[過去ログ] アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ3 (397レス)
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172: 2007/09/30(日) 00:30:08 ID:TSbkku24(1)調 AAS
バトルロワイアルと直接関係ないキャラはいかがなものか
やはり参加者AAがいい
173: 2007/09/30(日) 00:39:07 ID:HgFhcgf+(3/4)調 AAS
なるほど
174: 2007/09/30(日) 01:18:18 ID:BADIB5u2(1)調 AAS
そもそも、ホスト晒しとかも平然とやるような連中の掲示板に
誰が行くかwww
175: 2007/09/30(日) 02:29:01 ID:RmFeesCL(1/4)調 AAS
1389 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 21:48:52 ID:???0
とりあえずツチダマの方で言おうぜ?
まずはアレが終わってからだが
1390 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 21:49:50 ID:???0
ドモンはなぁ……
マーダー増えるなら有りかとも思ったけど、
やっぱり最終話後の割には未熟すぎるか
1391 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 21:49:59 ID:???0
レガードの糸はただの鋼線やピアノ線でもいいと思うけど、
実際下の所有者名が付いているだけのただの鋼線だから別に変えるほどではないかと。
ドモンは…。所詮はギャグ描写だから、気になるようなら次のSSの最初で正気に戻すという手もある。
これもそこまでメクジラたてなくてもいいと思った。
1392 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 21:50:39 ID:???0
兄さんを超える云々言ってるってことはシュバルツ=キョウジって判明後じゃね?
じゃ無いと『この写真の男を知っているか?』だろうし。
ただSSとしては面白かったし、今後我に返ってもいいし通しでも問題ないと思う。
1393 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 21:51:56 ID:???0
アニロワ発祥のCのカス野郎がこれだけ暴れまわって恥ずかしいのに、また2号が増えるとかやめてくれよ……。
1394 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 21:53:24 ID:???0
>>1393
二号とは限らんだろう。
1395 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 21:53:29 ID:???0
何あの偉そうな態度は
1396 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 21:54:52 ID:???0
>>1394
やっぱり『お帰りなさい』なのかな……。CはFateそんなに好きじゃないと思ったのに……。
1397 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 21:55:14 ID:???0
変な理屈を捏ねて他人の論理を見下す……初期CよりむしろGの方が思い浮かぶ態度だな。
1398 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 21:56:35 ID:???0
今日は、支援入れた方がいいのかね。
投下スレ。
1399 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 21:57:13 ID:???0
ところでさ、今回自作品アイテム支給・自作品アイテムGETが多すぎないか?
特に問題があるわけではないけど、クロスオーバー設定活かすには微妙に思わなくもない。
176: 睡蓮-あまねく花 ◆umwdy9coMs 2007/09/30(日) 02:29:46 ID:fwYKRIWK(1/6)調 AAS
「ふ、ふふふ藤乃さん。ほ、本当にこの船の中に入るんですか?」
豪華な列車のなかで黒服やら白服の危険人物達。更にいえばレイルトレーサーと言う人ですらない化け物と遭遇してしまったジャグジーとしては余り豪華な乗り物には乗りたくなかった。
しかしそんな必死のジャグジーの抗弁も
「あら?ほなジャグジーはんはうちに野上で着がええ言ううん?ジャグジーはんって意外と…「ちちちち違いますよ!分かりました入りましょう!すぐ入りましょう!」
静留に良い様にあしらわれ、逃げるように豪華客船への階段を駆け上げって行くジャグジーだが
「ジャグジーはん、顔が赤いで?」
の一言で階段からに転げ落ちそうになってしまった。
「い、いいから行きますよ!」
しかし初心な少年の反応に気を良くした藤乃は困惑したような表情を作り
「でも良く考えたらこんな逃げ場のないところで着換えたらムラムラしたジャグジーはんに襲われるかもしれんし……」
「くぁwせdrftgyふじこ!」
声にならない声で必死に否定するジャグジーの様子を堪能した静留はジャグジーの背中を軽く叩き
「ま、冗談はこの位にしてそろそろ行こか」
と声をかけジャグジーを追い抜き船の上に上がっていった。
一連の流れで半泣きになりながら静留の背中を眺めていたジャグジーは何時まで立っても付いて来無いジャグジーに振り返った静留の
「あ、そうそう。もしほんまに覗いたら……その首、ポーンと跳ねますえ?」
の一言で本格的に泣き出してしまった。
177: 睡蓮-あまねく花 ◆umwdy9coMs 2007/09/30(日) 02:31:22 ID:fwYKRIWK(2/6)調 AAS
船内の適当な部屋で着替えを調達した後(余談ではあるが静留がシャワーを浴びる時またひと悶着あった)、二人は今後の方針について話し合った。
「ほな、ジャグジーはんの知り合いはアイザックはんとミリアはん、それにチェスはんでええんやね?」
「はい、二人ともとっても楽しい人たちで、こんな殺し合いにになんかに乗るような人たちじゃありません。チェス君はまだ小さい子で…だから早く見つけて守ってあげないと」
そこで一拍置き、今度はこちらの知り合いについて確認してくる。
「それで藤乃さんの知り合いが……なつきさんですか?」
なつき。
そう、とりあえずなつきに会わないと始まらない。
「なつき以外にも二人ほど知り合いがおるけど、とりあえずなつきやな」
なつきと会う前に他の知り合い───舞衣や奈緒に会ってしまうと、考えたくはないがもしなつきの名前が放送で呼ばれた時に行動が取りづらくなってしまう。
そもそもこんな場所で奈緒にあえばこれ幸いと再戦を挑んでくる可能性も高い。
舞衣の方も奈緒よりはましだが不安定なところも多く、この場所で平静を保てるとも限らない。
では、なつきに会うためにはどうすればいいのか。
無闇に歩き回っても会える可能性は低い。
出来るだけ安全に、素早く動けてそれでいてなつきがこちらを発見しやすい移動手段。
つまり───
「なあジャグジーはん、この船、動かへんかな?」
静留の発言が予想外だったのかジャグジーは一瞬固まり、
「えええええええええええええええええっ!?」
驚きのあまり大声で叫んでしまった。
178: 2007/09/30(日) 02:31:51 ID:RmFeesCL(2/4)調 AAS
1400 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 21:57:23 ID:???0
>>1392
登場ssに本編終了後からさの参戦って明記されてるよ。
1401 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 21:58:08 ID:???0
……そろそろ冗談抜きでヲチスレがふさわしい。
1402 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 21:58:32 ID:???0
このまま帰ってこないに1票
1403 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 21:58:48 ID:???0
なんかC候補生が最悪な捨て台詞を残して逃げようとしているぞ
1404 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 21:59:21 ID:???0
あのドモンはさすがに馬鹿すぎると思うが…
直情的ではあるが単純馬鹿じゃないぞ、ドモンは。
本編終了後ならなおさらなぁ。復讐とか終わってるから盲目的に力を求める理由もないし。
あれだとキャラ把握してないんじゃないかとすら思ってしまうが。
1405 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 21:59:42 ID:???0
もう48時間ルールで強制NGにしようぜ!
1406 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 22:00:08 ID:???0
>>1399
逆に考えるんだ。
すぐに手放す羽目になる可能性も高いと。
1407 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 22:01:06 ID:???0
ギャグ描写とはいえ気になる人も多いようだから、あのバカが消えたら議論対象としてもいいんじゃない?
俺はギャグ描写としてOK(近いうちに正気に戻るだろう)と思うけど。
1408 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 22:01:44 ID:???C
覆面とか鎧とかキャラの個性を決定するものが支給品扱いになってるケースが多いからじゃね?
1409 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 22:03:52 ID:???0
もう放置して48時間で破棄でいいじゃん。それによって大切な方の議論が蔑ろになるのはダメだろ。
なんで学習してないかな……慣れてない人が多いだけ?
1410 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 22:05:16 ID:???0
決定的に設定と矛盾する部分が出たな。
修正しないと作者自ら宣言してるから破棄決定、と。さようなら〜
個人的に、B0氏にはIPを記憶しておいて欲しいなあ。
1411 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 22:07:07 ID:???0
>二代目C
最早、どのタイミングで「したらばアク禁」になるのか、それが問題だ。
>馬鹿ドモン
とりあえず、ツチダマで具体的に問題提起するんなら、具体的にどの行為が「ありえない馬鹿」なのかをはっきりさせた方がいいと思うよ。
・カフカ≠マーダーと判断
・カフカ理論に同意
・好戦的な行動方針について
つっても、一応「積極的に交戦する」って方針なだけで、マーダー化はまだして無いと思うよ俺は。
結果だけ見て「ドモンがマーダー化(?)するのはおかしい!」って叫ぶだけだと毒吐きレベルからは出れないからなー
具体的なポイントを探さないとダメだぜ
1412 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 22:13:27 ID:???0
ヒューズの考察はすげー妥当なんだが、やっぱり1stと似たようになっちゃうなぁ。
ある意味では完成した世界観ってことで文句はないんだが。
179: 睡蓮-あまねく花 ◆umwdy9coMs 2007/09/30(日) 02:32:28 ID:fwYKRIWK(3/6)調 AAS
【E-3/豪華客船内客室/1日目/黎明】
【ジャグジー・スプロット@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:健康。
[装備]:支給品一式(ランダムアイテム1〜3 本人確認済み)
[道具]:なし
[思考]:
基本思考:主催者に抗う。
1:静留と一緒に行動する。
2:出来れば船で移動はしたくない
3:アイザック、ミリア、なつきを探す
4:できるだけ殺したくない。
5:4が無理の場合、自分が戦う。
[備考]:
※ 参戦時期はフライング・プッシーフット号事件の最中、ラッド・ルッソと出会った直後あたりで
【藤乃静留@舞-HiME】
[状態]:健康。
[装備]:支給品一式(ランダムアイテム1〜3 本人確認済み)
[道具]:なし
[思考]:
基本思考:なつきを守る。
1:なつきを探す
2:なつきを傷つけるのは許しまへんえ
3:船が動くかどうか確認するために船内を探索する。
[備考]:
※参戦時期は奈緒に合わせて蝕の祭の結果がナシになった所ぐらいを意識しましたが、他のタイミングにも対応できるようにした(つもり)なので後続の書き手さんにお任せします。
180(1): 2007/09/30(日) 02:32:53 ID:RmFeesCL(3/4)調 AAS
1413 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 22:16:32 ID:???0
>>1412
まだ序盤だから今後世界観関係のフラグはどんどん増えるし、あくまで考察は考察に過ぎないからね
そこまで気にするものでも無いと思うよ
1414 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 22:20:12 ID:???0
ん、全く文句はないんだよ。
他の舞台設定を俺も思いつかないし。
1415 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 22:22:39 ID:???0
で、二代目Cは放置&NGでおkなの?
1416 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 22:24:45 ID:???0
>>1415
おk所か決定事項でしょう。
1417 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 22:34:58 ID:???0
正直、退きどころをわきまえてくれと遠まわしに言われ続けてアレじゃな。
1418 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 22:40:57 ID:???0
なんかつかれたなー。
1419 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 22:43:52 ID:???0
ドモンの話は修正要求無しでおk?
1420 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 22:45:51 ID:???0
いいんじゃない?
ネタ描写に突っ込むのは無粋だし。
1421 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 23:29:19 ID:???0
予約なしのキャラがまだ十数人いるな
今度は埋まるまでどれくらい掛かるかしらん
1422 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 23:39:14 ID:???0
つか、その
未予約キャラ全員行動 → 行動済みキャラの予約解禁
ってのはどこがソースなんだ?
そんなもの決まった記憶は全く無いぞ!?
つうことで、例の「行動済みキャラ一覧」は「現在予約無しキャラ一覧」にしてくれるとありがたいなあ。
キャラ分けも、作品で分けずに「最終行動時間」で分けてもらうと大変ありがたい。
……つうことで、自分で一回作ってみるよ。
1423 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 23:45:25 ID:???0
>>1422
散々出ているがそんな規定はない。
多分1stから続く空気みたいなもので、しかし初回登場時と放送以外は考慮されないので気にしなくても良い。
1424 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 23:46:01 ID:???O
今まで自粛されてたのは配置の問題があったからだからね。
出揃った今はおっしゃる通り、時間別にリストアップしたほうがいいと思う。頑張れ
181: 睡蓮-あまねく花 ◆umwdy9coMs 2007/09/30(日) 02:33:33 ID:fwYKRIWK(4/6)調 AAS
「……」
自分の支給品の確認を終えた高遠遙一はしばらく絶句していた。
菓子箱に割り箸で手足をくっ付け、適当な顔を書いただけの代物。
地獄の傀儡子などと名乗ってはいるがこんな人形で演出しても滑稽なだけだろう。
とは言え残りの二つの支給品は使えそうなものだったのでそれほどの苛立ちは覚えなかった。
残りの道具の内一つ豪華客船の鍵と見取り図。
どうもこの鍵を差し込んで簡単な操作を行えばあらかじめ決められたコースを回遊する仕組みになっているらしい。
その他いろいろな設備に富んでいて、トリックやアリバイの練り甲斐がありそうだ。
そして残りの一つの支給品。
他の二つの道具は殺人に役に立つものではないが、この道具さえあれば当座は充分だろう。
…気に食わない点があるとすれば、『都合が良すぎる』事だろうか。
殺人に演出する舞台の鍵と道具が与えられ、飛ばされた場所は舞台のすぐ近く。
何らかの意図が含まれていると考えるのが自然だろう。
そして無様な人形、これは螺旋王の前では地獄の傀儡子も玩具の人形程度の存在でしかない、という見立てだろうか。
(……まあいいでしょう。相手がどう思っていようとも、当初の計画通り最後に笑うのはこの私です)
そして高遠は豪華客船への道を歩きだした。
182: 睡蓮-あまねく花 ◆umwdy9coMs 2007/09/30(日) 02:34:36 ID:fwYKRIWK(5/6)調 AAS
高遠は豪華客船への道すがら、唯一の懸念に対し、頭を悩ませていた。
それは『如何にして人を集めるか』と言う点だ。
自分で殺すにしても誰かを唆して殺させるにしてもある程度の人数が揃わなければどうしようもない。
いくら船を動かせると言っても、自分ひとりで船を動かして見つけた人間を片っ端から乗船を誘うのはかなりのリスクが伴う。
(最初にある程度の人数を集めればそこから増やしていくことは容易なのですが…)
この場で集団を作る、と言うことは殺し合いに乗っていない事の証拠。
ある程度の人数で螺旋王に対抗する為の仲間を集めている、とでもいえば偽善者共が大量に連れるだろう。
無論自分のように仲間に潜り込んで事件を起こし、誰かに罪をなすりつけようという連中もいるだろうがそれこそ望む所。
どちらのトリックが優れているか競い合うのも中々に面白そうだ。
などと考えながら歩いていた所、子供連れの女がこちらに向けて歩いて来るのに気が付いた。
何故かブリを持ち歩いているのが気になるが、子供連れと言うのは偽善者達を釣るのには丁度良い。
やはり感じる都合のよさを訝しみつつも、あの二人を船へと誘う為、偽善者の仮面を被り近づいていった。
【E-2/1日目/深夜】
【高遠遥一@金田一少年の事件簿】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ、支給品一式、バルカン300 豪華客船のメインキーと船に関する資料 ランダムアイテム残り1(本人確認済み 殺人orトリックに有用)
[思考]
1:とりあえず目の前の二人を豪華客船に誘い、ある程度人数が集まったら事件を起こす。
2:ステルスマーダー一直線
3:金田一に『危険な犯罪者』の濡れ衣を着せる
4:剣持と明智は優先的に死んでもらう
5:ただし3と4に拘泥する気はなく、もっと面白そうなことを思いついたらそちらを優先
183: 2007/09/30(日) 02:34:42 ID:RmFeesCL(4/4)調 AAS
1425 :やってられない名無しさん:2007/09/30(日) 00:02:12 ID:???0
土曜夜だというのに感想が少ないのはバカの相手で疲れちゃったからか?
1426 :やってられない名無しさん:2007/09/30(日) 00:08:04 ID:???0
>>1422
おk今度からそうまとめていく
ただあれだ・・・ちょっとの見落としはフォローしてくれるとありがたい・・・orz
1427 :やってられない名無しさん:2007/09/30(日) 01:44:46 ID:???0
そろそろ大学生の夏休みも終わりかね。
184: 睡蓮-あまねく花 ◆umwdy9coMs 2007/09/30(日) 02:36:00 ID:fwYKRIWK(6/6)調 AA×
185: 2007/09/30(日) 02:38:05 ID:bbpCBqBQ(1)調 AAS
また同じことやろうとしてるんだな
こりねえなぁ
186: 2007/09/30(日) 02:43:23 ID:iEE9OwJf(1)調 AAS
文章添削気盆ヌ
187: 2007/09/30(日) 02:51:34 ID:bs76lR0w(1)調 AAS
二代目Cwwwwww
いくらでも作れよwwwwwwww
188: 2007/09/30(日) 03:03:04 ID:C7jmY9z9(1)調 AAS
>>180
1415 :やってられない名無しさん:2007/09/29(土) 22:22:39 ID:???0
で、二代目Cは放置&NGでおkなの?
