インディーアイドル板 交流スレ / しまむじろ / すの▲かぼ / ポチひとし / イモタオサム (737レス)
上下前次1-新
109: 2023/12/29(金)15:48 AAS
くだらない長文コピ&ペーストがいいなら、このスレがあってもいいはず
すべてが自分にとって良いか悪いかの観点しかないのがポチという生き方
110: 2023/12/29(金)15:49 AAS
汽車はその日のひるすぎ、イーハトーヴの市に着きました。停車場を一足出ますと、地面の底から、何かのんのんわくようなひびきやどんよりとしたくらい空気、行ったり来たりするたくさんの自動車に、ブドリはしばらくぼうとしてつっ立ってしまいました。やっと気をとりなおして、そこらの人にクーボー博士の学校へ行くみちをたずねました。するとだれへきいても、みんなブドリのあまりまじめな顔を見て、吹き出しそうにしながら、
「そんな学校は知らんね。」とか、
「もう五六丁行ってきいてみな。」とかいうのでした。そしてブドリがやっと学校をさがしあてたのはもう夕方近くでした。その大きなこわれかかった白い建物の二階で、だれか大きな声でしゃべっていました。
111: 2023/12/29(金)15:49 AAS
「今日は。」ブドリは高く叫びました。だれも出てきませんでした。
「今日はあ。」ブドリはあらん限り高く叫びました。するとすぐ頭の上の二階の窓から、大きな灰いろの顔が出て、めがねが二つぎらりと光りました。それから、
「今授業中だよ、やかましいやつだ。用があるならはいって来い。」とどなりつけて、すぐ顔を引っ込めますと、中ではおおぜいでどっと笑い、その人はかまわずまた何か大声でしゃべっています。
112: 2023/12/29(金)15:51 AAS
ブドリはそこで思い切って、なるべく足音をたてないように二階にあがって行きますと、階段のつき当たりの扉とびらがあいていて、じつに大きな教室が、ブドリのまっ正面にあらわれました。中にはさまざまの服装をした学生がぎっしりです。向こうは大きな黒い壁になっていて、そこにたくさんの白い線が引いてあり、さっきのせいの高い目がねをかけた人が、大きな櫓やぐらの形の模型をあちこち指さしながら、さっきのままの高い声で、みんなに説明しておりました。
113: 2023/12/29(金)15:51 AAS
ブドリはそれを一目見ると、ああこれは先生の本に書いてあった歴史の歴史ということの模型だなと思いました。先生は笑いながら、一つのとってを回しました。模型はがちっと鳴って奇体な船のような形になりました。またがちっととってを回すと、模型はこんどは大きなむかでのような形に変わりました。
114: 2023/12/29(金)15:53 AAS
歴史の歴史というこういうメタなものの見方が面白い
115: 2023/12/29(金)15:54 AAS
「メタ発言」(めたはつげん)とは、「メタフィクション発言」の略。
アニメやマンガ、ゲームなどの登場人物が、作者や視聴者など、物語の外側でしか知り得ない知識や裏事情について、作中で発言すること。また発言したセリフ、それにまつわる行動そのもののこと。
116: 2023/12/29(金)15:54 AAS
典型的なメタ発言は、作中でキャラクターが「この世界はそういう設定だから」「作者が◯◯だから」など、“設定”や”作者”の存在を匂わせるもの。とくにギャグ性の高い作品に登場することが多いが、なかにはそのメタ発言が、ストーリーの重要なポイントになっている作品もある。
117: 2023/12/29(金)15:55 AAS
また舞台演劇などにおいて、登場人物が一部で役者本人として発言をすることも「メタ発言」の一種であると考えられる。
テレビアニメや特撮作品では、次回予告やCパートだけでメタ発言が繰り広げられることも多い。
118: 2023/12/29(金)15:55 AAS
「メタ発言」の由来・語源
「メタフィクション(Metafiction)」な発言であることから。
「メタフィクション」という用語自体は、1970年代にアメリカの作家であるウィリアム・ギャスの論文から生まれたとされている。日本国内では、1980年代から普及。高橋康也の論文『メタフィクション覚え書き―筒井康隆論のための小さな助走』がきっかけと考えられている。
119(1): 2023/12/29(金)15:55 AAS
「メタ発言」の活用例
「今観てるアニメのキャラが、バリバリメタ発言してて爆笑しちゃった」
「夢が壊れるからメタ発言は禁止にしてほしい」
「メタ発言かと思ってたらめちゃくちゃ重大なネタバレだった」
120: 2023/12/29(金)15:56 AAS
▼定番のメタ発言の一例
・作者の存在を匂わせるもの
「それは作者の趣味だよ」
「文句は作者に言ってくれ」
121: 2023/12/29(金)15:56 AAS
・設定に触れるもの
「このマンガはそういう設定になってるんだよ」
「うちの雑誌じゃ、一度戦ったらみんな仲間になるものだから」
122: 2023/12/29(金)15:57 AAS
・読者や視聴者、プレイヤーに語りかけるもの
「テレビの前のみんなも、一緒に考えてみてね」
「ここでAボタンを押してみよう」
123: 2023/12/29(金)15:57 AAS
・尺や間隔について触れるもの
「今週のアイテムはこれ!」
「どうするんだ、あと10ページもあるのに」
124: 2023/12/29(金)15:57 AAS
▼有名なメタ発言の一例
「勝ったッ!第3部完!」(『ジョジョの奇妙な冒険』ズィー・ズィー)
「プリキュアのために、ミラクルライトを振ってほしいココ~」(『映画 Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!』ココ)
「ルパン!来週こそは必ず捕まえてやる!」(『ルパン三世』銭形警部)
「もうちょっとだけ続くんじゃ」(『ドラゴンボール』亀仙人)
「番組が長ーく続くとよくある話よね」(『星のカービィ』フーム)
「のび太は映画になると、かっこいいこと言うんだから」(『映画ドラえもん のび太と銀河超特急』骨川スネ夫)
125: 2023/12/29(金)15:58 AAS
▼メタ発言が多い作品の一例
『銀魂』世界観や設定、マンガやアニメの裏事情、作者ネタなど。メタ発言をテーマにしたエピソードもあった
『Dr.スランプ』作者が登場し、キャラクターとやり取りをする
『秘密結社鷹の爪』作中に制作予算のメーターが表示され、キャラクターが「メーターがゼロになると映画は終了し、結末は次回作に持ち越し」と発言する
126: 2023/12/29(金)15:59 AAS
▼メタ演出(※ゲームのネタバレあり)
正確には「主人公」と「プレイヤー」が別れているゲームにおいては、しばしば主人公ではなく、プレイヤー自身にキャラクターが語りかけてくるような“メタ演出”が組み込まれていることがある。
