インディーアイドル板 交流スレ / しまむじろ / すの▲かぼ / ポチひとし / イモタオサム (737レス)
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49: 2023/12/29(金)13:28 AAS
いやに平べったい声
50
(1): 2023/12/29(金)13:28 AAS
いやに平べったい声
51: 2023/12/29(金)13:28 AAS
いやに平べったい声
52: 2023/12/29(金)13:35 AAS
「もう飢饉は過ぎたの? 手伝えって何を手伝うの?」
 ブドリがききました。
「網掛けさ。」
「ここへ網を掛けるの?」
「掛けるのさ。」
「網をかけて何にするの?」
「てぐすを飼うのさ。」見るとすぐブドリの前の栗くりの木に、二人の男がはしごをかけてのぼっていて、一生けん命何か網を投げたり、それを操あやつったりしているようでしたが、網も糸もいっこう見えませんでした。
53: 2023/12/29(金)13:36 AAS
「あれでてぐすが飼えるの?」
「飼えるのさ。うるさいこどもだな。おい、縁起でもないぞ。てぐすも飼えないところにどうして工場なんか建てるんだ。飼えるともさ。現におれをはじめたくさんのものが、それでくらしを立てているんだ。」
 ブドリはかすれた声で、やっと、
「そうですか。」と言いました。
54: 2023/12/29(金)13:36 AAS
「そんなら手伝うよ。けれどもどうして網をかけるの?」
「それはもちろん教えてやる。こいつをね。」男は、手に持った針金の籠かごのようなものを両手で引き伸ばしました。
「いいか。こういう具合にやるとはしごになるんだ。」
 男は大またに右手の栗くりの木に歩いて行って、下の枝に引っ掛けました。
55: 2023/12/29(金)13:37 AAS
「さあ、今度はおまえが、この網をもって上へのぼって行くんだ。さあ、のぼってごらん。」
 男は変なまりのようなものをブドリに渡しました。ブドリはしかたなくそれをもってはしごにとりついて登って行きましたが、はしごの段々がまるで細くて手や足に食いこんでちぎれてしまいそうでした。
56
(1): 2023/12/29(金)13:56 AAS
毎日毎日代り映えしない話題でいつまでも喧嘩
思考止まってるのか
57: 2023/12/29(金)14:59 AAS
>>56
わざわざここに来て書き込むお前の方がよほど思考停止だよ
5ちゃんで割って入るやつが一番のクズ
58: 2023/12/29(金)15:00 AAS
だって、喧嘩売られたやつは仕方がないが
喧嘩の当事者じゃなかや、この世にはいくらでも面白いことがある

わざわざ人に説教たれるのは頭の悪い最底辺の教師とか牛丼屋で店員にいばりちらす
最底辺の親父と同レベルだからね
人生が面白くないやつ以外は絶対やらない
59: 2023/12/29(金)15:00 AAS
ああ、こういうバカを見ると胸糞悪いわww
60: 2023/12/29(金)15:01 AAS
「もっと登るんだ。もっと、もっとさ。そしたらさっきのまりを投げてごらん。栗の木を越すようにさ。そいつを空へ投げるんだよ。なんだい、ふるえてるのかい。いくじなしだなあ。投げるんだよ。投げるんだよ。そら、投げるんだよ。」
 ブドリはしかたなく力いっぱいにそれを青空に投げたと思いましたら、にわかにお日さまがまっ黒に見えて逆しまに下へおちました。そしていつか、その男に受けとめられていたのでした。男はブドリを地面におろしながらぶりぶりおこり出しました。
「お前もいくじのないやつだ。なんというふにゃふにゃだ。おれが受け止めてやらなかったらお前は今ごろは頭がはじけていたろう。おれはお前の命の恩人だぞ。これからは、失礼なことを言ってはならん。ところで、さあ、こんどはあっちの木へ登れ。も少したったらごはんもたべさせてやるよ。」男はまたブドリへ新しいまりを渡しました。ブドリははしごをもって次の木へ行ってまりを投げました。
61: 2023/12/29(金)15:01 AAS
「よし、なかなかじょうずになった。さあ、まりはたくさんあるぞ。なまけるな。木も栗の木ならどれでもいいんだ。」
 男はポケットから、まりを十ばかり出してブドリに渡すと、すたすた向こうへ行ってしまいました。ブドリはまた三つばかりそれを投げましたが、どうしても息がはあはあして、からだがだるくてたまらなくなりました。もう家へ帰ろうと思って、そっちへ行って見ますと、おどろいたことには、家にはいつか赤い土管の煙突がついて、戸口には、「イーハトーヴてぐす工場」という看板がかかっているのでした。そして中からたばこをふかしながら、さっきの男が出て来ました。
62: 2023/12/29(金)15:02 AAS
「さあこども、たべものをもってきてやったぞ。これを食べて暗くならないうちにもう少しかせぐんだ。」
「ぼくはもういやだよ、うちへ帰るよ。」
「うちっていうのはあすこか。あすこはおまえのうちじゃない。おれのてぐす工場だよ。あの家もこの辺の森もみんなおれが買ってあるんだからな。」
 ブドリはもうやけになって、だまってその男のよこした蒸しパンをむしゃむしゃたべて、またまりを十ばかり投げました。
63: 2023/12/29(金)15:02 AAS
不条理の世界だ
カフカみたい
64: 2023/12/29(金)15:02 AAS
 その晩ブドリは、昔のじぶんのうち、いまはてぐす工場になっている建物のすみに、小さくなってねむりました。
 さっきの男は、三四人の知らない人たちとおそくまで炉ばたで火をたいて、何か飲んだりしゃべったりしていました。次の朝早くから、ブドリは森に出て、きのうのようにはたらきました。
65: 2023/12/29(金)15:03 AAS
それから一月ばかりたって、森じゅうの栗くりの木に網がかかってしまいますと、てぐす飼いの男は、こんどは粟あわのようなものがいっぱいついた板きれを、どの木にも五六枚ずつつるさせました。そのうちに木は芽を出して森はまっ青さおになりました。すると、木につるした板きれから、たくさんの小さな青じろい虫が糸をつたって列になって枝へはいあがって行きました。
66: 2023/12/29(金)15:03 AAS
おかいこさん
67: 2023/12/29(金)15:03 AAS
ブドリたちはこんどは毎日薪たきぎとりをさせられました。その薪が、家のまわりに小山のように積み重なり、栗くりの木が青じろいひものかたちの花を枝いちめんにつけるころになりますと、あの板からはいあがって行った虫も、ちょうど栗の花のような色とかたちになりました。そして森じゅうの栗の葉は、まるで形もなくその虫に食い荒らされてしまいました。
68: 2023/12/29(金)15:03 AAS
ちょうど栗の花のような色とかたち
69: 2023/12/29(金)15:04 AAS
ちょうど栗の花のような色とかたち
70: 2023/12/29(金)15:04 AAS
