥を、ぶらぶら振ふりまわしながら森から出てきました。
 そして日あたりのいい南向きのかれ芝しばの上に、いきなり獲物えものを投げだして、ばさばさの赤い髪毛かみけを指でかきまわしながら、肩かたを円くしてごろりと寝ねころびました。
246: 2023/12/29(金)17:24 AAS
素敵だ
247: 2023/12/29(金)17:25 AAS
どこかで小鳥もチッチッと啼なき、かれ草のところどころにやさしく咲いたむらさきいろのかたくりの花もゆれました。
 山男は仰向あおむけになって、碧あおいああおい空をながめました。お日さまは赤と黄金きんでぶちぶちのやまなしのよう、かれくさのいいにおいがそこらを流れ、すぐうしろの山脈では、雪がこんこんと白い後光をだしているのでした。
(飴あめというものはうまいものだ。天道てんとは飴をうんとこさえているが、なかなかおれにはくれない。)
248: 2023/12/29(金)17:25 AAS
面白いことを考えるやつだなw
249: 2023/12/29(金)17:25 AAS
山男がこんなことをぼんやり考えていますと、その澄すみ切った碧いそらをふわふわうるんだ雲が、あてもなく東の方へ飛んで行きました。そこで山男は、のどの遠くの方を、ごろごろならしながら、また考えました。
(ぜんたい雲というものは、風のぐあいで、行ったり来たりぽかっと無くなってみたり、俄にわかにまたでてきたりするもんだ。そこで雲助とこういうのだ。)
250: 2023/12/29(金)17:25 AAS
えっ?w
251: 2023/12/29(金)17:26 AAS
そのとき山男は、なんだかむやみに足とあたまが軽くなって、逆さまに空気のなかにうかぶような、へんな気もちになりました。もう山男こそ雲助のように、風にながされるのか、ひとりでに飛ぶのか、どこというあてもなく、ふらふらあるいていたのです。
(ところがここは七つ森だ。ちゃんと七っつ、森がある。松まつのいっぱい生えてるのもある、坊主ぼうずで黄いろなのもある。そしてここまで来てみると、おれはまもなく町へ行く。町へはいって行くとすれば、化けないとなぐり殺される。)
252: 2023/12/29(金)17:26 AAS
すげーぶっとんだ展開だ
253: 2023/12/29(金)17:27 AAS
山男はひとりでこんなことを言いながら、どうやら一人ひとりまえの木樵きこりのかたちに化けました。そしたらもうすぐ、そこが町の入口だったのです。山男は、まだどうも頭があんまり軽くて、からだのつりあいがよくないとおもいながら、のそのそ町にはいりました。
254: 2023/12/29(金)17:28 AAS
はじめからなんだか浮遊感があるんだよね
255: 2023/12/29(金)17:28 AAS
入口にはいつもの魚屋があって、塩鮭しおざけのきたない俵たわらだの、くしゃくしゃになった鰯いわしのつらだのが台にのり、軒のきには赤ぐろいゆで章魚だこが、五つつるしてありました。その章魚を、もうつくづくと山男はながめたのです。
(あのいぼのある赤い脚あしのまがりぐあいは、ほんとうにりっぱだ。郡役所の技手ぎての、乗馬ずぼんをはいた足よりまだりっぱだ。こういうものが、海の底の青いくらいところを、大きく眼をあいてはっているのはじっさいえらい。)
256: 2023/12/29(金)17:28 AAS
面白い比較だ
257: 2023/12/29(金)17:29 AAS
山男はおもわず指をくわえて立ちました。するとちょうどそこを、大きな荷物をしょった、汚きたない浅黄服あさぎふくの支那しな人が、きょろきょろあたりを見まわしながら、通りかかって、いきなり山男の肩をたたいて言いました。
「あなた、支那反物たんものよろしいか。六神丸ろくしんがんたいさんやすい。」
258: 2023/12/29(金)17:29 AAS
怪しいやつではござんせん
259: 2023/12/29(金)17:29 AAS
 山男はびっくりしてふりむいて、
「よろしい。」とどなりましたが、あんまりじぶんの声がたかかったために、円い鈎かぎをもち、髪をわけ下駄げたをはいた魚屋の主人や、けらを着た村の人たちが、みんなこっちを見ているのに気がついて、すっかりあわてて急いで手をふりながら、小声で言い直しました。
「いや、そうだない。買う、買う。」
 すると支那人は
「買わない、それ構わない、ちょっと見るだけよろしい。」
と言いながら、背中の荷物をみちのまんなかにおろしました。山男はどうもその支那人のぐちゃぐちゃした赤い眼が、とかげのようでへんに怖こわくてしかたありませんでした。
260: 2023/12/29(金)17:30 AAS
本能的に危険を察知
261: 2023/12/29(金)17:30 AAS
そのうちに支那人は、手ばやく荷物へかけた黄いろの真田紐さなだひもをといてふろしきをひらき、行李こうりの蓋ふたをとって反物のいちばん上にたくさんならんだ紙箱かみばこの間から、小さな赤い薬瓶くすりびんのようなものをつかみだしました。
(おやおや、あの手の指はずいぶん細いぞ。爪つめもあんまり尖とがっているしいよいよこわい。)山男はそっとこうおもいました。
262: 2023/12/29(金)17:30 AAS
悪魔のイメージか
263: 2023/12/29(金)17:31 AAS
支那人はそのうちに、まるで小指ぐらいあるガラスのコップを二つ出して、ひとつを山男に渡わたしました。
「あなた、この薬のむよろしい。毒ない。決して毒ない。のむよろしい。わたしさきのむ。心配ない。わたしビールのむ、お茶のむ。毒のまない。これながいきの薬ある。のむよろしい。」支那人はもうひとりでかぷっと呑のんでしまいました。