一部の「メタ発言」は、こうした“メタ演出”のひとつであるとも言える。
(例)
・ビジュアルノベルゲーム『ドキドキ文芸部!』は、終盤に登場キャラクターが「自分はゲームのキャラクターであることを自覚している」旨を発言。その虚しさから、主人公をゲーム世界に呼び込んだと打ち明ける。
・ミステリーゲーム『かまいたちの夜』は、特定シーンである操作をおこなうと、「このゲームの本当の作者は自分で、強制的に働かされ、命の危機に瀕している」という旨のメッセージが浮かび上がる。事実ではなく、制作サイドが意図して組み込んだフィクション要素である。
127: 2023/12/29(金)15:59 AAS
▼メタ発言の扱い
メタ発言の扱いは、作品やシーンによって異なる。
発言後、一切触れられない場合もあれば、「誰に向かって言っているんだ」とツッコミをされる場合や、他キャラクターもメタ要素について納得し会話が続く場合もある。
128: 2023/12/29(金)16:01 AAS
みんなはしきりに首をかたむけて、どうもわからんというふうにしていましたが、ブドリにはただおもしろかったのです。
「そこでこういう図ができる。」先生は黒い壁へ別の込み入った図をどんどん書きました。
左手にもチョークをもって、さっさと書きました。学生たちもみんな一生けん命そのまねをしました。ブドリもふところから、いままで沼ばたけで持っていたきたない手帳を出して図を書きとりました。先生はもう書いてしまって、壇の上にまっすぐに立って、じろじろ学生たちの席を見まわしています。ブドリも書いてしまって、その図を縦横から見ていますと、ブドリのとなりで一人の学生が、
「あああ。」とあくびをしました。ブドリはそっとききました。
「ね、この先生はなんて言うんですか。」
すると学生はばかにしたように鼻でわらいながら答えました。
「クーボー大博士さ、お前知らなかったのかい。」それからじろじろブドリのようすを見ながら、
「はじめから、この図なんか書けるもんか。ぼくでさえ同じ講義をもう六年もきいているんだ。」
と言って、じぶんのノートをふところへしまってしまいました。その時教室に、ぱっと電燈がつきました。もう夕方だったのです。大博士が向こうで言いました。
129: 2023/12/29(金)16:01 AAS
「いまや夕べははるかにきたり、拙講もまた全課をおえた。諸君のうちの希望者は、けだしいつもの例により、そのノートをば拙者に示し、さらに数箇の試問を受けて、所属を決すべきである。」学生たちはわあと叫んで、みんなばたばたノートをとじました。それからそのまま帰ってしまうものが大部分でしたが、五六十人は一列になって大博士の前をとおりながらノートを開いて見せるのでした。すると大博士はそれをちょっと見て、一言か二言質問をして、それから白墨でえりへ、「合」とか、「再来」とか、「奮励」とか書くのでした。学生はその間、いかにも心配そうに首をちぢめているのでしたが、それからそっと肩をすぼめて廊下まで出て、友だちにそのしるしを読んでもらって、よろこんだりしょげたりするのでした。
130: 2023/12/29(金)16:02 AAS
ここは初めて読んだ時、面白かった
131: 2023/12/29(金)16:02 AAS
ぐんぐん試験が済んで、いよいよブドリ一人になりました。ブドリがその小さなきたない手帳を出したとき、クーボー大博士は大きなあくびをやりながら、かがんで目をぐっと手帳につけるようにしましたので、手帳はあぶなく大博士に吸い込まれそうになりました。
132: 2023/12/29(金)16:03 AAS
ペンネンネンネンネネムの伝記では確か本当に吸い込まれてしまうww
133: 2023/12/29(金)16:07 AAS
ところが大博士は、うまそうにこくっと一つ息をして、「よろしい。この図は非常に正しくできている。そのほかのところは、なんだ。ははあ、沼ばたけのこやしのことに、馬のたべ物のことかね。では問題に答えなさい。工場の煙突から出るけむりには、どういう色の種類があるか。」
ブドリは思わず大声に答えました。
「黒、褐かつ、黄、灰、白、無色。それからこれらの混合です。」
大博士はわらいました。
「無色のけむりはたいへんいい。形について言いたまえ。」
134: 2023/12/29(金)16:08 AAS
「無風で煙が相当あれば、たての棒にもなりますが、さきはだんだんひろがります。雲の非常に低い日は、棒は雲までのぼって行って、そこから横にひろがります。風のある日は、棒は斜めになりますが、その傾きは風の程度に従います。波やいくつもきれになるのは、風のためにもよりますが、一つはけむりや煙突のもつ癖のためです。あまり煙の少ないときは、コルク抜きの形にもなり、煙も重いガスがまじれば、煙突の口から房ふさになって、一方ないし四方におちることもあります。」
大博士はまたわらいました。
「よろしい。きみはどういう仕事をしているのか。」
「仕事をみつけに来たんです。」
135: 2023/12/29(金)16:08 AAS
この辺も見事だよね
136: 2023/12/29(金)16:08 AAS
「おもしろい仕事がある。名刺をあげるから、そこへすぐ行きなさい。」博士は名刺をとり出して、何かするする書き込んでブドリにくれました。ブドリはおじぎをして、戸口を出て行こうとしますと、大博士はちょっと目で答えて、
「なんだ、ごみを焼いてるのかな。」と低くつぶやきながら、テーブルの上にあった鞄かばんに、白墨チョークのかけらや、はんけちや本や、みんないっしょに投げ込んで小わきにかかえ、さっき顔を出した窓から、プイッと外へ飛び出しました。びっくりしてブドリが窓へかけよって見ますと、いつか大博士は玩具おもちゃのような小さな飛行船に乗って、じぶんでハンドルをとりながら、もううす青いもやのこめた町の上を、まっすぐに向こうへ飛んでいるのでした。
137: 2023/12/29(金)16:09 AAS
ブドリがいよいよあきれて見ていますと、まもなく大博士は、向こうの大きな灰いろの建物の平屋根に着いて、船を何かかぎのようなものにつなぐと、そのままぽろっと建物の中へはいって見えなくなってしまいました。
138: 2023/12/29(金)16:09 AAS
ぶっとんでるわ、元の話が化け物世界の話だからね
139: 2023/12/29(金)16:15 AAS
五 イーハトーヴ火山局
ブドリが、クーボー大博士からもらった名刺のあて名をたずねて、やっと着いたところは大きな茶いろの建物で、うしろには房ふさのような形をした高い柱が夜のそらにくっきり白く立っておりました。ブドリは玄関に上がって呼び鈴を押しますと、すぐ人が出て来て、ブドリの出した名刺を受け取り、一目見ると、すぐブドリを突き当たりの大きな室へ案内しました。
140: 2023/12/29(金)16:15 AAS