もうめちゃくちゃだな
189: 2007/09/30(日) 06:52:14 ID:+Lul+DpD(1)調 AA×
190: 紙のみぞ知る ◆5VEHREaaO2 2007/09/30(日) 22:09:04 ID:vAdRrg4l(5/9)調 AAS
――――――燃えていた。みんな、みんな燃えていた。
とても、とても熱い。だけど炎は消えない。いつまで経っても消えない。
本の山に火が着いた。あっという間に火の山ができた。
耳に誰かの悲鳴が聞える。だがその悲鳴も炎に掻き消される。
目に誰かが倒れている姿が映る。だがその姿も一瞬にして炎へと変わる。
息が息苦しくなり、鼻も使って呼吸する。何か肉の焼ける臭いがした。
皮膚を火が炙る気持ちの悪さから逃げ出した。黒一色の人形がいた。
逃げたかった。どこにでもいいから逃げたかった。こんな地獄からは逃げたかった。
だけどできない。炎に周囲を囲まれ、どこにも道など存在しない。
焼けた紙が行く手を阻み、焼け残った本棚がまるで絶壁の断崖のように聳え立つ。
それでも逃げ道を探す、死にたくなかったから。
――――――なのに、見つけたのは道ではなく炎の中に立つ人影だった。
奇妙なことに、その人影の周囲だけ燃えてはおらず、そこの部分だけ火が恐れるかのように本しかなかった。
そう、まるで炎が人影に消されるのを避けるかのように。
その人影の一番特徴的な部分は目だった。巨大な目だ、とても巨大な目だ。炎よりも強く輝く巨大な目玉だ。
――――――その目玉が、ギロリとこちらの方を向いた。
「いやアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
怖かった。その人影がとてつもなく怖かった。わけが分からないのに、いや、何も分からないこそ怖かった。
タベラレテシマウと思うぐらいに怖かった。
そして、その人影と目が合った数秒の後、人影の周囲が爆発し何かが迫ってきた。
龍が――――炎の龍が唸り声を上げて迫ってくる。
こんどこそ逃げようがない。
「ヒィィィッ!」
炎の龍が、自分を飲み込んだ。
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
視界が真っ暗になる。
※ ※ ※
191: 紙のみぞ知る ◆5VEHREaaO2 2007/09/30(日) 22:10:59 ID:vAdRrg4l(6/9)調 AAS
「――――――ッ」
アニタ・キングはC-6の民家で、意識を記憶の海から現実へと戻した。
全身が汗にぬれ学校の制服が気持ち悪い、息苦しさまで感じる。
いやなことを思い出していた。一番初めの記憶だ。ここに連れてこられる前の、
ねねねと出会う前の、姉たちと出会う前の、香港で浮浪児になる前の記憶だ。
アニタ・キングは記憶喪失者だ。気が付いたときには服一着だけで香港のど真ん中にいた。
父も母の顔も知らず、名前と服以外は悪夢しか持っていない状態で浮浪児となるしかなかった。
香港では日本と違い浮浪児となる子供の数は多く、子供だけの集落があるにはあったが、
西洋人の血が混じっていると思われるアニタが東洋人の孤児の集落に入れたわけでもなく、たった一人で廃墟となった教会で暮らしていた。
幸いにして、そのころから不思議と紙を使えたのでいやいやながらも泥棒として生計を立ててはいた。
とはいえ、紙を操れる才はあっても泥棒の才はなかったらしく、ひもじく寒い日々を送っていた。
そうして出会った、あの二人に。ミシェール・チャンとマギー・ムイに。
(あのときは、ものすごく感謝したんだけどなぁ)
二人に拾われ、衣食住は確保できたものの、自分が本嫌いであったために当初は大変だった。
いつのまにか慣れてしまったが。いや、慣れなければ生活できなかった。
そうしている内に駄目姉二人としっかり者の妹一人の構図が出来上がってしまった。
最近では腕白姉が一人追加された気もするが。
「……昔のことを思い出している場合じゃないか」
溜息を一つ付きつつ、現状を思い出す。紙を探す、そこまでは良かった。
192: 紙のみぞ知る ◆5VEHREaaO2 2007/09/30(日) 22:12:52 ID:vAdRrg4l(7/9)調 AAS
だがよりにもよって、図書室という紙が大量にある学校を出て行ってしまった。
戻ろうとは思ったものの、あのロイドとかいうむかつくやさ男の下に戻るのは、非常にしゃくだった。
ジャングルの奥地やどこぞの秘境でもないかぎりは、文明の存在するところならば紙の補充は容易である。
手近な民家数件を探せば、簡単に手に入る。
世の中には自分のように滅多に本を読まない人間もいるが、家族一世帯がそうだというわけでもなく、
また紙といっても、トイレットペーパーからレポート用紙、漫画の本から学校の教科書まで身の回りの様々な場所で使われている。
そしてここは日本という紙をよく使う文化を模した舞台だ。
ここで紙ほど見つけやすいものはないのだ。この広い舞台で人を探すよりは簡単すぎる。
故に学校に戻らないことに決め、たまたま目に付いた倉田という表札を掛けた家の蝶番を紙で壊し、忍び込んだのだ。
そうして、この家の人物が所有していたと思われる大量のDVDや漫画の本を見つけ、
最初は紙だけで充分と思いよく確認しなかった荷物の整理整頓をしてから紙を補充しようとした。
その後がいけなかった。
作業中にデイパッグから出てきた白い布が瞬く間に部屋を埋め尽くしてしまった。
そして、アニタはその白い布の中央を見てしまった。
センスの悪そうなサングラスを掛けている真っ赤な巨大な火の玉を。
自分に嫌な記憶を思い出す火の存在を。
「とりあえず、今は紙、紙」
アニタは頭を振りつつ、生意気にも質量保存の法則を無視するかのように入っていた旗を
素足で踏みつけながらいくつかの本をデイパッグへと詰める。
すぐにデイパッグは膨れ上がりいっぱいになる。
どうやら最初に入っていた物以外は、ドラえもんの四次元ポケット構造には当てはまらないようだ。
団旗は置いていくにしても、これ以上は詰められそうにない。
(もうちょっと、もって行くか)
アニタは数冊の本を手に取り、能力を込める。
本は簡単にバラバラとなり、アニタはそれらを服の内側に隠しておく。
準備はこれでいい、あとは出発するだけ。
193: 紙のみぞ知る ◆5VEHREaaO2 2007/09/30(日) 22:14:18 ID:vAdRrg4l(8/9)調 AAS
とある懸案事項を除けばだが。
アニタは床に横たえてある奇妙な形状の剣を見る。
説明書によれば名前は乖離剣・エア。真名を開放すると空間を切断するほどの衝撃波を放つ宝具というアイテム。
先ほどの戦闘では紙より扱えそうにないため出さなかったが、はたしてこれは自分に使える物なのだろうか?
アニタ・キングは紙を使う異能者である。だがその力の源泉など何かは知らない。
マー姉やミー姉は、自分は昔本が好きだったから紙使いになれたといい、
ねね姉の大切な人も本好きの紙使いだというが、自分は本が嫌いであり、
以前遭遇した読仙社の紙使いであるサニー・ウォンという男はとても本好きだとは思えないし、
地下温泉で遭遇した少年は、地面の中が好きだから地中に潜る能力を持っているとは限らないだろう。
暴論ではあるが、異能を持つ者は大雑把に言えば魔法のような力を持つと言え、
魔法の道具の力を引き出すことができるかもしれない。
その変幻自在の能力から紙使いのことを一部の人間は魔女と呼ぶ、と姉から聞いたこともある。
現代に生きる紙使いが魔女ならば、大昔の魔女はいったい何なのか?
アニタとて自分のことを魔女と思っているわけではない。
だが、大昔にあった魔女狩りで、紙使いが魔女と呼ばれながら追いかけられていても不思議ではなく、
魔道書という紙使いと魔法使いとを結ぶ代物があることを踏まえると、以上の考えは間違ってはいないのかもしれない。
「……やってみるか」
アニタは好奇心に突き動かされつつ、部屋の窓を開け空へと剣を突き出す。
乖離剣・エアから衝撃が空へと上っていく様子をアニタは思い浮かべる。
そして息を吸い込み、叫ぶ。宝具の真名を。敵を滅ぼすための呪文を。
――――――アニタ・キングが乖離剣・エアを使えるかどうかは、神のみぞ知る。
194: 紙のみぞ知る ◆5VEHREaaO2 2007/09/30(日) 22:16:20 ID:vAdRrg4l(9/9)調 AAS
※ ※ ※
乖離剣・エアを発動させようとするアニタ・キングは今だ知らない。
ペーパーマスター、紙の奴隷、紙の使徒、神保町の主、東洋の魔女、そしてThe Paperと多数の異名を持つ最強の紙使いを。
大英図書館を焼き払い、アニタ・キングの出発点を作ったビブリオマニアを。
菫川ねねねにとって大切な存在であり、自身に炎と紙に対する恐怖を植えつけた女の存在を。
その名は読子・リードマン。
――――――アニタ・キングが彼女と出会えるかどうかは、紙のみぞ知る。
【C-6/民家の一室/1日目/聡明】
【アニタ・キング@R.O.D(シリーズ)】
[状態]:健康
[装備]:大量の紙、乖離剣・エア@Fate/stay night
[道具]:支給品一式(メモ帳なし)、ハイドの魔本@金色のガッシュベル!!、デイバッグに詰められるだけの本
[思考]
1:乖離剣・エアを使ってみる。
2:ねねねを捜す。
3:できるだけロイドのいる学校には戻りたくない。
[備考]:
※参戦時期は9〜11話、ねねねが読仙社に攫われる以前。読子との面識はありません。
※アニタが乖離剣・エアを使用可能かどうかは以降の書き手さんに任せます。
※『大グレン団の旗@天元突破グレンラガン』がC-6にある民家の一室に置いてあります。
195: 2007/09/30(日) 23:04:36 ID:gS1opFxf(1/4)調 AAS
196: いろいろな人たち ◆s1y9vYGV9k 2007/09/30(日) 23:05:12 ID:BGfHqOMq(1/8)調 AAS
「あのマフィア達全然来ないけど、テキサスの荒野で鍛えた俺の足には流石に付いてこれなかったかな。
いやいやいや。もし追ってきても俺の百丁拳銃が火を噴くけどね!」
百丁どころか一丁の拳銃もない。あるのはパンツだけの一見変質者。
彼の名はアイザック・ディアン。
一年前に不死者となりながら未だ不死者であることに気付いていないホームラン級の馬鹿である。
「何処にいるんだよミリアー! お前の保安官が迎えに来たぞぉー!」
仮装強盗のパートナーにして最愛の恋人ミリア・ハーヴェント。
マフィアと思しき二人組みの脅威から逃れた今、アイザックの頭には彼女のことしかなかった。
当然、大声を出すことの危険性など意識していない。
「おーい! ミリアいないのかーい!」
彼にとって運が良いのか悪いのか。とにかく返事はこなかった。
アイザックは再び走りはじめる。
逃げるためではなく、迷子になって寂しがっているであろうミリアを探すために。
等間隔で並んでいる街灯は申し訳程度にアスファルトを照らすのが精一杯の明るさを保ち、
川への転落を防止する壁は平均的な男性身長の半分にも満たない高さ。
中央分離帯として細い一筋の白線が一応引かれてはいるが、車道と歩道の区別もない。
誰が見ても安全管理が杜撰すぎると思われるであろう設計だが、強度だけは確かなもの。
B3を斜めに横切る川の上に建造された橋はそんな特徴を持っている橋だ。
その橋の前に柊かがみはいた。
左手に持った円形状の形をした掌サイズの機械を確認しつつ、時折右手で額を拭いながら
かがみは走り続けている。
短距離走に近いペースの速度を出しているために息は荒く、足は何度も縺れて転びそうになるぐらい
消耗し、おまけに汗で肌に纏わり付いた制服は残り少ない体力を奪うのに一役買っていた。
不死者になったからといって筋力が増強されたり体力が無尽蔵になる訳ではない。
身体が痛みを感じるのと同様に疲労は蓄積されていく。
一度も休憩することなくオーバーワークを強いられ続けた肉体は、とうに限界を迎えていた。
それでも立ち止まらないのは、妹の仇を討つという確固たる意思が肉体を突き動かしているからだ。
そんな彼女の足を止めたのは、新たにレーダーに表示された三つ目の光点。
アイザック・ディランと表示されたそれは、北西から道路沿いにかがみを示す光点へと向かってきている。
犯人は現場に戻るという法則もあるが、つかさを殺した犯人とは別の人間である可能性の方が高い。
だがそれは皆無ということでもない。
迷った末に、かがみは迎え撃つことを決定する。
B3エリア進入直後に自身を除けば唯一灯っていた光点。
元々の標的である風浦可符香を示す光点の近くに、二つ光点が増えていたのを確認したためだ。
197: 2007/09/30(日) 23:05:51 ID:gS1opFxf(2/4)調 AAS
198: いろいろな人たち ◆s1y9vYGV9k 2007/09/30(日) 23:06:41 ID:BGfHqOMq(2/8)調 AAS
しかし何処もかしこも陰気な場所だった。
仮装強盗をしながら沢山の都市を渡り歩いたが、ここは別格といっていい。
最悪のスラム街だってここと較べれば活気に満ち溢れた極上の酒場みたいなものだ。
陰鬱な気分を吹き飛ばすような歌の一つでも口ずさんでみたいところだが、肝心な合いの手を入れてくれる
ミリアが隣にいない。
アイザックはなんとも埋めがたい喪失感を感じていた。
……が、それも束の間。
これは愛があれば障害も飛び込んでくるっていうアレだな!
よし来い! ワイアット・アープもびっくりのロープ飛びで見事勝ってやる!
ん……誰に勝つんだ? ま、いいさ。勝てば俺の勝ちだもんな!
常人には理解不能の思考回路をフル稼働させ先を進むアイザック。
その瞳は爛々と輝き、足取りは力強い。
彼は今、マフィアのような怖い連中からミリアを守る流離いのヒーロー。
怖いものなど何もない……はずだった。
「ひぃあっ!?」
突然甲高い音が響いたのは、アイザックが橋に差し掛かる寸前のこと。
驚きながら声がした方を振り返るとそこには――
かがみは待ち伏せするにあたり、大まかな作戦を立てていた。
街灯の光でバレないよう道路脇の茂みに潜み、アイザックの姿を確認。
刺殺できるような武器を持っていれば即座に背後から襲撃する。
つかさを殺した相手は一目で強力な武器であるとわかるマシンガンを置いていったのだ。
真相を知るため話は聞き出したいが、不意を打っても殺せないかもしれない相手にそんな余裕はない。
だから殺すことしか考えなかった。
無手、もしくはそれ以外の武器を所持していれば殺し合いに怯える少女を演じて反応を見る。
どちらにしても結局は殺すのだが、望めるなら心配を装って騙まし討ちを仕掛けてくるような奴が良かった。
騙まし討ちを『仕掛けようとする側』の気持ちとしては、その方が迷わず思いっきりやれるから。
不安要素もいくらか抱えていたが、どう転んでも不死の肉体がある限り勝算は高いとかがみは踏んでいる。
後は実行できるかどうか。いや、するかしないか……それだけの筈だったのだ。
頭では理解しているはずが、動けないということもある。
アイザックの姿を見た時の彼女がまさにそれだった。
かがみはアイザックがロージェノムに呼び寄せられた広間で見た子供であることも覚悟していた。
それでも、やり遂げてみせるつもりでいたのだ。
だが、これは完全な想定外であり不意打ち。
こともあろうにこの殺し合いの場を、裸で闊歩するような人間がいるなんてすぐには信じられなかった。
見間違いではないと確信した瞬間、元々不安定だったかがみの精神状態は急速に悪化の一途を辿り
無意識の内に立ち上がって悲鳴を上げていた。
199: 2007/09/30(日) 23:06:53 ID:gS1opFxf(3/4)調 AAS
200: いろいろな人たち ◆s1y9vYGV9k 2007/09/30(日) 23:07:45 ID:BGfHqOMq(3/8)調 AAS
そこには声で予想できた通り、女の姿があった。
街灯が頼りないせいでハッキリとは確認できないが、見た目から判断するとミリアと同じか
それよりすこしだけ年齢が低そうだ。少なくともマフィアには見えない。
ほっと安堵の息をつくと、アイザックはどうやら怯えているらしい彼女に底抜けの明るさで呼びかける。
「いや、もう! 俺ってば怪しいもんじゃないからさ!
そりゃ怖いマフィアもいるけど! 俺はあいつらとは違うからさ!」
……なに? なんなの……これ……?
なにいってるの……こわい? ……ちがう?
「……ら……いで…………ほ……おぅ……て……」
口が震えて言葉が発音できない。
「……………ぃ…」
拒絶の意思が伝えられない。
もどかしい。もどかしい。
アイザックもまた戸惑っていた。彼女の言っている言葉の意味が全くわからない。
だが彼女の警戒を解くにはこの暗号を解く必要がある。
間違えてはいけない。困ってる女性を泣かせるようなサイテーな男になるのは御免だ。
しっかしデホーテ? デホーテって何だ?
そんな知り合いいたかなぁ、俺。いないよなぁ。
デホオテ? デホオゥテ? で、掘って? 掘って。
単語になってきた。アイザックは正解が近いことを確信する。
掘って……ホーテ……掘って……ホオゥテ……ほおって……ほうって……放って。放って!
頭の中で壮大なファンファーレが鳴り響いた。これだ!
肩に担いだデイバックを地面に落とし、その上に右脇で抱えていた服を置く。
そうしてから彼は、昔見た西部劇の主役のようにニヒルな笑みを浮かべ、彼女の下に歩いていった。
「どうだい、これで安心だろう?