264: 2023/12/29(金)17:31 AAS
怪しすぎる、幻術使い
サスケで見た
265: 2023/12/29(金)17:35 AAS
山男はほんとうに呑んでいいだろうかとあたりを見ますと、じぶんはいつか町の中でなく、空のように碧いひろい野原のまんなかに、眼のふちの赤い支那人とたった二人、荷物を間に置いて向かいあって立っているのでした。二人のかげがまっ黒に草に落ちました。
266: 2023/12/29(金)17:35 AAS
やばいよ、やばいよ
267: 2023/12/29(金)17:35 AAS
「さあ、のむよろしい。ながいきのくすりある。のむよろしい。」支那人は尖った指をつき出して、しきりにすすめるのでした。
268: 2023/12/29(金)17:35 AAS
飲んじゃらめー!
269: 2023/12/29(金)17:36 AAS
山男はあんまり困ってしまって、もう呑んで遁にげてしまおうとおもって、いきなりぷいっとその薬をのみました。
270: 2023/12/29(金)17:36 AAS
あーあ、飲んじまった
271: 2023/12/29(金)17:36 AAS
するとふしぎなことには、山男はだんだんからだのでこぼこがなくなって、ちぢまって平らになってちいさくなって、よくしらべてみると、どうもいつかちいさな箱のようなものに変って草の上に落ちているらしいのでした。
(やられた、畜生ちくしょう、とうとうやられた、さっきからあんまり爪が尖ってあやしいとおもっていた。畜生、すっかりうまくだまされた。)山男は口惜くやしがってばたばたしようとしましたが、もうただ一箱の小さな六神丸ですからどうにもしかたありませんでした。
272: 2023/12/29(金)17:37 AAS
ところが支那人のほうは大よろこびです。ひょいひょいと両脚をかわるがわるあげてとびあがり、ぽんぽんと手で足のうらをたたきました。その音はつづみのように、野原の遠くのほうまでひびきました。
 それから支那人の大きな手が、いきなり山男の眼の前にでてきたとおもうと、山男はふらふらと高いところにのぼり、まもなく荷物のあの紙箱の間におろされました。
 おやおやとおもっているうちに上からばたっと行李の蓋が落ちてきました。それでも日光は行李の目からうつくしくすきとおって見えました。
(とうとう※(「穴かんむり/牛」、第4水準2-83-13)ろうにおれははいった。それでもやっぱり、お日さまは外で照っている。)山男はひとりでこんなことを呟つぶやいて無理にかなしいのをごまかそうとしました。するとこんどは、急にもっとくらくなりました。
(ははあ、風呂敷ふろしきをかけたな。いよいよ情けないことになった。これから暗い旅になる。)山男はなるべく落ち着いてこう言いました。
273: 2023/12/29(金)17:38 AAS
すると愕おどろいたことは山男のすぐ横でものを言うやつがあるのです。
「おまえさんはどこから来なすったね。」
 山男ははじめぎくっとしましたが、すぐ、
(ははあ、六神丸というものは、みんなおれのようなぐあいに人間が薬で改良されたもんだな。よしよし、)と考えて、
「おれは魚屋の前から来た。」と腹に力を入れて答えました。すると外から支那人が噛かみつくようにどなりました。
「声あまり高い。しずかにするよろしい。」
 山男はさっきから、支那人がむやみにしゃくにさわっていましたので、このときはもう一ぺんにかっとしてしまいました。
「何だと。何をぬかしやがるんだ。どろぼうめ。きさまが町へはいったら、おれはすぐ、この支那人はあやしいやつだとどなってやる。さあどうだ。」
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(1): 2023/12/29(金)17:38 AAS
支那人は、外でしんとしてしまいました。じつにしばらくの間、しいんとしていました。山男はこれは支那人が、両手を胸で重ねて泣いているのかなともおもいました。そうしてみると、いままで峠とうげや林のなかで、荷物をおろしてなにかひどく考え込こんでいたような支那人は、みんなこんなことを誰たれかに云いわれたのだなと考えました。山男はもうすっかりかあいそうになって、いまのはうそだよと云おうとしていましたら、外の支那人があわれなしわがれた声で言いました。
「それ、あまり同情ない。わたし商売たたない。わたしおまんまたべない。わたし往生する、それ、あまり同情ない。」山男はもう支那人が、あんまり気の毒になってしまって、おれのからだなどは、支那人が六十銭もうけて宿屋に行って、鰯いわしの頭や菜っ葉汁じるをたべるかわりにくれてやろうと思いながら答えました。
「支那人さん、もういいよ。そんなに泣かなくてもいいよ。おれは町にはいったら、あまり声を出さないようにしよう。安心しな。」すると外の支那人は、やっと胸をなでおろしたらしく、ほおという息の声も、ぽんぽんと足を叩たたいている音も聞こえました。それから支那人は、荷物をしょったらしく、薬の紙箱は、互たがいにがたがたぶっつかりました。
275: 2023/12/29(金)18:13 AAS
「おい、誰だい。さっきおれにものを云いかけたのは。」
 山男が斯こう云いましたら、すぐとなりから返事がきました。
「わしだよ。そこでさっきの話のつづきだがね、おまえは魚屋の前からきたとすると、いま鱸すずきが一匹ぴきいくらするか、またほしたふかのひれが、十両テールに何片ぎんくるか知ってるだろうな。」
「さあ、そんなものは、あの魚屋には居なかったようだぜ。もっとも章魚たこはあったがなあ。あの章魚の脚つきはよかったなあ。」
