[過去ログ] 嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 43も古参も (1001レス)
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449: ◆YH6IINt2zM 2007/11/27(火) 21:32:45 ID:9PqS4/kv(1/5)調 AAS
すみません、ちょっと投下しまよ……。
450: 明暗六角形 その1 ◆YH6IINt2zM 2007/11/27(火) 21:33:55 ID:9PqS4/kv(2/5)調 AAS
from:兄
Sub :なし
−−−−−−−
今日帰りに神社
寄ってくけど、
お前も行くか?

そう表示されたメールを見て、受け取り主である弟、御影(みかげ)は、本文に
『行く』とだけ付け加え、返信した。
「(今日もか……)」
携帯電話を閉じ、制服のポケットにしまい込んだ。机に両肘を突き、ぼんやりと外を
眺め始める。

御影の兄、陽樹(ようき)は、大学受験を控えている。

志望する大学に合格することを目指し、日夜勉強に励んでいるのである。
その志望校というのは、本来陽樹の学力ではあまりに不相応だと言わざるを得ない、
屈指のレベルを誇る大学であった。
何故陽樹がそんな大学を目指しているのか。
理由は、一人の女生徒に関わっている。

倉林瑛子――――陽樹の恋人であり、彼女もまた先の「屈指のレベルの大学」の受験
を予定している。
こちらは陽樹と異なり、抜群の成績を取っている。合格の見込みもほぼ間違いないと
周りから言われている才女であった。
そんな瑛子の恋人として、同じ大学へ進学したいという気持ちを抱き、陽樹は、普段は
しないようなことでも、目標達成のための努力として、出し惜しみせず行っている。
神社へ寄り、参拝するのもその一つである。
元々、陽樹は神仏に祈る習慣などなかった。しかし現在、陽樹はワラをも掴み取る思い
で、たびたび神社に足を運び、手を合わせている。
弟の御影から見て、全く兄らしくない行為だと思いつつも、合格のためなら何でも
やってやるという気概は実に兄らしいと、妙に納得していた。
兄のメールを返してからほんの一分程度で、御影の携帯が震えた。
兄からの返信は、『じゃ、放課後神社前でな』という文章のメール。
御影は脳内スケジュール表に神社への寄り道を書き込んでから、机に伏せた。
午後の授業が始まるまでこうしていようと。
451: 明暗六角形 その1 ◆YH6IINt2zM 2007/11/27(火) 21:34:26 ID:9PqS4/kv(3/5)調 AAS
五限を迎える直前の御影に、ごく些細な出来事が起きた。

「あれ? 忘れたかなあ」
御影の隣の席で鞄の中を念入りに探る少女、羽鳥雛(はとりひな)。
どれだけ探しても、次の授業に必要な、英語の教科書がない。
「あちゃ〜」
雛は頭を左右に振った。左右に二つ束ねられた柳のような髪もつられて揺れる。
英語の授業では、前回の復習と称して、二、三人の生徒に一人ずつちょっとした問題が
出る。
きちんと答えられるかどうか即ち、復習しているかどうかが成績に影響するのは
言うまでもない。
大体は、前回進めた教科書の範囲を、授業の直前にざっと見直しておけば答えられる。
本日その復習には雛も当てられることになっているので、開始前に確認しておこうと
思ったらその教科書がない、というちょっとしたピンチを迎えていた。
雛の落胆の声は御影の耳にも入った。伏せた上体を起こし、隣の席で頭を振っている雛
を見て、御影は状況を認識した。
自分の教科書を手に取り、雛の眼前に突き出し、
「まあ、使えよ」
と言を添えた。