心配することはないさ。どんな悪党が来たって俺には百丁――――」
アイザックの口舌はもうかがみに届いてはいない。
彼女が理解しているのは正体不明の男が裸で近づいてくる。それだけだ。
それだけで彼女には……充分すぎた。
柊かがみの頭には今まで逡巡してきた内容など何一つ残されていなかった。
たったひとつ――目前の敵を殺す以外に。
背中に隠していた銃を右手で引き出し前方に構える。
突然向けられた銃口を理解できないアイザックが発した「へ?」という間の抜けた声を合図に
かがみは躊躇無く人差し指に力を込め、引き金を絞った。
「う……あああああああああああああああああああああ!」
絶叫を掻き消す轟音とマズルフラッシュとが周囲を満たすステージで、アイザックは踊る。
本来ならば例え数十トンのローラーでひき潰されようが、二千度の溶鉱炉に放り込まれようが
コンクリート詰めのドラム缶で海中に沈められようが、はたまた一億年生きようとも
“食われる”以外に決して死ぬことはない。それが不死者だ。
だがその能力は何らかの制限により著しく劣化している。
そう――まともにウージーの掃射を受ければ一たまりもなくなってしまう程度には。
倒れこんだアイザックはアスファルトに一面の赤い水溜りを拡げていく。
その身体はもう、ピクリともしていない。
201: 2007/09/30(日) 23:09:48 ID:8opChGlE(1/3)調 AAS
202: いろいろな人たち ◆s1y9vYGV9k 2007/09/30(日) 23:10:19 ID:BGfHqOMq(4/8)調 AAS
いつまで引き金を握り続けていたのだろうか。
手にしているのは分速600発を超える速さで弾丸を放つウージーだ。
弾倉の残弾などとうに無くなっていることにようやくかがみは気づいた。
全身から力が失われていき、膝からゆっくりと崩れていく。
一時的な恐慌状態から脱したかがみが最初に見たものは、死体になったばかりの男。
その瞬間に生まれた強烈なストレスが彼女の身体に変調をきたす。
苦く酸っぱい息が漏れたのを皮切りに、腹の奥底から不快感がこみ上げてくる。
それがようやく治まったのは、胃の内容物を全て押し出した後のことだ。
落ち着いたかがみは、アイザックの死体を迂回するようにして彼のデイパックに近づいた。
服を掻き抱いて調べてみたが、なぜか濡れていること以外は特に変わったものはない。
ならばと思いデイパックを漁っても武器らしきものは出てこなかった。
入っていたのは基本支給品を除けば赤い綺麗な石と、ローラーの付いた靴が一足だけ。
予測していた通りだった。
今のかがみにはアイザックが裸だった理由も、彼が喋っていた内容も冷静に受け取ることができている。
おそらく彼は『良い人』だったのだろう。
それを……それを私……は……わた…し……は…………
「つかっ……ぁっ………ぅ……ぅ…ぁ……つかさぁ……」
誰かに頼まれてやったのではなく、全て自分が決めた行動の結果だ。
ここでつかさに頼るのは、つかさに罪を擦り付けるということに他ならない。
それを理解しているというのに、かがみは泣きながら失った妹の名前を一度だけ呼んだ。
どうしても誰かに縋りたくて。
203: いろいろな人たち ◆s1y9vYGV9k 2007/09/30(日) 23:11:26 ID:BGfHqOMq(5/8)調 AAS
かがみは悩んでいた。
思わぬ時間を費やしてしまった以上、つかさを殺した仇は遠くへ行っている可能性が高い。
追いつけないかもしれない相手を探すよりも、つかさを埋葬してあげる方が先ではないかと。
特におかしくはない考え方。冷静に見ても及第点は取れる答えだろう。
結局、かがみは戻る道を選ばなかった。それが言い訳だと気付いてしまったから。
きっと私はつかさを理由に逃げようとしているだけ。
人を殺した現実も、これから殺し続けるという未来からも。
弱い自分が恨めしかった。
いくら決意を固めても、すぐにボロボロと崩していく自分が許せなかった。
もうアイザックのことを気にするのはやめていた。一瞥すらしていない。
つかさを殺した者も、そうでない人も。
……大事な友達も。
どうせ最後にはみんな殺してしまう。殺さなくてはいけないのだから。
アイザックのデイバッグから手に入れたローラースケートに履き替えながら、かがみはレーダーを確認した。
B3には風浦可符香を示す光点が依然存在しており、そこからやや離れた位置にドモン・カッシュを示す光点がある。
エドワード……という覚えられないぐらい長い名前を示す光点は消えていたが、それは別に構わない。
風浦可符香がまだ居てくれた。それだけでかがみには満足で、逃げなくて良かったと心の底から思えた。
彼女は再び決断を下す。
この二人を殺せたならば、目的を果たせても果たせなくてもそれからつかさの元に戻ろうと。
銃弾を撃ち尽くしてしまったのは失敗だったが、弾丸の無い銃とて利用法がない訳ではない。
脅しにも牽制にも……相手の油断を引き出すことだって使い方次第で可能だ。
そして何より彼女の身体は不死。
『肉を切らせて骨を断つ』という言葉があるが、必要であれば肉も骨もくれてやればいい。
どれだけ傷つこうが、最終的にこのナイフを突き立ててやればそれで終わりなのだ。
ペットボトルの水でまずは口を濯ぎ、それから疲れた体を癒すため少しずつ胃に流し込む。
こうして一本分の水を消費した後、彼女は疾走を開始した。
まずはつかさを奪った犯人である可能性の高い、風浦可符香を示す光点へと一直線に。
204: いろいろな人たち ◆s1y9vYGV9k 2007/09/30(日) 23:13:41 ID:BGfHqOMq(6/8)調 AAS
希望は呪いとなり、思い出は鎖となって絡みついている。
求めれば求めるほど。足掻けば足掻くほどに自らの体を抉り、心は蝕まれてゆく。
それでも彼女は進み続ける。
足を止めるということは、大切な妹を諦めることと同義だと知っているから。
【B-3/中央寄りの橋中心部/一日目/黎明】
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:不死(仮)
[装備]:防弾チョッキ 軍用ナイフ UZI 0/50(サブマシンガン) ローラーブーツ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:デイバッグ、レーダー、支給品一式(水入りペットボトル×1消費)、かがみの靴
[思考]
1.つかさの仇をとるためB-3にいる二人を殺す(風浦可符香を最優先で狙います)
2.戻ってきてつかさを埋葬する
3.つかさのために優勝する
※つかさを殺したのは武器を必要としないくらいの強者だと思っています。
※かがみの不死はBACCANOのアイザック、ミリア等と同じものです。
※かがみに支給されたレーダーは同エリア内のキャラ名と位置が表示されます。
【ローラーブーツ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
一般人にはただのローラースケート。魔力があれば更に速度が出せるらしい。
【アイザック・ディアン@BACCANO バッカーノ! 死七】
205: いろいろな人たち ◆s1y9vYGV9k 2007/09/30(日) 23:14:57 ID:BGfHqOMq(7/8)調 AAS
誰もいなくなったはずの道路に立つ人影があった。
影はまるで長い睡眠を取ったあとのように伸びをして、首を回している。
ポキポキと鳴る軽い音を堪能し終えると、そいつは盛大に騒ぎ始めた。
「あー痛かった! いやあ、まっさかあんな嬢ちゃんにまで騙されちまうなんてなあ。
さっきのマフィアも上手かったけど、今回のも相当だよな! 演技派だったし!
もしかしてムービースターだったりするのか彼女。いやきっとそうだ!
クッソー! さっさとサイン貰っとけば良かったな。ミリアの分も!」
人影の正体は言わずとしれたアイザック・ディアン。
彼がまだ生きているのはもちろん不死者であるという事実が大きい。
ただ、それだけでは決して生き残ることは叶わなかった。
対した相手は柊かがみ。不死者にして不死者の天敵たる完全な存在だ。
幸運が彼に味方していればこその生存だった。
今が夜でなければどうなったか?
溢れた血溜りが少しずつその外周を狭め、青みがかった肌が徐々に本来の色を取り戻していったことに気付かれていたかもしれない。
柊かがみが錯乱していなければどうなったか?
大なり小なり彼女はアイザックに傷を負わせただろう。
その結果の延長として、アイザックが“試し”に食われたであろうことは想像に難くない。
そして、アイザックを撃ったウージー。
これは本当にアイザックを殺すだけの力を持っていた。使い手次第という条件付きだが。
ウージーは命中精度に欠けるという弱点を弾数で補っている銃。
熟練者ならばともかく初めて銃を手にした者が、それも錯乱した状態で撃ったところで
たかが10メートル先の目標ですらそうそう当たりはしない。
実際、放たれた弾丸の大半が地面を抉るか明後日の方向に飛び去ってしまっており、
普通の人間ならばともかく、不死者を殺すには物足りない着弾量でしかなかった。
これら全ての要因が世の理を正常に捻じ曲げることに成功していた。
彼が生きているのは偶然でもあり、必然でもあったということだ。
206: 2007/09/30(日) 23:15:10 ID:8opChGlE(2/3)調 AAS
207: いろいろな人たち ◆s1y9vYGV9k 2007/09/30(日) 23:16:04 ID:BGfHqOMq(8/8)調 AA×
208: 2007/09/30(日) 23:16:37 ID:8opChGlE(3/3)調 AAS
209(1): 修整 2007/09/30(日) 23:48:21 ID:p1muBzot(1)調 AAS
「あのマフィア達全然来ないけど、テキサスの荒野で鍛えた俺の足には流石に付いてこれなかったかな。
いやいやいや。もし追ってきても俺の百丁拳銃が火を噴くけどね!」
百丁どころか一丁の拳銃もない。あるのはパンツだけの一見変質者。
彼の名はアイザック・ディアン。 一年前に不死者となりながら未だ不死者であることに気付いていない
ホームラン級の馬鹿である。
「何処にいるんだよミリアー! お前の保安官が迎えに来たぞぉー!」
仮装強盗のパートナーにして最愛の恋人ミリア・ハーヴェント。
マフィアと思しき二人組みの脅威から逃れた今、アイザックの頭には彼女のことしかなかった。
当然、大声を出すことの危険性など意識していない。
「おーい! ミリア、いないのかーい!」
彼にとって運が良いのか悪いのか。
とにかく返事はこなかった。
アイザックは再び走りはじめる。
逃げるためではなく、迷子になって寂しがっているであろうミリアを探すために。
等間隔で並んでいる街灯は申し訳程度にアスファルトを照らすのが精一杯の明るさを保ち、
川への転落を防止する壁は平均的な男性身長の半分にも満たない高さである。
中央分離帯として細い一筋の白線が一応引かれてはいるが、車道と歩道の区別もない
誰が見ても安全管理が杜撰すぎると思われるであろう設計だが、強度だけは確かなものだ。
B3を斜めに横切る川の上に建造された橋はそんな特徴を持っている橋、
その橋の前に柊かがみはいた。
左手に持った円形状の形をした掌サイズの機械を確認しつつ、時折右手で額を拭いながら
かがみは走り続けている。
短距離走に近いペースの速度を出しているために息は荒く、足は何度も縺れて転びそうになるぐらい
消耗し、おまけに汗で肌に纏わり付いた制服は残り少ない体力を奪うのに一役買っていた。
不死者になったからといって筋力が増強されたり体力が無尽蔵になる訳ではない。
身体が痛みを感じるのと同様に疲労は蓄積されていく。
一度も休憩することなくオーバーワークを強いられ続けた肉体は、とうに限界を迎えていた。
それでも立ち止まらないのは、妹の仇を討つという確固たる意思が肉体を突き動かしているからだ。
そんな彼女の足を止めたのは、新たにレーダーに表示された三つ目の光点。
アイザック・ディランと表示されたそれは、北西から道路沿いにかがみを示す光点へと向かってきている。
犯人は現場に戻るという法則もあるが、つかさを殺した犯人とは別の人間である可能性の方が高い。
だがそれは皆無ということでもない。
迷った末に、かがみは迎え撃つことを決定する。
B3エリア進入直後に自身を除けば唯一灯っていた光点。
元々の標的である風浦可符香を示す光点の近くに、二つ光点が増えていたのを確認したためだ。
210: 裏では 2007/09/30(日) 23:52:27 ID:cV4KWgzQ(1/4)調 AAS
1093 : ◆5VEHREaaO2:2007/09/30(日) 16:36:30 ID:VDHCCwHc0
自分の意図というものもありまして、魔法の道具をアニタに使わせるのは当初の予定でした。
次の人が宝具を発動させるのも、発動させないのも自由です。
1094 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 16:39:58 ID:nXyncsEo0
単に紙を使えるってだけの人だから、魔法の道具とかはどうなんだろうな。
使えてもいいし、使えなくてもいい、そんな気がするw
1095 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 16:51:53 ID:aSyOeK2Y0
>>1090
いや、高速道路で移動と方針にあったので、載宗とシンヤをスルーするのはおかしくないが、黎明にA-7の店のショーウインドウを叩き割ったのを聞かないで、早朝にA-5の高速道路上から1kmぐらい離れたB-5の可符香の声を聞きつけるのは、ちと不自然な気がする。
高速道路での移動ではないというのなら別だがね。だけど、そんな方針転換の描写も無かったし。
相当な疲労のなか、短時間で移動しすぎなのは同意。
あと、優勝狙いのわりに、多大な疲労を残したまま無理に移動しすぎじゃね? というのもあるな。
まぁ、そんな疲れどうということはない! で動き回るのも師匠らしいが。
1096 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 16:56:53 ID:pbcaz7yY0
鎖の対神性を重視するなら、頑丈さと自動追尾は神性もちに限られてほかの奴には
普通の鎖より少し頑丈という程度の制限がかかってるとするのというのは?
鎖ってただそれだけでも使いどころは多いし。
1097 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 17:36:42 ID:pRGmb/vg0
神性もちなんてランサーと我様本人くらいしかいないから、自動追尾くらいは残しといたほうがいいと思うが。
1098 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 17:53:19 ID:yK3ox4AUO
神性持ちは全然いないなー
ヴァッシュは何か違う気がするし……ここはラピュタの末裔に期待するしかないのかw
1099 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 18:12:54 ID:pRGmb/vg0
>「跪きたまえ! 君の目の前にいるのはラピュタ "神" なのだよ」
ダウト
1100 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 18:20:05 ID:XUywHRko0
カウボーイよろしく狙ったポイントに鎖を投げつけて絡めるのは
かなりの筋力と技術が必要だし、自動追尾はアリでいいと思う
強度に関しては「半端じゃなく硬いけど、超人なら引きちぎれる」に一票
「ただの鎖〜ちょっと頑丈な鎖」程度なら引きちぎれるヤツが結構いるけど
東方先生や十傑衆、テッカマン系なら力付くで破っても違和感がない
1101 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 18:24:53 ID:56Vhv12U0
>情報と考察を聞き出したうえで殺す
て思考のはず・・・・というのと
さらに師匠がドモンと繋がってるとなぜ知っているのか?というのもな・・・
たしかに前の話でドモンは自分の世界やデビルガンダムのこと説明してるが
師匠やシュバルツに関しては
>今は亡き二人のことで感傷に浸るドモン
と描写されているところ見ると
ドモンは師匠、さらにシュバルツはこのロワに参加してると気が付いてないみたいだし
容姿とかまでこと細かく伝えたとは思えん・・・
なのに可符香が師匠がドモンの関係者と知ってるつうのはちょいとあれだ・・・
ここらへんは完全に描写不足すぎだと俺は思う
キツイ言い方になるが可符香で師匠殺すつうのは全然ありだと思うが
今の調子だと単なるご都合主義だと思われてもしょうがない気がする・・・・
まぁとりあえず反応見た上で判断したかったから、少々粗い調子で一気にやったつう可能性もあるが
正直それも微妙にいらぬ影響与えた気がな・・・・キャラがキャラだけに・・・・
211(1): 裏では 2007/09/30(日) 23:53:43 ID:cV4KWgzQ(2/4)調 AAS
1102 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 21:06:35 ID:cQpeTe5o0
いくつも未解決のSSがありますが、仮投下スレから新しい議題が来ました。
・MAPの端がどうなっているか
とりあえずこういったことは書いた物勝ちでいいとおもう私は、
記述のように参加者は反対の端にワープするでもいいと思います。
これを知るか知らないかで戦略が大きく変わってくることと、
銃弾・投石など支給品や物体の移動がどうなるかについて微妙になってくることが問題点でしょうか。
1103 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 21:07:52 ID:a2QKvR1c0
右端に行ったときが問題では?
1104 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 21:12:26 ID:BTbtEs6w0
突然、水上に現れることに。
それはそれで面白い気はするが。
1105 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 21:12:30 ID:kRfF7PIE0
右端はワープ禁止か南北の近いほうに出るとかしかないかな
BCDはBの陸部分、EFGはHの陸部分とか
いきなり海に落ちるってのは避けたい
1106 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 21:13:07 ID:cQpeTe5o0
普通に考えれば海にぼちゃん、ですね。
逆に西方向に泳いでいった時のほうが困る気がする。
この辺は書き手さんにそういう展開避けてもらえばすむことではあるんだけど。
あ、船関係も困るか?
1107 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 21:15:51 ID:8GDHJpOM0
船で沖に出ると大惨事になって困りますねー
だが頭脳系キャラがループの事実を知れば実験するのは避けられなさそう。
ソコだけが問題かな。現状では「大事故起きますね、うん」で解決(?)なんだけれども。
1108 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 21:16:22 ID:bWrbTg4s0
俺としては船は逆に陸に上げたいんだが、散々動かした後にね
問題は突然の水没だが……
1109 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 21:17:06 ID:ymFXLyiU0
>>1106
豪華客船については『決まったルート以外は移動できない』としておけば問題は無いんじゃなかろうか
いきなり海にぼちゃんor泳いでたら突然陸の上に、ってのも面白そうではあるが…
いっその事、細かくは決めずにここらへんも書き手さんの早い者勝ちにしてみるとかどうだい?
そういや、既に不死の酒が海に落ちてどこかに流されてるんだったか
1110 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 21:25:38 ID:rZJJ6GDs0
立て続けに要議論くるなあ……。
とりあえず描写からは参加者とその所有物だけ移動するってことになりそう。
アイテム投げ捨てるともう取りにはいけない?
212(1): 裏では 2007/09/30(日) 23:55:44 ID:cV4KWgzQ(3/4)調 AAS
1111 : ◆RwRVJyFBpg:2007/09/30(日) 21:49:28 ID:N5tHVy0U0
仮投下スレより誘導されて来ました。
もうちょっと意見が出揃うのを待ったほうがいいのかもしれませんが
「ツチダマ見てますよ」表明も兼ねて
一応、今上がっている疑問について私の見解を書かせていただきます。
>右端に行ったとき
私としては、突然水上にワープしてぼちゃん!というのを想定して書きました。
エリアを突き抜ける人間自体、そう多くないでしょうし
運悪く東端から抜けてしまったらそれでもいいかな……と。
>銃弾・投石など支給品や物体の移動
「エリア内にある物体がエリア外に出た場合、例外なく逆の端にワープ」というつもりで書きました。
参加者と所有物だけ移動すると、何が移動して、何が移動しないかで
またもめそうな予感がするので……
それに「飛んでいったナイフが突然空中で消え去った」などの事実から
参加者がループの仕組みを推理できた方が面白いかなと。
最終的にはこれ以降このギミックを使う書き手さん次第でよいと思いますが。
>これを知るか知らないかで戦略が大きく変わってくる
個人的には、むしろこの点がループの面白みだと思っています。
「知らないと致命的」というほどのものでもないですしね。
一応、ループがボツになった場合、代わりの展開も考えてあります。
ただ、投下が期限超過後のものでしたので、他に二人を書きたい!