ちょうど栗の花のような色とかたち
71: 2023/12/29(金)15:04 AAS
ちょうど栗の花のような色とかたち
72: 2023/12/29(金)15:05 AAS
それからまもなく、虫は大きな黄いろな繭を、網の目ごとにかけはじめました。
 するとてぐす飼いの男は、狂気のようになって、ブドリたちをしかりとばして、その繭を籠かごに集めさせました。それをこんどは片っぱしから鍋なべに入れてぐらぐら煮て、手で車をまわしながら糸をとりました。夜も昼もがらがらがらがら三つの糸車をまわして糸をとりました。こうしてこしらえた黄いろな糸が小屋に半分ばかりたまったころ、外に置いた繭からは、大きな白い蛾ががぽろぽろぽろぽろ飛びだしはじめました。てぐす飼いの男は、まるで鬼みたいな顔つきになって、じぶんも一生けん命糸をとりましたし、野原のほうからも四人の人を連れてきて働かせました。けれども蛾のほうは日ましに多く出るようになって、しまいには森じゅうまるで雪でも飛んでいるようになりました。するとある日、六七台の荷馬車が来て、いままでにできた糸をみんなつけて、町のほうへ帰りはじめました。みんなも一人ずつ荷馬車について行きました。いちばんしまいの荷馬車がたったとき、てぐす飼いの男が、ブドリに、
「おい、お前の来春まで食うくらいのものは家の中に置いてやるからな。それまでここで森と工場の番をしているんだぞ。」
と言って、変ににやにやしながら荷馬車についてさっさと行ってしまいました。
73: 2023/12/29(金)15:05 AAS
資本主義だね
74: 2023/12/29(金)15:05 AAS
ブドリはぼんやりあとへ残りました。うちの中はまるできたなくてあらしのあとのようでしたし、森は荒れはてて山火事にでもあったようでした。ブドリが次の日、家のなかやまわりを片付けはじめましたら、てぐす飼いの男がいつもすわっていた所から古いボール紙の箱を見つけました。中には十冊ばかりの本がぎっしりはいっておりました。開いて見ると、てぐすの絵や機械の図がたくさんある、まるで読めない本もありましたし、いろいろな木や草の図と名前の書いてあるものもありました。
75: 2023/12/29(金)15:06 AAS
ブドリはいっしょうけんめい、その本のまねをして字を書いたり、図をうつしたりしてその冬を暮らしました。
 春になりますと、またあの男が六七人のあたらしい手下を連れて、たいへん立派ななりをしてやって来ました。そして次の日からすっかり去年のような仕事がはじまりました。
76: 2023/12/29(金)15:06 AAS
ああ、事業が成功してるんだね
77: 2023/12/29(金)15:06 AAS
そして網はみんなかかり、黄いろな板もつるされ、虫は枝にはい上がり、ブドリたちはまた、薪たきぎ作りにかかることになりました。ある朝ブドリたちが薪をつくっていましたら、にわかにぐらぐらっと地震がはじまりました。それからずうっと遠くでどーんという音がしました。
 しばらくたつと日が変にくらくなり、こまかな灰がばさばさばさばさ降って来て、森はいちめんにまっ白になりました。ブドリたちがあきれて木の下にしゃがんでいましたら、てぐす飼いの男がたいへんあわててやって来ました。
78: 2023/12/29(金)15:07 AAS
「おい、みんな、もうだめだぞ。噴火だ。噴火がはじまったんだ。てぐすはみんな灰をかぶって死んでしまった。みんな早く引き揚げてくれ。おい、ブドリ、お前ここにいたかったらいてもいいが、こんどはたべ物は置いてやらないぞ。それにここにいてもあぶないからな。お前も野原へ出て何かかせぐほうがいいぜ。」
 そう言ったかと思うと、もうどんどん走って行ってしまいました。ブドリが工場へ行って見たときは、もうだれもおりませんでした。そこでブドリは、しょんぼりとみんなの足跡のついた白い灰をふんで野原のほうへ出て行きました。
79: 2023/12/29(金)15:07 AAS
三 沼ばたけ

 ブドリは、いっぱいに灰をかぶった森の間を、町のほうへ半日歩きつづけました。灰は風の吹くたびに木からばさばさ落ちて、まるでけむりか吹雪ふぶきのようでした。けれどもそれは野原へ近づくほど、だんだん浅く少なくなって、ついには木も緑に見え、みちの足跡も見えないくらいになりました。
80: 2023/12/29(金)15:08 AAS
とうとう森を出切ったとき、ブドリは思わず目をみはりました。野原は目の前から、遠くのまっしろな雲まで、美しい桃いろと緑と灰いろのカードでできているようでした。そばへ寄って見ると、その桃いろなのには、いちめんにせいの低い花が咲いていて、蜜蜂みつばちがいそがしく花から花をわたってあるいていましたし、緑いろなのには小さな穂を出して草がぎっしりはえ、灰いろなのは浅い泥の沼でした。そしてどれも、低い幅のせまい土手でくぎられ、人は馬を使ってそれを掘り起こしたりかき回したりしてはたらいていました。
81: 2023/12/29(金)15:08 AAS
野原は目の前から、遠くのまっしろな雲まで、美しい桃いろと緑と灰いろのカードでできているようでした。
82: 2023/12/29(金)15:08 AAS
野原は目の前から、遠くのまっしろな雲まで、美しい桃いろと緑と灰いろのカードでできているようでした。
83: 2023/12/29(金)15:08 AAS
野原は目の前から、遠くのまっしろな雲まで、美しい桃いろと緑と灰いろのカードでできているようでした。
84: 2023/12/29(金)15:08 AAS
野原は目の前から、遠くのまっしろな雲まで、美しい桃いろと緑と灰いろのカードでできているようでした。
85: 2023/12/29(金)15:09 AAS
ブドリがその間を、しばらく歩いて行きますと、道のまん中に二人の人が、大声で何かけんかでもするように言い合っていました。右側のほうのひげの赭あかい人が言いました。
「なんでもかんでも、おれは山師張るときめた。」
 するとも一人の白い笠かさをかぶった、せいの高いおじいさんが言いました。
「やめろって言ったらやめるもんだ。そんなに肥料うんと入れて、藁わらはとれるたって、実は一粒もとれるもんでない。」
「うんにゃ、おれの見込みでは、ことしは今までの三年分暑いに相違ない。一年で三年分とって見せる。」
「やめろ。やめろ。やめろったら。」
「うんにゃ、やめない。花はみんな埋めてしまったから、こんどは豆玉を六十枚入れて、それから鶏の糞かえし、百駄だん入れるんだ。急がしったらなんの、こう忙しくなればささげのつるでもいいから手伝いに頼みたいもんだ。」
 ブドリは思わず近寄っておじぎをしました。
「そんならぼくを使ってくれませんか。」
86: 2023/12/29(金)15:09 AAS
すると二人は、ぎょっとしたように顔をあげて、あごに手をあててしばらくブドリを見ていましたが、赤ひげがにわかに笑い出しました。