「へい。そんないい章魚かい。わしも章魚は大すきでな。」
「うん、誰だって章魚のきらいな人はない。あれを嫌きらいなくらいなら、どうせろくなやつじゃないぜ。」
276: 2023/12/29(金)18:13 AAS
この会話、笑える
277: 2023/12/29(金)18:13 AAS
「まったくそうだ。章魚ぐらいりっぱなものは、まあ世界中にないな。」
「そうさ。お前はいったいどこからきた。」
「おれかい。上海しゃんはいだよ。」
「おまえはするとやっぱり支那人だろう。支那人というものは薬にされたり、薬にしてそれを売ってあるいたり気の毒なもんだな。」
「そうでない。ここらをあるいてるものは、みんな陳ちんのようないやしいやつばかりだが、ほんとうの支那人なら、いくらでもえらいりっぱな人がある。われわれはみな孔子聖人こうしせいじんの末なのだ。」
278: 2023/12/29(金)18:14 AAS
「なんだかわからないが、おもてにいるやつは陳というのか。」
「そうだ。ああ暑い、蓋ふたをとるといいなあ。」
「うん。よし。おい、陳さん。どうもむし暑くていかんね。すこし風を入れてもらいたいな。」
「もすこし待つよろしい。」陳が外で言いました。
「早く風を入れないと、おれたちはみんな蒸むれてしまう。お前の損になるよ。」
 すると陳が外でおろおろ声ごえを出しました。
「それ、もとも困る、がまんしてくれるよろしい。」
279: 2023/12/29(金)18:14 AAS
「がまんも何もないよ、おれたちがすきでむれるんじゃないんだ。ひとりでにむれてしまうさ。早く蓋をあけろ。」
「も二十分まつよろしい。」
「えい、仕方ない。そんならも少し急いであるきな。仕方ないな。ここに居るのはおまえだけかい。」
「いいや、まだたくさんいる。みんな泣いてばかりいる。」
「そいつはかあいそうだ。陳はわるいやつだ。なんとかおれたちは、もいちどもとの形にならないだろうか。」
「それはできる。おまえはまだ、骨まで六神丸になっていないから、丸薬さえのめばもとへ戻もどる。おまえのすぐ横に、その黒い丸薬の瓶びんがある。」
「そうか。そいつはいい、それではすぐ呑のもう。しかし、おまえさんたちはのんでもだめか。」
「だめだ。けれどもおまえが呑んでもとの通りになってから、おれたちをみんな水に漬つけて、よくもんでもらいたい。それから丸薬をのめばきっとみんなもとへ戻る。」
280: 2023/12/29(金)18:15 AAS
「そうか。よし、引き受けた。おれはきっとおまえたちをみんなもとのようにしてやるからな。丸薬というのはこれだな。そしてこっちの瓶は人間が六神丸になるほうか。陳もさっきおれといっしょにこの水薬をのんだがね、どうして六神丸にならなかったろう。」
「それはいっしょに丸薬を呑んだからだ。」
「ああ、そうか。もし陳がこの丸薬だけ呑んだらどうなるだろう。変らない人間がまたもとの人間に変るとどうも変だな。」
281: 2023/12/29(金)18:15 AAS
これが落ちの伏線
282: 2023/12/29(金)18:15 AAS
そのときおもてで陳が、
「支那たものよろしいか。あなた、支那たもの買うよろしい。」
と云う声がしました。
「ははあ、はじめたね。」山男はそっとこう云っておもしろがっていましたら、俄にわかに蓋があいたので、もうまぶしくてたまりませんでした。それでもむりやりそっちを見ますと、ひとりのおかっぱの子供が、ぽかんと陳の前に立っていました。
283: 2023/12/29(金)18:16 AAS
陳はもう丸薬を一つぶつまんで、口のそばへ持って行きながら、水薬とコップを出して、
「さあ、呑むよろしい。これながいきの薬ある。さあ呑むよろしい。」とやっています。
「はじめた、はじめた。いよいよはじめた。」行李こうりのなかでたれかが言いました。
「わたしビール呑む、お茶のむ、毒のまない。さあ、呑むよろしい。わたしのむ。」
284: 2023/12/29(金)18:16 AAS
危機一髪
285: 2023/12/29(金)18:16 AAS
そのとき山男は、丸薬を一つぶそっとのみました。すると、めりめりめりめりっ。
 山男はすっかりもとのような、赤髪あかがみの立派なからだになりました。
286: 2023/12/29(金)18:17 AAS
陳はちょうど丸薬を水薬といっしょにのむところでしたが、あまりびっくりして、水薬はこぼして丸薬だけのみました。さあ、たいへん、みるみる陳のあたまがめらあっと延びて、いままでの倍になり、せいがめきめき高くなりました。そして「わあ。」と云いながら山男につかみかかりました。
287: 2023/12/29(金)18:17 AAS
山男はまんまるになって一生けん命遁にげました。ところがいくら走ろうとしても、足がから走りということをしているらしいのです。とうとうせなかをつかまれてしまいました。
288: 2023/12/29(金)18:17 AAS
悪夢だ
289: 2023/12/29(金)18:17 AAS
「助けてくれ、わあ、」と山男が叫さけびました。そして眼をひらきました。みんな夢ゆめだったのです。
 雲はひかってそらをかけ、かれ草はかんばしくあたたかです。
290: 2023/12/29(金)18:18 AAS
 山男はしばらくぼんやりして、投げ出してある山鳥のきらきらする羽をみたり、六神丸の紙箱かみばこを水につけてもむことなどを考えていましたがいきなり大きなあくびをひとつして言いました。
「ええ、畜生、夢のなかのこった。陳も六神丸もどうにでもなれ。」
 それからあくびをもひとつしました。
291: 2023/12/29(金)18:33 AAS


