[過去ログ] アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ7 (321レス)
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(4): 2007/10/30(火) 21:23:18 ID:Jf2qPFVj(1/7)調 AAS
このスレはアニメキャラ・バトルロワイアル2ndの作品投下スレです。
基本的に、SSの投下のみをここで行ってください。

前スレ
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ5(実質6)
2chスレ:anichara
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ4
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アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ3
2chスレ:anichara
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ2
2chスレ:anichara
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ1
2chスレ:anichara
避難所
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd part0-1
2chスレ:anichara

投下作品についての感想、雑談、議論その他モロモロは以下のしたらばにて行ってください。

アニメキャラ・バトルロワイアル・セカンド 専用掲示板(したらば)
したらば板:otaku_9783
感想雑談スレ(上記したらば内)
したらばスレ:otaku_9783
予約専用スレ(同上)
したらばスレ:otaku_9783

アニロワ2ndまとめwiki
外部リンク[html]:www40.atwiki.jp
ツチダマ掲示板 (ID表示の議論スレ有り)
したらば板:otaku_6346
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd毒吐きスレ・別館2 (ID非表示の毒吐きスレ)
したらばスレ:otaku_8882

テンプレは>>2-8辺りに

※ 現在、この「アニキャラ総合」板において大量の「アニメキャラバトルロワイアル」の名を冠したスレッドが存在していますが、
  これら全ては一人もしくは複数の乱立荒らしが立てた物であり、当企画とは全く何の関係も無い事をここに明記しておきます。
195: 出会いと別れ  ◆5VEHREaaO2 2007/11/05(月) 21:13:25 ID:6knpSgqL(2/11)調 AAS
F-5の街中を北上する四人組の一行があった。
スバル・ナカジマ、アルフォンス・エルリック、泉こなた、マース・ヒューズの四人である。
近接戦闘を得意とするスバル、頑強な肉体を持つアル、戦闘のできないこなた、特殊な力など持たないが抜け目のない軍人であるヒューズ
という四人であったので、自然とこの並びで進むこととなった。
その四人の表情は険しく、放送前の明るさなど微塵も存在していなかった。
一行が暗い理由は至極簡単、死者の名を告げる放送で全員の知人達が呼ばれてしまったからだ。
軍属であり人の死にある程度慣れているマース・ヒューズに対する影響は少なかったが、
他の三人とっては放送で告げられた名に対する影響はヒューズと反比例するかのように大きかった。
こなたが『放送で呼ばれた名は必ずしも死者であるとは限らない』と告げなければ折れてしまうかもしれないと思えるほどに。
故に三人は仲間達の生存を希望と信じ、とりあえずは人の集まりそうな病院の方へと進むことにしたのだ。
希望に対する疑心は大きく重い足取りではあったが、四人は着実に一歩一歩進んでいた。

「あれ?」

そんな時だった。先頭を歩くスバルが何かを見つけ、立ち止まったのは。
スバルが立ち止まるのに一テンポ遅れ、他の三人も立ち止まる。

「どうしたスバル?」

突然動きを止めたスバルにヒューズが疑問の声をあげる。

「いえね、あっちの方に人影が見えたような気がするんです」

スバルは路地裏の一角に一指し指を向け、ヒューズの疑問に答える。
ヒューズを含め三人はスバルの視線の先を見つめるが、何か気になるようなものを見つけられなかった。

「誰もいないよ」

こなたは目頭に手を当てながらスバルに言う。

「うん、気になるようなものはないよね」
「ああ、そうだな」

後の男二人もこなたに同意した。
だがそう言われても、スバル自身が納得できなかった。彼女は目の良さに自信があるのだ

「ヒューズさん、ちょっと見てきたいと思います。」

スバルはヒューズにそう言った。一度気になった以上は調べないと気がすまない。
ヒューズははやるスバルを前にし、少し悩みつつ口を開く。

「そうだな、もし敵だったら事だ」

慎重に行って損は無いとヒューズは判断する。
196: 2007/11/05(月) 21:14:24 ID:J99GgCxn(2/8)調 AAS

197: 出会いと別れ  ◆5VEHREaaO2 2007/11/05(月) 21:15:01 ID:6knpSgqL(3/11)調 AAS
呼吸の読めない者同士の集団行動は奇襲攻撃のいい的でしかない。
ならば、その可能性を一つずつ消していくべきだ。

「アル、俺はスバルのバックに付くが、罠かもしれねえからこなたを守れよ」

とはいえ、ヒューズはスバルが何かに気付いたこと自体が罠である可能性も忘れない。
心構えがあるのとないのとでは差がある。
イシュバール戦に参加していないとはいえ、軍人であるヒューズはそれを心得ていた。

「はい、分かりました。」

アルは力強く返事をする。もう失う恐怖など味わってたまるものかとばかりに。

「いい返事だ。いくぞスバル」
「はい」

ヒューズはスバルを先に促し、その後に続く。
そして、スバルがヒューズを案内した場所は数十mほど離れた所にある建物と建物の間であった。
ヒューズは離れたところにいるアル達の方へと視線を移す。
こなたが軽く手を振っている様子が見えた。

「リボルバーナックル、セットアップ!」

突如スバルが叫んだ。ヒューズはスバルの方へと視線を向ける。
そこには茶色い制服から、白をメインにした軽装となったスバルがいた。
一瞬の出来事で何時の間に着替えたのかヒューズは察知できなかったが、
錬金術を見慣れていたためこれは魔法の力なのだろう、と納得しておく。

「いきますよ、ヒューズさん」

スバルが先行し、ヒューズが路地裏の中に続く。
路地裏の中は薄暗くはあったが大人二人ぐらいなら肩を並んで歩いても、ある程度の余裕はあるほどであった。
また、薄暗いといっても日が昇った現在では、不気味さを演出する程度の薄暗さだ。
この場で奇襲をするのにベストとはいえない。
だが二人は、奇襲をするのにベストとはいえないことを認識しつつも慎重に進む。
どこで何が起きるか分からないからだ。
路地裏の中を二人は数十歩進み、スバルが見かけたと思われる存在を発見した。
198: 2007/11/05(月) 21:15:50 ID:J99GgCxn(3/8)調 AAS

199: 2007/11/05(月) 21:16:34 ID:zx/n+gA2(1)調 AAS
 
200: 出会いと別れ  ◆5VEHREaaO2 2007/11/05(月) 21:17:26 ID:6knpSgqL(4/11)調 AAS
マース・ヒューズの友人である、ぼろぼろとなったロイ・マスタングの姿であった。

「ロイ!?」

ヒューズは変わり果てた親友の姿を見て思わず叫び、思わずスバルを押しのけ彼に駆け寄った。

「おい! しっかりしろ、ロイ!!」

ヒューズはロイの体を抱き上げ、揺さぶる。
だが何の返事も返さない。ヒューズは慌てながら心臓に耳を当てた。
とくん、とくん、という心臓の鼓動をヒューズの耳は確かに聴いた。
さらに、ロイの口元に手を当て呼吸があることを確認し、生きていることを確信する。

「大丈夫なんですか。その人」
「ああ、怪我はしているが気を失っているらしい」

ロイの顔を覗きこむスバルにヒューズはそう返す。
ロイの体はぼろぼろではあったが、辺りに血の跡が見受けられずヒューズは命に関わる負傷はしていないと判断した。

「ほうほうの体で逃げ出した……後って感じか?」
「いったいこの人に何が……」
「決まっている。殺し合いに乗った連中に喧嘩を売って返り討ちにあったのさ」

スバルの疑問にヒューズは即答した。
マース・ヒューズの知るロイ・マスタングは殺し合いに乗るような人物ではなかった。
イシュバール戦で、救えずに自分の手で葬った命を錬成しようとするほどのオオバカ者であり。
争いをなくすために大総統の地位を狙うような愚か者であった。
きっと、なにかの諸悪の根源が大総統であったとしても一人で決着をつけようとするだろう。
エドワード・エルリックとの決闘の際も昔のことを思い出し詰めが甘くなってしまうほどだ。
そんな彼をヒューズは殺し合いに乗る人間とは思えなかった。

「そうなんですか」

スバルはヒューズを信頼するが故に、疑わずに彼の言葉を受け止める。
201: 2007/11/05(月) 21:18:22 ID:J99GgCxn(4/8)調 AAS

202: 出会いと別れ  ◆5VEHREaaO2 2007/11/05(月) 21:18:42 ID:6knpSgqL(5/11)調 AAS
「ちょっと見ててくれスバル。俺は二人を呼んでくる」
「はい、分かりました」

自分のようなおじさんよりも、スバルのような少女に看てもらった方がいいだろうと思い、
ヒューズはスバルにロイのことを任せ、アルとこなたを呼びに行くことにした。
路地裏から這い出し、視線を彷徨わす。物陰に隠れながらこちらの様子を二人の姿が見えた。
ヒューズが手招きすると、二人は物陰から身をだし彼の元へと駆け寄る。

「ロイの奴がいた」
「マスタング大佐が!?」

ヒューズはことのあらましを二人に伝える。
路地裏の中を探索しボロボロになりつつも生存しているロイ・マスタングを見つけたというだけではあったが、
伝えておいたほうが物事がスムーズにいくだろうという判断をヒューズは下していた。

「二人とも付いて来てくれ」

ヒューズはそう言うと路地裏の中へと入っていき、アルとこなたも後へと続く。
そして、三人は見る。地面に頭を付けないように、バリアジァケットを解除したスバルに膝枕をされるロイ・マスタングの姿を。

「……いいご身分なことで」

ポツリとヒューズは誰にも聞き取れない程度の音量で呟いた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
203: 出会いと別れ  ◆5VEHREaaO2 2007/11/05(月) 21:20:01 ID:6knpSgqL(6/11)調 AAS
四人は近くの民家へとロイを運びこみ、ソファーの上に寝かせ毛布を被せた。
運ぶまでに罠などはなく、落ちついたのでロイの治療をすることなった。

「治療魔法とかは使えないの、スバルちゃん?」
「ごめん、そういう魔法も道具もないんだ」

こなたの質問にスバルは語気を弱めながら答える。
スバル・ナカジマはフォワードで戦う陸戦魔導師であり、自己修復機能を有する戦闘機人である。
故に彼女自身は治療魔法を習得する必要性はなかった。
そして、残された支給品は魔鏡の欠片であった。これではロイ・マスタングの傷を癒すことはできない。

「なら病院だな。とりあえずは、この家で出来る限りの手当てをしてから向かうのがいいだろう」

そうヒューズが結論をだす。その時、屋外から風に乗った女性の声が聞えてきた。

『あーあー、あーあー……ちゃんと電源入っとるんかなぁ、コレ?
 ……ええかな?
 えーと、いきなりこんな声が聞こえて来て、ビックリしている人もいると思います。
 私は――ううん、私だけやない、同じような考えを持っとる人の言葉、全部を代弁して言わせて貰います』

その声の主はスバル・ナカジマの所属する機動六課課長八神はやてであった。
三人の前で、スバルがまるで彫像のように固まる。
八神はやての宣言が終わるまで、全員が沈黙した。

『それと……そや、制服! 茶色い布地で胸の部分に黄色のプレートが付いてる制服を着ている人間を探してください。
 その人達は皆、私の仲間――五人……今は四人に減ってしもうたけど……四人とも、本当に信用出来る仲間です。
 名前は……すいません。今は……言えません。
 だけど、私はコレから北に向かうつもりです。
 例の制服を見かけたら声を掛けて下さい。多分、後は声で分かって貰えると思います。
 最後に……皆、絶対に諦めたりしたらあかんで!!』

それを最後にはやての声は聞えなくなった。
いつまで経っても聞えなかった。
204: 2007/11/05(月) 21:20:09 ID:IozKLmbn(1)調 AAS
 
205: 2007/11/05(月) 21:20:17 ID:J99GgCxn(5/8)調 AAS

206: 出会いと別れ  ◆5VEHREaaO2 2007/11/05(月) 21:21:31 ID:6knpSgqL(7/11)調 AAS
「ねえスバルちゃん」

こなたがスバルに声をかける。
スピーカーから流れる女性の声は、スバルの名を挙げたわけではない。
だが、発言の内容とスバルの表情からおのずと声の主とスバルの関係は把握できる。

「……気にしないでこなた。北に行くのならそのうち会えるよ」

八神はやての声が聞えてきたのは南の方角としか分からない。
それでは合流できるかも分からない。いますぐ行けば合流は可能かもしれないが、それでも南のエリアを探し回らないといけないだろう。
だがそのためとはいえ、負傷したロイ・マスタングを南に連れていくのはまずい。
出血していないだけにロイ・マスタングの受けたダメージが怖い。
外傷ならば手当ては可能だが、体の内側の負傷であった場合は病院の機器が必要となるだろう。
もしロイが内臓を痛めていた場合は、出来うる限り早く病院に連れて行かねばいけない。
南のエリアを探索している暇などないのだ。
それを考えれば、スバルとしてははやてを探しに行こうとは口が裂けても言えなかった。

「探しにいけばいい」

だが、スバルの心情を察したヒューズは彼女と反対の答えを出す。

「えっ? でも」
「今見つけないと、次のチャンスがなくなるかもしれねえぞ」

ヒューズはスバルの言葉を遮り、自分の意見を告げる。
彼とて馬鹿ではない。スバルの考えた問題などすぐに頭の中に浮かんだ。
が、打算抜きでメリットデメリットを押し込め、スバルに仲間を見つけさせようと考えた。
スバルがいなければ、ロイを見つけられなかったかもしれないという思いもあったが、
それ以上に彼はスバル・ナカジマのことを気に入っていた。

「ロイの馬鹿がこんなんじゃなけりゃあ、俺かアルが付いて行くんだがな」

そして、一旦言葉を切り、険しい顔つき顔になり言葉を続ける。
207: 2007/11/05(月) 21:22:31 ID:J99GgCxn(6/8)調 AAS

208: 出会いと別れ  ◆5VEHREaaO2 2007/11/05(月) 21:23:02 ID:6knpSgqL(8/11)調 AAS
「一人で行けるな?」

ヒューズは真剣な表情でスバルの瞳を覗き込みながら、最後の決心を促す。
スバルにやらなければならないことがあるように、自分達にもやらなければいけないことがある。
故に瞳だけで決別と再会の意思を伝える。

自分たちはロイとこなたを守らなければいけない。
お前の仲間を探す手伝いはできない。
だけど一人で頑張れるな? と。

スバルはヒューズの言葉に少し、ほんの少しの間だけ悩み、力強く答えをだす。

「はい」

その返事を聞き、ヒューズは破顔する。

「そうか。なら気をつけていけよ」

そして、スバルの肩をポンと叩く。
が、今だ僅かに躊躇するスバルはロイ以外の全員の顔を見回す。

「マスタング大佐と合流できたんだ。次はあなたの番だよ」
「私達のことは気にしないで」

こなたとアルは、それぞれスバルに激励の言葉を掛ける。スバルが仲間と合流できることを信じながら。
そして、スバルの腹は完全に決まった。

「……ありがとう」

スバルは決意する。一刻も早くはやてを見つけ出し四人と合流することを。
四人が危機に遭う前に、帰って来ることを。

「とりあえず、俺達はこいつを手当てしてから病院に向かう。そこで落ち合おう。
 もし、禁止エリアが敷かれちまったら、E-6,D-7,C-6の順に合流場所を変更だ」
「はい! 行ってきます」

ヒューズの言葉にスバルは強く返事を返し、部屋の戸を潜り、外界へと走り出した。
目指すは八神はやてのいるはずの南。一秒でも早く彼女を見つけ出し四人と合流する。
その目的を胸にしてスバルは駆ける。疾風の如く駆け抜ける。

だが、このときスバルを始め、四人はあるはずの物に気付かなかった。
ぼろぼろの体となったロイが辿った軌跡がなければいけないことを。
そう、負傷していたことを知るよしがなかったとはいえ、ぼろぼろとなったロイの体からは血は全く流れ出ていなかったということに。

ロイ・マスタングの体を蝕むデビルガンダム細胞が侵攻していることなど、四人は気付けなかった。
209: 出会いと別れ  ◆5VEHREaaO2 2007/11/05(月) 21:24:18 ID:6knpSgqL(9/11)調 AAS
【F-5/一日目/午前】

【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:健康
[装備]:リボルバー・ナックル(左手)(カートリッジ:6/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
道具]:デイバック、支給品一式(食料-[大量のじゃがいも、2/3][水])、ジャガイモカレー(特大)、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!!、予備カートリッジ(×12発)
[思考]
基本:仲間を集めて事態の解決を目指す
1.はやてを見つけ、ヒューズ達の所へと戻る。
2.ヒューズに従って行動する
3.六課のみんなと合流する
4.キャロもみんなもまだ生きて居ると信じよう
[備考]:病院で合流。禁止エリアの具合によって、病院,E-6,D-7,C-6の順に合流場所を変更。
210: 2007/11/05(月) 21:24:26 ID:GhPH+b0X(1/2)調 AAS

211: 2007/11/05(月) 21:24:40 ID:J99GgCxn(7/8)調 AAS

212: 出会いと別れ  ◆5VEHREaaO2 2007/11/05(月) 21:25:37 ID:6knpSgqL(10/11)調 AAS
スバルが民家から去った後、三人はロイの体を手当てするためにそれぞれ動きだそうとしていた。

「さて、と。俺は救急箱でも見つけるかね」
「じゃあ、私も手伝います」
「それじゃあ、僕が大佐を見ておきますね」

とそれぞれのやるべきことを決め、三人は腰を上げた。
そして、こなたとヒューズが別の部屋に探索しに行こうとしたとき、
二人の背中にソファーの上で眠るロイの側に寄っていたアルの声が掛けられる。

「二人とも、ちょっと待って」

アルの制止の声に二人は部屋の外から中へと視線を振り向かせる。

「大佐の腕が変なんだ」

そう言って、アルは二人に見えるようにロイの腕を挙げた。
その右腕は異常としか形容されない状態となっていた。
何時の間にか、銀色の鱗が手の甲から爪先を覆っていたのだ。
アルが袖を捲くるとその鱗はぎっしりと右腕を覆っているのが見えた。
見えない範囲の服の下は本当にどうなっているのか分からないほどに。

「……うっ」

その最中だった。唸り声を上げ、寝転んだままのロイが身じろぎをしたのは。
そして、ゆっくりと眉を挙げる。
意識が戻ったと考えたアルはロイの右腕を下ろし、彼の顔を覗きこみながら名を呼ぶ。

「マスタング大佐、僕のことが分かりますか?」

アルがそう言った刹那、彼の体である鎧の首筋から鈍い音共に銀色の蛇が生えた。
いや、それは蛇ではなかった。先ほど全員が眺めていたロイの右腕であった。
それがアルの首筋を貫いていた。
避けることは出来なかった。まさか知り合いに、仲間と思っている人物に襲われるとはアルは夢にも思えない。

「…………アル君?」

こなたは無意識にアルの名を呟いた。
だが、彼が返事をすることはなかった。ロイ・マスタングの貫手により、魂と鎧とを結ぶ血印を一撃で破壊されていたのだから。
F-5の民家には、生者と言っていい人間は状況の変化についていけないマース・ヒューズと泉こなた以外に残されていなかった。
213: 2007/11/05(月) 21:26:27 ID:GhPH+b0X(2/2)調 AAS

214: 2007/11/05(月) 21:26:31 ID:J99GgCxn(8/8)調 AAS

215: 出会いと別れ  ◆5VEHREaaO2 2007/11/05(月) 21:26:57 ID:6knpSgqL(11/11)調 AA×

216: あと、ここらへんか? 2007/11/05(月) 22:58:47 ID:aEOQ59ZE(1)調 AA×
>>1

217: 2007/11/06(火) 00:07:42 ID:osc7E/5E(1)調 AAS
ほぼいらない
218: 2007/11/06(火) 20:05:49 ID:4LcIheB2(1)調 AAS
だな
219: せーのでコケてごあいきょう ◆LXe12sNRSs 2007/11/06(火) 20:24:28 ID:gJSO33Su(1/12)調 AAS
 時計の短針が、きっちり西の数字を刺そうかという頃。
 読子の残した拡声器で思いの丈をぶつけたはやては、北にあるデパートを目指して一心不乱に走っていた。
 股下を通り抜けていく冷たい風が、はやての足を加速させる。
 走るスピードが上がると、風が余計に冷たく感じ、また速度が上がる。
 そうやって、はやての足はどんどんどんどん加速していく。
 周囲の警戒を怠らせるほど、まるで全力全開の徒競走でもしているかのように。
 なぜ、彼女はこんなにも焦り、スピードを出しているのか。

 だって、なんや気持ち悪いんやもん!