「よしよし。お前に馬の指竿させとりを頼むからな。すぐおれについて行くんだ。それではまず、のるかそるか、秋まで見ててくれ。さあ行こう。ほんとに、ささげのつるでもいいから頼みたい時でな。」赤ひげは、ブドリとおじいさんにかわるがわる言いながら、さっさと先に立って歩きました。あとではおじいさんが、
「年寄りの言うこと聞かないで、いまに泣くんだな。」とつぶやきながら、しばらくこっちを見送っているようすでした。
87: 2023/12/29(金)15:10 AAS
それからブドリは、毎日毎日沼ばたけへはいって馬を使って泥をかき回しました。一日ごとに桃いろのカードも緑のカードもだんだんつぶされて、泥沼に変わるのでした。馬はたびたびぴしゃっと泥水をはねあげて、みんなの顔へ打ちつけました。一つの沼ばたけがすめばすぐ次の沼ばたけへはいるのでした。一日がとても長くて、しまいには歩いているのかどうかもわからなくなったり、泥が飴あめのような、水がスープのような気がしたりするのでした。風が何べんも吹いて来て、近くの泥水に魚のうろこのような波をたて、遠くの水をブリキいろにして行きました。そらでは、毎日甘くすっぱいような雲が、ゆっくりゆっくりながれていて、それがじつにうらやましそうに見えました。
88: 2023/12/29(金)15:12 AAS
こうして二十日はつかばかりたちますと、やっと沼ばたけはすっかりどろどろになりました。次の朝から主人はまるで気が立って、あちこちから集まって来た人たちといっしょに、その沼ばたけに緑いろの槍やりのようなオリザの苗をいちめん植えました。それが十日ばかりで済むと、今度はブドリたちを連れて、今まで手伝ってもらった人たちの家へ毎日働きにでかけました。それもやっと一まわり済むと、こんどはまたじぶんの沼ばたけへ戻って来て、毎日毎日草取りをはじめました。ブドリの主人の苗は大きくなってまるで黒いくらいなのに、となりの沼ばたけはぼんやりしたうすい緑いろでしたから、遠くから見ても、二人の沼ばたけははっきり境まで見わかりました。七日ばかりで草取りが済むとまたほかへ手伝いに行きました。
89: 2023/12/29(金)15:13 AAS
ところがある朝、主人はブドリを連れて、じぶんの沼ばたけを通りながら、にわかに「あっ」と叫んで棒立ちになってしまいました。見るとくちびるのいろまで水いろになって、ぼんやりまっすぐを見つめているのです。
「病気が出たんだ。」主人がやっと言いました。
「頭でも痛いんですか。」ブドリはききました。
「おれでないよ。オリザよ。それ。」主人は前のオリザの株を指さしました。ブドリはしゃがんでしらべてみますと。なるほどどの葉にも、いままで見たことのない赤い点々がついていました。主人はだまってしおしおと沼ばたけを一まわりしましたが、家へ帰りはじめました。ブドリも心配してついて行きますと、主人はだまって巾きれを水でしぼって、頭にのせると、そのまま板の間に寝てしまいました。するとまもなく、主人のおかみさんが表からかけ込んで来ました。
90: 2023/12/29(金)15:13 AAS
「オリザへ病気が出たというのはほんとうかい。」
「ああ、もうだめだよ。」
「どうにかならないのかい。」
「だめだろう。すっかり五年前のとおりだ。」
「だから、あたしはあんたに山師をやめろといったんじゃないか。おじいさんもあんなにとめたんじゃないか。」
 おかみさんはおろおろ泣きはじめました。すると主人がにわかに元気になってむっくり起き上がりました。
91: 2023/12/29(金)15:13 AAS
不撓不屈
92: 2023/12/29(金)15:14 AAS
「よし。イーハトーヴの野原で、指折り数えられる大百姓のおれが、こんなことで参るか。よし。来年こそやるぞ。ブドリ、おまえおれのうちへ来てから、まだ一晩も寝たいくらい寝たことがないな。さあ、五日でも十日でもいいから、ぐうというくらい寝てしまえ。おれはそのあとで、あすこの沼ばたけでおもしろい手品てずまをやって見せるからな。その代わりことしの冬は、家じゅうそばばかり食うんだぞ。おまえそばはすきだろうが。」それから主人はさっさと帽子をかぶって外へ出て行ってしまいました。
93
(1): 2023/12/29(金)15:27 AAS
この埋め立て、児童ポルノ愛好家のポチひとしが事前犯行声明出してやっているんだぜ
気に入らなきゃ近寄らないでおけばよいのに無駄なプライドばかり高いので放置することもできないww
94: 2023/12/29(金)15:34 AAS
>>93
プライドと関係ないよ
有害なスレは消えるべき
95: 2023/12/29(金)15:36 AAS
そもそもコテハン叩きは5ちゃんでは禁止
スレタイにコテハンないし名前のある住民の名前があったら運営は即削除すべきだがここの運営は運営側の人間がスレタイの時以外はやらない
そこに隔離した方がいいとでも思ってるんだろう
アルファラジュとかイモタオサムとか俺が全然知らないし興味ない人達の名前のスレな

もうスレタイに名前入れたスレは立てないことだね
96: 2023/12/29(金)15:37 AAS
ブドリは主人に言われたとおり納屋なやへはいって眠ろうと思いましたが、なんだかやっぱり沼ばたけが苦になってしかたないので、またのろのろそっちへ行って見ました。するといつ来ていたのか、主人がたった一人腕組みをして土手に立っておりました。見ると沼ばたけには水がいっぱいで、オリザの株は葉をやっと出しているだけ、上にはぎらぎら石油が浮かんでいるのでした。主人が言いました。
「いまおれ、この病気を蒸し殺してみるところだ。」
「石油で病気の種が死ぬんですか。」とブドリがききますと、主人は、
「頭から石油につけられたら人だって死ぬだ。」と言いながら、ほうと息を吸って首をちぢめました。その時、水下の沼ばたけの持ち主が、肩をいからして、息を切ってかけて来て、大きな声でどなりました。
「なんだって油など水へ入れるんだ。みんな流れて来て、おれのほうへはいってるぞ。」
 主人は、やけくそに落ちついて答えました。
「なんだって油など水へ入れるったって、オリザへ病気がついたから、油など水へ入れるのだ。」
「なんだってそんならおれのほうへ流すんだ。」
「なんだってそんならおまえのほうへ流すったって、水は流れるから油もついて流れるのだ。」
「そんならなんだっておれのほうへ水こないように水口みなくちとめないんだ。」
「なんだっておまえのほうへ水行かないように水口とめないかったって、あすこはおれのみな口でないから水とめないのだ。」
 となりの男は、かんかんおこってしまってもう物も言えず、いきなりがぶがぶ水へはいって、自分の水口に泥を積みあげはじめました。主人はにやりと笑いました。
97: 2023/12/29(金)15:37 AAS
「あの男むずかしい男でな。こっちで水をとめると、とめたといっておこるからわざと向こうにとめさせたのだ。あすこさえとめれば今夜じゅうに水はすっかり草の頭までかかるからな、さあ帰ろう。」主人はさきに立ってすたすた家へあるきはじめました。