そこにはいままでに見たこともないような大きなテーブルがあって、そのまん中に一人の少し髪の白くなった人のよさそうな立派な人が、きちんとすわって耳に受話器をあてながら何か書いていました。そしてブドリのはいって来たのを見ると、すぐ横の椅子いすを指さしながら、また続けて何か書きつけています。
141: 2023/12/29(金)16:16 AAS
その室の右手の壁いっぱいに、イーハトーヴ全体の地図が、美しく色どった大きな模型に作ってあって、鉄道も町も川も野原もみんな一目でわかるようになっており、そのまん中を走るせぼねのような山脈と、海岸に沿って縁をとったようになっている山脈、またそれから枝を出して海の中に点々の島をつくっている一列の山々には、みんな赤や橙だいだいや黄のあかりがついていて、それがかわるがわる色が変わったりジーと蝉せみのように鳴ったり、数字が現われたり消えたりしているのです。
142: 2023/12/29(金)16:16 AAS
こういう箇所大好き
143: 2023/12/29(金)16:17 AAS
下の壁に添った棚たなには、黒いタイプライターのようなものが三列に百でもきかないくらい並んで、みんなしずかに動いたり鳴ったりしているのでした。ブドリがわれを忘れて見とれておりますと、その人が受話器をことっと置いて、ふところから名刺入れを出して、一枚の名刺をブドリに出しながら「あなたが、グスコーブドリ君ですか。私はこういうものです。」と言いました。見ると、〔イーハトーヴ火山局技師ペンネンナーム〕と書いてありました。その人はブドリの挨拶あいさつになれないでもじもじしているのを見ると、重ねて親切に言いました。
144: 2023/12/29(金)16:17 AAS
「さっきクーボー博士から電話があったのでお待ちしていました。まあこれから、ここで仕事をしながらしっかり勉強してごらんなさい。ここの仕事は、去年はじまったばかりですが、じつに責任のあるもので、それに半分はいつ噴火するかわからない火山の上で仕事するものなのです。それに火山の癖というものは、なかなか学問でわかることではないのです。われわれはこれからよほどしっかりやらなければならんのです。では今晩はあっちにあなたの泊まるところがありますから、そこでゆっくりお休みなさい。あしたこの建物じゅうをすっかり案内しますから。」
145: 2023/12/29(金)16:18 AAS
次の朝、ブドリはペンネン老技師に連れられて、建物のなかを一々つれて歩いてもらい、さまざまの機械やしかけを詳しく教わりました。その建物のなかのすべての器械はみんなイーハトーヴじゅうの三百幾つかの活火山や休火山に続いていて、それらの火山の煙や灰を噴ふいたり、熔岩ようがんを流したりしているようすはもちろん、みかけはじっとしている古い火山でも、その中の熔岩やガスのもようから、山の形の変わりようまで、みんな数字になったり図になったりして、あらわれて来るのでした。そしてはげしい変化のあるたびに、模型はみんな別々の音で鳴るのでした。
146: 2023/12/29(金)16:18 AAS
この辺、すごい理系的想像力だよね
147(1): 2023/12/29(金)16:19 AAS
ブドリはその日からペンネン老技師について、すべての器械の扱い方や観測のしかたを習い、夜も昼も一心に働いたり勉強したりしました。そして二年ばかりたちますと、ブドリはほかの人たちといっしょにあちこちの火山へ器械を据え付けに出されたり、据え付けてある器械の悪くなったのを修繕にやられたりもするようになりましたので、もうブドリにはイーハトーヴの三百幾つの火山と、その働き具合は掌たなごころの中にあるようにわかって来ました。
148: 2023/12/29(金)16:19 AAS
2年間の熟練期間をあっさりと書いてしまう、すごい
149: 2023/12/29(金)16:20 AAS
じつにイーハトーヴには、七十幾つの火山が毎日煙をあげたり、熔岩を流したりしているのでしたし、五十幾つかの休火山は、いろいろなガスを噴ふいたり、熱い湯を出したりしていました。そして残りの百六七十の死火山のうちにも、いつまた何をはじめるかわからないものもあるのでした。
150: 2023/12/29(金)16:20 AAS
ある日ブドリが老技師とならんで仕事をしておりますと、にわかにサンムトリという南のほうの海岸にある火山が、むくむく器械に感じ出して来ました。老技師が叫びました。
「ブドリ君。サンムトリは、けさまで何もなかったね。」
「はい、いままでサンムトリのはたらいたのを見たことがありません。」
「ああ、これはもう噴火が近い。けさの地震が刺激したのだ。この山の北十キロのところにはサンムトリの市がある。今度爆発すれば、たぶん山は三分の一、北側をはねとばして、牛やテーブルぐらいの岩は熱い灰やガスといっしょに、どしどしサンムトリ市におちてくる。どうでも今のうちに、この海に向いたほうへボーリングを入れて傷口をこさえて、ガスを抜くか熔岩を出させるかしなければならない。今すぐ二人で見に行こう。」二人はすぐにしたくして、サンムトリ行きの汽車に乗りました。
151: 2023/12/29(金)16:20 AAS
この辺、怪獣退治のウルトラ警備隊とか思わせる
152: 2023/12/29(金)16:21 AAS
六 サンムトリ火山
二人は次の朝、サンムトリの市に着き、ひるごろサンムトリ火山の頂近く、観測器械を置いてある小屋に登りました。そこは、サンムトリ山の古い噴火口の外輪山が、海のほうへ向いて欠けた所で、その小屋の窓からながめますと、海は青や灰いろの幾つもの縞しまになって見え、その中を汽船は黒いけむりを吐き、銀いろの水脈みおを引いていくつもすべっているのでした。
153: 2023/12/29(金)16:21 AAS
海は青や灰いろの幾つもの縞しまになって見え、その中を汽船は黒いけむりを吐き、銀いろの水脈みおを引いていくつもすべっているのでした。
154: 2023/12/29(金)16:21 AAS
海は青や灰いろの幾つもの縞しまになって見え、その中を汽船は黒いけむりを吐き、銀いろの水脈みおを引いていくつもすべっているのでした。
155: 2023/12/29(金)16:21 AAS
海は青や灰いろの幾つもの縞しまになって見え、その中を汽船は黒いけむりを吐き、銀いろの水脈みおを引いていくつもすべっているのでした。
156: 2023/12/29(金)16:24 AAS
老技師はしずかにすべての観測機を調べ、それからブドリに言いました。
「きみはこの山はあと何日ぐらいで噴火すると思うか。」
「一月はもたないと思います。」
「一月はもたない。もう十日ももたない。早く工作してしまわないと、取り返しのつかないことになる。私はこの山の海に向いたほうでは、あすこがいちばん弱いと思う。」老技師は山腹の谷の上のうす緑の草地を指さしました。そこを雲の影がしずかに青くすべっているのでした。
157: 2023/12/29(金)16:24 AAS