わたくしといふ現象は
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといつしよに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です
(ひかりはたもち その電燈は失はれ)
292: 2023/12/29(金)18:34 AAS
これらは二十二箇月の
過去とかんずる方角から
紙と鉱質インクをつらね
(すべてわたくしと明滅し
 みんなが同時に感ずるもの)
ここまでたもちつゞけられた
かげとひかりのひとくさりづつ
そのとほりの心象スケツチです
293: 2023/12/29(金)18:34 AAS
過去ってのはベクトル、方角で感じているに過ぎないんだよね
294: 2023/12/29(金)18:35 AAS
これらについて人や銀河や修羅や海胆は
宇宙塵をたべ または空気や塩水を呼吸しながら
それぞれ新鮮な本体論もかんがへませうが
それらも畢竟こゝろのひとつの風物です
295: 2023/12/29(金)18:35 AAS
たゞたしかに記録されたこれらのけしきは
記録されたそのとほりのこのけしきで
それが虚無ならば虚無自身がこのとほりで
ある程度まではみんなに共通いたします
(すべてがわたくしの中のみんなであるやうに
 みんなのおのおののなかのすべてですから)
296
(1): 2023/12/29(金)18:35 AAS
逃げてやんの
297: 2023/12/29(金)18:35 AAS
俺は子どもの頃にこういうものの見方に洗礼されてしまった
298: 2023/12/29(金)18:36 AAS
けれどもこれら新生代沖積世の
巨大に明るい時間の集積のなかで
正しくうつされた筈のこれらのことばが
わづかその一点にも均しい明暗のうちに
  (あるいは修羅の十億年)
すでにはやくもその組立や質を変じ
しかもわたくしも印刷者も
それを変らないとして感ずることは
傾向としてはあり得ます
299: 2023/12/29(金)18:36 AAS
けだしわれわれがわれわれの感官や
風景や人物をかんずるやうに
そしてたゞ共通に感ずるだけであるやうに
記録や歴史 あるいは地史といふものも
それのいろいろの論料データといつしよに
(因果の時空的制約のもとに)
われわれがかんじてゐるのに過ぎません
300: 2023/12/29(金)18:36 AAS
因果の時空的制約
301: 2023/12/29(金)18:36 AAS
因果の時空的制約
302: 2023/12/29(金)18:36 AAS
因果の時空的制約
303: 2023/12/29(金)18:37 AAS
おそらくこれから二千年もたつたころは
それ相当のちがつた地質学が流用され
相当した証拠もまた次次過去から現出し
みんなは二千年ぐらゐ前には
青ぞらいつぱいの無色な孔雀が居たとおもひ
新進の大学士たちは気圏のいちばんの上層
きらびやかな氷窒素のあたりから
すてきな化石を発掘したり
あるいは白堊紀砂岩の層面に
透明な人類の巨大な足跡を
発見するかもしれません
304: 2023/12/29(金)18:37 AAS
透明な人類の巨大な足跡
305: 2023/12/29(金)18:37 AAS
透明な人類の巨大な足跡
306
(1): 2023/12/29(金)18:37 AAS
透明な人類の巨大な足跡
307: 2023/12/29(金)18:38 AAS
すべてこれらの命題は
心象や時間それ自身の性質として
第四次延長のなかで主張されます
308: 2023/12/29(金)18:38 AAS
屈折率

