[過去ログ] アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ1 (716レス)
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570(1): 勇気の意味を知りたくて ◆o4xOfDTwjY 2007/09/24(月) 20:42:22 ID:+LPmGtp4(5/7)調 AAS
【F-3/道路付近/1日目深夜】
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:健康
[装備]:リボルバー・ナックル(左手)@魔法少女リリカルなのはStrikerS(カートリッジ6/6)
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム不明(本人確認済み)、予備カートリッジ数12発
[思考]:
基本:殺し合いには乗らない。仲間や殺し合いをしたくない者を守る。ヒューズと行動。
1:機動六課のメンバー、ヒューズの仲間との合流
2:首輪解除の方法を探す
3:1のために、人の集まりそうな駅を目指す
※ヒューズの住む世界と錬金術、エド、アル、ロイ、リザ、スカーについての情報を得ました。
※ジェイル・スカリエッティ事件後からの参加です。
※スバルはジェイル・スカリエッティ事件後の調査などでクアットロについて多少の情報を得ていると思われるので、クアットロを『要注意人物』と判断しました。
※左手用のリボルバー・ナックルのカートリッジの装弾数は公式には設定されてませんが、右手用のリボルバー・ナックルが6発であること、
もともとリボルバー・ナックルは両手で使われていたことから、右手用と同じ6発としました。
【マース・ヒューズ@鋼の錬金術師】
[状態]:健康
[装備]:S&W M38(弾数5/5)
[道具]:支給品一式、ロイの手袋@鋼の錬金術師、S&W M38の予備弾数20発
[思考]:
基本:殺し合いには乗らない。スバルと行動。
1:情報収集(できれば首輪関連の情報を得たい)
2:1のために他の参加者と接触
3:エド、アル、ロイ、リザ、及び機動六課のメンバーと合流
4:駅を目指す
※スバルの住む世界、魔法についてヒューズのわかる範囲で理解しました。
※機動六課からの参加者の情報を得ました。また、クアットロを要注意人物と認識しました。
571: 2007/09/24(月) 20:42:24 ID:cszWwmT0(7/8)調 AAS
572: ディシプリン・コンチェルト ◆RwRVJyFBpg 2007/09/24(月) 21:06:41 ID:2DA8j1NV(1/7)調 AAS
友の銃を手にした哀れなガンマンが、血道を行くことを決意し、ここを後にしたとき
映画館の中の別シアターには、未だ決意定まらぬ一人の男が存在していた。
◆
――むせび鳴くようなファゴットの音色が薄暗い劇場の中を満たしていた。
静かに始まった木管の旋律は物悲しく、だが、どこか終末への予兆を感じさせる。
スクリーンには、物語の舞台らしい巨大な建造物が大映しにされていた。
どうやら、これがラストシーンのようだ。
その輝く銀幕を、一人の男が見るともなく見つめていた。
◆
この映画館らしい場所で目を覚ましてから、もう結構になる。
だが、俺は赤いビロード張りの客席に腰掛けたまま、この場を動けないでいた。
浮かんでは消えていくいくつもの思考。
正直、俺はこれ以上ないというくらいに混乱していた。
スパイクの野郎がこの間の捕り物でぶっ壊した諸々の賠償額を計算し終わり
そのあまりの赤字にない毛が抜ける思いをしながら、俺は確かにビバップ号で眠りに着いたはずだ。
それがどうしてこんなことになっちまったのか。
もしかして、全部タチの悪い夢なんじゃないかと思って確かめてみたんだが……残念ながらハズレらしい。
つねられた頬の痛みも、つねった義手の冷たさも、夢にしてはあまりにシャープすぎた。
つまるところ、全ては現実のようだ。
ビバップ号から拉致されたのも、どことも知れない映画館で見たこともない映画を見てるのも
ついさっき起こった胸糞悪い殺戮ショーも、俺が意味不明な殺し合いのゲームに巻き込まれちまったのも
……全部、ままならない現実ってわけだ。
573: 2007/09/24(月) 21:06:48 ID:17cKm9g3(14/30)調 AAS
574: 2007/09/24(月) 21:07:21 ID:6KAmtpuA(4/9)調 AAS
575: [sage] 2007/09/24(月) 21:07:27 ID:bqq+ucRB(1/3)調 AAS
576: ディシプリン・コンチェルト ◆RwRVJyFBpg 2007/09/24(月) 21:08:21 ID:2DA8j1NV(2/7)調 AAS
◆
――背後に流れていた音楽は終末への予兆を徐々に確信へと変え、盛り上がりを見せていた。
その隆盛と示し合わせたように、白衣の男がスクリーンに浮かび上がり、演説を始める。
「――未来は、現在の我々に栄光の光を与えてくれた!
そう!ついに全ての恐怖を克服できる時がやってきたのだ!
太古には木々をこすり合わせ炎を熾し、あるときは鯨から生命を奪い、またある時は石油を戦い、争った!
そして原子力。何時の時代も危険との隣り合わせだった!
だが、これからは違う!何の恐れもない夜。我々は手に入れたのだ!
今度こそ、美しい夜を!それは幻ではないッ!」
見たとおり男は科学者のようだった。彼は語る。自らの生み出した安全で害のないエネルギーのことを。
そのエネルギーがもたらす美しい夜のことを。その語調には、心なしか狂気が宿っているようにも思えた。
◆
「クソッ!何で俺がこんなことに巻き込まれなきゃならん!」
悪態をつき、隣の客席に軽い八つ当たりの拳を見舞いながら俺は考える。
何をかって?決まってる。これからどうすればいいのかってことをさ。
こんなクソッタレな殺し合いに付き合って、殺戮者になるつもりは毛頭ないが
だからと言って『みんな仲良くおてて繋いで』でどうにかなると思うほど甘くもない。
できりゃあ、こんな腐れた遊技場からはさっさとおさらばして、気晴らしに飲みにでも出たいところだが……
感覚の残っている方の手を首元へと遣る。
指先が、汗ばんだ首の上にあるスベスベした首輪の触感を捉えた。
この忌々しい拘束具が嵌ってる限り、そう簡単におさらばってわけにもいかんだろう。
まず、こいつを何とかしなくちゃならん。
だが、仮にこいつを何とかできたとして、それだけでここを脱出できるかといえば、それも怪しい。
何せ、全く気取られず、あれだけの人数を拉致できる技術と組織力を持っているのが相手だ。
うまく逃げ出せたとしても、奴らを放っといたままなら、また同じ方法でさらわれるのがオチだ。
そもそも、あの螺旋王って野郎は何者なのか?
賞金首をとっ捕まえて飯を食い、元々はI.S.S.Pにいたこともある身の上だが
あんな奴は見たことも聞いたこともない。
火星あたりのテロリストか?それとも地球出身の宗教家か?宇宙人ってセンもアリかもな。
どちらにしろ、厄介な敵には違いない。
それから、螺旋王に向かっていったあのパワードスーツの男、モロトフとか言ったか。
あいつも謎だ。
短い時間だったから、十分に観察できたとは言いがたいが、それでも言えることがある。
あいつのパワードスーツは異常だ。
掛け声一つで装着できる利便性、螺旋王に迫ろうとしたときの敏捷性、そして放った光線の威力……
どれ一つとっても、俺の知ってる技術の範囲を超えている。
あんなのとやりあったら、ハンマーヘッドだろうがソードフィッシュだろうが一瞬でスクラップだろうぜ。
そういえば、螺旋王はあいつのことを『異星生命体に改造された云々』と言ってやがったが……
……まさかな。SFじゃあるまいし。
「でもって、この殺し合いの目的は『螺旋遺伝子』か……ち、情報が足りなすぎる」
次から次へと出てくる謎、また謎に嫌気が差した俺は、目をスクリーンから下げ、ガックリとうなだれた。
そう、必要なのは情報だ。この事態を何とかするためには、ともかく情報が不足している。
何かいい手は――?