98: 2023/12/29(金)15:38 AAS
次の朝ブドリはまた主人と沼ばたけへ行ってみました。主人は水の中から葉を一枚とってしきりにしらべていましたが、やっぱり浮かない顔でした。その次の日もそうでした。その次の日もそうでした。その次の日もそうでした。その次の朝、とうとう主人は決心したように言いました。
「さあブドリ、いよいよここへ蕎麦播そばまきだぞ。おまえあすこへ行って、となりの水口こわして来い。」
 ブドリは、言われたとおりこわして来ました。石油のはいった水は、恐ろしい勢いでとなりの田へ流れて行きます。きっとまたおこってくるなと思っていますと、ひるごろ例のとなりの持ち主が、大きな鎌かまをもってやってきました。
「やあ、なんだってひとの田へ石油ながすんだ。」
 主人がまた、腹の底から声を出して答えました。
「石油ながれればなんだって悪いんだ。」
「オリザみんな死ぬでないか。」
「オリザみんな死ぬか、オリザみんな死なないか、まずおれの沼ばたけのオリザ見なよ。きょうで四日頭から石油かぶせたんだ。それでもちゃんとこのとおりでないか。赤くなったのは病気のためで、勢いのいいのは石油のためなんだ。おまえの所など、石油がただオリザの足を通るだけでないか。かえっていいかもしれないんだ。」
「石油こやしになるのか。」向こうの男は少し顔いろをやわらげました。
99: 2023/12/29(金)15:38 AAS
「石油こやしになるか、石油こやしにならないか知らないが、とにかく石油は油でないか。」
「それは石油は油だな。」男はすっかりきげんを直してわらいました。水はどんどん退ひき、オリザの株は見る見る根もとまで出て来ました。すっかり赤い斑まだらができて焼けたようになっています。
「さあおれの所ではもうオリザ刈りをやるぞ。」
 主人は笑いながら言って、それからブドリといっしょに、片っぱしからオリザの株を刈り、跡へすぐ蕎麦そばを播まいて土をかけて歩きました。そしてその年はほんとうに主人の言ったとおり、ブドリの家では蕎麦ばかり食べました。次の春になると主人が言いました。
100: 2023/12/29(金)15:39 AAS
「ブドリ、ことしは沼ばたけは去年よりは三分の一減ったからな、仕事はよほどらくだ。そのかわりおまえは、おれの死んだ息子むすこの読んだ本をこれから一生けん命勉強して、いままでおれを山師だといってわらったやつらを、あっと言わせるような立派なオリザを作るくふうをしてくれ。」
 そして、いろいろな本を一山ブドリに渡しました。ブドリは仕事のひまに片っぱしからそれを読みました。ことにその中の、クーボーという人の物の考え方を教えた本はおもしろかったので何べんも読みました。またその人が、イーハトーヴの市で一か月の学校をやっているのを知って、たいへん行って習いたいと思ったりしました。
101: 2023/12/29(金)15:45 AAS
そして早くもその夏、ブドリは大きな手柄をたてました。それは去年と同じころ、またオリザに病気ができかかったのを、ブドリが木の灰と食塩しおを使って食いとめたのでした。そして八月のなかばになると、オリザの株はみんなそろって穂を出し、その穂の一枝ごとに小さな白い花が咲き、花はだんだん水いろの籾もみにかわって、風にゆらゆら波をたてるようになりました。主人はもう得意の絶頂でした。来る人ごとに、
「なんの、おれも、オリザの山師で四年しくじったけれども、ことしは一度に四年分とれる。これもまたなかなかいいもんだ。」などと言って自慢するのでした。
102: 2023/12/29(金)15:45 AAS
ところがその次の年はそうは行きませんでした。植え付けのころからさっぱり雨が降らなかったために、水路はかわいてしまい、沼にはひびが入って、秋のとりいれはやっと冬じゅう食べるくらいでした。来年こそと思っていましたが、次の年もまた同じようなひでりでした。それからも、来年こそ来年こそと思いながら、ブドリの主人は、だんだんこやしを入れることができなくなり、馬も売り、沼ばたけもだんだん売ってしまったのでした。
103: 2023/12/29(金)15:46 AAS
農業ってのは大変だよね
1年に1回しか経験値を積めないからってのを見たことある

そのとおりだ
104: 2023/12/29(金)15:46 AAS
ある秋の日、主人はブドリにつらそうに言いました。
「ブドリ、おれももとはイーハトーヴの大百姓だったし、ずいぶんかせいでも来たのだが、たびたびの寒さと旱魃かんばつのために、いまでは沼ばたけも昔の三分の一になってしまったし、来年はもう入れるこやしもないのだ。おれだけでない。来年こやしを買って入れれる人ったらもうイーハトーヴにも何人もないだろう。こういうあんばいでは、いつになっておまえにはたらいてもらった礼をするというあてもない。おまえも若い働き盛りを、おれのとこで暮らしてしまってはあんまり気の毒だから、済まないがどうかこれを持って、どこへでも行っていい運を見つけてくれ。」そして主人は、一ふくろのお金と新しい紺で染めた麻の服と赤皮の靴くつとをブドリにくれました。
105: 2023/12/29(金)15:46 AAS
いい人だ
106: 2023/12/29(金)15:47 AAS
ブドリはいままでの仕事のひどかったことも忘れてしまって、もう何もいらないから、ここで働いていたいとも思いましたが、考えてみると、いてもやっぱり仕事もそんなにないので、主人に何べんも何べんも礼を言って、六年の間はたらいた沼ばたけと主人に別れて、停車場をさして歩きだしました。
107: 2023/12/29(金)15:47 AAS
6年がこうして経つ
寓話、神話的だ
108: 2023/12/29(金)15:48 AAS
四 クーボー大博士

 ブドリは二時間ばかり歩いて、停車場へ来ました。それから切符を買って、イーハトーヴ行きの汽車に乗りました。汽車はいくつもの沼ばたけをどんどんどんどんうしろへ送りながら、もう一散に走りました。その向こうには、たくさんの黒い森が、次から次と形を変えて、やっぱりうしろのほうへ残されて行くのでした。ブドリはいろいろな思いで胸がいっぱいでした。早くイーハトーヴの市に着いて、あの親切な本を書いたクーボーという人に会い、できるなら、働きながら勉強して、みんながあんなにつらい思いをしないで沼ばたけを作れるよう、また火山の灰だのひでりだの寒さだのを除くくふうをしたいと思うと、汽車さえまどろこくってたまらないくらいでした。
109: 2023/12/29(金)15:48 AAS
くだらない長文コピ&ペーストがいいなら、このスレがあってもいいはず
すべてが自分にとって良いか悪いかの観点しかないのがポチという生き方
110: 2023/12/29(金)15:49 AAS
汽車はその日のひるすぎ、イーハトーヴの市に着きました。停車場を一足出ますと、地面の底から、何かのんのんわくようなひびきやどんよりとしたくらい空気、行ったり来たりするたくさんの自動車に、ブドリはしばらくぼうとしてつっ立ってしまいました。やっと気をとりなおして、そこらの人にクーボー博士の学校へ行くみちをたずねました。するとだれへきいても、みんなブドリのあまりまじめな顔を見て、吹き出しそうにしながら、