と言う方がおられれば、そちらにお譲りします。
1112 :名無しセカンド:2007/09/30(日) 21:49:29 ID:3EMHzNro0
しずんで動かないものは取れないかもしれないけど流されるくらいのものなら陸に流れてくる可能性がある
1113 : ◆hsja2sb1KY:2007/09/30(日) 22:00:02 ID:JMg60mck0
申し訳ありません。移動距離にむりがある。行動に矛盾がある。
ならびに、一人の読み手として見返し、強アイテムの突然使用による強マーダーの抹殺に
不満なものを感じるため、勝手で申し訳ありませんが、こちらのほうで、NG・破棄を宣言します。
宝具に関する議題はぜひこのまま続けていただきたいと思いますが、
議論された方、書き手の方には御迷惑をおかけしました。
1114 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 22:00:40 ID:cQpeTe5o0
降臨乙です。
> 「エリア内にある物体がエリア外に出た場合、例外なく逆の端にワープ」というつもりで書きました。
> 参加者と所有物だけ移動すると、何が移動して、何が移動しないかで
> またもめそうな予感がするので……
これは逆に拙い気がする。
‘壁’の向こう側からの銃・投擲の乱射が危険だし、
細かいことになるが海の流れがある以上水が際限なく流れてくる。
1115 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 22:01:32 ID:cQpeTe5o0
>>1113
乙でした。
予約スレ及び投下スレにも宣言しておいた方がいいと思います。
1116 : ◆hsja2sb1KY:2007/09/30(日) 22:05:11 ID:JMg60mck0
そちらのほうは、やはり明日になってしまいますが、NG・破棄のほうは確定でよろしくお願いします。
1117 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 22:05:14 ID:97N5Jy6wO
>水
マップそのものは移動しないだろ
1118 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 22:10:33 ID:cQpeTe5o0
うーん、現地調達品はワープして、水は(動いているのに)ワープしない適当な理由付けが思い浮かばんかったのよね。
細かい話だからある意味ご都合主義的におkでもいいんだけどさ。
1119 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 22:14:20 ID:JVS7//QY0
お二方、降臨乙です。
カフカ、マスターアジアについては残念ですが、次回作品を期待しています。
>>1112
陸地でも、参加者の手を離れたものが「ワープしない」のであるなら取りにはいけないってことじゃない?
俺は「参加者」「デイパック」「一度デイパックに入ったもの」を移動するものの定義にすればいいと思う。
銃の不意討ちは書き手さん空気読むでしょ、っていうか貴重な弾薬を見えない先に放出しないと思われ。
逃げたい放題になるし。
213(1): 裏では 2007/09/30(日) 23:57:52 ID:cV4KWgzQ(4/4)調 AAS
1120 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 22:16:53 ID:cQpeTe5o0
> 「参加者」「デイパック」「一度デイパックに入ったもの」
これいい案だね。+参加者が身につけている(いた)ものを加えれば完璧かと。
1121 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 22:22:49 ID:8GDHJpOM0
螺旋王「要は実験開始時に物理フォーマットした会場の初期状態から変動したパラメーターを持つ物質は位相のズレを生じ
それによって閉鎖空間を定義する多次元防壁を通過し得る物質となり得るのだ」
ロシウ「ワームホール理論……でしょうか?」
1122 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 22:25:46 ID:An106hVk0
長門乙w
その定義だとビシャスの鉄パイプ取り残されるぜw
1123 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 22:27:54 ID:97N5Jy6wO
ウシロ出しゃばんなw
1124 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 22:34:41 ID:ymFXLyiU0
>>1121
実際コレぐらい言ってのけても不思議じゃないよなロージェノムw
ギガゾンビとは違った意味で技術力ある主催だからなあ
1125 :ツチダマな名無しさん:2007/09/30(日) 23:49:41 ID:v5Gkc7Ko0
そう言えば千里って戦いに関しては素人で良いのか?
前に投下された作品と支給品のアサシンナイフの項を見ると素人には見えないんだがw
以上、定時報告
214: 2007/10/01(月) 00:03:30 ID:gS1opFxf(4/4)調 AAS
215: 2007/10/01(月) 00:05:44 ID:HgFhcgf+(4/4)調 AAS
>>211-213
画面の端ねぇ・・・
216: 2007/10/01(月) 00:06:22 ID:V1lKIoVP(1/4)調 AAS
217: ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:07:11 ID:fx28daaU(1/16)調 AAS
Dボゥイと小早川ゆたかは自然公園を出てB−6にある学校を目指すことにした。
ゆたかの友人が全員女子高生なので、安直だとは思ったが学校に集まるだろうと思ったからだ。
そして現在、二人はD−6の道路のちょうど真ん中あたりを歩いていた。
辺りは住宅団地のようで、無人のビルが並んでいた。
途中で轟音が聞こえゆたかが怯えたりもしたが、それ以外は特にこれといったことはなく順調だった。
「・・・・・・大丈夫か?」
「あっ!はい!大丈夫です!」
Dボゥイの問いに、ゆたかは過剰に反応して答えた。
自然公園を出てしばらくしてから、ゆたかは気がついたのだ。
――抱きしめられちゃった。
初対面の男性に、思いっきり泣きながら。
思い出してすぐにゆたかの顔は火が出るほど真っ赤になった。
ゆたかには男性と交際した経験はない。しかし女子高生である以上、周囲からそれとなくそういった情報は耳に入ってくるものなのである。
チラッとDボゥイの顔を見ると、彼は怪訝そうにこちらを見返した。
あわててゆたかは顔をそらす。
ただ抱きしめられただけである。
キスしたわけでもなく、恋人の抱擁でもなんでもなく、事実泣いている子供を慰めるためのものなのである。
ただそれだけなのだが・・・・・・やはり恥ずかしいのだ。
218: ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:08:26 ID:fx28daaU(2/16)調 AAS
■
原因であるDボゥイは風邪でも引いたかと心配していた。
――足つきはしっかりしているし、勘違いだろうか?
そこでDボゥイは軽く頭を振った。
自分が思った以上に、このゆたかという少女に入り込んでいると感じたからだ。
ごまかすように、これからのことを考える。
少しペースが遅いが、ここでゆたかに無理をさせて体調を崩させるわけにはいかない。現状でそれは致命的な命取りになる。
実は途中でゆたかを背負っていくかとも提案したが、なぜかすごい勢いで却下されてお流れとなった。
――今はこれでいい、問題はシンヤのことだ。
シンヤを、ラダムのテッカマンを殺す。それは絶対にDボゥイには譲れないことだった。
そして、その戦いにゆたかを巻き込むことはできない。それもまた、譲れないことだった。
「ゆたか」
「あっ!はい!」
「俺は、君を君の友人か、信頼できる人物に預けたら別行動を取る」
結局、Dボゥイの出した結論はそんなものだった。
Dボゥイがゆたかの近くにいることは、彼女を守ることには繋がらない。
Dボゥイ自身がシンヤを殺そうとするように、シンヤもまた、Dボゥイを殺そうとするだろう。
ゆたかの近くにいれば、必ず巻き込んでしまうことになる。
そして、復讐の鬼となったDボゥイはシンヤと殺し合いを演じることになる。
その光景は、ゆたかには見られたくなかった。
219: ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:09:38 ID:fx28daaU(3/16)調 AAS
■
ゆたかはその言葉で、浮ついていた心を一気に現実に引き戻された。
「なんで、ですか?」
「俺の都合だ、君には関係ない」
――そんなこと言われても、困ります。
困惑するゆたかを尻目に、Dボゥイは歩き続ける。
ゆたかは慌てて声をかける。
「ええと、Dボゥイさんはこのゲームに乗っていないんですよね?」
「ああ」
「それじゃあ・・・・・・え〜と」
そこでゆたかは、自分がこのゲームから脱出すると決意したものの具体的なことをまったくといっていいほど決めていないことに気がついた。
ええと、まずはお姉ちゃんやかがみさん、つかささんと合流して・・・・・・。
そうだ、人を集めるんだ。
私一人じゃ何もできないけど、沢山の人がいればきっとどうにかできる。
よし、と気合を入れてゆたかはDボゥイに思いついたこと伝えた。
「あの、一緒に逃げましょう」
「は?」
「・・・・・・ああ!ちっちちちっちちち違いますえとえとそういう意味じゃなくて!」
ゆたかは自分の失言に再び顔を真っ赤に染めた。
Dボゥイはゆたかを、流石に困った表情で見つめていた。
――やはり風邪か?
そう思い自分のデイパックの中から支給品の一つである赤いマフラーを取り出し、ゆたかの首にかける。
首輪が邪魔だが、無いよりはましだろう。
「落ち着け」
「はっ、はい。・・・・・・落ち着きました」
ゆたかは大きく深呼吸をして自分を落ち着かせた。
とはいえ恥ずかしさは残っており、その顔はまだ赤い。
ゆたかは一度自分の言いたいことを整理して、今度こそ言いたいことを伝えた。
「あの、私と一緒にこのゲームから脱出するのをお手伝いしてくれませんか」
220: ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:10:53 ID:fx28daaU(4/16)調 AAS
■
Dボゥイは表情には出さないものの内心では困っていた。
――口に出したのは早計だったか?
必要以上になつかれないようにと、先に伝えたのが間違いだったかもしれない。
いずれ離れるということを伝えておけば、別れる時にそう騒がれないだろうという打算もあったのだが。
「悪いが、断る」
「な、なんですか?」
これは思ったより面倒なことになったか?
ゆたかの困った顔を見ながら、短くため息をつく。
Dボゥイがこれからゆたかを説得するにしろ、ごまかすにしろ、不必要な労力を費やすことを想像して少し後悔した。
そんな時に、そいつは現れた
「おやおや、喧嘩はいけないな」
男はふざけた調子で二人の前に現れた。
まるで待ち伏せしていたように、道路の曲がり角から出てきたのだ。
右手でパールグリーンの中折帽(なかおれぼうし)を押さえ、左手をクリーム色のスーツのポケットに入れて腰を少し低く落としている。
今にでもスリラーでも踊りそうな雰囲気だ。
しかしちょっぴり期待したゆたかの予想は、裏切られることになる。
男は右手を帽子から離すと、ゆっくりと親指と中指とを合わせた。
「どれ、私が二人の仲を取り持ってあげよう」
Dボゥイは腰の後に手を回し、ゆたかから譲り受けたM500ハンターを取り出した。
こいつは敵だ。そう確信できるほどの邪気が目の前の男から溢れ出していた。
221: 2007/10/01(月) 00:11:07 ID:V1lKIoVP(2/4)調 AAS
222: 2007/10/01(月) 00:11:12 ID:B8GWnKWZ(1/4)調 AAS
223: ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:12:13 ID:fx28daaU(5/16)調 AAS
■
素晴らしきヒィッツカラルドは自分の幸運を、信じてもいない神に感謝していた。
見るからに普通の少女に、見たところ少々訓練を受けた程度の青年、先ほどの口直しにはちょうどいい。
ヒィッツカラルドは国際警察機構のエキスパートでもない限り、生身の人間に負けるはずなどないと思っていた。
古墳の件については例外だ。負けたわけでもないし、あのV字の物体は人間ではない。
「二人ともここで真っ二つになれば、もう離れることもないだろう?」
さあ、狩を始めることにしよう。
ヒィッツカラルドが右手の指をパチンッと鳴らした瞬間、Dボゥイはゆたかを抱えて駆け出した。
戦士としての直感が、あれを危険だと感じたのだ。
事実、数秒送れてDボゥイがいた地面に亀裂が生じた。ヒィッツカラルドの放ったカマイタチだ。
駆けながら、Dボゥイは適当に狙いをつけて発砲した。
当たれば御の字の牽制、しかしその銃弾は再びヒィッツカラルドが指を鳴らしたとたんに真っ二つになった。
常識外れな現象を、Dボゥイは驚いたものの静かにその事実を受け止めながら走った。
とりあえずは、遮蔽物のあるところへ。
――ほう、手加減したとはいえよくぞ避けた。
ヒィッツカラルドは素直に感嘆した。
カマイタチで裂傷を作り、じわじわと恐怖を味あわせてやるつもりだったがまさか避けられるとは思ってもみなかったのだ。
そして銃弾を真っ二つにしてやったときも、しっかりとこちらを観察していた。
どうやらあの青年は思った以上に修羅場をくぐり抜けてきたようだ。
――面白い、すぐに終わってしまっては味気がなさすぎる。
ヒィッツカラルドは余裕をもって二人の後を追い始めた。
224: ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:13:38 ID:fx28daaU(6/16)調 AAS
■
現在地はD−7のちょうどど真ん中あたりだろうか。
近くに自然公園があるためか、もしくはここも自然公園の一部なのか、そこは森といっていいほど緑に恵まれていた。
当然のように、遮蔽物になりえる木は大量に存在した。
木々の間に滑り込み、二人はひとまずの安息を得る。
「Dボゥイさん、あの人、なんで」
「静かに」
ゆたかは震えていた。
何が起きたかはよく分からなかったが、問答無用に殺されそうになった。それだけは理解できた。
そして理解できなかった。なぜこうも簡単に人を殺そうとするのかが。
そのことを問おうとしたのか、それとも慰めてほしかったのか、ゆたかが口を開いたその瞬間のことだ。
カマイタチが、近くの木の枝を切り裂いた。
「そういえば、まだ名乗っていなかったね」
ゆたかは恐怖した。
口を開いたならば、自分たちの潜んでいる場所が知られたなら、あったというまに切り刻まれてしまうのではないか。
どうしてか、悪い方向にばかり想像が広がってしまう。
そんなゆたかの様子を知ってか知らずか、ヒィッツカラルドは今さらな自己紹介を始めた。
「私の名は素晴らしきヒィッツカラルド、君たちの仲人だ。冥土の土産にでも覚えてくれたまえ」
パチンっと指を鳴らす音が響き、今度は近くの木が輪切りになった。
遮蔽物に意味は無いと、暗に言っているのだ。
Dボゥイはゆたかを低く伏せさせて、問う。
「何で俺たちを襲う!」
「それは本気で言っているのかね?」
ヒィッツカラルドは小馬鹿にしたように答えた。
殺し合いに乗っている。そいうことなのだろう。
「お前は、殺戮と破壊を楽しむというのか!」
「ああ!楽しくてしょうがないよ!」
パチン、パチンと次々に右手の指を鳴らす。そのたびに木は削られ、枝葉は切り落とされた。
「・・・・・・そうか、お前も、ラダムと、同じか」
ゆたかは思わず顔を上げ、Dボゥイを見た。
そこには怒りや憎しみ、悲しみや後悔、様々な感情が込められていた。
――理不尽に、全てを奪っていく悪魔。貴様はそれと同じだ!
ゆたかには、Dボゥイが、自分を優しく抱きしめてくれた青年が、まったく別の生き物に見えた。
ゆたかは知らない。全てを奪われて復讐に身を焦がす人間を、彼女は見たことが無かったのだ。
Dボゥイがゆたかに告げる。
「俺があの男の相手をしている間に、君は逃げろ」
一人ぼっちになった気がした。この場所には、もう怖い生き物しかいないような気がした。
ゆたかは怖くて肯くことしかできなかった。
225: 修整 2007/10/01(月) 00:13:38 ID:caYSZWiB(1/11)調 AAS
素晴らしきヒィッツカラルドは自分の幸運を、信じてもいない神に感謝していた。
見るからに普通の少女に、見たところ少々訓練を受けた程度の青年、先ほどの口直しにはちょうどいい。
ヒィッツカラルドは国際警察機構のエキスパートでもない限り、生身の人間に負けるはずなどないと思っていた。 古墳の件については例外だ。負けたわけでもないし、あのV字の物体は人間ではない。
「二人ともここで真っ二つになれば、もう離れることもないだろう?」
さあ、狩を始めることにしよう。
ヒィッツカラルドが右手の指をパチンッと鳴らした瞬間、Dボゥイはゆたかを抱えて駆け出した。
戦士としての直感が、あれを危険だと感じたのだ。
事実、数秒送れてDボゥイがいた地面に亀裂が生じた。ヒィッツカラルドの放ったカマイタチだ。
駆けながら、Dボゥイは適当に狙いをつけて発砲した。
当たれば御の字の牽制、しかしその銃弾は再びヒィッツカラルドが指を鳴らしたとたんに真っ二つになった。
常識外れな現象を、Dボゥイは驚いたものの静かにその事実を受け止めながら走った。
とりあえずは、遮蔽物のあるところへ。
――ほう、手加減したとはいえよくぞ避けた。
ヒィッツカラルドは素直に感嘆した。
カマイタチで裂傷を作り、じわじわと恐怖を味あわせてやるつもりだったがまさか避けられるとは
思ってもみなかったのだ。そして銃弾を真っ二つにしてやったときも、しっかりとこちらを観察していた。
どうやらあの青年は思った以上に修羅場をくぐり抜けてきたようだ。
――面白い、すぐに終わってしまっては味気がなさすぎる。
ヒィッツカラルドは余裕をもって、二人の後を追い始めた。
226: 2007/10/01(月) 00:13:42 ID:V1lKIoVP(3/4)調 AAS
227: 2007/10/01(月) 00:14:04 ID:dRNyXujB(1/5)調 AAS
228(1): ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:14:46 ID:fx28daaU(7/16)調 AAS
■
怒りに支配されながらも、Dボゥイは冷静であった。
冷静に、ヒィッツカラルドをどう殺すかを考えていた。
――あれは見えない何かを、指を鳴らすことで打ち出している。
――そしてさっきから乱発しているところを見ると弾は無尽蔵か、それに近いほど保有している。
流石に指を鳴らしてカマイタチを発生させているとは分からなかったが、Dボゥイの考察は正解に近かった。
少し考え、Dボゥイはおもむろにデイバックから紙のぎっしりと詰まったトランクケースを取り出し軽く蓋を開ける。
銃は再び腰の後に差し込む。アレに対しては銃弾は無駄弾になるだけだと判断したのだ。
「俺がトランクを投げたら全力で走れ」
それだけをゆたかに告げ、トランクケースをヒィッツカラルドの頭上に目掛けて投げた。
トランクの容量を越えるような紙が舞い、森を白く染める。常識外れの紙ふぶきだ。
「行け!」
ゆたかに向かって叫び、デイパックに片手を突っ込みながらDボゥイは駆け出した。
飛び出したDボゥイに向けて、ヒィッツカラルドが右手の指をパチンとさせる。
思った通り、見えない刃が紙を切り裂きながら飛んできた。
――見えていれば、対処のしようはいくらでもある。
カマイタチは一発撃ってから、次の発射までわずかな時間があった。
そして、カマイタチが発射される瞬間はあまりにも分かりやすかった。
一発目、二発目、三発目とやり過ごし、ヒィッツカラルドに迫る。
――妙だ
あまりにも簡単に踏み込ませすぎる。
だが今さら引くことはできない。後退すれば敵に狙い撃ちされるだけだ。
そこで、Dボゥイは自分が罠にはまったのだと悟った。
229: 修整 2007/10/01(月) 00:15:25 ID:caYSZWiB(2/11)調 AAS
Dボゥイは表情には出さないものの内心では困っていた。
――口に出したのは早計だったか?
必要以上になつかれないようにと、先に伝えたのが間違いだったかもしれない。
いずれ離れるということを伝えておけば、別れる時にそう騒がれないだろうという打算もあったのだが。
「悪いが、断る」 「な、なんですか?」
これは思ったより面倒なことになったか?