事態の打開を求めて顔を上げた俺の目に、放りっぱなしのデイパックが飛び込んできた。
577: 2007/09/24(月) 21:09:28 ID:HcVQeXLQ(2/9)調 AAS
578: 2007/09/24(月) 21:09:35 ID:17cKm9g3(15/30)調 AAS
579: 2007/09/24(月) 21:09:41 ID:6KAmtpuA(5/9)調 AAS
580: [sage] 2007/09/24(月) 21:09:52 ID:bqq+ucRB(2/3)調 AAS
581: 2007/09/24(月) 21:09:59 ID:To2MIRFY(10/16)調 AAS
582: ディシプリン・コンチェルト ◆RwRVJyFBpg 2007/09/24(月) 21:10:12 ID:2DA8j1NV(3/7)調 AAS
◆
「しかし、博士にはこれ以上任せてはおけない」
「そうだ!止めろ!フォーグラーを止めろ!」
「彼は暴走している!」
「引き離せ!彼をアレに近づけるなぁっ!」
朗々と演説を述べていた科学者の周りに別の男4人が群がり、彼の演説を阻止せんと躍りかかる。
科学者の前には巨大な装置。彼はそれを起動させようと男達に必死の抵抗を試みた。
「何かも失敗かッ!」
「そうだ。この実験は完全ではなかった!無謀すぎる!」
「もう遅い!」
科学者は鬼気迫る勢いで男達を振りほどく。
◆
俺はあの螺旋王が“ゲームの参加者”全員に支給したんであろうデイパックの中身を広げそして
……新たに増えた悩みの種に脳を締め付けられていた。
まず一つ目の悩みの種は、白い紙に印刷された参加者名簿を確認したときに生まれた。
――エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世
――スパイク・スピーゲル
よく見知った同居人の名前を見つけてしまったのだ。
正直、こういう事態を考えてなかったわけじゃない。
俺がビバップ号から拉致されたってことは、奴らの部下が何らかの形で侵入したってこったろう。
だとすりゃあ、他の奴らも俺同様、巻き込まれてたって不思議じゃない。
フェイがいないのが気になるが……まさかあの女、俺たちを売りやがったのか?
あの金の亡者のことだ、報酬に目が眩んで、それくらいのことはやりかねない。
まあしかし、それは今言っても仕方のないことだ。本当にそうかどうかも分からんしな。
ともかく、今の問題はあいつらだ。
スパイクは腕が立つし、エドも何だかんだでネットの業は一流だ。
あいつらの性格なら後ろから刺されることもまずないだろうから、合流できれば心強い。
……だが、残念なことに、落ち合うために役立ちそうな手がかりが何もない。
バッグに入ってた地図によれば、この殺人ゲームの会場は、およそ8キロ四方の正方形。
闇雲に探し回ったところで、合流するのは至難のわざだろう。
そう易々とくたばる奴らじゃないから、放っておいてもそのうちどっかで再会できる気もするが
……モロトフのこともある。
何だかんだで一緒にやってきた仲間だからな。心配でないと言やあ、そりゃ嘘だ。
だが……あーくそっ、どうすりゃいい!
583: 2007/09/24(月) 21:10:27 ID:ieOytZRW(2/2)調 AAS
584: 2007/09/24(月) 21:11:07 ID:6KAmtpuA(6/9)調 AAS
585: 2007/09/24(月) 21:11:19 ID:9MMdaaN9(1)調 AAS
586: ディシプリン・コンチェルト ◆RwRVJyFBpg 2007/09/24(月) 21:11:24 ID:2DA8j1NV(4/7)調 AAS
知り合いのことで悶々とする俺に追い討ちをかけるように
二つ目の悩みの種が零れ落ちてきた。
俺がバッグに足をぶつけちまった拍子に、そいつはコロリと転げ出てきたのだ。
それは、鳥の姿を模したようにも見える、青いクリスタルだった。
「こ、こいつはっ!?」
クリスタルを見た瞬間、俺は思わず声を上げちまった。
何故かって?俺はそいつに見覚えがあったからさ。
確かめるように、もう一度記憶を辿ってみる。
――ああ、そういえば貴様達はコレが無ければ話にならんのだったな? そら、くれてやる
――良いだろう! 宇宙の塵となって自らの過ちを悔い改めるが良い!! テーック、セッターーー!!
……間違いない。あのモロトフがパワードスーツを装着するために使った水晶体だ。
正直、こいつが出てきたときは、こんなことになって以来初めて「ツイてる」と思ったよ。
何せ、あのパワードスーツの威力はさっき目の前で見せられたばかりだったしな。
何でも腕っ節で解決するようなやり方は好きじゃないが、強力な武器があるにこしたことはない。
それに、これ自体、俺が欲しかった『情報』そのものだ。
うまくいけば、スーツに付属のマニュアルなりガイダンスなりにアクセスできるかもしれん。
「やっと、少しはマシなことが起こってくれたかね」
そうと決まれば、やることは一つ。
まずはこいつを起動させんことには話にならん。
「確か、あいつはこう、手に持って、こんなポーズになってから……」
俺はモロトフのやり方をよく思い出し、できる限り忠実に再現しそして……
「テック、セッタァァーー!!」
叫んだ!
587: 2007/09/24(月) 21:11:35 ID:17cKm9g3(16/30)調 AAS
588: 2007/09/24(月) 21:11:38 ID:To2MIRFY(11/16)調 AAS
589: 2007/09/24(月) 21:12:21 ID:6KAmtpuA(7/9)調 AAS
590: 2007/09/24(月) 21:12:46 ID:bqq+ucRB(3/3)調 AAS
591: 2007/09/24(月) 21:12:54 ID:17cKm9g3(17/30)調 AAS
592: 2007/09/24(月) 21:12:58 ID:/KVZk+dR(1/8)調 AAS
593: ディシプリン・コンチェルト ◆RwRVJyFBpg 2007/09/24(月) 21:13:03 ID:2DA8j1NV(5/7)調 AAS
◆
「ぐあっ!!」
科学者は何かに突き動かされるがごとく、自分に組み付いていた最後の一人を殴り飛ばす。
彼は、もはや妨げるもののいなくなった道を進み、装置の起動スイッチの前に立った。
「私はこれとともに生き、ともに死す!今更何の躊躇いがあろうかッ!」
科学者の手には細長い何かが握られている。おそらくは起動のためのキーであろう。
彼はそれを頭上高く掲げ、誇るようにして弁を続ける。
「今となっては我々はこの場を放棄する!」
組み付いていた4人の男達は、そう言い放つと、一目散に場面を去った。
「よろしい!貴様らに夜の創造者となる資格はない!だが私には見える!美しい夜が見える!」
科学者は昂揚に押されるまま、起動のキーをさらに振り上げそして――
◆
「………………あ″?」
……だが、何も起こらなかった。
あの広間では確かに水晶から放たれていた光は、いつまでたってもその頭すら見せない。
当然、そんな有様だから、俺にパワードスーツが装着されているはずもないわけで
……何だか恥ずかしくなってきたぞ。
大の大人が、密室で、一人、ポーズを取りながら、絶叫。
これはもう、どう考えてもイカれてる。誰か聞いたりしてないだろうな?
いや、ここは映画館。防音設備はバッチリのはずだ。多分。きっと。
そのあと俺は、水晶を撫でたり、引っ張ったり、押し込んだりしてみた。
だが、どうやっても、あのパワードスーツが現れることはなかった。
結局、ここに来てから初めてツキだと思えたモンも、蓋を開けりゃあ、ただの厄介モノだったわけだ。
だってそうだろう?
こっちは使いこなせないのに、使いこなせる誰かに盗まれないよう気を使わなきゃいけない兵器なんぞ
厄介モノ以外の何者でもねえ。
説明書が入ってないもんかと、一縷の望みを込めて、バッグを漁った俺の指先に何か固いものが当たった。
どうやら、まだ何か入ってたらしい。
(今度こそ、いいもんが入っててくれよ)
そんな願掛けをしながら、俺はそいつを一気に引き出した。
――するとそこには、緑色に光る、謎のガラス管があった。
長さ50〜60cmのガラスの筒で、中には蛍光グリーンの液体が詰まっている。
その中ほどには何だかよく分からない赤色の球が一つ浮かんでいた。
「あーくそっ!またよく分かんねえブツかよ!……ん?」
ここに来てもう何度目か分からない悪態をついた俺は……同時に何かしらの引っ掛かりを感じた。
この緑のガラス管、確かに俺がよく知っているものではないが……どこかで見たことがある。
どこで見た?ガニメデ?金星?それともビバップ号の中か?