「そんな学校は知らんね。」とか、
「もう五六丁行ってきいてみな。」とかいうのでした。そしてブドリがやっと学校をさがしあてたのはもう夕方近くでした。その大きなこわれかかった白い建物の二階で、だれか大きな声でしゃべっていました。
111: 2023/12/29(金)15:49 AAS
「今日は。」ブドリは高く叫びました。だれも出てきませんでした。
「今日はあ。」ブドリはあらん限り高く叫びました。するとすぐ頭の上の二階の窓から、大きな灰いろの顔が出て、めがねが二つぎらりと光りました。それから、
「今授業中だよ、やかましいやつだ。用があるならはいって来い。」とどなりつけて、すぐ顔を引っ込めますと、中ではおおぜいでどっと笑い、その人はかまわずまた何か大声でしゃべっています。
112: 2023/12/29(金)15:51 AAS
ブドリはそこで思い切って、なるべく足音をたてないように二階にあがって行きますと、階段のつき当たりの扉とびらがあいていて、じつに大きな教室が、ブドリのまっ正面にあらわれました。中にはさまざまの服装をした学生がぎっしりです。向こうは大きな黒い壁になっていて、そこにたくさんの白い線が引いてあり、さっきのせいの高い目がねをかけた人が、大きな櫓やぐらの形の模型をあちこち指さしながら、さっきのままの高い声で、みんなに説明しておりました。
113: 2023/12/29(金)15:51 AAS
ブドリはそれを一目見ると、ああこれは先生の本に書いてあった歴史の歴史ということの模型だなと思いました。先生は笑いながら、一つのとってを回しました。模型はがちっと鳴って奇体な船のような形になりました。またがちっととってを回すと、模型はこんどは大きなむかでのような形に変わりました。
114: 2023/12/29(金)15:53 AAS
歴史の歴史というこういうメタなものの見方が面白い
115: 2023/12/29(金)15:54 AAS
「メタ発言」(めたはつげん)とは、「メタフィクション発言」の略。
アニメやマンガ、ゲームなどの登場人物が、作者や視聴者など、物語の外側でしか知り得ない知識や裏事情について、作中で発言すること。また発言したセリフ、それにまつわる行動そのもののこと。
116: 2023/12/29(金)15:54 AAS
典型的なメタ発言は、作中でキャラクターが「この世界はそういう設定だから」「作者が◯◯だから」など、“設定”や”作者”の存在を匂わせるもの。とくにギャグ性の高い作品に登場することが多いが、なかにはそのメタ発言が、ストーリーの重要なポイントになっている作品もある。
117: 2023/12/29(金)15:55 AAS
また舞台演劇などにおいて、登場人物が一部で役者本人として発言をすることも「メタ発言」の一種であると考えられる。

テレビアニメや特撮作品では、次回予告やCパートだけでメタ発言が繰り広げられることも多い。
118: 2023/12/29(金)15:55 AAS
「メタ発言」の由来・語源
「メタフィクション(Metafiction)」な発言であることから。

「メタフィクション」という用語自体は、1970年代にアメリカの作家であるウィリアム・ギャスの論文から生まれたとされている。日本国内では、1980年代から普及。高橋康也の論文『メタフィクション覚え書き―筒井康隆論のための小さな助走』がきっかけと考えられている。
119
(1): 2023/12/29(金)15:55 AAS
「メタ発言」の活用例
「今観てるアニメのキャラが、バリバリメタ発言してて爆笑しちゃった」
「夢が壊れるからメタ発言は禁止にしてほしい」
「メタ発言かと思ってたらめちゃくちゃ重大なネタバレだった」
120: 2023/12/29(金)15:56 AAS
▼定番のメタ発言の一例
・作者の存在を匂わせるもの
「それは作者の趣味だよ」
「文句は作者に言ってくれ」
121: 2023/12/29(金)15:56 AAS
・設定に触れるもの
「このマンガはそういう設定になってるんだよ」
「うちの雑誌じゃ、一度戦ったらみんな仲間になるものだから」
122: 2023/12/29(金)15:57 AAS
・読者や視聴者、プレイヤーに語りかけるもの
「テレビの前のみんなも、一緒に考えてみてね」
「ここでAボタンを押してみよう」
123: 2023/12/29(金)15:57 AAS
・尺や間隔について触れるもの
「今週のアイテムはこれ!」
「どうするんだ、あと10ページもあるのに」
124: 2023/12/29(金)15:57 AAS
▼有名なメタ発言の一例
「勝ったッ!第3部完!」(『ジョジョの奇妙な冒険』ズィー・ズィー)
「プリキュアのために、ミラクルライトを振ってほしいココ~」(『映画 Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!』ココ)
「ルパン!来週こそは必ず捕まえてやる!」(『ルパン三世』銭形警部)
「もうちょっとだけ続くんじゃ」(『ドラゴンボール』亀仙人)
「番組が長ーく続くとよくある話よね」(『星のカービィ』フーム)
「のび太は映画になると、かっこいいこと言うんだから」(『映画ドラえもん のび太と銀河超特急』骨川スネ夫)
125: 2023/12/29(金)15:58 AAS
▼メタ発言が多い作品の一例
『銀魂』世界観や設定、マンガやアニメの裏事情、作者ネタなど。メタ発言をテーマにしたエピソードもあった
『Dr.スランプ』作者が登場し、キャラクターとやり取りをする
『秘密結社鷹の爪』作中に制作予算のメーターが表示され、キャラクターが「メーターがゼロになると映画は終了し、結末は次回作に持ち越し」と発言する
126: 2023/12/29(金)15:59 AAS
▼メタ演出(※ゲームのネタバレあり)
正確には「主人公」と「プレイヤー」が別れているゲームにおいては、しばしば主人公ではなく、プレイヤー自身にキャラクターが語りかけてくるような“メタ演出”が組み込まれていることがある。
一部の「メタ発言」は、こうした“メタ演出”のひとつであるとも言える。

(例)
・ビジュアルノベルゲーム『ドキドキ文芸部!』は、終盤に登場キャラクターが「自分はゲームのキャラクターであることを自覚している」旨を発言。その虚しさから、主人公をゲーム世界に呼び込んだと打ち明ける。

・ミステリーゲーム『かまいたちの夜』は、特定シーンである操作をおこなうと、「このゲームの本当の作者は自分で、強制的に働かされ、命の危機に瀕している」という旨のメッセージが浮かび上がる。事実ではなく、制作サイドが意図して組み込んだフィクション要素である。
127: 2023/12/29(金)15:59 AAS
▼メタ発言の扱い
メタ発言の扱いは、作品やシーンによって異なる。