 と、彼女の今の気持ちを代弁するなら、これ以外にはないだろう。
 考えてもみて欲しい。花も恥じらう乙女が、寒空の下で下着未着用。
 ……降りかかる精神的圧力は、並大抵のものではない。
 吹き抜ける冷風の心許なさが羞恥心に上塗りされ、なおもスピードは上がる。
 股下が寒さを訴えているにも関わらず、額から汗が滲み出るほどに。

「ここもあと二時間くらいで禁止区域か……万が一っちゅーこともあるやろうし、ここは回り道するべきやろか」

 と、はやては地図でいうところのG-6とH-6の狭間辺りで葛藤していた。
 制服の下の惨状を思えば、一刻も早くデパートに赴き例のブツを入手したい。
 が、北への最短ルートであるG-6は、11時をもって禁止エリアに指定されてしまう。
 もし、G-6を通過中になんらかのトラブルに巻き込まれ、身動きが取れなくなりでもすれば、即ドカン。
 そんなお間抜けな最後を想定したくはないが、既に色々な出来事が起こっている現状、危険な藪からはできる限り遠ざかりたい。
 というわけで、はやてはG-6を迂回し、H-6の北部を東に向かって走り抜けていた。
 早く下着を入手したいという衝動はあるが、思考はちゃんと冷静に働いていたのである。
 さらに途中、どのルートを通るか迷ったため、多少右往左往したことも付け加えておこう。
 それで迷惑した人物が若干二名ほどいるが、柔肌の状況を第一に心配するはやてにとっては、知るよしもないことだ。

「そういや、パズーは今どの辺にいるんやろか……結構焦っとったからなぁ、禁止区域のこと忘れてへんやろか」
「なぁ、なにをそんなに急いでるんだ?」

 ふと、あの危なっかしくも勇ましい少年のことを思い出していると――何者かの声が、走るはやてを呼び止めた。

「な……なんや、今の声? 空耳、やないよな」
「こっちだこっち」

 足を止め、視線を右に左に。としているうちに、親切にも声はまた発され、はやてはその主が上にいるのだということに気付いた。
 そう、上。森林内の地面に立つはやての上と呼べる場所は、一つしかない。
 それは木の上だった。はやてのちょうど真上、一際大きく聳えるその大樹の枝に、声の主は悠然と立っていた。

「な――」

 顔を上げ、思わず絶句する。
 大樹というからには、当然その全長は人のそれよりもずっと高い。
 そんな高さの木に易々と登り、枝の上に立ってなおバランスを崩さない卓越した体捌きは、元サーカス団員である彼だからこその技だ。
 と、普通ならばその身体能力に目がいくところだろうが、はやてはなにもそんなつまらないことで驚いているわけではない。
 もっと、視覚的にインパクトがあった。
 もっと、脳髄に大打撃を与える映像だった。
 もっと、まともな出会いがしたかったと――後々思うのかもしれない。

 八神はやてに声をかけた木上の男、クレア・スタンフィールドは――腰にタオルを巻いただけの、『ほぼ全裸』だったのだ。

「なんやあんたぁー!?」
220: 2007/11/06(火) 20:25:32 ID:ofN+AgK4(1/5)調 AAS

221: せーのでコケてごあいきょう ◆LXe12sNRSs 2007/11/06(火) 20:25:41 ID:gJSO33Su(2/12)調 AAS
 あまりにも自由自適で無防備な姿に、はやては思わず腰を抜かしてしまう。
 脳裏に数時間前の強姦未遂事件の光景が過ぎり、背筋を怖気が駆け抜けた。
 異常な状況下であるがゆえに、犯罪に走ってしまったあの少年とは違う。
 本能で感じた。目の前の存在は、殺し合いなど関係なしに、生粋の変態だと。

「腰を抜かすな。さすがの俺も少し傷つく」

 言うような気配は微塵も感じさせない飄々とした顔で、クレアは地表目がけて飛び降りる。
 くるっと一回転しながら着地し、やはり身体能力が尋常ではないことをアピールするが、
 あいにく彼の腰を覆っている布が捲れそうになったので、はやては目を背けてしまった。

「ど、どどどどどどちら様でしょうか?」
「動揺するな。まぁ言わんとすることはわかるがな。服はまだ乾いていないんだ。風呂上りで朝風を楽しみたい気分でもあったしな」

 なにやら弁明をしているクレアだが、はやてにとっては知ったこっちゃない。
 彼はどう足掻いても全裸であり、ここは室内ではなくお天道様の下であり、そして健全な婦女子の目の前だ。
 そんな状況で、いかなる理由があればうろたえずにいられるというのか。
 少なくとも、はやての繊細な乙女回路では許容しきれない問題だった。

「……声を聞いたんだ。この殺し合いという事態について、自らの見解を訴える女の声だ」
「えっ?」

 クレアが切り出した本題に反応し、はやては僅かに視線を戻すが、耐え切れずにまたすぐ逸らす。

「この状況に戸惑い怯えている者を救済するかのような言葉だった。それがまたずいぶんと感情入っていたみたいでな。
 それが悪意あるものには思えなかった。それで興味を抱いた俺は、こうして作業を中断し声の主を探していたんだが……」

 視線は合わせず、耳だけを傾けてはやては考える。
 つまり、この裸男ははやての拡声器による主張を聞き、ここまで全裸で馳せ参じてきたらしい。
 そういえば、あのラーメン屋の外周エリアには温泉があった。となると、この男は温泉からやってきたのだろうか。
 服が乾いていないだかなんだか知らないが、なにもそんな姿で来ることはないだろうに……と、はやては心中でぼやいた。

「そ、そですか。なら、こんなところで油売ってないで、早く声のしたほうへ向かったほうがいいんじゃないですか?」

 経緯はどうあれ、このような人とはあまりお近づきになりたくない。
 素直な感情でそう思ったはやては、他人のフリを決め込もうとしたが、

「なにを言ってるんだ。あの放送を行っていたのはおまえだろう?」

 時、既に遅し。

「おまえ、日本人か? よくは知らないが、そんな特徴的な口調の人間はそうそういないだろう」

 クレアがはやての盲点を突くとともに、一歩歩み寄り、一歩分退かれる。
 名簿を見る限り、日本人らしき人物は相当な数がいたが、その中で関西弁の女性が複数いるかといえば、確かに疑問だった。
 迂闊だった。あの放送はもとより人を集めるためのものではなかったため、本人特定の可能性など思慮の外だったのだ。
 どうせ、寄って来るのは殺し合いに乗った人間。だから早々に立ち去る気でいたのに、不幸にもこんな変質者と遭遇してしまうとは。
 回避しようがなかった偶然の不幸だが、禁止エリアを避け温泉に近寄ってしまったことが、はやての最大の不手際と言えた。

「た、確かにあの放送は私が流しましたけど……た、他意はないのでお構いなく」
「あの内容で他意がないわけがないだろう。それに、なにをそんなに怯えているんだ?
 俺の格好に動揺しているのはわかるが、これは考え方を変えれば武器を持っていないというアピールでもあるんだ。
 さっきも言ったが、俺はおまえの訴えに興味を持ち共感したからこそ、ここまでやって来た。
 この悲惨な状況に怯える女を、この俺が助けてやろう、ってな」

 クレアがまた一歩歩み寄り、はやては今度は退かなかった。
222: 2007/11/06(火) 20:26:19 ID:4s8DebEP(1/9)調 AAS

223: せーのでコケてごあいきょう ◆LXe12sNRSs 2007/11/06(火) 20:26:54 ID:gJSO33Su(3/12)調 AAS
「私が……怯えてる?」
「ああ、そうだ。おまえがなにを見てなにを感じ、なにを思ってあんな真似をしたかは知らないが……
 あれは、よほど切羽詰った人間じゃなきゃできることじゃない。なにせ、自分から殺し合いに乗った人間を煽っているんだからな。
 もちろん、おまえの声を聞いて勇気を出す参加者もいるだろう。だが、そんな奴が声の届く範囲に必ずいるという保障はない。
 そんなことは、誰でも考えつく。メリットとデメリットの比率に。それを理解してなお、おまえは訴えかけたかったんだ」

 気が付くと、はやてはいつの間にかクレアの不敵な笑みに目を奪われていた。

「おまえは哀れな迷い子だよ。与える影響は二の次。ただ叫びたかったんだ。堪え切れなくなったら泣く子供と同じさ。
 俺はそんなおまえに、少し同情したのかもしれない。なぁ、よければ俺に全部話してみないか? 
 なにがあったか全部。話せばスッキリするし、俺にもなにか協力できることが見つかるかもしれない。
 俺は車掌だが、だからといって乗客以外を切り捨てる気は毛頭ない。助けを求めている奴がいれば助ける。
 なぜなら、俺がそうしたいからだ。逆に、そうしたくなければしないがな。ムカツク奴は無視するし」

 呆然と聞き入るはやてを眼下に、クレアは淡々と語り続ける。
 クレアの考えを理解していくうちに、はやては次第に彼に対する印象を、『視覚的に変な奴』から『全体的に変な奴』に変えつつあった。
 裸身がどうという話ではない。その滅茶苦茶な言動からもわかるように、クレアという存在は、はやてが未だかつて相対したことのないタイプの人間だった。

「私は……」

 それでも、クレアの指摘が見透かしているかのように的を射ているのは事実。
 不思議な言霊に先導され、はやては真実を語りたい衝動に駆られる。
 自らが犯した過ちを、出会ったばかりのクレアに懺悔したくなったのだ。
 ふらふらと立ち上がり、はやてはパクパクと口を上下させる。
 なにもかも吐き出したかった。なおも心の中で渦巻く葛藤に、ケリをつけたくなった。
 そうやって、はやてが上下する口に音を乗せようとして、

「私…………ヴァ!?」

 不意に吹き込んできた風の悪戯が、クレアの腰のタオルを捲り上げた。
 ぺラッと。いや、むしろペロンと。
 そして、タオルに覆われていたアレがはやての目に飛び込んできた。
 チラッと。いや、むしろモロッと。

「ヴァ、ヴァ、ヴァ、ヴァ」

 もちろん、初めてである。
 なにがどう初めてなのかは、語るのも野暮と言うものだろう。
 その辺の事情については、絶賛赤面中のはやての顔を見て察してほしい。

「ヴァ――――ッ!?」

 たまらず、はやてはその場から逃走した。
 なにもかもがエキサイティングで、そのうえショッキングでもあり、チラリズムだった。
 とにかく、筆舌に尽くしがたい状況に陥ったはやての乙女回路は、本能的にクレアからの逃走という命令を下した。

 ……だが、ここは整地された街路ではない。木の葉や小石、木の根が大地を敷き詰める森の中だ。
 そんな場所で、我を忘れて走り出そうものなら……

「あべしっ!?」

 当然、思いっきりすっころぶ。
224: 2007/11/06(火) 20:27:37 ID:ofN+AgK4(2/5)調 AAS
 
225: 2007/11/06(火) 20:28:09 ID:4s8DebEP(2/9)調 AAS

226: せーのでコケてごあいきょう ◆LXe12sNRSs 2007/11/06(火) 20:28:26 ID:gJSO33Su(4/12)調 AAS
「…………たたた」

 柔らかな土に顔面から滑り込み、はやては鼻を押さえた。
 思い切り転んでしまった。こんな見事な転びっぷり、本場のお笑い芸人でも真似できない。
 鼻の穴がむずむずする。どうやら木の葉の欠片が入り込んでしまったらしい。
 手の平がひりひりする。どうやら手をついたとき、軽く擦り切れてしまったらしい。
 おしりがスースーする。木の間を吹ける風が、むき出しの臀部を刺激しているらしい。

(……ん? ちょい待ち。おしりがスースー……って!)

 得体の知れぬ危機感を察知したはやては、うつ伏せに倒れたまま、がばっと後ろを振り向いた。
 その視界の奥には、キョトンとした表情で立ち尽くすクレア。
 目と目が合い、互いに「あっ」と口を漏らす。
 視線の焦点は、二者の間、はやての天に突き上がった尻に向いた。

 機動六課女子制服の短めのスカートが、転んだ際の衝撃で捲れていた。
 ぺラッと。いや、むしろペロンと。
 そして、下着を身に付けていなかったがために、それはむき出しの状態で露出してしまった。
 チラッと。いや、むしろモロッと。

「…………あ、あ、あ」
「……さすがの俺も困惑している。だけど、たぶんここは謝っておいたほうがいいんだろうな。すまん」

 結果から言って、クレアの先立っての謝罪は、残念ながら受け入れてもらえなかった。
 その後のはやての阿鼻叫喚ぶりといったら、六課部隊長の体面もなにもあったものではなく、乙女としては当然の反応とも言えた。
 顔を真っ赤にしながら怒るはやてにクレアは笑顔を作り、それを見てはやてはさらに怒った。
 そんなやりとりが何回か続き、はやては結局クレアからの逃走を果たせないまま、主導権を彼に引き渡すこととなる。

 ――スバルやティアナ等、はやてを尊敬の眼差しで見る六課新人たちからしてみれば、意外な一面と捉えられていただろう。
 だが、この喜怒哀楽に溢れた活発な姿こそが八神はやてという少女の素であり、本質なのである。
 ヴィータやシグナムといった守護騎士たち、高町なのはやフェイト・T・ハラオウンといった親友たちに見せる、朗らかな笑顔。
 騎士カリムによる管理局内部崩壊の予言、闇の書事件の罪悪感などで、しばらく靄がかっていた本性。
 それは先の間桐慎二誤殺の件で再び失われつつあったが、今この瞬間だけは、本来の八神はやてとして存在していられた。
 方法はどうであれ、その変化を齎す要因となったのは他でもないクレアであり、このことは当人たちも気付いてはいないのだろう。
 今はただ、素の感情で言い争いを繰り返すばかりだ。
 ただ、それだけ。
 それだけのことが、はやてにとってなによりの清涼剤だった。

 ◇ ◇ ◇
227: せーのでコケてごあいきょう ◆LXe12sNRSs 2007/11/06(火) 20:29:50 ID:gJSO33Su(5/12)調 AAS
「――で、そいつをここに連れてきたのか」
「ああ。言っておくが、人手として連れてきたわけじゃないぞ。温泉を利用する客として招いたんだ」

 喋るトラネコのマタタビと、服はやっぱりまだ乾いていなかったため全裸のままのクレアの会話。
 あのビックリドッキリハプニングの後、クレアはどうにかはやてを説得し、温泉まで連れてきた。
 ちなみに、そのときの口説き文句がこうだ。

『なにがあったかは知らないが、話すにしてもひとっ風呂浴びて、頭をスッキリさせてからのほうがいい
 それに、これは俺みたいな奴じゃなきゃ気付けないだろうが……血の臭いっていうのは、しつこく染み付くんだ。
 簡単に落としきれるもんじゃない』

 葡萄酒(ヴィーノ)の名で知られる伝説の殺し屋、クレア・スタンフィールドは、職業柄鼻が利く。
 特に、血の臭いには敏感だ。本人はしっかり洗い流したつもりでいても、水洗だけでは肌に染み込んだ臭いまでは落とせない。
 そこで、クレアははやてに温泉で改めて体を清めることを勧めた。クレアの指摘を気にしたはやては、それに乗ったというわけだ。

「あの女も、この僅か数時間でかなり波乱万丈な道程を歩んできたらしい。
 それがまた酷いもので……いや、やめておこう。プライベートに関する話だしな。知りたきゃ本人に聞いてくれ」
「拙者には関わりのないことだ。あの女が客というのなら、おまえが勝手に持て成せ。興味ない」
「そうか」

 器用に握ったトンカチで、木材に釘を打つマタタビ。その横で、クレアは鉋を削りながら喋っていた。
 温泉に移動するまでの道中、はやてはクレアの口車に乗せられたのか、隠していた事情を全て暴露していた。
 少年に強姦されそうになったこと、その少年に抵抗した結果、相手を殺してしまったこと。その、懺悔を。
 事情を知ったクレアは、やはり同情した。ああ、そりゃ災難だったなと。純粋に可哀想だと思った。
 一部では怪物などと呼ばれ恐れられるクレアだが、その性格は決して冷酷ではない。
 自己中心的なのは否定できないが、他者に対する慈悲や哀れみの心は、ちゃんと持ち合わせている。
 むしろ、彼は戦場で泣き叫ぶ子供がいたら、率先して助けるタイプの人間だ。
 現実に甘いわけではない。そうするだけの余裕があるからこそ、彼はそうするだけなのだ。
 だから、この殺し合いの現場でも、悠々と全裸で行動できる。服を着ていなくても、支障がないから。

 ちなみに、クレアが客として招いた八神はやては、現在入浴中である。
 クレアとマタタビは仕事場をわざわざ湯船の見えぬ範囲に移し、はやてが上がってくるのを待っていた。

「ま、人手が欲しいのは否定しないが、おまえが一人で十人分の働きをしているからな。別に困りは……」
「ああ、そのことなんだがな。悪い。ひょっとしたら、もうすぐおまえを手伝うことができなくなってしまうかもしれない」

 手は休めず、不意にクレアがそんなことを漏らす。
 やや遅れて「ハァ!?」と反応したマタタビを無視し、クレアは鉋を置いて明後日の方向を向く。
 そこには、湯上りでほんのり顔が上気した八神はやてが立っていた。

 ◇ ◇ ◇
228: 2007/11/06(火) 20:30:45 ID:4s8DebEP(3/9)調 AAS

229: 2007/11/06(火) 20:30:54 ID:ofN+AgK4(3/5)調 AAS
 
230: せーのでコケてごあいきょう ◆LXe12sNRSs 2007/11/06(火) 20:31:28 ID:gJSO33Su(6/12)調 AAS
 なんであんな迂闊なことをしてしまったのだろう、とはやては今さらながら不思議に思う。
 迂闊なこととは即ち、相手に疑心を与えかねない強姦と誤殺の話を、クレアにひょいっと話してしまったことだ。
 彼は車掌と言っていたが、本当は口の達者な弁護士か交渉人かなにかではないだろうか。
 でなければ、あんな風に口軽く事情を話してしまえるわけがない。
 それとも、単に自分の心がそれだけ磨耗していただけなのだろうか。
 と、はやては数分前のことを思い返しながら、ピンク色に染まった裸身に六課の制服を着込む。やはり下着はない。

「石鹸のいい香りだ。血の臭いは完全に落ちたようだな。俺が言うんだから間違いない」
「それはおおきに。クレアさん、でしたっけ? そろそろ服を着たらどうですか?」
「すまん、まだ服が乾いていないんだ。だが、もういいかげん慣れただろう?
 それに、タオルも短いものではなくバスタオルを巻いた。これでもう安心だ」

 確かに風に吹かれて捲れるような心配はないだろう。だが、そういう問題ではない。ツッコむのも馬鹿馬鹿しいが。
 湯から上がったはやては、その足で再びクレアの下に向かった。
 そっと出て行ってしまってもよかったのだが、温泉にやって来た際、大工仕事をするトラネコの姿が目に入り、無視できなくなってしまったのだ。
 思い出されるのは、喋る黒猫との邂逅。おそらくあのトラネコは、クロの言っていたマタタビに違いない。
 当の本人ははやてになど興味がないのか、クレアに出迎えの挨拶をするだけで、自らの仕事に没頭していた。
 声をかけようとも思ったが、まずは温泉に入り、落ち着いてから情報交換をすべきだと、そのときは判断したのだ。

「おいクレア! さっきの言葉はどういう意味だ!」
「すまないなマタタビ。俺はこの女と話さなきゃならないことがあるんで、少し席を外させてもらう」
「あ、待って。私もその猫さんに話したいことが――」
「そんなのは後だ」

 マタタビに声をかけようとしたはやてだったが、クレアに遮られ、無理矢理連れられて行ってしまう。
 なんとも自分勝手な男やなぁ、とは思いつつも、はやては流されるまま森の奥へと移動させられる。
 タオルで覆う面積が増えたとはいえ、上半身全裸の男に手を握られるのはやはりいい気がしない。
 顔が火照り、心臓の鼓動もどこかペースか速くなっているような気がする。

(本当に、変な人。こんな変な男の人に会うのは初めてや)

 はやてはクレアの引き締まった上半身に目を奪われつつ、そう思った。

 温泉敷地内の片隅で、クレアは足を止めた。どうやら、二人きりで話す空間が欲しかったらしい。
 誰もいない森の中、少女の相手が熊さんなら童謡みたいでファンタジックだが、裸の男とあってはムードも台無しだ。
 とりあえず、クレアは殺し合いに乗っているとかいないとか、そういう次元の人間ではないと思われるため、はやては命の心配だけはしていなかった。
 が、それゆえに彼がなにを切り出すかまったく予想が出来なかった。
 文句も言わず連れて来られたのは、クレアという人間に対して、微かに好奇心が働いた結果なのかもしれない。

「さて、まずはなにから話そうか……」

 顎に手を当て天を仰ぐクレアは、一、二秒考える仕草をしてから、棒立ちのはやてを見つめる。

「そうだな、やはり最初は謝罪といこう。すまん。俺が悪かった」

 にこやかな笑顔に反省の色を僅かに混ぜ、クレアははやてに頭を下げた。
 謝られたはやては、なにがなんだか意味がわからない。目の前の男は、いったいなにをそんなに申し訳なさそうにしているのか。

「なぜそんな不思議そうな顔をする? まさか、俺がデリカシーのない男だとでも思ったのか?
 だとしたら心外だ。こんな格好をしている俺が言っても説得力はないかもしれないが、
 俺はちゃんと女性の羞恥心というものを理解している。いくらあれが風の悪戯だったとはいえ、非は俺にある。
 それを認めているからこそ、こうやって改めて謝罪しているんだ。いや、本当に申し訳ない」
231: 2007/11/06(火) 20:32:13 ID:4s8DebEP(4/9)調 AAS

232: せーのでコケてごあいきょう ◆LXe12sNRSs 2007/11/06(火) 20:32:44 ID:gJSO33Su(7/12)調 AAS
 ああ、なるほど。そういうことか。
 はやてはクレアが『アレ』を見てしまったことに対して謝罪しているのだと理解し、たまらず笑みを零した。
 確かにあの事故による精神的被害は乙女の一大事といえたが、なにもクレアに悪意があったわけではない。
 その辺ははやて自身も理解しているから、今さらとやかく言うつもりもなかったのだが、クレアはそれを気にしてくれていたというわけだ。
 確かに裸という点を考えれば説得力はないが、はやてはクレアに対する認識を少しだけ改めた。

「あーあ、私、もうお嫁にいけへんかもしれんなぁー」

 そんなクレアがおかしくって、はやての悪戯心がついそんなことを口走らせてしまった。
 この、変だけど根はいい人そうな男は、どういった反応を見せるだろうか。そんな好奇心に駆られてしまったのだ。