ゆたかの困った顔を見ながら、短くため息をつく。
Dボゥイがこれからゆたかを説得するにしろ、ごまかすにしろ、不必要な労力を費やすことを想像して少し後悔した。
そんな時に、そいつは現れた
「おやおや、喧嘩はいけないな」
男はふざけた調子で二人の前に現れた。まるで待ち伏せしていたように、道路の曲がり角から出てきたのだ。
右手でパールグリーンの中折帽(なかおれぼうし)を押さえ、左手をクリーム色のスーツのポケットに入れて腰を少し低く落としている。今にでもスリラーでも踊りそうな雰囲気だ。
しかしちょっぴり期待したゆたかの予想は、裏切られることになる。
男は右手を帽子から離すと、ゆっくりと親指と中指とを合わせた。
「どれ、私が二人の仲を取り持ってあげよう」
Dボゥイは腰の後に手を回し、ゆたかから譲り受けたM500ハンターを取り出した。
こいつは敵だ。そう確信できるほどの邪気が目の前の男から溢れ出していた。
230: 2007/10/01(月) 00:15:39 ID:B8GWnKWZ(2/4)調 AAS
231(1): ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:15:52 ID:fx28daaU(8/16)調 AAS
■
「なるほど、孔明の気持ちが少しは分かった気がするよ」
ヒィッツカラルドは愉快だった。適当な罠をはったら、愚かな獲物はみごとに食らいついてきたのだ。
ヒィッツカラルドは『左手』をポケットから取り出し、親指と中指を合わせる。
ヒィッツカラルドは、二人と出会ってから今まで右手でしかカマイタチを打ち出さなかった。
たまたま思いついたことだった。弱者をいたぶるための罠として。
獲物はもう逃げられないところまで来ていた。
Dボゥイはヒィッツカラルドが左手を出したのを見ると、即座に次の行動に移った。
デイパックに突っ込んでいた手には、テッカマンアックスのテックランサー――片刃のハルバードが握られていた。
人の手に余るこいつをデイパックから抜き出し、そのままの勢いでヒィッツカラルドに叩きつけるつもりであったがもう猶予はない。
距離は足りない。しかし、まだ手はある。
「食らえ!」
Dボゥイはデイパックからアックスのテックランサーを抜き出し、そのままヒィッツカラルドに向けてハンマー投げのように投擲した。
大きく重いそれはそれほど遠くには飛ばない。しかしヒィッツカラルドまでには充分届いた。
「残念だったね」
届くには、届いたのだ。
しかしそれはヒィッツカラルドには滑稽なほど遅く鈍く、紙一重で避けるには充分すぎたのだ。
ヒィッツカラルドが投擲でバランスを崩したDボゥイに向けて指を鳴らす。
とっさに身をよじったものの、今度は避けることはできなかった。
「・・・・・・ふむ」
ヒィッツカラルドはDボゥイの捨て身の攻撃を紙一重で避けたものの、不満げだった。
足元にはヒィッツカラルドの支給品が転がっている。投擲でデイパックを切り裂かれたのだ。
その中には月の石も含まれており、残念なことに三つほど瓶が割れていた。
本来ならば、彼にこのようなミスはない。
しかし螺旋王が施した制限が、ヒィッツカラルドの見切りを乱したのだ。
――まあいい、もともと私には必要ないものばかりだ。
デイパックもこいつらから奪い取ればいいだけの話。
そう結論付けたが、ヒィッツカラルドは月の石を一つ拾いスーツの内ポケットに入れる。
少々、もったいない気がしたのだ。どうせすぐに効果が消えるのなら、有効に使った方がいいだろう。
気を取り直し、ヒィッツカラルドはDボゥイに止めを刺すために近づく。
あと少しといったところで、ヒィッツカラルドの前に一人の少女が立ちふさがった。
小早川ゆたかだった。
232: 2007/10/01(月) 00:16:01 ID:dRNyXujB(2/5)調 AAS
233: ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:16:30 ID:caYSZWiB(3/11)調 AAS
現在地はD−7のちょうどど真ん中あたりだろうか。
近くに自然公園があるためか、もしくはここも自然公園の一部なのか、そこは森といっていいほど
緑に恵まれていた。 当然のように、遮蔽物になりえる木は大量に存在した。
木々の間に滑り込み、二人はひとまずの安息を得る。
「Dボゥイさん、あの人、なんで」 「静かに」
ゆたかは震えていた。
何が起きたかはよく分からなかったが、問答無用に殺されそうになった。それだけは理解できた。
そして理解できなかった。なぜこうも簡単に人を殺そうとするのかが。
そのことを問おうとしたのか、それとも慰めてほしかったのか、ゆたかが口を開いたその瞬間のことだ。
カマイタチが、近くの木の枝を切り裂いた。
「そういえば、まだ名乗っていなかったね」
ゆたかは恐怖した。 口を開いたならば、自分たちの潜んでいる場所が知られたなら、
あったというまに切り刻まれてしまうのではないか。 どうしてか、悪い方向にばかり想像が広がってしまう。
そんなゆたかの様子を知ってか知らずか、ヒィッツカラルドは今さらな自己紹介を始めた。
「私の名は素晴らしきヒィッツカラルド、君たちの仲人だ。冥土の土産にでも覚えてくれたまえ」
パチンっと指を鳴らす音が響き、今度は近くの木が輪切りになった。 遮蔽物に意味は無いと、暗に言っているのだ。
Dボゥイはゆたかを低く伏せさせて、問う。
「何で俺たちを襲う!」 「それは本気で言っているのかね?」
ヒィッツカラルドは小馬鹿にしたように答えた。殺し合いに乗っている。そいうことなのだろう。
「お前は、殺戮と破壊を楽しむというのか!」
「ああ!楽しくてしょうがないよ!」
パチン、パチンと次々に右手の指を鳴らす。そのたびに木は削られ、枝葉は切り落とされた。
「・・・・・・そうか、お前も、ラダムと、同じか」
ゆたかは思わず顔を上げ、Dボゥイを見た。
そこには怒りや憎しみ、悲しみや後悔、様々な感情が込められていた。
――理不尽に、全てを奪っていく悪魔。貴様はそれと同じだ!
ゆたかには、Dボゥイが、自分を優しく抱きしめてくれた青年が、まったく別の生き物に見えた。
ゆたかは知らない。全てを奪われて復讐に身を焦がす人間を、彼女は見たことが無かったのだ。
Dボゥイがゆたかに告げる。
「俺があの男の相手をしている間に、君は逃げろ」
一人ぼっちになった気がした。この場所には、もう怖い生き物しかいないような気がした。
ゆたかは怖くて肯くことしかできなかった。
234: ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:17:52 ID:caYSZWiB(4/11)調 AAS
■
「なるほど、孔明の気持ちが少しは分かった気がするよ」
ヒィッツカラルドは愉快だった。適当な罠をはったら、愚かな獲物はみごとに食らいついてきたのだ。
ヒィッツカラルドは『左手』をポケットから取り出し、親指と中指を合わせる。
ヒィッツカラルドは、二人と出会ってから今まで右手でしかカマイタチを打ち出さなかった。
たまたま思いついたことだった。弱者をいたぶるための罠として。
獲物はもう逃げられないところまで来ていた。
Dボゥイはヒィッツカラルドが左手を出したのを見ると、即座に次の行動に移った。
デイパックに突っ込んでいた手には、テッカマンアックスのテックランサー――片刃のハルバードが握られていた。
人の手に余るこいつをデイパックから抜き出し、そのままの勢いでヒィッツカラルドに叩きつけるつもりであったがもう猶予はない。 距離は足りない。しかし、まだ手はある。
「食らえ!」
Dボゥイはデイパックからアックスのテックランサーを抜き出し、そのままヒィッツカラルドに向けてハンマー投げのように投擲した。
大きく重いそれはそれほど遠くには飛ばない。しかしヒィッツカラルドまでには充分届いた。
「残念だったね」
届くには、届いたのだ。
しかしそれはヒィッツカラルドには滑稽なほど遅く鈍く、紙一重で避けるには充分すぎたのだ。
ヒィッツカラルドが投擲でバランスを崩したDボゥイに向けて指を鳴らす。
とっさに身をよじったものの、今度は避けることはできなかった。
「・・・・・・ふむ」
ヒィッツカラルドはDボゥイの捨て身の攻撃を紙一重で避けたものの、不満げだった。
足元にはヒィッツカラルドの支給品が転がっている。投擲でデイパックを切り裂かれたのだ。
その中には月の石も含まれており、残念なことに三つほど瓶が割れていた。
本来ならば、彼にこのようなミスはない。
しかし螺旋王が施した制限が、ヒィッツカラルドの見切りを乱したのだ。
――まあいい、もともと私には必要ないものばかりだ。
デイパックもこいつらから奪い取ればいいだけの話。
そう結論付けたが、ヒィッツカラルドは月の石を一つ拾いスーツの内ポケットに入れる。
少々、もったいない気がしたのだ。どうせすぐに効果が消えるのなら、有効に使った方がいいだろう。
気を取り直し、ヒィッツカラルドはDボゥイに止めを刺すために近づく。
あと少しといったところで、ヒィッツカラルドの前に一人の少女が立ちふさがった。
小早川ゆたかだった。
235: 2007/10/01(月) 00:17:57 ID:B8GWnKWZ(3/4)調 AAS
236: 2007/10/01(月) 00:17:59 ID:dRNyXujB(3/5)調 AAS
237(1): ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:18:47 ID:fx28daaU(9/16)調 AAS
■
時間は少し遡る。
「行け!」
そう言われても、ゆたかの足は一歩も前に出なかった。
一人になることが、怖かった。
何も考えられなかった。
ただ、何も分からないことも怖くて木からひょっこりと顔を出して様子をうかがったのだ。
そして、ゆたかの目にDボゥイが倒れ伏す姿が写った。
ごちゃごちゃの飽和状態だったゆたかの頭の中で、たった一つだけ言葉が響いた。
――嫌だ
優しい人は怖い人だった。怖い人だったけど優しかった。
そう、優しい人だったんだ。だから私は信じることにしたんだ。
それで、みんなで帰ろうって決めて・・・・・・みんな、お姉ちゃんにかがみさんにつかささん。
それと、Dボゥイさんも。
――こんなの、嫌だ!
私は帰りたい。みんなと帰りたい。
こんな所で死にたくない。死んでほしくない。
私は・・・・・そうだ、私はDボゥイさんのことを何も知らないし、私もぜんぜん話してない。
――よく分からないけど、こんなの、嫌だ!
それはパニックに似ていたかもしれない。
支離滅裂な思考で、普段なら考えられないような行動をとってしまう。
Dボゥイの元に駆け出したゆたかは、何も考えてなどいなかった。
238: 2007/10/01(月) 00:19:46 ID:V1lKIoVP(4/4)調 AAS
239: ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:19:49 ID:caYSZWiB(5/11)調 AAS
■
時間は少し遡る。
「行け!」
そう言われても、ゆたかの足は一歩も前に出なかった。
一人になることが、怖かった。 何も考えられなかった。
ただ、何も分からないことも怖くて木からひょっこりと顔を出して様子をうかがったのだ。
そして、ゆたかの目にDボゥイが倒れ伏す姿が写った。
ごちゃごちゃの飽和状態だったゆたかの頭の中で、たった一つだけ言葉が響いた。
――嫌だ
優しい人は怖い人だった。怖い人だったけど優しかった。そう、優しい人だったんだ。だから私は信じることにしたんだ。それで、みんなで帰ろうって決めて・・・・・・みんな、お姉ちゃんにかがみさんにつかささん。
それと、Dボゥイさんも。
――こんなの、嫌だ!
私は帰りたい。みんなと帰りたい。 こんな所で死にたくない。死んでほしくない。
私は・・・・・そうだ、私はDボゥイさんのことを何も知らないし、私もぜんぜん話してない。
――よく分からないけど、こんなの、嫌だ!
それはパニックに似ていたかもしれない。支離滅裂な思考で、普段なら考えられないような
行動をとってしまう。 Dボゥイの元に駆け出したゆたかは、何も考えてなどいなかった。
240(1): ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:20:44 ID:fx28daaU(10/16)調 AAS
■
Dボゥイを守るように立ちはだかったゆたかは、大きく腕を広げて真っ直ぐにヒィッツカラルドを見つめた。
それだけだった。
ヒィッツカラルドは訝しげな顔を見せたものの、それは次第に笑みに変わった。
「・・・・・・ふ、ふはははははは」
ヒィッツカラルドのテンションは上がりっぱなしだった。
――この二人は、なんと私を楽しませてくれることか!
「くあっはっはっは!あーはっはっはっは!」
ヒィッツカラルドは大きく背をそらし、頭に手を当てて嗤った。
あまりにもおかしすぎて腹を曲げ、指をさして嗤った。
そしてひとしきり嗤い終えると、両手を指を鳴らす構えに戻す。
もう十二分に楽しんだ、そろそろ終わりにしてやろう。
「よかろう、ではそこの男と一緒に・・・・・・むっ?」
真っ二つにしてやろう、と続けようとしたヒィッツカラルドはあることに気がついた。
ゆたかの胸にあるドリルのようなアクセサリー、がうっすらとだが光っているのだ。
――確かあのVの男は『心の力』がどうだとか言っていたな。
結びつけるのは早計かもしれないが、確保しておいて悪いことはあるまい。
ヒィッツカラルドは構えを解くとゆたかとの距離を詰める。
ゆたかは一歩だけ後ずさるが、自分の後にDボゥイがいることを思い出すと気丈にもヒィッツカラルドを睨みつけた。
その姿を見たヒィッツカラルドに、段々と嗜虐心が湧き上がってきた。
――ゆっくりとくびり殺してやろうか
コアドリルに伸ばそうとしていた手の行き先を、ゆたかの首に変更した。
マフラー越しに掴んだところで、首輪の硬い感触が手に伝わる。
そのまま首輪を掴んでゆたかを空中に吊り上げ、ヒィッツカラルドは思いついた。
「首輪を真っ二つにしてみるのも、面白そうだな」
はたして首輪は爆発せずに残るかどうか。その可能性は限りなく低いだろう。
――だが、何事も試してみないと始まらないからな。
首輪を真っ二つにする瞬間を想像し、ヒィッツカラルドは大いに嗤った。
241: 2007/10/01(月) 00:20:46 ID:dRNyXujB(4/5)調 AAS
242(1): ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:21:50 ID:fx28daaU(11/16)調 AAS
■
Dボゥイは死に掛けていた。
カマイタチの一撃は、いったいどんな理屈かDボゥイを切断するまでにはいかなかった。
ひょっとしたら、これがロージェノムの言っていた制限なのかもしれない。
しかし肩から背中まで走ったその裂傷は、紙で白く染まった大地に赤い血の海を作っていた。
死への恐怖があったが、不思議と安らぎもあった。
これ以上戦わなくいい。もう休んでもいい。奇妙な誘いだった。
Dボゥイがその安らぎに身を任せようかと思ったその時に、嗤い声が聞こえた。
――人が気持ちよく寝るっていうのに、耳障りだな。
そう思いDボゥイはうっすらと目を開け、覚醒した。
また繰り返すつもりか、俺は。
立ち上がって命をかけるだけの理由は、そこにあった。
身体が痛い。
――どうにかなる
血が足りない。
――それがどうかしたか。
これ以上は死んでしまう。
――また、俺は大切なものをこの手から取りこぼすのか?
「これ以上、貴様のような悪魔に、くれてやるものなどあるものか!」
ゼロから、トップへ。
死に掛けの身体を無理矢理起こし、距離を詰めるため全力で駆け出した。
243: ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:22:04 ID:caYSZWiB(6/11)調 AAS
■
Dボゥイを守るように立ちはだかったゆたかは、大きく腕を広げて真っ直ぐにヒィッツカラルドを見つめた。
それだけだった。
ヒィッツカラルドは訝しげな顔を見せたものの、それは次第に笑みに変わった。
「・・・・・・ふ、ふはははははは」
ヒィッツカラルドのテンションは上がりっぱなしだった。
――この二人は、なんと私を楽しませてくれることか!
「くあっはっはっは!あーはっはっはっは!」
ヒィッツカラルドは大きく背をそらし、頭に手を当てて嗤った。
あまりにもおかしすぎて腹を曲げ、指をさして嗤った。
そしてひとしきり嗤い終えると、両手を指を鳴らす構えに戻す。
もう十二分に楽しんだ、そろそろ終わりにしてやろう。
「よかろう、ではそこの男と一緒に・・・・・・むっ?」
真っ二つにしてやろう、と続けようとしたヒィッツカラルドはあることに気がついた。
ゆたかの胸にあるドリルのようなアクセサリー、がうっすらとだが光っているのだ。
――確かあのVの男は『心の力』がどうだとか言っていたな。
結びつけるのは早計かもしれないが、確保しておいて悪いことはあるまい。
ヒィッツカラルドは構えを解くとゆたかとの距離を詰める。
ゆたかは一歩だけ後ずさるが、自分の後にDボゥイがいることを思い出すと気丈にもヒィッツカラルドを睨みつけた。
その姿を見たヒィッツカラルドに、段々と嗜虐心が湧き上がってきた。
――ゆっくりとくびり殺してやろうか
コアドリルに伸ばそうとしていた手の行き先を、ゆたかの首に変更した。
マフラー越しに掴んだところで、首輪の硬い感触が手に伝わる。
そのまま首輪を掴んでゆたかを空中に吊り上げ、ヒィッツカラルドは思いついた。
「首輪を真っ二つにしてみるのも、面白そうだな」
はたして首輪は爆発せずに残るかどうか。その可能性は限りなく低いだろう。
――だが、何事も試してみないと始まらないからな。
首輪を真っ二つにする瞬間を想像し、ヒィッツカラルドは大いに嗤った。
244(1): ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:22:58 ID:fx28daaU(12/16)調 AAS
■
ヒィッツカラルドはそれを詰まらなさそうに眺めていた。
所詮は死にかけ、しかも馬鹿正直に一直線に向かってくる。
指を一度鳴らしただけで、また地面に這いずるだろう。
――少々興ざめかな?