発言後、一切触れられない場合もあれば、「誰に向かって言っているんだ」とツッコミをされる場合や、他キャラクターもメタ要素について納得し会話が続く場合もある。
128: 2023/12/29(金)16:01 AAS
みんなはしきりに首をかたむけて、どうもわからんというふうにしていましたが、ブドリにはただおもしろかったのです。
「そこでこういう図ができる。」先生は黒い壁へ別の込み入った図をどんどん書きました。
 左手にもチョークをもって、さっさと書きました。学生たちもみんな一生けん命そのまねをしました。ブドリもふところから、いままで沼ばたけで持っていたきたない手帳を出して図を書きとりました。先生はもう書いてしまって、壇の上にまっすぐに立って、じろじろ学生たちの席を見まわしています。ブドリも書いてしまって、その図を縦横から見ていますと、ブドリのとなりで一人の学生が、
「あああ。」とあくびをしました。ブドリはそっとききました。
「ね、この先生はなんて言うんですか。」
 すると学生はばかにしたように鼻でわらいながら答えました。
「クーボー大博士さ、お前知らなかったのかい。」それからじろじろブドリのようすを見ながら、
「はじめから、この図なんか書けるもんか。ぼくでさえ同じ講義をもう六年もきいているんだ。」
と言って、じぶんのノートをふところへしまってしまいました。その時教室に、ぱっと電燈がつきました。もう夕方だったのです。大博士が向こうで言いました。
129: 2023/12/29(金)16:01 AAS
「いまや夕べははるかにきたり、拙講もまた全課をおえた。諸君のうちの希望者は、けだしいつもの例により、そのノートをば拙者に示し、さらに数箇の試問を受けて、所属を決すべきである。」学生たちはわあと叫んで、みんなばたばたノートをとじました。それからそのまま帰ってしまうものが大部分でしたが、五六十人は一列になって大博士の前をとおりながらノートを開いて見せるのでした。すると大博士はそれをちょっと見て、一言か二言質問をして、それから白墨でえりへ、「合」とか、「再来」とか、「奮励」とか書くのでした。学生はその間、いかにも心配そうに首をちぢめているのでしたが、それからそっと肩をすぼめて廊下まで出て、友だちにそのしるしを読んでもらって、よろこんだりしょげたりするのでした。
130: 2023/12/29(金)16:02 AAS
ここは初めて読んだ時、面白かった
131: 2023/12/29(金)16:02 AAS
 ぐんぐん試験が済んで、いよいよブドリ一人になりました。ブドリがその小さなきたない手帳を出したとき、クーボー大博士は大きなあくびをやりながら、かがんで目をぐっと手帳につけるようにしましたので、手帳はあぶなく大博士に吸い込まれそうになりました。
132: 2023/12/29(金)16:03 AAS
ペンネンネンネンネネムの伝記では確か本当に吸い込まれてしまうww
133: 2023/12/29(金)16:07 AAS
ところが大博士は、うまそうにこくっと一つ息をして、「よろしい。この図は非常に正しくできている。そのほかのところは、なんだ。ははあ、沼ばたけのこやしのことに、馬のたべ物のことかね。では問題に答えなさい。工場の煙突から出るけむりには、どういう色の種類があるか。」
 ブドリは思わず大声に答えました。
「黒、褐かつ、黄、灰、白、無色。それからこれらの混合です。」
 大博士はわらいました。
「無色のけむりはたいへんいい。形について言いたまえ。」
134: 2023/12/29(金)16:08 AAS
「無風で煙が相当あれば、たての棒にもなりますが、さきはだんだんひろがります。雲の非常に低い日は、棒は雲までのぼって行って、そこから横にひろがります。風のある日は、棒は斜めになりますが、その傾きは風の程度に従います。波やいくつもきれになるのは、風のためにもよりますが、一つはけむりや煙突のもつ癖のためです。あまり煙の少ないときは、コルク抜きの形にもなり、煙も重いガスがまじれば、煙突の口から房ふさになって、一方ないし四方におちることもあります。」
 大博士はまたわらいました。
「よろしい。きみはどういう仕事をしているのか。」
「仕事をみつけに来たんです。」
135: 2023/12/29(金)16:08 AAS
この辺も見事だよね
136: 2023/12/29(金)16:08 AAS
「おもしろい仕事がある。名刺をあげるから、そこへすぐ行きなさい。」博士は名刺をとり出して、何かするする書き込んでブドリにくれました。ブドリはおじぎをして、戸口を出て行こうとしますと、大博士はちょっと目で答えて、
「なんだ、ごみを焼いてるのかな。」と低くつぶやきながら、テーブルの上にあった鞄かばんに、白墨チョークのかけらや、はんけちや本や、みんないっしょに投げ込んで小わきにかかえ、さっき顔を出した窓から、プイッと外へ飛び出しました。びっくりしてブドリが窓へかけよって見ますと、いつか大博士は玩具おもちゃのような小さな飛行船に乗って、じぶんでハンドルをとりながら、もううす青いもやのこめた町の上を、まっすぐに向こうへ飛んでいるのでした。
137: 2023/12/29(金)16:09 AAS
ブドリがいよいよあきれて見ていますと、まもなく大博士は、向こうの大きな灰いろの建物の平屋根に着いて、船を何かかぎのようなものにつなぐと、そのままぽろっと建物の中へはいって見えなくなってしまいました。
138: 2023/12/29(金)16:09 AAS
ぶっとんでるわ、元の話が化け物世界の話だからね
139: 2023/12/29(金)16:15 AAS
五 イーハトーヴ火山局

 ブドリが、クーボー大博士からもらった名刺のあて名をたずねて、やっと着いたところは大きな茶いろの建物で、うしろには房ふさのような形をした高い柱が夜のそらにくっきり白く立っておりました。ブドリは玄関に上がって呼び鈴を押しますと、すぐ人が出て来て、ブドリの出した名刺を受け取り、一目見ると、すぐブドリを突き当たりの大きな室へ案内しました。
140: 2023/12/29(金)16:15 AAS
そこにはいままでに見たこともないような大きなテーブルがあって、そのまん中に一人の少し髪の白くなった人のよさそうな立派な人が、きちんとすわって耳に受話器をあてながら何か書いていました。そしてブドリのはいって来たのを見ると、すぐ横の椅子いすを指さしながら、また続けて何か書きつけています。
141: 2023/12/29(金)16:16 AAS
その室の右手の壁いっぱいに、イーハトーヴ全体の地図が、美しく色どった大きな模型に作ってあって、鉄道も町も川も野原もみんな一目でわかるようになっており、そのまん中を走るせぼねのような山脈と、海岸に沿って縁をとったようになっている山脈、またそれから枝を出して海の中に点々の島をつくっている一列の山々には、みんな赤や橙だいだいや黄のあかりがついていて、それがかわるがわる色が変わったりジーと蝉せみのように鳴ったり、数字が現われたり消えたりしているのです。