「あすこには熔岩ようがんの層が二つしかない。あとは柔らかな火山灰と火山礫かざんれきの層だ。それにあすこまでは牧場の道も立派にあるから、材料を運ぶことも造作ぞうさない。ぼくは工作隊を申請しよう。」
老技師は忙しく局へ発信をはじめました。その時足の下では、つぶやくようなかすかな音がして、観測小屋はしばらくぎしぎしきしみました。老技師は器械をはなれました。
158: 2023/12/29(金)16:24 AAS
「局からすぐ工作隊を出すそうだ。工作隊といっても半分決死隊だ。私はいままでに、こんな危険に迫った仕事をしたことがない。」
「十日のうちにできるでしょうか。」
「きっとできる。装置には三日、サンムトリ市の発電所から、電線を引いてくるには五日かかるな。」
技師はしばらく指を折って考えていましたが、やがて安心したようにまたしずかに言いました。
159: 2023/12/29(金)16:25 AAS
「とにかくブドリ君。一つ茶をわかして飲もうではないか。あんまりいい景色だから。」
ブドリは持って来たアルコールランプに火を入れて、茶をわかしはじめました。空にはだんだん雲が出て、それに日ももう落ちたのか、海はさびしい灰いろに変わり、たくさんの白い波がしらは、いっせいに火山のすそに寄せて来ました。
160: 2023/12/29(金)16:25 AAS
ここの描写もいいねえ
161: 2023/12/29(金)16:26 AAS
ふとブドリはすぐ目の前に、いつか見たことのあるおかしな形の小さな飛行船が飛んでいるのを見つけました。老技師もはねあがりました。
「あ、クーボー君がやって来た。」ブドリも続いて小屋をとび出しました。飛行船はもう小屋の左側の大きな岩の壁の上にとまって、中からせいの高いクーボー大博士がひらりと飛びおりていました。博士はしばらくその辺の岩の大きなさけ目をさがしていましたが、やっとそれを見つけたと見えて、手早くねじをしめて飛行船をつなぎました。
162: 2023/12/29(金)16:26 AAS
「お茶をよばれに来たよ。ゆれるかい。」大博士はにやにやわらって言いました。老技師が答えました。
「まだそんなでない。けれども、どうも岩がぼろぼろ上から落ちているらしいんだ。」
163: 2023/12/29(金)16:27 AAS
ちょうどその時、山はにわかにおこったように鳴り出し、ブドリは目の前が青くなったように思いました。山はぐらぐら続けてゆれました。見るとクーボー大博士も老技師もしゃがんで岩へしがみついていましたし、飛行船も大きな波に乗った船のようにゆっくりゆれておりました。
164: 2023/12/29(金)16:28 AAS
地震はやっとやみ、クーボー大博士は起きあがってすたすたと小屋へはいって行きました。中ではお茶がひっくり返って、アルコールが青くぽかぽか燃えていました。クーボー大博士は器械をすっかり調べて、それから老技師といろいろ話しました。そしてしまいに言いました。
「もうどうしても、来年は潮汐ちょうせき発電所を全部作ってしまわなければならない。それができれば今度のような場合にもその日のうちに仕事ができるし、ブドリ君が言っている沼ばたけの肥料も降らせられるんだ。」
165: 2023/12/29(金)16:28 AAS
自然に対する人間のありようについて考えさせられる
166: 2023/12/29(金)16:29 AAS
空海の灌漑事業
167: 2023/12/29(金)16:30 AAS
自然のコントロール
でもそうたやすくコントロールされない自然
168: 2023/12/29(金)16:30 AAS
人間は自然とどう共存していくのか
169: 2023/12/29(金)16:30 AAS
「旱魃かんばつだってちっともこわくなくなるからな。」ペンネン技師も言いました。ブドリは胸がわくわくしました。山まで踊りあがっているように思いました。じっさい山は、その時はげしくゆれ出して、ブドリは床へ投げ出されていたのです。大博士が言いました。
「やるぞ、やるぞ。いまのはサンムトリの市へも、かなり感じたにちがいない。」
老技師が言いました。
170: 2023/12/29(金)16:31 AAS
「今のはぼくらの足もとから、北へ一キロばかり、地表下七百メートルぐらいの所で、この小屋の六七十倍ぐらいの岩の塊かたまりが熔岩ようがんの中へ落ち込んだらしいのだ。ところがガスがいよいよ最後の岩の皮をはね飛ばすまでには、そんな塊を百も二百も、じぶんのからだの中にとらなければならない。」
大博士はしばらく考えていましたが、
「そうだ、僕はこれで失敬しよう。」と言って小屋を出て、いつかひらりと船に乗ってしまいました。
171: 2023/12/29(金)16:32 AAS
老技師とブドリは、大博士があかりを二三度振って挨拶あいさつしながら、山をまわって向こうへ行くのを見送ってまた小屋にはいり、かわるがわる眠ったり観測したりしました。そして明け方ふもとへ工作隊がつきますと、老技師はブドリを一人小屋に残して、きのう指さしたあの草地まで降りて行きました。みんなの声や、鉄の材料の触れ合う音は、下から風の吹き上げるときは、手にとるように聞こえました。ペンネン技師からはひっきりなしに、向こうの仕事の進み具合も知らせてよこし、ガスの圧力や山の形の変わりようも尋ねて来ました。それから三日の間は、はげしい地震や地鳴りのなかで、ブドリのほうもふもとのほうもほとんど眠るひまさえありませんでした。その四日目の午前、老技師からの発信が言って来ました。
「ブドリ君だな。すっかりしたくができた。急いで降りてきたまえ。観測の器械は一ぺん調べてそのままにして、表ひょうは全部持ってくるのだ。もうその小屋はきょうの午後にはなくなるんだから。」
172: 2023/12/29(金)16:32 AAS
ブドリはすっかり言われたとおりにして山を降りて行きました。そこにはいままで局の倉庫にあった大きな鉄材が、すっかり櫓やぐらに組み立っていて、いろいろな器械はもう電流さえ来ればすぐに働き出すばかりになっていました。ペンネン技師の頬ほおはげっそり落ち、工作隊の人たちも青ざめて目ばかり光らせながら、それでもみんな笑ってブドリに挨拶あいさつしました。
173: 2023/12/29(金)16:33 AAS
老技師が言いました。
「では引き上げよう。みんなしたくして車に乗りたまえ。」みんなは大急ぎで二十台の自動車に乗りました。車は列になって山のすそを一散にサンムトリの市に走りました。ちょうど山と市とのまん中どこで、技師は自動車をとめさせました。「ここへ天幕てんとを張りたまえ。そしてみんなで眠るんだ。」みんなは、物をひとことも言えずに、そのとおりにして倒れるようにねむってしまいました。その午後、老技師は受話器を置いて叫びました。