どれも違う気がする。
じゃあ、ここに来てからか?
俺はもう一度、あの広場でのことを思い出す。螺旋王のこと、モロトフのこと、首輪のこと……
だが、その記憶の中にこのガラス管はない。
……見たことがあるというのは、俺の気のせいなのか?
いや、そんなことはない。確かにどこかで……
ある一つのことに思い当たった俺は、顔を上げ、スクリーンに焦点をあわせた。
そして、予想した通り、それは、そこにあった。
594: 2007/09/24(月) 21:13:40 ID:6KAmtpuA(8/9)調 AAS
595: 2007/09/24(月) 21:14:00 ID:17cKm9g3(18/30)調 AAS
596: 2007/09/24(月) 21:14:05 ID:To2MIRFY(12/16)調 AAS
597: ディシプリン・コンチェルト ◆RwRVJyFBpg 2007/09/24(月) 21:14:50 ID:2DA8j1NV(6/7)調 AAS
◆
科学者は昂揚に押されるまま、起動のキーをさらに振り上げそして――
「私はここに誓おう。いつの日か再び、さらに美しい夜を人々にもたらさんことを!
夜の恐怖に立ち向かい、打ち勝たんがために!」
――起動装置に向かい振り下ろした!
起動装置には、既に科学者が持っているのと同じキーが二つセットされている。
そう、この装置は、起動キーが3つ揃ったそのとき、始めてその真価を発揮するのだ!
完全無公害!無限リサイクル可能なエネルギー!それが美しい夜を永遠に――
――だが、科学者の実験は失敗だった。
科学者が3つ目のキーを差し込んだ瞬間、装置は暴走を始めたのだ。
人類の希望となるはずだったエネルギーは瞬く間に炉心を食い破る黒い悪魔となった。
悪魔の膨張は留まるところを知らず、あっという間に舞台だった建物を崩壊させたかと思うと
黒い衝撃波を撒き散らしながら周り一帯の地域を飲み込みそして……
一つの国をこの世から完全に消滅させた。
これが起こった世界に住むものなら誰もが知っている大破壊。
人々はこれを『バシュタールの惨劇』と呼んだ。
そして、その光景をスクリーンの前で見ていた男、ジェット・ブラックは恐怖した。
何故ならば、彼が握っている緑のガラス管こそが、惨劇を呼んだ悪魔の鍵
装置を暴走させた、起動キーそのものだったのだから。
◆
598: 2007/09/24(月) 21:14:51 ID:/KVZk+dR(2/8)調 AAS
599: 2007/09/24(月) 21:15:14 ID:6KAmtpuA(9/9)調 AAS
600: 2007/09/24(月) 21:15:24 ID:17cKm9g3(19/30)調 AAS
601: 2007/09/24(月) 21:15:40 ID:To2MIRFY(13/16)調 AAS
602: ディシプリン・コンチェルト ◆RwRVJyFBpg 2007/09/24(月) 21:16:29 ID:2DA8j1NV(7/7)調 AA×
![](/aas/anichara_1190383751_602_EFEFEF_000000_240.gif)
603: 2007/09/24(月) 21:16:47 ID:/KVZk+dR(3/8)調 AAS
604: 2007/09/24(月) 21:17:18 ID:HcVQeXLQ(3/9)調 AAS
605: 2007/09/24(月) 21:38:25 ID:uI4lT7gv(2/3)調 AAS
606: 『高遠少年の事件簿』計画 ◆VavZ5Yv7KE 2007/09/24(月) 21:39:22 ID:8ZWwDj8Y(1/5)調 AAS
「さて」
潮の香の強調される風の中、ホテルの屋上を囲う鉄製のフェンスに手をつき、高遠遥一は誰にとも無く呟いた。
眼下に広がる運河を挟んだ対岸には、周囲を細く、しかし強く照らす灯台が立ちすくむ。
景色のほとんどは夜の闇に覆いつくされ、その全容を見ることは叶わない。
だが、どうやら、バトルロワイヤルの舞台となるこの場所は、見慣れぬファンタジーワールドなどではなく
自分のよく知る世界のそれとほとんど同じ『もの』で造られているようだ。
あまりに突然の展開。異形の者たち。そして、見たことも無い超常の力。
自分が、自分たちの居た世界で、それなりの修羅場も不思議なものも見てきたという自負はあったが、
この一連の展開は、そんな彼の生きてきた世界の常識さえも易々と破壊するものだった。
「………」
あるいは、これは、『その割には』拍子外れとでも言うべきか。
対岸よりの風が前髪をゆらした。とりあえず、見下ろす視界の内に人影は無い。
そもそもが、大部分が、油のように黒くのっぺりとした水面で占められてはいるのだが。
人が死ぬ、あるいは、人を殺す、ということにさしたる抵抗は無い。
むしろ自分のこれまでの人生は、それを奨励する『伝道師』としてのものであったすらといえよう。
しかし
(思ったより、腹が立つものですね)
それを、人から強要されるということは。
(さりとて、少なからず存在するであろうこのゲームを不服とする者達の中から、信頼できる『仲間』を募り
主催者の意図をも超えた脱出に尽力する、などというのも)
正直、まるで興味が湧かないことだ。
「ふむ…」
大体、それはそれで、主催者の影響を、逆の形であれもろに受け、踊らされていると、そういうことでもあるだろう。
こんなところに放り込まれたからといって、簡単に『いい人』に鞍替えして
誇りと自負に満ちていた過去の『悪行』を捨て去る未来図など、背筋のあたりに怖気さえ走る。
(………)
そうだ。主催者の鼻を明かしたいだけなら、このバトルロワイヤルに優勝し、主催者への望みを「自殺せよ」とでもしてやればよいのだ。
あるいは、機嫌を損ねた主催者に自分は殺されるかもしれないが
自らが決めたルールすら守れなかったその瞬間、彼らは、そのゲームマスターとしての誇りも矜持も失うことになる。
死後の世界など、もちろん信じてはいないが
(悪くない。いや、最後の瞬間まで大笑いできる死に方でしょうね)
そんな風にも、思う。
607: 2007/09/24(月) 21:40:21 ID:Dbwysa0G(3/6)調 AAS
608: 2007/09/24(月) 21:40:42 ID:/KVZk+dR(4/8)調 AAS
609: 2007/09/24(月) 21:41:24 ID:uI4lT7gv(3/3)調 AAS
610: 『高遠少年の事件簿』計画 ◆VavZ5Yv7KE 2007/09/24(月) 21:41:40 ID:8ZWwDj8Y(2/5)調 AAS
結局自分の『地獄の傀儡師』としての誇りは
「いつも通り、ですか」
そうあることでしか守られない。
人を欺き、操り、災禍を呼ぶことでしか。
それが、たった数分間の思考で、高遠遥一の出した結論だった。
(さて…そうなると、やはり一番の難題はこれですか)
支給されたデイパックの中から、一枚の用紙を探り出す。
このゲームの参加者の名簿。
『地獄の傀儡師』を鼻で笑うようなセンスの賜物だろう名前がてんこもりだが
そんな中でも、高遠の目を一際引きつけるのは、やはり、ここ。
(金田一 一……)
様々な事件において自分の前に立ちはだかった、自分にとっての、おそらくは終生のライバル。