七つ森のこつちのひとつが
水の中よりもつと明るく
そしてたいへん巨きいのに
わたくしはでこぼこ凍つたみちをふみ
このでこぼこの雪をふみ
向ふの縮れた亜鉛あえんの雲へ
陰気な郵便脚夫きやくふのやうに
  (またアラツデイン 洋燈ラムプとり)
急がなければならないのか
309: 2023/12/29(金)18:39 AAS
くらかけの雪

たよりになるのは
くらかけつづきの雪ばかり
野はらもはやしも
ぽしやぽしやしたり黝くすんだりして
すこしもあてにならないので
ほんたうにそんな酵母かうぼのふうの
朧おぼろなふぶきですけれども
ほのかなのぞみを送るのは
くらかけ山の雪ばかり
  (ひとつの古風こふうな信仰です)
310: 2023/12/29(金)18:39 AAS
ひとつの古風な信仰
311: 2023/12/29(金)18:39 AAS
ひとつの古風な信仰
312: 2023/12/29(金)18:39 AAS
ひとつの古風な信仰
313: 2023/12/29(金)18:39 AAS
日輪と太市

日は今日は小さな天の銀盤で
雲がその面めんを
どんどん侵してかけてゐる
吹雪フキも光りだしたので
太市は毛布けつとの赤いズボンをはいた
314: 2023/12/29(金)18:40 AAS
丘の眩惑