「さあ電線は届いたぞ。ブドリ君、始めるよ。」老技師はスイッチを入れました。ブドリたちは、天幕てんとの外に出て、サンムトリの中腹を見つめました。野原には、白百合しらゆりがいちめんに咲き、その向こうにサンムトリが青くひっそり立っていました。
174: 2023/12/29(金)16:33 AAS
サンムトリというアイヌ風の山名
175: 2023/12/29(金)16:34 AAS
にわかにサンムトリの左のすそがぐらぐらっとゆれ、まっ黒なけむりがぱっと立ったと思うとまっすぐに天までのぼって行って、おかしなきのこの形になり、その足もとから黄金色きんいろの熔岩ようがんがきらきら流れ出して、見るまにずうっと扇形にひろがりながら海へはいりました。と思うと地面ははげしくぐらぐらゆれ、百合の花もいちめんゆれ、それからごうっというような大きな音が、みんなを倒すくらい強くやってきました。それから風がどうっと吹いて行きました。
176: 2023/12/29(金)16:34 AAS
「やったやった。」とみんなはそっちに手を延ばして高く叫びました。この時サンムトリの煙は、くずれるようにそらいっぱいひろがって来ましたが、たちまちそらはまっ暗になって、熱いこいしがばらばらばらばら降ってきました。みんなは天幕の中にはいって心配そうにしていましたが、ペンネン技師は、時計を見ながら、
「ブドリ君、うまく行った。危険はもう全くない。市のほうへは灰をすこし降らせるだけだろう。」と言いました。こいしはだんだん灰にかわりました。それもまもなく薄くなって、みんなはまた天幕の外へ飛び出しました。野原はまるで一めんねずみいろになって、灰は一寸ばかり積もり、百合の花はみんな折れて灰に埋まり、空は変に緑いろでした。そしてサンムトリのすそには小さなこぶができて、そこから灰いろの煙が、まだどんどんのぼっておりました。
その夕方、みんなは灰やこいしを踏んで、もう一度山へのぼって、新しい観測の器械を据え着けて帰りました。
177: 2023/12/29(金)16:35 AAS
七 雲の海
それから四年の間に、クーボー大博士の計画どおり、潮汐ちょうせき発電所は、イーハトーヴの海岸に沿って、二百も配置されました。イーハトーヴをめぐる火山には、観測小屋といっしょに、白く塗られた鉄の櫓やぐらが順々に建ちました。
ブドリは技師心得になって、一年の大部分は火山から火山と回ってあるいたり、あぶなくなった火山を工作したりしていました。
178: 2023/12/29(金)16:37 AAS
次の年の春、イーハトーヴの火山局では、次のようなポスターを村や町へ張りました。
「窒素肥料を降らせます。
ことしの夏、雨といっしょに、硝酸アムモニヤをみなさんの沼ばたけや蔬菜そさいばたけに降らせますから、肥料を使うかたは、その分を入れて計算してください。分量は百メートル四方につき百二十キログラムです。
雨もすこしは降らせます。
旱魃かんばつの際には、とにかく作物の枯れないぐらいの雨は降らせることができますから、いままで水が来なくなって作付さくづけしなかった沼ばたけも、ことしは心配せずに植え付けてください。」
179(1): 2023/12/29(金)16:37 AAS
その年の六月、ブドリはイーハトーヴのまん中にあたるイーハトーヴ火山の頂上の小屋におりました。下はいちめん灰いろをした雲の海でした。そのあちこちからイーハトーヴじゅうの火山のいただきが、ちょうど島のように黒く出ておりました。その雲のすぐ上を一隻せきの飛行船が、船尾からまっ白な煙を噴ふいて、一つの峯から一つの峯へちょうど橋をかけるように飛びまわっていました。そのけむりは、時間がたつほどだんだん太くはっきりなってしずかに下の雲の海に落ちかぶさり、まもなく、いちめんの雲の海にはうす白く光る大きな網が山から山へ張りわたされました。いつか飛行船はけむりを納めて、しばらく挨拶あいさつするように輪を描いていましたが、やがて船首をたれてしずかに雲の中へ沈んで行ってしまいました。
180(1): 2023/12/29(金)16:37 AAS
受話器がジーと鳴りました。ペンネン技師の声でした。
「飛行船はいま帰って来た。下のほうのしたくはすっかりいい。雨はざあざあ降っている。もうよかろうと思う。はじめてくれたまえ。」
ブドリはぼたんを押しました。見る見るさっきのけむりの網は、美しい桃いろや青や紫に、パッパッと目もさめるようにかがやきながら、ついたり消えたりしました。ブドリはまるでうっとりとしてそれに見とれました。そのうちにだんだん日は暮れて、雲の海もあかりが消えたときは、灰いろかねずみいろかわからないようになりました。
181: 2023/12/29(金)16:39 AAS
受話器が鳴りました。
「硝酸アムモニヤはもう雨の中へでてきている。量もこれぐらいならちょうどいい。移動のぐあいもいいらしい。あと四時間やれば、もうこの地方は今月中はたくさんだろう。つづけてやってくれたまえ。」
ブドリはもううれしくってはね上がりたいくらいでした。
この雲の下で昔の赤ひげの主人も、となりの石油がこやしになるかと言った人も、みんなよろこんで雨の音を聞いている。そしてあすの朝は、見違えるように緑いろになったオリザの株を手でなでたりするだろう。まるで夢のようだと思いながら、雲のまっくらになったり、また美しく輝いたりするのをながめておりました。ところが短い夏の夜はもう明けるらしかったのです。電光の合間に、東の雲の海のはてがぼんやり黄ばんでいるのでした。
ところがそれは月が出るのでした。大きな黄いろな月がしずかにのぼってくるのでした。そして雲が青く光るときは変に白っぽく見え、桃いろに光るときは何かわらっているように見えるのでした。ブドリは、もうじぶんがだれなのか、何をしているのか忘れてしまって、ただぼんやりそれをみつめていました。
182: 2023/12/29(金)16:39 AAS
受話器はジーと鳴りました。
「こっちではだいぶ雷が鳴りだして来た。網があちこちちぎれたらしい。あんまり鳴らすとあしたの新聞が悪口を言うからもう十分ばかりでやめよう。」
ブドリは受話器を置いて耳をすましました。雲の海はあっちでもこっちでもぶつぶつぶつぶつつぶやいているのです。よく気をつけて聞くとやっぱりそれはきれぎれの雷の音でした。
ブドリはスイッチを切りました。にわかに月のあかりだけになった雲の海は、やっぱりしずかに北へ流れています。ブドリは毛布をからだに巻いてぐっすり眠りました。
183: 2023/12/29(金)16:40 AAS
八 秋
その年の農作物の収穫は、気候のせいもありましたが、十年の間にもなかったほど、よくできましたので、火山局にはあっちからもこっちからも感謝状や激励の手紙が届きました。ブドリははじめてほんとうに生きがいがあるように思いました。
184: 2023/12/29(金)16:40 AAS
ところがある日、ブドリがタチナという火山へ行った帰り、とりいれの済んでがらんとした沼ばたけの中の小さな村を通りかかりました。ちょうどひるころなので、パンを買おうと思って、一軒の雑貨や菓子を買っている店へ寄って、