そんなことを思いながら空いている方の指を鳴らそうとした時、ゆたかを吊り上げた腕に何かが刺さった。
ゆたかは無我夢中だった。
Dボゥイが生きていた、それは嬉しい。
けれどこの危険な男は、またDボゥイを傷つけようとしている。
――なんとか、なんとかしなくちゃ。
必死に考え、とっさに身近なものでヒィッツカラルドの腕を突き刺したのだ。
後のことを考える余裕は、ゆたかにはなかった。
「Dボゥイさん!」
どんな意味で叫んだかは、ゆたか本人にも分からなかった。
生きてほしかった。生きたかった。
みんなで帰りたかった。
その思いは、螺旋力となってヒィッツカラルドを貫いた。
245: 2007/10/01(月) 00:23:01 ID:dRNyXujB(5/5)調 AAS
246: ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:23:10 ID:caYSZWiB(7/11)調 AAS
■ (ずいぶん修整多いな)
Dボゥイは死に掛けていた。
カマイタチの一撃は、いったいどんな理屈かDボゥイを切断するまでにはいかなかった。
ひょっとしたら、これがロージェノムの言っていた制限なのかもしれない。
しかし肩から背中まで走ったその裂傷は、紙で白く染まった大地に赤い血の海を作っていた。
死への恐怖があったが、不思議と安らぎもあった。
これ以上戦わなくいい。もう休んでもいい。奇妙な誘いだった。
Dボゥイがその安らぎに身を任せようかと思ったその時に、嗤い声が聞こえた。
――人が気持ちよく寝るっていうのに、耳障りだな。
そう思いDボゥイはうっすらと目を開け、覚醒した。
また繰り返すつもりか、俺は。
立ち上がって命をかけるだけの理由は、そこにあった。
身体が痛い。 ――どうにかなる 血が足りない。
――それがどうかしたか。 これ以上は死んでしまう。
――また、俺は大切なものをこの手から取りこぼすのか?
「これ以上、貴様のような悪魔に、くれてやるものなどあるものか!」
ゼロから、トップへ。
死に掛けの身体を無理矢理起こし、距離を詰めるため全力で駆け出した。
247: 2007/10/01(月) 00:23:58 ID:B8GWnKWZ(4/4)調 AAS
248(1): ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:24:26 ID:fx28daaU(13/16)調 AAS
■
ヒィッツカラルドは自身に起きたことが信じられなかった。
――なんだ!これは!
ヒィッツカラルドの二の腕、コアドリルが突き刺さった場所に風穴が空いていた。
手に力が入らず、ゆたかが開放される。
「きゃっ!」
ゆたかはろくに着地もできず尻餅をつき、自らの行為に呆然とした。
ただのアクセサリーだと思っていたものが、まったくの別物だとやっと気がついたのだ。
「貴様ぁ!」
ヒィッツカラルドは激昂した。
油断した自分が悪いのだが、愉快な気分に一気に水をさされたのだ。
この責任を取ってもらおうと、無事な方の手で指を鳴らそうと構えた。
そして、Dボゥイの握るM500ハンターがヒィッツカラルドの額に押し付けられた。
「零距離、とったぞ」
火薬の音が響く。
銃弾はヒィッツカラルドの骨を砕き、肉を抉り、脳を滅茶苦茶に掻き回した。
――馬鹿な、十傑集の私がこんなところで!
その答えは、簡単だった。
素晴らしきヒィッツカラルドは単に遊びすぎたのだ。
249: ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:25:12 ID:caYSZWiB(8/11)調 AAS
■
ヒィッツカラルドはそれを詰まらなさそうに眺めていた。
所詮は死にかけ、しかも馬鹿正直に一直線に向かってくる。
指を一度鳴らしただけで、また地面に這いずるだろう。
――少々興ざめかな?
そんなことを思いながら空いている方の指を鳴らそうとした時、ゆたかを吊り上げた腕に何かが刺さった。
ゆたかは無我夢中だった。
Dボゥイが生きていた、それは嬉しい。
けれどこの危険な男は、またDボゥイを傷つけようとしている。
――なんとか、なんとかしなくちゃ。
必死に考え、とっさに身近なものでヒィッツカラルドの腕を突き刺したのだ。
後のことを考える余裕は、ゆたかにはなかった。
「Dボゥイさん!」 どんな意味で叫んだかは、ゆたか本人にも分からなかった。
生きてほしかった。生きたかった。
みんなで帰りたかった。
その思いは、螺旋力となってヒィッツカラルドを貫いた。
250: ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:26:17 ID:caYSZWiB(9/11)調 AAS
■
ヒィッツカラルドは自身に起きたことが信じられなかった。
――なんだ!これは!
ヒィッツカラルドの二の腕、コアドリルが突き刺さった場所に風穴が空いていた。
手に力が入らず、ゆたかが開放される。
「きゃっ!」
ゆたかはろくに着地もできず尻餅をつき、自らの行為に呆然とする。
ただのアクセサリーだと思っていたものが、まったくの別物だとやっと気がついたのだ。
「貴様ぁ!」
ヒィッツカラルドは激昂した。油断した自分が悪いのだが、愉快な気分に一気に水をさされたのだ。
この責任を取ってもらおうと、無事な方の手で指を鳴らそうと構えた。
そして、Dボゥイの握るM500ハンターがヒィッツカラルドの額に押し付けられた。
「零距離、とったぞ」
火薬の音が響く。 銃弾はヒィッツカラルドの骨を砕き、肉を抉り、脳を滅茶苦茶に掻き回した。
――馬鹿な、十傑集の私がこんなところで!
その答えは、簡単だった。 素晴らしきヒィッツカラルドは単に遊びすぎたのだ。
251(1): ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:26:18 ID:fx28daaU(14/16)調 AAS
■
Dボゥイは銃弾を受け倒れたヒィッツカラルドに重なるようにぶっ倒れた。
カマイタチの傷跡は相変わらず血を流しており、しかも短い距離とはいえ全力疾走をしたのだから当然といえる。
「Dボゥイさん!」
頭に血が回らなくて、誰の声か分からなかった。
ただ、今度こそ守れたような気がした。
そこまで考えて、Dボゥイの意識は闇に沈んだ。
「Dボゥイさん!Dボゥイさん!」
人を傷つけたことも、人が死んだこともゆたかにはショックだった。
でも今は全て後回しだ。逃避かもしれないが、今はDボゥイのことが心配だった。
そして、何回目になるか分からない衝撃を受けることになった。
「え、傷が・・・・・・」
Dボゥイの傷は、ゆっくりとだが回復していたのだ。
もっとも血が止まっただけで、傷はなまなましく残っていたのだが。
――Dボゥイさんって何者なんだろう?
目が覚めたら、もっと話し合おう。
私のこととか、私の友達のこととか、学校のこととか話してみよう。
それから、あらためてお願いしてみよう。
一緒に帰ろう、て。
そこまで考えて、小早川ゆたかの意識は闇に沈んだ。
安心した瞬間に気が抜けたのだ。
普段のゆたかでは考えられないほど動き回ったのだ。その反動だろうか。
ゆたかはゆっくりと仰向けになって寝転んだ。
■
死に絶えたヒィッツカラルドの内ポケットの中で、月の石のかけらは徐々にその光を失っていた。
Dボゥイを回復させたのは、月の石のかけらの効果だった。
ヒィッツカラルドの倒れ込んだDボゥイが偶然にも光を浴びた、それだけだった。
月の石のかけらはついにその光を失い、ただの石に戻った。
墓石にしては、その石はあまりに小さかった。
252: ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:27:27 ID:caYSZWiB(10/11)調 AAS
Dボゥイは銃弾を受け倒れたヒィッツカラルドに重なるようにぶっ倒れた。
カマイタチの傷跡は相変わらず血を流しており、しかも短い距離とはいえ全力疾走をしたのだから当然といえる。
「Dボゥイさん!」
頭に血が回らなくて、誰の声か分からなかった。 ただ、今度こそ守れたような気がした。
そこまで考えて、Dボゥイの意識は闇に沈んだ。
「Dボゥイさん!Dボゥイさん!」
人を傷つけたことも、人が死んだこともゆたかにはショックだった。でも今は全て後回しだ。逃避かもしれないが、今はDボゥイのことが心配だった。 そして、何回目になるか分からない衝撃を受けることになった。
「え、傷が・・・・・・」
Dボゥイの傷は、ゆっくりとだが回復していたのだ。 もっとも血が止まっただけで、傷はなまなましく残っていたのだが。
――Dボゥイさんって何者なんだろう?
目が覚めたら、もっと話し合おう。私のこととか、私の友達のこととか、学校のこととか話してみよう。
それから、あらためてお願いしてみよう。 一緒に帰ろう、て。
そこまで考えて、小早川ゆたかの意識は闇に沈んだ。 安心した瞬間に気が抜けたのだ。
普段のゆたかでは考えられないほど動き回ったのだ。その反動だろうか。
ゆたかはゆっくりと仰向けになって寝転んだ。
死に絶えたヒィッツカラルドの内ポケットの中で、月の石のかけらは徐々にその光を失っていた。
Dボゥイを回復させたのは、月の石のかけらの効果だった。ヒィッツカラルドの倒れ込んだDボゥイが
偶然にも光を浴びた、それだけだった。 月の石のかけらはついにその光を失い、ただの石に戻った。
墓石にしては、その石はあまりに小さかった。
253(1): ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:27:48 ID:fx28daaU(15/16)調 AAS
【D-7/住宅団地/1日目/早朝】
【Dボゥイ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:左肩から背中の中心まで大きな裂傷、吹き飛ばされたときに全身に打撲。
[装備]:M500ハンター(残弾、3/5)、テッカマンアックスのテックランサー(斧)
[道具]:支給品一式
[思考]
1:今は眠る
2:テッカマンエビル、相羽シンヤを殺す
3:2を果たすためなら、下記の思考を度外視する可能性あり
4:ゆたかを知り合いか信頼できる人物にゆだねる。
5:ゲームに乗っている人間を殺す
[備考]
:殺し合いに乗っているものはラダムと同じだと結論しました
:テッカマンアックス撃破後、身体が蝕まれる前ぐらいを意識しました
【小早川ゆたか@らき☆すた】
[状態]:肉体的にも精神的にも疲労大
[装備]:
[道具]:支給品一式、コアドリル、鴇羽舞衣のマフラー(舞-HiME)
[思考]
1:今は眠る
2:みんなでこのゲームから脱出
3:Dボゥイさんの目が覚めたら色々お話をする(脱出を手伝ってもらう)
4:泉こなた、柊かがみ、柊つかさを探す
[備考]
:コアドリルがただのアクセサリーではないということに気がつきました。
【素晴らしきヒィッツカラルド@ジャイアントロボ 死亡】
※Dボゥイとゆたかはお互いが別の世界から集められたと気がついていません。
※D−6の団地の一部に大量の紙が散らばっています。
※ヒィッツカラルドの支給品(0~2)が近くに転がっています。
※月の石のかけら(二個)も上記と同様に転がっています。
※紙の入ったトランクケース(@R.O.D)は少々の中身を残して近くに転がっています。
※ヒィッツカラルドはフィーロの帽子(@バッカーノ!)をかぶったままです。
254(1): ただ撃ち貫くのみ 2007/10/01(月) 00:28:35 ID:caYSZWiB(11/11)調 AAS
さるさるかいひとともに修整完了
改行多すぎ
255: 2007/10/01(月) 00:32:38 ID:I7E6wjgZ(1)調 AAS
>>209->>254
SS・修整共に乙
256: 2007/10/01(月) 00:37:29 ID:nApedyXG(1)調 AAS
きほんてきな
ところなんだが
かいぎょうが
へんなんだな
257: ただ撃ち貫くのみ ◆1sC7CjNPu2 2007/10/01(月) 00:38:32 ID:fx28daaU(16/16)調 AAS
>>217-224
>>228
>>231
>>237
>>240
>>242
>>244
>>248
>>251
>>253
が自分が投下したものです
ID:fx28daaUのやつです
258: 2007/10/01(月) 00:48:50 ID:i7o7kCLw(1)調 AAS
それはどうでもいい
見栄え等も含めた改変だから
259: 2007/10/01(月) 08:13:52 ID:8PTI54oR(1)調 AAS
見映え調整乙です
260: ◆hsja2sb1KY 2007/10/01(月) 17:19:12 ID:eFpByHJ4(1)調 AAS
NG要望 なんたる迷惑であることか ◆hsja2sb1KY
数々のご指摘点ならび自身の不満点により破棄します。議論された方、書き手の方にはご迷惑おかけしました。
261: 2007/10/01(月) 17:40:42 ID:rchCvjd+(1)調 AAS
却下
262: 2007/10/01(月) 21:06:14 ID:ulySr4U2(1)調 AAS
テンプレをしたらばに勝手に決められてるんで
勝手にさせないようにこちらでもテンプレを作るか
263: 2007/10/01(月) 21:16:59 ID:YT5SUGrR(1)調 AAS
ああ、そっちのほうが安全かもね
264: 2007/10/01(月) 21:59:11 ID:7vravoGN(1)調 AAS
全撤廃というか、テンプレなんてそもそもないじゃん
外部のやっこさんが勝手にルールつくってきただけだし
265: 2007/10/01(月) 23:14:28 ID:cc9RJvAf(1)調 AAS
ローカルルール云々の話はスレ内容とは全く関係ない話になることと、
長期化が予想されスレの健全な運営に悪影響を及ぼすことが予想されます。
なので、議論は以下のスレを利用してください。
このスレ上で議論をすることはこのスレにとってマイナス以外の何者でもありません。
自治/ローカルルールスレ Part1 2chスレ:anichara
この「2ちゃん上のスレ」でどうぞ。
266: この手に堕ちた腐りかけの肉塊 ◆oRFbZD5WiQ 2007/10/02(火) 00:27:12 ID:iORhm0k9(1/8)調 AAS
なにがおもしろいのか、はたまた、見るもの全てが愉快でたまらないのか。
シータの隣を歩く、マオと名乗った長身の青年は、己の喜悦を動作で表すように両の手を叩いていた。
(なんで、こんな状態でそんなに楽しそうにしていられるんだろう。それに――)
つい先程――いや、既に随分と時間は経っているが、彼女の主観では先程――、自分とパズーしか知らないような事を、
否。パズーですら完全には知らぬ事を正鵠に言い当てた、彼は一体何者なのか。
あのムスカという軍人の関係者か、それとも、
(ラピュタの王族、かも)
そう、あのムスカのように。
◆ ◆ ◆
滑稽滑稽、まさに滑稽だ! とマオは嘲う。
自分の思考が読まれている事など理解の埒外の彼女は、必死に理由を求める。
そう、自分の思考をトレースされた、その理由を。
その小さな頭に入った灰色のそれを必死に稼動し、自身の経験を順序だてて回想し、考える。
どうすれば、そこまでわたしを調べる事ができるの? どこで、わたしたちを知ったの?
(ホントに滑稽だね! なんたって、考えれば考えるほど、僕に情報を与えていくワケなんだから!)
制限で弱まったギアスでは読み取れない箇所の記憶まで、勝手に浮上させ、その上分かりやすく整頓までしてくれる!
それはなんのため? そう、自身の身を守るためだ――実際、それは無意味。否、無どころか負。ゼロどころかマイナス。
なのに、彼女はこんなに必死に――これを笑わずにして、いつ笑うというのか!
「マオさん、あまり大きな声で笑わない方が……」
「ん? ああ! これは済まないね。ボクの笑い声を聞いて悪い人が集まったら大変だからね!」
そう言って笑うと、シータは僅かに渋い顔をする。そして、内心に仕舞いこまれた本音が流出する。
<分からない……この人が分からない。あんまり信用できないかも>
懸命な判断だね、と内心で思う。もし自分が彼女の立場だとして、このような男を信用するかと言えば、断じて否だ。
だが、信頼など豚にでも食わしてやればいい。
彼女はあくまで手駒。キングを守るため、敵のキングを落すために疾駆するポーンに過ぎない。
いや、例えるならば、チェスよりも将棋の方がいいかもね。あれは確か、相手の駒をも利用できたはずだ。
「ところでマオさん、なんでこっちに向かうんですか? 人を探すなら、レールウェイという乗り物に乗った方がいいと思うんですけど」
「ああ、それはだね!」
ぱんっ、と。自身の喜悦を象徴する喝采を止めると、くるり、と芝居がかった動作で振り向いた。
「いくら殺し合いを止める、って言ってもボクらじゃ力不足だと思うんだ。君は戦い慣れているわけでもないし、ボクだって腕っ節は平均的なものさ。
おっと、だったらなおさら、中心部に向かって仲間を集めた方がいい、と思ったね?」
びくん、と思考を言い当てられた事に驚いたのか、体を揺らす。
思考が読める事を公言する気はないが、この程度なら「いや、そんな顔をしてたからね!」とでも言えば済む事だ。
267: この手に堕ちた腐りかけの肉塊 ◆oRFbZD5WiQ 2007/10/02(火) 00:28:37 ID:iORhm0k9(2/8)調 AAS
「それが違うのさ! 街は確かに人が多い、けど同時に殺人者もまた多く潜んでる可能性が高いんだよ!
エリア11では急がば回れ、というコトワザがあるらしいじゃないか。まさにそれだね。焦って動いたあげく殺された、なんて笑い話にしかならないからねぇ。
だからね、あまり人がいない場所をぐるっと見て回って、ゆっくり人を集めるのさ。街に行くのは、それからでも遅くはないはずだよ。
それに、あっちに観覧車が見えるだろう? ああいった目立つ建造物には人が集まりやすいと思うんだ。街ほどではないにしろね。
安全に、けど、なるべく多くの人と会うための苦肉の策なわけさ!」
いや、それはタテマエだ。本音を言うと、わざわざ人が集まるところに自分から進んで行きたくないだけだ。
それを誤魔化すために、適当を言っただけなのだが――考えてみればそれも正鵠を射ているかもしれない。
バックの中身を思い出す。
一つは、イレブンが昔愛用していたとされる武具だ。赤というよりは朱く輝く戦国時代の甲冑に、一振りの刀。
そして、オドラデクエンジン。説明には永久機関、と書かれていたが、それもどのくらいアテになるのかは不明だ。
これだけ。これだけだ。この状態で真っ向勝負を仕掛けられたら、果たして切り抜けられるかどうか。
なら、と思い、バックから鎧を取り出す。未だ漆黒に包まれた空の下、それは非常に目立っていた。
「……これは?」
「外側を回る、といっても危険な事は変わりないからね。身を守る物くらいは手渡すさ。
それにほら、見てごらん? これ、小さな子でも装着できるくらいのサイズなんだ!」
君が怪我しちゃいけないからねぇ、と言って手渡すと、シータの思考が若干柔らかくなった。
<……でも、心配はしてくれてるみたい。そこまで疑ってかからなくても――>
馬鹿め、と思う。
それを手渡したのは、あくまで保身。もし戦いの場になれば、武器を持っているという事を理由に、先陣を切らすための布石だ。
(まあ、思った以上の効果があったみたいだけど)
信頼など、豚にでも食わしておけばいい。確かにそう考えた。そして、今もそれは変わっていない。
だって、ここにいるではないか。信頼という餌を喰らい、肥え太る豚が。自分が肉にされる事を知らず、餌を貪る家畜が。
「あの、お礼といってはなんなのですけど……これを」
笑い出したくなる衝動を抑え、彼女の掌に載るそれを見る。
それは扇。中華連邦でもよく見る、一般的な形のそれだ。
だが、触れる感触は冷たい金属のそれ――そう、鉄扇だ。
「あまり強そうな物ではないんですけど、武器がないと不安だと思うから」
「いやいや! 気にしなくてもいいさ、武器として扱った事はないけど、知識としては知ってるものだからね!