「そうだろうな。だから、俺は考え決心した。俺は――おまえに対して責任を取ろうと思う。話の本題はそれだ」

 と、予想外にも真面目に切り返してきたクレアに、はやては脳内で疑問符を浮かべる。

「責任? 責任って、なんの責任です?」
「だから、俺が、おまえのアレを見てしまったことに対する責任さ」
「いや、それはなんとなくわかりますけど、責任を取るってどうやって?」

 クレアの真意が読めないはやては、純粋に首を傾げていた。
 幼少から仕事熱心だったせいだろうか。その方面には疎いはやてとしては、本気でクレアの意図がわからなかったのだ。
 そんなはやてに、クレアはさも当然という顔で言う。

「わからないか? ならストレートに言おう。俺と結婚してほしい」

 瞬間、はやての世界が止まった。
 目に映る光景が、凍りついたように動きを止める。
 色彩豊かな森の情景が、灰色の絵の具で塗りつぶされていくような感覚だった。

「おまえも俺のアレを見てるんだし、おあいこだとは思うんだが、やはり男と女では精神的損害が違うだろうしな。
 ただ償いをするだけじゃ男としてどうかとは思うし、このまま帰ったら、キースの兄貴に絶交されかねない」

 口を開いてぽかんとするはやてを尻目に、クレアはのうのうと言葉を続ける。

「あ、ひょっとして愛のない結婚は嫌だとか思ってるか? 大丈夫、愛するから。
 こんなことを面と向かって言うのは照れるが、俺はおまえに一目惚れしたんだ。
 境遇に哀れんだとか、単にアレを見たことに対する責任を果たすためじゃないぞ。
 もちろん軟派な態度で言っているわけでも冗談で言ってるわけでもなく、本気で言ってるんだから問題はないはずだ」

 クレアの言っている意味がさっぱり理解できないはやては、返事も返せぬまま、ゆっくりと顔を赤らめていく。

「返事は今すぐ返してくれなくてもいい。だが、当面はおまえに付いて行こうと思う。
 ここで待っていてもいいんだが、状況が状況だ。俺の知らぬところで、また誰かに襲われでもしたら大変だしな。
 だから、俺はおまえを守りつつともに行動する。返事はここから出るときまでに考えておいてくれ」

 上半身裸での告白。十九歳で初めて受けるプロポーズ。なにかもが、はやてにとって衝撃的だった。

「反応が薄いな。ひょっとして俺の言葉が信じられないか? 言っておくが、俺は無敵だ。
 どんな敵が相手だろうと、絶対に死なない自信がある。なぜなら、世界は俺を中心に回っているからだ。
 俺が殺される心配はないし、俺が守ると決めたものは、確実に守り通せる。
 だから心配は無用だ。そしておまえも信じろ。俺が、絶対に死なない男だと」

 人生で、これほど困惑したことはなかったかもしれない。
 はやては、クレアという今までに相対したことのないタイプの男性に魅せられ、その場に立ち尽くした。
 なにも考えることができない。股下の冷たい違和感も、今に限って言えば気にならない。
 ただ胸が高鳴り、その理由もわからないまま、全身が高揚していく快感に捉われる。
 はやての意識はクレアの真摯な瞳に奪われ、完全に我を忘れていた。
233: 2007/11/06(火) 20:33:35 ID:rTyMJ99/(1/3)調 AAS
 
234: 2007/11/06(火) 20:34:09 ID:ofN+AgK4(4/5)調 AAS
 
235: せーのでコケてごあいきょう ◆LXe12sNRSs 2007/11/06(火) 20:34:24 ID:gJSO33Su(8/12)調 AA×

236: 2007/11/06(火) 20:34:55 ID:rTyMJ99/(2/3)調 AAS
 
237: せーのでコケてごあいきょう ◆LXe12sNRSs 2007/11/06(火) 20:35:38 ID:gJSO33Su(9/12)調 AAS
 ここで裏話を一つ。
 言峰の言葉から狂い始め、慎二の横暴で加速し、自らの意志でどうにか軌道修正したはやての心は、クレアの思わぬ行動で急展開を見せる。
 その裏側、はやてとは比較的関係のないところで、彼女に接触を図ろうと暗躍する影があった。
 そう、スパイク・スピーゲルと読子・リードマンの二人である。

「もぉ〜! スパイクさんがのろのろしてるから、八神さんを見失っちゃったじゃないですか!」
「俺のせいかよ」

 人気のない森の中。大胆なことに、そこはあと数時間で禁止エリアとなるG-6あたりだったろうか。
 この現状を殺し合いと認識していないスパイクと読子には無用な心配ではあったが、このままここに留まれば首輪が爆発してしまう。
 いくらなんでも、この実験のルールを認識もしないまま事故死したとあっては、笑い話にもならない。
 だが、現実は非情である。この間抜けな二人に現実を教授してやれる者はこの場には居らず、勘違いだらけの珍道中はまだまだ続く。

「なぁ、リードマン。やっぱなんかおかしくねぇか?」
「もう、まだウジウジ悩んでるんですか? そうこうしている間にも、八神さんは一人ロージェノムさんと戦ってるかもしれないんですよ!?」

 なにやら強い使命感のようなものを覚えている読子だったが、反対にスパイクのほうは、正体の掴めぬ違和感に捉われ続けていた。
 はやてが真に伝えたかったこととはいったいなんなのか。今思うと、やはり読子の見解はどこか外れているような気がする。
 スパイクは思考の海と森の大地を同時に進行し、今はそのせいで見失ってしまったはやてを探すため、彷徨い歩いてる最中だ。
 どちらにせよ、読子の荷物の件もある。はやてとの再会は必須だろう。
 スパイクは考え直し、はやての捜索に専念しようと顔を上げるが、

『なんやあんたぁー!?』

 突如として響いてきた奇声に反応し、後ろを振り向いた。

「聞いたか、リードマン?」
「ええ。今の、八神さんの声でした」
「ああ。しかもありゃ悲鳴だ。こりゃ、面倒なことになってるかもしれねぇぞ」
「急ぎましょう、スパイクさん!」

 スパイクと読子は声の響いてきたほうへ、一目散に駆け出した。
 あの奇声、恐らくはクーデターがバレ、ロージェノムの一派に粛清されようとしているに違いない。
 面倒事は御免だが、はやてには朝食を振舞ってもらった恩がある。それに、読子もやる気満々のようだ。
 スパイクは急ぎ、先頭に踊り出ると、程なくして二つの人影を発見する。

「――ィッ!?」

 と、その人影を発見するや否や、小さく喘いでなぜかユーターン。
 後方の読子を立ち止まらせ、力ずくで彼女の顔を横に向かせた。

「ふ、ふパイクさん!? な、なんでふか、どうひたっていうんでふか!?」
「見るな。おまえは見るな。とりあえず待て。あれを大勢の目に晒すのは――残酷すぎる」

 両手で読子の頬をサンドイッチにし、スパイクは彼女の視線を明後日の方向に誘導させようとする。
 が、読子もそれに抗い、唇の尖った不細工面を作りつつも、スパイクの奥にいるはやてを視認しようと試みる。
 おかしな攻防戦だったが、スパイクの表情は至って真剣な――哀れみの顔だった。

 ……スパイクが先駆けて視認したはやての姿は、よりにもよって天に向かって半ケツを晒している状態だったのだ。

 あれはある意味、血に濡れて透けた下着姿を見られるより恥ずかしい。なにせ、ポージングがあり得ない。
 読子がいくら理解ある同姓であろうと、あの姿をより多くの人間に見せるのは酷すぎる。自分だったら死にたくなる。
 だから、衝動的に読子の視線を背けさせた。これ以上はやての傷を増やさないために。
 これは、はやての人権に対する配慮などではなく、人として彼女に憐憫の情を抱いたからこその行動である。
 ……つまり、あんな格好をしているはやてに、スパイクは心の底から同情したのだ。
238: せーのでコケてごあいきょう ◆LXe12sNRSs 2007/11/06(火) 20:37:12 ID:gJSO33Su(10/12)調 AAS
「ん〜……もう! いきなりなにするんですかぁ〜!?」
「怒るな。あと騒ぐな。とりあえず様子を窺うんだ」

 拘束を解き、ぷりぷりと怒る読子を宥めると、スパイクは適当な茂みに彼女を連れ込んだ。
 木々の隙間から、数十メート先にいるはやてを観察する。
 どうやら、地面に倒れ込み半ケツを天に突き上げるという珍妙すぎる姿勢からは脱出したようだ。
 ホッとするスパイクだったが、またすぐにギョッとすることとなる。
 よく見ると、はやての側にいるもう一つの人影が、また常識ではあり得ない格好をしていたのだ。

「……おい、ありゃいったいどういう状況だ? あいつの側にいる男、なんでタオル一丁の裸なんだ?」
「わ、私に聞かれても……あ、それになんか、八神さん泣いてるみたいです……と思ったら怒ってる」
「おいおい、まさか、人気のない森で裸の男に襲われそうになったってんじゃないだろうな?」
「いえ、でもあの男の人、なんだか八神さんを慰めてるみたいですよ。謝ってる風にも見えます。あ、付いて行っちゃった」
「……さっぱり状況がわからん」
「わかりませんねぇ」

 茂みの中でう〜んと唸る二人は、はやてと裸の男が去っていくのも構わず、その場で考え込む。

「少なくとも、あの男は八神の敵じゃないよな? だとしたら、例の味方か? 裸だったけど」
「う〜ん……そういえば、温泉ってこの近くじゃないですか? ひょっとしたら、温泉をベースにしているのかも」
「クーデターの前線基地がオンセン? いや、だとしてもフツー全裸で歩き回るか?」
「でも、あの人がロージェノムさん側の人間だとしたら、八神さんも簡単に付いて行ったりはしないでしょ?」
「ま、そりゃそうだが……」

 そのまま茂みの中で数分、あーだこーだと話し合う。
 その討論は一見真面目なように見えたが、話の本題は実際の事情には掠りもしていない。
 傍から見たら馬鹿丸出しの、当人たちにしてみればたぶん大真面目な、二人だけの世界が続く。

「ってか、本人に直接聞いたほうが早いなこれ」
「そうですねー。私たちも温泉に向かう予定でしたし……とりあえず、温泉で八神さんと合流しましょうか」

 勘違いは紆余曲折してさらに高速旋回しながらなおも加速していくが、やはり正す者はいない。

 ◇ ◇ ◇

「ここか? オンセンってのは」
「ですねー」

 森をまたしばらく彷徨い歩き、スパイクと読子は湯気の立ち上る施設へとやって来た。
 最初に目に映った建物は酷く廃れているようだったが、付近を回ってみると、湯はちゃんと存在しているようだった。
 はやてと出会った町と同じで、人気はない。とりあえずはやてを捜すことにした二人は、温泉の外周を探索していた。

「気をつけろよ。ここが本当に八神たちのアジトだとしたら、罠の一つや二つあるかもしれねぇからな」
「はい。でも、肝心の八神さんはいったいどこにいるんでしょう?」

 そもそも、二人ははやての後を追ってここに辿り着いたわけではなく、はやての味方らしき男が裸だったという判断材料から、ここに立ち寄ったにすぎない。
 本人は北に向かうと言っていただけに、イマイチここにはやてがいるという確証が得られなかった。

(ま、いなきゃいないでこいつを風呂に入れるだけだがな)

 と、スパイクは楽天的に考える。捜し人を見つけたのは、そんなときだった。
239: 2007/11/06(火) 20:38:02 ID:ofN+AgK4(5/5)調 AAS
 
240: せーのでコケてごあいきょう ◆LXe12sNRSs 2007/11/06(火) 20:38:36 ID:gJSO33Su(11/12)調 AAS
「あ、いました。はやてさんと、さっきの男の人です」

 先ほどとまったく同じ状況。森の中で、以前より若干長くなったタオルを腰に巻いただけの裸男と、はやてが対峙していた。
 そしてそれを覗き見するスパイクと読子も、反射的に茂みの中へと身を潜ませていた。
 数十分前とは違い、今度は十分に声が聞き取れる距離だ。二人ははやてと裸男の会話に聞き耳を立て、デバガメのように様子を窺う。
 聞こえてくるのは、なにやら異様に滑舌のいい男の演説のみ。聞き手に回っているのか、はやてはまったく喋っていない。
 そしてその演説の内容がまたおかしなもので、二人から零れた感想は、

「これってひょっとして……愛の告白、ですか?」
「だな。しかもプロポーズだ」

 と見事に合致した。
 結婚だの、愛するだの、一目惚れだの、本気だの、守るだの、やたらと情熱的なことを語っているように見える。
 しかしこれはどういうことか。読子の推測が正しければ今はクーデター真っ最中のはずの彼女らが、温泉で愛を語り合っているなんて。

「戦場で盛り上がる恋もあります。いわゆるつり橋効果ですね。はぁ……ロマンチックな恋愛小説みたい」

 と読子は分析しているが、スパイクは険しい表情で再度考え直す。
 この状況、やはりおかしい。おかしすぎる。自分たちは、なにか究極的にアホな勘違いをしているのではないだろうか……。
 スパイクの疑念は、ここにきて再燃する。そもそもが遅すぎなのだが。
 とにかく、今度こそ当人であるはやてに真相を問い質すチャンスである。
 スパイクは腰を上げはやてたちの下に歩み寄ろうとするが、

「おい。おまえら、そんなところでなにをやっている?」

 寸前で、いつの間にか後ろに立っていたネコに、呼び止められた。
 ネコに、呼び止められた。
 ……ネコに。

「……ネコ?」
「……ネコ、ですね」

 振り返り、唖然とするスパイクと読子。
 彼らを呼び止めた声の主はどこからどう見てもネコであり、さらに詳しく説明するなら、二足で立つ隻眼のトラネコだった。
 そのトラネコが、流暢に人間の言葉を喋り、スパイクたちを見上げている。
 衝撃のあまり数瞬思考することを忘れてしまった二人だったが、やや遅れてそのあり得ない光景を受け止めると、

「ネコぉぉぉぉぉ〜!?」

 大袈裟に驚いてみせたり。その声は、温泉全体に響き渡った。
241: 2007/11/06(火) 20:38:39 ID:rTyMJ99/(3/3)調 AAS
 
242: せーのでコケてごあいきょう ◆LXe12sNRSs 2007/11/06(火) 20:39:54 ID:gJSO33Su(12/12)調 AAS
【H-6/温泉の外れ/一日目/昼】

【マタタビ@サイボーグクロちゃん】
[状態]:健康
[装備]:大工道具一式@サイボーグクロちゃん、マタタビのマント@サイボーグクロちゃん
[道具]:支給品一式、メカブリ@金色のガッシュベル!!(バッテリー残り95%)
[思考]:
1:クレアからさっきの言葉の真意を問い質す。
2:クレアが駄目ならこの二人に手伝わせるか?
3:この建物を直す。建物に来た奴には作業を手伝わせる。
4:建物が完成したらリザを待つ。
5:出来ればキッド(クロ)とミーとの合流。
6:戦いは面倒だからパス。
7:暇があれば武装を作る。
[備考]
※大工道具は初期支給品の一つです。中身はノコギリ、カンナ、金槌、ノミ、釘
※建物の修理はあとおよそ10時間で完了しますが、妨害行為などで時間が延びることがあります。
※クレアが手伝うことによって、完成予定時間が短縮されました。
※修理に手を貸す人がいれば修理完了までの時間は短くなります。H-6の周囲に建物を修理する音が響いています。

【スパイク・スピーゲル@カウボーイビバップ】
[状態]:健康
[装備]:デザートイーグル(残弾8/8、予備マガジン×2)
[道具]:支給品一式
[思考]
1:ネコが喋ってやがるー!?
2:はやてに真相を問い質す。
3:とりあえず温泉に入る。
4:読子と一緒に行動してやる。

【読子・リードマン@R.O.D(シリーズ)】
[状態]:健康
[装備]:○極○彦の小説、飛行石@天空の城ラピュタ
[道具]:なし
[思考]
1:ネコが喋ってるー!?
2:はやてに協力したい。
3:スパイクと一緒に温泉に行ってから帰る。
※はやてがやろうとしていることを誤解しています。
※国会図書館で隠棲中の時期から参加。
243: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火) 22:56:55 ID:F68nI5NF(1/15)調 AAS
 水を掻き分けて移動する。腹部の傷に容赦なく当たる水流に、ヴィラルは苛立たしげに顔を顰めた。
 下水道の中ほどで立ち止まると、糞、と吐き棄て側面のコンクリートに腰を降ろす。天井には小さな電灯が並んでおり、内部は暗いものの真の闇ではない。
 下水、そう呼ばれる地下水道は汚らしいものだと思っていたのだが、臭いこそあるものの、水は思いのほか澄んでいた。
 いや――よく見れば下水の端に、滑った汚れが張り付いている。しばらく前は、生活廃水が流れていたはずだ。水が澄んだのは、
この会場から営みが消えてからだろう。

「……螺旋王も、一体なにを考えているのだろうな」

 瞳を閉じながら、小さく呟く。声は思いのほか反響していた。
 自分はこういった『索敵』は行わなかった。
 小さな勢力には部下を向かわせるし、自分が向かうような相手はダイガンザンなどの戦艦でも確認している。
 そう、ヴィラルは戦艦から射出され、目的地に降り立ち、愛機たるエンキで焼き払う――それが、今までの彼の戦い方だった。そして、
数日後にも同じような任務を執り行うはずだったのだが――

「いや、止そう」

 考えても仕方がない。ありえたかもしれない未来を夢想し、現実から目を逸らすのはなんと愚かな事か。
 自分は人間掃討軍極東方面部隊長なのだ。そのような些事を気にかけている暇があれば、一人でも多くの人間を殺さねばならない。
 その為にも、今は休まねばならないのだが――

「……どうやら、そうも言ってられないらしい」

 足音が徐々に、けれど確実にこちらに向かってきていた。
 思わず舌打ちをしてしまう。万全の――いや、せめて十全の状態であれば、飛んで火に居る夏の虫とばかりにその命を断ち切ってやる自信はある。
 だが――じくじくと痛む腹部の傷が、そして体全体を圧迫するように圧し掛かる疲労が鎖となり、ヴィラルの身体能力を奪っていた。
 黒光りするワルサーを闇に突きつけ、立ち上がる。幽鬼のように、ゆらゆらと体が揺れてしまう。
 銃という武器はあまり慣れてはいないのだが、今、この場面においては好都合だ。
 なにせ、この狭い通路での遠距離武器だ。間合いにさえ入れなければ、例え立ち止まっていたとしても相手を殺す事が出来るだろう。
 己の疲労を隠すように、力強く言い放つ。

「わざわざ殺されに来るとはな……つくづく愚かだよ、貴様らニンゲンは」
「はっ――誰が、誰に殺されるってんだ?」

 自信に満ち満ちたその声、けれど、奥底には燃えるような怒りがあるように思えた。
 それは、まるで炎。全てを覆い、焼き尽くす紅蓮の灼熱。
 遠く響いていた足音は、既に手が届きそうなほどに近くから聞こえている。

「獣人倒すと心に決めて、ガンメン奪ってぶちのめす。妙な場所に連れてこられようと、貫き通すぜ男の意地を!」

 小さな電灯に照らされ、ぎらり、と何かが輝いた。それがV字のサングラスだと気づいた瞬間、男は腰の剣を抜き放っていた。

「よう、まさかこんな場所で会うとは思わなかったぜ……ヴィラル」

 V字のサングラスに覆われた剣呑な瞳、それを煌かせて、言った。
 ――しばし、秒針が半周ほど巻き戻る。
 銃を構えたまま、ヴィラルは頭を回転させる。
244: 2007/11/06(火) 22:57:25 ID:4s8DebEP(5/9)調 AAS
 
245: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火) 22:58:06 ID:F68nI5NF(2/15)調 AAS
(……誰だ、このハダカザルは)

 青い短髪に、がっしりとした体躯。デイバックは右肩に引っ掛けている。
 肌には刺青が彫られたその姿は、ニンゲンの中でも更に存在意義の薄い荒くれ者にも見える。
 だというのに――この男はなぜ、自分を知っている?
 
(エンキを用いて焼き払った村の生き残り、か?)

 なるほど、それは正しく思える。例えニンゲンであろうとも、仇の相手を覚える頭はあるはずだ。
 だが――それならば、この男はなんだ?
 圧倒的な力で捻じ伏せれば恐怖が残る。現に、獣人に対してレジスタンス活動を行っている黒の兄弟とて、真っ向からぶつかってくる事はなかった。
 けれど、この男は、王都の戦士の如く真っ向から現れた。
 ただの愚か者か、それとも――真っ向から戦っても勝てると思っているのか。

「どちらにしろ――腹立たしい限りだ!」

 銃声が二つ、重なるように響く。大気を穿ち、宙を疾駆する鉄の弾丸。
 左右に道はない。あるのは壁と下水だけだ、逃げ道などありはしない。
 容易かったな、と思いながら銃を収めようとし――目を剥いた。
 
     ◆     ◆     ◆

 獣の牙とは、引き千切るためにある。
 そう、食いつき、引っ張り――そのまま千切るのだ。
 故に、噛み付かれたからといって、引き剥がそうとすれば逆効果。獣の牙にプラスアルファを加える事になってしまう。
 なら、どうしたらいい?
 ……簡単だ、逆に押し込めばいい。
 
「俺をっ! 誰だと思っていやがるッ!」

 地を這うに肉食獣の如く体勢を低くし、疾駆。ざりっ、と背中の皮が削れるような感触に顔を顰めながら、剣を振り上げた。

「見下してんじゃねぇ斬りィ――ッ!」

 心から湧き出してくる魂の叫びを剣に載せ、一気に振り下ろす!
 だが、遅い。
 ぎり、と痛みを発する左肩。それがカミナの剣から速度を奪う。
 ――そう、剣を振り下ろすには左手が中心である必要がある。
 右手が張った状態では体を大きく傾けないかぎり、とてもではないが真下まで振り下ろす事など叶わない。
 故にその剣捌きは、普段の彼よりも予備動作が大きく、そして愚鈍だった。
 鋼の音色が二人きりの観客の耳に届く。
 刃金と銃口が重なり合い、軋むような音を響かせる。 

「知らんよ、ハダカザルの名前なんてなぁ!」
 
 獰猛な獣のような――いや、そのものな表情を浮かべ、引き金を引く。
 衝撃音。
 跳ね飛ばされた剣を掴んでいたカミナは、まるでバンザイでもするかのように仰け反る。
246: 2007/11/06(火) 22:58:26 ID:vH00WhMF(1/3)調 AAS
sien
247: 2007/11/06(火) 22:59:05 ID:4s8DebEP(6/9)調 AAS
 
248: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火) 22:59:16 ID:F68nI5NF(3/15)調 AAS
「はっ……消えうせろ、ハダカザル!」
(マズ――!?)