このゲームに自分が更なる扇動を加え、よりいっそうの混沌を呼ぶにせよ、
この手を直接血で汚すにせよ、どちらにしても、マイナスにはなっても、プラスにはなりえない存在だろう。
(どう、しますかね……)
厄介な点はいくつかあった。
金田一が、高遠の正体を―――犯罪者、殺人者としての―――正体を知っているということ。
ここが、基本的に閉鎖された空間だろうということ(でなければバトルロワイヤルなど成立しない)。
金田一が、曲がりなりにも、自分を何度か追い詰めたほどの知性を持っているということ。
自分には今、常に使っている、愛用の変装道具がないということ。
ひとつひとつは高遠の力量をもってすればどうとでもなる問題でしかないが
(組み合わせが、どうにもいけませんね)
はぁ、と体を入れ替えるとフェンスに背中を預け、夜空へ吐息を解き放つ。
「……まあ、私の名前に気がつかないということはないでしょう」
それなりに長い付き合いだ。
それに気づいた金田一がどう動くかなど、たいして考えるまでもなくよく分かる。
剣持勇をはじめとする、知人たちとの合流と、高遠を『逮捕』すること。
まともな警察権力など存在しないこの場では、おそらく『告発』止まりで終わるだろうが、
それでもそれが高遠のような隠密性を重視する『犯罪者』にとって最も致命的であることを、あの金田一が理解しないとも思えない。
むろんこのゲームの流れの中で、良くも悪くもその行動にプラスアルファは加えられるだろうが、
その二つに対し、何の対策も立てない、ということだけはまずありえまい。
「………」
このフィールドは、高遠と金田一が今まで対峙してきたそれとは、明らかに違う。
むろん、高遠にとって、好ましくない形にだ。
まず、82人というそれなりの大人数とはいえ、その中に『高遠が確実に居る』ことを金田一に知られてしまうということ。
これが何より不味い。
自分は、けして弱くは無い。
だが、それはあくまで一般的な『人』の範疇での話だ。
先ほどの演説と解説の最中、情けなくも見せしめで殺されたサイボーグのごとき男が居たが、
あれとすら、正面から戦えば二秒と持たせる自信はない。
いや、極端な話、警察官である剣持勇と正面から喧嘩して、勝てるかもどうかも相当に怪しいものだろう。
少なくともつもりとしては、今まで通り、『自分は正体がバレたら終わり』であることを自覚して動くべきだ。
611: 2007/09/24(月) 21:41:48 ID:To2MIRFY(14/16)調 AAS
612: 2007/09/24(月) 21:41:49 ID:droStTCx(1)調 AAS
613: 2007/09/24(月) 21:41:53 ID:Dbwysa0G(4/6)調 AAS
614: 2007/09/24(月) 21:42:23 ID:/KVZk+dR(5/8)調 AAS
615: 2007/09/24(月) 21:43:23 ID:To2MIRFY(15/16)調 AAS
616: 『高遠少年の事件簿』計画 ◆VavZ5Yv7KE 2007/09/24(月) 21:43:24 ID:8ZWwDj8Y(3/5)調 AAS
つまり、そういうこと。
だからいつもと同じようにアリバイを作り。
だからいつもと同じようにトリックを造り。
だからいつもと同じように操り人形(マリオネット)を創る。
人を欺き謀ることにより、何よりの快感を得てしまうという悪癖を持った『変人』ではあるが、
行動に、本当の意味での、何者をも意に介さない自由が無い程度には、高遠遥一は『凡人』なのだから。
(ま、それも良し悪しですがね)
これからの行動方針と同時並行で、過去へと思考を動かせる。
強いものは、同時に脆い。
『多数派』という『強者』の間を縫って『少数派』の『弱者』として生きてきた自分には、
彼らの、強さ故の驕りと愚かしさ、それがもたらす致命的な隙が、手に取るようによくわかる。
見せしめに殺されたあの男など、まさにその典型例ともいえる存在だろう。
驕慢に肥大化した自我と、それが呼ぶ取り返しのつかない死。
思考が、思索が、緩みきっているのだ。その強さが故に。
…………
未来への思考へ、立ち戻る。
これからの方針。
手としてはいくつかある。
大まかに言ってしまえば、いつものように人と人の間に『隠れる』こと。
もしくはいつもと同じ舞台に立たないからこそ変拍子として使える『攻撃』を加えること。
ここで言う『攻撃』とは物理的なものだけを指すわけではない。
高遠にとっても金田一にとっても、見も知らぬ世界見も知らぬ国の住人だろう者たちであふれたこの場所ならば
犯罪者高遠遥一とアマチュア探偵金田一一という追う者追われる者の関係を再構成することすら、決して不可能ではないのだから。
簡単なことだ。
おそらく高遠の存在に気づいた金田一がやるだろうことを、高遠が、鏡のように真似をしてやればいい。
こんな場所とはいえ、招待客の全てがゲームに乗るとは思えない。
いや、高遠の知る面子と高遠自身を鑑みてみれば、むしろゲームに積極的には乗らない人間の方が、より多く呼び出されているのかもしれない。
そんな人間をこそ、紛れ込む高遠のような人間が巻き起こす疑心暗鬼と人間不信の禍により修羅の道へと突き堕とす。
こんな悪趣味なことを考える主催者だ、ある種の同類であるからこそ、
高遠にはそういう趣向を凝らす主催者の意図も、読み取れないことはない。
そして、なればこそ金田一は、たとえ知り合いでなくともまず遭遇した相手とは交渉から入るだろう。
そして信頼できると判断したなら、その相手にこう言うのだ
「これこれこういう感じの、高遠遥一という男には気をつけろ」
それは、困る。
そんなことをあちこちでされては、これから取る行動に大幅な制限をかけられてしまう。
617: 2007/09/24(月) 21:44:09 ID:Dbwysa0G(5/6)調 AAS
618: 『高遠少年の事件簿』計画 ◆VavZ5Yv7KE 2007/09/24(月) 21:44:56 ID:8ZWwDj8Y(4/5)調 AAS
(しかし)
自分が、それと全く同じことをしたらどうなるか?
「これこれこういう感じの、金田一一という男には気をつけろ」
金田一の『過去の悪行』については、高遠自身の、過去それをくれてやってもいい。
たったそれだけのことで、高遠と金田一の状態は五分と五分に引き戻せる。
こちらが信用を得れば得るほど、言うことが金田一と鏡合わせのように同じであればあるほど、
『善良な者』は、どちらを信じればいいかわからなくなる。
それはおそらく、『善良な者たち』に囲まれながらの直接対峙の時ですら。
……実に知略の戦わせようがありそうなその状況を想像すれば、今から口元が緩んでしまう。
(しかしまあ、楽しみにしてばかりもいられませんか…)
厄介な点が、ないわけではないのだ。
まず何より、高遠と金田一以外にも、彼らをよく知る人物が召喚されていることだ。
当たり前のことだが、いわゆる水掛け論を強引にでも解決させねばならない場合、証言者は多ければ多いほど有利だ。
彼らが絡めば、金田一との、元の世界で「どちらが本当の探偵役で、どちらが本当の犯罪者だったか」を争うというスリリングなゲームも、
一気に高遠の不利へ傾くことだろう。
(できれば、彼らには早期退場していただきたいものですが……)
もしくは金田一もろとも、三人組の悪党集団にでも仕立て上げるか?