ひとかけづつきれいにひかりながら
そらから雪はしづんでくる
電でんしんばしらの影の藍※(「靜のへん+定」、第4水準2-91-94)インデイゴや
ぎらぎらの丘の照りかへし
315
(1): 2023/12/29(金)18:40 AAS
都合の悪いスレはBOT投下して涙目で敗走w
316: 2023/12/29(金)18:43 AAS
>>315
誹謗中傷スレなw
BOTじゃない鑑賞しながら貼っている

ただ成敗するのじゃ、退屈過ぎるんでな
317: 2023/12/29(金)18:43 AAS
カーバイト倉庫

まちなみのなつかしい灯とおもつて
いそいでわたくしは雪と蛇紋岩サーベンタインとの
山峡さんけふをでてきましたのに
これはカーバイト倉庫の軒
すきとほつてつめたい電燈です
  (薄明はくめいどきのみぞれにぬれたのだから
   巻烟草に一本火をつけるがいい)
これらなつかしさの擦過は
寒さからだけ来たのでなく
またさびしいためからだけでもない
318: 2023/12/29(金)18:44 AAS
コバルト山地

コバルト山地さんちの氷霧ひようむのなかで
あやしい朝の火が燃えてゐます
毛無森けなしのもりのきり跡あたりの見当けんたうです
たしかにせいしんてきの白い火が
水より強くどしどしどしどし燃えてゐます
319: 2023/12/29(金)18:44 AAS
ぬすびと

青じろい骸骨星座のよあけがた
凍えた泥の乱らん反射をわたり
店さきにひとつ置かれた
提婆のかめをぬすんだもの
にはかにもその長く黒い脚をやめ
二つの耳に二つの手をあて
電線のオルゴールを聴く
320: 2023/12/29(金)18:44 AAS
恋と病熱