 思考思考思考、思考だ! 考えろ!
 親父の死骸を見た時のように、時間の流れが遅くなる。
 ヴィラルの勝利を確信した笑みが腹立たしい、ゆっくりと引き金を引く指に焦りを覚える。
 糞、と内心で吐き棄てる。
 こんな時に、シモンがいてくれりゃぁ――
 アイツは、いつでも諦めなかった。
 そして、気弱なところもあるが熱いハートとクールな頭脳も持ち合わせていた。
 そうだ、チミルフとの戦いの時もそうだった。
 自分が無鉄砲に突っ込んで行った時に、策を用いて退けた。螺旋王直属の部下相手にだ!
 
(畜生。俺は……この程度の男なのかよ)

 心の奥底にある炎が凍えるのを感じた。
 極寒の中、潰えていく気合の炎。それが、ゆっくりと消滅――

 ――――ふと、誰かの泣き言と強がりが聞こえてきた。

(――こいつは)

 深い深い穴倉の中。抜け出そうとして仲間を連れ出した時の話だ。
 仲間だけじゃ不安なんで、村一番の穴掘り名人に声をかけた。だが、岩盤は崩れ、自分たちは閉じ込められた。
 焦った。皆に発破をかけても、泣き言を言って掘るのを止めてしまった。
 そう、もう駄目だと。
 そう、ここで死ぬのだと。
 ――だから、あのひたむきな背中が輝いて見えた。
 最後まで自分を信じてくれた、
 最後まで諦めなかった、
 それがシモンだった。
 それが自分の魂の兄弟だった。
 それが――相棒だった。
 そんな彼に笑われなかった、
 そんな彼を裏切りたくはなかった。
 だっていうのに――

「なにやってんだ、俺はァァアァア!」

 その叫びと共に、剣を放り投げた。

     ◆     ◆     ◆

 男が叫び声と共に剣を投げ捨てるのを見て、頬に笑みが浮かんだ。
 ――諦めたか。
 しょせんはハダカザル。威勢はよくても、結局は脆く、弱い生物だ。
 散れ、と引き金を引き絞る。その瞬間、
249: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火) 23:00:40 ID:F68nI5NF(4/15)調 AAS
「な――ッ!?」

 赤い旋風が、眼前まで迫っていた。
 慌てて頭を逸らすが間に合わない。ざり、と頬の肉がこそげ落ちた。

「ぐ――き、さま!」
「はっ。奇策はきかねぇ、って言ってたくせに、ざまぁねぇな」

 赤い雫を垂らす真紅の槍。それを棒切れでも扱うようなぞんざいな握りで持つ眼前の男。
 失態、なんという失態だ。そもそも、戦闘中だというのにデイバックを降ろさなかった時点で、バックに注意を向けるのは当然だろうに!
 全身の血液が沸騰し、思考を犯す。咆哮を上げ、奴に掴みかかりたいという衝動に駆られる。
 だが、その衝動も疲労には勝てなかった。
 ほとんど連戦のこの状況、ここまで動けただけでも僥倖と言えるだろう。けれど、これ以上戦闘して、勝利するまで体が動くかどうか。
 ――自信は、なかった。

「貴様、名をなんという」
「へ、嫌な事は忘れちまう性質か? まぁ、いいぜ。その緩んだ頭引き締めた後、耳かっぽじってよーく聞きやがれ!」

 ぶおん、と真紅の長槍を一回転。そして、その槍先を天井に――いや、天に向け、吼えた。

「狭い穴倉に押し込まれようと、天井拳で打ち砕き! 獣人どもを蹴散らして、向かう先は天の月! 
 大グレン団リーダー、カミナ様だ!」

 馬鹿か、と内心で思う。
 だが――その馬鹿が自分に傷を与えたのだ。甘く見ていて、倒されるのは自分だ。
 噛み締めるように、呟く。

「カミナ、か。ああ、覚えたよ」
「へっ、今度は忘れねぇようにしとくんだな」
「ああ、忘れたくても忘れられん」

 五メートル程度の距離を維持しながら、じりじり、と二人の足が動く。
 それは、束の間の停滞。間奏のようなものだ。
 そう――主旋律は、すぐそこまで来ている。

「カミナ、この勝負、預けるぞ!」
  
 そう吼え、駆けた。
 男の瞳が鮮烈なまでに鋭くなり、自分を射抜く。両手で握った槍を、草でも刈るように横薙ぎに振るってくる。
 それを、ありったけの体力を使った跳躍で回避。轟、と寸暇の間だけ自分がいた場所に赤色の軌跡が描かれる。

「ぐ――!」

 じわり、と傷口から血液が吹き出す。応急処置したとはいえ、この動作だ。開いてしまったらしい。
 だが、あと数分だけ持てばいい!
 滞空するヴィラルは、側面に手を当て――力を込め、急落下。カミナの元に疾駆する。
 これで隙を見つけたら殺してやろうと思ったが……このカミナという男、随分と戦いなれている。この三次元の動作に、ぴったりと食いついてきている。
 恐らく、今攻撃しても、その長槍で受け止められるだけだろう。
250: 2007/11/06(火) 23:00:43 ID:vH00WhMF(2/3)調 AAS
支援。
251: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火) 23:01:49 ID:F68nI5NF(5/15)調 AAS
「なら!」

 落下の速度を利用し、踵を振り下ろす。案の定、その長槍でガードしてくるカミナ。
 だが、ヴィラルは焦る事無く更に力を込める。
 カミナの表情が引き攣った。左肩の裂傷が疼きだしたのだ。
 瞬間、ほんの僅かな間に力が緩まる。その間隙を縫うように――一気に押し出す!

「うお――ぁあ!?」

 水柱を立て、下水に落下するカミナを確認する事無く、ヴィラルはすぐさま下水を逆走した。
 呼吸は荒い。腹部の傷は開ききり、血涙を流している。
 だが、いつまでもここで立ち止まっていれば、自分は殺されてしまう。そう、螺旋王の期待に添えないままに。
 それだけは許せなかった。人に近い肉体になるという屈辱を受けながら、殺したのが一人だけとは、笑い話にもならない。
 
「この――待ちやがれ!」

 背後から響くカミナの声に、思わず舌打ちを漏らす。
 予想以上にリカバリーが早い。これでは、下水から出たとしても逃げ切れるかどうか――
 そこまで考えて下水から飛び出て……それを見た。

「……はっ」

 ああ。もし神という存在がいるとしたら、今くらいは感謝してもいいかもしれない。
 目の前にある『ソレ』には車輪がついており、内部にはガンメンとは構造が違うもののコックピットのようなものがあった。
 ヴィラルは知らなかったが、それはゴーカートと呼ばれる乗り物である。
 
「丁度いい、使わせてもらおう」
 
 最初はデタラメにハンドルやペダルなどに触れ、この乗り物の反応を確かめる。
 幸い、機械関連はガンメンの扱いで多少は慣れていた。起動さえすれば、後は様子を見ながら動かせるはずだ。
 
「この――ってっめえ! 人のモン勝手に使いやがって!」
「ッ!? くそ、動け!」

 既にカミナは下水道から抜け出し、こちらに向かって駆けてきている。
 追いつくまで、あと数十秒といったところか。
 早く早く、という気持ちとは裏腹に、コックピットはなんの反応も返してこない。
 糞っ! と。苛立たしげにペダルを踏み込んだ。

「ッ!」

 瞬間、背後のシートに体を押し付けられるような感覚。それと共に、車輪が急回転し、運動エネルギーを地面に伝え加速する。

「……動いた、のか」

 遠くで吼えるハダカザルの声を聞きながら、ふう、と息を吐いた。
 ハンドルを回す。すると、車体もその方向に向きを変えた。どうやら、この乗り物はペダルとハンドルを用いて前に進むモノらしい。
 道をジグザクに進み、追撃をさせないようにする。これが頭のよい奴なら目的地を理解できるだろうが、あのカミナという男は、さして頭が良さそうには見えなかった。
252: 2007/11/06(火) 23:02:39 ID:4s8DebEP(7/9)調 AAS
 
253: 2007/11/06(火) 23:02:57 ID:qK18NDHs(1/2)調 AAS

254: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火) 23:03:02 ID:F68nI5NF(6/15)調 AAS
「早く、休まねば――」

 一番手近な建物である空港。そこに入ると、格納庫らしき場所に入り込んだ。
 中は異常な程にだだっ広い。本来は戦艦サイズのガンメンも入りそうなのだが、今はツギハギの見えないコンテナが複数、置いてあるだけだ。

「――ふう」

 小さく息を吐き、シートに体を預けながら、そのコンテナを見やる。
 サイズはみなバラバラだ。ガンメンが複数入りそうな物もあれば、ギリギリ一体入るかどうか、という物もある。
 疑問に思い、ゴーカートを近くまで寄せてみるが、やはりツギハギは見えなかった。

「この首輪と同じ、か?」

 自身の首を覆う金属質のそれに触れながら、少し残念そうに呟く。
 もし開けられたら、そして運良く中にガンメンがあれば、クルクルやケンモチ、そして蛇女やカミナというニンゲンに苦戦する事はなかったろうに。
 だが、無い物ねだりをしても仕方がない。それならば、この乗り物を調べた方がずっと有意義――

「む?」

 そう思いながら背後に視線をやって、ようやくその存在に気づいた。
 まず、デイバックが二つ。一人に一つだけ支給される物なのだから、おそらくカミナが殺して奪ったものだろう。
 まあ、それはいい。武器や道具が増える事は喜ばしい事だ。だが、

「女……?」

 金髪の女性だった。
 豊満の体躯を覆うのは茶のスーツにタイトスカート。耳にはリング状のピアスが揺れている。
 その豊満の体は、マントに縛られる事によって更に強調されたその姿は、とても蠱惑的であった。
 ごくり、と一瞬息を飲むが、すぐさま頭を振る。

「全く、ニンゲンとは下劣な生き物だ」

 女性を昏倒させ、縛り上げた男。その男がその後どうするか――想像に難くない。
 もっとも、案外そちらの方がよかったのかもしれないな、とも思う。
 その姿態を蹂躙されるのと、今ここで殺されてしまう事。どちらかといえば、前者の方がマシだろう。
 す、と両手を女性の首に伸ばす。首は細く、獣人の力で握り締めれば、容易く引き千切れてしまいそうだ。 

「運がなかったな、女」

 そう言って、両腕に力を込め――――

「……なんだと?」

 その違和感に気づいた。

     ◆     ◆     ◆

「畜生、逃がしちまった!」

 がんっ! と地面に拳を叩きつけながら漏らす。
255: 2007/11/06(火) 23:03:05 ID:uIlNDMWb(1/2)調 AAS

256: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火) 23:04:18 ID:F68nI5NF(7/15)調 AAS
 苛立ちがつのる。もし、あいつをこのまま放っておいたら、今度はヨーコたちも殺されてしまうかもしれない。
 
「いや――」

 小さく呟き、頭を振る。
 それでは、シモンの死を認めてしまったようではないか、と。
 
「俺は、自分の目でみねぇかぎり、ぜってぇ信じねぇ」

 アイツがそう簡単にくたばるはずがない。カミナはそう信じていた。
 だが、もし、もし本当に殺されていたら――

「そんときゃ、魂の底から泣いた後に、胸に刻めばいい」
 
 悲しみという存在は図々しいものだ。
 今まで大切な誰かがいた場所に、居なくなると同時に滑り込んできやがる。
 そんな奴らをどう追っ払うかって? 
 簡単だ、泣けばいい。
 心の底から、魂の底から泣きまくって、その濁流で悲しみなんぞ押し流す。
 そして――空いた空洞には思い出を詰めるんだ。
 そいつがどんな奴だったのか、
 どんなすげぇ奴で、
 どんなに助けられたかを。
 誰かに、笑って語れるようにすりゃあいい。
 
「だよなぁ、親父」

 父の亡骸を見つけた時を思い出しながら、剣を腰に差し、槍をバックに仕舞いこんだ。
 やっぱり、剣の方が性にあっているな。そう思いながら、どこかに歩き出そうとして――

『あーあー、あーあー……ちゃんと電源入っとるんかなぁ、コレ?
 ……ええかな?
 えーと、いきなりこんな声が聞こえて来て、ビックリしている人もいると思います。
 私は――ううん、私だけやない、同じような考えを持っとる人の言葉、全部を代弁して言わせて貰います』

 遠くから、誰かの声が響いてきた。

「な、なんだぁ!?」

 ガンメンに乗って喋る時も、外からはこんな感じで聞こえてたよな、と思いながら、耳を欹てる。

『――皆、迷っとるやろ?
 おっかない、他人が信用出来ない、死にたくない……何もしないでいても、そんな気持ちばかり湧いて来る。
 いっそ、殺し合いに乗ってしまおうか。そうすれば楽になれるんじゃないか。
 分かるで……私もほんの今の今までそーんな、グチャグチャした考えで頭の中が一杯やった』

「……そりゃぁ」
257: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火) 23:05:29 ID:F68nI5NF(8/15)調 AAS
 あのガンメンモドキの心ない言葉によって頭が沸騰した時、あの女を絞め殺してやろうかとは思ったのは確かだ。
 遠くから響いてくる女の声を聞きながら、ふう、と息を吐く。
 オーケー、落ち着いてきた。
 やっぱりケンカは熱いハートにクールな頭脳だ。

「なんだ、マトモな奴も、いるんじゃねえか」
『そして……な。今、一人で脅えてる子がいたら聞いて欲しいんよ。
 私が、そして同じような気持ちの人が絶対他にもおる! だから心配する必要なんてないんや!
 必ず助けたる、そんで皆一緒にココから脱出して、ロージェノムを捕まえるんや!』
 
 ガンメンモドキに、カマイタチのようなモノを放つ男、そしていきなり銃をぶっ放してきた女。
 誰も彼も、妙な奴ばかりだ。
 だから、こういう普通の言葉に、少しだけ安堵を覚えた。

『それと……そや、制服! 茶色い布地で胸の部分に黄色のプレートが付いてる制服を着ている人間を探してください。
 その人達は皆、私の仲間――五人……今は四人に減ってしもうたけど……四人とも、本当に信用出来る仲間です。
 名前は……すいません。今は……言えません。
 だけど、私はコレから北に向かうつもりです。
 例の制服を見かけたら声を掛けて下さい。多分、後は声で分かって貰えると思います。
 最後に……皆、絶対に諦めたりしたらあかんで!!』

「――――ちょっと、待て」

 この女、今、なに言った?
 茶色の布地に、黄色のプレートがついた服――ああ、そりゃ分かるさ。けれど、

『ごめんなさいね。
 今死ぬあなたに名乗る名前はないわ』

 だけどそれは、自分たちに銃をぶっ放してきた、あの女が着ていた服じゃないのか?

「……へっ、そういう事かよ」

 頭の中でピースが噛み合う。
 ――そうやって人を集めて、殺してるんだな、テメエらは。
 怯えてる奴は、きっとなにか支えを欲しがるだろう。そしてこの声は、その支えになり得るものだ。
 そうして現れた弱い誰かを、一人一人、殺して行ってるのだ、この声の主は。

「――んのやろう、ふざけやがって」

 ぎり、と拳を握りしめる。
 紅蓮の炎のような苛立ち。それと同時に、なるほどとも思えた。
 シモンだって、いきなり後ろから刺されりゃ、諦めないも糞もねぇよな――と。
 もし殺されたとしたら、この女が言ったみてぇな手で殺されたんじゃねぇのか? と! 
 
「誰だか知らねぇが、んな企み、ぶっ壊してやるよ!」
 
 剣を抜き放ち、天に突き付ける。
 それは宣誓するように、それは宣言するように。

「このカミナ様がなぁ!」
258: 2007/11/06(火) 23:06:18 ID:qK18NDHs(2/2)調 AAS

259: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火) 23:06:39 ID:F68nI5NF(9/15)調 AA×

260: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火) 23:07:55 ID:F68nI5NF(10/15)調 AAS
「ありがとうございました。僕たちは訓練に戻りますね」
「シャマル先生、ありがとうございましたー!」

 ええ、気をつけてね。そう言って手を振ろうとしたその時、なぜだか、奇妙な不安に囚われた。
 あのまま行かせていいのだろうか?
 このまま見送ってしまうと、世界が崩れてしまうような気がして、酷く恐かった。

「二人とも――!」

 待って、と叫ぼうとした、その瞬間。世界は水面のようにゆらめき、溶けて行く。
 それは夢の終り。現実への回帰。
 幸せだった夢を潰え、暗く澱んだ現在に意識は戻る。そう、否応なしに。

 目を覚ますと、自分はゴーカートの中で寝転んでいた。
 なぜだか肌寒い。寝ぼけた頭で外を見ると、ここが倉庫のような場所である事が分かった。
 ……えっと、私……。
 
「気づいたか?」

 不意に、見知らぬ男の声を聞いた。
 そちらに視線を向けると、歯がサメのようになっている奇妙な男がいた。
 どこの世界の住人だろうか? 少なくともミッドチルダでも地球でもないと思うのだが。
 ああ、しかし肌寒い。自分が着ている制服は、こんなにも風通しが良かっただろうか?
 そう思いながら視線を自分の体に落とし――

「……え?」

 固まった。
 自身の瞳には、やはり自身の処女雪の如く白い肌が映っていた。
 その肌を覆うのはレースの上下だ。豊満な双丘を覆うそれは花の模様があしらわれ、肉付きのよい尻を覆う白い布地は、内部から圧迫されぴっちりとしている。
 ――数瞬の沈黙。
 あー、今日のわたしってなんかすごく薄着ねー、とぼやけた頭が思考するが、すぐさま「んなわけねぇだろ」という正常な思考が押し寄せてくる。
 下着姿の自分、目の前の男、暗い倉庫。
 ――これらから導き出される結論は一体?
 
「き、きゃあああ!?」

 思わず悲鳴を上げて後ずさる。だが、ゴーカート内部でそうそう動けるはずもなく、すぐさま壁にぶち当たる。
 性的な危機。それと同時に、ここが殺し合いの場だという事をようやく思い出した。
 そう、殺し合いの場だ。法などありはせず、無法が法となるこの状態で、男と半裸の女。導き出される結論など一つしかない!
 
「怯える必要はない、少々確かめていただけだ」

 確かめるってなにを!? とは思ったが、とりあえず今、ここで襲う気がない事は伝わった。
 慌てて近くにあったマントで体を包みながら、問う。
261: 2007/11/06(火) 23:08:16 ID:4s8DebEP(8/9)調 AAS
 
262: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火) 23:09:06 ID:F68nI5NF(11/15)調 AAS
「あの、それはどういう……?」
「隠す必要はない」
 
 いや、普通に隠すわよ。
 マントの端をギュッ、と握りながら、内心で怒りの言葉を呟く。
 だが、この男が言った言葉は、シャマルにとって想定外のものだった。

「貴様、ニンゲンではないな?」
「――ッ!?」

 心臓を鷲掴みにされたような、そんな感覚。
 ぞくり、と寒気が這うように体を犯す。

(……この人)

 なぜ、それが分かるのか。
 確かに、自分は闇の書から生み出された騎士だ。厳密には人間とは言えない。
 けれど、最近は体の変化もあり、人間に近くなっているというのに、この男は当たり前の事実を言うように人間ではないと口にした。

「そう不思議な事でもない。俺は獣人の中で鼻が聞く方ではないが、それでもニンゲンとそれ以外の臭いくらい、嗅ぎ分けられる。
 だから、分からんのだ」
 
 男が近づき、マントを引っぺがす。きゃっ、という小さな悲鳴を無視して、頭、背中、腕、臀部――それらを、確かめるように撫で回す。
 男女間でのそういった経験のなかったシャマルにとって、それは顔から火が出るほどに恥ずかしい事だったが、ふと、気づく。
 触り方に、嫌らしさがないのだ。なんというか、純粋に確かめようとしている、そんな触り方だ。現に、胸や秘所には一切手をつけていない。

「耳やツノもなければ、翼もない。尻尾もない上に、そして体毛も薄い。……まるでハダカザルそのものだ。
 だというのに、臭いは微妙に違う。獣人には見えんが、かといってニンゲンとも思えん。
 答えろ、女。――お前は一体なんなんだ? 
 ニンゲンのように穴倉から生まれた存在なのか、それとも、螺旋王に生み出された存在なのか?」
(螺旋――王?)