これはこれで構わないよ!」
268: 2007/10/02(火) 00:28:39 ID:NDR+bFC6(1/4)調 AAS
269: この手に堕ちた腐りかけの肉塊 ◆oRFbZD5WiQ 2007/10/02(火) 00:29:48 ID:iORhm0k9(3/8)調 AAS
使えない、と内心で毒づく。チェーンソウでも出してくれたら、心から賞賛してあげてもよかったのだが。
(まあ、さすがに高望みかな)
陸と陸とを繋ぐ道路に差し掛かる。
位置はC-1とB-2の丁度境目くらいだ。
◆ ◆ ◆
がしゃん、と甲冑が音を立てる。
纏った赤色のそれは重く、だが、適度に安心感を与えてくれる。
重い、という事は金属であるという事。金属であるという事は、頑丈であるという事。
気休めなのかもしれないが、少女の心をある程度静めるには十分な力を持っていた。
道路を通り抜けると、遠くに見えていたあの車輪も巨大に見えてくる。
マオが観覧車と言ったそれは、どうやら乗り物らしい。けれど、同じ場所をぐるりと回るだけで、前に進めそうな気がしないのだが。
「おっと、観覧車を知らないのかい? 子供の頃、親に連れてってもらったり、親がいなくても遊園地を遠くから眺めたりはしたと思うけどねぇ。
まあ、いいさ。あれは乗り物といっても車や飛行機と同列じゃあないんだよ。山に登って風景を眺めるのを、全部機械で行ったものだと考えればいい」
そうですか、と答え、観覧車という名の車輪を見上げる。
原色を基調としたそれは、見ている者を陽気にさせる効果があるのだろう。
だが、それは本来、家族連れの子供が抱く想いだ。間違っても、殺し合いに無理矢理引き込まれた少女が抱く感想ではない。
事実、シータはあのぐるぐると回る個室を、まるで棺みたいだ、とすら思ったほどだ。
「棺、それも間違いじゃぁないね。こんな状態であそこに乗っている事に気づかれたら、狙い撃ちだ。
それに、螺旋王とかいう男に向かっていった、あの正義のヒーローのような彼。
彼が放ったビームみたいな奴で破壊されたら、そのまま横倒し。戦うまでもなくザクロになれるよ」
その言葉に、思わず身震いをしてしまう。
嫌なイメージから逃れるように視線を背け――
「……え?」
それを見た。
◆ ◆ ◆
270: 2007/10/02(火) 00:29:58 ID:NDR+bFC6(2/4)調 AAS
271: 2007/10/02(火) 00:30:10 ID:yqPO1emG(1)調 AAS
272: この手に堕ちた腐りかけの肉塊 ◆oRFbZD5WiQ 2007/10/02(火) 00:31:06 ID:iORhm0k9(4/8)調 AAS
いきなりだった。
観覧車を知らない事、彼女の言うラピュタ。それらを総合し、全く別の世界から来たのかなこの子は、と馬鹿げた空想をしていた、その瞬間だった。
圧倒的なノイズ。整理される事のない思考の奔流が、マオの脳を一瞬で犯した。
うるさい、うるさい、うるさいッ! 鼓膜が破けてしまいそうだ!
このガキ、さっきまで静かだったくせに、急にこんな――!
「ぐ――ほら、シータ、落ち着きな。一体なにが、……!?」
安心させるように言って、初めて気づいた。
(思考が……読み取れない!?)
慌てて意識を集中。脳細胞全てを、シータという少女の思考の整理に当てる。
だが、氾濫した川の如く流れるそれを、整理するどころか受け止める事すら叶わない。
これが――これが制限か!
普段ならば、多少錯乱していようとも、その思考を完全に理解する自信がある。
だが、今はどうだ? まるで理解できない。せいぜい、『死』『殺人』『血』、そんな断片的なモノを拾えたくらいだ。
<殺――血が、ががが――乗ってるるるるる人――こん――無――ざ、ざざざ――惨>
気が狂いそうだ。今ほどC.Cの声を聞きたいと思った事はないかもしれない。
その、狂わせるような思考を漏らす少女を見やる。
嫌だ嫌だ、と言うように首を振るうその姿。瞬間、怒りが炸裂した。
「――ッ! うるさい!」
嫌なのは、こっちだ!
がんっ! と。兜に包まれた頭部に、鉄扇子を思い切り叩きつける。
ぐらり、とシータの体が揺れ、思考が一瞬途切れる。
<――え? わたし、殴られ……?>
「……ああ、大丈夫かい? すまないね、錯乱していたようだから、ちょっと失礼させてもらったよ」
未だ軋む頭を押さえつつ、なんとか体裁を取り繕う。
「それで、どうしたんだい。そんなに取り乱して」
「その……あそこに」
あそこ? とシータが指差す方に視線を向けると、
「……ああ」
273(1): 2007/10/02(火) 00:31:27 ID:NDR+bFC6(3/4)調 AAS
274: この手に堕ちた腐りかけの肉塊 ◆oRFbZD5WiQ 2007/10/02(火) 00:32:15 ID:iORhm0k9(5/8)調 AAS
あれか、と地面に倒れ伏すそれを見た。
赤。濃厚な赤ワインにも似た赤色だ。
ならば、この少女はワイン樽か。もっとも、胸元に穿たれた穴から流れ出るモノはなく、生命を出し切った後だという事が見て取れた。
そう、それは死体だ。虚空を見上げる、命無き人型。
「なるほど、これを見て取り乱したんだね。……うん、君が取り乱すのもすごくよく分かるよ。
これは酷いよね。――そうだ! ボクがちゃんと埋葬してあげるから、君は観覧車の傍で待っていてくれないかな?」
そう言うと、シータは若干うろたえつつも、こくりと頷いてくれた。
去っていく背中が見えなくなるのを確認する。そして、
「しっ!」
その遺骸を、焼きつくような怒りを以って蹴り飛ばした。
爪先が頭蓋に突き刺さり、陥没。機能停止した脳みそがシェイクされる。
「君がこんな場所で死んでるから、ボクが酷い目にあったじゃないかッ!
死んでからも他人に迷惑をかけるんじゃない! この、愚図め!」
踵が顔面を抉る。頭蓋骨が崩壊し、内部に納められた脳が潰れる。どろり、と隙間からそれらしきモノがこぼれた。
それでも飽き足らぬ、そう言うように鉄扇子を用い、全体重を以って胸を突き刺していく。
そう、何度も何度も。肋骨をパウダーに、臓器をミンチにするまで止めない、そう言うように。
ああ、チェーンソウが、いや、もっと武器らしい武器があればよかったのに。
そうすれば、この肉を解体しコンパクトにした後、そこらのゴミ箱にでも放り込んでやるのに。
皮膚と内部の肉が混ざり合い、屈強な戦士ですら目を背けたくなるような状態になって、ようやくマオは冷静を取り戻した。
「――は、ぁ。まあ、いいさ。もう、二度と会うこともないだろうからね」
また、他人の思考を聞き続けなくてはならないのか、と思うと陰鬱な気分になってくる。
早く、早くC.Cの声が聴きたい。お願いだ、このままじゃあ本当に狂いそうだ。
記憶に残るC.Cの声を思い出しながら、シータが待っているであろう観覧車に足を進める。
それを、こぼれ落ちた眼球で柊つかさは眺めていた。
いつまでも、いつまでも、きっと永遠に見続けている事だろう。
◆ ◆ ◆
275: 2007/10/02(火) 00:33:01 ID:NDR+bFC6(4/4)調 AAS
276: この手に堕ちた腐りかけの肉塊 ◆oRFbZD5WiQ 2007/10/02(火) 00:33:24 ID:iORhm0k9(6/8)調 AAS
帰ってきたマオの息は荒かった。
それも仕方のない事だと思う。人一人を埋めるために、一体どのくらい土を掘ればよいのか。
それを、道具なしでやり遂げたのだ。これで息を乱さぬはずが――
(あれ?)
ふと、その両手を見る。
(土で汚れて、ない?)
「ああ、遅れてごめんね。水道を探してたんだ。さすがに泥まみれじゃいけない、と思ってね」
そうマオは言うが、それにしたって服まで汚れていないのは不自然だ。
不自然――だけれど、取り乱した自分を下げさせる配慮のある人間だ。そこまで悪い事はしていない、と信じたいが――
(……分からない、わたしには分からない)
親切だと思うときもある、怪しいと思うときもある。
自分は、どちらを信じればいいのだろうか――?
【B-2/観覧車の前/1日目/黎明】
【マオ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:疲労 低
[装備]:マオのバイザー@コードギアス 反逆のルルーシュ 鉄扇子@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-
[道具]:支給品一式 オドラデクエンジン@王ドロボウJING
[思考]
1:ヘッドホン(C.C.の声が聞ける自分のもの)を手に入れたい
2:ギアスを利用して手駒を増やす。手駒は有効利用
3:ゲームに乗るか、螺旋王を倒すか、あるいは脱出するか、どれでもいいと思っている
4:どれを選ぶにせよ、ルルーシュに復讐してからゲームを終わらせ、C.C.を手に入れる
[備考]
マオのギアス…周囲の人間の思考を読み取る能力。常に発動していてオフにはできない。
意識を集中すると能力範囲が広がるが、制限により最大で100メートルまでとなっている。
さらに、意識を集中すると頭痛と疲労が起きるため、広範囲での思考読み取りを長時間続けるのは無理。
深層意識の読み取りにも同様の制限がある他、ノイズが混じるために完全には読み取れない。
*また、錯乱などといった思考の暴走には対処しきれない事に気づきました。
*異世界の概念はあまり信じていない様子。
*シータの知りうるラピュタ関連の情報、パズーやドーラの出会いをほぼ完全に知りました。
277(1): この手に堕ちた腐りかけの肉塊 ◆oRFbZD5WiQ 2007/10/02(火) 00:34:32 ID:iORhm0k9(7/8)調 AAS
【シータ@天空の城ラピュタ】
[状態]:迷い
[装備]:日出処の剣士の鎧と剣@王ドロボウJING
[道具]:支給品一式 支給アイテム0〜1個(マオのヘッドホン、武器は入っていない)
[思考]
1:ゲームを止めるという言葉を信じて、マオについていく
2:信頼すべきか否か、迷っている
3:今のところは信頼に傾いている
[備考]
マオの指摘によって、パズーやドーラと再会するのを躊躇しています。
ただし、洗脳されてるわけではありません。強い説得があれば考え直すと思われます。
*マオがつかさを埋葬したものだと、多少疑いつつも信じています。
*マオをラピュタの王族かもしれないと思っています。
【日出処の剣士の鎧と剣】
真っ赤な色で小柄な女性でも装着が可能。相手に顔も見られないし、強度もそこそこ。
【オドラデクエンジン】
永久機関で作られているエンジン。機械に組み込めばすごいことになりそう?
【鉄扇子】
呉先生が愛用する扇子。鉄製なので重くて頑丈
B-2にはボロボロになったつかさの死体が転がっています。場所は変えてはいません。
278(1): ◆oRFbZD5WiQ 2007/10/02(火) 00:35:41 ID:iORhm0k9(8/8)調 AAS
投下終了です。
支援してくださった皆さん、どうもありがとうございました。
279(1): 蘇れ、ラピュタの神よ ◆WcYky2B84U 2007/10/02(火) 01:09:01 ID:NE2pJTu2(1/5)調 AAS
ガリッ、ガッ、ガガッ、ガリガリッ、ガッ――――――――――
夜明けを間近に迎え、薄ぼんやりと日の光が差し込む病院の廊下に、奇妙な音が響く。
ガガガッ、ガガガッ、ガッ、ガッガッ――――――――――――
極めて不規則に、そして極めて不愉快なその音色が奏でられているのは…廊下の片隅にポツンと位置している、物置部屋の扉。
その扉の極僅かの隙間から伸びる銀色の物体から、この気の滅入るメロディは流れていた。
ハァ、ハァ、ハァッ…クソッ…もう少しだというのに―――――
よくよく耳を澄ましてみれば、不協和音の中に、もう一つの音が混じっているのが聞き取れる。
それは、その部屋の中に潜んでいる……正確には、その部屋の中に『閉じ込められている』何者かの声。
ガガガッ、ガガガガッ、ガリッ、ガリッ、ガッ――――――――
クッ…あ…と…少し……あと少しだっ――――――――――――
そして………その時はやって来た。
ガガガガガガガガガガガガガガガガッ――――――――――――パリン。
今まで鳴っていた騒音とは対照的な、爽やかな音が病院内を反響する。
その音が意味するものは、この扉に掛けられていた戒め……すなわち、鍵の破壊。
そして、忌々しい束縛が解かれた今こそ―――そこに封じられていた、『神』を名乗る男が復活する!
「ハァッ!ハァッ!ハァッ………!!で、出れたッ……出れたぞぉッ……やっと、やっと出れたッ……!!」
………倒れるように扉を押し開け、そのままの勢いで地面に這い蹲りながら、汗だくの顔で腑抜けた笑みを浮かべるという情けない姿で。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------
280: 2007/10/02(火) 01:09:16 ID:AdAq8Xz3(1/3)調 AAS
281: 蘇れ、ラピュタの神よ ◆WcYky2B84U 2007/10/02(火) 01:10:06 ID:NE2pJTu2(2/5)調 AAS
この病院前にて、突然現れた東洋風の男………戴宋に敗北したムスカがこの物置部屋に閉じ込められてから、
最早三時間強の時間が経っていた。
「クッ……クソッ……あの男…ッ…わざわざ、鍵をかけるなど姑息な真似を………よくも……」
体力と気力の限界を向かえ、立つ事もままならぬ状態でムスカが毒づく。
ムスカが気絶した『フリ』をしていた事に気づいていたのか、はたまた用心深い性格だったのか…
戴宋がその手で物置部屋の扉に仕掛けた、物置の中に存在したナンバー式のチェーンロックはスペック以上の働きを見せていた。
息苦しい密閉された空間。手の中に有るのは頼りない一本のアサシンナイフのみ。
いつあの男が帰ってくるともわからない状況の中で、扉をこじ開けて出来た隙間からナイフを差込みチェーンの切断を試みる。
焦燥、絶望、恐怖……嫌と言うほどに味わった忌まわしい感情を思い出し、ムスカの表情がさらに歪む。
だが………その表情は徐々に和らぎ、厭らしい笑みへと変わっていく。
もう、自分を縛っていた物は無いのだ……後は、そう……あの男に復讐するのみ!!
『ラピュタの王』すら超え、『ラピュタの神』となった自分を散々コケにしてくれたあの男を許すわけには行かぬ!!
「ククク……ハハハハハ…そうだ……ラピュタの神たる、この私の恐ろしさ…それを奴に身を持って教えてやろうじゃないか…!」
狂ったように笑いながら、体に力を込めてゆっくりと立ち上がる。
恐れる物など何も無い!!あるはずも無い!!私はラピュタの神なのだから!!!
………………………………………………………………………………………………………………………………だが。
パリン。
「……………………………………………………………………………………………………………………………は」
その驕りは、ムスカの右手から発せられた小さな……非常に小さな音によってあっさりと崩される。
「………………………………………………………………………………………………………………………………」
ゆっくりと、右手を開き中を見る。
その中には、棒状の物体が『二つ』。
ムスカを救出するという役目を終えただけのアサシンナイフは、折れていた。完膚なきまでに。
無理も無い事である。三時間強もの間、鎖との摩擦による不可に耐え抜いていたのだ。
しかも、ただでさえ不安定な体勢での摩擦。鎖ではなく扉や壁に衝突したのも、一度や二度では無い。
たった一本のアサシンナイフにしては、むしろ大健闘だったと言えるだろう。
282: 2007/10/02(火) 01:10:23 ID:lDnLJDSl(1)調 AAS
283: 蘇れ、ラピュタの神よ ◆WcYky2B84U 2007/10/02(火) 01:11:15 ID:NE2pJTu2(3/5)調 AAS
しかし、今のムスカにそれだけの事実を受け止めるだけの余裕があるはずも無く。
「…………………ふ……………………ふざ……ふざ……」
まるでおこりの様に、ムスカの体がブルブルと震え始め。
「…………ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
溢れ出す感情のまま、ナイフだった物を地面へと叩き付けた。
そのまま軽い音を立てて、二本の金属ゴミはどこかへと消えていく。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………!!」
ナイフを叩き付けたポーズのまま、ムスカは荒い息をつく。
そして徐々にその息が収まり始めるのと比例して、彼の表情は青く染まり始めた。
無い。
もう…自分には武器が、ない。
ディパックの中にあるのは、ただの葡萄酒の空き瓶のみ。それは武器と呼ぶには余りにも貧弱。
自分は今、丸腰だ……もし、この状態で誰かに襲われたら?
…………死ぬ?ラピュタを継ぐ者である自分が、神と崇められるべき自分が………死ぬ?
「ふっ、ふっ、ふっ……ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
先ほどと同じ言葉を叫びながら、今度は手に持っていたディパックを壁に叩きつける。
だが、どれだけ周りの物体に怒りをぶつけようとも、ムスカの中の恐怖は消えない。
武器だ。何でもいい、武器が必要だ。
血走った目で辺りを見回す。もう二度と入るまいと誓った物置部屋の中すら覗き込み、武器を探す。
だが……何も無い。まともな武器として使えそうな物は、存在しない。
「クソッ、クソッ、クソッ、クソッ、クソォッ!!」
口汚い罵りの言葉を吐きながら、部屋の中に積まれていた道具をそこら中にぶちまける。
最早ムスカの顔に、先ほどまでの高揚感や余裕など見て取る事は出来ない。
あるのはただ、いつ自分の命が狙われるのかと怯え続ける小心者の表情だけ。
「どこだッ!?私の武器はどこにある!?かの雷のような、神たる私に相応しい武器が無いというのか!?