いや、あくまで一般人の金田一と違い、高確率で警察手帳まで所持している職業警官では
名簿を見る限り何人か居る『日本人』に対する説得力の面で……
……まあ、いいか。
一旦、没頭していたとりとめもない思考から浮上する。
いまだ遭遇した相手もいないこの状態で、あまりガチガチに行動指針を決めすぎるのも問題だ。
人は、一度決めた手順には盲目的に従ってしまう習性を持つ生き物だ
自覚していれば超克することはさほど難しくはないが、それでも、イレギュラーな事態に対してのラグはどうしても生じてしまう。
もう役立たずになってしまった作戦に、時間の多寡はあれ『こだわって』しまうのだ。
(そして、こんな環境では、そういうラグがえてして致命的になることがある)
なにより
(金田一にしろ私にしろ、出会い頭の『事故』であっさり死んでしまう可能性のがよほど高そうですしね……)
自嘲とともに、そうも思う。
自然、頼りないながらの武力と、頼みとする知略のほとんどは、それらをかわし生き残ることに、そのほぼ全てを費やすことになるだろう。
金田一に過去の『地獄の傀儡師』の濡れ衣を着せ、自分は今までどおり無害無関係を装いつつも殺人と殺人幇助を続ける。
この魅力的な大方針とて、実のところ、所詮は趣味の域、机上の空論の域を出ていないのだった。
実質「やって失敗しても、やらない時より損になることがない」という気楽さが取り柄の、それだけの策だった。
まあ、金田一がこのバトルロワイヤルに脅えきり、思考と策の全てを放り出すほど惰弱な男であったなどという
『こちらの予想を完全に超えた事態』にでもなれば、かえってこちらが墓穴を掘ることになるかもしれないが……
(……フフ……。……そうそう。武力と言えば)
そういえば、ランダムで支給される、何がしかの物品があるという話だった。
「……まず真っ先に確認するべきでしょうに」
苦笑が、漏れる。
やはり、どんなに冷静なつもりでも、自分もかなり動転していたらしい。
「さて、どんなものがあるのか……」
高遠遥一は、傍らのデイパックに、再び片手を突っ込んだ。
619: 2007/09/24(月) 21:45:03 ID:To2MIRFY(16/16)調 AAS
620: 2007/09/24(月) 21:45:21 ID:17cKm9g3(20/30)調 AAS
621: 2007/09/24(月) 21:45:57 ID:Dbwysa0G(6/6)調 AAS
622: 2007/09/24(月) 21:46:33 ID:8ZWwDj8Y(5/5)調 AAS
【E-2ホテル屋上/1日目/深夜】
【高遠遥一@金田一少年の事件簿】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ、支給品一式、不明支給品(残3)
[思考]
1:ステルスマーダー一直線
2:金田一に『危険な犯罪者』の濡れ衣を着せる
3:剣持と明智は優先的に死んでもらう
4:ただし2と3に拘泥する気はなく、もっと面白そうなことを思いついたらそちらを優先
623: 2007/09/24(月) 21:47:39 ID:17cKm9g3(21/30)調 AAS
624: 勇気の意味を知りたくて(修正) ◆o4xOfDTwjY 2007/09/24(月) 21:59:54 ID:+LPmGtp4(6/7)調 AAS
>>558の8行目
「それに反抗して無残に散っていったランスと呼ばれた男。」を、
それに反抗して無残に散っていったモロトフと呼ばれた男。
に修正。
>>570
ヒューズの支給品の「ロイの手袋」を「ロイの発火布の手袋」に修正。
625: 勇気の意味を知りたくて(修正) ◆o4xOfDTwjY 2007/09/24(月) 22:09:40 ID:+LPmGtp4(7/7)調 AAS
すみません。もう一つ追加です。
>>561の6行目
「あの螺旋王ロージェノムとやらも、それに刃向かったテッカマンランスという名の男も」を、
「あの螺旋王ロージェノムとやらも、それに刃向かったモロトフという名の男も」に修正します。
626: 『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko 2007/09/24(月) 23:16:00 ID:PTlS25TI(1/10)調 AAS
(殺しあいなんて駄目だ…絶対に止めさせないと……)
ヴァッシュ・ザ・スタンピードは玉座に座る男を見上げた。螺旋王を名乗った男はたった今人一人を殺したにも関わらず何事もなかったかのように説明を続けている。
(ごめん。僕には何もできなかった…)
涙が溢れそうになる。ヴァッシュは唇を噛み締めた。
「気に入らねぇ、ってツラしてるな」
声をかけられた。向くと細身で青い服を着た長身の男がヴァッシュと同じように苦い表情で玉座の男をを睨んでいた。
「……オレもだ」
やはり自分と同じ思いの者はいる。それを確認するとヴァッシュは再び視線を戻した。
(そうだよね…誰も、殺し合いを望むなんて…。そんなことのために君は……)
そこでヴァッシュの視界は歪み意識は闇に落ちた。
627: 2007/09/24(月) 23:16:14 ID:17cKm9g3(22/30)調 AAS
628: 2007/09/24(月) 23:16:15 ID:HcVQeXLQ(4/9)調 AAS
629: 2007/09/24(月) 23:17:20 ID:0KOdYw8P(1/6)調 AAS
630: 2007/09/24(月) 23:17:21 ID:ouN6Cfds(8/12)調 AAS
631: 2007/09/24(月) 23:17:54 ID:HcVQeXLQ(5/9)調 AAS
632: 『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko 2007/09/24(月) 23:18:15 ID:PTlS25TI(2/10)調 AAS
次に気がついたときヴァッシュは全速力で疾走するモノレールの屋根にへばりついていた。
「のおおぉぉぉぉ!?なんで!?どうして!?なしていきなり屋根の上なのぉ!どぉして走ってるのぉ!僕が何したって言うのさあ!」
跨座式のモノレールである。吹き荒れる風がヴァッシュの顔を容赦なく叩く。
モノレールの正面に掛けている手の力を一瞬でも緩めればたちまち時速数十キロで下を流れる地面へとダイブするだろう。
「無理無理無理!落ちる!落ちちゃう!助けてよママンッ!あ〜、今口の中に何か変なの入ってきたあ!」
「うるせぇぞ!」
必死でじたばた泣き喚くヴァッシュを横合いから怒鳴りつける声がした。
「そんなこと言ったってぇ!ってあれ?ああ、あなたはさっきの青い人!」あ
ヴァッシュが声の方向に首を曲げると先ほどの青服の男がモノレールにへばりついていた。
但し、ヴァッシュが屋根なのに対し男は幾分姿勢を保持しやすい側面から屋根に手を掛ける形である。
「青い人じゃねぇ!ランサーだ!」
イラついた声で男はそう名乗った。
「あぁ、どぉもぉ!ぼかぁヴァッシュ・ザ・スタンピードって言いますぅ!一緒にこの殺し合いを止めさせましょう!」
「真っ先にてめぇが死にそうじゃねぇか!」
633: 2007/09/24(月) 23:18:24 ID:17cKm9g3(23/30)調 AAS
634: 2007/09/24(月) 23:19:25 ID:0KOdYw8P(2/6)調 AAS
635: 2007/09/24(月) 23:19:31 ID:ouN6Cfds(9/12)調 AAS
636: 2007/09/24(月) 23:19:36 ID:fE8YsBnF(1/6)調 AAS
637: 2007/09/24(月) 23:19:57 ID:MM0ZUptr(2/3)調 AAS
638: 2007/09/24(月) 23:20:04 ID:HcVQeXLQ(6/9)調 AAS
639: 『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko 2007/09/24(月) 23:20:07 ID:PTlS25TI(3/10)調 AAS
屋根より安定した場所にいる分いくらか冷静でいられるのか、ランサ−はそう返した。
「そりゃまぁそうなんですけどねぇ!あ、まさかランサーさん殺し合いに乗っちゃうつもりですかぁ!?だめですよ、世の中はラァブ&ピースでいかないとお!」
「馬鹿にしてんのかてめぇは!?」
再び怒鳴りランサ−は片手で頭をかいた。足をかける場所はあるのでサーヴァントの腕力と合わせれば片手でも姿勢の保持に影響はない。
「…くそ!とにかく状況の確認だ!…いつの間にかこんなもん持たせやがって」
そう言うとランサーは肩に掛かっていたデイパックをずらし片手で中身の確認を始めた。
「器用ですねぇ!?」
突風に手を持っていかれかけた体を慌てて戻しながらヴァッシュが叫ぶ。
「英霊を舐めんな!これぐらいの風圧屁でもねぇ」
「じゃあ代わってくださぁぁぁい!」
突然の横風にあおられ下半身が変な方向に曲がっているヴァッシュを無視してランサーはデイパックの探索を続ける。
640: 2007/09/24(月) 23:20:50 ID:17cKm9g3(24/30)調 AAS
641: 2007/09/24(月) 23:20:57 ID:ouN6Cfds(10/12)調 AAS
642: 『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko 2007/09/24(月) 23:21:18 ID:PTlS25TI(4/10)調 AAS
「あぁ?紙かこりゃ!?え〜、アイザック…アルフォンス…こりゃオレ達の名簿だな!」
「ホントですか!見せてください!一体何人の人達がこの馬鹿げた殺し合いに参加させられているのかと思うと…」
心底心配で堪らないというように顔だけでうなだれるヴァッシュ。
「ちっ…!仕方ねぇ。オラしっかり見ろ!」
ランサーは無理やり身を乗り出しヴァッシュの鼻先に名簿を突き付けた。