 その言葉に、意識が覚醒しきる。
 螺旋王ロージェノム。自分たちを集めて、殺し合いを強要した張本人。 
 なぜ、その名前が出てくる?
 いや、それよりも。今は状況把握に努めるべきだ。
 この男、殺し合いをしたくないからシャマルを生かしているといった感じでは断じてない。
 これでも、昔はベルカの騎士として戦場を駆っていたのだ。危険な相手とそうでない相手の区別はつく。
 下手な回答をしようものなら、すぐさま殺されてしまうだろう。
 さあ――考えろ。どうやってこの場を乗り切る?

(確かこの人、言ったわよね。人間のように穴倉から生まれた存在か、螺旋王によって生み出された存在か、って。
 それに、獣人って)

 恐らく、獣のような部位を持つ人間が獣人なのだろう。そして、話の流れからして、獣人は螺旋王から生み出された存在。
 つまりは、彼の言う獣人とは、シャマルの主の親友であるフェイト・T・ハラオウンのような存在、なのだろうか? 
 そして、人間は穴倉から生まれた存在だと言う――なら、獣人が地上で生まれた存在なのか。
 ――思考は加速し、頭脳の全細胞は情報処理に当てられる。
 幸い、自分は八神はやてと居た。部隊を作る時、時空管理局の上官との腹の探りあいも何度となく見てきた。
 だから大丈夫。きっと上手くいく。
263: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火) 23:10:15 ID:F68nI5NF(12/15)調 AAS
「女、なにを黙っている」
「……こんな状況で言うのもなんだけど、名前を聞く時は自分から名乗るのが礼儀じゃないかしら?」

 これは、一種の賭けだ。もしこれで逆上した襲い掛かってくれば、武器を持たぬ自分などすぐさま殺されてしまう。
 だが、今の情報では足りない。この男を騙しきるには、情報が足りないのだ。
 じっ、と男の顔を見る。
 彼は「ふむ」と、それもそうだと言うように頷いた。

「ふむ。それは失礼をした。――俺の名はヴィラル。人間掃討軍極東方面部隊長、ヴィラルだ」
「人間掃討軍……」

 それは、文字通り人間を掃討――即ち、殺す部隊なのだろう。
 という事は、螺旋王が生まれた世界では、獣人が覇権を握っているという事か?
 先ほど彼が言ったではないか、人は穴倉から生まれた存在だと。そして、地上には獣人が住まい、人間を狩る部隊まで存在している。
 つまり――螺旋王が生まれた世界では、人間は霊長類と呼ばれるような存在ではなく、言うなればゴキブリのような存在なのではなかろうか?
 台所に出て黒い悪魔たるそれをスリッパで叩くのと同様に、その世界では地上に現れた人間を人間掃討軍と呼ばれる存在が叩き潰している。
 なるほど――だから、こんな微妙な表情をしているのか。
 同類である獣人なのか、それとも汚らわしい人間なのか、判断に困ったからなのか。
 なら――

「ヴィラルさんですね。私は――私はシャマル。機動六課と呼ばれる、隠密部隊の一員です」

     ◆     ◆     ◆

「隠密部隊、キドウロッカ、だと?」
「ええ」

 知らぬ部隊だ。それに、隠密? 
 人間相手に、なぜそのような事が必要なのか。
 それに、

「キドウロッカについては、今は保留しておこう。貴様はまだ、獣人なのか人間なのか、答えてはいないのだからな」
 
 そう、それが一番の問題だった。
 人間の間にも黒の兄弟や、その他、有名ではないもののレジスタンス組織はいくつか存在している。リットナーと呼ばれる村の人間どももそうだ。
 そう言うと、シャマルと名乗った女はたおやかな笑みを浮かべ、答えた。

「私は人間型の獣人なの」

 ――ニンゲン型の、獣人?
 その言葉は、酷く矛盾しているように思えた。
 だが、シャマルは気にした風もなく、言葉を連ねる。

「ヴィラルさんは、地上に現れた人間を掃討する時、どうしてる?」
「なにを当たり前の事を――ダイガンザン、または他の戦艦から射出される」
「ええ――それは、当たり前の事よね」

 なにか噛み締めるように頷くと、シャマルは「だけど」と前置きし、
264: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火) 23:11:25 ID:F68nI5NF(13/15)調 AAS
「どうして人間が地上に出ている事に気づけるのか、それを考えた事はない?」
「……基本的には、末端の獣人がガンメンを駆り、地上を探索する。その時に見つけた集落に攻撃をしかけ、
 末端の獣人ではどうしようもなくなれば、俺や螺旋王四天王が赴き、破砕する。
 ……考える必要などあるのか?」
「……だけど、それで分かるのは地上だけでしょう? でもね、私たち機動六課はね、穴倉にいる段階で人間たちを見張るの。
 不穏な動きがあれば、すぐさま手近な戦艦に連絡を取って……その、ガンメンを射出してもらう。
 ……まあ、私たちはあくまで試作部隊だから、有名じゃないんだけどね。知らないのも無理はないかもしれないわ。
 本格的な任務が与えられたのは、今回が初めてだもの」

 本格的な任務? と小さくもらすと、シャマルは「ええ」と短く答えた。

「私たちは、螺旋遺伝子の実験を監視し、結果を螺旋王に報告するために、この場所に送り込まれた、いわばジョーカーみたいな存在なの。
 ……獣人だから、もしかして貴方も?」
「……ああ」

 そこまで聞いてようやく納得した。
 そうだ。自分はここに来る前に、螺旋王になにをされた?

 ――――人間に近くなる改造を、施されたのではなかったか?
 
 それが出来るのだ。このように人間に等しい姿の獣人を作る事もまた、不可能ではないはずだ。
 
「理解した。それで、そのキドウロッカから参加した者は貴様だけか?」
「いいえ。あと五人ほどいるわ」

 そうか、と。ここに至ってヴィラルは初めて名簿を開いた。
 人間を殺し尽くすつもりだったので、見る必要性を感じていなかったのだ。
 ざっと目を通し、カミナの名を苛立ちの眼で見やり――

「……なんだと」
 
 そこにある、二アという名に度肝を抜かれた。
 二アという名は知っている。知らぬはずがない。自身の主たる螺旋王の愛娘ではないか。
 それが、なぜこのような場所にあるのか?
 同名なだけかか、それとも――螺旋王自ら、ここに放り込んだのか。
 
「あの、他の人の名前を言いたいんだけど、いいかしら?」
「……ああ、頼む」

 左手で顔を覆いながら、頭を冷やせと強く思う。
 螺旋王には螺旋王の考えがあるはずだ。自分はただ、己の判断で動けばいい。

「八神はやて、スバル・ナカジマ、キャロ・ル・ルシエ、エリオ・モンディアル――この五人が、機動六課のメンバーよ」
「変った名だな……む、キャロ――?」
265: 2007/11/06(火) 23:11:27 ID:4s8DebEP(9/9)調 AAS
 
266: 2007/11/06(火) 23:13:04 ID:byYybBuu(1/2)調 AAS
 
267: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火) 23:13:05 ID:F68nI5NF(14/15)調 AAS
 名簿に印をつけつつ、ふと感じた違和感に首を傾げる。
 その名を、どこかで聞いたような――ああ、そうだ。

「シャマル、そのキャロという奴は既に脱落している」
「――――え?」

 愕然と、呼吸も筋肉の動きも生命の瞬きすらも氷結してしまったかのように、シャマルの動きは止まる。
 そんな、と小さく漏らす彼女の姿は酷く弱々しく見えた。

(糞、人間どもが――!)

 ぎり、と歯を食いしばる。
 本来、ニンゲンとは獣人に狩られるべき存在なのだ。間違ってもその逆はありえない。
 その逆を行ったニンゲンは許せない。そして――同胞に悲しみを与える存在もまた、許せなかった。

     ◆     ◆     ◆

 キャロが死んだ。
 その言葉は短剣となり、シャマルの胸元に深々と突き刺さっていた。

「そんな――」

 間に合わなかった。
 こんな事にならないようにするために、自分は修羅の道に入ったというのに。
 瞳を閉じれば、礼儀正しい幼い少女の姿がある。
 竜と戯れ、そして時には凛とした面持ちで任務に挑む彼女。
 それが、永遠に失われてしまったという事実が、酷く悲しかった。
 そう、永遠に、だ。
 螺旋王が、優勝した者の願いを叶えてくれると言ってはいたが――彼女にはそれが信じられなかった。
 だって、それならフェイト・T・ハラオウンという少女はこの世に生を受けなかったはずだ。
 プレシア・テスタロッサは、間違いなく天才だったはずだ。少なくとも、プロジェクト・フェイトを完成させる程度には。
 その彼女が出来なかった事を、あの螺旋王という男が出来るとは、とても思えない。
 だから、キャロ・ル・ルシエという少女は二度と戻ってはこない――

「嘆くな」

 ふと、ヴィラルが低い声で言った。

「同胞が死んだ事を悲しむのは分かる。だが、この場に来た時点で、その可能性はあったはずだ」

 違う。私たちはそんな可能性なんて知りえなかった。
 けど、それを言ってはいけない。
 ここでそんな事を言えば、せっかく首の皮一枚で繋がった命が不意になる。

「そんな暇があれば、一人でも多くの人間を狩るべきだ。そうだろう、キドウロッカのシャマル」
「……ええ、そうね」

 そう……まだ自分の主は、八神はやては生きているのだ。
 ここで挫けてはいけない。ここで立ち止まって、主が死んでしまったら、悔やんでも悔やみきれない。
268: たった一つの強がり抱いて ◆oRFbZD5WiQ 2007/11/06(火) 23:14:23 ID:F68nI5NF(15/15)調 AAS
「……あら?」

 ふと、ヴィラルの腹部に視線を向ける。
 そこには醜い赤色が張り付いていた。応急処置はしてあるようだが、既に開いてしまっている。

「ああ、これか? 少々不覚を取ってな」
「駄目よこれじゃ……ちょっと、失礼するわね」

 そう言うと、ヴィラルの上着を脱がしにかかる。
 そうすると、少しだけ不安が薄らいだ。
 やはり、普段と同じ事を行うと、精神が落ち着くものなんなのね、と思う。
 
「な――なにを!」
「動いちゃ駄目、大人しくしてね」

 上着を脱がす。傷口は――やはり開ききっている。今、こうやって座っているから血液自体は止まっているが、
このまま動けば血液が多量に流れ出す事だろう。
 シャマルはまず、デイバックからペットボトルを取り出し、傷口を軽く濯いだ。

「ぐ――」
「はいはい、ちょっと我慢してね」

 傷口の汚れを落すと、今度は自分の体を覆うマントを破る。そして、それを傷口に巻いた。
 本当はもっと綺麗な布が欲しかったのだが、今は贅沢を言っていられる状態ではない。
 ぎゅっ、と縛り血液を押し止めると、奪い取った上着をヴィラルに返す。もっとも、酷く濡れたそれを着る気はないようだが。

「……感謝する」
「ううん、礼はいらないわ」

 だって、これは自分が落ち着くためにやったようなもので、普段のように他人を心配して行ったものではないのだから。
 だが、ヴィラルは「いや」と頭を振って、言った。

「王都の戦士は礼儀を重んじる……シャマル、この礼は必ずすると約束しよう」

 それだけ言うと、ヴィラルはそのまま横になった。

「少しだけ眠る。もし誰かが来たら起こしてくれ」

 それだけ告げると、すぐさま寝息を立て始めた。
 その、ふとすれば自分勝手な行動だが、シャマルにはそれに安らぎを感じていた。
 まるで獣のような凶暴な顔。だが、幸せそうな顔で丸くなる姿は、見ていて微笑ましくなる。

「ふふっ」

 そうして、シャマルは何時間かぶりに笑った。仮初めの笑みでもなく、自虐の笑みでもなく、心の底からの笑みを。
269: 2007/11/06(火) 23:16:20 ID:vH00WhMF(3/3)調 AAS
 
270: 2007/11/06(火) 23:17:49 ID:byYybBuu(2/2)調 AAS
 
271: たった一つの強がり抱いて  (代理投下) 2007/11/06(火) 23:21:27 ID:uIlNDMWb(2/2)調 AAS
【G-3/空港/1日目/午前】

【チーム:Joker&Fake Joker】

【ヴィラル@天元突破グレンラガン】
[状態]:睡眠、脇腹に刺し傷(シャマルによって再度応急処置)、極度の体力消耗、衣服が濡れているが、上着は脱いでいる。
[装備]:ワルサーWA2000(3/6)@現実
    モネヴ・ザ・ゲイルのバルカン砲@トライガン(あと9秒連射可能、ロケット弾は一発)を搭載したゴーカート
[道具]:支給品一式、バルサミコ酢の大瓶@らき☆すた、ワルサーWA2000用箱型弾倉x4、ランダムアイテム1(重いもの)
[思考]
基本:ゲームに乗る。人間は全員殺す。
1:……ZZZ
2:シャマルに礼を尽くす。
2:蛇女(静留)に味わわされた屈辱を晴らしたい。
3:『クルクル』と『ケンモチ』との決着をつける。
4::螺旋王の目的とは? 
5:あのコンテナはなんなんだ?
[備考]
螺旋王による改造を受けています。
@睡眠による細胞の蘇生システムは、場所と時間を問わない。
A身体能力はそのままだが、文字が読めるようにしてもらったので、名簿や地図の確認は可能。
…人間と同じように活動できるようになったのに、それが『人間に近づくこと』とは気づいていない。
 単純に『実験のために、獣人の欠点を克服させてくれた』としか認識してない。
B二アが参加している事に気づきました。
C機動六課メンバーをニンゲン型の獣人だと認識しました。

【シャマル@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:疑心暗鬼 低 魔力消費 小 下着にマントを羽織った姿だが、近くに機動六課の制服がある。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(その他、ランダム支給品が0〜2、本人・カミナ・ビクトリーム確認済) 、
     ジェレミアの支給品一式(その他、ランダム支給品が0〜2、シャマル・カミナ・ビクトリーム確認済)
[思考・状況]  
1:八神はやてを守る
2:六課メンバー以外、全て殺すが、ヴィラルとはしばし行動を共にするつもり
3:けれど、なるべく苦しめたくない
※宝具という名称を知りません
※ゲイボルク@Fate/stay nightは舞台のループを認識していないようです