けふはぼくのたましひは疾み
烏からすさへ正視ができない
 あいつはちやうどいまごろから
 つめたい青銅ブロンヅの病室で
 透明薔薇ばらの火に燃される
ほんたうに けれども妹よ
けふはぼくもあんまりひどいから
やなぎの花もとらない
321
(1): 2023/12/29(金)18:45 AAS
春と修羅
  (mental sketch modified)

心象のはひいろはがねから
あけびのつるはくもにからまり
のばらのやぶや腐植の湿地
いちめんのいちめんの諂曲てんごく模様
(正午の管楽くわんがくよりもしげく
 琥珀のかけらがそそぐとき)
322: 2023/12/29(金)18:45 AAS
いかりのにがさまた青さ
四月の気層のひかりの底を
唾つばきし はぎしりゆききする
おれはひとりの修羅なのだ
(風景はなみだにゆすれ)
323: 2023/12/29(金)18:46 AAS
砕ける雲の眼路めぢをかぎり
 れいろうの天の海には
  聖玻璃せいはりの風が行き交ひ
   ZYPRESSEN 春のいちれつ
324
(1): 2023/12/29(金)18:46 AAS
AA省
325: 2023/12/29(金)18:46 AAS
AA省
326: 2023/12/29(金)18:47 AAS
AA省
327: 2023/12/29(金)18:47 AAS
草地の黄金をすぎてくるもの
ことなくひとのかたちのもの
けらをまとひおれを見るその農夫
ほんたうにおれが見えるのか
まばゆい気圏の海のそこに
(かなしみは青々ふかく)
328: 2023/12/29(金)18:47 AAS
ZYPRESSEN しづかにゆすれ
鳥はまた青ぞらを截る
(まことのことばはここになく
 修羅のなみだはつちにふる)
329: 2023/12/29(金)18:48 AAS
あたらしくそらに息つけば
ほの白く肺はちぢまり
(このからだそらのみぢんにちらばれ)
330: 2023/12/29(金)18:48 AAS
いてふのこずゑまたひかり
ZYPRESSEN いよいよ黒く
雲の火ばなは降りそそぐ
331: 2023/12/29(金)18:48 AAS
春光呪咀

いつたいそいつはなんのざまだ
どういふことかわかつてゐるか
髪がくろくてながく
しんとくちをつぐむ
ただそれつきりのことだ
  春は草穂に呆ぼうけ
  うつくしさは消えるぞ
    (ここは蒼ぐろくてがらんとしたもんだ)
頬がうすあかく瞳の茶いろ
ただそれつきりのことだ
       (おおこのにがさ青さつめたさ)
332: 2023/12/29(金)18:49 AAS
有明

起伏の雪は
あかるい桃の漿しるをそそがれ
青ぞらにとけのこる月は
やさしく天に咽喉のどを鳴らし
もいちど散乱のひかりを呑む
  (波羅僧羯諦ハラサムギヤテイ 菩提ボージユ 薩婆訶ソハカ)
333: 2023/12/29(金)18:49 AAS


ひかりの澱
三角ばたけのうしろ
かれ草層の上で
わたくしの見ましたのは
顔いつぱいに赤い点うち
硝子様やう鋼青のことばをつかつて
しきりに歪み合ひながら
何か相談をやつてゐた
三人の妖女たちです
334: 2023/12/29(金)18:50 AAS
AA省
335: 2023/12/29(金)18:51 AAS
雲の信号

あゝいゝな せいせいするな
風が吹くし
農具はぴかぴか光つてゐるし
山はぼんやり
岩頸がんけいだつて岩鐘がんしようだつて
みんな時間のないころのゆめをみてゐるのだ
  そのとき雲の信号は
  もう青白い春の
  禁慾のそら高く掲かかげられてゐた
山はぼんやり
きつと四本杉には
今夜は雁もおりてくる
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