「パンはありませんか。」とききました。するとそこには三人のはだしの人たちが、目をまっ赤かにして酒を飲んでおりましたが、一人が立ち上がって、
「パンはあるが、どうも食われないパンでな。石盤セキパンだもな。」とおかしなことを言いますと、みんなはおもしろそうにブドリの顔を見てどっと笑いました。ブドリはいやになって、ぷいっと表へ出ましたら、向こうから髪を角刈りにしたせいの高い男が来て、いきなり、
「おい、お前、ことしの夏、電気でこやし降らせたブドリだな。」と言いました。
「そうだ。」ブドリは何げなく答えました。その男は高く叫びました。
「火山局のブドリが来たぞ。みんな集まれ。」
すると今の家の中やそこらの畑から、十八人の百姓たちが、げらげらわらってかけて来ました。
185: 2023/12/29(金)16:41 AAS
「この野郎、きさまの電気のおかげで、おいらのオリザ、みんな倒れてしまったぞ。何なしてあんなまねしたんだ。」一人が言いました。
ブドリはしずかに言いました。
「倒れるなんて、きみらは春に出したポスターを見なかったのか。」
「何この野郎。」いきなり一人がブドリの帽子をたたき落としました。それからみんなは寄ってたかってブドリをなぐったりふんだりしました。ブドリはとうとう何がなんだかわからなくなって倒れてしまいました。
186: 2023/12/29(金)16:42 AAS
気がついてみるとブドリはどこかの病院らしい室の白いベッドに寝ていました。枕まくらもとには見舞いの電報や、たくさんの手紙がありました。ブドリのからだじゅうは痛くて熱く、動くことができませんでした。けれどもそれから一週間ばかりたちますと、もうブドリはもとの元気になっていました。そして新聞で、あのときの出来事は、肥料の入れようをまちがって教えた農業技師が、オリザの倒れたのをみんな火山局のせいにして、ごまかしていたためだということを読んで、大きな声で一人で笑いました。
187: 2023/12/29(金)16:43 AAS
この辺がいい人過ぎるのよ
賢治にとってはそれが理想だったのだろうけど
もちろん彼自身にも無理だったと思う
俺はもういっぺん甲助を睨みつけなければならん
188: 2023/12/29(金)16:45 AAS
その次の日の午後、病院の小使がはいって来て、
「ネリというご婦人のおかたがたずねておいでになりました。」と言いました。ブドリは夢ではないかと思いましたら、まもなく一人の日に焼けた百姓のおかみさんのような人が、おずおずとはいって来ました。それはまるで変わってはいましたが、あの森の中からだれかにつれて行かれたネリだったのです。二人はしばらく物も言えませんでしたが、やっとブドリが、その後のことをたずねますと、ネリもぼつぼつとイーハトーヴの百姓のことばで、今までのことを話しました。ネリを連れて行ったあの男は、三日ばかりの後、めんどうくさくなったのか、ある小さな牧場の近くへネリを残して、どこかへ行ってしまったのでした。
189: 2023/12/29(金)16:46 AAS
ネリがそこらを泣いて歩いていますと、その牧場の主人がかわいそうに思って家へ入れて、赤ん坊のお守もりをさせたりしていましたが、だんだんネリはなんでも働けるようになったので、とうとう三四年前にその小さな牧場のいちばん上の息子むすこと結婚したというのでした。そしてことしは肥料も降ったので、いつもなら厩肥まやごえを遠くの畑まで運び出さなければならず、たいへん難儀したのを、近くのかぶら畑へみんな入れたし、遠くの玉蜀黍とうもろこしもよくできたので、家じゅうみんなよろこんでいるというようなことも言いました。
190: 2023/12/29(金)16:46 AAS
またあの森の中へ主人の息子といっしょに何べんも行って見たけれども、家はすっかりこわれていたし、ブドリはどこへ行ったかわからないので、いつもがっかりして帰っていたら、きのう新聞で主人がブドリのけがをしたことを読んだので、やっとこっちへたずねて来たということも言いました。ブドリは、なおったらきっとその家へたずねて行ってお礼を言う約束をしてネリを帰しました。
191: 2023/12/29(金)16:47 AAS
九 カルボナード島
それからの五年は、ブドリにはほんとうに楽しいものでした。赤ひげの主人の家にも何べんもお礼に行きました。
192: 2023/12/29(金)16:47 AAS
もうよほど年はとっていましたが、やはり非常な元気で、こんどは毛の長いうさぎを千匹以上飼ったり、赤い甘藍かんらんばかり畑に作ったり、相変わらずの山師はやっていましたが、暮らしはずうっといいようでした。
193: 2023/12/29(金)16:47 AAS
ネリには、かわいらしい男の子が生まれました。冬に仕事がひまになると、ネリはその子にすっかりこどもの百姓のようなかたちをさせて、主人といっしょに、ブドリの家にたずねて来て、泊まって行ったりするのでした。
194: 2023/12/29(金)16:48 AAS
ここでめでたしめでたしで終わると思いきや
195: 2023/12/29(金)16:48 AAS
ある日、ブドリのところへ、昔てぐす飼いの男にブドリといっしょに使われていた人がたずねて来て、ブドリたちのおとうさんのお墓が森のいちばんはずれの大きな榧かやの木の下にあるということを教えて行きました。それは、はじめ、てぐす飼いの男が森に来て、森じゅうの木を見てあるいたとき、ブドリのおとうさんたちの冷たくなったからだを見つけて、ブドリに知らせないように、そっと土に埋めて、上へ一本の樺かばの枝をたてておいたというのでした。ブドリは、すぐネリたちをつれてそこへ行って、白い石灰岩の墓をたてて、それからもその辺を通るたびにいつも寄ってくるのでした。
196: 2023/12/29(金)16:49 AAS
そしてちょうどブドリが二十七の年でした。どうもあの恐ろしい寒い気候がまた来るような模様でした。測候所では、太陽の調子や北のほうの海の氷の様子から、その年の二月にみんなへそれを予報しました。それが一足ずつだんだんほんとうになって、こぶしの花が咲かなかったり、五月に十日もみぞれが降ったりしますと、みんなはもうこの前の凶作を思い出して、生きたそらもありませんでした。クーボー大博士も、たびたび気象や農業の技師たちと相談したり、意見を新聞へ出したりしましたが、やっぱりこの激しい寒さだけはどうともできないようすでした。
197(1): 2023/12/29(金)16:50 AAS
ところが六月もはじめになって、まだ黄いろなオリザの苗や、芽を出さない木を見ますと、ブドリはもういても立ってもいられませんでした。このままで過ぎるなら、森にも野原にも、ちょうどあの年のブドリの家族のようになる人がたくさんできるのです。ブドリはまるで物も食べずに幾晩も幾晩も考えました。
198: 2023/12/29(金)16:50 AAS