※格納庫の奥で音が遮断された為か、二人とも八神はやての声を聞いていません。
272: 2007/11/06(火) 23:54:15 ID:3gmrviyr(1/7)調 AAS
1328 :ツチダマな名無しさん:2007/10/29(月) 20:09:41 ID:M3cFIGH60
>>1327
参戦作品以外から支給品を出すのはNG、というのも問題として挙げられるかね
1329 :ツチダマな名無しさん:2007/10/29(月) 20:10:06 ID:1987fAxgO
>>1327氏の言う項以外にも
・前回のSSで放送が流れたはずなのに、今回の作品でまた放送が流れているという矛盾
・参加作品外からの支給品が登場している
という致命的な点があるので、この作品は修正が必要だと思います。
1330 :ツチダマな名無しさん:2007/10/30(火) 00:37:36 ID:xLX8ATogO
>>参戦作品外の支給品
これだけでアウトだろ
現実にあるようなものならまだしもタケコプターでは話にならん
万が一この話が通ってしまったら、正に悪しき前例になるぞ
1331 :ツチダマな名無しさん:2007/10/30(火) 13:36:36 ID:S8ROiDG60
上で騒ぎになっていたクロ死亡の作品をぱっと見て
・大佐は爆発させる物質があっても、火種ないと爆発はできないんじゃ?
原作でもラスト戦で水を変化させても、ライターがなければ爆発させれなかったような。
・なんで大佐、生きているの?
サイボーグのクロが粉々になる爆発を近距離で連発したに関わらず、
明らかに致命傷を通り越している大佐が爆発で死なず、無傷なクロが死亡する不思議。
悪運だけじゃ説明できないような。
・DG細胞っていいの?
感染するDG細胞は、下手すると会場がゾンビだらけの状態になるような。
というかこれは死者蘇生?
1332 :ツチダマな名無しさん:2007/10/30(火) 14:01:13 ID:g4Yot/Ac0
>>1331
>・大佐は爆発させる物質があっても、火種ないと爆発はできないんじゃ?
  クロが発砲し、その時の火花が誘爆。当然、クロが爆発の中心に。
>・なんで大佐、生きているの?
  クロと大佐はかなり離れていた。よって爆風に巻き込まれていない。
  さらに、クロの耐久も制限によって強めに劣化しており(ロワでは、
  その性質上回復系や防御系の能力がキツく制限される傾向にある)、
  さらに不意打ち状態だったので防御もできずまともに食らった。
>・DG細胞っていいの?
  感染力をある程度制限する、という方向で議論されている。
ってか、終わったことを蒸し返さないでくれ。
1333 :ツチダマな名無しさん:2007/10/30(火) 14:09:57 ID:S8ROiDG60
ああ、よく見たらクロの撃った拳銃が火種か。
大佐は爆発に巻き込まれてないよと言っているけれど、
クアさんが巻き込まれていると明言しているような。
クロも突撃しながら撃っていたし、やっぱり爆発に巻きこまれていないというのは変かなーと。
個人的には、(爆発の中心なのに)破損ですんでいるナイブズの銃も気になったり。
マイクロプラントって爆発したらどうなるんだろうか。
大規模なエネルギーが留まっているだろうし、割と洒落にならんような。
273: 2007/11/06(火) 23:54:39 ID:3gmrviyr(2/7)調 AAS
1334 :ツチダマな名無しさん:2007/10/30(火) 14:50:20 ID:g4Yot/Ac0
>>1333
 ここは修正議論スレ。クロの件で問題になった作品はもう議論が終わり、
 wikiにも収録されている。
 議論の俎上に乗せたいのならもう遅すぎる。それでもまだ何か言いたいなら
 毒吐きに行ってくれ。
1335 :ツチダマな名無しさん:2007/10/30(火) 14:51:26 ID:hITfNffM0
問題の過去ログをご覧いただいたのであれば、修正要求はしない方向で
解決したこともご存知のはずです。
またルール上の協議期間も既に終了しています。
1336 :ツチダマな名無しさん:2007/10/30(火) 14:54:06 ID:Bc1.lXFI0
一応フォローしておこう。
開幕前の議論にも乗らなかった、いち支給品の爆発でフィールド全域が消滅、なんてことには、ロワの展開上なり得ない。
もし爆発が起こったとしても、制限が課されて小規模なモノになるだろう、ということを前提に……
・誘爆して爆発がより大きなものに→クロ死亡がより確実化
・破損するも誘爆しなかった
・そもそも誘爆する類の物ではない
・螺旋王の用意したレプリカである
・その他
これを決められるのは、次以降をリレーする人。そして、別に決めなきゃならない、とも限らない。
1337 :ツチダマな名無しさん:2007/10/30(火) 14:55:47 ID:3lT8jSPA0
色々、思うこともあるがそういるルールなら仕方ない。
横から失礼しました。
1338 :ツチダマな名無しさん:2007/10/30(火) 15:22:53 ID:3lT8jSPA0
>>1336
クロ死亡というか二人共死亡のほうがよくね?
という方なんですけどね、どちらかというと。
まあ、この話はこれで終わりということで。
1339 :ツチダマな名無しさん:2007/10/30(火) 21:05:13 ID:sMp9cBTQ0
【勝利の栄光を ◆ozOtJW9BFA】
少々気になる点があったので、指摘・修正要求をします。
1.D-5の中心近くから1分でその外まで走りきった。
 400-500mを一分で駆け抜けるには金メダルクラスの脚力が必要です。
 ムスカ大佐は常人なので、もう少し端に近い位置にいたということにしてはどうでしょう。
2.”東洋人は武器を持っておらず、青い男は………………――勝った”の部分。
 ムスカは以前、戴宗に目にも留まらぬ速さの攻撃で敗れています。
 なので、ここではもう少し彼に慎重な思考をさせた方がいいのではないでしょうか。
3.”彼は第五次聖杯戦争のサーヴァント中で瞬間的な故にダブルキャノンは避けられて当然だった”の部分。
 「……瞬間的な故に……」の部分のつながりがおかしいと思います。
 何か間から抜けているのではないでしょうか?
……以上です。
274: 2007/11/06(火) 23:55:07 ID:3gmrviyr(3/7)調 AAS
1340 : ◆ozOtJW9BFA:2007/10/30(火) 21:36:14 ID:KsDcuShQ0
1の部分
こちらとしてはD-5の中心より少し右側よりはD-6までの距離は350m程を想定していました。
2の部分
ムスカは不屈の心は、この胸にの時点で精神・肉体共に激しく疲労しており、その状態から1分の全力疾走でさらに疲労し、判断力が低下してるとしてこうしました。
また、彼は真っ先に戴宗を狙わず、ランサーを狙い、殺すことで、ランサーの仲間であろう戴宗の隙を作り、そこを攻撃する考えであったということにしました
3の部分
切れてますね、続きはこうなっております 『』は追加部分
さらに彼は第五次聖杯戦争のサーヴァント中で瞬間的な『速度では最高クラスを誇る。 』
1341 :ツチダマな名無しさん:2007/10/30(火) 21:37:27 ID:Bc1.lXFI0
便乗指摘。
ランサーが戴宗を犯人ではない、と判断する根拠が全く描写されておりませんが、
流石にそれは不味いのではないでしょうか。
密室内で、見ず知らずの人間が、仲間の死体と共に居て、
しかもその手には、実際に仲間を殺した凶器を手にしていた、と言う状況です。
普通の人間なら、確実に戴宗が犯人だと誤認する状況だと思います。
それを覆すのであれば、それなりの描写は不可欠なのではないでしょうか?
1342 : ◆ozOtJW9BFA:2007/10/30(火) 21:40:57 ID:KsDcuShQ0
その点については
「…テメェもオレと同じ口だろ、坊主の治療のための氷を持ってくるために坊主を一人にして、死なせちまった」
「それに、あんだけでかい声で叫んでたらさすがに聞こえてくるさ」
と、殺しに来たのなら戴宗が氷をもっている必要が無い、そしてエリオの遺体に直面した時の戴宗の叫びを聞いているとしてます。
1343 :ツチダマな名無しさん:2007/10/30(火) 21:44:12 ID:rk/X5Uas0
>>1340
1はともかく、2の部分は作中の描写ではそれを読み取る事は難しいと思います。
地の文にその説明を追加した方がいいのではないでしょうか?
1344 :ツチダマな名無しさん:2007/10/30(火) 21:45:00 ID:Bc1.lXFI0
つまり、戴宗が真犯人で無い、とランサーが判断した根拠は
・戴宗が氷を持っていた
・前SSにおいて、戴宗の「ちくしょうがあああああああ!!」 という絶叫を聞いた
この2点で宜しいでしょうか?
1345 : ◆ozOtJW9BFA:2007/10/30(火) 21:45:25 ID:KsDcuShQ0
了解しました、加筆修正します
1346 : ◆ozOtJW9BFA:2007/10/30(火) 21:47:35 ID:KsDcuShQ0
加えて、 男は部屋の中を見回している の部分で
ランサーと名乗った男は足元にあった血痕を見ながら言った、自分のではない、ランサーのでもエリオのでもない。
おそらくはエリオと争った人物の物だろう。
の病室を離れるまではなかった病室から病室の外に続く血痕を見つけていると
275: 2007/11/06(火) 23:55:29 ID:3gmrviyr(4/7)調 AAS
1347 :やってられない名無しさん:2007/10/30(火) 21:54:27 ID:KsDcuShQ0
ふむ・・・血痕か、それは納得するな
もし俺が犯人の立場ならそんなばれる危険犯してまでトリックまがいなことしねえよ
1348 : ◆ozOtJW9BFA:2007/10/30(火) 21:55:08 ID:KsDcuShQ0
すんません、トイレ言ってる間に弟が書き込みをしましたorz
1349 :ツチダマな名無しさん:2007/10/30(火) 22:16:30 ID:EIVpTrBc0
わろたwww
1350 :ツチダマな名無しさん:2007/10/30(火) 22:30:41 ID:Bc1.lXFI0
>>1346
了解しました。
ただ、要はその部分がランサーの判断の肝である訳ですから、
もう少しその判断の根拠等についても描写しておいた方がよろしいかと思います。
修正お疲れ様です。
1351 : ◆/D6q5JErMM:2007/10/30(火) 22:41:59 ID:KsDcuShQ0
はい、修正版は仮投下スレに投下しておきます。
明日か今日中には投下しておきますので、意見を出していただきありがとうございます。勉強になりました
1352 :ツチダマな名無しさん:2007/10/31(水) 03:21:29 ID:/2Q3D30Y0
>>飛びまわる甲冑、つっぱしる四人 ◆Y7ZwBjIwBM
結局これについてはどうなったんだ?
致命的問題点多数なためNGもしくは修正確定と思われるが何の音沙汰もないので不安になってきた。
1353 :ツチダマな名無しさん:2007/10/31(水) 04:04:01 ID:NaR6eQlI0
何の音沙汰も無いのでNG濃厚
それだけの話さ
1354 :ツチダマな名無しさん:2007/10/31(水) 06:33:02 ID:Y6An17tM0
いやNG濃厚なのは当然として早いとこ結論を決めないと書き手が困るんでない?
結論がはっきりしてないから書きたくても書けんかもしれんし、あれがOKなのかと勘違いしてしまう人もいるかも
こういうのはキッチリ決めないと。きっちり
1355 :ツチダマな名無しさん:2007/10/31(水) 07:55:56 ID:NaR6eQlI0
投下が月曜で、応答期限が2日間。
だから今日の夜でNG決定。応答無しは厳罰対象だから……
ということでキッチリしてね?
1356 :ギガゾンビ様の足は・・・・・・:ギガゾンビ様の足は・・・・・・
ギガゾンビ様の足は・・・・・・
1357 :ツチダマな名無しさん:2007/10/31(水) 18:57:38 ID:egAKvK.60
>>1354は木津千里だったのかww
276: 2007/11/06(火) 23:55:51 ID:3gmrviyr(5/7)調 AAS
1358 : ◆DNdG5hiFT6:2007/11/02(金) 22:47:03 ID:yawJdcBY0
感想スレでも書いているのですがこちらでも。
スカーの錬金術については、アニメでアームストロングとの対決の際、
人間を狙ったにもかかわらず壁破壊をしている⇒アニメ版では多少影響あり? 
と解釈してしまったのですが、
よく考えたら“エドの腕を破壊できない”っていう重要な展開があったんですよね……
それで修正案ですが
案1、VSアームストロングの話を”多少影響が出る”と判断し、
   建物の破壊⇒壁の破壊にランクダウン
案2、VSアームストロングの話を”演出間違い”と判断し、
   話の方向を“対象外のものにも若干影響”⇒“対象外のものを破壊できない”に修正する。
とりあえずどちらの方向でも修正できるように準備しておきます。
1359 :ツチダマな名無しさん:2007/11/02(金) 23:51:01 ID:Fe1dlIOo0
ところで、なんだか曖昧な状況なのでこちらも発議。
◆kILBiSHoqM氏の【ミー君怒りの鉄拳】について。
氏の発言が不明瞭なので、現状が掴めません。態度を決めて頂きたいです。
1.仮投下の物を完成品として投下扱いにする
2.完成できなかったものとして、破棄する
3.このまま「予約超過」な状態とし、完成次第投下するが、他に予約が入る場合はそちらを優先。恨みっこ無し。
このいずれかになると思うのですが……
正直、現状では修正議論を発議して良いのかどうかすら判断付けかねます。
一言コメントお願いします。
1360 :ツチダマな名無しさん:2007/11/03(土) 00:09:10 ID:quMsRAT60
>>1385
建物じゃなくて街路樹なんかの生体にするのは?
いや、組成違うからちょっと無理があるかな?
あるいはわざと壊したってのもありかも、
1361 : ◆kILBiSHoqM:2007/11/03(土) 00:21:13 ID:ejerZpAgO
1の仮投下の物を完成品で投下でお願いします。
言動が不明瞭で混乱を招いた事を深くお詫びします
1362 :ツチダマな名無しさん:2007/11/03(土) 00:38:38 ID:mMGo2AYQ0
>>1361
了解です。コメントしていただいてありがとうございます。
1363 :ツチダマな名無しさん:2007/11/03(土) 13:00:56 ID:Qh5wSz3A0
>>1358
ノリで修正せずに、あのままでは駄目なんだろうか?
駄目なら案一でいいと思う。
漫画でもオートメイルの左腕が弾かれたりしているし。
1364 :ツチダマな名無しさん:2007/11/03(土) 13:03:53 ID:Qh5wSz3A0
左じゃない右だった。
ほら、建築物の素材にタンパク質やら何やらが混ざっていたりするという
とんでも屁理屈とか。
277: 2007/11/06(火) 23:56:28 ID:3gmrviyr(6/7)調 AAS
1365 :ツチダマな名無しさん:2007/11/03(土) 13:53:07 ID:7ACKclUsO
錬金術でなく馬鹿力で破壊したってのは?
1366 :ツチダマな名無しさん:2007/11/03(土) 16:50:28 ID:0y75.Fhg0
スカーの錬金術は普通と違って
まず対象に触れ、対象を理解、分解の手順で行われるものだから
つまりあれは馬鹿力でOKじゃないか?
1367 :ツチダマな名無しさん:2007/11/03(土) 16:52:18 ID:guqERRW60
分解失敗でも練成反応の火花出てたっけ?
1368 :ツチダマな名無しさん:2007/11/03(土) 17:08:59 ID:0y75.Fhg0
練成反応は出てたはず
スカーは他の錬金術師と違って真理を見たり勉強して得たんじゃなくて兄の腕を移植したことで分解をできるようになったから
触れて理解、そして分解についてはマンガでもエドが指摘してスカーの分解を防ぎきってたなぁ
1369 : ◆DNdG5hiFT6:2007/11/03(土) 19:16:28 ID:egi.HUlQ0
皆さん御意見ありがとうございます。
意見を参考に色々考えたのですが>>1360で指摘されているように
わざと壁を壊したってのもありかなぁ、とか思っています。
(『馬鹿力で壁を砕いた』にするとスカーの
 “防御無効な一撃必殺”的な恐ろしさが薄れてしまうのではないか、
 とちょっと思っていたりしたので)
とりあえず近日中にその方向で修正部分を仮投下スレに落としてみるので
それを見て改めて判断していただくというのはどうでしょうか?
1370 :ツチダマな名無しさん:2007/11/03(土) 20:07:21 ID:Qh5wSz3A0
>>1369さん。
それでいいと思います。
1371 : ◆DNdG5hiFT6:2007/11/04(日) 05:14:01 ID:gi.F7pAw0
修正差分、投下いたしました。
また突っ込みどころがあればお願いします。
1372 :ツチダマな名無しさん:2007/11/04(日) 11:47:20 ID:h1PT.71g0
◆DNdG5hiFT6氏投下乙。
修正はうまくいっていたと思います。
ドモンとスカーの迫力あるバトルがよかったです。GJ.
1373 : ◆5VEHREaaO2:2007/11/05(月) 22:17:23 ID:7BZQnF1E0
感想で言われていた疑問ですけど、
服はぼろぼろでも体の皮膚での侵食を見えないようにすると考えました。
裸というわけでもありませんし、シャツという存在もあるので、
DG細胞が見えないように隠す役割もはたせると考えています。
また、はやての放送に関する出来事の間でも侵食は進みますので、死に掛けのロイならば
乗っ取られるぐらいに侵食してもおかしくないとも考えています。
また、視覚障害でアル達のことを認識できていない可能性も自分の中では存在しています。
その辺りはあえてぼかしました。
1374 :ツチダマな名無しさん:2007/11/05(月) 22:43:39 ID:dFyrBe7A0
【出会いと別れ  ◆5VEHREaaO2】
にて少々気になる点がありましたので指摘、修正要求をします。
・再生によってロイの腹を埋めたDG細胞に誰も気づかなかったのか?
原作の描写などを見る限り、欠損部分などはDG細胞の銀色で埋められると思われます。
服で見えなかったという可能性も、肋骨や内臓が欠損するほどの怪我で服が完全に無事ということはまずありえません。
発見された時点では侵蝕は進んでおらず、腹のケガに気づかなかった…という可能性も、流石に派手にえぐれて内臓が焦がされているような怪我に気づかないことはないかと。
またDG細胞に侵蝕された場合は治療可能なほど軽度でも身体の表面に転移したDG細胞が見られたりもします。
大まかな点では以上です。
1375 :ツチダマな名無しさん:2007/11/05(月) 22:44:27 ID:P4s9T7Es0
>負傷していたことを知るよしがなかったとはいえ、
>ぼろぼろとなったロイの体からは血は全く流れ出ていなかったということに。
ヒューズは「ひとつ屋根の下」で、血痕、付近に穿たれた鉄片、落ちていた制服のボタンから
ロイが大きな切り傷によって大量失血していると推測しています。
そして、実際にロイはランサーの攻撃により腹部を切り裂かれ、制服は血で汚れていると後の作品でも表されています。
その様な状態で、ヒューズがロイの傷の具合をすぐに確認しなかったり、出血していないことを見逃すのは
不自然だと思うのですが?
278: 2007/11/06(火) 23:56:58 ID:3gmrviyr(7/7)調 AAS
はいうp
279: 2007/11/07(水) 00:42:52 ID:Sv8OM7JB(1)調 AA×


280: 貫けよ、その弾丸で  ◆DNdG5hiFT6 2007/11/07(水) 18:41:56 ID:c9fet4/E(1/15)調 AAS
「さて……どうしようか」

そう呟いた彼らの目の前にあるのは大きく二つに分かれた高速道路の分岐点。
片方は真直ぐ西に、もう一方は大きく曲がって南に続いている。
あの赤いマントの方のドモンの性格を考えるなら何も考えずに真直ぐ進む、というのがありえそうだ。
反対にドモンと名乗った少年のほうであれば人の多そうな下に行きそうな気がする。
なつきの方を見れば『どちらでもいいから早く決めろ』と言いたげに士郎の方を睨んでいる。
――何時の間に行き先を決めるのが自分の役割になったのだろう?
しかし事実何時までも悩んでいても仕方がないので、とりあえず西に進もうと提案しようとした――その時であった。
川向こうの――地図で言うショッピングモールあたりで建物が倒壊する音や銃声らしきものが聞こえてきたのは。
その音を聴いた瞬間、先程まで左右どちらにいくか悩んでいたはずの少年は踵を返して駆け出していた。

「!? 何処へ行く衛宮!」
「決まってる! あの場所へ行って、襲われている人を助ける!」
「な……!? 危険すぎる! 第一襲われている人間がいるとは限らん!
 この殺し合いに乗ったもの同士が戦っているだけかもしれないだろう!」
「だからって……放っておく訳にはいかないだろ!」

先程までの優柔不断さはなんだったのかと思える頑固ぶり。
しかもそれが見ず知らずの人間を助けるためだというのだからお人よしにも程がある。
なつきが止めるのも無視して、今まで来た道を逆走しようとする士郎。

「待て!」
「何だよ、止めるっていうんなら、ここで玖我とはお別れ――」
「一度下に下りた私が先導したほうが早いだろう……急ぐぞ」

――結局のところ、玖我なつきもお人好しと呼ばれる人種なのであった。
281: 2007/11/07(水) 18:42:10 ID:QF5w3cOZ(1/8)調 AAS
 
282: 貫けよ、その弾丸で  ◆DNdG5hiFT6 2007/11/07(水) 18:43:45 ID:c9fet4/E(2/15)調 AAS
****

そして数分後――丁度二人が高速道路を降りたとき、断続的に続いていた破壊音が鳴り止んだ。
それは戦いが終わった合図。つまりは自分たちが間に合わなかったと言う残酷な結果。
それでも士郎は走るのをやめない。
――傷ついて倒れている人がいるかもしれない。
――まだ、助けられるかもしれない。
たったそれだけの可能性で士郎の足は動く。
そしてそんな奴に付き合うと決めた以上、玖我なつきの脚も止まらない。
だから二人は一刻も早くショッピングモールに駆けつけるべく、最短ルート……
つまり、警察署の横から道に出て、後は道沿いに走るという単純なものを選択した。
だが、結果から見れば彼らはもう少し考えるべきだった。
ここは殺し合いが日常と化した世界だと言うことを。
黒衣の死神が道を歩いてやってくるという可能性を。

警察署の横を通り過ぎて道へ出ようとしたそのとき、士郎は久しく感じなかったその気配を感じた。
衛宮士郎はつい数ヶ月前まで濃密な殺し合いの中にいた。
だからまだ生々しいままに覚えている。背筋を凍らせるほどの純粋な殺気という物を。
それを感じ、本能的に首を向けた先にいたのは、黒く細長い影とその手に握られた“何か”。
それを見た衛宮士郎の取った行動は一つしかなかった。
――前に出ていた左手を伸ばし、なつきを突き飛ばす。
それと同時、先程までなつきの体があった場所――士郎の左肩を銃弾が貫いた。

「――ぐあッ!?」

なつきを突き飛ばしたままの不安定な体勢だったこともあり、士郎の体は銃弾の威力に吹き飛ばされる。
突き飛ばされて文句を言おうとしたなつきもその光景を目にして事態を把握する。

「このっ!」

なつきとてオーファン、そしてHiME同士の戦いを経験している身。
不安定な体勢を瞬時に建て直し、エレメントを召喚。黒い男に狙いをつける。
それは常人――否、普通の襲撃者であれば最善の方法であったはずだ。
その男、ニコラス・D・ウルフウッドが銃を求めていなければ。
283: 2007/11/07(水) 18:44:46 ID:QF5w3cOZ(2/8)調 AAS
 
284: 貫けよ、その弾丸で  ◆DNdG5hiFT6 2007/11/07(水) 18:45:42 ID:c9fet4/E(3/15)調 AAS
なつきの銃を目にしたウルフウッドはディパックに手を突っ込むとあるものを放り投げる。
宙に放り投げられた物体――それは先程口にしていたただの水入りペットボトルである。
だがこの緊迫した状況下で無意味な行動は疑念を抱かせる。

――何故ペットボトルを投げた?
――もしやあれは特殊な支給品ではないのか?
――爆発物か? それとも毒か? それとも自分の想像もつかない魔法の物体?

生まれた疑念は幾つもの思考を生み、その分だけ体には躊躇が現れる。
だがその躊躇こそがウルフウッドの狙い。
ぺットボトルが地面に落ち、なつきが事態を把握したときには時すでに遅し。
触れられたと思った次の瞬間には左腕を完全に極められ、捻り上げられていた。
ピクリとすら動けない――いや、それどころか体の何処を動かしても左腕に痛みが走る。
腕一本で完全に相手を無効化する技術。背後の男が荒事に慣れた存在であることの証拠だった。

「――さっきまで持っとった銃はどこや」

耳元で囁くと同時、腕を強めに捻り上げる。
ただそれだけで間接、骨格、及びそれに繋がる筋肉すべてが痛みを叫ぶ。
なつきの額に脂汗が浮かびあがり、

「言う……ものか……貴様などに……!」

なつきにだってわかる。
ここで痛みに負けて話してしまえば自分は用済み、その時点で自分は殺される。
いいだろう。我慢比べだ。隙を見せたその瞬間、エレメントを再召喚して銃弾を叩き込んでやる。
だがなつきは理解していなかった。自分の背後にいる男が最早修羅に堕ちているということに。

「こんなとこに呼び出される以上、ある程度肝は据わっとるっちゅう訳か。
 じゃあ――これはどうや?」
285: 2007/11/07(水) 18:46:57 ID:QF5w3cOZ(3/8)調 AAS
 
286: 貫けよ、その弾丸で  ◆DNdG5hiFT6 2007/11/07(水) 18:48:44 ID:c9fet4/E(4/15)調 AAS
ウルフウッドはそう言ってなつきの小指に手を伸ばす。
そして無造作に、まるで庭木の剪定を行うように逆方向に折り曲げた。

「え――」

なつきは一瞬自身の体に起きた異常を理解できなかった。
だが次の瞬間、指先から全身の神経に炎が燃え移るように激痛が全身を蹂躙し、陵辱する。
あまりの激痛に声が出ない。悲鳴は肺から押し出される意味の無い空気の塊に取って代わられた。

「……次は薬指がええか? それとも中指がええか?」

台詞だけ聞けばウルフウッドが加虐趣味の持ち主のようにも聞こえる。
だがそうではない。ウルフウッドはこれが最も効率的だからそうしているだけだ。
断続的に襲い掛かる激痛の中、なつきもそれを理解し、戦慄する。
自分の腕を捻り上げているこの男は、必要と判断すればこの男はどんな恐ろしい手段もとるに違いないと確信して。
言えば殺される。だが言わなければ更なる激痛にのた打ち回る羽目になる。
進むことも引くことも出来ないこの状況になつきが歯噛みしたその時、

「玖我を……放せぇっ!」

背後から接近した士郎が投影した白剣・干将を振るった。
だが左肩を怪我した状態で振るわれた一撃など歴戦の殺し屋には通じるはずもない。
ウルフウッドは器用に体を捌き、長い脚で士郎の脇腹を蹴り飛ばす。
その一撃だけで士郎の体はまるで紙の様に吹き飛ばされ、大地に打ち付けられる。

「衛宮!」

その光景を見たなつきの声に焦りが混じる。
それは先程までのなつきの声と何処か違う色を含んでいたからだ。
その様子を見てウルフウッドは確信する。
この二人は他人のために命を懸けれる種類の人間なのだと。
他人の痛みを自身のような痛みに感じる美徳を持った人間――それならば、痛めつけるよりも手っ取り早い方法がある。

「もう一度訊くわ……お前が持っとった銃はどこや。
 答えんのなら、こうするまでや」

そう言ってウルフウッドは倒れたままの士郎に向け、銃口を向ける。
287: 2007/11/07(水) 18:49:37 ID:QF5w3cOZ(4/8)調 AAS
 
288: 貫けよ、その弾丸で  ◆DNdG5hiFT6 2007/11/07(水) 18:50:41 ID:c9fet4/E(5/15)調 AAS
「……!」

彼の予想通り、捻った左手を通じて少女の焦る様子が伝わってきた。
間違いない。こいつらは自分より人のことを心配する“お人好し”どもだ。
この方法は手の中の少女のような人間に対して、やたらと痛めつけるよりよっぽど効率的に話を進めることが出来る。
しかし状況は自分の有利に運んでいるはずなのに苛立ちは増している。
それは腐った行動を取った自分に対してか、それとも――目の前で立ち上がろうとする少年に対してか。

「……答え……るな……玖我」

肩を撃ち抜かれ、腹に一撃を受け吹き飛ばされ、その全身すでにはボロボロだ。
それでも士郎は玖我のことを心配していた。
自分は撃たれても構わないから、自分の命を優先しろと。
どうせ言えば二人とも死ぬ。ならばお前は生き延びろとその目が語っていた。
だが皮肉にも、なつきは士郎のその姿を見て決心する。

「……一つだけ、条件がある」
「……何や? 言うだけ言うてみい」
「衛宮には手を出すな。それが話す条件だ」
「玖我!」

咎める様に名前を呼ぶ士郎。そんな彼だからこそなつきは救おうと思う。
少年が我が身を省みず少女を助けたいと思うほど、少女は身を犠牲にして少年を救おうとする。
――それはあまりにも残酷で、同時に何よりもやさしく美しい矛盾だった。

「……考えとくわ」

ウルフウッドから返ってくるのはどちらとも取れる返答。
だがなつきはこれ以上粘っても、これ以上の条件を引き出すことは出来ないだろうと確信する。
情けない話だが今はこの男を信用するしかあるまい。
そう考え、なつきは口を開く。
289: 貫けよ、その弾丸で  ◆DNdG5hiFT6 2007/11/07(水) 18:51:58 ID:c9fet4/E(6/15)調 AAS
「……私の銃は高次元物質化能力……特殊能力の類だ……
 だから私以外にはこの銃は使えない」

その言葉にウルフウッドはぼんやりと最初の会場での出来事を思い出す。
まるで安物の小説の様に変身して見せたあの男――
つまりこの会場にはああいうのが山ほどいて、今自分が腕を捻っている少女もその一人というわけか。
自分に扱えない銃など、意味も無ければ興味も無い。

「何やつまらん。もうええわ」

そう言ってなつきの拘束を解くウルフウッド。
その行動に二人は驚きを隠せない。
だが、見逃してくれるというのならそれを拒否する理由は無い。
なつきはありえない方向に曲がった指を押さえながらもボロボロの士郎の下へと歩き出そうとする。
だが――

「もうええから――逝きや」

パァンという乾いた音が響くと同時、なつきの胸から鮮血が飛び散った。
呆然とする士郎の目の前で、なつきの細い体はアスファルトの上に力なく倒れこむ。

「く……玖我ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

士郎は傷ついた体を無理やり立ち上がらせ、倒れ込むなつきの体を受け止めようとする。
だがそれを留めたのはカチャリという撃鉄を起こす音だった。
見上げた視線の先にいるのは無表情のままで銃口をこちらに向けるウルフウッドの姿。

「恨み言ならあの世で聞くさかい堪忍してな、ボウズ」

咄嗟に反応しようとする士郎。
だが無常にも弾丸は発射され、立ち上がろうとしていた少年の体は1mほど吹き飛ばされるとそのまま動かなくなった。
少年は四肢を力なく投げ出し、大の字になって川縁に横たわっている。
それは死体のはずであった。だが、しかし――
290: 貫けよ、その弾丸で  ◆DNdG5hiFT6 2007/11/07(水) 18:53:39 ID:c9fet4/E(7/15)調 AAS
――何か、おかしゅうないか?