「どぉも!…ってちょっと近すぎ!紙がめくれて鼻、鼻が!ふぁ…ふぁ…ぶぇっくしょいっ!」
はためく名簿に鼻先を刺激されたヴァッシュは盛大なくしゃみで名簿を吹き飛ばした。
猛烈な風に巻き上げられた名簿は瞬く間に二人の遥か後方へと消え去った。
「馬鹿野郎!」
「ごめんなさい!」
顔を青くして謝るヴァッシュ。ランサ−は忌々しげにちっと呟くと元の態勢に戻った。
「次だ!」
気を取り直してデイパックの探索を続ける。
643: 2007/09/24(月) 23:21:21 ID:0KOdYw8P(3/6)調 AAS
644: 2007/09/24(月) 23:22:19 ID:17cKm9g3(25/30)調 AAS
645: 2007/09/24(月) 23:22:21 ID:HcVQeXLQ(7/9)調 AAS
646: 『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko 2007/09/24(月) 23:22:23 ID:PTlS25TI(5/10)調 AAS
「あぁ!また紙か!?え〜、モノレール…高速道路…こりゃオレ達のいるとこの地図だな!」
「ホントですか!見せてください!一体どこまで行ったら僕達はこの乗り物から降りることができるのか…」
心底心配で堪らないというように顔だけでうなだれるヴァッシュ。
「ちっ…!仕方ねぇ。オラ今度こそしっかり見ろ!」
ランサーは無理やり身を乗り出しヴァッシュの鼻先に地図を突き付けた。
「どぉもぉ!ってまた近ぶぇぇっくしょい!」
はためく地図に鼻先を刺激されたヴァッシュは盛大なくしゃみで地図を吹き飛ばした。
猛烈な風に巻き上げられた地図は瞬く間に二人の遥か後方へと消え去った。
「馬鹿野郎ぉっ!」
「ごめんなさいぃっ!」
顔を白くして謝るヴァッシュ。ランサ−は憎々しげにちっと呟くと元の態勢に戻った。
「次っ!!」
気を取り直してデイパックの探索を続ける。
647: 2007/09/24(月) 23:22:54 ID:fE8YsBnF(2/6)調 AAS
648: 2007/09/24(月) 23:23:02 ID:Y0pUHdOy(1)調 AAS
649: 2007/09/24(月) 23:23:27 ID:17cKm9g3(26/30)調 AAS
650: 『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko 2007/09/24(月) 23:23:38 ID:PTlS25TI(6/10)調 AAS
「あぁ!?今度は紙じゃ」
「見せてくださぁぁぁい!」
「絶対に見せねぇっ!!」
我慢の限界を越えたランサーが叫んだ。怒りに任せて車体をよじのぼりヴァッシュの腕を掴む。
「ひっ!」
「いい加減にしろ!テメェさっきからオレの」
そこでモノレールの車体がガクンと大きく揺れた。
路線がカーブに差し掛かったのである。突然発生した遠心力という新たな力に、ランサ−はまだしも体を真っ直ぐ伸ばした状態のヴァッシュは全く抵抗できない。
結果、振り回されたヴァッシュの体はランサーをモノレールの車体から叩き落と
していた。
「へ?」
猛烈な風に巻き上げられたランサーは瞬く間にヴァッシュの遥か後方へと消え去った。
651: 2007/09/24(月) 23:24:12 ID:0KOdYw8P(4/6)調 AAS
652: 2007/09/24(月) 23:24:14 ID:fE8YsBnF(3/6)調 AAS
653: 2007/09/24(月) 23:24:16 ID:HcVQeXLQ(8/9)調 AAS
654: 2007/09/24(月) 23:24:18 ID:ouN6Cfds(11/12)調 AAS
655: 2007/09/24(月) 23:25:27 ID:/KVZk+dR(6/8)調 AAS
656: 2007/09/24(月) 23:25:40 ID:0KOdYw8P(5/6)調 AAS
657: 2007/09/24(月) 23:27:41 ID:MM0ZUptr(3/3)調 AAS
658: 『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko 2007/09/24(月) 23:28:03 ID:PTlS25TI(7/10)調 AAS
「馬っ鹿野郎おおぉぉぉぉぉぉお!?」
「ごめんなさああぁぁぁぁぁぁい!?」
顔面蒼白で謝るヴァッシュにこれ以上ない程目を見開いたまま落ちていくランサー。やがて遠くに小さく水柱が挙がるのが見えた。
(な、何かうまいこと風に乗って水の上に落ちれたみたいだし…死んでない、死んでないよねぇあの人ぉ!?)
ヴァッシュはただがくがく震えながらさっきまでランサ−がいた場所でしがみ付いていることしかできなかった。
【G-4 あたりのモノレールの屋根(疾走中)1日目 深夜】
【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@トライガン】
[状態]:がくがくぶるぶる
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 不明支給品1〜3
[思考・状況]基本:絶対に殺し合いを止めさせる
1.やめて止めてやめて止めてやめて止めて…
2.止まったらすぐ降りる。
3.あの人生きてるよね…?
※参加時期はウルフウッドと知り合って(本編9話)以降ということ意外不明です。
659: 2007/09/24(月) 23:28:04 ID:/KVZk+dR(7/8)調 AAS
660: 2007/09/24(月) 23:28:57 ID:HcVQeXLQ(9/9)調 AAS
支援一線
661: 2007/09/24(月) 23:29:03 ID:17cKm9g3(27/30)調 AAS
662: 2007/09/24(月) 23:29:10 ID:ouN6Cfds(12/12)調 AAS
663: 『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko 2007/09/24(月) 23:29:20 ID:PTlS25TI(8/10)調 AAS
「ちくしょう…ひでぇ目に遭った…」
何とか地面との激突を避け岸に泳ぎついたランサ−は肩で息をしながら地面に倒れこんだ。
少し体が動かしにくかった気はしたが別にこの程度の水泳でそこまで疲れた訳ではない。何かもっとかこう精神的な何かが原因である。
「あの野郎…今度会ったらただじゃおかねぇ」
普段そこまで根に持つことはない、それどころかどちらかと言えばサッパリした性格であるはずのランサーだったがさすがこの状況では怒りがおさまらない。
そんなランサーの目の前にまるで贈り物とでも言うかのようにヒラヒラと一枚の紙が舞い降りた。
「ん…?」
何気なく手にとってそれを見る。
そこに書かれていたのはWANTEDの文字と賞金の額を示すのであろう11桁の数字。
そして真ん中にでかでかと描かれている能天気な笑顔は紛れもなくさっき自分を海に突き落とした男だった。
「……」
ランサーは苦々しい思いで、それでも平静を保ちながら流れ飛んできたヴァッシュの手配書に目を通す。
しかし、備考として書かれたある一文に目を通したときランサーは手配書を握り潰し堪りかねたように叫んでいた。
「何が平和主義者だ!ヴァッシュ・ザ・スタンピードォッ!」
664: 2007/09/24(月) 23:29:50 ID:R1Vm6ul6(1/2)調 AAS
665: 2007/09/24(月) 23:30:04 ID:/KVZk+dR(8/8)調 AAS
666: 2007/09/24(月) 23:30:10 ID:fE8YsBnF(4/6)調 AAS
667: 2007/09/24(月) 23:30:13 ID:0KOdYw8P(6/6)調 AAS
668: 2007/09/24(月) 23:30:51 ID:17cKm9g3(28/30)調 AAS
669: 『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko 2007/09/24(月) 23:31:04 ID:PTlS25TI(9/10)調 AAS
【F-3南東端の岸 1日目 深夜】
【ランサー@Fate/stay night】
[状態]:疲労(小) 精神的疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(地図と名簿を除く)不明支給品1〜3 ヴァッシュの手配書(一枚)
[思考・状況]1.とりあえず一人でゆっくり支給品を確認する。
※参加時期は本編での死後。そのため言峰の令呪は無効化しています。
【ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書について】
G-2から飛ばされた中の一枚。写真や賞金額の他、多少ヴァッシュについての説明が書かれている。
『モノレールについて』
バトルロワイアル開始と同時にG-2の駅を出発しました。一駅間の移動は5分〜10分。
中は無人で操作は全て機械が行っています。
跨座式モノレールの形についてはこちらを参照
外部リンク:ja.wikipedia.org
670: ◆10fcvoEbko 2007/09/24(月) 23:33:12 ID:PTlS25TI(10/10)調 AAS
以上で投下終了です。
多数の支援ありがとうございました。
671: 2007/09/24(月) 23:59:53 ID:KrQWDLDf(1)調 AAS
672: 2007/09/25(火) 00:00:54 ID:fE8YsBnF(5/6)調 AAS
673: 2007/09/25(火) 00:01:42 ID:0JlIc8H/(1/5)調 AAS
674: 汝は〜なりや? ◆FbVNUaeKtI 2007/09/25(火) 00:01:48 ID:cszWwmT0(8/8)調 AAS
(何故、私はこんな所に居る?)