「およ?」
雛はきょとんとした顔つきをしたが、すぐに目を希望に輝かせた。
「おおおおぉっそれは!!」
声を上げたと同時に教科書を取り、即座に開く。
大袈裟なリアクションだと、御影は苦笑した。
「いや〜助かるよ。終わったら返すね」
繰り返し頭を下げる雛に向かって、御影はいやいや、と手を振った。
教科書の貸し借りなど、クラス内では珍しいことではない。雛のように、英語の
復習問題担当なのに教科書を忘れた、というのもよくある話であった。
特に友達ではない雛に貸したのは御影にとっては初めてだったが、そのことになんら
気まずさも感じていない。
実際は、寝て起きたばかりで相手がどうとか考える前に、手と口が動いただけなのだが。
「はいさんきゅー」
無事に復習問題をこなした雛は、笑みを浮かべて教科書を御影に返した。
口元が、だらしないくらいに緩んでいた。
452: 明暗六角形 その1 ◆YH6IINt2zM 2007/11/27(火) 21:35:12 ID:9PqS4/kv(4/5)調 AAS
「んっ……あ〜っ。終わりか」
三年生のクラスの教室内、その最前列の席で伸びをするのは遠山陽樹(とおやまようき)
今日最後の授業が終了してからおよそ三十分間、まとめとして、復習を兼ねたノートの
一部書き直しの作業などをしていた。
「お疲れ様」
陽樹の側に寄った倉林瑛子が、肩を軽く叩いた。
瑛子は自分のクラスの授業が終わった後、陽樹のクラスの教室前で待ったいたのだった。
「ああ、お疲れい」
「図書館に寄ってく?」
「いや、今日は神社行くわ」
陽樹は帰り支度をしながら返した。陽樹の放課後は、瑛子と一緒に図書館で勉強するか、
今日のように神社に行くかのどちらかであった。
「熱心ね」
瑛子は笑って見せるものの、内心は穏やかではなかった。
合理的に考えれば、神社に行ってお祈りなどしてる暇があったら、その分勉強したほうが
より合格に近づけるに決まっている。
ましてや陽樹は神仏を信仰する性格ではなかったはずなのに、今では合格のためと
必死に祈っている。
陽樹は、合格するまで休日のデートもプライベートの電話も禁止すると自戒していた。
図書館などで一緒に勉強することは多いが、それはあくまでただの勉強であり、二人の
仲を深めるものになっていない。
たまには息抜きにでもと色々持ちかけても、陽樹は合格するまで我慢すると言って
聞かない。

瑛子は、ここまでガチガチで息つく時も安らぐ間もなくては、どこかで軋轢が生じて
しまうのではないかと恐れていた。
軋轢とは――そう、急に神社などに行くようになったこと。
瑛子は過去に一度、陽樹と共に神社を訪れたことがあった。
訪れたはいいものの、敷地内にある樹齢数百年とか言われる神木にも、霊験あらたか
らしい祠にも、ほとんど興味が湧かなかった。
ただ年老いてくたびれた木と、古くて汚れた百葉箱くらいにしか思えなかった。

しかし一つだけ、瑛子にとって悪い意味で印象的な存在がいた。
陽樹と瑛子を出迎えた巫女。
その人物は、慎ましく、儚げで、大和撫子を絵に描いたような女性。そして陽樹に
とっては、勉強以外のところで接している女性。
最近神社によく足を運ぶのは、もしや……。
……という所まで考えて、そんなわけがない、と振り払う。でもやっぱり……。
思考が何巡もしていく。
「(私が先に音を上げてどうするのよ……)」
瑛子はずれてもいない眼鏡を掛け直した。

「それじゃあ、一人で行くわね」
「ああ」
「神社の後もちゃんと勉強するのよ」
「わかってるって」
陽樹を残して教室を出た瑛子は、足早に下り階段へと向かった。
遅れて教室を出ようとした時、陽樹の携帯が鳴る。
開いて見ると、弟からメールが来ていた。
『遅い。寒い。まだか』
苛立ちの程が窺える催促であった。
「(やっべ早く行かないと)」
陽樹もまた、勢いよく校門を飛び出し、神社まで駆けて行った。

(その2に続く)
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(3): 明暗六角形 その1 ◆YH6IINt2zM 2007/11/27(火) 21:36:15 ID:9PqS4/kv(5/5)調 AAS
お久しぶりです。またこのスレのお世話になります。
どうかよろしく。
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