何ともなしに少年を見ていたウルフウッドは違和感を感じ凝視する。
そしてその違和感の正体に気付く。
先程ウルフウッドが狙ったのは少年の“眉間”だった。
だというのに何故少年の頭蓋は原形を留めている?
そして注意深く観察すると仰向けになった胸は緩やかに上下していた。
そう、つまるところ、衛宮士郎はまだ生きていたのだ。

あの瞬間、士郎が反射的に行ったのは『投影』であった。
投影したのは無銘、しかも投影に至る八節のうち『構成材質の複製』と『製作技術の模倣』以外を無視した模造品としても三流以下の剣。
だがその構成速度は通常より遥かに速く、偶然も手伝いギリギリのところで銃弾を防ぐに至った。
しかし投影した剣が所詮出来損ないであったこと、ヴァッシュの銃の威力が重なり合い、
銃弾自体は防げたものの剣は一撃で粉々になり、その余波で額を強打してしまったのだ。

勿論そんなことはウルフウッドは知る由も無い。
だから単純に少女の銃のように何らかの特殊な手段によって防いだのだろうと考える。
そして死んでないのならば、今からもう一度殺せばいいのだ。
だが手持ちの銃の弾倉に残された銃弾はたったの1発。
瀕死の奴を殺すのに最後の一発を使うのも無駄が多い。
そこらへんの家のガラス割って、刃物代わりにでもするか――

と、そこまで考えたところで丁度自分と少年の中間あたりに黒光りする何かを発見する。
それは士郎が隠し持っていたデリンジャーであった。どうやら先程の衝撃で懐から転がり落ちたらしい。
銃を求めていたウルフウッドにとって、それを発見したことは渡りに船の事態であるはずだった。
だがウルフウッドの顔に浮かんだのは苦虫を噛み潰したような苦々しい表情だった。
しかしそれでも彼はデリンジャーを拾い、倒れたままの士郎に近づく。
士郎の瞳は明らかに焦点が合っておらず、意識があるのかどうかは判別できない。
だが、けじめとして一応言っておく。

「今度こそ、さよならや坊主」

そう言ってウルフウッドは動かない士郎の額にデリンジャーの銃口を押し当てた。
291: 2007/11/07(水) 18:53:49 ID:QF5w3cOZ(5/8)調 AAS
 
292: 貫けよ、その弾丸で  ◆DNdG5hiFT6 2007/11/07(水) 18:55:35 ID:c9fet4/E(8/15)調 AAS
***

回る。廻る。視界が。世界が。ぐるぐると。狂々と。

(……まるで、螺旋だな)

玖我なつきは“死”を知っている。
否、“死に近いもの”を知っている。
かつて蝕の祭というHiME同士の争いで味わった消えていくと言う喪失感。
今なつきが味わっているのはそれに限りなく近しいものがあった。
だが、何かが決定的に違う。
冷たく、暗く、寒い――“これ”はもう戻ってこれないものだ、と本能が訴えかける。
次第に掠れゆく意識の中にいくつもの顔が浮かぶ。

――舞衣
後は任せたぞ。
お前ならばこの狂った世界を何とかしてくれるに違いない。
あの時だってそうだったのだから。

――ドモンと名乗った少年
偽名を名乗ったのはきっとこの狂った戦場での精一杯の自衛手段だったのだろう。
だから、どうか生き延びて欲しい。

――静留
お前の想い……誰かに愛されるということは満更でもなかった。
できればもうちょっと控えめに表現してくれたなら、私も上手く応えられたかもしれないのにな。
残された彼女がどうなってしまうのか。それが心配でたまらない。

奈緒、命、迫水、碧……そして母。今までの大小関わらず人生で関わってきた人間の顔が浮かんでは消えていく。
だがその走馬灯の中に、たった一つだけ異質な映像が紛れ込んでくる。
それは今現在なつきの眼球が映し出している映像。額に銃を押し付けられている士郎の姿。
それを見てなつきが思ったのはただ一つのことだった。
293: 2007/11/07(水) 18:56:26 ID:QF5w3cOZ(6/8)調 AAS
 
294: 貫けよ、その弾丸で  ◆DNdG5hiFT6 2007/11/07(水) 18:56:50 ID:c9fet4/E(9/15)調 AAS
――アイツを、衛宮を死なせたくない。
共にした時間こそ僅かだったが、あいつがいい奴だって事ぐらいは分かっているつもりだ。
銃を手にして追い掛け回した自分をあっさり許し、更に自身を囮にして少年を探す自分を逃がした。
そして先程も自分を身を挺して庇い、更に自身の命よりも赤の他人である自分の命を優先した。
ああ、馬鹿にも程がある。自分が知る中でもここまで馬鹿な奴はいなかった。
だが――なつきはそんな馬鹿を嫌いではなかった。
その有り方は、まるで“正義の味方”だ。
だれもが子供の頃に憧れる無垢な幻想。そして大人になっていくうちに誰もが諦める夢。
それでもこの狂った戦場でさえも闘いを止めようと、人を救おうと真直ぐで有り続けようとする姿、正義を貫こうとするその姿勢。
それはきっと――間違いなどではないはずだ。
だから思う。ここで死なせてたまるものかと。何としてでもあいつを生かしたいと。

しかしそれは無理だ。なつきの体はすでに死に掛かっている。
死に掛かったものを動かす道理など世界に有りはしない。

――ドクン

しかしその決意は消えない。そこに有り続ける。

――ドクン ドクン

“道理”を引っ込め“無理”を押し通す強い“決意”。

――ドクン ドクン ドクン

それはなつきの消え行く命と“螺旋”を結んだ。
295: 貫けよ、その弾丸で  ◆DNdG5hiFT6 2007/11/07(水) 18:58:03 ID:c9fet4/E(10/15)調 AAS
***

デリンジャーの引き金を引こうとしたウルフウッドは異様な気配を感じて振り返り、そこで見たものに驚愕する。
即ち、立ち上がった玖我なつきの姿に。

――アホな、立ち上がれるはず無い。
その証拠に胸には穴が開いており、そこからは未だに鮮血が流れ出している。
だがなつきの目はけして死者のそれではなかった。
その目に宿るのは緑色の螺旋――真直ぐな意思と閃光のような命の輝き。
そしてその螺旋は天を突き、無理を押し通す。

「来……いっ……デュラァァァァン!!」

それは本来ならばありえない光景だった。
この戦場の制限下ではチャイルドは出現しない。
事実、それは4人のHiMEがそれぞれ証明している。
だが、メタリックシルバーの巨狼は確かになつきの傍に現れた。
その無機質な瞳に緑色の螺旋を宿らせて。

「チッ!」

デリンジャーから2発の銃弾が放たれ、なつきの体に新しい風穴を開けていく。
そのどちらもが急所を的確に貫いた。
しかし、なつきの体は倒れない。そしてその目に宿る意志も消えない。

「ロォ……ド、シル……バ……、カ……トリッジ……」

一瞬ごとに意識が飛びそうになる。
肺に穴が開いているのか声も碌に出せやしない。
だがまだだ。まだ倒れるわけには行かない。
銃弾を込めろ。撃鉄を起こせ。照準を定めろ。意志を貫け。友を救え――引金を、引け。

「……ってェェェェェェェーッ!!」

なつきの咆哮と同時、銀色の閃光が放たれた。
296: 貫けよ、その弾丸で  ◆DNdG5hiFT6 2007/11/07(水) 18:59:26 ID:c9fet4/E(11/15)調 AAS
***

結果から言えば、ウルフウッドはギリギリで“それ”の回避に成功した。
鍛え抜かれた戦士としての勘と優れた身体能力の賜物であった。
そして先程まで自分がいた場所を見て、驚愕する。
そこにあったのは自然現象などではありえない巨大な氷塊であった。
刹那ほどでも反応が遅れていれば自分はあそこで氷の棺桶の中にいただろう。

と、そこで先程まで自分が銃を突きつけていた少年の姿がないことに気付く。
恐らくは攻撃の衝撃波で水路に落ちたのだろう。
だがこの水路は案外流れが速い上に、3つに分岐している。
どこに流されたかは最早ウルフウッドには分からない。
しかし――

「……ホンマ、ついとらんな」

自分に出会ってしまったこの少女も、無駄に銃弾を浪費した自分も。

ウルフウッドは最初、二人を撃ち殺すつもりであった。
実際、視界に現れた二人組を見た瞬間はそう決断した。
初弾で少女を殺し、次弾で少年を殺す。迷うはずもない単純極まりない論理。
こちらに気付いた少年が少女を庇ったことは意外ではあったが、それもあくまでも想定内の出来事にしか過ぎない。
彼の行動を変えたのは、少女の両手にいきなり出現した二丁の拳銃であった。
まず考えたのは少女が早撃ちの名手である可能性。
かつての仲間の一人も早撃ちを得意としていた。
だがそれは明らかに違うとわかった。
ウルフウッドは見たのだ。少女の手の中に銃が出現する光景を。

そして考えたのは“そういう支給品”である可能性。
――念の入った参加者ならば説明書を破っている可能性もある。
そう考えたウルフウッドは少女と自分の間に十分な実力差があると確信した上で、情報を聞き出すことに決めたのだった。
だがその結果として、少女の銃は少女自身にしか使えないものという結果であり、
更には貴重な銃弾を3発も消費して殺せたのはその少女一人ときた。

だが、その少女についても不可解な点が多すぎる。
何故最初からあの銀色の獣を呼び出さなかったのか?
何故あの時、致命傷を負っていたにもかかわらず立ち上がれたのか?
そしてあの目に宿った緑色の光は一体何だったのか――?
297: 2007/11/07(水) 18:59:30 ID:QF5w3cOZ(7/8)調 AAS
 
298: 貫けよ、その弾丸で  ◆DNdG5hiFT6 2007/11/07(水) 19:00:37 ID:c9fet4/E(12/15)調 AAS
その答えを探ろうとして倒れたままの少女に近づき顔を見下ろすも、
そこにあるのは生命活動を停止したただの死体があるだけだ。
ただし、一つだけ普通の死体と違う点を上げるとすれば、その顔には何かを成し遂げた者の笑みが浮かんでいたことだろうか。
生き残ったはずの自分が不機嫌極まりない顔をしていて、死んだはずの生者は対照的に満足げな笑みを浮かべている。
その皮肉にウルフウッドは更に顔を歪ませる。

更にせっかく手に入った武器も最悪だ。
デリンジャー。かつての知り合いであるメリル・ストライフが愛用していた銃。
現在手にしているのは平和ボケした男の銃に、共に旅した活発な少女の銃。
そんな奴らと一緒に馬鹿をやっていた“生きていた頃の記憶”が益々ウルフウッドを苛立たせる。

満足した死人と何処までも追いかけてくる過去(かつて)。
こうも念入りに自分をイラつかせるとは、神様はよほど自分のことが嫌いらしい。

「ハ……天国には来んなっちゅうことか……
 ……心配せえへんでもワイの行き先は一つしかないっちゅうねん」

少女の死体を盾にし、それを囮に年端も行かぬ少年を殺した。
これだけでお釣りが来るというのに今度は少女を殺し、その荷物を奪っている。
今から改心して聖者の様になろうとも地獄行きは決定したようなものだ。
――それなら、地獄で踊るだけや。楽しくもない、クソつまらんこの用意された地獄の中で。
ウルフウッドは残された二人のディパックの中身を移し終えると行動を再開する。
それは“銃”探しだ。
士郎のディパックの中から20発もの予備弾薬を発見したものの、デリンジャーでは流石に射程が短すぎる。
それに正直なところ、見るだけでイラつきが酷くなる銃など御免だ。
踵を返し、ウルフウッドはただただ最初の予定通り、銃を求めるために警察署へと向かう。
299: 2007/11/07(水) 19:01:07 ID:QF5w3cOZ(8/8)調 AAS
 
300: 貫けよ、その弾丸で  ◆DNdG5hiFT6 2007/11/07(水) 19:01:49 ID:c9fet4/E(13/15)調 AA×

301: 貫けよ、その弾丸で  ◆DNdG5hiFT6 2007/11/07(水) 19:03:56 ID:c9fet4/E(14/15)調 AA×

302: 2007/11/07(水) 19:04:47 ID:4GdaYpPO(1)調 AAS
 
303: 貫けよ、その弾丸で  ◆DNdG5hiFT6 2007/11/07(水) 19:05:10 ID:c9fet4/E(15/15)調 AAS
【玖我なつき@舞-HiME 死亡】

【――螺旋力、覚醒確認】
304: 2007/11/07(水) 22:43:34 ID:rtkvgD6D(1/5)調 AAS
4951 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 10:04:43 ID:???0
結局、スパイクははやてと会えなかったんだな
次は温泉だし、拡声器の呪いを打ち破ったか
4952 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 10:06:43 ID:???0
>>4929
ミー君はともかく、マタタビは既に暴走フラグ立ってるじゃないか
後はどのタイミングで暴走するかだなー。もう少し温泉に人が集まれば対主催同士の乱戦も期待出来るが
4953 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 10:18:21 ID:???0
……マタタビが暴走してもなぁ。
もう、師匠にアルジャーノン発症してもらえばいいよ。
4954 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 10:40:28 ID:???0
それは事前投票でベターマンに票を入れるも結局まるで票が入らなくて絶望した俺に対する追い討ちと考えてよろしいか?orz
4955 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 10:42:31 ID:???0
ごめん。
代わりにゾンダー化させよう。
4956 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 10:45:55 ID:???O
それはガオガイガー入らなくて涙目の俺に対する(ry
4957 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 10:49:33 ID:???0
じゃあ、DG細胞は……精神力で撥ね退けられるから却下で。
アンチスパイラル化、聖杯の毒で黒化、ジェントルメン化、ミーくんと合体、
ホムンクルス化、不死者化、ラダム化。
これでどうだ!?
4958 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 11:14:57 ID:???0
普通に文章と展開でマーダー化させたい……が、
それを使用とすると往々にして次のリレーでフラグブチ折られるんだよなぁ……
4959 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 11:34:07 ID:???0
マーダーを増やすのはロワを進行させる(死人を出す)手段であって目的じゃないだろ。
ある程度統一された目的で動くグループができないと激戦に発展しにくいぜよ。
はやての拡声器とポロロッカーノはその意味でいい一石になってると思う。
4960 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 11:36:09 ID:???0
…と、えらそうに吠えてはみるものの、
人数に集まられると、把握してない作品のせいで手が出せなくなるジレンマ。
どうしたもんか。
4961 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 11:40:47 ID:???0
大丈夫。はやてが集団化してもなんとか繋いでみせる。
ルル達が絡まなければ。
305: 2007/11/07(水) 22:45:25 ID:rtkvgD6D(2/5)調 AAS
4962 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 12:08:20 ID:???0
>>4947
貴重なマーダーがまた死ぬな
4963 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 12:32:20 ID:???0
前作のはやての思考が北上してデパートに向かうってなってるのにクレアたちのいる
温泉に向かうのはおかしいと思うんだが?
まだ投下されてないんでなんともいえないが。
4964 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 12:37:49 ID:???0
左のレールウェイは危険だって思ってるし、右の道には禁止エリアがあるから通らざるおえない。
まあ、川を泳いでブラなしすけすけワイシャツ、っていうのもそそるけどね
4965 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 12:41:04 ID:???0
んーと、いつか言おうと思っていた毒を今ここに。
>>4963みたいな方針って、出来るだけぼかしておいた方が次のリレーする人に優しいんだよね。
2〜3行でとりあえず方針決めました、とか、あまつ状態表内だけで決まった行動方針のせいでプロットが潰れるのが忍びない。
とはいえ、そういう根拠の薄い方針なら、同じく2〜3行で撤回しても良いと思うけど。
逆に、バッチリ根拠も描写した行動方針を2〜3行で撤回されるのも勘弁なんだけどな。
まあ、どっちにしろ方針はしっかり描写しようぜ、ってことで。
4966 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 12:59:32 ID:???0
スパロボのマサキみたいな方向音痴だったら
北に行くと言って、南の町にたどり着いたとしてもおかしくないんだけどなぁ。
4967 :4963:2007/11/04(日) 13:02:35 ID:???0
そういえば禁止エリアがあるんだったな
とはいっても少なくとも1時間はあるはずなんだけどまあ安全策をとったってことか。
4968 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 18:00:04 ID:???0
もう少しで書き込めなくなるからみんな遠慮してるのかな?
これだけじゃどうかと思うので毒
なんか全体的にロワが始まっているという雰囲気がないんだ
嵐の前の静けさだと思っていいんだよね?
4969 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 18:05:25 ID:???0
フラグとか遠慮せずにぶっ壊せる空気の読めない書き手さんが頑張ってほしい。
とは思っている。まあ、初心者さんでもいいから参加者の一人をズガンしてもらってもいいとは思っている。
マーダーやりすぎたら困るから、マーダー逝かせたい人は相打ちでお願いしたいけど。
4970 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 18:19:08 ID:???0
いやまあ、既に次スレ立ってるわけだが。
4971 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 18:27:40 ID:???0
一連の話、対主催話だらけになったのは、いっせいに予約したからだろう
だからと言って、今回一斉にマーダー寄りにすると、
殺しまくって、収集がつかなくなる可能性も
ということで、今回はみんな、状況を見ながら予約してるんじゃね
4972 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 18:31:14 ID:???0
>>4970
うお、マジだ
4973 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 19:00:49 ID:???0
ある程度対主催チームが出来上がったところで東方先生辺りが壊滅させてくれることを期待してる
4974 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 19:23:01 ID:???0
ラッドと東方不敗を適当なところにバラして不時着させれば、それなりに騒動を起こせるだろう。
4975 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 19:41:07 ID:???0
とりあえず、クレアとラッドは引き合わせないほうがいい。
ラッドが逝っちゃう。まあ、師匠が介入すればいいんだけど。
ラッドはソルテッカマンを着るのだろうか?
なんとなく防具は嫌いぽい。緊張感がなくなるから。
4976 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 19:46:09 ID:???0
クレアとラッドはまずい
クレアは作中でラッドを軽くいなしてる(ルーアの介入によりラッドは死ななかったがルーア、本人共に戦えばまずいと気づいていた)
そしてラッドは人間だけど人間の中でも超人の部類に入るほどの力を持っている(ルーアを守るために鉄塔に拳を叩きつける、その後左腕が肉が吹き飛び骨だけなったのにもかかわらず平然とルーアといちゃついている)
4977 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 19:53:10 ID:???0
つまり温泉に絶望先生達とはやてと読子スパイクを向かわせたところで、
マタタビを暴走させ、ついでに空からラッドを放り込めば完璧だって事だな! …………書ける気がしねぇw
306: 2007/11/07(水) 22:46:36 ID:rtkvgD6D(3/5)調 AAS
4978 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 19:53:11 ID:???0
ラッドはソルテッカマン着ないだろうな
ラッドは絶対に自分は死なないって思っている奴をぶっ殺すことが目的だからソルテッカマン着たら相手が自分は死ぬかもって思っちゃうかもだし
それよりかがみをラッドと引き合わせるとおもしろいやもしれん
全くといっていいほど戦闘力が無いが普通の人相手に自分は殺せないと安心して不死者だけ恐れているかがみ
作中では不死身で自分は絶対に死なないと思っているであろうヒューイを殺してやろうと執念を燃やすラッド
かがみの無限精神崩壊が起こる
4979 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 19:54:08 ID:???0
>>4977
それ下手したら最強対主催チームになるぞ
4980 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 19:55:39 ID:???0
ID出なくても特定できるほど頭悪そうな口調は久々に見た。
はやてとラッドは絡ませたいなあ。個人的に。
……殺されるとまでは考えない辺りがはやての『甘さ』だよな。非常にラッド好みの。
4981 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 19:58:10 ID:???0
はやてはパロロワの死亡フラグアイテム拡声器持ってるからなw
一体どうやっなるのかが楽しみだw
4982 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:01:36 ID:???0
個人的に一番ラッドと絡ませたいのはクアットロ。
自分は安全なところにいて他人を踊らせることしか考えてない。
まさに最上級の獲物。
4983 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:03:27 ID:???0
最上級すぎるw
ラッドが嬉々としてぼこぼこにするのが容易に想像できてしまうw
しかしあのテンションでなんて言うかは想像できない
4984 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:18:02 ID:???O
そして、うっちゃり返り討ちにするかがみと
4985 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:19:12 ID:???0
逆にラッドの食指が動かない奴って誰だろう。
何時も死ぬかも分からないと思ってる奴……ってそんな奴いたっけ
4986 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:21:28 ID:???0
>>4985
歩く死亡フラグの主人公が
4987 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:22:28 ID:???0
自分の命を軽く見ている奴と言ったら間違いなく士郎
4988 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:22:51 ID:???0
>>4686
朝飯に箸休めまで作る和食特化の魔術師のことか
4989 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:22:54 ID:???0
ウルフウッドだろう。
自分をゾンビとみなして戦ってるんだし。
4990 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:23:34 ID:???0
ウルフウッドは多分おk
ヴァッシュも(多分)フィーロと同じ理由でおk
高遠は純粋に危機意識高めなのがグッド
士郎は……覚悟云々ではなく『そもそも自分の命に価値を感じていない』からなあ。どうなるんだろ。
4991 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:23:38 ID:???0
>>4985
絶望先生?
逆にカフカなんかは苛めそうな気がする。
我様も標的になりそう。
全ての本を読むまでは死ねないと思っているあの人はどうなんだろうか?
307: 2007/11/07(水) 22:48:15 ID:rtkvgD6D(4/5)調 AAS
4992 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:25:34 ID:???0
我様はクレアと完全に同タイプだからな……
一応までに次スレ。
したらばスレ:otaku_8882
4993 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:28:07 ID:???0
ねねねは違う気がするなぁ
死ねない、であって死なないじゃないから死んで本が読めなくなるのは嫌と思ってるだけだろうから自分は死なないっていうのとは違う気がするんだよな
4994 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:32:59 ID:???0
ルルってある意味天敵多いな、バッカーノだけでもクレアとラッド
2人のどっちかに遭遇したらギアスかけそうだけどあの2人に強い意思には制限ギアス効くかな?
4995 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:36:12 ID:???0
ラッドには恐ろしい曲解されそうで怖いなw
「やめろ!」
「ああ? 殺さずに済ますのをやめろってことか?」
……どこぞの『期待外れ』なヨルス婆さんみたいにならなきゃいいが。
4996 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:42:14 ID:???O
>>4994
そこまで制限の水準広げると不利すぎないか、ルルーシュ。
超人でもない連中の意志力で弾けるとなればいよいよ絶望くらいにしか効かんぞ。
絶望には当たらないがなw
4997 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:43:33 ID:???0
>>4993
ねねねは書くまで死ねない。
読子は読むまで死ねないだから、解釈が逆だ。
ラッドは性格が性格だから微妙にマーダーに向いて無いぜ。
4998 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:49:39 ID:???0
>>4997
ラッドは「私を殺して下さい」って目をした女が好みだから
そんなの見つけたら俺の愛人になれとか言いそう
4999 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:51:58 ID:???0
よし、5000は任せた!
名言頼んだぜ!
5000 :やってられない名無しさん:2007/11/04(日) 20:53:07 ID:???0
「既に犠牲者が……。
きっと凄く長い時間をかけて準備してきたんです。
仲間の人が潜伏してるって言ってるじゃないですか。
スパイクさんは最後に背中をちょっと押しただけなんです。
いえ、スパイクさんがいなくても八神さんはきっと近いうちに行動を開始するつもりだったんですよ」
308: 2007/11/07(水) 22:51:28 ID:rtkvgD6D(5/5)調 AAS
で、前すれの君たちが移動という話は、どーなったのかな?かなwwwww
309: 2007/11/07(水) 23:25:08 ID:izM2Qr6v(1)調 AAS
無視なんだろw
310: 高峰清麿の考察、王ドロボウの消失 ◆o4xOfDTwjY 2007/11/08(木) 00:17:54 ID:h12n85/a(1/4)調 AAS
未だ気絶したままのジンを見守る高嶺清麿は思考する。
彼はラッドやジンみたいに高い身体能力を持つわけでもなく、ましてや東方不敗や最初の会場で見たモラトフみたいな超人的な能力を持つわけでもない。
彼は一般人ともいえる身体能力しか持たないのだ。
しかし、彼には中学生とは思えないほどの並外れた天才的な頭脳がある。
そして、ガッシュと共に魔界の王を決める戦いを勝ち抜いてきた経験がある。
この頭脳と経験をフルに活用することが今の自分にできること、清麿はそう考えていた。