それが最初に浮かんだ疑問だった。
彼は大陸横断特急フライング・プッシーフットに乗り、ニューヨークへと向かっていたはずだった。
しかし、食堂車に黒い服の男達や白い服の男等が銃を手に表れ、近くに居たカップルに床に伏せさせられた直後。
彼――チェスワフ・メイエルは自分が大きな広間に立っている事に気がついたのだった。
最初は汽車を占拠した黒服、もしくは白服の男達によって乗客全員がこの場所に拉致されたのだと考えた。
だが、その後に大広間で起こった出来事を見て、彼は少し考えを改める事になる。
ロージェノムと名乗る男の登場と殺し合いを行うという宣言。
更にはそれに反抗しようと瞬時に鎧を纏った男が行った攻撃と彼の末路。
そして、その後の大広間から今現在彼が居る場所への一瞬にしての移動。
それ等は明らかに200年以上を生きる錬金術師であるチェスの持ち得る、あらゆる知識の外にあるものだった。
もちろん、彼は自分が全知全能だとは思っていないし、あれらの能力者をありえないと否定する気も無い。
そもそも彼自身が世界の絶対たる摂理から“悪魔”の助力により逃れた存在なのだ、
あのような特異な力を持つ者が複数存在していても、なんら不思議な事は無かった。
(しかし、殺し合いとは……私が不死者だと知りながら言っているのか?)
薄暗い部屋の中、冷たい床に座り込み立ち並ぶ棚に背を預けながらチェスはそう考える。
不死者。悪魔のもたらした未知の薬によって世界の理から外れた者達。
それらはその名が表すとおり、老いる事を知らず死という終焉を迎える事はない。
例えば、おそらくは薬屋の店舗なのであろうこの部屋の中には、無数の薬品が詰まった棚が所狭しと並べられている。
だがしかし、殺し合いの場では貴重なそれらは彼には必要の無い物なのだ。
何故ならば彼は撃たれようが、焼かれようが、切り刻まれようが死を迎えることが出来ないのだから。
それどころか、その身が例え灰になろうとも元の姿を取り戻すのに、そう時間は掛からないだろう。
ある特定の方法を取らない限り、不死者を滅ぼす事は不可能なのだ。
その様な殺し合いという目的を根底から覆しかねない存在を、あの男は問題ないとばかりに参加させている。
(考えられる事は三つ)
一つはロージェノムが不死者という存在を知らないという可能性。
ただし、あの時殺された鎧の男の素性を知っているような口振りからして確立はかなり低い。
次は不死者としての能力自体に何かの工作が施されている可能性。
こればかりは試してみないと解らないので、
支給されたでナイフ(というには大きすぎる刃物)で掌を深く傷つけてみたが、結果は常時と余り変わらなかった。
無論もっと大きな傷、例えば死に瀕するような重傷の場合は結果が変わる可能性もあるが、今のところは保留で構わないだろう。
そして最後は自分以外の不死者がこの場に存在するという可能性である。
確かに不死者を通常の方法で殺す事は出来ない。
だが、不死者同士ならば『喰う』という行為で相手をこの世から消滅させる事が可能なのだ。
方法は簡単だ。対象の頭に右手を乗せ『喰いたい』と願う。
ただそれだけで不死者が一人消え、そいつの記憶を受け継いだ不死者一人だけが残る。
それこそが彼等、錬金術師達が不死になった際に悪魔に授けられた唯一の死の方法だった。
675: 2007/09/25(火) 00:03:17 ID:fE8YsBnF(6/6)調 AAS
676: 2007/09/25(火) 00:03:21 ID:qf6HhZnA(6/6)調 AAS
677: 2007/09/25(火) 00:03:27 ID:B6iD+hxT(1/2)調 AAS
678: 2007/09/25(火) 00:03:30 ID:17cKm9g3(29/30)調 AAS
679: 2007/09/25(火) 00:03:51 ID:BPzw6pCs(1/6)調 AAS
680: 汝は〜なりや? ◆FbVNUaeKtI 2007/09/25(火) 00:04:05 ID:CXh4BjpZ(1/6)調 AAS
(この中で可能性が高いとすれば三つ目か)
そう思案しながら、チェスはデイバッグの中に入っていた参加者名簿を見つめる。
彼にとっては幸運な事に、名簿の中には彼の知る200年前の錬金術師達の名は無い。
だが、ここに来る直前まで彼が耳にしていた名前が三つ、まるで代わりの様に記されていた。
アイザック・ディアン、ジャグジー・スプロット、ミリア・ハーヴァント。
この殺し合いが始まるまで、フライング・プッシーフットの食堂車で一緒だった三人。
そして、あの三人を含む乗客達数十人のいた食堂車内で、彼は偽名を名乗る事に失敗していた。
不死者同士では偽名を名乗ることが出来ない。それが悪魔の定めた不死者間でのルールだ。
つまり、あの乗客の中の誰かが不死者である事はほぼ確定している。
(この三人の内の誰か……もしかすると三人全員が、不死者かも知れないという事か)
もちろん、三人とも一般人の可能性もあるし、彼等以外の誰かが不死者の可能性もある。
だが注意するに越した事が無いだろう。
他の不死者に喰われて自らの記憶を覗かれるのは、チェスにとって、とても耐えられるものではなかった。
「さて……そろそろ行くとするか」
やがて、小さく呟きながら立ち上がると、チェスは手早く支給品等をデイバッグに仕舞った。
そして、おもむろに近場の棚へと目を向けると、そこに並ぶ多数の薬品を物色し始める。
確かに彼にとってこれらの薬品は必要の無い物だが、それでも何かに使える物は回収しておこうと考えたのだ。
そして、数種類の薬品を鞄に詰め終えたチェスが店の入り口へ目を向けるのと同時、そこにあったドアが店内へと向けて押し開けられる。
そこには一人の少女が立っていた。年の頃は十代後半といった所だろうか?
橙を基調とした服を身に着けたその少女は、こちらを見て驚いたような表情をしながらも、すぐに右腕をチェスへと向けてくる。
彼女の右手に握られた小形の拳銃は、真っ直ぐにチェスの体を狙っていた。
「動くな。お前の名前とこの殺し合いに乗る気なのかどうか……それから、お前の持っている力についてを教えてもらおうか?」
「お、お願いだから殺さないで!」
内心の動揺を押し隠し、チェスは怯えた表情で懇願する。
(こいつ、まさか私の事について何か知っているのか!?)
一瞬浮かんだその考えを即座に否定する。
彼女の口から出たのはあくまでも力という単語であり、チェス自身の能力に直結する固有名詞などではない。
おそらくは支給された武器の事を言っているか、単なるハッタリなのだろうと思いながらも、
チェスは念の為本名ではなく、名簿で自身の近くにあった名前を名乗っておく事にした。
「ぼ、僕はドモン・カッシュ。人を殺したり、なんてしないし……持っている武器も、変なナイフが一本だけだよ……」
そう言いながら、手にしていたデイバッグをゆっくりと下ろす。
少女は床へと完全に下ろされた黒い鞄をチラリと一瞥した後、チェスへと向けて再び口を開いた。
「支給された武器の話じゃない。お前自身、何か特殊な能力を持っていたりするんじゃないのか?」
(どういう事だ? この女、不死者ではないようだが。
鎧の男の力を見て警戒しているのかとも思ったが、それにしては何らかの確信を持っているような……)
素早く思考を巡らせながらもチェスはおずおずと首を横に振り、少女の言葉に返答する。
しばらくの沈黙の後。「そうか」と呟くように言いながら、少女はゆっくりと銃を下ろした。
「手荒な真似をしてすまなかったな。私は玖我なつきだ」
軽く頭を下げながら、少女は自身の名を名乗る。
彼女が手にしていた銃は、いつの間にか姿を消していた。
681: 2007/09/25(火) 00:04:52 ID:XAV59T1X(1/3)調 AAS
682: 汝は〜なりや? ◆FbVNUaeKtI 2007/09/25(火) 00:05:37 ID:CXh4BjpZ(2/6)調 AA×
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683: 2007/09/25(火) 00:06:10 ID:BPzw6pCs(2/6)調 AAS
684: 2007/09/25(火) 00:06:21 ID:17cKm9g3(30/30)調 AAS
685: 2007/09/25(火) 00:06:23 ID:R1Vm6ul6(2/2)調 AAS
686: 2007/09/25(火) 00:06:43 ID:XAV59T1X(2/3)調 AAS
687: 汝は〜なりや? ◆FbVNUaeKtI 2007/09/25(火) 00:06:56 ID:CXh4BjpZ(3/6)調 AAS
(何故、私はこんな所に居る?)