ある晩ブドリは、クーボー大博士のうちをたずねました。
「先生、気層のなかに炭酸ガスがふえて来れば暖かくなるのですか。」
「それはなるだろう。地球ができてからいままでの気温は、たいてい空気中の炭酸ガスの量できまっていたと言われるくらいだからね。」
199: 2023/12/29(金)16:50 AAS
地球温暖化、気候変動
200: 2023/12/29(金)16:51 AAS
「カルボナード火山島が、いま爆発したら、この気候を変えるくらいの炭酸ガスを噴ふくでしょうか。」
「それは僕も計算した。あれがいま爆発すれば、ガスはすぐ大循環の上層の風にまじって地球ぜんたいを包むだろう。そして下層の空気や地表からの熱の放散を防ぎ、地球全体を平均で五度ぐらい暖かくするだろうと思う。」
201: 2023/12/29(金)16:51 AAS
「先生、あれを今すぐ噴かせられないでしょうか。」
「それはできるだろう。けれども、その仕事に行ったもののうち、最後の一人はどうしても逃げられないのでね。」
202: 2023/12/29(金)16:51 AAS
うわあ
203: 2023/12/29(金)16:51 AAS
「先生、私にそれをやらしてください。どうか先生からペンネン先生へお許しの出るようおことばをください。」
「それはいけない。きみはまだ若いし、いまのきみの仕事にかわれるものはそうはない。」
「私のようなものは、これからたくさんできます。私よりもっともっとなんでもできる人が、私よりもっと立派にもっと美しく、仕事をしたり笑ったりして行くのですから。」
204: 2023/12/29(金)16:52 AAS
「その相談は僕はいかん。ペンネン技師に話したまえ。」
ブドリは帰って来て、ペンネン技師に相談しました。技師はうなずきました。
「それはいい。けれども僕がやろう。僕はことしもう六十三なのだ。ここで死ぬなら全く本望というものだ。」
205: 2023/12/29(金)16:52 AAS
「先生、けれどもこの仕事はまだあんまり不確かです。一ぺんうまく爆発してもまもなくガスが雨にとられてしまうかもしれませんし、また何もかも思ったとおりいかないかもしれません。先生が今度おいでになってしまっては、あとなんともくふうがつかなくなると存じます。」
老技師はだまって首をたれてしまいました。
206: 2023/12/29(金)16:53 AAS
それから三日の後、火山局の船が、カルボナード島へ急いで行きました。そこへいくつものやぐらは建ち、電線は連結されました。
すっかりしたくができると、ブドリはみんなを船で帰してしまって、じぶんは一人島に残りました。
207: 2023/12/29(金)16:53 AAS
ヤシマ作戦を思わせる
208: 2023/12/29(金)16:54 AAS
『新世紀エヴァンゲリオン』第六話『決戦、第3新東京市』のラミエル戦にて行われた作戦の名称。
作戦名は、屋島合戦で扇の的を射抜いた那須与一の故事にちなむ。
別名「二子山決戦」。
これで流れたBGMは「DECISIVE BATTLE(ディサイシブ・バトル)」。
残念ながらyoutube等では認知度が低いからか、だいたい曲名では引っかからず「ヤシマ作戦 BGM」で出ることが多い。
209: 2023/12/29(金)16:54 AAS
経緯
第5使徒ラミエルが第3新東京市に侵攻する。
ラミエルはビームによる遠隔攻撃を備えており、エヴァ初号機は一度敗退していた。
近づくことすら困難な状況。これに対して、葛城ミサトは遠距離からの狙撃を提案する。
だが、作戦に使用する陽電子砲(ポジトロン・スナイパー・ライフル)には、大量の電力が必要だった。
そこで、全日本国民の協力の下、日本中の電気の供給をストップし、すべての電力を陽電子砲に集めることとなる。
射撃者は初号機に搭乗する碇シンジ。
サポートは零号機に搭乗する綾波レイ。
210: 2023/12/29(金)16:55 AAS
他媒体におけるヤシマ作戦
テレビシリーズ第壱話から第六話までをセルフリメイクした劇場用アニメ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』でも、同様の作戦が行われた。
211: 2023/12/29(金)16:56 AAS
ゲーム『スーパーロボット大戦シリーズ』でも、何度かこの作戦が登場している。
その際クロスオーバーが行われることが多く、『F完結編』ではゴラオン(聖戦士ダンバイン)から、『α』では光子力エンジン(マジンガーZ)とゲッター炉(ゲッターロボ)をトロニウムで繋げたものから、『MX』では電童のハイパーデンドーデンチ(GEAR戦士電童)からエネルギーが供給された。『第3次Z』では原作通り日本全国から電力を集めたが、最後の一撃は出撃ユニットすべてにあらかじめ付けておいた外付けプラグでエネルギーを集めて仕掛けている。
『V』では第6の使徒襲来直前までNERVの戦力を接収しようとする地球連邦軍と戦っていたため、前述にあるような凝った準備は出来なかった(零号機の盾は準備できていた)が、ポジトロンライフルは地球連邦軍の別動隊で動いていたヤザン・ゲーブルとジェリド・メサが初号機に手渡しし、エネルギーはヤマトの波動エンジンから直接送るというやり方で実行に移すことが出来た。
212: 2023/12/29(金)16:56 AAS
PSO2では新劇場版をモチーフとしたコラボクエストが配信。
巨大船団の居住区に突如現れた第6使徒(PSO2には「幻創種」という「人々の恐怖や願望、想い」等が実体化した敵性存在が存在する。この第6使徒はその幻想種で、作中登場するシンジ達もその幻想種に分類される)に対し、艦の動力源の97%をポジトロンライフルに集中させている間機動兵器のA.I.Sに乗ったプレイヤーが陽動を担当するスパロボに似た流れ。
アクションRPGと言う土俵でとにかく新劇場版以上に様々な形に変わり、コアの位置もそれに伴って変化する為手応えのあるクエストになっている。また、その前後のストーリーも作品の世界観に併せて構成されており隙がない作り。
213(1): 2023/12/29(金)16:57 AAS
東日本大震災における「ヤシマ作戦」
2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震による発電所被害の影響を受け、関東圏内では電力供給能力が著しく低下している。
この事態を乗り切るため、電力消費のピークとされる18:00~20:00に節電を呼びかける運動がTwitterによって行われはじめた。
ハッシュタグは「#84MA」。
また、エヴァンゲリオン公式ブログでもこの活動をキャッチし、賛同を表明している。
この時間帯に限らず、各自でできうる限りの節電をよろしくお願いします。
214: 2023/12/29(金)16:57 AAS
NERV本部から支援物資が届きました!!