そんな筈は………ッ!?そう、だっ………!!」
ヒステリックな叫びが中断され、ハッとした表情でムスカが呟く。
ムスカの脳裏に、天啓のようにある事実が浮かんだのだ。
「あそこ、あそこだ……!!あそこに、武器が……!!」
熱病にでも浮かされたかのように、ムスカがフラフラと歩き出す。
目指す場所は、病院の入り口。壁に手を着き、半分以上体をもたらせながら引きずるように移動する。
自分の記憶通りならば、あそこに武器が……だが、もしも?
反語と共に、ムスカは最悪のパターンを想像する。
もしも、あの忌々しい東洋風の男が、自分を閉じ込めた大罪を抱えたあの男が、『アレ』に気づいていたら?
息が荒い。心音がうっとおしい。汗が目に入る。
そうなったら、自分はもうどうしようも………?
ああ、嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。何もかもが腹立だしい。もしもこの手に飛行石があれば、ラピュタの雷があれば全てを焼き払って…!
しかし何も無いぞ?今の自分には何も無い。何故だ?何故こんな事に!?ああ、頼む、気づかないでいてくれ……!!
精神と肉体、両方の多大な疲労を抱えながら、『神』を名乗った男は哀れにも『神』に祈る。
そしてようやく男は………病院の入り口に到着した。
284: 2007/10/02(火) 01:11:44 ID:LwA42mVl(1/6)調 AAS
285: 2007/10/02(火) 01:11:56 ID:AdAq8Xz3(2/3)調 AAS
286: 蘇れ、ラピュタの神よ ◆WcYky2B84U 2007/10/02(火) 01:12:23 ID:NE2pJTu2(4/5)調 AAS
「そう、ここだ……!この辺りに………!!」
体当たりするように扉を押し開け、必死の形相で付近に視線を巡らす。
「どこだ……どこにある!?」
駄目だ、見るだけでは見つからない!
最早なりふり構わずに、地面に這い蹲りながら目当ての物を探す、探す、探す、探す………………
「見つけた………!!見つけた、見つけたぞぉお!!!」
四つん這いの状態で、頭だけを植え込みの中に突っ込んだ状態で、ムスカは歓喜の声をあげた。
そのまま、その中から引っ張り出したのは、やや焦げ目の付いたディパック。
このディパックは、彼が最初に殺した少年…エドワード・エルリックに支給されていた物。
先の二連続戦闘の衝撃の為か、植え込みの中へと放り込まれていたそれは、
ここを立ち去った戴宋に気づかれる事も無く今まで隠れていた。
「武器、武器、武器、武器、武器だ!!」
人目も憚らず大声を上げながら、ディパックの中身を漁り支給品を探す。
そして………ついにムスカの手が硬い何かに触れる。
「……………ッ!!」
ごくり。生唾を飲み込んだ音が、妙に大きく聞こえた。
ゆっくりと、中の物を握り締め、取り出す。
「……………………ハッ………ハハハッ……ハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!」
笑う。哂う。嗤う。手の中にある支給品を見て、ムスカは愉しげに笑う。
「素晴らしい………!神たる私に相応しい武器だ………!!」
ムスカの手に握られている物は………二つの銃口を持つ奇妙なキャノン砲。
片手に嵌め込んで撃つタイプのそれは、異世界へと飛ばされたとある科学者が、親友の為に死に物狂いで作りだした武器。
ここでは無い、また別の世界…砂漠に包まれたその世界にのみ存在する特殊な金属で作成されたこのキャノン砲は、
見た目に反して片腕で軽々と扱えるほどに軽く……その威力は、その世界最強の存在を二撃で絶命に至らせる程絶大。
無論、『神』ならぬムスカがそこまで詳しい事情を知るわけも無い。
だが、それでもムスカはこの武器の有用性を感じ取り……ただただ歓喜のままに笑い続けた。
その姿はまるで…ようやく目当ての玩具を見つけて喜んでいる、無知な幼子のようであった。
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287: 2007/10/02(火) 01:12:58 ID:QUDoUruO(1/7)調 AAS
288: 2007/10/02(火) 01:13:06 ID:SIE15ucP(1)調 AAS
289: 2007/10/02(火) 01:13:31 ID:AdAq8Xz3(3/3)調 AAS
290: 蘇れ、ラピュタの神よ ◆WcYky2B84U 2007/10/02(火) 01:13:32 ID:NE2pJTu2(5/5)調 AAS
武器は手に入った。ならばもう、恐れるものは何も無い。
そう考えながら、ふと手元の時計を見る。
「………放送までは、後1時間弱と言った所か……」
何となしにそう呟いた所で、ムスカの体から力が抜ける。
「…流石の私も、いささか疲れたな……」
精神的な疲労。肉体的な疲労。二つの疲労は今も容赦なくムスカの体を襲い続けている。
ようやく武器を入手し、気が抜けた今となっては、それに抗うのは難しい。
ならば、休息を取るか……幸いにも目の前には病院がある。適当な病室を借りて休むとしよう。
「だが、放送を聞き逃すのは避けたい所だな……」
エドのディパックから水と食料のみを自分のディパックに詰め込みながら考える。
放送によって流されるのは死亡者の情報に、禁止エリアの情報…どちらも聞き逃すのは大きなデメリットとなる。
「ふん、一時間ほど疲労に耐える程度、どうと言う事も無い…」
そんな事を喋りながらゆっくりと立ち上がるも、その顔に浮かぶ疲労の色は濃い。
彼が放送の時までその意識を保つ事が出来るのか……『神』ならぬ『神』を名乗る男には、それを知る由も無い。
【D-6/総合病院・入り口付近/1日目/早朝・放送1時間前】
【ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ(ムスカ大佐)@天空の城ラピュタ】
[状態]:精神・肉体共に激しく疲労、背中に打撲、強い眠気
[装備]:ダブルキャノン@サイボーグクロちゃん (残弾30/30)
[道具]:デイバック、支給品一式(食料-[大量のチョコレート][紅茶][エドの食料(詳細不明)])、葡萄酒の空き瓶
[思考]:
基本:すべての生きとし生ける者に、ラピュタ神の力を見せつける。
1.病院内の適当な病室に入り、休息する。ただし放送までは起きていたい。
2.東洋人(戴宗)に復讐する。
3.パズーらに復讐する。
4.出来れば『平賀源内のエレキテル』のような派手な攻撃が出来る武器も欲しい。
最終:最後まで生き残り、ロージェノムに神の怒りを与える。
※ムスカが第一回放送まで眠らずに居られるかどうかは、次の書き手さんにお任せします。
※エドに支給されたランダムアイテムは、ダブルキャノン@サイボーグクロちゃんのみでした。
※病院内の物置部屋(1F隅に存在)は扉が開け放った状態のまま酷く荒らされています。
また、その付近に切れたチェーンと『折れたアサシンナイフ@さよなら絶望先生』が転がっています。
※病院入り口に、水と食料だけが抜かれたエドのディパックが放置されています。
【アイテム補足】
【ダブルキャノン@サイボーグクロちゃん】
異世界サバイバル編にてゴーくんが作り上げた武器。異世界独自の素材で出来ている為、非常に軽い。
四角い形状で、その名の通り二つの銃口が並んで存在している。
ガトリングガンと同じく片手にはめ込むタイプで、引き金を引く毎に上と下のそれぞれの銃口から弾丸が発射される。
その威力は強力無比で、異世界編のラスボス、バイスの体に一撃で風穴を開けるほど。
(ただしこれは原作のみ描写で、アニメ版には放送コードに引っかかった為か穴が開く事は無かった。
それでも原作と同じくバイスへのトドメとして使われている為、威力は同程度だと思われる)
ちなみに残弾表示の30発とは、上の弾倉に15発、下の弾倉に15発の、合計30発という意味。
291: Vanishing One ◆RwRVJyFBpg 2007/10/02(火) 02:05:08 ID:mVzuG3Gn(1/8)調 AAS
空の色が変わっていく。深い黒から藍、そしてやがて青へ。
太陽は地平線に手をかけ、その体を起こし始める。全てのものを、等しく照らし出すために。
あれほど深かった闇は、昇りつつある昼の王によって、少しずつその体を削られていく。
あと数刻もすれば、夜の支配は完全にこの世から姿を消すだろう。
だが、世の中には消えない闇もある。
A-1地区。海沿いに行儀よく立ち並ぶ倉庫のうちの一つ。その中にそれはあった。
ぽっかりと口を開けた鉄扉の奥、闇は隠れるように潜んでいた。
――ガツッ、ゴォン、カラカラ……
黒い空間から音が響く。奥で何かが動いている。
音は粗く、無造作で、暴力的な所業を想起させる。何かを投げ、落とし、打ち壊してから漁る。
倉庫の主が行っているのは、どうやらそんな作業のようだった。
唐突に音が止む。
残響だけがコンクリートの海岸を低く流れて、消えた。
あとには、打ち寄せる波が静かに囁く声が響くのみ。
倉庫の中の闇はしばらく沈黙を保っていたが、間もなく、鉄扉の口から新たな音が漏れ出した。
――コツ、コツ、コツ……
足音とともに、鉄扉から出てきたのは男だった。
まるで、闇が分かれて人の形を成したかのような男――ヴィシャス。
彼は、傷の男スカーとの戦闘で失われた武器の代わりを求め、倉庫の中を探索していたのだった。
「……チッ」
ヴィシャスは自分の右手に握られているをモノを忌々しげに睨み、舌打ちをする。
白っぽい錆が浮いた鉄パイプ。
それは、小一時間探し回って見つけられた最良の武器だった。
「…………ツッッ!」
彼はしばらくの間、人形のようにただ立っていたが、不意に思い立つと
パイプを刀に見立てて居合いの構えを取り、間をおかず抜き打った。
ぶゎんと太い風切り音が鳴る。それが消えないうちに持ち替え、今度は縦の斬撃を刻む。
上から振り下ろす一撃。
もしその剣先に人がいたなら紅い中身を弾けさせるであろうソレは
しかし、コンクリートを穿つことなく返され、逆袈裟の斬り上げへと転化する。
縦、横、斜め、大振り、小振り、踏み込みながら、引きながら、ヴィシャスは舞う。
我流の型に載せて紡がれる剣舞には、洗練された美が内在していた。
その美を支えていたのは、剣に宿るギラついた凶暴さ――いわば殺しの功夫だった。
彼の採る一挙手一投足、その全てが『人を殺す』という目的に対して無駄なく収斂し
見る者にある種の機能美を意識させるほどに練り上げられていたのである。
「オオオッ!!」
右上から左下。気合いとともに大きな半円を刻むように鉛管を振り下ろし、ヴィシャスは動きを止めた。
銀糸のような髪が揺れ、そして戻る。
真冬に着るようなコートを纏っているにもかかわらず、顔には汗の粒ひとつ浮かんでいない。
見事な剣舞。もしここに観客がいたならば、手を叩いて彼の業を賞賛しただろう。
……だが、その表情は演舞とは対照的に、いささか苦々しいものであった。
「……なまくらめ」
彼の不愉快は専ら、手の中の鉛管に向けられていた。
292: 2007/10/02(火) 02:05:42 ID:LwA42mVl(2/6)調 AAS
293: 2007/10/02(火) 02:05:54 ID:QUDoUruO(2/7)調 AAS
294: Vanishing One ◆RwRVJyFBpg 2007/10/02(火) 02:06:11 ID:mVzuG3Gn(2/8)調 AAS
――必要なのは新しい武器だ。
無数に立ち並ぶ倉庫の間を歩きながら、ヴィシャスは考えていた。
これから自分は、80人以上の人間と生死を賭けた戦争をすることになる。
しかも、相手はただの人間ばかりではない。
あの広間で尋常でない力を見せ付けた螺旋王や、不思議な技を使う傷の男……そしてスパイク。
他にも一筋縄ではいかない連中がわんさかいるだろう。
そんな戦いを乗り切っていくには……この鉄パイプではあまりに力不足だ。
重さも、クセも、有効的な使い方も、得意とする刀剣とはあまりに違いすぎる慣れない武器。
そんなものに自らの命を預けるわけにはいかない。
刀剣を……せめて銃火器を手に入れなければ。
「武器……やはり奪うしかないな」
歩を進めながら、ひとりごちる。
そう、このゲーム内で武器を手に入れる最も手っ取り早い方法は他人のものを奪うことだ。
ヴィシャスが長刀を支給されていたように
この殺し合いに参加している人間には何らかの武器が配られているようだ。
それならば、適当な参加者を殺し、デイパックを奪えば、それなりのモノは手に入るはず。
彼はそう考えていた。
だが、この作戦には一つ大きな問題がある。
武器というのは戦うために存在する道具である。
それを奪うために戦いを挑めば、当然、その牙の前に身を晒すことになる。
下手をうてば、自分が狙っていた武器にみすみす命を捧げることにもなりかねない。
そして、そのリスクは、欲する武器が良いものであればあるほど跳ね上がる。
「ダンスの相手は選べということか」
戦う状況は慎重に選ぶ必要がある。相手の腕前、持っている武器、襲撃のタイミング。
どれか一つでも読み間違えれば、武器を奪うどころか、逆に命を盗られてしまう。
場合によっては、敢えて獲物を見逃したり、敵に背中を見せたりすることも考えねばならないだろう。
狡猾に、したたかに、何より確実にやらねばならない。
自らのやるべきを定めると、ヴィシャスは倉庫の一つに身を潜ませた。
通路からは死角になるような位置に入ったことを確認すると
静かにデイパックを降ろし、地図を取り出す。
武器を奪うためには、まず、人を探さなくてはならない。
先ほどの海岸から見えたドームと観覧車の位置から類推するに、今、自分がいるのはおそらくA-1地区のほぼ西端。
こんな端のエリアにいては、他の参加者との遭遇は望めまい。
できれば、適度に人の集まるところまで移動したいところだが、果たしてどこへ動くのが妥当な選択か……
地図の全体を油断なく見つめ、彼は思案する。
そのときだった。
突然、どこからともなく強い風が吹き込んできた。
突風はヴィシャスと地図を等しく舐め、彼の銀髪と地図の端とを大きくめくり、はためかせる。
意外な邪魔者を疎ましく感じ、彼は風の出所を半ば無意識に睨みつけた。
見ると、倉庫の窓が開いている。風はここから吹き込んできたようだった。
窓の外には、一面の造成地、砂と石ころの空き地が広がっていた。
おそらく、埋め立てられて以来、そのまま放置されているのだろう。
人工的に均された荒野は、薄明けの光に照らされて、徐々にその寂しい表層を晒そうとしている。
そして――
(ゥン?)
その朝焼けの大地に、こちらに背を向けた一人の少女が直立していた。
295: 2007/10/02(火) 02:07:46 ID:QUDoUruO(3/7)調 AAS
296: Vanishing One ◆RwRVJyFBpg 2007/10/02(火) 02:08:02 ID:mVzuG3Gn(3/8)調 AAS
木津千里はイラついていた。
倉庫街の西の端にして造成地の東の端、コンクリートと土の分かれ目。
きっちりと分かれたそこに、彼女はきっちりと背を伸ばし、シャンと立っていた。
四角四面に整備された土地は彼女の嗜好に沿うものであったが、それでも彼女はイラついていた。
その怒りは貧乏ゆすりに転化され、毎分きっちり60回のペースで大地に刻まれている。
何故、A-1からA-8まできっちり踏破するはずだった彼女が、こんなところでイラついているのか?
それにはもちろん理由があった。
事の発端は、地図だった。
A-1からA-8を効率よく移動するためのルートを確認するため
支給された地図を見ていた彼女は、あることに気がついてしまったのだ。
(この地図の外ってどうなってるんだろ?)
ある意味あたりまえのことではあるが、この地図には、地図の外に関する情報が一切書かれていない。
ただ、正方形で区切られた一地域が、さらに64個のエリアに区切られているだけだ。
しかし、描かれてる地形を見る限り、この地域の外には全く陸がないというのも考えにくい。
だとすれば、ここに描かれていない部分の土地は一体どうなっているのか。
自分たちは殺し合い、最後の一人を決めるように言い渡された。
必然的にそれが行われるための地域は限定されているはずだ。そうでなければ困る。
地図の範囲を超えて散らばった参加者を、手がかりなしに殺していくなどまず不可能だ。
だから、千里はこの地図の内だけが、殺し合いが行われ得る範囲なのだと勝手に思っていた。
だが、よく考えてみれば、その事実は何によって担保されているのか?
(そういえば、禁止区域に入ったら、首輪がどうとか言ってたわね)
螺旋王の言葉を思い出す。
なるほど。もし、地図の外に出たら、首輪が爆発し参加者の拡散を防ぐ、ということか。よく考えられている。
千里は自らの出した結論に納得したが、それは同時に新たな疑問をも発生させた。
(だけど、地図の外ってどこからなのかしら?)
デイパックには、縮尺の大きい、大雑把な地図しか同梱されていなかった。
つまり、参加者はそれに頼る限り、禁止区域の境目をおおまかにしか知ることができない。
だが、禁止区域の境界というのは、参加者の生死を分ける大事な一線だ。
その位置をおおよそでしか知ることができないというのはあんまりではないだろうか。
千里は考えた。
おそらく、名簿をわざわざ名前順に並べるほどきっちりした螺旋王のことだから
地図の内と外との境目には、さぞ、きっちりとした境界線が引かれているに違いない。
多分、ただ線が引いてあるなんて生ぬるいものではないだろう。
聳え立つ壁が境界線沿いに隙間なく並んでいたり
監視員のおじさんたちがアサルトライフルを構えて警告していたりするに違いないのだ。
そう思うと、千里の心は否応なしに躍った。
ここに来て以来、彼女は、はっきりしないアレコレに次々と晒されたため、ストレスが溜っていた。
この辺りで螺旋王の見事なきっちりぶりを目に刻み、癒されたいと思うのは
度を越えて几帳面な彼女の人格を考えれば、当然の道理であろう。
一度、きっちりへの疼きに憑かれると、彼女の行動は早かった。
とっさにきびすを返し、A-1の端へと歩き始めたのである。
時は現在へと戻る。
結論から言ってしまえば、千里の期待は、完膚なきまでに裏切られた。
そこには線はおろか、天を衝く壁もなければ、銃を持った監視員もいなかった。
ただ、視界いっぱいに広がる造成地が横たわっていただけだ。
造成地の向こう側には様々なものが見えている。
木に覆われた岬、工業地帯、ビル街らしき四角柱の固まり……
そこへ行こうとする者を妨げるための何かは影も形も見えなかった。
だから、木津千里はイラついていた。
「区切るならキッチリ区切りなさいよ!あーイライラする」
297: 2007/10/02(火) 02:09:17 ID:LwA42mVl(3/6)調 AAS
298: 2007/10/02(火) 02:10:34 ID:QUDoUruO(4/7)調 AAS
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