142: 2023/12/29(金)16:16 AAS
こういう箇所大好き
143: 2023/12/29(金)16:17 AAS
下の壁に添った棚たなには、黒いタイプライターのようなものが三列に百でもきかないくらい並んで、みんなしずかに動いたり鳴ったりしているのでした。ブドリがわれを忘れて見とれておりますと、その人が受話器をことっと置いて、ふところから名刺入れを出して、一枚の名刺をブドリに出しながら「あなたが、グスコーブドリ君ですか。私はこういうものです。」と言いました。見ると、〔イーハトーヴ火山局技師ペンネンナーム〕と書いてありました。その人はブドリの挨拶あいさつになれないでもじもじしているのを見ると、重ねて親切に言いました。
144: 2023/12/29(金)16:17 AAS
「さっきクーボー博士から電話があったのでお待ちしていました。まあこれから、ここで仕事をしながらしっかり勉強してごらんなさい。ここの仕事は、去年はじまったばかりですが、じつに責任のあるもので、それに半分はいつ噴火するかわからない火山の上で仕事するものなのです。それに火山の癖というものは、なかなか学問でわかることではないのです。われわれはこれからよほどしっかりやらなければならんのです。では今晩はあっちにあなたの泊まるところがありますから、そこでゆっくりお休みなさい。あしたこの建物じゅうをすっかり案内しますから。」
145: 2023/12/29(金)16:18 AAS
 次の朝、ブドリはペンネン老技師に連れられて、建物のなかを一々つれて歩いてもらい、さまざまの機械やしかけを詳しく教わりました。その建物のなかのすべての器械はみんなイーハトーヴじゅうの三百幾つかの活火山や休火山に続いていて、それらの火山の煙や灰を噴ふいたり、熔岩ようがんを流したりしているようすはもちろん、みかけはじっとしている古い火山でも、その中の熔岩やガスのもようから、山の形の変わりようまで、みんな数字になったり図になったりして、あらわれて来るのでした。そしてはげしい変化のあるたびに、模型はみんな別々の音で鳴るのでした。
146: 2023/12/29(金)16:18 AAS
この辺、すごい理系的想像力だよね
147
(1): 2023/12/29(金)16:19 AAS
ブドリはその日からペンネン老技師について、すべての器械の扱い方や観測のしかたを習い、夜も昼も一心に働いたり勉強したりしました。そして二年ばかりたちますと、ブドリはほかの人たちといっしょにあちこちの火山へ器械を据え付けに出されたり、据え付けてある器械の悪くなったのを修繕にやられたりもするようになりましたので、もうブドリにはイーハトーヴの三百幾つの火山と、その働き具合は掌たなごころの中にあるようにわかって来ました。
148: 2023/12/29(金)16:19 AAS
2年間の熟練期間をあっさりと書いてしまう、すごい
149: 2023/12/29(金)16:20 AAS
じつにイーハトーヴには、七十幾つの火山が毎日煙をあげたり、熔岩を流したりしているのでしたし、五十幾つかの休火山は、いろいろなガスを噴ふいたり、熱い湯を出したりしていました。そして残りの百六七十の死火山のうちにも、いつまた何をはじめるかわからないものもあるのでした。
150: 2023/12/29(金)16:20 AAS
 ある日ブドリが老技師とならんで仕事をしておりますと、にわかにサンムトリという南のほうの海岸にある火山が、むくむく器械に感じ出して来ました。老技師が叫びました。
「ブドリ君。サンムトリは、けさまで何もなかったね。」
「はい、いままでサンムトリのはたらいたのを見たことがありません。」
「ああ、これはもう噴火が近い。けさの地震が刺激したのだ。この山の北十キロのところにはサンムトリの市がある。今度爆発すれば、たぶん山は三分の一、北側をはねとばして、牛やテーブルぐらいの岩は熱い灰やガスといっしょに、どしどしサンムトリ市におちてくる。どうでも今のうちに、この海に向いたほうへボーリングを入れて傷口をこさえて、ガスを抜くか熔岩を出させるかしなければならない。今すぐ二人で見に行こう。」二人はすぐにしたくして、サンムトリ行きの汽車に乗りました。
151: 2023/12/29(金)16:20 AAS
この辺、怪獣退治のウルトラ警備隊とか思わせる
152: 2023/12/29(金)16:21 AAS
六 サンムトリ火山

 二人は次の朝、サンムトリの市に着き、ひるごろサンムトリ火山の頂近く、観測器械を置いてある小屋に登りました。そこは、サンムトリ山の古い噴火口の外輪山が、海のほうへ向いて欠けた所で、その小屋の窓からながめますと、海は青や灰いろの幾つもの縞しまになって見え、その中を汽船は黒いけむりを吐き、銀いろの水脈みおを引いていくつもすべっているのでした。
153: 2023/12/29(金)16:21 AAS
海は青や灰いろの幾つもの縞しまになって見え、その中を汽船は黒いけむりを吐き、銀いろの水脈みおを引いていくつもすべっているのでした。
154: 2023/12/29(金)16:21 AAS
海は青や灰いろの幾つもの縞しまになって見え、その中を汽船は黒いけむりを吐き、銀いろの水脈みおを引いていくつもすべっているのでした。
155: 2023/12/29(金)16:21 AAS
海は青や灰いろの幾つもの縞しまになって見え、その中を汽船は黒いけむりを吐き、銀いろの水脈みおを引いていくつもすべっているのでした。
156: 2023/12/29(金)16:24 AAS
老技師はしずかにすべての観測機を調べ、それからブドリに言いました。
「きみはこの山はあと何日ぐらいで噴火すると思うか。」
「一月はもたないと思います。」
「一月はもたない。もう十日ももたない。早く工作してしまわないと、取り返しのつかないことになる。私はこの山の海に向いたほうでは、あすこがいちばん弱いと思う。」老技師は山腹の谷の上のうす緑の草地を指さしました。そこを雲の影がしずかに青くすべっているのでした。
157: 2023/12/29(金)16:24 AAS
「あすこには熔岩ようがんの層が二つしかない。あとは柔らかな火山灰と火山礫かざんれきの層だ。それにあすこまでは牧場の道も立派にあるから、材料を運ぶことも造作ぞうさない。ぼくは工作隊を申請しよう。」
 老技師は忙しく局へ発信をはじめました。その時足の下では、つぶやくようなかすかな音がして、観測小屋はしばらくぎしぎしきしみました。老技師は器械をはなれました。
158: 2023/12/29(金)16:24 AAS
「局からすぐ工作隊を出すそうだ。工作隊といっても半分決死隊だ。私はいままでに、こんな危険に迫った仕事をしたことがない。」
「十日のうちにできるでしょうか。」
「きっとできる。装置には三日、サンムトリ市の発電所から、電線を引いてくるには五日かかるな。」
 技師はしばらく指を折って考えていましたが、やがて安心したようにまたしずかに言いました。