それが最初に浮かんだ疑問だった。
媛星の脅威が去り、黒曜の君が倒れた事によって、彼女達は平穏を手に入れたはずだった。
だが、彼女――玖我なつきは何時の間にか、殺し合いという馬鹿げた状況の中に居た。
大広間から飛ばされた先――薄暗い路地裏で、なつきは自身がエレメントやチャイルドが出せるか否かを確認する。
幾人もの人間を集め、枷を負わせ、命を奪い合えと扇動する。
こんな地獄のような状況で、彼女がある程度冷静で居られたのは、やはり似た様な経験をした事があるからであろう。
一番地によって風華学園へと集められたHiME達による、蝕の祭と呼ばれる戦い。
賭ける物は自分では無く、大切に思っている人物の命だという違いはあるものの、根本的な部分では似ているように思えた。
(いや……むしろ、この殺し合いとやらはあの祭を模した物なのかも知れないな)
チャイルドであるデュランが出てこずエレメントのみが出せる事を確認して、なつきは漆黒色の空を見上げる。
もちろん、空の上にあの赤い星の姿は見えなかった。
続けて手元にあった鞄を開けて、なつきは支給品や名簿を確認する。
名簿には見知った名前が自分以外に三つ記されていた。
鴇羽舞衣と藤乃静留、結城奈緒の三人だ。
(はやく、三人と合流しなければな)
名簿に続けて支給品を確認しながら彼女は思う。
舞衣はおそらく蝕の祭の時と同じように、この殺し合いを止めようとしているはずだ。
静留もあの時なつきの説得を受け入れてくれたのだ、殺し合いには乗らないと信じたい。
結城だって蝕の祭の時とは違い、率先して人を殺したりなどはしないだろう。
この三人と協力すれば、きっとここからの脱出も容易になるだろう。
「しかし、ここに居る私の知り合いは全員HiMEという事か……」
そして、あの大広間でロージェノムに逆らい首輪を爆破された男。
瞬時に鎧のような物を装着し、大火力の武器を放つというまるでTVの変身ヒーローか何かのようなその力。
(だが、HiMEの能力と似たような物と考えればあるいは……)
そんな事を考えながら、なつきは確認し終えた支給品を手早く鞄に仕舞い込む。
それから、周囲を見渡して人影が無い事を確認しながら、路地裏から抜け出すべく歩き始めた。
688: 2007/09/25(火) 00:07:48 ID:/622+3yn(1/4)調 AAS
689: 2007/09/25(火) 00:08:11 ID:TIK4SdxO(1/4)調 AAS
690: 2007/09/25(火) 00:08:19 ID:0JlIc8H/(2/5)調 AAS
691: 2007/09/25(火) 00:08:22 ID:n330Gvof(1)調 AAS
692: 汝は〜なりや? ◆FbVNUaeKtI 2007/09/25(火) 00:08:22 ID:CXh4BjpZ(4/6)調 AAS
路地の出口を目指しながら、彼女は再び思案する。
突如出現する鎧はエレメントと同じような物と考えれば理解できるし、大火力自体も舞衣のチャイルドであるカグツチという前例がある。
もちろん、あの男が鎧を着用するためには何らかの道具が必要な様だったり、そもそもHiME能力者は女性のみなどの違いはあるが、
HiMEの力と鎧の男の力は似ている部分が多々存在していると考えてもいい。
ロージェノムの言葉を信じるならば、ここには鎧の男と同じような能力を持った者があと二人は存在する事になる。
つまり、この殺し合いには高次物質化能力とそれに順ずる能力を持った参加者が7人は存在しているという事だ。
そしてロージェノムの口にした耳慣れない言葉、螺旋力。
あの男は優秀な個体、優秀な螺旋遺伝子を求めていると言った。この殺し合いがその選別のための実験だと……
おそらく、螺旋遺伝子とは螺旋力とやらを持った遺伝子といったような感じの意味合いだろう。
(だとすると、ここに居る人間の全員がその螺旋力という力を持っているという事になるのか……?)
そして自身の力を省みると、行き当たる心当たりは一つしかない。
「つまり、ここに集められた連中は全員、HiMEの能力のようなものを持っているという事か」
そう考えると、この殺し合いがHiME同士の戦いをモデルにした物だという仮説にもリアリティーが出てくる。
おそらくロージェノムは、特殊能力を持つ者たちを互いに争い合わせる事で蝕の祭のような状況を生み出そうとしているのだろう。
なつきが心中でそう結論付ける頃には、すでに路地の出口は目前へと迫っていた。
路地裏から顔を出したなつきが見たものは、道沿いにいくつかの店舗が並ぶ比較的大きな通りだった。
周囲を素早く見渡して犬の子一匹居ない事を確認した後、なつきはすぐ正面にある店舗へと目を向ける。
「薬局か」
それはドラッグストアのような大きな物ではなく、個人経営なのであろう小さな物だった。
包帯やその他の薬等使える物があるかもしれないと考えながら、なつきは店内へと続く小さな扉を押し開ける。
そこにはすでに先客が居た。年の頃は十代前半か、それ以下だろうか?
黒いデイバッグを持った少年が、少し驚いたような表情でこちらを見つめている。
なつきは自らのエレメントを具現化させると、目の目の少年へと銃口を向けながら素早く店内を観察した。
(棚がいくつか空になっているな……それなりに冷静な上に、少し頭が回るようだな)
「動くな。お前の名前とこの殺し合いに乗る気なのかどうか……それから、お前の持っている力についてを教えてもらおうか?」
「お、お願いだから殺さないで!」
怯えた表情を見せる少年に銃を突きつけながら、彼に質問をする。
銃に恐怖を覚え懇願する彼の様子は、その姿の通り年端もいかない子供そのままだったが、なつきは銃を下ろそうとはしなかった。
(私の推論が正しいなら、こいつも何かしらの能力を持っているはずだ……
それに、アリッサ・シアーズや凪、理事長の例もある。子供という見た目だけで判断するのは早計か)
「ぼ、僕はドモン・カッシュ。人を殺したり、なんてしないし……持っている武器も、変なナイフが一本だけだよ……」
そう言いながら少年は手にしていた鞄をゆっくりと下ろす。
なつきはその鞄を一瞥しながら、ドモンと名乗った少年に再び同じ質問を投げかけた。
「支給された武器の話じゃない。お前自身、何か特殊な能力を持っていたりするんじゃないのか?」
繰り返された質問に、ドモンはおずおずと首を横に振る。
(やはり、本当の事は言わないか……それとも本当に?)
とりあえず、今は保留しておくかと考えながら、小さく「そうか」と返答し銃を下ろす。
そしてエレメントを消しながら、なつきは軽く頭を下げ謝罪と自己紹介の言葉を口にした。
「手荒な真似をしてすまなかったな。私は玖我なつきだ」
693: 2007/09/25(火) 00:09:38 ID:0JlIc8H/(3/5)調 AAS
694: 汝は〜なりや? ◆FbVNUaeKtI 2007/09/25(火) 00:09:35 ID:CXh4BjpZ(5/6)調 AA×
![](/aas/anichara_1190383751_694_EFEFEF_000000_240.gif)
695: 2007/09/25(火) 00:09:43 ID:XAV59T1X(3/3)調 AAS
696: 2007/09/25(火) 00:10:56 ID:/622+3yn(2/4)調 AAS
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