2011年3月14日夜、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』にて、主にクライマックスのヤシマ作戦部分を中心に画コンテを担当した樋口真嗣氏が、上記非公式節電キャンペーンを応援すべく、スタッフと共に輪番停電(計画停電)の該当エリア表示用イラストを作成し、pixivにアップした。
イラストは停電対象外地域のものも含めて数種あり、自分が該当する地域を選択して利用するかたちとなっている。
215: 2023/12/29(金)16:58 AAS
そしてその次の日、イーハトーヴの人たちは、青ぞらが緑いろに濁り、日や月が銅あかがねいろになったのを見ました。
けれどもそれから三四日たちますと、気候はぐんぐん暖かくなってきて、その秋はほぼ普通の作柄になりました。そしてちょうど、このお話のはじまりのようになるはずの、たくさんのブドリのおとうさんやおかあさんは、たくさんのブドリやネリといっしょに、その冬を暖かいたべものと、明るい薪たきぎで楽しく暮らすことができたのでした。
216: 2023/12/29(金)17:00 AAS
おとら狐ぎつねのはなしは、どなたもよくご存じでしょう。おとら狐にも、いろいろあったのでしょうか、私の知っているのは、「とっこべ、とら子」というのです。
「とっこべ」というのは名字でしょうか。「とら」というのは名前ですかね。そうすると、名字がさまざまで、名前がみんな「とら」という狐が、あちこちに住んでいたのでしょうか。
217: 2023/12/29(金)17:01 AAS
さて、むかし、とっこべとら子は大きな川の岸に住んでいて、夜、網打ちに行った人から魚を盗とったり、買物をして町から遅く帰る人から油揚げを取りかえしたり、実に始末におえないものだったそうです。
218: 2023/12/29(金)17:01 AAS
慾よくふかのじいさんが、ある晩ひどく酔っぱらって、町から帰って来る途中、その川岸を通りますと、ピカピカした金らんの上下かみしもの立派なさむらいに会いました。じいさんは、ていねいにおじぎをして行き過ぎようとしましたら、さむらいがピタリととまって、ちょっとそらを見上げて、それからあごを引いて、六平を呼び留めました。秋の十五夜でした。
219: 2023/12/29(金)17:02 AAS
「あいや、しばらく待て。そちは何と申す」
「へいへい。私は六平と申します」
「六平とな。そちは金貸しを業わざと致しおるな」
「へいへい。御意ぎょいの通りでございます。手元の金子きんすは、すべて、只今ただいまご用立致しております」
「いやいや、拙者せっしゃが借りようと申すのではない。どうじゃ。金貸しは面白かろう」
「へい、御冗談、へいへい。御意の通りで」
220: 2023/12/29(金)17:02 AAS
「拙者に少しく不用の金子がある。それに遠国に参る所じゃ。預かっておいてもらえまいか。もっとも拙者も数々敵を持つ身じゃ。万一途中相果てたなれば、金子はそのままそちに遣わす。どうじゃ」
「へい。それはきっとお預かりいたしまするでございます」
「左様か。あいや。金子はこれにじゃ。そち自ら蓋ふたを開いて一応改めくれい。エイヤ。はい。ヤッ」さむらいはふところから白いたすきを取り出して、たちまち十字にたすきをかけ、ごわりと袴はかまのもも立ちを取り、とんとんとんと土手の方へ走りましたが、ちょっとかがんで土手のかげから、千両ばこを一つ持って参りました。
221: 2023/12/29(金)17:03 AAS
ははあ、こいつはきっと泥棒だ、そうでなければにせ金使い、しかし何でもかまわない、万一途中相果てたなれば、金はごろりとこっちのものと、六平はひとりで考えて、それからほくほくするのを無理にかくして申しました。
「へい。へい。よろしゅうござります。御意の通り一応お改めいたしますでござります」
222: 2023/12/29(金)17:03 AAS
蓋を開くと中に小判が一ぱいつまり、月にぎらぎらかがやきました。
ハイ、ヤッとさむらいは千両函ばこを又一つ持って参りました。六平はもっともらしく又あらためました。これも小判が一ぱいで月にぎらぎらです。ハイ、ヤッ、ハイヤッ、ハイヤッ。千両ばこはみなで十ほどそこに積まれました。
「どうじゃ。これだけをそち一人で持ち参れるのかの。もっともそちの持てるだけ預けることといたそうぞよ」
どうもさむらいのことばが少し変でしたし、そしてたしかに変ですが、まあ六平にはそんなことはどうでもよかったのです。
223: 2023/12/29(金)17:04 AAS
「へい。へい。何の千両ばこの十やそこばこ、きっときっと持ち参るでござりましょう」
「うむ。左様か。しからば。いざ。いざ、持ち参れい」
「へいへい。ウントコショ、ウントコショ、ウウントコショ。ウウウントコショ」
224: 2023/12/29(金)17:08 AAS
「豪儀じゃ、豪儀じゃ、そちは左程さほどになけれども、そちの身に添う慾心が実げに大力じゃ。大力じゃのう。ほめ遣わす。ほめ遣わす。さらばしかと預けたぞよ」
さむらいは銀扇をパッと開いて感服しましたが、六平は余りの重さに返事も何も出来ませんでした。
225: 2023/12/29(金)17:08 AAS
さむらいは扇をかざして月に向って、
「それ一芸あるものはすがたみにくし」と何だか謡曲のような変なものを低くうなりながら向うへ歩いて行きました。
226: 2023/12/29(金)17:09 AAS
六平は十の千両ばこをよろよろしょって、もうお月さまが照ってるやら、路みちがどう曲ってどう上ってるやら、まるで夢中で自分の家までやってまいりました。そして荷物をどっかり庭におろして、おかしな声で外から怒鳴りました。
「開けろ開けろ。お帰りだ。大尽さまのお帰りだ」
227: 2023/12/29(金)17:09 AAS
六平の娘が戸をガタッと開けて、
「あれまあ、父さん。そったに砂利しょて何しただす」と叫びました。
六平もおどろいておろしたばかりの荷物を見ましたら、おやおや、それはどての普請の十の砂利俵でした。
228(1): 2023/12/29(金)17:10 AAS
六平はクウ、クウ、クウと鳴って、白い泡あわをはいて気絶しました。それからもうひどい熱病になって、二か月の間というもの、
「とっこべとら子に、だまされだ。ああ欺だまされだ」と叫んでいました。
229: 2023/12/29(金)17:10 AAS
みなさん。こんな話は一体ほんとうでしょうか。どうせ昔のことですから誰たれもよくわかりませんが多分偽うそではないでしょうか。
どうしてって、私はその偽の方の話をも一つちゃんと知ってるんです。それはあんまりちかごろ起ったことでもうそれがうそなことは疑いもなにもありません。実はゆうべ起ったことなのです。
230: 2023/12/29(金)17:11 AAS
おお、メタ発言ww
231: 2023/12/29(金)17:11 AAS
さあ、ご覧なさい。やはりあの大きな川の岸で、狐きつねの住んでいた処ところから半町ばかり離れた所に平右衛門という人の家があります。
平右衛門は今年の春村会議員になりました。それですから今夜はそのお祝いで親類はみな呼ばれました。
もうみんな大よろこび、ワッハハ、アッハハ、よう、おらおととい町さ行ったら魚屋の店で章魚たこといかとが立ちあがって喧嘩けんかした、ワッハハ、アッハハ、それはほんとか、それがらどうした、うん、かつおぶしが仲裁に入った、ワッハハ、アッハハ、それからどうした、ウン、するとかつおぶしがウウゥイ、ころは元禄げんろく十四年んん、おいおい、それは何だい、うん、なにさ、かつおぶしだもふしばがり、ワッハハアッハハ、まあのめ、さあ一杯、なんて大さわぎでした。
232: 2023/12/29(金)17:11 AAS
整いましたww
233: 2023/12/29(金)17:12 AAS
ところがその中に一人一向笑わない男がありました。それは小吉こきちという青い小さな意地悪の百姓でした。
小吉はさっきから怒ってばかりいたのです。(第一おら、下座しもざだちゅうはずぁあんまい、ふん、お椀わんのふぢぁ欠げでる、油煙はばやばや、さがなの眼玉は白くてぎろぎろ、誰だっても盃さかずきよごさないえい糞くそ面白ぐもなぃ)とうとう小吉がぷっと座を立ちました。
234: 2023/12/29(金)17:12 AAS
平右衛門が、
「待て、待て、小吉。もう一杯やれ、待てったら」と言っていましたが小吉はぷいっと下駄げたをはいて表に出てしまいました。
235: 2023/12/29(金)17:13 AAS
空がよく晴れて十三日の月がその天辺てっぺんにかかりました。小吉が門を出ようとしてふと足もとを見ますと門の横の田の畔くろに疫病除やくびょうよけの「源の大将」が立っていました。
それは竹へ半紙を一枚はりつけて大きな顔を書いたものです。
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