159: 2023/12/29(金)16:25 AAS
「とにかくブドリ君。一つ茶をわかして飲もうではないか。あんまりいい景色だから。」
 ブドリは持って来たアルコールランプに火を入れて、茶をわかしはじめました。空にはだんだん雲が出て、それに日ももう落ちたのか、海はさびしい灰いろに変わり、たくさんの白い波がしらは、いっせいに火山のすそに寄せて来ました。
160: 2023/12/29(金)16:25 AAS
ここの描写もいいねえ
161: 2023/12/29(金)16:26 AAS
ふとブドリはすぐ目の前に、いつか見たことのあるおかしな形の小さな飛行船が飛んでいるのを見つけました。老技師もはねあがりました。
「あ、クーボー君がやって来た。」ブドリも続いて小屋をとび出しました。飛行船はもう小屋の左側の大きな岩の壁の上にとまって、中からせいの高いクーボー大博士がひらりと飛びおりていました。博士はしばらくその辺の岩の大きなさけ目をさがしていましたが、やっとそれを見つけたと見えて、手早くねじをしめて飛行船をつなぎました。
162: 2023/12/29(金)16:26 AAS
「お茶をよばれに来たよ。ゆれるかい。」大博士はにやにやわらって言いました。老技師が答えました。
「まだそんなでない。けれども、どうも岩がぼろぼろ上から落ちているらしいんだ。」
163: 2023/12/29(金)16:27 AAS
ちょうどその時、山はにわかにおこったように鳴り出し、ブドリは目の前が青くなったように思いました。山はぐらぐら続けてゆれました。見るとクーボー大博士も老技師もしゃがんで岩へしがみついていましたし、飛行船も大きな波に乗った船のようにゆっくりゆれておりました。
164: 2023/12/29(金)16:28 AAS
 地震はやっとやみ、クーボー大博士は起きあがってすたすたと小屋へはいって行きました。中ではお茶がひっくり返って、アルコールが青くぽかぽか燃えていました。クーボー大博士は器械をすっかり調べて、それから老技師といろいろ話しました。そしてしまいに言いました。
「もうどうしても、来年は潮汐ちょうせき発電所を全部作ってしまわなければならない。それができれば今度のような場合にもその日のうちに仕事ができるし、ブドリ君が言っている沼ばたけの肥料も降らせられるんだ。」
165: 2023/12/29(金)16:28 AAS
自然に対する人間のありようについて考えさせられる
166: 2023/12/29(金)16:29 AAS
空海の灌漑事業
167: 2023/12/29(金)16:30 AAS
自然のコントロール
でもそうたやすくコントロールされない自然
168: 2023/12/29(金)16:30 AAS
人間は自然とどう共存していくのか
169: 2023/12/29(金)16:30 AAS
「旱魃かんばつだってちっともこわくなくなるからな。」ペンネン技師も言いました。ブドリは胸がわくわくしました。山まで踊りあがっているように思いました。じっさい山は、その時はげしくゆれ出して、ブドリは床へ投げ出されていたのです。大博士が言いました。
「やるぞ、やるぞ。いまのはサンムトリの市へも、かなり感じたにちがいない。」
 老技師が言いました。
170: 2023/12/29(金)16:31 AAS
「今のはぼくらの足もとから、北へ一キロばかり、地表下七百メートルぐらいの所で、この小屋の六七十倍ぐらいの岩の塊かたまりが熔岩ようがんの中へ落ち込んだらしいのだ。ところがガスがいよいよ最後の岩の皮をはね飛ばすまでには、そんな塊を百も二百も、じぶんのからだの中にとらなければならない。」
 大博士はしばらく考えていましたが、
「そうだ、僕はこれで失敬しよう。」と言って小屋を出て、いつかひらりと船に乗ってしまいました。
171: 2023/12/29(金)16:32 AAS
老技師とブドリは、大博士があかりを二三度振って挨拶あいさつしながら、山をまわって向こうへ行くのを見送ってまた小屋にはいり、かわるがわる眠ったり観測したりしました。そして明け方ふもとへ工作隊がつきますと、老技師はブドリを一人小屋に残して、きのう指さしたあの草地まで降りて行きました。みんなの声や、鉄の材料の触れ合う音は、下から風の吹き上げるときは、手にとるように聞こえました。ペンネン技師からはひっきりなしに、向こうの仕事の進み具合も知らせてよこし、ガスの圧力や山の形の変わりようも尋ねて来ました。それから三日の間は、はげしい地震や地鳴りのなかで、ブドリのほうもふもとのほうもほとんど眠るひまさえありませんでした。その四日目の午前、老技師からの発信が言って来ました。
「ブドリ君だな。すっかりしたくができた。急いで降りてきたまえ。観測の器械は一ぺん調べてそのままにして、表ひょうは全部持ってくるのだ。もうその小屋はきょうの午後にはなくなるんだから。」
172: 2023/12/29(金)16:32 AAS
 ブドリはすっかり言われたとおりにして山を降りて行きました。そこにはいままで局の倉庫にあった大きな鉄材が、すっかり櫓やぐらに組み立っていて、いろいろな器械はもう電流さえ来ればすぐに働き出すばかりになっていました。ペンネン技師の頬ほおはげっそり落ち、工作隊の人たちも青ざめて目ばかり光らせながら、それでもみんな笑ってブドリに挨拶あいさつしました。
173: 2023/12/29(金)16:33 AAS
老技師が言いました。
「では引き上げよう。みんなしたくして車に乗りたまえ。」みんなは大急ぎで二十台の自動車に乗りました。車は列になって山のすそを一散にサンムトリの市に走りました。ちょうど山と市とのまん中どこで、技師は自動車をとめさせました。「ここへ天幕てんとを張りたまえ。そしてみんなで眠るんだ。」みんなは、物をひとことも言えずに、そのとおりにして倒れるようにねむってしまいました。その午後、老技師は受話器を置いて叫びました。
「さあ電線は届いたぞ。ブドリ君、始めるよ。」老技師はスイッチを入れました。ブドリたちは、天幕てんとの外に出て、サンムトリの中腹を見つめました。野原には、白百合しらゆりがいちめんに咲き、その向こうにサンムトリが青くひっそり立っていました。
174: 2023/12/29(金)16:33 AAS
サンムトリというアイヌ風の山名
175: 2023/12/29(金)16:34 AAS
 にわかにサンムトリの左のすそがぐらぐらっとゆれ、まっ黒なけむりがぱっと立ったと思うとまっすぐに天までのぼって行って、おかしなきのこの形になり、その足もとから黄金色きんいろの熔岩ようがんがきらきら流れ出して、見るまにずうっと扇形にひろがりながら海へはいりました。と思うと地面ははげしくぐらぐらゆれ、百合の花もいちめんゆれ、それからごうっというような大きな音が、みんなを倒すくらい強くやってきました。それから風がどうっと吹いて行きました。
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