まず彼が最初に考えたことは先ほどの放送の内容だった。
東方不敗とジンの戦闘があったため、いったんは考えることを停止せざるを得なかったが、今なら幾分か時間はある。
禁止エリアと死者の情報以上に、ロージェノムは気になる発言をしていた。
――幼き少女が、螺旋の力に目覚めたのを、この目で見られたのだからな。
なんのつもりでこのようなことを言ったのかはわからないが、この一言は清麿に様々な可能性を見いださせるには十分すぎた。

――この目で見られた
つまりは、何らかの方法で参加者を監視しているということ。
放送でロージェノムは自らこれを露呈したようなものだ。
螺旋力というものに目覚めた少女がいたのがよほど嬉しかったのか。
それとも監視していることを参加者に気づかれようが大丈夫な自信があるのだろうか。
真意を知る術はないが、与えられた情報はありがたく使わせてもらう。

監視している可能性が高まった以上、これからの行動には注意を払わなければならない。
しかし、一体どのような方法で監視を行っているのだろうか?
清麿が立てた仮説は2つ。
場内に監視カメラが仕掛けられている、魔物の術のような特殊な能力によって監視されている、2つだ。
だが最初の説はほとんどないだろうと考えた。なぜなら、監視カメラなど仕掛けていたらすぐに参加者は気づいてしまうだろう。
首輪に仕掛けられているという考えもできるが、首輪をされた本人の映像が見られないどころか、そのカメラのレンズを隠してしまえば監視はできなくなってしまう。
ならば後者の仮説が濃厚だろう。
清麿は魔物の戦いの中で常識破りな能力と出くわしてきた。
電撃を放つ魔物、氷を生み出す魔物、重力を操る魔物、自分の体を変身させる魔物、バリアを発生させる魔物、更には人の心を操る魔物と、様々なタイプの能力を扱える魔物と出会ってきた。
魔界の王を決める戦いはその性質上、戦いに向いた能力の持ち主が多かったが、ティオやキャンチョメのような補助的な能力の持ち主もいた。
ならば、監視に向いた能力をもつ魔物がいてもおかしくない。
そして、この殺し合いには最初の広場で見たモラトフのような、魔物のような能力を持つ人間も参加していると考えてよいだろう。
そして、ロージェノムは監視に特化した能力を持っている、清麿はそう推測する。
しかし、例えそのような能力を持っていたとして、80人以上もの参加者を同時に、しかも長時間監視できるだろうか?
魔物の術を発動するには、魔本の持ち主の心の力が必要であった。
ならばそういった能力を使うのにも何らかの力が消費されると考えてもよい。
一度に80人以上の参加者を長時間監視などすれば、すぐにそのような力を消耗してしまうだろう。

ならばどのようにして監視を行っているのだろうか?
ロージェノムはこの殺し合いの目的を「優秀な螺旋遺伝子を持つものを探すため」と言った。
先ほどの放送でも「幼き少女が、螺旋の力に目覚めたのを、この目で見られたのだからな」と言っていた。
そもそも、螺旋力とはなんなのか?
清麿には思い当たる節があった。
魔界の王を決める戦いは100人の魔物を互いに戦わせ、生き残った最後の1人を王とするというシステムだった。
今行われている殺し合いと似たシステムだ。
その魔物の戦いの中での重要な点のひとつに、戦っていくうちに魔本に新たな術が現れ、それが使えるようになるという点があった。
螺旋力が目覚めるということを、魔物が新たな術を使えるようになるということと捉える。
魔物の戦いは王を決めることが目的であり、新しい術が使えるようになることはいわばそのための手段であった。
しかし、この殺し合いの場合は魔物の戦いの手段に当たることが目的なのではないのだろうか?
螺旋力という新たな力を発現させるために参加者同士を殺し合わせる。
そして、優秀な螺旋遺伝子つまり優秀な螺旋力を持つ者を発掘する。
311: 2007/11/08(木) 00:18:33 ID:TfaGLZ0f(1)調 AAS
 
312: 高峰清麿の考察、王ドロボウの消失 ◆o4xOfDTwjY 2007/11/08(木) 00:19:16 ID:h12n85/a(2/4)調 AAS
仮に目的がそうだとしたら、全ての参加者は螺旋力という力を覚醒させる素質の持ち主なのだろうか?
だとしたら、自分みたいな一般人を集めて、その螺旋力というものを目覚めさせようとしているのだろうか?
清麿、ジン、ラッド、ヨーコ。今まで接触してある程度情報を得た参加者達だが、魔物のような特殊な能力は持ってなかった。
対峙したジャンパーの男や東方不敗もそうだった。
いや、あの老人はそうとも言い切れない。
倒壊した建物から生き延びるなど、人間の身体能力では考えられないほどの超人的能力を持っていた。
もしかしたら魔物でいう肉体強化の術のような能力を持っているのではないか?
それにこの殺し合いに参加している知り合いの、ガッシュとビクトリームも何らかの能力を持つ魔物である。
そう考えると、一般人、魔物、特殊な能力を持つ者、色んなタイプの参加者がいると言える。
ならば参加者の共通点はなんだろうか?
やはり、あのロージェノムが言った優秀な螺旋遺伝子を持つ可能性のある者と考えて良いだろう。
ならば自分にも、隣で気絶しているジンにも、螺旋力という力が眠っているというのだろうか?
螺旋力。この力の正体を知ることが、もしかしたらこの殺し合いを止めるためにも重要なことかもしれない。

途中で螺旋力に対しての考察に移ったが、監視について考え直す。
先に立てた、魔物でいう新たな術の発現=螺旋力の覚醒、それを参加者にさせることがロージェノムの目的だと考えた。
魔物が新たな術が発現することは、魔物同士が戦っている時が圧倒的に多く、ナゾナゾ博士はいち早くそれに気づいていて、あえて自分たちと戦うことでガッシュに新たな術を発現させた。
ならば螺旋力が目覚める場合も、参加者同士の戦闘中ではないかと考えられる。
ならば監視を、参加者同士の戦闘に限って行うと考えてみてはどうだろうか?
参加者同士の戦闘のみなら、監視のため能力を使う機会も減るだろう。
ならば、戦闘が行われることの判断はどうするのだろうか?
これは簡単だ。清麿の住む世界にもあるGPSと盗聴器。
これを首輪に仕掛けておけばすぐにわかる。参加者同士が遭遇しそうになったら監視を始めて、さらに盗聴器で戦闘が行われているかを確認すればよい。

ロージェノムの一言で様々な見解を立てた清麿だが、流石に集中して考えただけあって、少し疲れていた。
少し休もうと思って、デイパックから取り出した水を一口飲む。
そして朝食をとってなかったことを思い出す。
腹が減っては戦も出来ぬ、そう思った清麿はデイパックから食料を取り出した。
清麿に支給された食料は、コンビニで売っているようなおにぎりだった。

朝食で腹ごしらえを済ませた清麿は、デイパックからボールペンとメモ帳を取り出す。
先ほどの考察を記すためだ。
盗聴の可能性も頭に入れ、ロージェノムやこの殺し合いについての考察は筆談でやりとりする必要もあるだろうと判断した。
そのために、自分の考えを他の参加者に伝えやすくするためにも、考察をわかりやすくメモ帳にまとめた。
313: 高峰清麿の考察、王ドロボウの消失 ◆o4xOfDTwjY 2007/11/08(木) 00:21:12 ID:h12n85/a(3/4)調 AAS
清麿はメモ帳への記入が終わって一息つくと、ソファーで横たわっているジンが動きだした。
ジンは上半身をゆっくり起こして清麿の姿を確認する。

「やあ、清麿。無事で良かったよ」

一時の沈黙。
ジンは清麿から視線を外して、シーツの被せてあるヨーコの死体の方を見た。
それに気づいた清麿は、重たい口を開いてジンにヨーコが死んだ事実を告げる。

「残念だが…。ヨーコさんは助からなかった」
「…そうか」

ジンは立ち上がり、ヨーコの亡骸へと向かって歩く。
シーツをゆっくりと捲る。体の血は拭き取られていて、胸の前で両手が祈るように組まれている。青ざめつつある死顔は、安らかな笑顔であった。
彼女が最後に何を思って死んでいったかは、ジンに知る術もない。
だが、あの時ヨーコは自分を守るために行動したのは間違いなかった。
今まで旅の行く先で出会う少女を助けてきたジンだが、今回は助けるどころか助けられてしまった。

「ごめん、おねーさん。オレ何もしてやれなかった。オレが言えた台詞じゃないけど、どうか安らかに」

黙祷を捧げたジンは、再びヨーコにシーツを被せた。
清麿の方へと振り返るジン。清麿は申し訳なさそうに頭を下げる。

「本当は埋葬してあげたかったが、俺にはあれぐらいしかしてやれなかった。すまない…」
「いや、よくしてくれたよ。それに怪我の手当てもなかなかの腕前だし」

そう言うとジンはソファーに座り込む。
医療関係の本を何冊か読んだことがある上に、魔物の戦いの中で実際に応急処置などを行った経験のある清麿は、民家で使えそうな治療器具を見つけて、ジンに的確な応急処置をしていた。
しかし、それは応急処置というだけで、ジンの状態は依然思わしくない状態だった。
清麿としては病院に行って、もっとジンに的確な治療をしたかったし、自分の右耳の応急処置もしっかり治療する必要があった。
そして、ラッドとも合流しなければならない。

「とりあえず、消防車まで行ってみたい。大丈夫か?」
「うん、なんとかね」

そう言って重い体を起こすジン。
清麿は先の考察をジンに話すべきか迷ったが、優先すべきはジンの治療だと考えた。
ラッドの安否も気になる。彼と別れた地点は消防車を止めた場所だ。
もし彼が生きているのなら、消防車のあった場所でジンの朝飯を待っているかもしれない。
逆に待ちくたびれて、新たな参加者を殺しにかかるかもしれない。できれば、それだけは避けたい。
ともあれ、まずは消防車へと向かうのが得策と考え、それを優先した。

2人はヨーコに改めて黙祷を捧げると、民家をあとにする。
ジンは民家を振り返り、隣の清麿にも聞こえないぐらいの小声で「おねーさん、ありがとう。後はオレに任せて」と呟いた。
314: 高峰清麿の考察、王ドロボウの消失 ◆o4xOfDTwjY 2007/11/08(木) 00:22:47 ID:h12n85/a(4/4)調 AAS
【C-7/北東部/民家の前/1日目/午前】
【ジン@王ドロボウJING】
[状態]:中程度の疲労。全身にダメージ。左足と額を負傷(応急処置済み)、貧血。
[装備]:夜刀神@王ドロボウJING×2
[道具]:支給品一式、予告状のメモ、鈴木めぐみの消防車の運転マニュアル@サイボーグクロちゃん
[思考]
基本:螺旋王の居場所を消防車に乗って捜索し、バトル・ロワイアル自体を止めさせ、楽しいパーティに差し替える。
1:清麿と共に消防車に向かう。
2:ヨーコの死を無駄にしないためにも、殺し合いを止める。
3:そういや、ラッドの朝食準備しなきゃ。

【高嶺清麿@金色のガッシュベル!!】
[状態]:右耳欠損(応急処置済み)、軽い貧血
[装備]:イングラムM10(9mmパラベラム弾22/32)
[道具]:支給品一式(水ボトルの1/4消費、おにぎり2つ消費)、殺し合いについての考察をまとめたメモ帳、
イングラムの予備マガジン(9mmパラベラム弾32/32)×5、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!!、無限エネルギー装置@サイボーグクロちゃん、清麿の右耳
[思考]
基本方針:螺旋王を打倒して、ゲームから脱出する
1:消防車へ向かう。
2:ラッドと合流。
3:病院でジン及び自身の右耳の治療。
4:頃合いを見計らって、殺し合いについての考察をジンに説明したい。
5:考察の真偽を確認するための情報収集。とくに螺旋力について知りたい。
6:ガッシュ、フォレゴレとの合流。
7:螺旋王に挑むための仲間を集める。その過程で出る犠牲者は極力減らしたい。

※清麿の考察について
・監視方法について
首輪にGPSと盗聴器を仕込んでいて、参加者同士の戦闘が発生した際に特殊な能力などで戦闘を監視しているのではないかと推測。
・螺旋力について
螺旋力の覚醒を、魔物の戦いにおける新たな術の発現と似たものと認識。
魔物の新術が発現することが戦闘中に多いことから、螺旋力の覚醒も戦闘中に起こるのではないかと推測。
一般人、魔物、特殊能力者等関係なしに、殺し合いの参加者全てに螺旋力覚醒の可能性が秘められているのではないかと推測。
上記の考察をメモ帳にまとめてあります。

※ヨーコの死体は、C7エリア北東部の民家にシーツを被せられた状態で放置されています。
315: 2007/11/08(木) 00:30:45 ID:SMp5rJbY(1)調 AA×
>>-

316: Felt Tip Pen  ◆P2vcbk2T1w 2007/11/08(木) 23:34:48 ID:yFgW4Fwr(1/2)調 AAS
「猫が喋ってたなあ……」
「喋ってましたねえ……」

「まあ、話の分かる猫でよかったですね……」
「渋い猫だったなあ……」

かぽーん

「良い湯だなあ」
「そうですねえ」

言うまでもなく、ここはH-6温泉である。

「温泉って、良いモンだなあ……何気に新しいし、キレイだし……」
「何でも、潰れかかっていた温泉施設を一から建て直したそうですよ」
「奇特な奴だなあ」
「実に12時間足らずで修復しちゃったそうです」
「勤勉な奴だなあ」
「最初にあの猫さんが始めて、途中からあの男の人が協力したそうです。
 で、居合わせた人たちで手伝って……私たちもちょっと手伝っちゃいましたしね」
「労働後の風呂ってのは格別だなあ」
「スパイクさんはほとんど何にもしてないじゃないですか」
「……」
「……」

「しかしあの男、尋常じゃない働きっぷりだったなあ……」
「『愛の力だ!』とか何とか言ってましたけど……
 でも、あの猫さんが言うには、そのせいで当初の設計から大分ズレた方向に行っちゃったみたいですね。
 ホラ、この温泉、和風の岩風呂なのに、マーライオンとか彫ってあるし。
 本当はもっと、広くてそれでいて細部にもこだわった設計だったとか何とか」
「俺はそういうのは良くわからんが……」

「だから、混浴なのか?」
「ええ、多分……」

「……」
「……」

「というか、その紙を置け。話はそれからだ」
「いえ、それはその……防犯上の問題と言いますか……」
「風呂に溶け出したら汚いだろう」
「そ、そういえば、はやてちゃんと、まだゆっくり話せてませんね!」
「話を逸らすな」
「何か、どうも上の空っていうか、他のことで何やら手一杯っていうか……」
「まあ、猫とかが話しかけても、物凄い勢いで誤魔化してたしなあ……」
「やっぱり、何やら深い事情がおありなんですかねえ……?」
「さあなあ……また後でゆっくり話を聞いてやるかな……」
317: Felt Tip Pen  ◆P2vcbk2T1w 2007/11/08(木) 23:35:54 ID:yFgW4Fwr(2/2)調 AAS
「……ん? なんか賑やかだな。 誰か来たのか?」
「じゃあ、そろそろ上がりますかね……」
「その前に髪を洗え髪を。何なら俺が洗って……」
「……」
「だからその紙を置け、紙を」

【H-6/温泉/一日目/昼】

【スパイク・スピーゲル@カウボーイビバップ】
[状態]:健康
[装備]:デザートイーグル(残弾8/8、予備マガジン×2)
[道具]:支給品一式
[思考]
1: とりあえず温泉
2:はやてに真相を問い質す。
3:読子と一緒に行動してやる。

【読子・リードマン@R.O.D(シリーズ)】
[状態]:健康
[装備]:○極○彦の小説、飛行石@天空の城ラピュタ
[道具]:なし
[思考]
1:まずは温泉
2:はやてに協力したい。
3:適当なところで帰る。
※はやてがやろうとしていることを誤解しています。

※温泉が(一応)完成しました。混浴です。
318: 2007/11/08(木) 23:36:23 ID:NkOFWf8i(1)調 AAS
 
319: 2007/11/08(木) 23:42:21 ID:fugrO/xA(1)調 AAS
 
320: 2007/11/08(木) 23:58:31 ID:FAF6LQyk(1)調 AAS

321: 2007/11/09(金) 00:47:06 ID:BpgN5dFB(1)調 AA×

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